JP3335002B2 - 熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金 - Google Patents
熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金Info
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、特に耐脱亜鉛腐食性及
び熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金に関する。特に
本発明黄銅合金は、上水道用水栓金具や一般配管用接水
金具のように、製造過程に多くの切削工程が入るため、
材料に被削性が求められ、しかも、飲料水や一般産業排
水に接しても、Ｐｂの溶出が規定以下であることを求め
られる分野に使用して最適であり、また、海水用ポンプ
の軸受のように、腐食環境下で用いられる摺動部材、及
び摺動によって飛散した金属粉中にＰｂが含有している
ことを制限する一般産業用摺動部材に使用して最適であ
る。
び熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金に関する。特に
本発明黄銅合金は、上水道用水栓金具や一般配管用接水
金具のように、製造過程に多くの切削工程が入るため、
材料に被削性が求められ、しかも、飲料水や一般産業排
水に接しても、Ｐｂの溶出が規定以下であることを求め
られる分野に使用して最適であり、また、海水用ポンプ
の軸受のように、腐食環境下で用いられる摺動部材、及
び摺動によって飛散した金属粉中にＰｂが含有している
ことを制限する一般産業用摺動部材に使用して最適であ
る。
【０００２】
【従来の技術】水道用水栓金具や一般配管用接水金具と
しては、黄銅系のＪＩＳ Ｈ３２５０Ｃ３６０４合金や
Ｃ３７７１合金、及び青銅系のＪＩＳ Ｈ５１１１ ＢＣ
６合金が広く用いられている。
しては、黄銅系のＪＩＳ Ｈ３２５０Ｃ３６０４合金や
Ｃ３７７１合金、及び青銅系のＪＩＳ Ｈ５１１１ ＢＣ
６合金が広く用いられている。
【０００３】また、ＪＩＳ Ｈ３２５０ Ｃ４６４１合金
のように、耐脱亜鉛腐食特性を改善したＣｕ−Ｚｎ−Ｓ
ｎ−Ｐｂ系合金も存在している。また、Ｐｂを含まない
快削黄銅として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｂｉ系合金がある（特開
平５−２５５７７８号合金)。さらに、Ｐｂを含まず、
Ｓｎを含む水栓金具用合金として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−
Ｂｉ系合金がある（特公平５−６３５３６号合金)。ま
た、通常の黄銅並みの強度と熱間加工性が期待でき、且
つＰｂを含まない黄銅として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−Ｂｉ
−Ｐ−Ｉｎ系合金が知られている（ＵＳＰ Ｎｏ．５，
１６７，７２６合金)。
のように、耐脱亜鉛腐食特性を改善したＣｕ−Ｚｎ−Ｓ
ｎ−Ｐｂ系合金も存在している。また、Ｐｂを含まない
快削黄銅として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｂｉ系合金がある（特開
平５−２５５７７８号合金)。さらに、Ｐｂを含まず、
Ｓｎを含む水栓金具用合金として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−
Ｂｉ系合金がある（特公平５−６３５３６号合金)。ま
た、通常の黄銅並みの強度と熱間加工性が期待でき、且
つＰｂを含まない黄銅として、Ｃｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−Ｂｉ
−Ｐ−Ｉｎ系合金が知られている（ＵＳＰ Ｎｏ．５，
１６７，７２６合金)。
【０００４】一方、摺動用銅合金としては、通常、青
銅，黄銅，アルミ青銅が知られている。そのうち、黄銅
が最も熱間加工し易く安価なので、広く用いられてい
る。また、Ｂｉ添加の無鉛摺動部材として、Ｃｕ−Ｚｎ
−Ｂｉ−Ｔｉ−Ｐ−Ｓｎ−黒鉛系合金がある（特公昭６
