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JP3583180B2 - 多層構成フィルムの製造方法 - Google Patents

多層構成フィルムの製造方法 Download PDF

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JP3583180B2 JP02374695A JP2374695A JP3583180B2 JP 3583180 B2 JP3583180 B2 JP 3583180B2 JP 02374695 A JP02374695 A JP 02374695A JP 2374695 A JP2374695 A JP 2374695A JP 3583180 B2 JP3583180 B2 JP 3583180B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱水後のガスバリアー性の回復が早く、耐熱水ブロッキング性に優れ、高温時の接着力に優れた多層構成フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明性・機械的強度・価格などに優れる二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPと略称する)や、二軸延伸ポリアミドフィルム(以下OPAと略称する)や、二軸延伸ポリエチレンテレフタートフィルム(以下OPETと略称する)などの基材フィルムは、ポリオレフィンフィルムとラミネートされ、各種用途の包装材料として使用されているが、ガスバリアー性が良くないため、エチレン−ビニルエステル共重合体けん化物(以下EVOHと略称する)のフィルムや、塩化ビニリデン系共重合体(以下PVDCと略称する)をコーティングしたフィルムをラミネートすることによりガスバリアー性の改善をはかっている。しかしEVOHフィルムをラミネートしたものはコスト高となり、またPVDCはそのままでも黄色味を帯びており、しかも紫外線でさらに黄変するという問題もある。
【0003】
特公平6−9916号公報には、脂肪族ポリアミド30〜90重量%および部分芳香族ポリアミド10〜70重量%からなるポリアミド組成物と、ビニルアルコール含有量40ないし85モル%の範囲にあるEVOHとを、共押出ししてなる複合フィルムについて述べられている。しかし該発明は、溶融多層体を冷却しフィルム化することに関するものであり、溶融多層体を冷却しフィルム化すること無く、溶融多層体を直ちに基材に積層させる共押出しコーティング法に関するものではない。また特公平6−9916号公報に記載されているような、脂肪族ポリアミド(結晶性)であるポリアミド 6と、部分芳香族ポリアミド(結晶性)であるポリアミド MXD6からなる結晶性ポリアミド組成物を用いてEVOHと共押出しコーティングしたのでは、後述する比較例1からも明らかなように、溶融多層体の製膜安定性が劣り、薄層のものが得られず経済的に不利である。しかも得られた積層フィルムの耐屈曲性が劣る。比較例2にも示すように、溶融多層体を冷却しフィルム化する場合、バブルの安定性と、フィルムの強度より本発明のような薄層のものを得ることは技術的に困難であるばかりでなく、耐屈曲性に劣り、熱水処理によるデラミが発生しやすく、フィルム化工程と基材とのドライラミネート工程の2工程を必要とし、非経済的である。
【0004】
特開平5−116259号公報には、EVOH層と密度0.90g/cm↑3以下のエチレン系重合体層を各々少なくとも一層含む溶融多層体を共押出しコーティングすることを特徴とする多層構成フィルムの製造方法について述べられている。しかし該発明はEVOHとエチレン系重合体に関するものであり、EVOHと特定のポリアミドの溶融多層体に関するものではない。
【0005】
特開平3−75120号公報には、ポリエステルフィルムと接着性樹脂層とからなる積層フィルム上に酸素バリアー性樹脂と接着性樹脂を共押出し、該接着性樹脂を前記積層フィルムの接着性樹脂層上に重ねて共押出ラミネートすることを特徴とする積層体の製造方法について述べられている。しかし該発明には、特定のポリアミドを用いて、熱水処理後のガスバリアー性の回復が早く、熱水処理しても白化やブロッキングの発生を防止する方策に関するものではない。
【0006】
特開平2−37298号公報には、少なくとも、EVOH10〜100重量%を含有する樹脂と、ポリエチレン系樹脂30重量%以上を含有する樹脂とを、該ポリエチレン系樹脂を含有する樹脂が一方の表面に積層すべく押出し積層して押出積層物を生成し、次に該押出積層物の押出積層した直後にオゾン処理を施し、アンカーコート処理を施した別製の基材シーに積層し、押圧、冷却することを特徴とする積層体の製造法について述べられている。しかし該発明も、EVOHと特定のポリアミドの溶融多層体に関するものではない。
