JP2020192737A - 防湿性積層体および紙容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】パルプ繊維を離解してリサイクルすることが可能であり、水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下する懸念が少ない防湿性積層体とそれを用いた紙容器を提供する。【解決手段】第1紙基材1の一方の面上に水蒸気バリア層2、オーバーコート層3、接着層4および第2紙基材5をこの順に有する防湿性積層体10であって、前記水蒸気バリア層2が、水懸濁性高分子と層状無機化合物を含有し、前記オーバーコート層3が、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有する防湿性積層体10である。また当該防湿性積層体10を用いた紙容器である。【選択図】図1
Description
本発明は、防湿性積層体およびそれを用いた紙容器に関する。
重量物を包装する重袋用の包装用紙に防湿性を付与する場合がある。防湿性を付与した包装用紙としては、ポリエチレンやポリプロピレンをクラフト紙にラミネートしたポリオレフィンラミネート紙があり、セメント、飼料、肥料、洗剤、塩などの包装袋として使用されている。
しかし、ポリオレフィンラミネート紙のパルプ繊維を離解させるためには、ポリオレフィンフィルムと紙基材とを分離する必要があるため、パルプ繊維を分離してリサイクルすることは困難であった。
従来から、パルプ繊維をリサイクル可能な防湿性積層体の開発が進められている。例えば、特許文献1には、紙基材上の少なくとも片面に平板状顔料とSBRからなる防湿層を形成し、その上に合成樹脂ラテックスから得られる被覆層を設けた防湿性積層体が開示されている。また、特許文献2には、紙基材の少なくとも片面にフィロケイ酸塩化合物と合成樹脂からなる防湿層を有する防湿性積層体であって、合成樹脂がスチレン−ブタジエン系共重合体であり、防湿層がポリオキシエチレンフェニルエーテル化合物を含有する易離解性防湿性積層体が開示されている。また、特許文献3には、紙基材の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物と含窒素化合物とを含む防湿層を設けた防湿性積層体が開示されている。
特許文献1および特許文献2に記載された防湿性積層体は、いずれも、紙基材の片面に防湿層のみを設けたものであるため、重量物を包装する重袋への適用を想定した場合、擦れや引っかけによって防湿層が破損して、防湿性の低下を招く懸念がある。特許文献3に記載された防湿性積層体は、紙基材の防湿層の上に被覆層を設けてはいるものの、被覆層は薄い層であるため、依然として防湿性の低下を招く懸念を有していた。
防湿性積層体を包装容器として使用するときは、防湿性積層体を所定の形状に切断した後、袋状や立体形状に折り曲げる必要があるが、折り曲げ部では、紙基材上の防湿層が局部的に大きく引き延ばされる。そのため、防湿層に微細な亀裂等が発生して、包装容器の防湿性が低下するという懸念が存在する。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、パルプ繊維を離解してリサイクルすることが可能であり、水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下する懸念が少ない防湿性積層体とそれを用いた紙容器を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解消し得る防湿性積層体の構成について検討を加えた。その結果、水蒸気バリア層(防湿層)の上にオーバーコート層を設けることによって、折り曲げ部の水蒸気バリア層における微細な亀裂の発生を抑制できることを見出した。また、オーバーコート層の上に接着層を形成し、その上に第2の紙基材を積層することによって、水蒸気バリア層が直接外部に露出することがない構成とした。水蒸気バリア層を2枚の紙基材で挟んだ構成とすることによって、折り曲げ、擦れ、引っかけ等により水蒸気バリア性が低下することが防止され、防湿性積層体としての機械的強度も向上する。本発明はこのような知見を踏まえて完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
(1)第1紙基材の一方の面上に水蒸気バリア層、オーバーコート層、接着層および第2紙基材をこの順に有する防湿性積層体であって、前記水蒸気バリア層が、水懸濁性高分子と層状無機化合物を含有し、前記オーバーコート層が、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有する防湿性積層体。
(2)前記第1紙基材の坪量が30〜200g/m2であり、前記第2紙基材の坪量が100〜600g/m2である前記(1)に記載の防湿性積層体。
(3)前記第1紙基材の坪量が前記第2紙基材の坪量より小さい前記(1)または前記(2)に記載の防湿性積層体。
(4)前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリル系樹脂および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有する前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(5)前記エチレン・アクリル系共重合体におけるアクリル系単量体の含有量が1〜50mo1%である前記(4)に記載の防湿性積層体。
(6)前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよび3−ヒドロキシブタン酸・3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体の少なくとも1つである前記(4)または前記(5)に記載の防湿性積層体。
(7)前記層状無機化合物は、アスペクト比が100以上であり、厚さが100nm以下である前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(8)前記層状無機化合物が、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種である前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(9)前記水蒸気バリア層が、カチオン性樹脂を含有する前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(10)前記カチオン性樹脂が、ポリアミン、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種である前記(9)に記載の防湿性積層体。