３−１６４５６号合金)。
銅，黄銅，アルミ青銅が知られている。そのうち、黄銅
が最も熱間加工し易く安価なので、広く用いられてい
る。また、Ｂｉ添加の無鉛摺動部材として、Ｃｕ−Ｚｎ
−Ｂｉ−Ｔｉ−Ｐ−Ｓｎ−黒鉛系合金がある（特公昭６
３−１６４５６号合金)。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】黄銅系のＪＩＳ Ｈ３
２５０ Ｃ３６０４合金やＣ３７７１合金、及び青銅系
のＪＩＳ Ｈ５１１１ ＢＣ６合金の両者は、被削性向上
のためＰｂを添加しているので、その被削性は製造工程
での切削工程の要求をほぼ満足させている。しかし、両
者共にＰｂを多量に含有しているので、溶解、鋳造溶接
等の高温作業時のＰｂを含む金属蒸気や、切削・研削時
に発生するＰｂを含む粉塵が製造時に人体や環境に悪影
響を与えている。また、使用時にも接水部からＰｂが溶
出するため、飲料水や排水を通して、人体や環境を害し
ている。さらに、黄銅系の上記合金を接水部に使用する
と、脱亜鉛腐食が生じ、機能を果すことができなくなる
場合がしばしばあった。
２５０ Ｃ３６０４合金やＣ３７７１合金、及び青銅系
のＪＩＳ Ｈ５１１１ ＢＣ６合金の両者は、被削性向上
のためＰｂを添加しているので、その被削性は製造工程
での切削工程の要求をほぼ満足させている。しかし、両
者共にＰｂを多量に含有しているので、溶解、鋳造溶接
等の高温作業時のＰｂを含む金属蒸気や、切削・研削時
に発生するＰｂを含む粉塵が製造時に人体や環境に悪影
響を与えている。また、使用時にも接水部からＰｂが溶
出するため、飲料水や排水を通して、人体や環境を害し
ている。さらに、黄銅系の上記合金を接水部に使用する
と、脱亜鉛腐食が生じ、機能を果すことができなくなる
場合がしばしばあった。
【０００６】ＪＩＳ Ｈ３２５０ Ｃ４６４１合金もやは
り、Ｐｂをかなり含有しているので、上記したと同様の
鉛の害を防ぐことはできない。
り、Ｐｂをかなり含有しているので、上記したと同様の
鉛の害を防ぐことはできない。
【０００７】特開平５−２５５７７８号合金は、Ｐｂの
害も無く、被削性も良好であるが、脱亜鉛腐食を生じ
る。また、添加元素としてミッシュメタルを含んでいる
ので、高価になる欠点を有する。
害も無く、被削性も良好であるが、脱亜鉛腐食を生じ
る。また、添加元素としてミッシュメタルを含んでいる
ので、高価になる欠点を有する。
【０００８】特公平５−６３５３６号合金の成分範囲
は、重量％で、Ｃｕ＝Ｂａl，Ｚｎ＝５〜１５％，Ｓｎ
＝１〜１２％，Ｂｉ＝１.５〜７％の合金であり、Ｚｎ
含有量が少ないので強度も小さく、価格が高く、熱間加
工性も悪いので、用途が限定されるという欠点がある。
は、重量％で、Ｃｕ＝Ｂａl，Ｚｎ＝５〜１５％，Ｓｎ
＝１〜１２％，Ｂｉ＝１.５〜７％の合金であり、Ｚｎ
含有量が少ないので強度も小さく、価格が高く、熱間加
工性も悪いので、用途が限定されるという欠点がある。
【０００９】ＵＳＰ Ｎｏ．５，１６７，７２６合金
は、高価なＩｎを含むため、高価になる。また、Ｉｎを
含まないＣｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−Ｂｉ−Ｐ系合金もあるが、
添加成分中のＰは、溶解時、原材料中の不純物としての
Ｆｅと結合し、ハードスポットを生じ、被削性を損ねた
り、製品としての外観不良，機能障害を発生する場合が
ある。このため、使用する原材料を吟味しなければなら
ず、コスト的に不利となる欠点を有している。
は、高価なＩｎを含むため、高価になる。また、Ｉｎを
含まないＣｕ−Ｚｎ−Ｓｎ−Ｂｉ−Ｐ系合金もあるが、
添加成分中のＰは、溶解時、原材料中の不純物としての
Ｆｅと結合し、ハードスポットを生じ、被削性を損ねた
り、製品としての外観不良，機能障害を発生する場合が
ある。このため、使用する原材料を吟味しなければなら
ず、コスト的に不利となる欠点を有している。
【００１０】一方、摺動用銅合金としての黄銅は、その
ままでは耐焼付性や被削性が不充分なため、０.５〜３
％程度のＰｂを添加し、特性の向上を計っている。この
ため、やはり上記したような鉛の害を防止することはで
きない。
ままでは耐焼付性や被削性が不充分なため、０.５〜３