【0007】
特開昭51−18775号公報には基材フィルムに少なくとも2層からなり、かつそのうちの1層がEVOHである薄膜状溶融物を圧着することを特徴とするラミネートフィルムの製造方法について述べられている。しかし該発明のEVOHと共押出しされる熱可塑性樹脂は、該公報6頁2〜11行に示されている通りポリオレフィンまたはポリオレフィンを主体とする共重合体であり、ポリアミドは含まれていない。さらに該発明には、特定のポリアミドを用いて、熱水処理後のガスバリアー性の回復が早く、熱水処理しても白化やブロッキングの発生を防止する方策に関するものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、製膜安定性に優れ、熱水処理後のガスバリアー性の回復が早く、耐熱水ブロッキング性に優れ、高温時の接着力に優れた多層構成フィルムの製造方法は未だ十分なものがなく、かかる特性を兼備えた安価な積層体が切望されている。
【0009】
しかして、本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するために創案されたものであり、製膜安定性に優れ、高速製膜性に優れ、防湿性の良い基材を用いシーラントを積層した場合においても熱水処理後のガスバリアー性の回復が早く、耐熱水ブロッキング性に優れ、高温時の基材との接着力に優れた多層構成フィルムを得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決する為の手段】
上記目的は、エチレン含有量20〜65モル%、ビニルエステル成分のけん化度90モル%以上のEVOH(A)層と、結晶性ポリアミド65〜35重量%および非晶性ポリアミド35〜65重量%からなるポリアミド組成物(B)層の少なくとも2層よりなる溶融多層体を(A)層が基材(C)層に接するように共押出しコーティングし、1〜50μmの(A)層厚み、1〜50μmの(B)層厚みを形成することによって達成される。
【0011】
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明において、EVOH(A)は公知のものであり、例えば、エチレンとビニルエステルを、メタノールやt−ブタノールやジメチルスルホキシドなどの溶剤中で、加圧下で過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を用い公知の方法で重合させ、続いて酸、またはアルカリ触媒でけん化して得られる物などが例示される。脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、バーサチック酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニルエステルなどがあげられ、芳香族カルボン酸ビニルエステルなども使用可能であるが、酢酸ビニルエステルが好ましい。EVOHのエチレン含有量は20〜65モル%、好適には25〜60モル%、より好適には25〜50モル%、ビニルエステル成分のけん化度は90モル%以上、好適には95モル%以上、より好適には98モル%以上である。エチレン含有量が20モル%未満では、高湿度時のガスバリアー性が低下し、65モル%を越えると十分なガスバリアー性が得られない。一方、けん化度が90モル%未満は、高湿度時のガスバリアー性が低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、得られる膜面にゲルが発生しやすい。また、JIS K 7210(温度 210℃,荷重 2.16kg)で測定したEVOHのメルトインデックスは0.1〜100g/10分のものが好ましく、0.5〜50g/10分のものがより好ましい。
【0012】
また、EVOHには少量のプロピレン、イソブテン、4−メチルペンテン−1、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン、イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物、不飽和スルホン酸、その塩、アルキルチオール類、N−ビニルピロリドンなどの共重合成分を含んでいても差支えない。
【0013】
さらにまた、下記の特性値(P値)で表される熱分解挙動を有するEVOHを用いることが好ましい。
