JP2019148755A - 現像剤担持体、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2は、アニオンと少なくとも3個の水酸基を有するカチオンとを有するイオン導電剤と、該イオン導電剤と反応可能な化合物とから合成される樹脂を含む導電層を備えた電子写真用部材を開示している。
すなわち、特許文献1に係る導電性ローラを、現像剤担持体として用いたときに、長期に亘る使用によって、かぶりが生じた電子写真画像が形成される場合があった。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真画像形成装置及びそれに用いられるプロセスカートリッジの提供に向けたものである。
導電性の基体と、
該基体上に弾性層及び表面層を有する現像剤担持体であって、
該表面層は、
分子中にカチオン構造を有するバインダー樹脂、
アニオン、及び
該バインダー樹脂中に分散されている樹脂粒子を含み、
該現像剤担持体の表面は、該樹脂粒子に由来の凸部を有しており、かつ、該樹脂粒子は該現像剤担持体の表面に露出しておらず、
該樹脂粒子は、ガラス転移温度(Tg)が、+10〜+40℃であり、
該バインダー樹脂は、構造式(1)で示されるカチオン構造、及び、構造式(2)で示されるカチオン構造の何れか一方又は両方を分子内に含むことを特徴とする現像剤担持体:
[構造式(1)中、
Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表し、
Xが窒素原子の場合、pは1であり、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、pは0であり、
R11〜R15は、各々独立に、下記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかであって、かつ、R11〜R15のうちの何れか2つは(c)である、
(a)水素原子、
(b)炭素数1〜6の飽和炭化水素基、
(c)該バインダー樹脂のポリマー鎖と結合している部分を含む構造]、
まず、当該かぶりの発生は、トナーの帯電量が不足し、トナーが現像剤担持体によって十分に規制されていないことに起因すると考えられる。ここで、トナーに対する電荷の付与は、トナーと、現像剤担持体の表面との摩擦によって行われる。そのため、現像剤担持体の(トナーに対する)帯電付与性は、現像剤担持体のトナーと接する表面及びその近傍の原子の電子状態に影響される。
そして、特許文献1に係る導電性ローラは、長期に亘る使用の結果、表面層中のアニオンが、現像剤担持体の基体側に局在化し、表面領域が相対的に正に帯電されていると考えられる。
ここで、当該導電性ローラに電圧が印加されると、カチオン性有機基はウレタン樹脂に固定されているため、表面層中を殆ど移動しない。一方、アニオンは、ウレタン樹脂に固定されていないため、電圧の印加に伴って現像剤担持体の基体側に移動し、その結果、現像剤担持体の表面領域のアニオンの濃度が低下する。
すなわち、現像剤担持体の表面領域では、カチオン性有機基の濃度よりもアニオンの濃度が相対的に低くなり、カチオン性有機基が多く存在することとなる。その結果、現像剤担持体の表面に担持されたトナーは、現像剤担持体との摩擦によって負電荷を帯びたとしても、その負電荷が、現像剤担持体に漏洩し、帯電量が初期と比較して低下する。
その結果、下記の構成を備えた現像剤担持体によれば、長期に亘る電圧の印加によっても、表面層の基体側への偏在とそれに伴う表面領域の相対的な正帯電化を抑制し、負帯電トナーからの電荷漏洩を抑制できることを見出した。
<本態様に係る現像剤担持体の構成>
アニオンの導電性の基体と、該基体上に弾性層及び表面層を有し、該表面層が、分子内に特定のカチオン構造を有するバインダー樹脂、アニオン、及び、該バインダー樹脂中に分散されている樹脂粒子を含み、
該現像剤担持体の表面が、該樹脂粒子に由来の凸部を有しており、かつ、該樹脂粒子が、該現像剤担持体の表面に露出しておらず、該樹脂粒子は、ガラス転移温度(Tg)が、+10〜+40℃である現像剤担持体。
このような構成を有する現像剤担持体によって、長期に亘る電圧の印加によっても、表面層の基体側への偏在とそれに伴う表面領域の相対的な正帯電化を抑制し、負帯電トナーからの電荷漏洩を抑制できる理由を本発明者らは以下のように推測している。
図6は、従来例としての現像剤担持体の、樹脂粒子由来の凸部近傍の概略断面図である。かかる現像剤担持体において、現像剤担持体の表面に凸形状を形成させている樹脂粒子49は、その表面を、カチオン性構造を有する樹脂51およびアニオン52を含む表面層50で被覆され、現像剤担持体の表面には露出していない。かかる現像剤担持体に電圧を印加すると、アニオン52は、表面層50中を移動し、また、樹脂粒子49をも通過して、現像剤担持体の基体3側へ局在化し、現像剤担持体の表面側がカチオン性を帯びることとなる。
一方、本態様に係る現像剤担持体においては、図7(a)に示したように、表面に凸部を生じさせている樹脂粒子53として、ガラス転移温度(Tg)を、現像剤担持体が通常使用される環境の温度である+10℃〜+40℃である樹脂粒子を用いている。かかる現像剤担持体に電圧を印加した場合、樹脂粒子53を被覆している表面層50中のアニオン52は、樹脂粒子53を通過できず、樹脂粒子53の表面に留まっている。