％程度のＰｂを添加し、特性の向上を計っている。この
ため、やはり上記したような鉛の害を防止することはで
きない。
【００１１】また、特公昭６３−１６４５６号合金は、
摩耗特性向上のため、黄銅系材料に黒鉛を添加している
が、黒鉛の均一分布を計るため、金型による加圧凝固法
を行う必要があるので、製法と成品形状に制約を受ける
と共に、金型等の製作のため、コストも高くなる欠点を
有している。
摩耗特性向上のため、黄銅系材料に黒鉛を添加している
が、黒鉛の均一分布を計るため、金型による加圧凝固法
を行う必要があるので、製法と成品形状に制約を受ける
と共に、金型等の製作のため、コストも高くなる欠点を
有している。
【００１２】上記したように、従来例の各合金は、被削
性，耐脱亜鉛腐食及び人体や環境への鉛公害防止、並び
に、強度が不足していたり、価格が高かったり、或いは
熱間加工性が悪かったり等、全ての点において、満足で
きるものではなかった。
性，耐脱亜鉛腐食及び人体や環境への鉛公害防止、並び
に、強度が不足していたり、価格が高かったり、或いは
熱間加工性が悪かったり等、全ての点において、満足で
きるものではなかった。
【００１３】本発明は、かかる実情に鑑み成されたもの
で、被削性が向上し、耐脱亜鉛腐食特性と熱間加工性に
優れ、且つ鉛による人体や環境への公害を実質的に無く
することができると共に、安価で強度的にも優れた無鉛
快削黄銅合金を提供することを目的としている。さらに
本発明は、上記各特性に加えて摩耗特性の向上をもはか
り、摺動部材としての利用も可能とした無鉛快削黄銅合
金を提供することを目的としている。
で、被削性が向上し、耐脱亜鉛腐食特性と熱間加工性に
優れ、且つ鉛による人体や環境への公害を実質的に無く
することができると共に、安価で強度的にも優れた無鉛
快削黄銅合金を提供することを目的としている。さらに
本発明は、上記各特性に加えて摩耗特性の向上をもはか
り、摺動部材としての利用も可能とした無鉛快削黄銅合
金を提供することを目的としている。
【００１４】
【課題を解決するための手段】本発明による耐脱亜鉛腐
食性及び熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金は、重量
％で、Ｚｎ：２２〜４５％、Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓ
ｎ：０.３〜３％、残部がＣｕ及び不純物より成ること
を特徴とする。また、より好ましくは、重量％で、Ｚ
ｎ：２２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜
２％、残部がＣｕ及び不純物より成ることを特徴とす
る。
食性及び熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金は、重量
％で、Ｚｎ：２２〜４５％、Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓ
ｎ：０.３〜３％、残部がＣｕ及び不純物より成ること
を特徴とする。また、より好ましくは、重量％で、Ｚ
ｎ：２２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜
２％、残部がＣｕ及び不純物より成ることを特徴とす
る。
【００１５】一方、上記合金特性に更に耐摩耗特性を向
上させた無鉛快削黄銅合金は、 (１）重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４５％、Ｂｉ：０.
２〜４％、Ｓｎ：０.３〜３％を含有し、更に、(ｂ）Ｎ
ｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、Ａl：６％以下、Ｍ
ｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から選ばれる
少なくとも１種の元素を含有し、残部がＣｕ及び不純物
よりなる成ることを特徴とする。
上させた無鉛快削黄銅合金は、 (１）重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４５％、Ｂｉ：０.
