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JP7439641B2 - バリア性積層体およびその製造方法 - Google Patents

バリア性積層体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、紙基材を支持体とするバリア性積層体とその製造方法に関する。
紙基材に水蒸気バリア性やガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与した包装材料は、食品、医療品、電子部品等の包装において、内容物の品質低下を防止するために、従来から用いられてきている。
紙基材に水蒸気バリア性やガスバリア性を付与する方法としては、ガスバリア性に優れた合成樹脂フィルムや金属箔を紙基材に積層する方法が一般的である。しかし、紙基材に合成樹脂フィルム等を積層した材料は、使用後に紙や合成樹脂等をリサイクルすることが困難であり、環境面において課題を有するものであった。
そこで、合成樹脂フィルム等を積層する必要のないバリア性材料の開発が進められてきている。例えば、特許文献1には、紙基材上に水蒸気バリア層およびガスバリア層が設けられた紙製バリア包装材料が開示されている。水蒸気バリア層は、平均粒子径5μm以上、アスペクト比10以上のカオリンを全顔料に対して50~100重量%含有しており、ガスバリア層のバインダー樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂である。
特許第5331265号公報
紙基材上に水蒸気バリア層およびガスバリア層を有するバリア性積層体を包装容器として使用する場合には、バリア性積層体を所定の形状に切断した後、袋状や立体形状に折り曲げて、端部を接着等により密封することによって包装容器としている。
バリア性積層体を折り曲げたときに、折り曲げ部では、紙基材上の水蒸気バリア層およびガスバリア層が局部的に大きく引き延ばされる。そのため、水蒸気バリア層またはガスバリア層に微細な亀裂等が発生して、包装容器の水蒸気バリア性やガスバリア性が低下するおそれがある。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、水蒸気バリア性とガスバリア性に優れ、折り曲げによる水蒸気バリア性とガスバリア性の低下を抑制したバリア性積層体およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、バリア性積層体が折り曲げによって水蒸気バリア性とガスバリア性が低下することを抑制するために、水蒸気バリア層とガスバリア層の上にさらに保護層を形成することを検討した。その結果、本発明者らは、保護層を設けることによって、バリア性積層体の折り曲げ時に、保護層の下のガスバリア層や水蒸気バリア層に局部的な亀裂が発生し難くなると考えられ、その結果、水蒸気バリア性とガスバリア性の低下、特にガスバリア性の低下が抑制されることを見出した。
本発明はこのような知見を踏まえて完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
(1)紙基材の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層をこの順に有するバリア性積層体であって、前記水蒸気バリア層が、水懸濁性高分子、層状無機化合物およびカチオン性樹脂を含有し、前記ガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、前記保護層が、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有することを特徴とする、バリア性積層体。
(2)水蒸気透過度が20g/・day以下であり、酸素透過度が10cc/・day・atm以下である、前記(1)に記載のバリア性積層体。
(3)前記水蒸気バリア層、前記ガスバリア層および前記保護層が、同時多層塗工層である、前記(1)または前記(2)に記載のバリア性積層体。
ここで、「同時多層塗工層」とは、同時多層塗工法で形成された多層塗工層のことである。同時多層塗工層は、逐次的に形成された多層塗工層と外観から明確に分別することが困難である。すなわち、同時多層塗工層を、逐次的に形成された多層塗工層と区別して、その構造または特性によって直接特定することが困難である。
(4)前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである、前記(1)~(3)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(5)前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有する、前記(1)~(4)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(6)前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよび3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体の少なくとも1つである、前記(5)に記載のバリア性積層体。
(7)前記層状無機化合物は、アスペクト比が80以上であり、厚さが120nm以下である、前記(1)~(6)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(8)前記層状無機化合物が、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種である、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(9)前記カチオン性樹脂が、ポリアミン、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種である、前記(1)~(8)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(10)前記紙基材は、坪量が20~500g/mであり、密度が0.5~1.2g/cmであり、王研式平滑度が5秒以上である、前記(1)~(9)のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