P値…内径2mmφ、長さ1cmのノズルおよび内径9.5mmφのシリンダーを有するメルトインデクサー(JIS K7210;宝工業(株)製メルトインデクサーL203型)を300℃に加熱し、該シリンダーに試料樹脂5gを入れ、直ちに2.16kgの荷重をかけ1gの試料樹脂をノズルから吐出させた後荷重を除き、その直後ノズルの出口を封鎖(たとえば直径2mmφの針金をノズルに挿入して封鎖)し、次いで480gの荷重をかけて、ストップウォッチをスターとさせ、ピストンが5mm上昇する迄の時間(P値)が45秒以上、15分以内。
【0014】
P値は45秒以上、15分以内にあることが重要であり、好ましくは1分以上、15分以内、より好ましくは2分以上、10分以内である。P値が45秒未満でも通常の押出温度では、共押出しコートでえられたEVOH層は良好な膜面のものがえられるが、生産性向上を目的とし高速加工を行うために押出温度を上昇させると、共押出しコートでえられたEVOH層に、EVOHの熱分解に起因する気泡を含んだ膜となりやすく、外観不良となる。一方15分を越えると押出機にゲルなどが付着し、長時間連続安定運定性が劣りやすい。
【0015】
このようなEVOHは、代表的には次のような方法により得られる。すなわち揮発分{EVOHを120℃で24時間乾燥した時の重量減少率(乾燥重量基準)を揮発分とする}が0.3%以下、好適には0.2%以下、より好適には0.15%以下となるまで乾燥することと、酸根70〜2000ppm、好適には70〜1000ppm、より好適には100〜1000ppm、アルカリ金属イオン15〜400ppm、好適には20〜300ppm、より好適には30〜200ppm、アルカリ土類金属イオン10〜300ppm、好適には30〜200ppm、より好適には50〜150ppm含ませることにより得られる。なおアルカリ金属イオンが100ppm以上の場合はアルカリ土類金属イオンを含まなくても良く、アルカリ土類金属イオンが50ppm以上の場合はアルカリ金属イオンを含まなくても良い場合がある。
【0016】
ここで酸根とは、好適にはpka(25℃での酸度指数)3.5以上の酸、たとえば酢酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸、グルタミン酸などの有機酸、ホウ酸などの無機酸から水素原子を除いたものであり、酸、酸無水物または金属塩などの化合物として添加される。また他の酸根としてはリン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの無機酸性物質などのリン酸根が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが例示され、アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどが例示される。該金属イオンは、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、水酸化物、塩化物などの化合物として添加される。
【0017】
炭酸ナトリウムで添加した場合には、ナトリウムイオンのみを含むが、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの金属塩で添加した場合には、酸根と金属イオンの両者を含むので、各々の値を計算する必要がある。
【0018】
また、EVOHはエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよく、また、重合度やけん化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。さらに、エチレン含有量と重合度やけん化度が共に異なっていてもよい。
【0019】
また、EVOHには、本発明を阻害しない範囲で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤などの各種添加剤、ポリアミド、ポリオレフィン、高吸水性樹脂などの各種樹脂を配合してもよい。
【0020】
本発明において、結晶性ポリアミドとしては、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、エチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどのジアミン成分と、2,6−ナフタリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸成分を原料として得られるポリアミドや、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸を原料として得られるポリアミドおよびそれらの共重合体が例示される。これらの内で、ポリアミド 6、ポリアミド66、ポリアミド 6/66、ポリアミド 12、ポリアミド 6/12、ポリアミド MXD6などが好ましく、ポリアミド 6、ポリアミド 6/66がより好ましい。また、温度 250℃,剪断速度 100/秒でのポリアミドの溶融粘度は1,000〜50,000ポイズ、好ましくは1,000〜40,000ポイズ、より好ましくは5,000〜30,000ポイズである。