２〜４％、Ｓｎ：０.３〜３％を含有し、更に、(ｂ）Ｎ
ｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、Ａl：６％以下、Ｍ
ｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から選ばれる
少なくとも１種の元素を含有し、残部がＣｕ及び不純物
よりなる成ることを特徴とする。
【００１６】（２）また、重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２
〜４５％、Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓｎ：０．３〜３％を
含有し、更に（ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、
Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下より
なる群から選ばれる少なくとも１種の元素と、(ｃ）Ｆ
ｅ：３％以下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以下、Ｍ
ｏ：１％以下、Ｃｒ：１％以下、Ｚｒ：２％以下、Ｎ
ｂ：１％以下よりなる群から選ばれる少なくとも１種の
元素とを含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなることを
特徴とする。
〜４５％、Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓｎ：０．３〜３％を
含有し、更に（ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、
Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下より
なる群から選ばれる少なくとも１種の元素と、(ｃ）Ｆ
ｅ：３％以下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以下、Ｍ
ｏ：１％以下、Ｃｒ：１％以下、Ｚｒ：２％以下、Ｎ
ｂ：１％以下よりなる群から選ばれる少なくとも１種の
元素とを含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなることを
特徴とする。
【００１７】（３）また、より好ましくは、重量％で、
(ａ）Ｚｎ：２２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：
０.５〜２％を含有し、更に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓ
ｉ：４％以下、Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓ
ｂ：１％以下よりなる群から選ばれる少なくとも１種の
元素を含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなることを特
徴とする。
(ａ）Ｚｎ：２２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：
０.５〜２％を含有し、更に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓ
ｉ：４％以下、Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓ
ｂ：１％以下よりなる群から選ばれる少なくとも１種の
元素を含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなることを特
徴とする。
【００１８】（４）または、重量％で、(ａ）Ｚｎ：２
２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜２％を
含有し、更に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：４％以
下、Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下
よりなる群から選ばれる少なくとも１種の元素と、
(ｃ）Ｆｅ：３％以下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以
下、Ｍｏ：２％以下、Ｃｒ：２％以下、Ｚｒ：２％以
下、Ｎｂ：２％以下よりなる群から選ばれる少なくとも
１種の元素とを含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなる
ことを特徴とする。
２〜４２％、Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜２％を
含有し、更に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：４％以
下、Ａl：６％以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下
よりなる群から選ばれる少なくとも１種の元素と、
(ｃ）Ｆｅ：３％以下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以