(11)前記(1)~(10)のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法であって、前記水蒸気バリア層、前記ガスバリア層および前記保護層を同時多層塗工法で形成することを特徴とする、バリア性積層体の製造方法。
(12)前記同時多層塗工法の塗工方式が、同時多層スライドカーテン方式または同時多層スライドビード方式である、前記(11)に記載のバリア性積層体の製造方法。
本発明によれば、水蒸気バリア性とガスバリア性に優れ、折り曲げによる水蒸気バリア性とガスバリア性の低下を抑制したバリア性積層体およびその製造方法が提供される。
本発明の第1実施形態のバリア性積層体の層構成を示す模式的断面図である。 本発明の第2実施形態のバリア性積層体の層構成を示す模式的断面図である。
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態のバリア性積層体は、紙基材の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層をこの順に有している。紙基材の片面のみに水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層を設けてもよいし、紙基材の両面に水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層を設けてもよい。
以下、本実施形態のバリア性積層体を構成する各層について説明する。
[紙基材]
本実施形態に用いられる紙基材は、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等を挙げることができる。紙基材としては、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
紙基材のJIS P8121:2012に準じて測定した離解フリーネス(濾水度)は、バリア性を向上させる観点から、800mL以下とすることが好ましく、550mL以下がより好ましい。ここで、離解フリーネスとは、抄紙後の紙をJIS P8220-1:2012に準拠して離解したパルプを、JIS P8121:2012に準拠して測定したカナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness)のことである。離解フリーネスを調製するためにパルプを叩解する方法については、公知の方法を使用することができる。
紙基材のサイズ度は、特に限定されないが、バリア性を向上させる観点から、JIS P 8122:2004に準ずるステキヒトサイズ度を1秒以上とすることが好ましい。紙基材のサイズ度は、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等の内添サイズ剤の種類や含有量、パルプの種類、平滑化処理等によって制御することができる。内添サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、紙基材のパルプ100質量部に対して0~3質量部程度の範囲が好ましい。
紙基材には、公知の内添薬品を適宜添加することができる。内添薬品としては、例えば、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等の填料、紙力増強剤、歩留り向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料・顔料等を挙げることができる。
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機(例えば長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の抄紙機)を適宜選択して使用する。抄紙機によって形成された紙層は、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させる。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して厚みやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
紙基材の坪量は、特に限定されないが、20~500g/mであることが好ましく、30~400g/mであることがより好ましい。紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
紙基材は、成形加工性の観点から、密度が0.5~1.2g/cmであることが好ましく、0.6~1.0g/cmであることがより好ましい。紙基材の密度は、JIS P 8118:2014に準拠して測定された紙基材の厚みおよび上記坪量から算出される。
紙基材は、塗工層の製膜性の観点から、王研式平滑度が5秒以上であることが好ましく、10~1000秒であることがより好ましい。また、紙基材は、印刷適性の観点から、75°光沢度が5%以上であることが好ましく、10~70%であることがより好ましい。王研式平滑度は、JIS P 8155:2010に準拠して測定される。また、光沢度は、JIS P 8142:2005に準拠して測定される。
[水蒸気バリア層]
水蒸気バリア層は、水蒸気の透過を阻止する機能を有する層であり、水懸濁性高分子、層状無機化合物およびカチオン性樹脂を含有している。
(層状無機化合物)
層状無機化合物の形態は、平板状である。層状無機化合物と水懸濁性高分子とカチオン性樹脂との混合溶液を作製し、紙基材上に塗工すると、水蒸気バリア層が形成される。水蒸気バリア層内においては、平板状の層状無機化合物が紙基材の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列する。そうすると、紙基材の平面方向では、層状無機化合物が存在していない領域の面積が小さくなることから、水蒸気の透過が抑制される。また、紙基材の厚さ方向では、平板状の層状無機化合物が紙基材平面に対して平行に配列した状態で存在するため、水蒸気バリア層中の水蒸気は層状無機化合物を迂回しながら透過することとなり、迷路効果により水蒸気の透過が抑制される。その結果、水蒸気バリア層は優れた水蒸気バリア性を発現することができる。