そして、Tgが、+10℃〜+40℃である樹脂粒子53は、当該温度範囲においては、樹脂粒子内に、ガラス状態の部分とゴム状態の部分とが共存していると考えられる。そのため、樹脂粒子53の表面を被覆している表面層50内のアニオン52は、樹脂粒子53内を通過できず、樹脂粒子53の表面に留まると考えられる。
本発明の現像剤担持体を電子写真画像形成装置に適用した際の一実施形態を図1に示す。本発明に係る現像剤担持体1は、図1(a)に示すように、導電性の基体2と、その外周に設けられた弾性層3と、弾性層3の表面に形成される表面層4からなる。また、図1(b)に示すように、弾性層3と表面層4の間に中間層5を配置した3層構造、又は、中間層5を複数配置した多層構成であってもよい。図1(b)の場合、本発明の表面層は、表面層4に適用可能である。
基体2は、現像剤担持体1の電極及び支持部材として機能するものであり、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属又は合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。またその形態は中実であってもよく、中空であってもよい。
弾性層3は、基体上に設けられ、現像剤担持体と感光体との当接部において、所定の幅のニップを形成するために必要な弾性を現像剤担持体に与えるものである。
弾性層3は、通常ゴム材の成型体により形成されることが好ましい。ゴム材料としては以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、特に、長期に亘る他の部材(現像剤規制ブレード等)が当接した場合にも圧縮永久歪みを弾性層に生じさせにくいシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、付加硬化型のシリコーンゴムの硬化物等が挙げられる。更に言えば、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物とすることが特に好ましい。
本発明に係る表面層は、分子内にカチオン構造を有するバインダー樹脂、アニオン、及び該バインダー樹脂中に分散されている樹脂粒子を含む樹脂層である。該アニオンとしては、バインダー樹脂中におけるイオン移動性が高く、通電によりアニオンが局在化した際、濃度勾配を駆動力として移動しやすい点から、フッ化スルホン酸アニオン、フッ化カルボン酸アニオン、フッ化スルホニルイミドアニオン、フッ化スルホニルメチドアニオン、フッ化アルキルフッ化リン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン及びジシアンアミドアニオンを含有することが好ましい。
バインダー樹脂としては公知のバインダー樹脂を用いることができる。例えば、イソシアネートとポリオールの反応によるウレタン樹脂を用いることができる。また、ウレタン樹脂を合成する際に過剰なイソシアネートにポリオールを少量添加してプレポリマー化し、その後ポリオールをさらに添加してウレタン樹脂を合成してもよい。ウレタン樹脂以外の材料としては、以下のものが挙げられる。アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、珪素樹脂、ポリエステル樹脂、スチロール系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、シリコーン樹脂、水系樹脂。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。本発明の効果を発現するためにはバインダー樹脂のTgが−65〜0℃であることがニップ部における変形量が比較的大きく、電気抵抗適正化が容易な点において好ましい。
[構造式(1)中、
Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表し、
Xが窒素原子の場合、pは1であり、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、pは0であり、
R11〜R15は、各々独立に、下記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかであって、かつ、R11〜R15のうちの何れか2つは、(c)である、
(a)水素原子、
(b)炭素数1〜6の、飽和炭化水素基、
(c)該バインダー樹脂のポリマー鎖と結合している部分を含む構造]、
構造式(1)において、R11〜R15は、各々独立に、下記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかであって、且つR11〜R15のうちの何れか2つは(c)である。
(a)水素原子
(b)炭素数1〜6の飽和炭化水素基
(c)該バインダー樹脂のポリマー鎖と結合している部分を含む構造
また構造式(2)において、R21〜R26は、各々独立に、前記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかであって、且つR21〜R26のうちの何れか2つは(c)である。