【0021】
本発明において、非晶性ポリアミドとは、窒素中、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量計(DSC)を用い測定した結晶融解熱量が1cal/gポリマー未満のものをいう。非晶性ポリアミドとしては、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸などの脂肪族または芳香族ジカルボン酸成分と、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4´−ジアミノ−ジシクロヘキシルプロパン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチル−ジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンなどの脂肪族ジアミン成分を原料として得られるポリアミドおよびそれらの共重合体などが例示される。さらにラクタムやイソシアネート系化合物を原料に添加しても良い。これらの内で、テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が20:80〜40:60、好ましくは20:80〜35:65、より好ましくは25:75〜35:65のものをジカルボン酸成分とし、ヘキサメチレンジアミンをジアミン成分としたポリアミドがより好ましい。また、温度 260℃,剪断速度 100/秒でのポリアミドの溶融粘度は1,000〜50,000ポイズ、好ましくは3,000〜40,000ポイズ、より好ましくは4,000〜30,000ポイズである。また結晶性ポリアミドの溶融粘度より非晶性ポリアミドの溶融粘度の方が小さい方が好ましい。
【0022】
本発明に用いられる結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドからなるポリアミド組成物(B)の各成分の配合割合は、結晶性ポリアミドが65〜35重量%、好適には40〜60重量%、さらに好適には40〜55重量%であり、非晶性ポリアミドが35〜65重量%、好適には60〜40重量%、さらに好適には60〜45重量%である。結晶性ポリアミドが35重量%未満では熱水処理時ブロッキングが発生しやすく、一方、65重量%を越えると製膜安定性に劣る。
【0023】
本発明において、ポリアミド組成物(B)のブレンド方法としては、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドをドライブレンドし、そのまま押出機に投入し、共押出しコーティングする方法でも良いし、一旦ドライブレンドした後、または各々の所定量をフィーダーを用い連続的に、単軸または二軸スクリュー押出機(混練部の付いたまたは無い、同方向または異方向)、インテンシブミキサー、連続式インテンシブミキサーなどを用い溶融押出後、冷却下ペレット化して、溶融ブレンド体としたものを共押出しコーティングする方法でも良い。
【0024】
また、ポリアミド組成物(B)には、本発明を阻害しない範囲で、酸化防止剤、色剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、架橋剤、無機充填剤、無機乾燥剤などの各種添加剤、ポリオレフィン、高吸水性樹脂などの各種樹脂を配合してもよい。
【0025】
本発明において、EVOH(A)とポリアミド組成物(B)よりなる溶融多層体の構成は、ポリアミド組成物/EVOH、ポリアミド組成物/EVOH/EVOH、ポリアミド組成物/EVOH/ポリアミド組成物/EVOHなどが挙げらる。溶融多層体でポリアミド組成物を2層以上含む場合、それらポリアミド組成物の組成比は異なっていても良い。また溶融多層体でEVOHを2層以上含む場合、それらEVOHのエチレン含有量は異なっていても良い。
【0026】
本発明において多層溶融体を基材に共押出しコーティングすることは重要である。前記したとおり、特定のポリアミド組成物及びEVOHを共押出しコーティングすることにより、EVOH(A)層、ポリアミド組成物(B)層の厚みを薄くしても、製膜安定性が優れている。なお製膜安定性とは、150m/分という高速共押出しコーティングで得られる多層溶融体の塗膜幅の変動(ネックイン変動)が50mm以内におさまることを意味し、この変動が少ないほど、EVOHおよびポリアミド組成物の収率が向上する。