層状無機化合物の厚さは、120nm以下であることが好ましい。層状無機化合物の厚さは、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。層状無機化合物の平均厚さが小さい方が、水蒸気バリア層中における層状無機化合物の積層数が大きくなるため、高い水蒸気バリア性を発揮することができる。ここで、水蒸気バリア層中に含まれている状態での層状無機化合物の厚さは、以下のようにして求められる。まず、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に層状無機化合物が20~30個程度含まれる倍率とする。次に、画面内の層状無機化合物の個々の層状無機化合物の厚さを測定する。そして、得られた厚さの平均値を算出して、層状無機化合物の厚さとする。
層状無機化合物の長さは、1μm~100μmであることが好ましい。長さが1μm以上であると、層状無機化合物が紙基材に対して平行に配列し易い。また、長さが100μm以下であると層状無機化合物の一部が水蒸気バリア層から突出する懸念が少ない。長さは2~60μmであることがより好ましく、3~30μmであることがさらに好ましい。ここで、水蒸気バリア層中に含まれている状態での層状無機化合物の長さは、以下のようにして求められる。まず、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に層状無機化合物が20~30個程度含まれる倍率とする。次に、画面内の層状無機化合物の個々の層状無機化合物の長さを測定する。そして、得られた長さの平均値を算出して、層状無機化合物の長さとする。なお、層状無機化合物の長さは、粒子径という表現で記載されることもある。
層状無機化合物のアスペクト比は、80以上であることが好ましい。アスペクト比が80以上であると、所定の水蒸気バリア性を達成することが可能となる。層状無機化合物のアスペクト比は、100以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、300以上が特に好ましく、500以上が最も好ましい。アスペクト比が大きいほど、水蒸気の透過が抑制され、水蒸気バリア性が向上する。また、アスペクト比が大きいほど、層状無機化合物の添加量を低減させることができる。アスペクト比の上限は特に限定されず、塗工液の粘度の観点から10000以下程度が好ましい。ここで、アスペクト比とは、水蒸気バリア層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影し、上記した方法で得られた層状無機化合物の平均長さをその平均厚さで除した値である。
層状無機化合物の具体例としては、雲母族、脆雲母族等のマイカ、合成マイカ(例えば、膨潤性マイカ、非膨潤性マイカ)、ベントナイト、カオリナイト(カオリン鉱物)、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイトなどが挙げられる。
層状無機化合物の中でも、バリア性を向上させる観点から、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。マイカとしては、合成マイカ、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。また、ベントナイトとしては、モンモリロナイトが挙げられる。カオリンは、長石を含む岩石の風化によってできた粘土であり、カオリナイトが主成分である。タルクは、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物であり、滑石とも呼ばれる。
層状無機化合物の含有量は、水蒸気バリア層の全固形分中80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。一方、層状無機化合物の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。層状無機化合物のアスペクト比を大きくし、厚さを小さくすることによって、層状無機化合物の含有量を低減させることができ、水蒸気バリア層からの層状無機化合物の脱落を抑えることができる。
層状無機化合物の含有量は、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1~800質量部であることが好ましい。層状無機化合物の含有量は、好ましくは、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.3~400質量部であり、より好ましくは、1~200質量部であり、さらに好ましくは3~100質量部であり、特に好ましくは5~50質量部であり、最も好ましくは7~20質量部である。層状無機化合物の含有量が、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1質量部以上であると、水蒸気バリア性が発現し易い。また、層状無機化合物の含有量が、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して800質量部以下であると、層状無機化合物の一部が層表面から露出し難くなるので、水蒸気バリア性が低下しにくくなる。また、層状無機化合物の含有量が水蒸気バリア層の水懸濁性高分子100質量部に対して800質量部以下であると、ガスバリア層の塗工性が良好となり、均一なガスバリア層が形成されるようになるので、ガスバリア性も良好となる。
(カチオン性樹脂)
本発明者らは、層状無機化合物を含有する水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上することを見出した。
カチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上する理由については、以下のように考えている。層状無機化合物は、平板状の形態の平面部分がアニオン性、エッジ部分がカチオン性に帯電し易いため、層状無機化合物が相互に立体的に凝集した、いわゆるカードハウス構造をとることが知られている。このカードハウス構造のために、層状無機化合物の水分散液の粘度は非常に高くなる。一方、カードハウス構造は撹拌などにより力を加えると簡単に壊れるため、層状無機化合物の水分散液はチキソトロピー性を示す。
層状無機化合物の水分散液に、適切なカチオン性樹脂を添加すると、層状無機化合物のアニオン性の平面部分にカチオン性樹脂が吸着することによって、カードハウス構造が破壊される。その結果、層状無機化合物が立体的に凝集することが抑制され、平板状の層状無機化合物が紙基材平面に対して平行に積層し易くなり、水蒸気バリア性の向上につながるものと推定している。