前記(c)該バインダー樹脂のポリマー鎖と結合している部分を含む構造としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、トリエチレングリコールエーテル基等の水酸基を有する構造と、イソシアネート基とが反応した後の構造等が挙げられる。
構造式(1)で示される部分構造の中でも、イオン導電剤の添加量が少なくても比較的導電性の高い現像部材が得られる点で、Xが窒素原子であるものが好ましい。
前記バインダー樹脂中には、樹脂粒子が分散されている。この樹脂粒子は、前記現像剤担持体の表面に、該樹脂粒子に由来の凸部を形成する。樹脂微粒子が表面に凸部を形成するためには、体積平均粒径が1〜30μmであることが好ましい。粒径が1μm未満では凸形状を形成しにくく、また、粒径が30μm以上の場合には現像剤担持体の表面が粗れ過ぎてしまい、安定したトナー搬送性を維持できない。
また、該樹脂粒子は該現像剤担持体の表面に露出しない。好ましくは、該樹脂粒子から該現像剤担持体の表面までの距離が0.1〜3.0μmであることが好ましい。表面までの距離が0.1μm以上であれば、該樹脂粒子から該現像剤担持体表面までの導電性を確保することが可能である。表面までの距離が3.0μm以下であれば、たとえば感光体とのニップ部分において該バインダー樹脂が圧縮された際、該樹脂粒子と該バインダー樹脂の界面に局在化したアニオンと固定化されたカチオン性有機基が十分に接近し、アニオンの局在化を回復できる。なお、該樹脂粒子から該現像剤担持体の表面までの距離は、表面層の断面を顕微鏡等で観察することにより簡易的に求めることもできる。例えば、現像剤担持体の表面層を断面が観察できるように剃刀等で軸方向と直行する方向に薄くスライスする。スライスした断面を電子顕微鏡にて観察撮影し、樹脂粒子中心近傍が切断されている任意の樹脂粒子100個について、樹脂粒子頂点から現像剤担持体表面までの距離を測定する。その平均値を表面までの距離とする。
また該現像剤担持体の表面は、そのRa(算術平均粗さ)が0.3〜5.0μmであることが好ましい。なお、算術平均粗さとは、JIS B0601−1994の規定により測定される値である。
本発明に用いる樹脂粒子の構成は、所定のTgを満たしていれば特に限定されることはなく、1種の樹脂粒子を単独で用いてもよく、2種以上の樹脂粒子を併用してもよい。例えば、ポリウレタン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリメタクリル酢酸ブチル樹脂粒子、ポリエチレンテレフタラート樹脂粒子等の樹脂粒子を単独又は2種以上を併用することができる。また樹脂粒子の作製方法としては特に限定されるものではなく、後述するように、公知の方法を用いて作製してもよく、市販品を用いてもよい。樹脂粒子の中でも、エステルウレタン樹脂又はポリエーテルエステル樹脂、特に、構造式(3)で示される構造を持つエステルウレタン樹脂粒子はアニオンの通過抑制と耐久性を両立可能な点において好ましい。また、表面層に添加する樹脂粒子の添加量は、表面層のバインダー樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが、本発明の効果を損なわないため好ましい。
樹脂粒子の製造方法の一例として、懸濁重合法による作製が挙げられる。具体的には、まず、媒体(主として水)に不溶なモノマーを投入し、媒体中で激しくかき混ぜることで、モノマーが媒体中で0.01〜1mmの大きさの液滴となるように分散させる。そして、このモノマーが分散された分散液に、重合開始剤を加えて、モノマーを重合させることによって樹脂粒子を得ることができる。さらに、樹脂粒子としてウレタン樹脂を用いる場合、ポリオール成分とイソシアネート成分の質量比OH/NCO%の調整、ポリオール成分及びイオシアネート成分の数平均分子量(Mn)及びモノオールの添加により、Tgを制御することが可能である。
具体的には、ポリオール成分とイソシアネート成分の質量比OH/NCO%を1.0〜15.0の範囲に調製することにより、Tgを+10〜+40℃の範囲に制御することができる。なお、モノオールを添加する場合、モノオールのOH分を、ポリオール成分のOH分に追加して計算する。
ポリオール成分及びイソシアネート成分としては、バインダー樹脂の原料として後述するポリイソシアネート及びポリオールが挙げられる。また、イソシアネートの種類によって、ポリオールの最適な数平均分子量(Mn)が異なる。構造中にウレタン基を含まないポリオールであれば、500≦Mn≦3000の範囲にあることが好ましい。
またモノオールとしては脂肪族単価アルコール等が挙げられる。
樹脂粒子として、ウレタン樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエステルエーテル樹脂を用いる場合も同様に、原材料となるポリマー成分の数平均分子量の調製やモノオールの添加によりTgを制御することができる。