下、Ｍｏ：２％以下、Ｃｒ：２％以下、Ｚｒ：２％以
下、Ｎｂ：２％以下よりなる群から選ばれる少なくとも
１種の元素とを含有し、残部がＣｕ及び不純物よりなる
ことを特徴とする。
【００１９】次に、本発明合金において、上記のように
化学成分及びその添加量を特定した理由を説明する。
化学成分及びその添加量を特定した理由を説明する。
【００２０】（１）Ｚｎ Ｚｎはこの合金のマトリックスを強化するので、最低２
２％必要である。しかし４５％を超えると脆弱なγ相が
多量に析出するので、４５％以下にする必要がある。中
でも、２２〜４２％の範囲が熱間加工性も良く、強度も
高く好ましい。
２％必要である。しかし４５％を超えると脆弱なγ相が
多量に析出するので、４５％以下にする必要がある。中
でも、２２〜４２％の範囲が熱間加工性も良く、強度も
高く好ましい。
【００２１】（２）Ｓｎ Ｓｎは黄銅材料の耐脱亜鉛腐食特性を改善するので、
０.３％以上必要である。しかし３％を超えると飽和
し、熱間加工性を害するので、０.３〜３％にする。中
でも、０.５〜２％の範囲が好ましい。
０.３％以上必要である。しかし３％を超えると飽和
し、熱間加工性を害するので、０.３〜３％にする。中
でも、０.５〜２％の範囲が好ましい。
【００２２】（３）Ｂｉ Ｂｉの添加は、０.２％以上で被削性と耐焼付性を向上
させるが、多過ぎると靱性が低下するので４％以下とす
る。好ましくは０.５〜２％とする。
させるが、多過ぎると靱性が低下するので４％以下とす
る。好ましくは０.５〜２％とする。
【００２３】（４）Ｎｉ，Ｓｉ，Ａl，Ｍｎ 群、及び
Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｚｒ，Ｎｂ 群 Ｎｉ，Ｓｉ，Ａl，Ｍｎの添加は、マトリックスを強化
すると共に、Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｚｒ，Ｎ
ｂ等と結びついて、硬い金属間化合物を生成し、耐摩耗
性、耐焼付性を向上させる。添加量が所定量より多過ぎ
るとハードスポットを生成し、被削性や摩耗特性を損な
う。
Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｚｒ，Ｎｂ 群 Ｎｉ，Ｓｉ，Ａl，Ｍｎの添加は、マトリックスを強化
すると共に、Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｚｒ，Ｎ
ｂ等と結びついて、硬い金属間化合物を生成し、耐摩耗
性、耐焼付性を向上させる。添加量が所定量より多過ぎ
るとハードスポットを生成し、被削性や摩耗特性を損な
う。
【００２４】（５）Ｓｂ ＳｂはＢｉと共に被削性と耐焼付性を向上させ、且つ耐
摩耗性を向上させるが、１％を超えると靱性を損なう。
摩耗性を向上させるが、１％を超えると靱性を損なう。
【００２５】なお、上記各合金の製造方法は、特に限定
されない。例えば、鋳造材でも、熱間展伸材，冷間展伸
材その他必要な熱処理，塑性加工，切削加工等を加えた
ものであっても、全て含まれるものである。
されない。例えば、鋳造材でも、熱間展伸材，冷間展伸
材その他必要な熱処理，塑性加工，切削加工等を加えた
ものであっても、全て含まれるものである。
【００２６】Ｐｂは、不純物として０.４重量％を超え
ない範囲で許容される。この程度のＰｂの存在では、Ｐ
ｂを含む粉塵による公害問題を生じることはない。ま
た、本発明合金が飲料水に使用される場合であっても、
Ｐｂのこの程度の量は、飲料水や排水中に溶出して、人
体や環境に悪影響を与えるということも決してない。
ない範囲で許容される。この程度のＰｂの存在では、Ｐ
ｂを含む粉塵による公害問題を生じることはない。ま
た、本発明合金が飲料水に使用される場合であっても、
Ｐｂのこの程度の量は、飲料水や排水中に溶出して、人
体や環境に悪影響を与えるということも決してない。
【００２７】
【作 用】（１）鉛を添加して被削性を改良していた従
来の快削黄銅材料に比べ、Ｐｂを実質上無害な０.４％
以下に抑制したので、製造時や使用時の鉛の人体及び環
境への悪影響を実質上無くすることができる。 （２）被削性向上のため、人体や環境に実質上無害な範
囲のＢｉを添加することで、鉛添加の快削銅合金と同程
度の被削性が確保されている。 （３）Ｓｎを所定量添加することで、脱亜鉛腐食が防止
されている。 （４）Ｚｎ量を２２〜４５％含有する黄銅合金をベース
としているので、熱間加工性にも優れ、且つ、強度も大
きく、安価に提供できる。
来の快削黄銅材料に比べ、Ｐｂを実質上無害な０.４％
以下に抑制したので、製造時や使用時の鉛の人体及び環
境への悪影響を実質上無くすることができる。 （２）被削性向上のため、人体や環境に実質上無害な範
囲のＢｉを添加することで、鉛添加の快削銅合金と同程
度の被削性が確保されている。 （３）Ｓｎを所定量添加することで、脱亜鉛腐食が防止
されている。 （４）Ｚｎ量を２２〜４５％含有する黄銅合金をベース
としているので、熱間加工性にも優れ、且つ、強度も大
きく、安価に提供できる。
【００２８】上記した耐脱亜鉛腐食性と熱間加工性とに
優れた無鉛快削黄銅合金に、Ｎｉ，Ｓｉ，Ａl，Ｍｎ，
Ｓｂ，Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｎｂ等の金属元
素のうち１種以上を添加することで、上記（１),（２),
