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JP2021150152A - 全固体電池 - Google Patents

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JP2021150152A JP2020048318A JP2020048318A JP2021150152A JP 2021150152 A JP2021150152 A JP 2021150152A JP 2020048318 A JP2020048318 A JP 2020048318A JP 2020048318 A JP2020048318 A JP 2020048318A JP 2021150152 A JP2021150152 A JP 2021150152A
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圭太 ▲高▼橋
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真大 林
Masahiro Hayashi
真大 林
慎吾 太田
Shingo Ota
慎吾 太田
真祈 渡辺
Masaki Watanabe
真祈 渡辺
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Denso Corp
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Abstract

【課題】ガーネット型の固体電解質を用いて構成されて、良好なリチウムイオン伝導性を発現し、電池性能及び生産性を向上可能な全固体電池を提供する。【解決手段】リチウムイオン伝導性を有するセパレータ層11を挟んで一対の電極層10が配置される全固体電池1は、ガーネット型の固体電解質粒子20を基本構成粒子とする固体電解質体2を基本骨格として備える。固体電解質体2は、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと、一対の電極層10のうちの少なくとも一方の骨格となる多孔体2Bとを有し、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1と、多孔体2Bの平均粒径Pd2とは、Pd2>Pd1の関係にある。【選択図】図1

Description

本発明は、イオン伝導性の固体電解質を用いた全固体電池に関する。
全固体電池は、正極層と負極層とをセパレータ層を挟んで一体化した積層体構造を有する。セパレータ層は、正極層と負極層との間をイオン伝導可能に区画するもので、例えば、リチウムイオン伝導性の複合酸化物やリン酸化合物からなる固体電解質を用いて構成される。このような全固体電池では、正極層又は負極層とセパレータ層とが固体同士の接合となるために、各層の積層界面において抵抗が大きくなりやすい。そこで、層間における界面抵抗を低減するために、正極層及び負極層が固体電解質を含む構成としたものがある。
特許文献1には、固体電解質を含有するセラミックスからなる板状の緻密体と、これと同一又は異なる固体電解質を含有するセラミックスからなる多孔層とを焼成一体化した固体電解質構造体が開示されている。固体電解質構造体は、例えば、板状の第1の成形体を焼成して緻密体とした後、その一方又は両方の表面に、多孔層となるセラミックス材料を塗工して第2の成形体としたものを、緻密体の焼成温度(例えば、1150℃)よりも低い温度(例えば、1100℃)で追焼成してなる。
特許文献1において、緻密体及び多孔層は、Li(リチウム)とTi(チタン)を含むペロブスカイト型のチタン酸化物(例えば、LiLaTiO3;0<x、y<1)や、ナシコン型のリン酸化合物(例えば、Li1+xAl(Ti,Ge)2-x(PO4)O3;0<x<1)からなる固体電解質にて構成される。緻密体と焼成一体化した多孔層には、さらに、正極又は負極となる活物質前駆体が充填され、その後、本焼成を行うことにより(例えば、800℃)、電極が形成される。このようにすると、追焼成の焼成温度を高くして、多孔層の構成粒子間に良好な接続部分(ネッキング)を形成すると共に、多孔層と緻密体との接続界面にも良好なネッキングを形成可能となるとされている。
国際公開第2008/059987号公報
近年、酸化物系の固体電解質として、ガーネット型の結晶構造を有するリチウムイオン伝導性固体電解質が着目されている。ガーネット型の固体電解質は、例えば、La(ランタン)とZr(ジルコニウム)を含むリチウムランタンジルコニウム系複合酸化物(Li7La3Zr212)を基本組成とし、良好なリチウムイオン伝導性を示すと共に、負極材として有用なリチウム金属に対して電気化学的に安定であることから、全固体電池への適用が期待されている。
そこで、ガーネット型の固体電解質を用いた場合においても、特許文献1のような固体電解質構造を採用し、正極層及び負極層の少なくとも一方が、セパレータ層と一体化された固体電解質を含む構成とすることが検討されている。ただし、特許文献1の固体電解質構造体は、セパレータ層となる緻密体と、電極となる多孔体とを、それぞれ別工程で高温焼成して構成され、さらに、本焼成を行って電極を形成しており、工程数が多くなると共にエネルギ消費量が増加し生産性が低くなる。
そのため、ガーネット型の固体電解質を用いた場合において、例えば、電極活物質との一体焼成が可能な温度で、低温焼結させることによって、生産性を向上させることが期待される。ところが、低温で焼成を行った場合には、特許文献1のように、高温焼成による粒子間のネッキングが進行しないために、粒子同士が接触する界面における抵抗が高くなって、リチウムイオン伝導性が低下する。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ガーネット型の固体電解質を用いて構成されて、良好なリチウムイオン伝導性を発現し、電池性能及び生産性を向上可能な全固体電池を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、
リチウムイオン伝導性を有するセパレータ層(11)を挟んで一対の電極層(10)が配置される全固体電池(1)であって、
ガーネット型の固体電解質粒子(20)を基本構成粒子とする固体電解質体(2)を基本骨格として備えており、
上記固体電解質体は、上記セパレータ層となる粒子集合体(2A)と、一対の上記電極層のうちの少なくとも一方の骨格となる多孔体(2B)とを含む一体焼成体であって、上記粒子集合体の平均粒径Pd1と上記多孔体の平均粒径Pd2とは、Pd2>Pd1の関係にある、全固体電池にある。
上記構成の全固体電池において、基本骨格となる固体電解質体は、セパレータ層となる粒子集合体と、電極層の骨格となる多孔体とが一体焼成された構成となっている。固体電解質体は、粒子集合体を、より小さい平均粒径Pd1の固体電解質粒子にて構成することにより緻密化する一方、多孔体を、より大きい平均粒径Pd2の固体電解質粒子にて構成して抵抗上昇を抑制している。すなわち、平均粒径Pd2が大きくなることにより、イオン伝導の経路を形成する粒子界面の数が減少して界面抵抗が低くなると共に、粒子内を通る経路長が短縮されて内部抵抗が低くなる。
このように、平均粒径の異なる粒子集合体と多孔体とを一体焼成した固体電解質体を、基本骨格とすることにより、イオン伝導性を向上することができる。したがって、より低温での一体焼成が可能になり、消費エネルギを低減することができる。さらに、低温焼成が可能になるため、例えば、電極活物質を含む電極層の一方を固体電解質体と一体焼成させることにより、消費エネルギをさらに低減することができる。よって、エネルギ効率の向上や工程数の削減等が可能になり、生産性を向上させることができる。
以上のごとく、上記態様によれば、ガーネット型の固体電解質を用いて構成されて、良好なリチウムイオン伝導性を発現し、電池性能及び生産性を向上可能な全固体電池を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、全固体電池の基本構成を示す概略断面図。 実施形態1における、全固体電池の概略構成を示す断面図。 実施形態1における、固体電解質体の多孔体骨格の構成を従来構成と比較して示す図。 実施形態1における、固体電解質体の多孔体骨格を構成する固体電解質粒子の平均粒径と界面抵抗との関係を説明するための模式的な図。 実施形態1における、固体電解質体の多孔体骨格を構成する固体電解質粒子の平均粒径と内部抵抗との関係を説明するための模式的な図。 従来の固体電解質体の焼成工程における固体電解質粒子の粒成長の様子を説明するための模式的な図。 実施形態1の変形例1における、全固体電池の主要部構成を示す概略構成図。 実施形態1の変形例2における、全固体電池の主要部構成を示す概略構成図。 実施形態1における、全固体電池を構成する固体電解質粒子の調製方法を説明するための製造工程図。 実施形態1における、全固体電池の製造方法を説明するための製造工程図。 実施形態1における、全固体電池の製造方法の他の例を説明するための製造工程図。 実施形態1の変形例1における、全固体電池の製造方法を説明するための製造工程図。 実施形態1の変形例2における、全固体電池の製造方法を説明するための製造工程図。 実施形態2における、固体電解質体の多孔体骨格の構造を説明するための要部拡大図。 実施形態3における、全固体電池の主要部構成を示す概略断面図。 実施形態2、3における、全固体電池の製造方法を説明するための製造工程図。