カチオン性樹脂の具体例としては、ポリアミン、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドアミンポリ尿素-エピハロヒドリンまたはホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物およびポリアミドアミン化合物、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどを挙げることができる。これらの中では、ポリアミン、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
カチオン性樹脂は、表面電荷が0.1~10meq/gであることが好ましく、0.1~5.0meq/gであることがより好ましい。カチオン性樹脂の表面電荷が前記範囲内であると、カードハウス構造を破壊することが可能であり、後記するアニオン性バインダーとも適度に共存することができる。
なお、カチオン性樹脂の表面電荷は、以下に記載する方法で測定する。まず、試料となる重合体を水に溶解して、重合体濃度1ppmの溶液を得る。その溶液に対し、チャージアナライザーMutek PCD-04型(BTG社製)を用いて、0.001Nポリエチレンスルホン酸ナトリウムを滴下して電荷量を測定する。
水蒸気バリア層におけるカチオン性樹脂の含有量は、水蒸気バリア層に使用される層状無機化合物と水懸濁性高分子の種類に応じて適宜決定すればよいが、バリア性を向上させる観点から、層状無機化合物100質量部に対して、1~300質量部が好ましく、1~250質量部がより好ましく、10~150質量部がさらに好ましく、20~150質量部が特に好ましく、40~100質量部が最も好ましい。
また、カチオン性樹脂の含有量は、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子(バインダー)100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
(水懸濁性高分子)
水懸濁性高分子は、水に懸濁することが可能な高分子のことであり、塗工膜を形成する際に、水を溶媒とした塗工液を調製することが容易である。水懸濁性高分子は、塗工膜の形成においてバインダーとして機能するため、層状無機化合物等を含有する塗膜を紙基材上に形成することができる。水懸濁性高分子の骨格となるポリマーとしては、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有することが好ましい。
水懸濁性高分子として代表的なエチレン・アクリル系共重合体を例に挙げて、以下説明する。エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステルが例示される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部分のアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下である。
ここで、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸およびアクリル酸を意味する
エチレン・アクリル系共重合体を構成するアクリル系単量体は、1種類であってもよいし、2種類以上を併用してもよい。
エチレン・アクリル系共重合体は、エチレンと上記のアクリル系単量体とを乳化重合することによって得られる共重合体である。アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などが好適である。エチレン・アクリル系共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体およびエチレン・メタクリル酸ブチル共重合体のうちいずれか1種以上であることが好ましい。共重合体には、エチレンおよびアクリル系単量体と共重合可能なその他の化合物からなる単量体が少量共重合されていてもよい。
エチレン・アクリル系共重合体の具体例としては、例えばエチレン・アクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液が、ザイクセン(登録商標)AC等(アクリル酸の共重合比率20mol%、住友精化株式会社製)として市販されており、容易に入手し利用することができる。
エチレン・アクリル系共重合体は、アクリル系単量体単位の含有量が1~50mol%であることが好ましい。アクリル系単量体単位の含有量がこの範囲にあるとき、分散性に優れ、また、溶融温度が60~120℃となり、良好なヒートシール性を発現する優れたエチレン・アクリル系共重合体となるため、後述する保護層の水懸濁性高分子として好適である。エチレン・アクリル系共重合体におけるアクリル系単量体単位の含有量は、10~30mol%であることがより好ましい。
エチレン・アクリル系共重合体の重量平均分子量は、塗工液粘度や塗工膜の強度の観点から、1万~1000万が好ましく、10万~500万がより好ましい。
エチレン・アクリル系共重合体の含有割合は、特に限定されないが、水蒸気バリア層の全固形分中20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。
(スチレン・ブタジエン系共重合体)
スチレン・ブタジエン系共重合体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン系化合物と、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどのブタジエン系化合物、およびこれらと共重合可能なその他の化合物からなる単量体を乳化重合することによって得られる共重合体である。スチレン系化合物としてはスチレン、またブタジエン系化合物としては1,3-ブタジエンが好適である。
(スチレン・アクリル系共重合体)
スチレン・アクリル系共重合体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン系化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホアルキルナトリウム塩(アルキル基の炭素数が2以上3以下)などのアクリル系化合物およびこれらと共重合可能なその他の化合物からなる単量体を乳化重合することによって得られる共重合体である。スチレン系化合物としてはスチレンが好適であり、またアクリル系化合物としてはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好適である。