(11)前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(12)前記オーバーコート層の前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体またはスチレン・ブタジエン系共重合体である前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
(13)前記(1)〜(12)のいずれか1項に記載の防湿性積層体を用いた紙容器。
本発明の防湿性積層体は、パルプ繊維を離解してリサイクルすることが可能であり、水蒸気バリア性に優れ、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下する懸念が少ない。
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態の防湿性積層体は、第1紙基材の一方の面上に水蒸気バリア層、オーバーコート層、接着層および第2紙基材をこの順に有している。
以下、本実施形態の防湿性積層体を構成する各層について説明する。
以下、本実施形態の防湿性積層体を構成する各層について説明する。
[紙基材]
本実施形態に用いられる紙基材は、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等を挙げることができる。紙基材としては、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
本実施形態に用いられる紙基材は、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等を挙げることができる。紙基材としては、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
特に、第1紙基材としては、晒または未晒クラフト紙、片艶紙、上質紙、塗工紙等が好ましい。また、第2紙基材としては、ライナー紙、塗工紙、板紙、白板紙、コートボール等が好ましい。
紙基材のJIS P8121:2012に準じて測定した離解フリーネス(濾水度)は、バリア性を向上させる観点から、800ml以下とすることが好ましく、500ml以下がより好ましい。ここで、離解フリーネスとは、抄紙後の紙をJIS P8220−1に準拠して離解したパルプを、JIS P8121:2012に準拠して測定したカナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness)のことである。離解フリーネスを調製するためにパルプを叩解する方法については、公知の方法を使用することができる。
紙基材のサイズ度は、特に限定されないが、水蒸気バリア性を向上させる観点から、JIS P 8122:2004に準ずるステキヒトサイズ度を1秒以上とすることが好ましい。紙基材のサイズ度は、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等の内添サイズ剤の種類や含有量、パルプの種類、平滑化処理等によって制御することができる。内添サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、紙基材のパルプ100質量部に対して0〜3質量部程度の範囲が好ましい。
紙基材には、公知の内添薬品を適宜添加することができる。内添薬品としては、例えば、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、紙力増強剤、歩留り向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料・顔料等を挙げることができる。
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(例えば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用する。抄紙機によって形成された紙層は、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
第1紙基材は、水蒸気バリア層とオーバーコート層を形成する際のベースとなる基材である。そのため、取扱性、加工性の観点から、第1紙基材の坪量は、30〜200g/m2であることが好ましく、35〜100g/m2であることがより好ましい。
一方、第2紙基材は、水蒸気バリア層とオーバーコート層を外的要因から保護し、防湿性積層体としての機械的強度を増大させる機能を有している。そのため、第2紙基材の坪量は、100〜600g/m2であることが好ましく、200〜500g/m2であることがより好ましい。また、上記のように第1紙基材と第2紙基材の機能の違いから、第1紙基材の坪量は、第2紙基材の坪量より小さいことが好ましい。
[水蒸気バリア層]
水蒸気バリア層は、水蒸気の透過を阻止する機能を有する防湿層であり、第1紙基材の面上に積層されている。水蒸気バリア層は、水懸濁性高分子と層状無機化合物とを含有している。また、水蒸気バリア層は、さらにカチオン性樹脂を含有してもよい。
水蒸気バリア層は、水蒸気の透過を阻止する機能を有する防湿層であり、第1紙基材の面上に積層されている。水蒸気バリア層は、水懸濁性高分子と層状無機化合物とを含有している。また、水蒸気バリア層は、さらにカチオン性樹脂を含有してもよい。
(層状無機化合物)
層状無機化合物の形態は、平板状である。層状無機化合物と水懸濁性高分子との混合溶液を作成し、紙基材上に塗工すると、水蒸気バリア層が形成される。水蒸気バリア層内においては、平板状の層状無機化合物が紙基材の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列する。そうすると、紙基材の平面方向では、層状無機化合物が存在していない領域の面積が小さくなることから、水蒸気の透過が抑制される。また、紙基材の厚さ方向では、平板状の層状無機化合物が紙基材平面に対して平行に配列した状態で存在するため、水蒸気バリア層中の水蒸気は層状無機化合物を迂回しながら透過することとなり、水蒸気の透過が抑制される。その結果、水蒸気バリア層は優れた水蒸気バリア性を発現することができる。