【0027】
本発明において得られる多層フィルムのポリアミド組成物(B)層の厚み{溶融多層体に(B)層を2層以上含む場合は得られる多層フィルムでのその合計厚み}は1〜50μm、好適には1〜20μm、さらに好適には1〜5μmである。本発明においては(B)層の厚さを薄くすることが可能であるので、その分安価に多層構成フィルムを得ることができる。また本発明において得られる多層フィルムのEVOH(A)層の厚み{溶融多層体に(A)層を2層以上含む場合は得られる多層フィルムでのその合計厚み}は1〜50μm、好適には2〜20μm、さらに好適には2〜10μmである。基材に共押出しコーティングする前、および/または後に、溶融多層体の片面あるいは両面にオゾン処理、コロナ放電処理、電子線照射処理などが施されても良い。また、基材(C)層とEVOH (A)層間の接着力が十分得られない場合には、基材(C)層をアンカーコート剤で処理した後、基材(C)層のアンカーコート処理面にEVOH(A)層が接するように、EVOH(A)とポリアミド組成物(B)とを共押出しコーティングする事が好ましい。なおEVOH(A)とポリアミド組成物(B)とを共押出しフィルムに成形した後、基材とドライラミネートする場合は、後述する比較例2から明らかなように、熱水処理時にデラミが発生しやすい。
【0028】
本発明において、多層溶融体が共押出しコートされる基材(C)としては、エチレンホモポリマーおよびエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリε−カプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、ポリメタキシリレンアジポアミドなどのポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂よりなる無延伸フィルムまたはシート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルム、セロハン、アルミニウム箔、紙、合成紙、レーヨン紙などが挙げられる。さらにこれ等の基材および基材の原料となる熱可塑性樹脂をドライラミネート、共押出ラミネートなどの手法で多層化した、無延伸多層フィルムまたはシート、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、圧延フィルムも使用可能である。基材には金属または金属酸化物が蒸着されていても良いし、印刷が施されていても良い。
【0029】
本発明において、基材(C)層とEVOH(A)層間の接着力が十分得られない場合に、基材(C)に施されるアンカーコート剤としては、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合を1種ないし2種以上を主鎖に含み、かつ水酸基を2個ないし2個以上含む主剤(ポリプロピレングリコールとビスフェノールAとを反応させたポリエーテル、ポリプロピレングリコールとトルイレンジイソシアネートやm−キシリレンジイソシアネートとを反応させたポリエーテルポリウレタン、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、アジピン酸とジエチレングリコール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールとを反応させたポリエステル、イソフタル酸、アジピン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコールとイソホロンジイソシアネートとを反応させたポリエステルポリウレタンなどが例示される)と、多官能イソシアネートの硬化剤(トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとの反応物やポリプロピレングリコール付加グリセリンとm−キシリレンジイソシアネートとの反応物やm−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネートなどが例示される)とからなる、2液硬化型のアンカーコート剤を用いることが耐熱水性の点で望ましい。このようなアンカーコート剤は、東洋モートン(株)、武田薬品工業(株)、大日本インキ化学工業(株)、大日精化工業(株)を初めとする各接着剤メーカーより市販されている。アンカーコート剤の塗布量は固形分として0.05〜4g/m↑2、好ましくは0.05〜1g/m↑2、より好ましくは0.1〜0.5g/m↑2である。
【0030】