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂の具体例としては、特に限定されず、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等が挙げられる。これらの中でも、PBS、PLAが好ましく、PLAがより好ましい。紙基材を用いた包装材料等は、熱可塑性樹脂を用いた包装材料等と比べて環境負荷の低減という利点を有しているが、水蒸気バリア層の水懸濁性高分子として生分解性樹脂を用いることによって、より一層環境負荷を低減させることができる。
水蒸気バリア層における水懸濁性高分子(バインダー)は、アニオン性であることが好ましい。バインダーが、アニオン性であることにより、水蒸気バリア性がより向上する。前記したように、層状無機化合物の平面部分はアニオン性であるが、カチオン性樹脂が吸着すると表面がカチオン性になる。そのため、アニオン性であるバインダーとの親和性が高まることとなる。
水懸濁性高分子の骨格がアニオン性基を有しない場合は、カルボキシ基等の酸基を有するモノマーと共重合することによって、酸基を導入することが好ましい。
水懸濁性高分子の重量平均分子量は、塗工液粘度や塗工膜の強度の観点から、1万~1000万が好ましく、10万~500万がより好ましい。
水蒸気バリア層における水懸濁性高分子の含有割合は、特に限定されないが、水蒸気バリア層の全固形分中20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が最も好ましい。
水蒸気バリア層には、水懸濁性高分子、層状無機化合物、カチオン性樹脂以外に、必要に応じて適宜、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを添加することが可能である。
水蒸気バリア層の厚さは、1~30μmであることが好ましく、3~20μmであることがより好ましい。また、水蒸気バリア層の塗工量は、固形分として、1~30g/mであることが好ましく、3~20g/mであることがより好ましい。
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、主として酸素ガスの透過を阻止する機能を有する層であり、水溶性高分子を含有している。
(水溶性高分子)
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリビニルアルコール、または変性ポリビニルアルコールは、ガスバリア性がより優れていることから、好ましい。ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化または部分ケン化したポリビニルアルコールが挙げられる。変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
水溶性高分子の含有量は、ガスバリア層の全固形分中50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましい。
ガスバリア層には、水蒸気バリア層と同様に、前記した層状無機化合物を含有させてもよい。層状無機化合物をガスバリア層に含有させる場合、層状無機化合物の含有量は、特に限定されないが、ガスバリア層の水溶性高分子100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、0.5~150質量部がより好ましく、1~40質量部程度がさらに好ましく、5~30質量部が特に好ましく、10~25質量部が最も好ましい。層状無機化合物としては、バリア性を向上させる観点から、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ガスバリア層に含有させる層状無機化合物は、水蒸気バリア層に含有させる層状無機化合物と同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
ガスバリア層は、水溶性高分子と層状無機化合物以外に、必要に応じて適宜、顔料、分散剤、界面活性剤、消泡剤、濡れ剤、染料、色合い調整剤、増粘剤などを添加することが可能である。ガスバリア層には、層状無機化合物を水蒸気バリア層で使用できるものの中から適宜選択して含有させることができる。
ガスバリア層の厚さは、0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。また、ガスバリア層の塗工量は、固形分として、0.1~10g/mであることが好ましく、0.5~5g/mであることがより好ましい。
[保護層]
保護層は、ガスバリア層の上に形成される層であり、水溶性高分子および水懸濁性高分子の少なくとも一方を含有している。
バリア性積層体を包装容器として使用する場合には、バリア性積層体を所定の形状に切断した後、袋状や立体形状に折り曲げて、端部を接着等によって密閉する。このとき、バリア性積層体の折り曲げ部では、紙基材上の水蒸気バリア層およびガスバリア層が局部的に大きく引き延ばされ、水蒸気バリア層またはガスバリア層に微細な亀裂等が発生するおそれがある。
そこで、本発明者らは、ガスバリア層の上に保護層を形成することを検討した。ガスバリア層の上に保護層が存在すると、ガスバリア層と保護層とが相互に密着するため、折り曲げ加工された際に、ガスバリア層と保護層とが一体となって変形するようになり、ガスバリア層の表層に微細な亀裂が生じ難くなる。その結果、バリア性積層体の折り曲げによる水蒸気バリア性とガスバリア性の低下、特にガスバリア性の低下を抑制することが可能となる。
保護層は、水溶性高分子または水懸濁性高分子のいずれかを含有する。水溶性高分子および水懸濁性高分子の内容は前記したとおりである。保護層が水溶性高分子で構成されているとき、保護層はガスバリア層と同種の層となる。また、保護層が水懸濁性高分子で構成されているとき、保護層は水蒸気バリア層と同種の層となる。水蒸気バリア層とガスバリア層の2層に加えて、3つ目の層が存在するため、水蒸気バリア性とガスバリア性の性能向上を図ることができる。また、保護層として、水溶性高分子または水懸濁性高分子の中で、ヒートシール性に優れた樹脂を用いれば、バリア性積層体にヒートシール性を付与することが可能である。また、保護層として、生分解性樹脂を用いると、保護層に生分解性を付与することができる。生分解性樹脂の具体例は前記したとおりである。