（３）,（４）で述べた作用・効果の上に、摺動部材と
して必要な摩耗特性を付与し、腐食環境下でも使用でき
る被削性に優れた摺動部材が完成されている。
優れた無鉛快削黄銅合金に、Ｎｉ，Ｓｉ，Ａl，Ｍｎ，
Ｓｂ，Ｆｅ，Ｃｏ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｒ，Ｎｂ等の金属元
素のうち１種以上を添加することで、上記（１),（２),
（３）,（４）で述べた作用・効果の上に、摺動部材と
して必要な摩耗特性を付与し、腐食環境下でも使用でき
る被削性に優れた摺動部材が完成されている。
【００２９】
【実施例】（１）供試材 本発明実施例材料を表１に示し、比較例（従来例合金を
含む）材料を表２に示した。この表１及び表２に示した
Ｎｏ.１〜２９の成分からなる合金を高周波誘導炉にて
溶製し、φ２０５×３００Ｌ（単位は全てmm）の押出用
ビレットに金型鋳造した。それを６８０〜７８０℃で、
φ５３×３０００Ｌに熱間押出して、本発明実施例供試
材及び比較例供試材とした。なお、熱間押出で割れの発
生したＮｏ.１５，１６，２４については、再度溶製
し、ＪＩＳ Ｈ ５１１３ Ｅ号供試材に金型鋳造し、そ
れを供試材とした。
含む）材料を表２に示した。この表１及び表２に示した
Ｎｏ.１〜２９の成分からなる合金を高周波誘導炉にて
溶製し、φ２０５×３００Ｌ（単位は全てmm）の押出用
ビレットに金型鋳造した。それを６８０〜７８０℃で、
φ５３×３０００Ｌに熱間押出して、本発明実施例供試
材及び比較例供試材とした。なお、熱間押出で割れの発
生したＮｏ.１５，１６，２４については、再度溶製
し、ＪＩＳ Ｈ ５１１３ Ｅ号供試材に金型鋳造し、そ
れを供試材とした。
【表１】
【表２】
【００３０】（２）引張試験，硬さ試験 各供試材をＪＩＳ Ｚ ２２０１ ４号 引張試験片（硬度
片付）に機械加工し、試験を行った。その結果を表３に
示す。
片付）に機械加工し、試験を行った。その結果を表３に
示す。
【表３】
【００３１】（３）脱亜鉛腐食試験 各供試材をφ２０×１０Ｌに機械加工し、日本伸銅協会
技術標準「黄銅棒の脱亜鉛腐食試験方法」（ＪＢＭＡ−
Ｔ−３０３−１９８８）に従って試験し、脱亜鉛層の深
さを測定し、下記のように評価し、結果を表３に示し
た。 ・ 脱亜鉛層の深さ…１０μｍ 未満 ◎ ・ 〃 …１０以上〜１００μｍ未満 ○ ・ 〃 …１００μｍ以上 ×
技術標準「黄銅棒の脱亜鉛腐食試験方法」（ＪＢＭＡ−
Ｔ−３０３−１９８８）に従って試験し、脱亜鉛層の深
さを測定し、下記のように評価し、結果を表３に示し
た。 ・ 脱亜鉛層の深さ…１０μｍ 未満 ◎ ・ 〃 …１０以上〜１００μｍ未満 ○ ・ 〃 …１００μｍ以上 ×
【００３２】（４）溶出試験 各供試材をφ２０×１５０Ｌに機械加工し、社団法人日
本水道協会の定める「給水装置に係る器具等関係規定・
規則および審査基準（昭和５８年７月改正)」に従って
試験し、鉛の溶出量を測定し、溶出限度基準値の０.０
２mg／l以下を合格とし、０.０２mg／lを超えるものを
不合格とした。表３に合格を○，不合格を×で示した。
本水道協会の定める「給水装置に係る器具等関係規定・
規則および審査基準（昭和５８年７月改正)」に従って
試験し、鉛の溶出量を測定し、溶出限度基準値の０.０
２mg／l以下を合格とし、０.０２mg／lを超えるものを
不合格とした。表３に合格を○，不合格を×で示した。
【００３３】（５）切削試験 各供試材をφ２０×１５０Ｌに機械加工し、表４の条件
で外径部を旋削加工し切削試験を行なった。被削性の評
価は、加工時に発生した切削粉の形状から図１の様に評
価した。なお、バイト形状は図２に示した形状による。
で外径部を旋削加工し切削試験を行なった。被削性の評
価は、加工時に発生した切削粉の形状から図１の様に評
価した。なお、バイト形状は図２に示した形状による。
【表４】
【００３４】（６）摩耗試験 各供試材を図３に示す試験片（テストピン）の形状に機
械加工し、図４のＶブロックを相手材として、図５及び
以下の条件でファビリー摩耗試験を行った。摩耗量とフ
ァビリー値から表５に示す基準で耐摩耗性と耐焼付性を
評価した。
械加工し、図４のＶブロックを相手材として、図５及び
以下の条件でファビリー摩耗試験を行った。摩耗量とフ
ァビリー値から表５に示す基準で耐摩耗性と耐焼付性を
評価した。
【表５】
【００３５】試験条件 回転数 ： ３００ rpm 滑り速度 ： ０.１０２ m/sec 試験片寸法 ： φ６.５×４０ 潤滑油 ： タービン油 ＃３２ 相手材材質 ： ＳＣＭ ４１５(HCQT) ＨＲＣ＝６０ 表面粗さ ： 試験片 − ２〜３Ｓ，相手材 − ２〜３Ｓ
【００３６】試験方法 イ）耐摩耗性評価試験 荷重 ３００Kgf で１０分間試験して、試験前と試験後
の重量を測定し密度から摩耗減量（mm3）を算出し評価
する。摩耗減量の小さい方が耐摩耗性が良好である。 ロ）耐焼付性評価試験 初期荷重 ２００Kgf から毎秒３８Kgf で荷重を増加さ
せ、焼付に至るまで試験し、トルクと荷重を記録する。
荷重を Ｐ（Kgf)、トルクを Ｔ（Kgf-cm)，時間を ｔ
（sec)，焼付迄の時間をｔ１（sec）とすると、耐焼付
性の評価値であるファビリー値 Ｆ（Kgf・m）は次式で
求められる。Ｆ値の大きい方が耐焼付性が良い。
の重量を測定し密度から摩耗減量（mm3）を算出し評価