層状無機化合物の形態は、平板状である。層状無機化合物と水懸濁性高分子との混合溶液を作成し、紙基材上に塗工すると、水蒸気バリア層が形成される。水蒸気バリア層内においては、平板状の層状無機化合物が紙基材の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列する。そうすると、紙基材の平面方向では、層状無機化合物が存在していない領域の面積が小さくなることから、水蒸気の透過が抑制される。また、紙基材の厚さ方向では、平板状の層状無機化合物が紙基材平面に対して平行に配列した状態で存在するため、水蒸気バリア層中の水蒸気は層状無機化合物を迂回しながら透過することとなり、水蒸気の透過が抑制される。その結果、水蒸気バリア層は優れた水蒸気バリア性を発現することができる。
層状無機化合物の厚さは、100nm以下であることが好ましい。層状無機化合物の厚さは、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。層状無機化合物の平均厚さが小さい方が、水蒸気バリア層中における層状無機化合物の積層数が大きくなるため、高い水蒸気バリア性を発揮することができる。ここで、水蒸気バリア層中に含まれている状態での層状無機化合物の厚さは、以下のようにして求められる。まず、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に層状無機化合物が20〜30個程度含まれる倍率とする。次に、画面内の層状無機化合物の個々の層状無機化合物の厚さを測定する。そして、得られた厚さの平均値を算出して、層状無機化合物の厚さとする。
層状無機化合物の長さは、1μm〜100μmであることが好ましい。長さが1μm以上であると、層状無機化合物が紙基材に対して平行に配列し易い。また、長さが100μm以下であると層状無機化合物の一部が水蒸気バリア層から突出する懸念が少ない。ここで、水蒸気バリア層中に含まれている状態での層状無機化合物の長さは、以下のようにして求められる。まず、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に層状無機化合物が20〜30個程度含まれる倍率とする。次に、画面内の層状無機化合物の個々の層状無機化合物の長さを測定する。そして、得られた長さの平均値を算出して、層状無機化合物の長さとする。尚、層状無機化合物の長さは、粒子径という表現で記載されることもある。
層状無機化合物のアスペクト比は、100以上であることが好ましい。アスペクト比が100以上であると、所定の透湿度を達成することが可能となる。層状無機化合物のアスペクト比は、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましく、500以上が特に好ましい。アスペクト比が大きいほど、水蒸気の透過が抑制され、水蒸気バリア性が向上する。また、アスペクト比が大きいほど、層状無機化合物の添加量を低減させることができる。アスペクト比の上限は特に限定されず、塗工液の粘度の観点から10000以下程度が好ましい。ここで、アスペクト比とは、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影し、上記した方法で得られた層状無機化合物の平均長さをその平均厚さで除した値である。
層状無機化合物の具体例としては、雲母族、脆雲母族等のマイカ、合成マイカ、ベントナイト、カオリナイト(カオリン鉱物)、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイトなどが挙げられる。
層状無機化合物の中でも、バリア性を向上させる観点から、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。マイカとしては、合成マイカ、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。また、ベントナイトとしては、モンモリロナイトが挙げられる。カオリンは、長石を含む岩石の風化によってできた粘土であり、カオリナイトが主成分である。タルクは、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物であり、滑石とも呼ばれる。
層状無機化合物の含有量は、水蒸気バリア層の全固形分中80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。一方、層状無機化合物の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。層状無機化合物のアスペクト比を大きくし、厚さを小さくすることによって、層状無機化合物の含有量を低減させることができ、水蒸気バリア層からの層状無機化合物の脱落を抑えることができる。
層状無機化合物の含有量は、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1〜800質量部であることが好ましい。層状無機化合物の含有量は、好ましくは、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して1〜400質量部であり、より好ましくは、1〜200質量部であり、さらに好ましくは1〜100質量部であり、特に好ましくは1〜50質量部であり、最も好ましくは1〜20質量部である。層状無機化合物の含有量が、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1質量部以上であると、水蒸気バリア性が発現し易い。また、層状無機化合物の含有量が、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して800質量部以下であると、層状無機化合物の一部が層表面から露出し難くなるので、水蒸気バリア性が低下しにくくなる。また、層状無機化合物の含有量が水蒸気バリア層の水懸濁性高分子100質量部に対して800質量部以下であると、ガスバリア層の塗工性が良好となり、均一なガスバリア層が形成されるようになるので、ガスバリア性も良好となる。
(カチオン性樹脂)
本発明者らは、層状無機化合物を含有する水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上することを見出した。
本発明者らは、層状無機化合物を含有する水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上することを見出した。
カチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上する理由については、以下のように考えている。層状無機化合物は、平板状の形態の平面部分がアニオン性、エッジ部分がカチオン性に帯電し易いため、層状無機化合物が相互に立体的に凝集した、いわゆるカードハウス構造をとることが知られている。このカードハウス構造のために、層状無機化合物の水分散液の粘度は非常に高くなる。一方、カードハウス構造は攪拌などにより力を加えると簡単に壊れるため、層状無機化合物の水分散液はチキソトロピー性を示す。
層状無機化合物の水分散液に、適切なカチオン性樹脂を添加すると、層状無機化合物のアニオン性の平面部分にカチオン性樹脂が吸着することによって、カードハウス構造が破壊される。その結果、層状無機化合物が立体的に凝集することが抑制され、平板状の層状無機化合物が紙基材平面に対して平行に積層し易くなり、水蒸気バリア性の向上につながるものと推定している。
カチオン性樹脂の具体例としては、ポリアミン、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどを挙げることができる。これらの中でも、ポリアミン、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
カチオン性樹脂は、表面電荷が0.1〜10meq/gであることが好ましく、0.1〜5.0meq/gであることがより好ましい。カチオン性樹脂の表面電荷が前記範囲内であると、カードハウス構造を破壊することが可能であり、後記するアニオン性バインダーとも適度に共存することができる。
なお、カチオン性樹脂の表面電荷は、以下に記載する方法で測定する。まず、試料となる重合体を水に溶解して、重合体濃度1ppmの溶液を得る。その溶液に対し、チャージアナライザーMutek PCD−04型(BTG社製)を用いて、0.001Nポリエチレンスルホン酸ナトリウムを滴下して電荷量を測定する。
水蒸気バリア層におけるカチオン性樹脂の含有量は、水蒸気バリア層に使用される層状無機化合物とアニオン性バインダーの種類に応じて適宜決定すればよいが、バリア性を向上させる観点から、層状無機化合物100質量部に対して、1〜300質量部が好ましく、1〜250質量部がより好ましく、10〜150質量部がさらに好ましく、20〜150質量部が特に好ましく、20〜100質量部が最も好ましい。
また、カチオン性樹脂の含有量は、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.1〜15質量部であることがより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。
(水懸濁性高分子)
水懸濁性高分子は、水に懸濁することが可能な高分子のことであり、塗工膜を形成する際に、水を溶媒とした塗工液を調整することが容易である。水懸濁性高分子は、塗工膜の形成においてバインダーとして機能するため、層状無機化合物等を含有する塗膜を紙基材上に形成することができる。水懸濁性高分子の骨格となるポリマーとしては、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリル系樹脂および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有することが好ましく、エチレン・アクリル系共重合体またはスチレン・ブタジエン系共重合体または生分解性樹脂であることがより好ましい。
水懸濁性高分子は、水に懸濁することが可能な高分子のことであり、塗工膜を形成する際に、水を溶媒とした塗工液を調整することが容易である。水懸濁性高分子は、塗工膜の形成においてバインダーとして機能するため、層状無機化合物等を含有する塗膜を紙基材上に形成することができる。水懸濁性高分子の骨格となるポリマーとしては、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリル系樹脂および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有することが好ましく、エチレン・アクリル系共重合体またはスチレン・ブタジエン系共重合体または生分解性樹脂であることがより好ましい。
水懸濁性高分子の具体例を以下に説明する。エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル及びマレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸単量体又はその塩が挙げられる。エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体は、1種類であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。
エチレン・アクリル系共重合体は、エチレンと上記のアクリル系単量体とを乳化重合することによって得られる共重合体である。アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などが好適である。エチレン・アクリル系共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体およびエチレン・メタクリル酸ブチル共重合体のうちいずれか1種以上であることが好ましい。共重合体には、エチレンおよびアクリル系単量体と共重合可能なその他の化合物からなる単量体が少量共重合されていてもよい。
エチレン・アクリル系共重合体の具体例としては、例えばエチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液が、ザイクセン(登録商標)AC等(アクリル酸の共重合比率20%、住友精化株式会社製)として市販されており、容易に入手し利用することができる。
エチレン・アクリル系共重合体は、アクリル系単量体単位の含有量が1〜50mol%であることが好ましい。アクリル系単量体単位の含有量がこの範囲にあるとき、溶融温度が60〜120℃となり、良好なヒートシール性を発現する優れたエチレン・アクリル系共重合体となる。エチレン・アクリル系共重合体におけるアクリル系単量体単位の含有量は、10〜30mol%であることがより好ましい。
エチレン・アクリル系共重合体の重量平均分子量は、塗工液粘度や塗工膜の強度の観点から、1万〜1000万が好ましく、10万〜500万がより好ましい。