保護層の厚さは、0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。また、保護層の塗工量は、固形分として、0.1~10g/mであることが好ましく、0.5~5g/mであることがより好ましい。
[バリア性積層体]
図1は、本発明の第1実施形態のバリア性積層体10の層構成を示す模式的断面図である。紙基材1の一方の面上に水蒸気バリア層2、ガスバリア層3および保護層4Aがこの順で存在している。第1実施形態のバリア性積層体10では、保護層4Aは、ヒートシール性を有する水懸濁性高分子によって形成されている。
図2は、本発明の第2実施形態のバリア性積層体20の層構成を示す模式的断面図である。紙基材1の一方の面上に水蒸気バリア層2、ガスバリア層3および保護層4Bがこの順で存在している。第2実施形態のバリア性積層体20では、保護層4Bは、水溶性高分子によって形成されている。
本実施形態のバリア性積層体は、水蒸気バリア性とガスバリア性に優れている。水蒸気バリア性とは、具体的に、水蒸気透過度が20g/(m・day)以下であることが好ましく、10g/(m・day)以下であることがより好ましい。
また、ガスバリア性とは、具体的に、酸素透過度が、10cc/(m・day・atm)以下であることが好ましく、5cc/・day・atm以下であることがより好ましく、3cc/・day・atm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のバリア性積層体は、折り曲げによる水蒸気バリア性およびガスバリア性の低下が抑制されており、折り曲げ後においても、上記の水蒸気透過度および酸素透過度を有することが好ましい。
[バリア性積層体の製造方法]
本実施形態のバリア性積層体は、紙基材上にバリア性に優れた3層の塗工層を有している。紙基材上に水蒸気バリア層やガスバリア層等の塗工層を複数形成する場合、従来は、紙基材上に水蒸気バリア層形成用塗工液を塗工し、これを乾燥させた後に、ガスバリア層形成用塗工液を塗工して乾燥させていた。紙基材上に複数の塗工層を形成する場合において、逐次的に塗工層を形成する方法を採用すると、水蒸気バリア層の上にガスバリア層形成用塗工液を塗工して乾燥する際に、ガスバリア層形成用塗工液内に存在する水分等の揮発分は、下の水蒸気バリア層側から抜け出ることができない。そのため、ガスバリア層の内部で揮発分が膨張して、いわゆるブリスター(火ぶくれ)となったり、ひび割れが生じたり、乾燥不良が生じていた。ブリスターやひび割れが発生すると、バリア性が低下するだけでなく、塗工層の表面の平滑性が損なわれて、商品性の低下を招くことになる。
本発明者らは、多層構造の塗工層を形成する方法として、同時多層塗工法に着目した。同時多層塗工法とは、複数種の塗工液をそれぞれ別個のスリット状ノズルから吐出させて、液体状の積層体を形成し、それを紙基材上に塗工することにより、多層の塗工膜を同時に形成する方法であり、例えば、特表2004-527669号公報、特表2012-505321号公報等が参照される。
本発明者らは、同時多層塗工法を採用することにより、ブリスターの発生を効果的に抑制できることを見出した。本実施形態における「同時多層塗工層」とは、水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層を同時多層塗工法を用いて形成したものである。同時多層塗工法では、複数の未乾燥の塗工膜が同時に形成され、同時に乾燥することになるため、内部から外部への揮発分の飛散が容易であり、ブリスターやひび割れが生じ難いものと推定される。また、同時多層塗工法は、折り曲げ時の塗工膜の局部的な亀裂の発生の抑制にも有効である。
さらに、複数の塗工膜が同時に形成されるため、ピンホールの発生が抑制され、バリア性積層体の品質向上に有効である。また、複数の塗工膜が同時に形成されるため、従来の逐次的な塗工法に比べて、生産性が大きく向上する。
同時多層塗工法の塗工方式には、同時多層スライドカーテン方式と同時多層スライドビード方式があるが、いずれの方式を用いてもよい。同時多層スライドカーテン方式とは、複数のスリットを持つスライドダイからカーテン状に塗膜を流し、基材上に塗布する形式である。また、同時多層スライドビード方式とは、複数のスリットを持つスライドダイから流下する塗布液がダイ先端と走行する基材との間で液架橋部(ビード部)を形成し、ビード部を介して塗布する形式である。
塗工液の溶媒としては、特に制限はなく、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンもしくはトルエンなどの有機溶媒を用いることができる。
同時多層塗工法によって塗工液を紙基材に塗工するための塗工設備としては、同時多層塗工法を行うことが可能な、同時多層スライドカーテン方式または同時多層スライドビード方式の塗工装置を用いる。
塗工層を乾燥するための乾燥設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板などが挙げられる。
本実施形態のバリア性積層体は、上記の優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を生かして、食品、医療品、電子部品等の包装用材料として好適に用いることができる。また、本実施形態のバリア性積層体は、折割れに耐性を有することから、軟包装用材料として好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明のバリア性積層体をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
実施例・比較例に用いた原材料は以下のとおりである。
(1)紙基材
晒クラフト紙:坪量50g/m、厚さ60μm、離解フリーネス520mL、ステキヒトサイズ度15秒、平滑度70秒
(2)層状無機化合物
合成マイカ:膨潤性マイカ、粒子径6.3μm、アスペクト比約1000、厚さ約5nm、製品名:NTO-05、トピー工業株式会社製、固形分6%の水分散液
カオリン:エンジニアードカオリン、粒子径10μm、アスペクト比約100、厚さ約100nm、製品名:バリサーフHX、イメリス社製
(3)カチオン性樹脂