(実施形態1)
以下に、全固体電池に係る実施形態1について、図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、全固体電池1は、全固体リチウムイオン二次電池として構成されており、リチウムイオン伝導性を有するセパレータ層11と、セパレータ層11を挟んで配置される一対の電極層10(正極層12及び負極層13)とを備える。全固体電池1は、ガーネット型の固体電解質粒子20を基本構成粒子とする固体電解質体2を基本骨格として備えている。固体電解質体2は、セパレータ層2となる粒子集合体2Aと、一対の電極層10のうちの少なくとも一方の骨格となる多孔体2Bとを含む一体焼成体として構成される。
図1に示すように、固体電解質体2において、セパレータ層2となる粒子集合体2Aは、平均粒径Pd1の固体電解質粒子20からなり、少なくとも一方の電極層10の骨格となる多孔体2Bは、平均粒径Pd2の固体電解質粒子20からなる。このとき、平均粒径Pd1と平均粒径Pd2とが、Pd2>Pd1の関係となるように、固体電解質体2が構成される。
好適には、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1に対する、多孔体2Bの平均粒径Pd2の比率Pd2/Pd1は、1.5以上であることが望ましい。
なお、本形態における平均粒径Pd、Pd1、Pd2は、平均粒径Pd(D50)、Pd1(D50)、Pd2(D50)を意味する。すなわち、一体焼成体の断面の画像解析(例えば、SEM画像)に基づいて、無作為に抽出された任意数(例えば、50個)の固体電解質粒子20の粒子径分布曲線において、積算個数の割合が50%になる粒子径を、平均粒径Pdとする。平均粒径Pd1(D50)、Pd2(D50)は、それぞれ、粒子集合体2A、多孔体2Bを構成する固体電解質粒子20について、粒子径分布曲線における積算個数の割合が50%になる粒子径である。
好適には、固体電解質粒子20として、リチウムランタンジルコニウム系複合酸化物を含む粒子を用いることができる。また、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1は、10μm以下であることが望ましい。これにより、一対の電極層10間を分離するセパレータ層11において粒子間の空隙が小さくなり緻密化しやすくなる一方、平均粒径Pd2がより大きくなる多孔体2Bにおいて抵抗上昇を抑制する効果が得られる。
図3右図に示すように、固体電解質体2は、一対の電極層10のうち少なくとも一方となる多孔体2Bを、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1よりも、大きな平均粒径Pd2を有する固体電解質粒子20にて構成している。これにより、図3左図に示すように、多孔体2Bと粒子集合体2Aとが同じ平均粒径Pdである場合に比べて、固体電解質粒子20が形成するイオン伝導経路における粒子界面が減少し、イオン伝導経路の抵抗を低減して、電池性能を向上可能となる。粒子集合体2Aについては、より小さな平均粒径Pd1として、セパレータ層11を緻密化することが可能になる。
図1に示すように、一対の電極層10の一方を、固体電解質粒子20と電極活物質30を含む複合体2Cとして構成することができる。一対の電極層10のもう一方は、固体電解質体2となる多孔体2Bにて構成される。または、図2に示すように、固体電解質体2において、多孔体2Bに電極活物質30が充填されることにより、電極層10を構成することができる。好適には、多孔体2Bは、空孔率が40体積%以上であることが望ましく、多孔体2Bの平均粒径Pd2を、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1よりも大きくすることによる効果が高くなる。
固体電解質体2の構造による効果と電極層10の具体的構造例については、後述する。
(全固体電池1の構成)
次に、全固体電池1の詳細構成例について、説明する。
図2に一例を示す全固体電池1は、例えば、充放電可能な自動車用電源又は各種機器用の電源として用いられるものであり、セパレータ層11と、正極層12と、負極層13とを含む積層体構造を有する。セパレータ層11は、正極層12と負極層13との間に配設されて、両層を隔てると共に、リチウムイオン伝導性を有するイオン伝導体として機能する。本形態では、全固体電池1を構成するこれら各層が積層される方向(各層の厚さ方向)を、以降、積層方向Xとして説明する。
正極層12及び負極層13は、一対の電極層10であり、電極活物質30を含んで構成される。具体的には、正極層12は、正極活物質31を含み、負極層12は、負極活物質32を含む。さらに、正極層12及び負極層13の外側には、正極集電体14及び負極集電体15がそれぞれ配置されて、全固体電池1が構成されている。
全固体電池1は、基本骨格となるリチウムイオン伝導性の固体電解質体2を備える。固体電解質体2は、基本構成粒子である固体電解質粒子20として、第1固体電解質粒子21及び第2固体電解質粒子22を含み、第1固体電解質粒子21にて構成される粒子集合体2Aと、第2固体電解質粒子22にて構成される多孔体2Bとの一体焼成体からなる。粒子集合体2Aは、セパレータ層11を構成し、多孔体2Bは、正極層12及び負極層13のうちの少なくとも一方の骨格、又は両方の骨格となる。
図1に示すように、本形態の代表的な構成例において、固体電解質体2は、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと、負極層13の骨格となる多孔体2Bとの一体焼成体として構成されている。粒子集合体2Aは、第1固体電解質粒子21が多数集合した緻密体であり、多孔体2Bは、多数の第2固体電解質粒子22が互いに接続した三次元網目構造を有し、内部に多数の空孔23が形成されている。
さらに、固体電解質体2は、正極層12を含む一体焼成体として構成することができる。正極層12は、固体電解質粒子20と、電極活物質である正極活物質31とを含む複合体2Cとして構成されている。すなわち、正極層12となる複合体2Cと、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと、負極層13の骨格となる多孔体2Bとが同時焼成により一体化される。
正極層12を含む一体焼成体として構成した場合には、一体焼成体に正極集電体14及び負極集電体15を形成することにより、全固体電池1として機能する。すなわち、負極集電体15に接する多孔体2B(負極層13)において、充電時には、正極層12からリチウムイオンが移動して、電子を受け取り、負極活物質32であるリチウム金属が析出する(Li++e→Li)。
このように、全固体電池1は、基本骨格となる固体電解質体2を備え、セパレータ層11となる粒子集合体2Aに対して、それより粒径の大きい多孔体2Bが負極層13の骨格となる。負極層13は、図1に示すように、多孔体2Bのみの構成であってもよいし、図2に示すように、多孔体2Bの空孔23内に負極活物質32が充填されることにより、負極層13が形成された構成とすることもできる。
正極層12を構成する固体電解質粒子20は、特に限定されるものではないが、例えば、セパレータ層11と同様の第1固体電解質粒子21を用いることができる。
基本骨格となる固体電解質体2において、粒径が異なる固体電解質粒子20を組み合わせた層構造を採用することにより、電流集中を抑制する効果が得られる。例えば、粒径が同じであると、電流集中が起きる箇所がセパレータ層11に集中して、より抵抗が大きくなると考えられるのに対し、より粒径の大きい多孔体2Bの内部において抵抗が小さくなり、均一な電池反応が可能になるために、電池性能が向上する。