エチレン・アクリル系共重合体の含有割合は、特に限定されないが、水蒸気バリア層の全固形分中20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂の具体例としては、特に限定されず、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、3−ヒドロキシブタン酸・3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が挙げられる。紙基材を用いた包装材料等は、熱可塑性樹脂を用いた包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
生分解性樹脂の具体例としては、特に限定されず、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、3−ヒドロキシブタン酸・3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が挙げられる。紙基材を用いた包装材料等は、熱可塑性樹脂を用いた包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
水蒸気バリア層における水懸濁性高分子(バインダー)は、アニオン性であることが好ましい。バインダーが、アニオン性であることにより、水蒸気バリア性がより向上する。前記したように、層状無機化合物の平面部分はアニオン性であるが、カチオン性樹脂が吸着すると表面がカチオン性になる。そのため、アニオン性であるバインダーとの親和性が高まることとなる。
水蒸気バリア層には、水懸濁性高分子、層状無機化合物、カチオン性樹脂以外に、必要に応じて適宜、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを添加することが可能である。
水蒸気バリア層の厚さは、1〜30μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。また、水蒸気バリア層の塗工量は、固形分として、1〜30g/m2であることが好ましく、3〜20g/m2であることがより好ましい。
[オーバーコート層]
オーバーコート層は、水蒸気バリア層の上に形成される層であり、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有している。
オーバーコート層は、水蒸気バリア層の上に形成される層であり、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有している。
防湿性積層体を包装容器として使用する場合には、防湿性積層体を所定の形状に切断した後、袋状や立体形状に折り曲げて、端部を接着等によって密閉する。このとき、防湿性積層体の折り曲げ部では、紙基材上の水蒸気バリア層が局部的に大きく引き延ばされ、水蒸気バリア層に微細な亀裂等が発生するおそれがある。
そこで、本発明者らは、水蒸気バリア層の上にオーバーコート層を形成することを検討した。水蒸気バリア層の上にオーバーコート層が存在すると、水蒸気バリア層とオーバーコート層とが相互に密着するため、折り曲げ加工された際に、水蒸気バリア層とオーバーコート層とが一体となって変形するようになり、水蒸気バリア層の表層に微細な亀裂が生じ難くなる。その結果、防湿性積層体の折り曲げによる水蒸気バリア性の低下を抑制することが可能となる。
オーバーコート層として、水溶性高分子を含有する層を用いると、ガスバリア性に優れたガスバリア層とすることができる。ガスバリア層は、酸素ガスや匂い成分の透過を阻止する機能を有する層である。
(水溶性高分子)
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
これらの中でも、完全ケン化もしくは部分ケン化したポリビニルアルコール、または変性ポリビニルアルコールは、ガスバリア性がより優れていることから、好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
水溶性高分子の含有量は、ガスバリア層の全固形分中50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。
ガスバリア層には、水蒸気バリア層と同様に、前記した層状無機化合物を含有させてもよい。層状無機化合物をガスバリア層に含有させる場合、層状無機化合物の含有量は、特に限定されないが、ガスバリア層の水溶性高分子100質量部に対して、1〜20質量部程度が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。層状無機化合物としては、バリア性を向上させる観点から、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ガスバリア層に含有させる層状無機化合物は、水蒸気バリア層に含有させる層状無機化合物と同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
ガスバリア層は、水溶性高分子と層状無機化合物以外に、必要に応じて適宜、顔料、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを添加することが可能である。ガスバリア層には、層状無機化合物を水蒸気バリア層で使用できるものの中から適宜選択して含有させることができる。
オーバーコート層は、水溶性高分子または水懸濁性高分子のいずれかを含有する。水溶性高分子および水懸濁性高分子の内容は前記したとおりである。オーバーコート層が水溶性高分子で構成されているとき、オーバーコート層はガスバリア層と同種の層となる。また、オーバーコート層が水懸濁性高分子で構成されているとき、オーバーコート層は水蒸気バリア層と同種の層となる。また、オーバーコート層として、生分解性樹脂を用いると、オーバーコート層に生分解性を付与することができる。生分解性樹脂の具体例は前記したとおりである。
オーバーコート層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。また、オーバーコート層の塗工量は、固形分として、0.1〜10g/m2であることが好ましく、0.5〜5g/m2であることがより好ましい。
(接着層)
接着層は、オーバーコート層の上に形成され、第2紙基材を接合させるために設けられた層である。接着層は、その下の水蒸気バリア層とオーバーコート層を保護する役割も担うため、折り曲げ加工された際に、水蒸気バリア層とオーバーコート層の表層に微細な亀裂が生じ難くなる。
接着層は、オーバーコート層の上に形成され、第2紙基材を接合させるために設けられた層である。接着層は、その下の水蒸気バリア層とオーバーコート層を保護する役割も担うため、折り曲げ加工された際に、水蒸気バリア層とオーバーコート層の表層に微細な亀裂が生じ難くなる。