変性ポリアミド系樹脂:固形分53%、製品名:SPI203(50)H、田岡化学工業株式会社製、表面電荷0.4meq/g
(4)水懸濁性高分子
エチレン・アクリル系共重合体:自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョン、固形分29.2%、製品名:ザイクセンAC、住友精化株式会社製
ポリ乳酸:ポリ乳酸の水系懸濁液、ランディPL-3000、ミヨシ油脂株式会社製
(5)水溶性高分子
変性ポリビニルアルコール:エチレン変性ポリビニルアルコール、完全ケン化型、製品名:エクセバールAQ-4104、株式会社クラレ製
(実施例1)
合成マイカの水分散液19.7部に、撹拌しながら自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョン34.3部を加え、撹拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1.7部を加え、撹拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.1部を加え、撹拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、ガスバリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、保護層用塗工液とした。
そして、水蒸気バリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が6g/mとなり、水蒸気バリア層上のガスバリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなり、さらにガスバリア層上の保護層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなるように、晒クラフト紙上に3層同時多層塗工した。同時多層塗工には、実験用の多層スライドカーテンコーターを使用した。その後、熱風乾燥機内で120℃で3分間乾燥して、バリア性積層体を得た。
(実施例2)
保護層用塗工液を、自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョンに変更した以外は、実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
(実施例3)
保護層用塗工液を、ポリ乳酸の水系懸濁液に変更した以外は、実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
(実施例4)
変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液100部に対して、合成マイカの水分散液33部を加えて、ガスバリア層用塗工液とした。当該ガスバリア層用塗工液に変更した以外は実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
参考例5)
カオリンを水に分散させて、固形分55%のカオリン水分散液を得た。撹拌しながら自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョン45部に対してカオリン水分散液47.8部を加え、撹拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂1部を加え、撹拌した。次に、25%アンモニア水溶液0.16部を加え、撹拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。水蒸気バリア層用塗工液以外のガスバリア層用塗工液と保護層用塗工液は実施例1と同じものを用いた。
そして、水蒸気バリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が6g/mとなり、水蒸気バリア層上のガスバリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなり、さらにガスバリア層上の保護層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなるように、晒クラフト紙上に3層同時多層塗工した。同時多層塗工には実験用の多層スライドカーテンコーターを使用した。その後、熱風乾燥機内で120℃、3分間乾燥して、バリア性積層体を得た。
参考例6)
保護層用塗工液を自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョンに変更した以外は、参考例5と同様にして、バリア性積層体を得た。
(実施例7)
合成マイカの水分散液19.7部に、撹拌しながら自己乳化型エチレン・アクリル酸共重合体エマルジョン34.3部を加え、撹拌した。これに、変性ポリアミド系樹脂を1.7部加え、撹拌した。次に、25%アンモニア水溶液を0.1部加え、撹拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度20%とし、水蒸気バリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、ガスバリア層用塗工液とした。また、変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液を調製し、保護層用塗工液とした。
そして、水蒸気バリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が6g/mとなるように、晒クラフト紙にメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、水蒸気バリア層を形成した。次に、水蒸気バリア層上のガスバリア層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、ガスバリア層を形成した。さらに、ガスバリア層上の保護層用塗工液の塗工量(乾燥後)が3.0g/mとなるように、メイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機内で120℃、1分間乾燥し、保護層を形成し、バリア性積層体を得た。
(実施例8)