これら固体電解質体2及び正極層12を構成する固体電解質粒子20は、ガーネット型の結晶構造を有する酸化物固体電解質(以下、適宜、ガーネット型固体電解質と称する)を主成分として含む粒子である。ガーネット型固体電解質は、高いリチウムイオン伝導性を示し、リチウム金属に対して安定であることから、全固体電池1に用いられる固体電解質材料として有用である。
ガーネット型固体電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、Li7La3Zr212を基本組成とするリチウムランタンジルコニウム系複合酸化物(以下、適宜、LLZと称する)が好適に用いられる。LLZのLaの一部をSr、Ca等の元素で置換し、あるいは、Zrの一部をNb、Ta等の元素で置換した組成を有していてもよい。
固体電解質体2を構成する第1固体電解質粒子21と、第2固体電解質粒子22とは、同じ組成であることが望ましいが、必ずしも同じ組成でなくともよい。
固体電解質体2と一体焼成される場合、正極層12において、正極活物質31は任意に選択可能であるが、好適には、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)の少なくとも一方を含む複合酸化物が用いられる。このような複合酸化物としては、例えば、LiCoO2(LCO)、LiNi1/3Mn1/3Co1/32(NMC)等のリチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。
また、負極層13において、負極活物質32としては、例えば、リチウム金属が好適に用いられる。負極層13に電極電位の低いリチウム金属を用いることにより、電池起電力を大きくし、高出力とすることが可能になる。負極活物質32としては、固体電解質体2の形成後に多孔体2Bに流動させた状態で含侵可能なものであればよく、例えば、リチウム合金等であってもよい。このように、充填時に流動可能な物質を電極活物質30として用いると、充填後に、多孔体2Bの空孔23内壁面を形成する粒子表面と、面で接触するように構成することができるので好ましい。
ここで、第1固体電解質粒子21と第2固体電解質粒子22とは、異なる平均粒径Pdを有し、第2固体電解質粒子22の平均粒径Pd2は、第1固体電解質粒子21の平均粒径Pd1よりも大きくなるように調製される(すなわち、Pd2>Pd1)。好適には、第2固体電解質粒子22の平均粒径Pd2と、第1固体電解質粒子21の平均粒径Pd1との比率Pd2/Pd1は、1.5以上であることが望ましい。より好適には、比率Pd2/Pd1は、2以上であることが望ましく、平均粒径Pdが同等であるときに対してイオン伝導の際の抵抗を大きく低減することができる。
固体電解質体2を、粒子集合体2Aと多孔体2Bからなる構成としたことにより、緻密な粒子集合体2Aであるセパレータ層11を介して、正極層12と負極層13とを分離することができると共に、粒子集合体2Aと一体の多孔体2Bによって負極層13(すなわち、一対の電極層10の一方)を形成し、層間の抵抗を低減することができる。さらに、多孔体2Bを、平均粒径Pdがより大きい第2固体電解質粒子22で構成することにより、界面抵抗及び内部抵抗を低減して、多孔体2Bにおける抵抗を低減することができる。
図4に模式的に示すように、多孔体2Bの積層方向Xにおける2地点に対応する地点Aと地点Bとの間に、固体電解質粒子20が直線状に整列配置された場合、その平均粒径Pdが大きいほど、地点AB間の粒子数、換言すれば、粒子間に形成される界面24の総数が減少する。例えば、第1固体電解質粒子21と第2固体電解質粒子22とを比較したとき、比率Pd2/Pd1が2より大きい図示の例では、平均粒径Pdがより小さい第1固体電解質粒子21では、界面数が6であるのに対して、第2固体電解質粒子22では、界面数が2と半数以下に低減している。
また、図5に示すように、多孔体2Bは三次元網目構造を有することから、第2固体電解質粒子22が連なって形成されるイオン伝導路25は(例えば、図中には、二次元的に示す)、曲線状となる。その場合には、平均粒径Pdが大きいほど、イオン伝導路25が短くなる。図示するように、地点A、B間のイオン伝導路25は最短距離となるように形成されるので、平均粒径Pdがより小さい第1固体電解質粒子21が形成するイオン伝導路25に対して、第2固体電解質粒子22が形成するイオン伝導路25はより短くなり、それに伴いイオン伝導路25の内部抵抗が低減する。そのために、上述した粒子間の界面抵抗の低減効果と相まって、電極層10の抵抗が大きく低減可能となる。
ここで、図6に示すように、従来の手法では、固体電解質粒子200の高温焼結による粒成長によって、界面抵抗の低減が可能である。すなわち、粒子界面が接触している焼成初期の状態から、粒子同士が結合してネッキング201を形成している焼成中期を経て、さらに粒成長が進み焼成後期において一体化したより大きな固体電解質粒子202が得られる。ただし、この手法をガーネット型固体電解質に用いた場合には、高温焼成することによってLiが揮発したLa2Zr27が生成しやすくなり、所望組成のガーネット型固体電解質を安定的に製造できない懸念がある。また、焼成温度が高くなるほどでエネルギ消費量が増大する。さらに、図1の構成のように、正極層12が複合体2Cである場合には、高温でガーネット型固体電解質と正極活物質31との反応が生じることから、一体焼成することができない。
そのような場合でも、本形態の構成を採用することにより、正極層12を含む一体焼成体を得ることが可能になる。すなわち、固体電解質体2において、粒子集合体2Aと多孔体2Bとの平均粒径Pdの比率Pd2/Pd1を適切に設定することにより、粒成長を伴わない低温での焼結においても、固体電解質体2のイオン伝導経路における抵抗を低減可能になる。
そして、低温での焼結が可能になることにより、正極層12となる複合体2Cを固体電解質体2と一体焼成して、正極活物質31との反応を抑制しつつ、製造工程数を低減しエネルギ消費を抑制することができる。したがって、生産性の向上が可能になると共に、電池性能に優れた高品質の全固体電池1が得られる。
固体電解質体2において、セパレータ層11となる粒子集合体2Aは、好適には、平均粒径Pd1が10μm以下である第1固体電解質粒子21を用いて構成される。このとき、第1固体電解質粒子21の平均粒径Pd1が小さいほど、粒子間の隙間が小さくなって緻密化され、セパレータ層11の薄膜化(例えば、40μm程度)が可能になる。一般に、セパレータ層11は薄膜であるほど抵抗が低くなり、また、セパレータ層11の薄膜化により電極活物質30を含む電極層10の比率を相対的に高めることができるため、電池性能の向上に有利である。
固体電解質スラリーは、固体電解質粒子20を有機溶媒に分散させたものであり、バインダ成分や、可塑剤、分散剤等の添加剤を適宜添加することができる。有機溶媒は、任意に選択可能であり、バインダ成分を溶解し、固体電解質粒子20を分散可能であればよい。好適には、有機溶媒として、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒、酢酸イソアミル等のエステル系溶媒等を用いることができる。
バインダ成分は、粒子同士の結着力を高めるためのものであり、例えば、アクリル樹脂系バインダ成分、水酸基を有するバインダ成分等の有機バインダ成分を用いることができる。水酸基を有するバインダ成分としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。また、成形時に可塑性を付与するための可塑剤を含んでもよい。可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)が用いられる。
多孔体2Bを形成するための固体電解質スラリーには、さらに、造孔材が添加される。造孔材は、焼成過程で焼失する材料であればよく、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂や、ナイロン樹脂等の樹脂材料からなる造孔材等を用いることができる。このとき、焼成後に造孔材が焼失して形成される空間が空孔23となるので、焼成時の収縮分等を考慮して、造孔材の添加量を適宜調整することにより、所望の空孔率を有する多孔体2Bが得られる。
多孔体2Bの空孔率は、任意に設定することができ、例えば、20体積%以上とすることで、平均粒径Pd2を大きくすることによる抵抗低減効果が得られる。好適には、空孔率が40体積%以上であることが望ましく、本形態の構造による効果が得やすくなると共に、電極活物質30が充填可能な十分な空間が形成される。一般に、多孔体2Bに含まれる空孔23が増加すると抵抗が大きくなりやすいため、空孔率が高くなるほど、比率Pd2/Pd1を大きくすることによる効果が高くなる。より好適には、空孔率が80体積%以下となる範囲で、適宜調整されるのがよい。