接着層に使用される接着剤としては、変性ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、澱粉、生分解性樹脂等が挙げられる。
接着層に使用される接着剤には、紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、接着調整剤等を適宜添加してもよい。
接着層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。また、接着層の塗工量は、固形分として、0.1〜10g/m2であることが好ましく、0.5〜5g/m2であることがより好ましい。
(第2紙基材)
第2紙基材を積層することによって、水蒸気バリア層とオーバーコート層が外部に露出しない構成となる。すなわち、水蒸気バリア層とオーバーコート層を2枚の紙基材で挟んだ構成とすることによって、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下する懸念が低減し、防湿性積層体としての機械的強度の向上を図ることができる。また、第2紙基材のおもて面(第1紙基材に面していない面)には、塗工層を設けたり、印刷を施すことが可能である。第2紙基材の内容については、前記したとおりである。
第2紙基材を積層することによって、水蒸気バリア層とオーバーコート層が外部に露出しない構成となる。すなわち、水蒸気バリア層とオーバーコート層を2枚の紙基材で挟んだ構成とすることによって、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下する懸念が低減し、防湿性積層体としての機械的強度の向上を図ることができる。また、第2紙基材のおもて面(第1紙基材に面していない面)には、塗工層を設けたり、印刷を施すことが可能である。第2紙基材の内容については、前記したとおりである。
[防湿性積層体]
図1は、本発明の実施形態における防湿性積層体10の層構成を示す模式的断面図である。第1紙基材1の一方の面上に水蒸気バリア層2、オーバーコート層3、接着層4および第2紙基材5がこの順で存在している。
図1は、本発明の実施形態における防湿性積層体10の層構成を示す模式的断面図である。第1紙基材1の一方の面上に水蒸気バリア層2、オーバーコート層3、接着層4および第2紙基材5がこの順で存在している。
防湿性積層体の坪量は、特に限定されないが、130〜800g/m2であることが好ましく、150〜600g/m2がより好ましい。
防湿性積層体は、水蒸気バリア性を有する包装材料としての観点から、透湿度(水蒸気透過度)が50g/m2・24h・atm以下であることが好ましく、20g/m2・24h・atm以下であることがより好ましい。透湿度は、JIS Z 0208に準じて測定することができる。
防湿性積層体は、紙基材、水蒸気バリア層、オーバーコート層および接着層を基本的な構成としている。水蒸気バリア層、オーバーコート層、接着層は、水溶性や水懸濁性の樹脂を適切に選択することにより、水中にて撹拌することにより微分散させることが可能である。そのため、防湿性積層体は、水中で離解操作を行うことにより、紙基材中の木材パルプを、パルプ繊維として回収し、リサイクルすることが可能である。
[防湿性積層体の製造方法]
防湿性積層体は、第1紙基材上に、水蒸気バリア層、オーバーコート層および接着層を順次塗工し、その後第2紙基材と貼り合わせることにより、製造することができる。各層を塗工して形成する方法は、適宜公知の方法を選択して行うことができる。
防湿性積層体は、第1紙基材上に、水蒸気バリア層、オーバーコート層および接着層を順次塗工し、その後第2紙基材と貼り合わせることにより、製造することができる。各層を塗工して形成する方法は、適宜公知の方法を選択して行うことができる。
塗工液の溶媒としては、特に制限はなく、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンもしくはトルエンなどの有機溶媒を用いることができる。
塗工液を紙基材に塗工するための塗工設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いることができる。塗工設備としては、例えば、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。特に水蒸気バリア層の形成には、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの塗工表面をスクレイプするコーターが層状無機化合物の配向を促すという点で好ましい。
本実施形態の防湿性積層体は、上記の優れた水蒸気バリア性を生かして、食品、医療品、電子部品等の紙容器として好適に用いることができる。特に、本実施形態の防湿性積層体は、機械的強度に優れ、折り曲げ、擦れ、引っかけ等によって水蒸気バリア性が低下することが少ないため、防湿性重袋用の紙容器として好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明の防湿性積層体をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例・比較例に用いた原材料は以下のとおりである。
(1)紙基材
晒クラフト紙(第1紙基材):坪量50g/m2、厚さ60μm
板紙(第2紙基材):坪量450g/m2、厚さ500μm
(2)層状無機化合物
合成マイカ:膨潤性マイカ、粒子径6.3μm、アスペクト比約1000、厚さ約5nm、製品名:NTO−05、トピー工業社製、固形分6%の水分散液
カオリン:エンジニアードカオリン、粒子径10μm、アスペクト比約100、厚さ約100nm、製品名:バリサーフHX、イメリス社製
(3)水懸濁性高分子
自己乳化型ポリオレフィン:オレフィン・不飽和カルボン酸系樹脂エマルジョン、固形分29.2%、製品名:ザイクセンAC、住友精化株式会社製
(4)水溶性高分子
変性ポリビニルアルコール:エチレン変性ポリビニルアルコール、完全ケン化型、製品名:エクセバールAQ−4104、クラレ社製
(5)接着剤
変性ビニル共重合樹脂接着剤:ライフボンドAV−425、日栄加工社製
酢酸ビニル系接着剤:製品名ビニブラン1129、日信化学工業社製
ポリ乳酸系接着剤:製品名ランディPL−3000、ミヨシ油脂社製
(1)紙基材
晒クラフト紙(第1紙基材):坪量50g/m2、厚さ60μm
板紙(第2紙基材):坪量450g/m2、厚さ500μm
(2)層状無機化合物
合成マイカ:膨潤性マイカ、粒子径6.3μm、アスペクト比約1000、厚さ約5nm、製品名:NTO−05、トピー工業社製、固形分6%の水分散液