本発明において、共押出しコーティングにより得られた多層構成フィルムをそのまま包装材料として用いても良いが、シーラントを積層した後包装材料として用いた方が、シール強度が大きく重量物の包装には適している。基材がOPAやOPETなどの透湿性の良い基材を用いた場合は、シーラントを共押出しコート面または基材面のどちら側に積層しても、熱水処理時の外観変化と、ボイル後のバリアー性早期回復性に問題は無いが、共押出しコート面にシーラントを積層した方が、得られた包材の外観が良好となる場合が多い。OPPやPVDCコートフィルムなどの防湿性の良い基材を用いた場合は、シーラントをどちらの面に積層しても熱水処理時の外観変化に問題ないが、共押出しコート面にシーラントを積層した場合熱水処理後のバリアー性早期回復の面で不利であり、基材面にシーラントを積層する事が、熱水処理後のバリアー性早期回復の面で重要である。基材(C)の透湿性・防湿性の目安は、EVOH(A)層の厚みによっても異なり一概に決定できないが、25g/m↑2・24h(JIS Z 0208 の方法で、40℃、90%RHで測定した値)より大きいか小さいかで決定すると良い。
【0031】
積層されるシーラントとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリルなど特に制限はなく、これらを単独で用いても良いし、2種以上をブレンドして用いても良いし、多層体で用いても良いが、基材より低融点または低軟化点であるものが好ましい。
【0032】
シーラントの積層方法は、基材に該溶融多層体を共押出しコートした後、直ちにシーラントを押出しラミネート(タンデムラミネート)しても良いし(コロナ放電処理および/またはアンカーコート処理を行っても良い)、一旦多層構成フィルムを得た後、シーラントをドライラミネートまたは押出しラミネートしても良い。
【0033】
このようにして得られた多層構成フィルムあるいはシーラントをさらに積層した積層体を、袋、蓋材などに用いた包装材料に、内容物を充填の後熱封緘した包装体は、80℃以上の熱水による15分以上の殺菌工程において熱水ブロッキングや白化などの問題がなく、ガスバリアー性の回復に優れており、水羊羮、プリン、ゼリー、蜜豆などの菓子類、ぜんまい、蕨、沢庵、菜の花などの漬物類、ソーセージ、ハム、蒲鉾などの加工食品、コーンスープ、ミートソース、釜飯、肉じゃが、煮豆などの惣菜類を初め各種食品、医薬品、工業薬品に好適に適用できる。また高温での接着力が良好なので、餅、ウィンナソーセージ、味噌、ラーメンスープなどの自動充填包装工程におけるトラブルが発生しにくい。さらに非晶性ポリアミドを使用したことにより、紫外線遮断性も付与されており、赤蕪、桜海老、ワカメ、カニ足風蒲鉾などの退色を抑制できる。
【0034】
以下実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定を受けるものではない。なお部、%とあるのは、特に断りのない限りいずれも重量基準である。
【0035】
【実施例】
実施例1
両面コロナ放電処理された厚さ20μmのOPP{東京セロファン紙(株)製トーセロ U−2}に、アンカーコート剤{東洋モートン(株)製 AD−503A/CAT10(ポリエステル系)}を固形分として0.2g/m↑2塗布し、溶剤を蒸発させ、エチレン含有量27モル%、ビニルエステル成分のけん化度99.5モル%のEVOH(A)(MI 8g/10分、P値 6分、ナトリウムイオン125ppm、カルシウムイオン0ppm、酢酸根43ppm、燐酸根30ppm含み、揮発分が0.08%)を200℃に溶融させ、結晶性ポリアミドとしてポリアミド 6{宇部興産(株)製 UBEナイロン 1024FD−1}(溶融粘度 10,000ポイズ)50重量%、および非晶性ポリアミドとしてジアミン成分がヘキサメチレンジアミン、多価カルボン酸成分がイソフタル酸とテレフタル酸のモル比が30:70からなる非晶性ポリアミド(溶融粘度10,000ポイズ)50重量%からなるポリアミド組成物(ドライブレンド品)(B)を250℃に溶融させ、(A)の溶融体と(B)の溶融体を、(A)層がOPPのアンカーコート処理面と接触するように150m/分で共押出しコートを行い、OPP/EVOH(4μm)/ポリアミド組成物(2μm)構成の多層構成フィルムを得た。多層構成フィルムを40℃で3日間エージングした。20℃,65%RHでゲルボフレックステスターで1000回の屈曲を与え、多層構成フィルムのピンホール発生の有無を各3回行ったが、いずれのサンプルにもピンホールは発生していなかった。
【0036】