(固体電解質体2の変形例1)
図7に変形例1として示すように、固体電解質体2は、粒子構造体2Aの両側に、多孔体2Bを有する構成であってもよい。その場合には、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと、正極層12及び負極層13の両骨格となる2つの多孔体2Bとの一体焼成体として構成される。正極層12は複合体2Cとして構成されず、固体電解質体2となる一体焼成体の形成後に、骨格となる多孔体2Bの空孔23内に正極活物質31が充填されることにより形成される。
このように、正極層12は複合体2Cとして構成されている必要はなく、正極層12及び負極層13の両方が、骨格となる多孔体2Bを有し、その空孔23内に電極活物質(正極活物質31又は負極活物質32)が充填された構成であってもよい。
この構成においても、固体電解質体2を低温焼結させつつ、正極層12及び負極層13の骨格となる多孔体2Bのイオン伝導抵抗を低減する効果が得られる。この場合にも、固体電解質体2を一体焼成体として形成した後に、正極層12となる多孔体2Bに正極活物質31を充填し、負極層13となる多孔体2Bに負極活物質32を充填することにより、全固体電池1が得られる。
正極層12において、正極活物質31としては、加熱されることによって、又は、溶媒中への溶解によって流動性を持たせることが可能な材料であればよい。好適には、例えば、硫黄(S)等が用いられ、流動性を持たせた状態で多孔体2Bに含浸させることにより空孔23内に充填し、正極層12を形成することができる。また、負極層13における負極活物質32としては、例えば、リチウム金属又はリチウム合金が好適に用いられ、同様にして、流動性を持たせた状態で多孔体2Bに含浸させることにより、負極層13を形成することができる。このような流動可能な物質を、正極活物質31又は負極活物質32として用いると、充填後に、多孔体2Bの空孔23内壁面を形成する粒子表面と、面接触する構成とすることができ、好ましい。
(固体電解質体2の変形例2)
あるいは、図8に変形例2として示すように、固体電解質体2は、粒子構造体2Aの一方の側に、正極層31となる多孔体2Bを有する構成であってもよい。その場合には、固体電解質体2は、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと、正極層12の骨格となる多孔体2Bとの一体焼成体として構成される。正極層12は、変形例1と同様に、固体電解質体2となる一体焼成体の形成後に、骨格となる多孔体2Bの空孔23内に正極活物質31が充填されることにより形成される。負極層13は、シート状のリチウム金属又はリチウム合金等の金属材料からなる、負極活物質32を含む層(以下、適宜、負極活物質層と称する)として構成され、この金属シートを固体電解質体2に貼付けて形成することができる。
このように、負極層13をシート状の金属材料で構成し、固体電解質粒子20を含まない層とすることもできる。その場合には、固体電解質体2にて正極層12の骨格を形成することにより、固体電解質体2を低温焼結させつつ、正極層12の骨格となる多孔体2Bのイオン伝導抵抗を低減する効果が得られる。
したがって、これら変形例の固体電解質体2の構成によっても、エネルギ消費を抑制して、生産性を向上可能とすると共に、電池性能に優れた高品質の全固体電池1が得られる。
次に、図9〜図11に示す工程を参照して、ガーネット型の固体電解質材料からなる固体電解質粒子20を調製する手順と、得られた固体電解質粒子20を用いて固体電解質体2を製造し、さらに全固体電池1を製造する手順について、一例を説明する。固体電解質体2は、ここでは、上記図1に示した構成に対応し、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと負極層13の骨格となる多孔体2Bとを含むと共に、正極層12となる複合体2Cとの一体焼成体として構成される。
(固体電解質粒子20の調製工程)
図9に示す固体電解質粒子20の調製工程において、固体電解質粒子20を構成するガーネット型固体電解質としては、LLZ又はその一部を元素置換したものが用いられる。例えば、Zrの一部をNbで置換したLi6.75La3Zr1.75Nb0.2512(以下、適宜、LLZNと称する)を用いた場合について、以下、説明する。
まず、LLZNの合成用原料として、LiOH・H2O、La(OH)3、ZrO2、Nb25の粉末を用意し、理論組成となるように秤量する。これら合成用原料の粉末を、第1混合工程(101)において、遊星ボールミル等を用いて混合し、次いで、この混合原料を、第1焼成工程(102)において、大気雰囲気中にて焼成することにより(例えば、700℃)、LLZN粉を合成する。
さらに、得られたLLZN粉に、LiOH・H2Oを添加して、第2混合工程(103)において、遊星ボールミル等を用いて混合する。その後、この混合原料を、第2焼成工程(104)において、大気雰囲気にて焼成して(例えば、700℃)、固体電解質粒子20となるLLZN粉が得られる。第2混合工程(103)におけるLiOH・H2Oの添加量は、焼成時に揮発するLi成分を補うものであり、例えば、第1焼成工程(102)後のLLZN粉の回収量に基づいて、適宜決定することができる。
なお、得られるLLZN粉の粒子径は、第1混合工程(101)、第2混合工程(103)において、例えば、混合粉砕時の粉砕時間を変更することにより、適宜調整することができる。あるいは、混合粉砕時に用いられる混合粉砕用のボール径の変更等によって、粒径を調整することもできる。これにより、セパレータ層11となる第1固体電解質粒子21と、電極層10となる第2固体電解質粒子22について、平均粒径Pd1、Pd2と、それら平均粒径の比率Pd2/Pd1を所望の値に調整することが可能となる。
(全固体電池1の製造工程)
次に、図10に示す製造工程において、上述のようにして得られたLLZN粉を用いて、固体電解質体2を含む一体焼成体を製造する。固体電解質体2は、ここでは、上記図1に示した構成を有し、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと負極層13の骨格となる多孔体2Bとを含むと共に、正極層12となる複合体2Cとの一体焼成体として構成される。セパレータ層11と各電極層10とは、それぞれLLZN粉等を含む固体電解質スラリーを用いて、シート状に成形され、それら各層用のシートを積層したものを焼成して一体化される。
セパレータ層11となる固体電解質スラリーは、まず、第1混合工程(11)において、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉を、有機溶媒に添加し、自転公転ミキサー等を用いて分散混合させたものに、さらに、第2混合工程(12)において、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。有機溶媒は、例えば、エタノール等のアルコール系溶媒が用いられる。バインダ溶液は、予めアクリルバインダ等の有機バインダ成分を有機溶媒に溶解させて調製されたものであり、バインダ成分の添加量は、成形後のシート強度、焼成後の収縮量が許容範囲となるように適宜設定される(例えば、固形分に対し9質量%〜20質量%程度)。可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)が用いられる。
この固体電解質スラリーを、シート成形工程(13)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行うことによって(例えば、Gap:300μm)、セパレータ層11を構成する粒子集合体2Aとなる所定厚さの固体電解質シートを得ることができる。
負極層13の骨格となる固体電解質スラリーは、まず、第1混合工程(21)において、第2固体電解質粒子22となるLLZN粉と、造孔材とを、有機溶媒(例えば、エタノール等)に添加し、自転公転ミキサー等を用いて分散混合させたものに、さらに、第2混合工程(22)において、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。造孔材としては、例えば、アクリル樹脂等の粒子が用いられ、バインダ溶液や可塑剤は、セパレータ層11と同様のものが用いられる。
この固体電解質スラリーを、シート成形工程(23)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行うことによって(例えば、Gap:300μm)、負極層13の骨格を構成する多孔体2Bとなる所定厚さの固体電解質シートを得ることができる。