また、得られた樹脂粒子のTgは、例えば、示走査熱量計(商品名:DSC8230L;リガク株式会社製)を用いて、JIS K7121−1987における中間点ガラス転移温度の求め方に基づき測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的な測定方法を示す。試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。測定温度範囲は転移温度より約50℃低い温度から転移終了時よりも約30℃高い温度までとし、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては一度測定終了温度まで昇温したのち、測定開始温度まで降温し、再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとする。
樹脂粒子の重量平均粒子径(D4)は、粒径測定装置「コールターマルチサイザーIII」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて以下の手順により測定する。電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%塩化ナトリウム水溶液を使用する。具体的には、電解液100ml中に、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩0.5mlを加え、さらに測定樹脂粒子(試料)5mgを加えて試料を懸濁させる。試料を懸濁させた電解液は、超音波分散機で1分間分散処理を行い、前記測定装置により、100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出する。この結果より、重量平均粒子径(D4)を算出する。
表面層は、例えば、当該表面層が含む樹脂の原料を含む表面層形成用の塗料の塗膜を、弾性層上に形成し、該塗膜中の該樹脂の原料同士を反応させることによって形成することができる。
(i)樹脂中に構造式(1)で示されるカチオン構造及び構造式(2)で示されるカチオン構造の何れか一方又は両方を導入するためのイオン導電剤;
(ii)Tgが+10〜+40℃である前記樹脂粒子;
(iii)イオン導電剤と共にバインダー樹脂を形成するポリイソシアネート及びポリオール。
イオン導電剤は、水酸基を2つ持つ化合物であり、カチオンとアニオンを有している。カチオンの構造は、前記構造式(1)又は(2)で示される。
これらの中でも、得られる表面層の導電性が比較的高い点で、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオンが好ましい。
また、その中でもイミダゾリウムカチオンが特に好ましい。イミダゾリウムカチオンの正電荷はイミダゾリウム環上に非局在化して分布している。この非局在化により、イミダゾリウムカチオンは、分子中に比較的電荷密度が低く、かつ大きなカチオン構造が存在することになる。このため、イミダゾリウムカチオンは、アニオンが電離しやすく、イオン間距離が遠い場合でもアニオンを引き寄せやすくなる。このことが、イミダゾリウムカチオンが特に好ましい理由である。。イオン導電剤のアニオンは前述の通りである。
本発明に係るイオン導電剤は、例えばメンシュトキン反応等の、公知の求核置換反応を一段階又は複数の段階用いて前駆体を合成した後、公知のイオン交換反応を行うことによって得ることができる。
従って、求核剤には、例えばイミダゾール化合物、ピリジン化合物、ピラゾール化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物等の、求核性の窒素原子を有する化合物を用いることができる。
また、求電子剤には、例えば水酸基を置換したハロゲン化アルキル化合物等を用いることができる。
更に、イオン交換反応に用いるアルカリ金属塩には、例えばフッ化アルキルスルホン酸リチウム塩や、フッ化アルキルスルホニルイミドカリウム塩等のアニオンを含むアルカリ金属塩を用いることができる。
求核置換反応に用いる求核剤、求電子剤、及び、イオン交換反応に用いるアルカリ金属塩を所望の組み合わせに変更することで、目的のイオン導電剤を公知の方法の組み合わせによって合成することができる。
イソシアネート化合物の例としては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネート及びこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、そのブロック体等のイソシアネート化合物が挙げられる。
この中でも、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ポリイソシアネートが好ましい。これらの化合物は、カチオンの有する水酸基との反応性が高く、樹脂に結合していないカチオンの割合が減る。そのためイオン導電剤の浸みだしの少ない表面層が得られる。
また、ポリイソシアネートとして、後述するポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを、あらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートと反応させたイソシアネート末端プレポリマーとして用いることが好ましい。この理由は、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールと、イオン導電剤及び樹脂粒子を分散させて樹脂中に配置できるためである。そのため柔軟性に優れる表面層が得られる。