カオリン:エンジニアードカオリン、粒子径10μm、アスペクト比約100、厚さ約100nm、製品名:バリサーフHX、イメリス社製
(3)水懸濁性高分子
自己乳化型ポリオレフィン:オレフィン・不飽和カルボン酸系樹脂エマルジョン、固形分29.2%、製品名:ザイクセンAC、住友精化株式会社製
(4)水溶性高分子
変性ポリビニルアルコール:エチレン変性ポリビニルアルコール、完全ケン化型、製品名:エクセバールAQ−4104、クラレ社製
(5)接着剤
変性ビニル共重合樹脂接着剤:ライフボンドAV−425、日栄加工社製
酢酸ビニル系接着剤:製品名ビニブラン1129、日信化学工業社製
ポリ乳酸系接着剤:製品名ランディPL−3000、ミヨシ油脂社製
(実施例1)
合成マイカの水分散液19.7部に、攪拌しながら自己乳化型ポリオレフィン34.3部を加え、攪拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1.7部を加え、攪拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.1 部を加え、攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、オーバーコート層用塗工液とした。
合成マイカの水分散液19.7部に、攪拌しながら自己乳化型ポリオレフィン34.3部を加え、攪拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1.7部を加え、攪拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.1 部を加え、攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、オーバーコート層用塗工液とした。
そして、水蒸気バリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が6g/m2となるように、晒クラフト紙にメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、水蒸気バリア層を形成した。さらに、水蒸気バリア層上のオーバーコート層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/m2となるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、オーバーコート層を形成した。
板紙の被塗工面に、変性ビニル共重合樹脂接着剤の塗工量(乾燥後)が5g/m2となるように塗布し、その後上記で得られた晒クラフト紙積層体の塗工面が接着層と接するように貼り合わせて、防湿性積層体を作製した。
(実施例2)
オーバーコート層用塗工液を自己乳化型ポリオレフィンに変更した以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
オーバーコート層用塗工液を自己乳化型ポリオレフィンに変更した以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
(実施例3)
接着剤をポリ乳酸系接着剤に変更した以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
接着剤をポリ乳酸系接着剤に変更した以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
(実施例4)
カオリンを水に分散させて、固形分55%のカオリン水分散液を得た。攪拌しながら自己乳化型ポリオレフィン45部に対してカオリン水分散液47.8部を加え、攪拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1部を加え、攪拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.16部を加え、攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、オーバーコート層用塗工液とした。
カオリンを水に分散させて、固形分55%のカオリン水分散液を得た。攪拌しながら自己乳化型ポリオレフィン45部に対してカオリン水分散液47.8部を加え、攪拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1部を加え、攪拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.16部を加え、攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、オーバーコート層用塗工液とした。
そして、水蒸気バリア用塗工液の塗工量(乾燥後)が12g/m2となるように、晒クラフト紙にメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、水蒸気バリア層を形成した。さらに、水蒸気バリア層上のオーバーコート層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/m2となるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、オーバーコート層を形成した。
板紙の被塗工面に、酢酸ビニル系接着剤を塗工量(乾燥後)が5g/m2となるように塗布し、その後上記で得られた晒クラフト紙積層体の塗工面が接着剤に接するように貼り合わせて、防湿性積層体を作製した。
(実施例5)
オーバーコート層用塗工液を自己乳化型ポリオレフィンに変更した以外は、実施例4と同様にして、防湿性積層体を作製した。
オーバーコート層用塗工液を自己乳化型ポリオレフィンに変更した以外は、実施例4と同様にして、防湿性積層体を作製した。
(比較例1)
オーバーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
オーバーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、防湿性積層体を作製した。
(比較例2)
オーバーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、防湿性積層体を作製した。
オーバーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、防湿性積層体を作製した。
(比較例3)