正極層12となる固体電解質スラリーは、まず、第1混合工程(31)において、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉と、正極活物質31とを、有機溶媒(例えば、エタノール等)に添加し、自転公転ミキサー等を用いて分散混合させたものに、さらに、第2混合工程(32)において、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。正極活物質31としては、例えば、LiCoO2(以下、適宜、LCOと略称する)が用いられ、バインダ溶液や可塑剤は、セパレータ層11と同様のものが用いられる。
この固体電解質スラリーを、シート成形工程(33)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行うことによって(例えば、Gap:300μm)、正極層12となる所定厚さの固体電解質シートを得ることができる。
次いで、積層工程(14)において、各シート成形工程13〜33で得られた固体電解質シートを積層する。この場合には、シート成形工程13で得られたセパレータ層11用の固体電解質シートを挟んで、シート成形工程23、33で得られた正極層12用の固体電解質シート及び負極層13用の固体電解質シートを配置する。
この積層体を、続く加圧成形工程(15)において、温間静水圧プレス(WIP)等を用いて、加熱状態で加圧する(例えば、85℃×50MPa)。さらに、焼成工程(16)において、大気雰囲気で焼成することにより(例えば、750℃)、正極層12を含む一体焼成体とする。なお、焼成温度は、負極層13用の固体電解質シートに含まれる造孔材が焼失可能な温度以上(例えば、600℃以上)であり、Li成分の揮発を抑制可能な温度以下(例えば、950℃以下)となるように設定される。好適には、正極層12用の固体電解質シートに含まれる正極活物質31と第1固体電解質粒子21となるLLZN粉との反応が抑制可能な温度以下(例えば、850℃以下)であることが望ましい。
これにより、正極層12と、粒子集合体2A及び多孔体2Bを含む固体電解質体2との一体焼成体が得られる。さらに、正極集電体形成工程(17)において、一体焼成体の正極層12側に、金(Au)ペーストを塗工して焼き付け(例えば、450℃)、正極集電体14を形成する。また、負極集電体形成工程(18)において、一体焼成体の負極層13側に、銅(Cu)ペーストを塗工して焼き付け(例えば、150℃)、負極集電体15を形成する。
上記図2に示したように、得られた一体焼成体の多孔体2Bに負極活物質32が充填された構成とすることもできる。その場合には、図10の焼成工程(16)の後の集電体形成工程に、図11に示すように、負極形成工程(100)を追加する。具体的には、まず、図10と同様の正極集電体形成工程(17)において、一体焼成体の正極層12側に、正極集電体14を形成し、次いで、負極形成工程(100)において、負極活物質32を充填する。負極活物質32としては、例えば、粉体状のリチウム金属が用いられ、融点以上の温度(例えば、180℃程度)に加熱することにより、液化して、多孔体2Bの空孔23内に含浸し、負極層13が形成される。
このとき、多孔体2Bに負極活物質32としてリチウム金属が充填された構成では、リチウム金属が負極集電体15としても機能するため、負極集電体15が形成されない構成であってもよい。なお、負極形成工程(100)の後、負極集電体形成工程(18)において、負極集電体15を形成することもできる。その場合には、集電体材料や形成条件を適切に選択して負極層13への影響を抑制することが望ましく、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の鉄系金属箔を、負極集電体15として用いることができる。
このようにして、片面に多孔体2Bを有する正極一体焼成の固体電解質体2を基本骨格とし、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1に対して、負極層13となる多孔体2Bの平均粒径Pd2が大きい、全固体電池1が得られる。
(変形例1による全固体電池1の製造工程)
図12に示すように、固体電解質体2は、ここでは、上記図7に示した構成に対応し、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの両側に、正極層12及び負極層13の骨格となる多孔体2Bを含む一体焼成体として構成される。セパレータ層11と各電極層10とは、それぞれLLZN粉等を含む固体電解質スラリーを用いて、シート状に成形され、それら各層用のシートを積層したものを焼成して一体化される。
セパレータ層11となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(11)、第2混合工程(12)と同様にして、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉を、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。この固体電解質スラリーを、シート成形工程(13)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、粒子集合体2Aとなる所定厚さの固体電解質シートとする。
正極層12及び負極層13の骨格となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(21)、第2混合工程(22)と同様にして、第2固体電解質粒子22となるLLZN粉と、造孔材とを、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。この固体電解質スラリーを、シート成形工程(23)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、多孔体2Bとなる所定厚さの固体電解質シートとする。
次いで、積層工程(24)において、各シート成形工程13、23で得られた固体電解質シートを積層する。この場合には、シート成形工程13で得られたセパレータ層11用の固体電解質シートを挟んで、シート成形工程23で得られた正極層12用の固体電解質シート及び負極層13用の固体電解質シートを配置する。
その後、加圧成形工程(25)、焼成工程(26)において、上記図10における加圧成形工程(15)、焼成工程(16)と同様にして、WIP等を用いて加圧し(例えば、85℃×50MPa)、大気雰囲気で焼成することにより(例えば、750℃)、一体焼成体とする。
その後、負極形成工程(201)において、得られた一体焼成体の多孔体2Bの一方に、負極活物質32を充填する。負極活物質32としては、例えば、粉体状のリチウム金属が用いられ、融点以上の温度(例えば、180℃程度)に加熱することにより、液化して、多孔体2Bの空孔23内に含浸し、負極層13が形成される。また、正極形成工程(202)において、一体焼成体の多孔体2Bのもう一方に、正極活物質31を充填する。正極活物質31としては、例えば、粉体状の硫黄が用いられ、融点以上の温度(例えば、120℃程度)に加熱することにより、液化して、多孔体2Bの空孔23内に含浸し、正極層12が形成される。
さらに、正極集電体形成工程(27)において、一体焼成体の正極層12側に、金(Au)を蒸着法により成膜し、正極集電体14を形成する。また、負極集電体形成工程(28)において、一体焼成体の負極層13側に、銅(Cu)を蒸着法により成膜し、負極集電体15を形成する。このように、正極集電体14及び負極集電体15の形成は、上述した金属ペーストの焼き付けに限らず、真空蒸着等の任意の方法によって形成することができる。
これにより、粒子集合体2Aと、正極層12及び負極層13の骨格となる多孔体2Bを含む固体電解質体2との一体焼成体が得られる。このようにして、両面に多孔体2Bを有する固体電解質体2を基本骨格とし、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1に対して、負極層13となる多孔体2Bの平均粒径Pd2が大きい、全固体電池1が得られる。
(変形例2による全固体電池1の製造工程)
図13に示すように、固体電解質体2は、ここでは、上記図8に示した構成に対応し、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと正極層12の骨格となる多孔体2Bを含む一体焼成体として構成される。セパレータ層11と正極層12とは、それぞれLLZN粉等を含む固体電解質スラリーを用いて、シート状に成形され、それら各層用のシートを積層したものを焼成して一体化される。負極層13は、負極活物質層からなり、固体電解質粒子20を含まない構成となっている。