ポリイソシアネートの配合量は、前記イオン導電剤が有する水酸基及び前記アミノ化合物が有する水酸基及び/又はアミノ基の合計の数1.0に対して、イソシアネート基の比率が1.0から2.0の範囲であることが好ましい。1.0以上であると帯電付与性に優れる表面層が得られる。2.0以下であると柔軟性に優れる表面層が得られる。なお、上記の合計の数は、ポリオールを用いる場合には、ポリオールが有する水酸基の数を含む
表面層形成用の塗料は、上記イオン導電剤及びアミノ化合物以外のポリオール(以降、「他のポリオール」ともいう)を更に含んでいてもよい。他のポリオールは、複数の水酸基を分子内に有しており、水酸基は前記ポリイソシアネートと反応する。他のポリオールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。またポリエステルポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分や、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸等とのジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
図2は、本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。図2に示したプロセスカートリッジ17は、現像手段である現像装置22、電子写真感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、及び、帯電ローラ24が一体化されている。また、当該プロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置(以下、「電子写真画像形成装置」ともいう)の本体に着脱可能に構成されている。現像装置22は、現像剤担持体16、現像ブレード21、トナー供給ローラ19、及び、トナー容器20を含む。トナー容器20中には、トナー15が充填されている。トナー容器20中のトナー15は、トナー供給ローラ19によって現像ローラ16の表面に供給され、現像ブレード21によって、現像剤担持体16の表面に所定の厚みのトナー15の層が形成される。
現像装置22は、一成分現像剤としてトナーを収容したトナー容器20と、トナー容器20内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体18と対向設置された現像剤担持体としての現像剤担持体16とを備えている。この現像装置22は感光体18上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
SUS304製の直径6mm、全長278.9mmの芯金に、プライマー(商品名、DY35−051;東レダウコーニング社製)を塗布し、温度180℃に加熱したオーブンで20分間焼きつけ基体とした。
上記で用意した基体を金型に配置し、以下の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
<付加型シリコーンゴム組成物>
・液状シリコーンゴム材料
(商品名、SE6724A/B;東レ・ダウコーニング社製) 100質量部、
・カーボンブラック
(商品名、トーカブラック#4300;東海カーボン社製) 15質量部、
・耐熱性付与剤としてのシリカ粉体 0.2質量部、
・白金触媒 0.1質量部。
続いて、金型を15分間150度に加熱して、シリコーンゴムを加硫して硬化させた。周面に硬化したシリコーンゴム層が形成された基体を金型から脱型した後、当該基体を、さらに温度180℃で1時間加熱して、シリコーンゴム層の硬化反応を完了させた。こうして、基体の外周に直径12mmのシリコーンゴム弾性層が形成された弾性ローラE−1を作製した。
以下に本発明の表面層を得るための合成例を示す。
<イオン導電剤の合成>
(イオン導電剤A−1の合成)
ジムロートを取り付けたナスフラスコに撹拌子とテトラヒドロフラン(以下THF、関東化学社製)50mlを入れ、水素化ナトリウム(関東化学社製) 12.5g(0.52mol)を分散させ、ナスフラスコを氷浴で冷却する。求核剤であるG−1(イミダゾール、東京化成工業社製)8.8g(0.13mol)をTHF 50mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下した後、氷浴を取り外し室温で2時間撹拌する。求電子剤であるH−1(2−ブロモエタノール)(東京化成工業社製)41.3g(0.33mol)を室温で加えた後、70℃で7時間加熱還流した。反応後の反応液をろ過し、不溶分をTHFで洗い流し、得られたろ液の溶媒を減圧留去した。再びジクロロメタンに溶解させ、ろ過し、ろ液を回収後、溶媒を減圧留去した。得られた濃縮物をジエチルエーテルにて洗浄し、減圧下乾燥し、イオン導電剤前駆体を28g得た。続いて、得られたイオン導電剤のアニオンを目的のアニオンに交換させるため、得られたイオン導電剤前駆体の全量を、メタノール100mlに室温で溶解させた。溶液を撹拌させながら、純水50mlに溶解させたイオン交換塩I−1(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、関東化学社製)57.4gを添加し、室温で24時間撹拌した。反応後メタノールを減圧留去し、ジクロロメタン/水で分液後、有機層を回収し、さらに2回水で洗浄し、溶媒を減圧留去し、乾燥後、白色粉末としてイオン導電剤A−1を得た。