続いてOPP面に、上記のアンカーコート剤を固形分として0.2g/m↑2塗布し、70℃で溶剤を蒸発させた後、シーラントとして低密度ポリエチレン{三井石油化学工業(株)製 ミラソン11}を320℃に溶融し、厚み20μmでOPP面のアンカーコート処理面に押出ラミネートし、最後に低密度ポリエチレン{三井石油化学工業(株)製 ミラソン11}を290℃に溶融し、厚み40μmで押出ラミネートして積層体を得た。該積層体を40℃で3日間エージングした。
【0037】
該積層体で、水100mlを封入した、縦230mm、横150mmの4方袋を作り、この包装体5袋を重ねて、85℃で30分間熱水処理した。どの袋にもデラミ、白化、ブロッキングは見られず、良好な耐熱水性を有していた。また、熱水処理後20℃,65%RHに10時間放置した後の酸素透過量は、2.3ml/m↑2・24h・atm{モダンコントロール社製 OX−TRAN 10/50型を用い20℃,65%RH(袋外部側)〜20℃,100%RH(袋内部側)で測定}と良好であった。
【0038】
比較例1
実施例1において、ポリアミド組成物(ドライブレンド品)(B)を結晶性脂肪族ポリアミドであるポリアミド 6{東レ(株)製 アミランCM 1021XF}(溶融粘度 8,000ポイズ)50重量%、および結晶性部分芳香族ポリアミドであるポリアミド MXD6(脂肪族ジカルボン酸成分:アジピン酸、芳香族ジアミン成分:メタキシリレンジアミン)(溶融粘度 2,000ポイズ)50重量%からなる結晶性ポリアミド組成物に変更し、実施例1の厚みで、EVOH(A)がOPPのアンカーコート処理面と接触するように150m/分で共押出しコートし多層構成フィルムを得ようとしたが、溶融多層体の製膜安定性が劣っており、ネックイン幅変動が発生した。多層構成フィルムを得るには、(A)および(B)の共押出しコート速度を40m/分に下げざるを得ず、非常に生産性が悪くなってしまった。OPP/EVOH(4μm)/ポリアミド組成物(30μm)構成の多層構成フィルムを40℃で3日間エージングした。20℃,65%RHでゲルボフレックステスターで1000回の屈曲を与え、多層構成フィルムのピンホール発生の有無を各3回行ったが、いずれのサンプルにもピンホールが発生しており、耐屈曲性の点で劣っていた。
【0039】
以下は実施例1と同様の操作を行った。85℃で30分間熱水処理で、良好な耐熱水性を有していたが、熱水処理10時間放置した後の酸素透過量は、24ml/m↑2・24h・atmと不良であった。
【0040】
比較例2
結晶性ポリアミドとしてポリアミド 6{宇部興産(株)製 UBEナイロン1024FD−1}(溶融粘度 10,000ポイズ)30重量%、および非晶性ポリアミドとしてジアミン成分がヘキサメチレンジアミン、多価カルボン酸成分がイソフタル酸とテレフタル酸のモル比が30:70からなる非晶性ポリアミド(溶融粘度 7,000ポイズ)70重量%からなるポリアミド組成物を240℃でブレンドペレット化した。エチレン含有量44モル%、ビニルエステル成分のけん化度99.5モル%のEVOH(A)(MI 12g/10分、P値3分 ナトリウムイオン190ppm、カルシウムイオン0ppm、酢酸根190ppm含み、揮発分が0.1%)を220℃に溶融させ、該ポリアミド組成物(B)を250℃に溶融させ、実施例1厚みで、(B)/(A)の2種2層空冷インフレフィルムを丸ダイを用い製膜速度30m/分で得ようとしたが、バブルが安定せず、薄層のフィルムは得られなかった。
【0041】
該EVOH(A)を220℃に溶融させ、該ポリアミド組成物(B)を250℃に溶融させ、接着性低密度ポリエチレン(密度0.920)を180℃に溶融させ、(A)の溶融体、(B)の溶融体、接着性低密度ポリエチレンの溶融体を、丸ダイを用い製膜速度8m/分で(B)(30μm)/(A)(30μm)/接着性低密度ポリエチレン(15μm)構成の3種3層空冷インフレフィルムを得た。
【0042】
両面コロナ放電処理された厚さ20μmのOPP{東京セロファン紙(株)製
トーセロ U−2}に、ドライラミネート用接着剤{武田薬品工業(株)製
タケラック A−968/タケネート A−8}を、固形分として3g/m↑2塗布し、70℃で溶剤を蒸発させた後、前記共押出しフィルムのポリアミド組成物(B)面と張合わせ、40℃で3日間エージングした。20℃,65%RHでゲルボフレックステスターで1000回の屈曲を与え、該フィルムのピンホール発生の有無を各3回行ったが、いずれのサンプルにもピンホールは発生しており、耐屈曲性の点で劣っていた。
【0043】
該積層体で、水100mlを封入した、縦230mm、横150mmの4方袋を作り、この包装体5袋を重ねて、85℃で30分間熱水処理した。どの袋にもブロッキングは見られなかったが、顕著なデラミと白化が発生し耐熱水性の点でも劣っていた。さらに、熱水処理後20℃,65%RHに10時間放置した後の酸素透過量は、4.5ml/m↑2・24h・atmと熱水処理後のバリアー性早期回復の点でも劣っていた。