セパレータ層11となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(11)、第2混合工程(12)と同様にして、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉を、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。この固体電解質スラリーを、シート成形工程(13)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、粒子集合体2Aとなる所定厚さの固体電解質シートとする。
正極層12の骨格となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(21)、第2混合工程(22)と同様にして、第2固体電解質粒子22となるLLZN粉と、造孔材とを、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。この固体電解質スラリーを、シート成形工程(23)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、多孔体2Bとなる所定厚さの固体電解質シートとする。
次いで、積層工程(34)において、各シート成形工程13、23で得られた固体電解質シートを積層する。この場合には、シート成形工程13で得られたセパレータ層11用の固体電解質シートを挟んで、シート成形工程23で得られた正極層12用の固体電解質シートを配置する。
その後、加圧成形工程(35)、焼成工程(36)において、上記図10における加圧成形工程(15)、焼成工程(16)と同様にして、WIP等を用いて加圧し(例えば、85℃×50MPa)、大気雰囲気で焼成することにより(例えば、750℃)、一体焼成体とする。
さらに、正極形成工程(300)において、得られた一体焼成体の多孔体2Bに、正極活物質31(例えば、硫黄)を充填することにより、正極層12が形成される。また、正極集電体形成工程(37)において、一体焼成体の正極層12側に、金(Au)を蒸着し、正極集電体14を形成する。その後、負極活物質層形成工程(38)において、一体焼成体の多孔体2Bの反対側に、負極活物質層として、例えば、シート状に成形された負極活物質32(例えば、リチウム金属)を貼付けることにより、負極層13が形成される。
これにより、粒子集合体2Aと、正極層12の骨格となる多孔体2Bを含む固体電解質体2との一体焼成体が得られる。このようにして、片面に多孔体2Bを有する固体電解質体2を基本骨格として有し、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1に対して、正極層12となる多孔体2Bの平均粒径Pd2が大きい、全固体電池1が得られる。
(試験例1〜4、比較例1〜2)
上記図9に示した手順で、第1固体電解質粒子21又は第2固体電解質粒子22となる固体電解質粒子20を作製した。これらを用いて、さらに、上記図10に示した手順で、固体電解質体2と正極層12とを含む一体焼成体を作製して、評価した。ガーネット型固体電解質としては、LLZNを用いた。また、正極層12は、第1固体電解質粒子21と正極活物質31とを含む複合体2Cとして構成した。正極活物質31としては、LCOを用いた。
表1に示すように、固体電解質体2は、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1を2μmとし、負極層13の骨格となる多孔体2Bの平均粒径Pd2を変更して、比率Pd2/Pd1を0.2〜6の範囲で変更したときの効果を調べた。試験例1〜4において、比率Pd2/Pd1は、それぞれ2、1.5、4、6.2であり、比率Pd2/Pd1を、1、0.2としたものを比較例1〜2とした。比較例1は、粒子集合体2Aと多孔体2Bの平均粒径Pd1、Pd2が同じ場合(すなわち、比率Pd2/Pd1=1)、比較例2は、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1よりも多孔体2Bの平均粒径Pd2が小さい場合(すなわち、比率Pd2/Pd1<1)である。
試験例1〜4、比較例1〜2において、負極層13の骨格となる多孔体2Bは、いずれも空孔率が50%となるようにした。固体電解質体2に負極活物質32が充填されていない状態において、一体焼成体の正負極間の総抵抗を測定した。総抵抗は、インピーダンス測定結果に基づいて算出したものであり、比較例1における総抵抗を100%としたときの総抵抗の割合を算出して、表1に併記した。
なお、固体電解質体2において、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1、多孔体2Bの平均粒径Pd2は、一体焼成体の断面の画像解析を行って、無作為に抽出した50箇所について粒子径を測定し、粒子径分布曲線における積算%が50%になる粒子径を算出した。また、空孔率は、一体焼成体の多孔体2Bについて、断面の画像解析によって第2固体電解質粒子22に相当する部分と空孔23に相当する部分とに二値化し、空孔23部分の割合を算出した。
試験例1〜4、比較例1〜2の比較から明らかなように、比率Pd2/Pd1=1である比較例1に対して、比較例2(比率Pd2/Pd1=0.2)では、総抵抗が250%と増大している。これに比べて、試験例1、2のように、比率Pd2/Pd1を2、1.5と、1よりも大きくすることにより、総抵抗が30%、60%となり、比率Pd2/Pd1が小さいほど総抵抗が小さくなる傾向にある。ただし、試験例3、4のように、比率Pd2/Pd1を4、6.2とさらに大きくしても、総抵抗は32%、24%と大きな変化はなく、ほぼ収束する。したがって、比率Pd2/Pd1は、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2以上となるように調整されるのがよい。
Figure 2021150152
(試験例5〜7、比較例3〜5)
表2に示すように、上記試験例1と同様の構成の一体焼成体について、比率Pd2/Pd1=2とし、負極層13となる多孔体2Bの空孔率を変更したときの、総抵抗の変化を調べた。空孔率を20%、40%、70%とした場合を、それぞれ試験例5〜7として、結果を表2に併記した。このとき、粒子集合体2Aと多孔体2Bの平均粒径の比率Pd2/Pd1=1とした場合について、同様に、多孔体2Bの空孔率を20%、40%、70%と変更したときの総抵抗の変化を調べて、それぞれ比較例3〜5(総抵抗=100%)に対する総抵抗の割合を算出した。
上記表1に示した試験例1と、試験例5〜7、比較例3〜5の比較から明らかなように、比率Pd2/Pd1=2とした試験例5〜7では、総抵抗が、それぞれ同等の空孔率を有する比較例3〜5に対して低減している。このとき、空孔率が20%の試験例5では、総抵抗が81%であるのに対し、試験例1、6〜7のように、空孔率が40%、50%、70%と高くなるほど、総抵抗が38%、30%、22%と低減しており、効果が高くなっている。したがって、空孔率は、好ましくは、40%以上となるように調整されるのがよい。
Figure 2021150152
(試験例8〜11、比較例6〜9)
表3に示すように、上記試験例1と同様の構成の一体焼成体について、比率Pd2/Pd1=2とし、セパレータ層11となる粒子集合体2Aの平均粒径Pd1を変更したときの、総抵抗の変化を調べた。粒子集合体2Aの平均粒径Pd1を1μm、5μm、7μm、10μmとした場合を、それぞれ試験例8〜11として、結果を表3に併記した。このとき、粒子集合体2Aと多孔体2Bの平均粒径の比率Pd2/Pd1=1とした場合について、同様に、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1を1μm、5μm、7μm、10μmと変更したときの総抵抗の変化を調べて、それぞれ比較例6〜9(総抵抗=100%)に対する総抵抗の割合を算出した。
試験例8〜11、比較例6〜9の比較から明らかなように、比率Pd2/Pd1=2とした試験例8〜11では、総抵抗が、それぞれ同等の平均粒径Pd1を有する比較例6〜9に対して低減している。このとき、平均粒径Pd1が10μmの試験例11において、総抵抗が60%に低減し、さらに、試験例8〜10のように、平均粒径Pd1が7μm、5μm、1μmと小さくなるほど、総抵抗が54%、36%、25%と低減しており、効果が高くなっている。したがって、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1は、好ましくは、10μm以下となるように調整されるのがよい。