変性ポリビニルアルコールの固形分濃度10%水溶液100部に対して、合成マイカの水分散液16.5部を加えて、さらにカオリンの50%水分散液26部を加えてガスバリア層用塗工液とした。当該ガスバリア層用塗工液に変更した以外は実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
(比較例1)
保護層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
(比較例2)
水蒸気バリア層に変性ポリアミド系樹脂を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、バリア性積層体を得た。
(比較例3)
保護層を形成しなかったこと、および水蒸気バリア層用塗工液として参考例5の水蒸気バリア層用塗工液を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、バリア性積層体を得た。
得られたバリア性積層体(実施例1~4、参考例5、6、実施例7、、比較例1~3)について、水蒸気バリア性(水蒸気透過度)およびガスバリア性(酸素透過度)を評価した。各項目の評価方法は、下記に示すとおりである。
<水蒸気透過度>
JIS Z 0208:1976(カップ法)B法(40℃±0.5℃,90%±2%RH)に従って、バリア層を内側にして測定した。また、紙基材が内側となるように4つ折りにして、十字に折り目を付けた後のサンプルについても同様の測定を行った。なお、水蒸気透過度の基準としては、20g/day)以下であれば、水蒸気バリア層として実用性があると判定した。
<酸素透過度>
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、23℃,50%RH条件にて測定した。なお、酸素透過度の基準として、10cc/day・atm以下であれば、ガスバリア層として実用性があると判定した。
実施例1~4、参考例5、6、実施例7、ならびに比較例1~3のバリア性積層体についての評価結果を表1に示した。

表1から明らかなように、実施例1~4、参考例5、6、実施例7、8のバリア性積層体はいずれも、水蒸気バリア性とガスバリア性に優れていた。また、十字折をすることによる水蒸気バリア性とガスバリア性の大きな低下は見られなかった。一方、比較例1と比較例3のバリア性積層体は、保護層を有していないため、十字折をすることによるガスバリア性(酸素透過度)の低下が大きかった。比較例2のバリア性積層体は、水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を含有しないため、水蒸気バリア性に劣っていた。
1 紙基材
2 水蒸気バリア層
3 ガスバリア層
4A、4B 保護層
10、20 バリア性積層体

Claims (13)

  1. 紙基材の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層、ガスバリア層および保護層をこの順に有するバリア性積層体であって、
    前記水蒸気バリア層が、エチレン・アクリル系共重合体、層状無機化合物およびカチオン性樹脂を含有し、当該層状無機化合物のアスペクト比が500以上であり、
    前記ガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、
    前記保護層が、水懸濁性高分子を含有することを特徴とする、バリア性積層体。
  2. 水蒸気透過度が20g/(m・day)以下であり、酸素透過度が10cc/(m・day・atm)以下である、請求項1に記載のバリア性積層体。
  3. 水蒸気透過度が10g/(m・day)未満であり、酸素透過度が10cc/(m・day・atm)以下である、請求項1または2に記載のバリア性積層体。
  4. 前記水蒸気バリア層、前記ガスバリア層および前記保護層が、同時多層塗工層である、請求項1~3のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  5. 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  6. 前記水懸濁性高分子が、エチレン・アクリル系共重合体、スチレン・ブタジエン系共重合体、スチレン・アクリル系共重合体および生分解性樹脂の少なくとも1つを含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  7. 前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよび3-ヒドロキシブタン酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体の少なくとも1つである、請求項6に記載のバリア性積層体。
  8. 前記層状無機化合物は、厚さが120nm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  9. 前記層状無機化合物が、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクより選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  10. 前記カチオン性樹脂が、ポリアミン、変性ポリアミド、変性ポリアミドアミン、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリエチレンイミンより選ばれる少なくとも1種である、請求項1~9のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  11. 前記紙基材は、坪量が20~500g/mであり、密度が0.5~1.2g/cmであり、王研式平滑度が5秒以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載のバリア性積層体。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載のバリア性積層体の製造方法であって、
    前記水蒸気バリア層、前記ガスバリア層および前記保護層を同時多層塗工法で形成することを特徴とする、バリア性積層体の製造方法。
  13. 前記同時多層塗工法の塗工方式が、同時多層スライドカーテン方式または同時多層スライドビード方式である、請求項12に記載のバリア性積層体の製造方法。
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