板紙と晒クラフト紙を対向させ、その間に厚さ20μmのLDPE(日本ポリエチレン社製、LC520)を押出してサンドイッチラミネートし、板紙/LDPE/晒クラフト紙からなる防湿性積層体を作製した。
板紙と晒クラフト紙を対向させ、その間に厚さ20μmのLDPE(日本ポリエチレン社製、LC520)を押出してサンドイッチラミネートし、板紙/LDPE/晒クラフト紙からなる防湿性積層体を作製した。
[評価方法]
実施例、比較例で得られた防湿性積層体を用いて、以下の各性能を評価した。
(1)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z 0208(カップ法)B法(40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に従って、防湿性積層体について透湿度を測定した。また、晒クラフト紙が内側となるように4つ折りにして、十字に折り目を付けた後のサンプルについても同様の測定を行った。なお、透湿度の判断基準としては、50g/m2・24h・atm以下であれば、水蒸気バリア層として実用性があると判定した。
実施例、比較例で得られた防湿性積層体を用いて、以下の各性能を評価した。
(1)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z 0208(カップ法)B法(40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に従って、防湿性積層体について透湿度を測定した。また、晒クラフト紙が内側となるように4つ折りにして、十字に折り目を付けた後のサンプルについても同様の測定を行った。なお、透湿度の判断基準としては、50g/m2・24h・atm以下であれば、水蒸気バリア層として実用性があると判定した。
(2)離解性
防湿性積層体を1cm×1cmの寸法に切断し、その8gを家庭用ミキサー中において500mlの水に混合(濃度1.6%)した後、10分間攪拌し、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーから、実験室用手抄きマシンにより紙シートを作製した。得られたシートを乾燥し、乾燥シート中の未離解物(フィルム片、繊維塊、未離解片など)の有無を、目視にて評価した。判定は次のように行った。
○:未離解物が含まれず、均一なシートを形成した
×:未離解物が含まれ、均一なシートを形成しなかった
防湿性積層体を1cm×1cmの寸法に切断し、その8gを家庭用ミキサー中において500mlの水に混合(濃度1.6%)した後、10分間攪拌し、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーから、実験室用手抄きマシンにより紙シートを作製した。得られたシートを乾燥し、乾燥シート中の未離解物(フィルム片、繊維塊、未離解片など)の有無を、目視にて評価した。判定は次のように行った。
○:未離解物が含まれず、均一なシートを形成した
×:未離解物が含まれ、均一なシートを形成しなかった
実施例1〜5ならびに比較例1〜3の防湿性積層体についての評価結果を表1に示した。
表1から明らかなように、実施例1〜5の防湿性積層体は、水蒸気バリア性および離解性に優れていた。一方、比較例1と比較例2の防湿性積層体は、オーバーコート層を有しないため、十字折をすることによる水蒸気透過度の増加量が大きかった。比較例3の防湿性積層体は、ポリエチレンフィルムをラミネートした構成のものであるため、離解性を有しないものであった。
1 第1紙基材
2 水蒸気バリア層
3 オーバーコート層
4 接着層
5 第2紙基材
10 防湿性積層体
2 水蒸気バリア層
3 オーバーコート層
4 接着層
5 第2紙基材
10 防湿性積層体
Claims (13)
- 第1紙基材の一方の面上に水蒸気バリア層、オーバーコート層、接着層および第2紙基材をこの順に有する防湿性積層体であって、
前記水蒸気バリア層が、水懸濁性高分子と層状無機化合物を含有し、
前記オーバーコート層が、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有する防湿性積層体。 - 前記第1紙基材の坪量が30〜200g/m2であり、前記第2紙基材の坪量が100〜600g/m2である請求項1に記載の防湿性積層体。
- 前記第1紙基材の坪量が前記第2紙基材の坪量より小さい請求項1または請求項2に記載の防湿性積層体。
- 前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリル系樹脂および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 前記エチレン・アクリル系共重合体におけるアクリル系単量体の含有量が1〜50mo1%である請求項4に記載の防湿性積層体。
- 前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよび3−ヒドロキシブタン酸・3−ヒドロキシヘキサン酸共重合体の少なくとも1つである請求項4または請求項5に記載の防湿性積層体。
- 前記層状無機化合物は、アスペクト比が100以上であり、厚さが100nm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 前記層状無機化合物が、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 前記水蒸気バリア層が、カチオン性樹脂を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 前記カチオン性樹脂が、ポリアミン、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の防湿性積層体。
- 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである請求項1〜10のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 前記オーバーコート層の前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体またはスチレン・ブタジエン系共重合体である請求項1〜11のいずれか1項に記載の防湿性積層体。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の防湿性積層体を用いた紙容器。
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