原料となる求核剤、求電子剤、イオン交換塩の種類及び配合量を、表1〜表4に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤A−1の合成と同様にして、イオン導電剤A−2、A−6〜A−16、A−20〜21、A−23、及びA−26を得た。
ジムロートを取り付けたフラスコに、求核剤であるG−1(イミダゾール、東京化成工業社製)6.1g(0.09mol)、求電子剤であるH−4(6−ブロモー1−ヘキサノール、東京化成工業社製)23.7g(0.14mol)、炭酸カリウム(関東化学社製)25g(0.18mol)、アセトン200mlを加え、一晩加熱還流させる。反応後、反応液をろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、求核剤が三級化された化合物を得た。続いて得られた化合物をジクロロメタン50mlに溶解させ、求電子剤であるH−1(2−ブロモ−エタノール、東京化成工業社製)17.5g(0.14mol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥後白色粉末として四級化されたイオン導電剤前駆体を得た。続いて、アニオンを目的のアニオンとするために、得られたイオン導電剤前駆体の全量を、メタノール100mlに室温で溶解させた。溶液を撹拌させながら、純水50mlに溶解させたイオン交換塩I−1(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、関東化学社製)40.2gを添加し、室温で24時間撹拌した。反応後メタノールを減圧留去し、ジクロロメタン/水で分液後、有機層を回収し、さらに2回水で洗浄し、溶媒を減圧留去し、乾燥後、白色粉末としてイオン導電剤A−3を得た。
原料となる求核剤、求電子剤の種類及び配合量を、表5に記載の通り変更した以外は、イオン導電剤A−3の合成と同様にして、イオン導電剤A−4及びA−5を得た。
求電子剤H−1(2−ブロモエタノール)10g(0.08mol)に、N,N−ジメチルホルムアミド中イミダゾールの存在下tert−ブチルジメチルシリルクロリドを室温で3時間反応させ、酢酸エチル/水中で分液し乾燥後水酸基をシリル化した化合物を得た。蒸留したTHF 400mlに、不活性雰囲気下求核剤G−6(5−ブロモ−4−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾール)12.8g(0.054mol)を溶解させ、ドライアイス/メタノール浴で−78℃に冷却する。続いてn−ブチルリチウム/ヘキサン2.6mol/l溶液(関東化学社製)23ml(60mmol)をゆっくり滴下し、30分撹拌する。続いてシリル化したH−1のTHF溶液(50ml)をゆっくり滴下する。−78℃で3時間、室温で一晩反応させた後、反応溶液に塩酸を加え、室温で1時間撹拌し脱シリル化させる。溶媒を減圧留去した後、ジクロロメタン/水で分液し、乾燥後5−ヒドロキシエチル−4−メチル−2−フェニル−1,3−オキサゾールを白色粉末として得た。これをジクロロメタン50mlに溶解させ、四級化のための求電子剤であるH−1(2−ブロモエタノール、東京化成工業社製)7.5g(0.06mol)を加え、40℃で18時間加熱還流した。反応後溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルで洗浄後乾燥し、白色粉末として四級化されたイオン導電剤前駆体を得た。このイオン導電剤前駆体のアニオンは臭化物イオンである。続いて、アニオンを目的のアニオンに交換させるため、得られたイオン導電剤前駆体の全量を、メタノール100mlに室温で溶解させた。溶液を撹拌させながら、純水50mlに溶解させたイオン交換塩I−3(ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム、東京化成工業社製)54.2g(0.14mol)を添加し、室温で24時間撹拌した。反応後メタノールを減圧留去し、ジクロロメタン/水で分液後、有機層を回収し、さらに2回水で洗浄し、溶媒を減圧留去し、乾燥後、白色粉末としてイオン導電剤A−17を得た。
反応に用いる求核剤とイオン交換塩の種類及び量を、表6に記載のとおり変更した以外は、イオン導電剤A−17の場合と同様にして、イオン導電剤A−18を合成した。