Figure 2021150152
(比較例10〜11)
表4に示すように、上記試験例1と同様の構成の一体焼成体について、固体電解質体2を、ガーネット型固体電解質に代えて、ナシコン型固体電解質であるLi1+xAl(Ti,Ge)2-x(PO4)O3;0<x<1)としたときの、総抵抗の変化を調べた。このとき、粒子集合体2Aの平均粒径Pd1、粒子集合体2Aと多孔体2Bの平均粒径の比率Pd2/Pd1及び負極層13の空孔率を、上記試験例1と同様とした場合を比較例10、上記比較例1と同様とした場合を比較例11とした。比較例11(総抵抗=100%)に対する比較例10の総抵抗の割合を算出し、結果を上記試験例1、上記比較例1と共に表4に併記した。
比較例10〜11の比較から明らかなように、ナシコン型のリン酸化合物を用いた固体電解質体2においても、比率Pd2/Pd1=1の比較例11に対して、比率Pd2/Pd1=2とした比較例10において、総抵抗が80%に低減しているものの、比較例1に対する試験例1(総抵抗=30%)のように、大きな低減効果は見られない。したがって、固体電解質体2は、ガーネット型固体電解質にて構成されることが望ましく、ナシコン型固体電解質に比べて、比率Pd2/Pd1を調整することによる効果が高い。
Figure 2021150152
(実施形態2)
以下に、全固体電池に係る実施形態2について、図面を参照して説明する。
図14に示すように、全固体電池1を構成する固体電解質体2は、固体電解質粒子20の粒子間隙に、リチウム含有化合物4を有することができる。それ以外の固体電解質体2の基本構成、及び、固体電解質体2を含む全固体電池1の構成は、上記実施形態1と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
リチウム含有化合物4は、固体電解質体2の基本構成粒子である固体電解質粒子20の粒子間に形成される間隙に、他形な化合物として存在し、粒子間をリチウムイオン伝導可能に接続する。具体的には、リチウム含有化合物4は、リチウムイオン伝導性を有し、固体電解質体2の焼成温度において液相を形成する化合物であり、好適には、リチウム(Li)とホウ素(B)を含む化合物(以下、適宜、LB化合物と称する)が用いられる。LB化合物としては、Li3BO3、Li2+xx1-x3(0<x<1)等のリチウムホウ素含有酸化物が挙げられる。
このようなリチウム含有化合物4は、固体電解質粒子20を含む固体電解質スラリーに添加されて、焼成工程において液相を形成することにより、固体電解質粒子20の粒子間に浸入する(図14の左図参照)。このとき、液体の表面張力によって、隣接する固体電解質粒子20同士が引き寄せられて接触しやすくなり、粒子間の隙間が縮小する。その後、焼成時に粒子形状を維持する固体電解質粒子20(自形な化合物)の粒子間隙を埋めるように、リチウム含有化合物4(他形な化合物)が晶出する。これにより、固体電解質粒子20の界面における接触面積が増加すると共に、粒子間隙に含まれるリチウム含有化合物4がイオン伝導に寄与し、固体電解質体2の抵抗を低減可能とする。
なお、化合物が「自形」であるとは、結晶形態が明瞭であることを言う。これに対して、「他形」であるとは、結晶形態が明瞭でないことを言い、固体電解質体2Bでは、自形なガーネット型の固体電解質粒子20の間に、他形な化合物4であるリチウム含有化合物4が入り込んだ構造を有する。
リチウム含有化合物4は、少なくとも固体電解質体2の多孔体2Bにおいて、固体電解質粒子20である第2固体電解質粒子22の粒子間隙に含まれることが望ましく、多孔体2Bにおけるイオン伝導性を改善する。好適には、さらに、固体電解質体2の粒子集合体2Aにおいて、固体電解質粒子20である第1固体電解質粒子21の粒子間隙に含まれることが望ましく、粒子集合体2Aの粒子間の隙間を低減して緻密化に寄与する。
(実施形態3)
以下に、全固体電池に係る実施形態3について、図面を参照して説明する。
図15に示すように、全固体電池1を構成する固体電解質体2は、多孔体2Bの空孔23に露出する表面に、電子伝導性物質5を有することができる。それ以外の固体電解質体2の基本構成、及び、固体電解質体2を含む全固体電池1の構成は、上記実施形態1と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。
電子伝導性物質5は、具体的には、多孔体2Bの空孔23に露出する第2固体電解質粒子22の表面の少なくとも一部を覆って、電子伝導性の表面コート膜を形成することができる。電子伝導性物質5としては、好適には、銅(Cu)、金(Au)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)等の金属、又は、カーボン(C)等の電子伝導性を有する物質が用いられる。電子伝導性物質5の膜は、固体電解質体2を一体焼成した後に、蒸着法等を用いて形成することができる。あるいは、電子伝導性物質5のナノ粒子を含むスラリー等を用いて、多孔体2Bの空孔23の表面に電子伝導性物質5の膜を形成してもよい。
このような電子伝導性物質5の膜を、多孔体2Bの空孔23の表面に有する場合には、イオン伝導の経路となる多孔体2Bの表面と接して、電子伝導性の経路が形成されることになる。これにより、電子とイオンが会合する部分の面積が増大し、電池反応(Li++e→Li)が促進される。なお、図示の構成において、電子伝導性物質5の膜を有しない場合には、電子とイオンが会合する部分は、多孔体2Bと負極集電体15との接点のみとなるために、電池反応の進行が抑制される。これに対して、電子伝導性物質5の膜が形成される部分において、電池反応の進行が可能になり、さらなる抵抗低減が可能になる。
電子伝導性物質5は、多孔体2Bの空孔23の内表面を薄膜状に覆っていればよい。電子伝導性物質5による電子伝導は、一般的にイオン伝導に比べて高速であるため、微量で効果を有し、空孔23の全面を覆っていなくてもよい。電子伝導性物質5の配合量は、所望の効果が得られるように、適宜設定することができる。
(実施形態2、3による全固体電池1の製造工程)
図16に示すように、固体電解質体2は、ここでは、上記図1に示した構成において、上記図14に示したリチウム含有化合物4又は図15に示した電子伝導性物質5を追加した構成に対応する。固体電解質体2は、セパレータ層11となる粒子集合体2Aと負極層13の骨格となる多孔体2Bとを含むと共に、正極層12となる複合体2Cとの一体焼成体として構成される。セパレータ層11と各電極層10とは、それぞれLLZN粉等を含む固体電解質スラリーを用いて、シート状に成形され、それら各層用のシートを積層したものを焼成して一体化される。
セパレータ層11となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(11)、第2混合工程(12)と同様にして、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉を、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。図中の括弧内に示すように、リチウム含有化合物4を含む場合には、第1混合工程(11)において、LLZN粉と共に固体電解質スラリーに添加される。このリチウム含有化合物4を含む固体電解質スラリーを、シート成形工程(13)において、同様にシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、粒子集合体2Aとなる固体電解質シートとする。
負極層13の骨格となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(21)、第2混合工程(22)と同様にして、第2固体電解質粒子22となるLLZN粉と、造孔材とを、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。図中の括弧内に示すように、リチウム含有化合物4を含む場合には、第1混合工程(11)において、LLZN粉と共に固体電解質スラリーに添加される。このリチウム含有化合物4を含む固体電解質スラリーを、シート成形工程(23)において、同様にシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、多孔体2Bとなる固体電解質シートとする。