する。摩耗減量の小さい方が耐摩耗性が良好である。 ロ）耐焼付性評価試験 初期荷重 ２００Kgf から毎秒３８Kgf で荷重を増加さ
せ、焼付に至るまで試験し、トルクと荷重を記録する。
荷重を Ｐ（Kgf)、トルクを Ｔ（Kgf-cm)，時間を ｔ
（sec)，焼付迄の時間をｔ１（sec）とすると、耐焼付
性の評価値であるファビリー値 Ｆ（Kgf・m）は次式で
求められる。Ｆ値の大きい方が耐焼付性が良い。
【数１】
【００３７】
【発明の効果】人体及び環境に対する鉛害防止という本
発明合金の主旨は、実質上達成された。従来合金の中で
も、Ｐｂを含有していないＢｉ添加の快削銅合金では、
確かにＰｂの害は防止できるが、これ等は熱間押出がで
きなかったり、脱亜鉛腐食を起こしたりするため、製造
法や用途の限定を受ける。また、一部特殊な元素を添加
しているものもあるが、これは添加元素が高価なため、
用途が限定される。これに対し、本発明合金は、熱間押
出も可能で、脱亜鉛腐食も起こさなく、且つ安価で強度
的にも優れた無鉛快削銅合金なので、鉛公害もなんら心
配しなくて良いものである。
発明合金の主旨は、実質上達成された。従来合金の中で
も、Ｐｂを含有していないＢｉ添加の快削銅合金では、
確かにＰｂの害は防止できるが、これ等は熱間押出がで
きなかったり、脱亜鉛腐食を起こしたりするため、製造
法や用途の限定を受ける。また、一部特殊な元素を添加
しているものもあるが、これは添加元素が高価なため、
用途が限定される。これに対し、本発明合金は、熱間押
出も可能で、脱亜鉛腐食も起こさなく、且つ安価で強度
的にも優れた無鉛快削銅合金なので、鉛公害もなんら心
配しなくて良いものである。
【００３８】本発明ではこれ等の特性に加えて、Ｎｉ，
Ａl，Ｍｎ，Ｆｅ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｏ，Ｃｒ，Ｓｉ，Ｎ
ｂ等の汎用金属元素を添加することで、摩耗特性の向上
を計り、摺動部材への利用を可能とし、従来の摺動部材
では使用できなかった海水等の腐食環境下での使用がで
きるようになったものである。
Ａl，Ｍｎ，Ｆｅ，Ｔｉ，Ｍｏ，Ｃｏ，Ｃｒ，Ｓｉ，Ｎ
ｂ等の汎用金属元素を添加することで、摩耗特性の向上
を計り、摺動部材への利用を可能とし、従来の摺動部材
では使用できなかった海水等の腐食環境下での使用がで
きるようになったものである。
【図１】切削試験における被削性の評価基準を説明した
図。
図。
【図２】切削試験に使用されるバイトの形状を説明した
図。
図。
【図３】摩耗試験に使用される試験片の形状を説明した
図。
図。
【図４】摩耗試験に使用される相手材の形状を説明した
図。
図。
【図５】ファビリー摩耗試験における試験方法を説明し
た図。
た図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 一之 富山県中新川郡立山町西芦原新１番地の １ 中越合金鋳工株式会社内 審査官 小柳 健悟 (56)参考文献 特開 昭61−133351（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−255778（ＪＰ，Ａ) 特公 平５−63536（ＪＰ，Ｂ２) 特公 昭63−16456（ＪＰ，Ｂ１) 特許27263（ＪＰ，Ｃ２) 国際公開93／24670（ＷＯ，Ａ１) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C22C 9/04
Claims (7)
- 【請求項１】 重量％で、Ｚｎ：２２〜４５％、Ｂｉ：
０.２〜４％、Ｓｎ：０.３〜３％、残部がＣｕ及び不純
物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び熱間加工性に優れた無鉛
快削黄銅合金。 - 【請求項２】 重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４５％、
Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓｎ：０.３〜３％を含有し、更
に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、Ａl：６％
以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から
選ばれる少なくとも１種の元素を含有し、残部がＣｕ及
び不純物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び熱間加工性に優れ
且つ耐摩耗特性に優れた無鉛快削黄銅合金。 - 【請求項３】 重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４５％、
Ｂｉ：０.２〜４％、Ｓｎ：０.３〜３％を含有し、更に
（ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：３％以下、Ａl：６％以
下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から選
ばれる少なくとも１種の元素と、(ｃ）Ｆｅ：３％以
下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以下、Ｍｏ：１％以