ビス(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムクロリド20g(0.12mol)をメタノール100mlに溶解させ、室温で撹拌しながら、メタノール100mlに溶解させたイオン交換塩I−1(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、関東化学社製)51.7g(0.18mol)を滴下する。室温で24時間撹拌後、メタノールを減圧留去した。ジクロロメタン/水で分液後、有機層を回収し、さらに2回水で洗浄し、溶媒を減圧留去し、乾燥後、白色粉末としてイオン導電剤A−19(ビス(ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を33g得た。
イオン導電剤A−22は市販の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製)をそのまま用いた。
ジムロートを取り付けたナスフラスコに撹拌子とテトラヒドロフラン(以下THF、関東化学社製)50mlを入れ、水素化ナトリウム(関東化学社製) 12.5g(0.52mol)を分散させ、ナスフラスコを氷浴で冷却する。求核剤であるG−1(イミダゾール、東京化成工業社製)8.8g(0.13mol)をTHF 50mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下した後、氷浴を取り外し室温で2時間撹拌する。求電子剤であるH−1(2−ブロモエタノール)(東京化成工業社製)41.3g(0.33mol)を室温で加えた後、70℃で7時間加熱還流した。反応後の反応液をろ過し、不溶分をTHFで洗い流し、得られたろ液の溶媒を減圧留去した。再びジクロロメタンに溶解させ、ろ過し、ろ液を回収後、溶媒を減圧留去した。得られた濃縮物をジエチルエーテルにて洗浄し、減圧下乾燥し、イオン導電剤A−24(1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウム ブロミド)を28g得た。
三口フラスコに純水200mlと、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド (45−50%水溶液)18.1ml(約0.045mol)を入れ、三口フラスコを氷浴させる。滴下ロートに、1,1,1−トリフルオロ−N−トリフルオロメチルスルホニルメタンスルホニルアミド11.4g(mol)(関東化学社製)を純水15.7mlに溶解させた水溶液を入れておく。窒素フロー下、氷浴しながら30分かけて水溶液を滴下する。滴下後室温で24時間撹拌させる。反応後、酢酸エチル/純水で3回分液後、有機層を回収し、乾燥後、溶媒を減圧留去し、黄色液体としてイオン導電剤A−25(トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を11g得た。
実施例、比較例及び参考例に用いる樹脂粒子を表9に記載する。なお、樹脂粒子K−1〜5は、後述する方法により作製した樹脂粒子であり、K−6〜9は市販の樹脂粒子である。また、樹脂粒子のTg及び重量平均粒径は前記測定方法により測定した。
容量が2リットルの攪拌機付きセパラブルフラスコに水800gを入れ、この中にヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:「メトローズ90SH−100」、信越アステック株式会社製)32gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、ポリエステルポリオール「F−3010」を15.0g、及び「P−3010」を60.0g、及びイソシアネート成分「TPA−100(登録商標、以下同様)」を100.0g、希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)250.0g並びに触媒としてジブチル錫ジラウレート0.003gを混合して、樹脂粒子の原材料を調製した。この樹脂粒子の原材料中のポリオール成分とイソシアネート成分の質量比OH/NCO%は10.0であった。
得られた樹脂粒子のTgは27℃であった。
ポリエステルポリオール「F−3010」を7.8g、及び「P−3010」を70.0gとした(ポリオール成分とイソシアネート成分の質量比OH/NCO%は10.0)以外はK−1と同様にして、ポリウレタン粒子K−2を得た。得られた樹脂粒子のTgは13℃であった。
ポリエステルポリオール「F−510」を26.0g、及び「P−3010」を39.0gとした(ポリオール成分とイソシアネート成分の重量比OH/NCO%は3.0)以外はK−1と同様にして、ポリウレタン粒子K−3を得た。得られた樹脂粒子のTgは38℃であった。
・「P−3010」(商品名、株式会社クラレ製)
・「F−3010」(商品名、株式会社クラレ製)
・「F−510」(商品名、株式会社クラレ製)
・「TPA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)
・アジピン酸 35.9質量部
・フタル酸 3.5質量部
・テレフタル酸 5.0質量部
・1,4−ブタンジオール 22.0質量部
・ポリエチレングリコール(数平均分子量2000) 88.0質量部
(商品名:PEG−2000、三洋化成工業社製)
・テトラブチルチタネート 0.1質量部
・酸化防止剤 0.3質量部
(商品名:イルガノックス1010、チバガイギー(株)製)