【0044】
実施例2
両面コロナ放電処理された厚さ15μmのOPA{興人(株)製 ボニール}に、アンカーコート剤として武田薬品工業(株)製 タケラックA−3210/タケネートA−3072(ウレタン系)を固形分として0.2g/m↑2塗布し、溶剤を蒸発させ、エチレン含有量32モル%、ビニルエステル成分のけん化度99.5モル%のEVOH(A)(MI 8g/10分、P値 6分 ナトリウムイオン8ppm、カルシウムイオン66ppm、酢酸根870ppm、リン酸根10ppm含み、揮発分が0.1%)を200℃に溶融させ、結晶性ポリアミドとしてポリアミド 6(UBEナイロン 1024FD−1)60重量%、および非晶性ポリアミドとしてジアミン成分がヘキサメチレンジアミン、多価カルボン酸成分がイソフタル酸とテレフタル酸のモル比が30:70からなる非晶性ポリアミド(溶融粘度 7,000ポイズ)を40重量%からなるポリアミド組成物(ドライブレンド品)(B)を250℃に溶融させ、(A)の溶融体、(B)の溶融体を、(A)がOPAのアンカーコート処理面と接触するように150m/分で共押出しコートを行い、OPA/EVOH(4μm)/ポリアミド組成物(4μm)構成の多層構成フィルムを得た。多層構成フィルムを40℃で3日間エージングした。20℃,65%RHでゲルボフレックステスターで1000回の屈曲を与え、多層構成フィルムのピンホール発生の有無を各3回行ったが、いずれのサンプルにもピンホールは発生していなかった。
【0045】
続いてポリアミド組成物面に、ドライラミネート用接着剤{武田薬品工業(株)製 タケラック A−385/タケネート A−50}を、固形分として3g/m↑2塗布し、70℃で溶剤を蒸発させた後、厚さ60μmの低密度ポリエチレンフィルム{アイセロ化学(株)製 スズロンL S201}を積層して積層体を得た。該積層体を40℃で3日間エージングした。
【0046】
以下は実施例1と同様の操作を行った。85℃で30分間熱水処理で、良好な耐熱水性を有していた。また、熱水処理10時間放置した後の酸素透過量は、3.4ml/m↑2・24h・atmと良好であった。
【0047】
【表1】
Figure 0003583180
【0048】
【表2】
Figure 0003583180
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法は、製膜安定性に優れ、また得られた多層構成フィルムは、熱水処理後のガスバリアー性の回復が早く、耐熱水ブロッキング性に優れ、高温時の基材との接着力に優れている。

Claims (6)

  1. エチレン含有量20〜65モル%、ビニルエステル成分のけん化度90モル%以上のエチレン−ビニルエステル共重合体けん化物(A)層と、結晶性ポリアミド65〜35重量%および非晶性ポリアミド35〜65重量%からなるポリアミド組成物層(B)層の少なくとも2層よりなる溶融多層体を基材(C)層に、(A)層が基材(C)層に接するように共押出しコーティングし、1〜50μmの(A)層厚み、1〜50μmの(B)層厚みを形成することを特徴とする多層構成フィルムの製造方法。
  2. エチレン−ビニルエステル共重合体けん化物(A)が、酸根70〜2000ppmを含有し、かつ(i)アルカリ金属イオン15〜400ppmおよびアルカリ土類金属イオン10〜300ppmを含有する、(ii)アルカリ金属イオン100ppm以上を含有する、または、(iii)アルカリ土類金属イオン50ppm以上を含有する、のいずれかを満足し、揮発分が0.3%以下、P値が、45秒以上、15分以内である請求項1に記載の多層構成フィルムの製造方法。
  3. 基材(C)が、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の多層構成フィルムの製造方法。
  4. 基材(C)の共押出しコーティング面に2液硬化型のアンカーコート剤を塗布してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層構成フィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた多層構成フィルムの少なくとも片面にシーラントを積層した多層構成フィルム。
  6. 基材(C)が、透湿性が25g/m ・24hr(40℃、90%RH)より小さく、基材面にシーラントを積層した請求項5に記載の多層構成フィルム。
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