下、Ｃｒ：１％以下、Ｚｒ：２％以下、Ｎｂ：１％以下
よりなる群から選ばれる少なくとも１種の元素とを含有
し、残部がＣｕ及び不純物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び
熱間加工性に優れ且つ耐摩耗特性に優れた無鉛快削黄銅
合金。 - 【請求項４】 重量％で、Ｚｎ：２２〜４２％、Ｂｉ：
０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜２％、残部がＣｕ及び不純
物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び熱間加工性に優れた無鉛
快削黄銅合金。 - 【請求項５】 重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４２％、
Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜２％を含有し、更
に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：４％以下、Ａl：６％
以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から
選ばれる少なくとも１種の元素を含有し、残部がＣｕ及
び不純物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び熱間加工性に優れ
且つ耐摩耗特性に優れた無鉛快削黄銅合金。 - 【請求項６】 重量％で、(ａ）Ｚｎ：２２〜４２％、
Ｂｉ：０.５〜２％、Ｓｎ：０.５〜２％を含有し、更
に、(ｂ）Ｎｉ：４％以下、Ｓｉ：４％以下、Ａl：６％
以下、Ｍｎ：５％以下、Ｓｂ：１％以下よりなる群から
選ばれる少なくとも１種の元素と、(ｃ）Ｆｅ：３％以
下、Ｃｏ：３％以下、Ｔｉ：３％以下、Ｍｏ：２％以
下、Ｃｒ：２％以下、Ｚｒ：２％以下、Ｎｂ：２％以下
よりなる群から選ばれる少なくとも１種の元素とを含有
し、残部がＣｕ及び不純物よりなる耐脱亜鉛腐食性及び
熱間加工性に優れ且つ耐摩耗特性に優れた無鉛快削黄銅
合金。 - 【請求項７】 Ｐｂ含有量が、０.４重量％以下である
ことを特徴とする請求項１乃至６のいずれか１項に記載
の無鉛快削黄銅合金。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP12321394A JP3335002B2 (ja) | 1994-05-12 | 1994-05-12 | 熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金 |
Applications Claiming Priority (1)
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|---|---|---|---|
| JP12321394A JP3335002B2 (ja) | 1994-05-12 | 1994-05-12 | 熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07310133A JPH07310133A (ja) | 1995-11-28 |
| JP3335002B2 true JP3335002B2 (ja) | 2002-10-15 |
Family
ID=14855005
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP12321394A Expired - Lifetime JP3335002B2 (ja) | 1994-05-12 | 1994-05-12 | 熱間加工性に優れた無鉛快削黄銅合金 |
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| US8506730B2 (en) | 1998-10-09 | 2013-08-13 | Mitsubishi Shindoh Co., Ltd. | Copper/zinc alloys having low levels of lead and good machinability |
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| JP2001226724A (ja) * | 2000-02-09 | 2001-08-21 | Fujii Seisakusho:Kk | 無鉛快削りん青銅からなる棒材又は線材の製造方法 |
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| WO2004061141A1 (ja) | 2002-12-27 | 2004-07-22 | Sumitomo Light Metal Industries, Ltd. | 金属材料およびその製造方法 |
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-
1994
- 1994-05-12 JP JP12321394A patent/JP3335002B2/ja not_active Expired - Lifetime
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