また、正極層12となる固体電解質スラリーは、上記図10における第1混合工程(31)、第2混合工程(32)と同様にして、第1固体電解質粒子21となるLLZN粉と、正極活物質31とを、有機溶媒に分散混合させたものに、さらに、バインダ溶液及び可塑剤を添加し均一混合して得られる。図中の括弧内に示すように、リチウム含有化合物4を含む場合には、第1混合工程(31)において、LLZN粉と共に固体電解質スラリーに添加される。このリチウム含有化合物4を含む固体電解質スラリーを、シート成形工程(33)において、公知のアプリケータを用いてシート成形を行うことによって(例えば、Gap:300μm)、正極層12となる所定厚さの固体電解質シートを得ることができる。この固体電解質スラリーを、シート成形工程(33)において、同様にシート成形を行い(例えば、Gap:300μm)、多孔体2Bとなる固体電解質シートとする。
なお、固体電解質スラリーに配合されるリチウム含有化合物4の割合は、液相による粒子の引き寄せ効果が得られる範囲で、焼成後の各層の構造に影響を及ぼさないように、適宜設定される。好適には、固体電解質スラリー中の固形分に対する配合割合が、10体積%〜40体積%の範囲となるように、リチウム含有化合物4を添加するのがよい。
次いで、積層工程(44)において、上記図10における積層工程(14)と同様にして、各シート成形工程13、23、33で得られた固体電解質シートを積層する。その後、同様にして、加圧成形工程(45)、焼成工程(46)において、WIP等を用いて加圧し(例えば、85℃×50MPa)、大気雰囲気で焼成することにより(例えば、750℃)、一体焼成体とする。
この一体焼成体に、電子伝導性物質5を導入する場合には、図中の括弧内に示すように、さらに、電子伝導性物質導入工程(400)が追加される。電子伝導性物質5の導入手法としては、例えば、電子伝導性物質5が銅(Cu)、金(Au)等の金属である場合は、原子層堆積法(ALD;Atomic Layer Deposition)等、原料の気相反応を用いた蒸着手法が採用されて、負極層13となる多孔体2Bの空孔23の表面に、電子伝導性物質5となる金属原子の層が形成される。あるいは、金属ナノパウダーを溶媒中に分散させたスラリーを調製し、得られたスラリーを多孔体2Bの空孔23内に流し込んで、表面に金属ナノパウダーを導入する手法が用いられる。また、電子伝導性物質5がカーボン(C)等である場合には、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させて、得られたスラリーを多孔体2Bの空孔23内に流し込んで、表面に金属ナノパウダーを導入する手法を用いることができる。
さらに、正極集電体形成工程(47)において、一体焼成体の正極層12側に、金(Au)ペーストを塗工して焼き付け(例えば、450℃)、正極集電体14を形成する。また、負極集電体形成工程(48)において、一体焼成体の負極層13側に、銅(Cu)ペーストを塗工して焼き付け(例えば、150℃)、負極集電体15を形成する。
このようにして、片面に多孔体2Bを有する正極一体の固体電解質体2を基本骨格として有し、リチウム含有化合物4を粒子間隙に含み、又は、電子伝導性物質5を多孔体2Bの空孔23表面に含む全固体電池1が得られる。リチウム含有化合物4を粒子間隙に含み、又は、電子伝導性物質5を多孔体2Bの空孔23表面に含む構成は、上記図7、図8に示した構成に適用することももちろんできる。
(試験例12)
表5に示すように、上記試験例1と同様の構成の一体焼成体について、固体電解質体2及び正極層12を構成する固体電解質スラリーに、リチウム含有化合物4を添加したときの効果を調べた。リチウム含有化合物4としては、LB化合物(例えば、Li3BO3;平均粒径Pd:0.5μm)が用いられ、10体積%〜40体積%の範囲で添加した。この比較例12について、上記比較例1に対する総抵抗の割合を算出し、上記試験例1、比較例1の結果と共に表5に併記した。
試験例1、12、比較例1の比較から明らかなように、固体電解質スラリーにリチウム含有化合物4を添加した試験例12では、総抵抗が23%に低減しており、試験例1(総抵抗=30%)よりも抵抗低減に高い効果が得られた。
Figure 2021150152
(試験例13)
表5に示すように、上記試験例1と同様の構成の一体焼成体について、上記図16に示した手順により、固体電解質体2の多孔体2Bの空孔23に露出する表面に、電子伝導性物質5の膜を形成したときの効果を調べた。電子伝導性物質5としては、金属材料(例えば、Au)が用いられ、ALD法によって、多孔体2Bの空孔23内に、電子伝導性物質5の薄膜を形成した。この比較例13について、上記比較例1に対する総抵抗の割合を算出し、表5に併記した。
試験例1、13、比較例1の比較から明らかなように、固体電解質体2において、負極層13の骨格となる多孔体2Bの内表面に、電子伝導性物質5を導入した試験例13では、総抵抗が13%に低減しており、試験例12よりもさらに抵抗が低減する効果が得られた。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
例えば、上記各実施形態の構成の固体電解質体を備える全固体電池は、車両等の移動体用に限らず、家庭用の各種機器等、任意の用途に用いられる全固体電池その他、任意の用途に適用することができる。
1 全固体電池
10 電極層
11 セパレータ層
2 固体電解質体
2A 粒子集合体
2B 多孔体
2C 複合体
20 固体電解質粒子
21 第1固体電解質粒子
22 第2固体電解質粒子

Claims (10)

  1. リチウムイオン伝導性を有するセパレータ層(11)を挟んで一対の電極層(10)が配置される全固体電池(1)であって、
    ガーネット型の固体電解質粒子(20)を基本構成粒子とする固体電解質体(2)を基本骨格として備えており、
    上記固体電解質体は、上記セパレータ層となる粒子集合体(2A)と、一対の上記電極層のうちの少なくとも一方の骨格となる多孔体(2B)とを含む一体焼成体であって、上記粒子集合体の平均粒径Pd1と上記多孔体の平均粒径Pd2とは、Pd2>Pd1の関係にある、全固体電池。
  2. 上記平均粒径Pd1に対する上記平均粒径Pd2の比率Pd2/Pd1は、1.5以上である、請求項1に記載の全固体電池。
  3. 上記固体電解質粒子は、リチウムランタンジルコニウム系複合酸化物を含む粒子であり、上記平均粒径Pd1は、10μm以下である、請求項1又は2に記載の、全固体電池。
  4. 上記多孔体は、空孔率が40体積%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体電池。
  5. 一対の上記電極層は、正極層(12)及び負極層(13)であり、
    上記固体電解質体は、上記粒子集合体と、上記負極層となる上記多孔体とからなり、
    上記正極層は、上記固体電解質粒子と正極活物質(31)とを含む複合体(2C)であって、上記複合体は、上記固体電解質体との一体焼成体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体電池。
  6. 上記負極層は、上記多孔体に、負極活物質(32)が充填されて構成される、請求項5に記載の全固体電池。
  7. 一対の上記電極層は、正極層(12)及び負極層(13)であり、
    上記固体電解質体は、上記粒子集合体と、上記正極層となる上記多孔体及び上記負極層となる上記多孔体とからなり、
    上記正極層は、上記多孔体に、正極活物質(31)が充填されて構成されており、
    上記負極層は、上記多孔体に、負極活物質(32)が充填されて構成されるか、又は、上記固体電解質体に、上記負極活物質を含む層が積層されて構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体電池。
  8. 上記固体電解質体は、上記固体電解質粒子の粒子間隙に、リチウム含有化合物(4)を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の全固体電池。
  9. 上記リチウム含有化合物は、リチウムホウ素含有酸化物である、請求項8に記載の全固体電池。
  10. 上記固体電解質体は、上記多孔体の空孔(23)に露出する表面に、電子伝導性物質(5)を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の全固体電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7551169B2 (ja) 2020-08-18 2024-09-17 TeraWatt Technology株式会社 リチウム2次電池

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