をエステル化反応缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下220℃で2時間反応させた。次いで、反応液を重合缶に移行した後、テトラブチルチタネート0.1質量部を添加し、250℃で0.5mmHg以下の条件で3時間重合した。重合終了後、得られたポリマーを冷却ベルト上にガット状に吐出し、ペレタイズすることによって、ペレット状のポリエーテルエステルを調製した。上記により得られたポリエーテルエステル100質量部とポリエチレンオキサイド(明成化学工業(株)製、商品名:R150)200質量部とをタンブラーミキサーにてドライブレンドし、2軸押出機にて260℃で加熱しながら混練し、混合物を得た。得られた混合物を約150℃に冷却した後、分散媒である水2000質量部と混合してポリエーテルエステル粒子の懸濁液とした。これを遠心分離法により目的とするポリエーテルエステルの樹脂粒子を分離した後、加熱乾燥して、平均粒子径が10μmのほぼ真球状をしたポリエーテルエステルの樹脂粒子K−4を得た。得られた樹脂粒子のTgは19℃であった。
・メタクリル酸イソブチル 75.0質量部
(商品名「アクリエステルIB」、三菱レイヨン株式会社製)
・1,9−ノナンジオールジメタクリレート 4.0質量部
(商品名「ライトエステル1,9−ND」、共栄社化学株式会社製)
・エポキシ基含有アクリル系液状ポリマー 20.0質量部
(商品名「ARUFON UG−4000」、東亞合成株式会社製)
・2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量部
(和光純薬工業株式会社製)
を混合し、撹拌することで、モノマー配合液(混合液)を得た。また、イオン交換水240gに、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、商品名「GH−17」)の5質量%水溶液60gを溶解させて、1質量%ポリビニルアルコール水溶液300gを得た。
次に、得られたモノマー配合液と上記1重量%ポリビニルアルコール水溶液300gとを内容量500mlのガラス製セパラブルフラスコ中に投入する。攪拌速度100rpmにて撹拌を行いながら、セパラブルフラスコの内温を65℃まで昇温して65℃の条件下で3時間かけて懸濁重合を行う。その後、更にセパラブルフラスコの内温を80℃まで昇温して80℃の条件下で1時間かけて懸濁重合を行った。セパラブルフラスコの内温を室温に戻した後、セパラブルフラスコの内容物から固形分を単離することにより、樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の平均粒子径は10μm、Tgは32℃であった。
樹脂粒子K−6〜9は表9に示す市販品を用いた。
(イソシアネート基末端プレポリマーC−1の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でイソシアネートD−1(ポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200 日本ポリウレタン工業社製))38質量部に対し、ポリオールF−1(ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)(商品名:PTG―L 2000;保土谷化学社製)) 100質量部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、メチルエチルケトン(MEK)50質量部で希釈し、イソシアネート基含有量3.4%のイソシアネート基末端プレポリマーC−1の溶液を得た。
反応に用いるイソシアネートとポリオールの種類及び配合量を、表10〜表12に記載の通りに変更した以外は、イソシアネート基末端プレポリマーC−1の場合と同様にして、イソシアネート基末端プレポリマーC−2〜C−5を合成した。
合成したイソシアネート基末端プレポリマーと反応させるポリオールを表12に示す。
以下に、本発明の現像剤担持体の製造方法について説明する。
表面層の材料として以下の材料を撹拌混合した。
・イソシアネート基末端プレポリマーC−1 236.6質量部
・ポリオールJ−1 63.4質量部
・イオン導電剤A−1 3.0質量部
・樹脂粒子 K−1 30.0質量部
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下MEK)を加えた後、サンドミルにて混合した。ついで、更に、MEKで粘度10〜13cpsに調整して表面層形成用塗料を調製した。
先に作製した弾性ローラE−1を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラE−1の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに温度160℃にて4時間加熱処理することで弾性層の外周に膜厚約15μmの表面層を設け、実施例1に係る現像剤担持体を作製した。
表面層の材料として、下記表14に記載の材料を用いた以外は実施例1と同様にして、表面層形成用塗料を調製した。そして、各塗料を弾性ローラE−1に対して、実施例1と同様にして塗布、乾燥及び加熱を行って実施例2〜21に係る現像剤担持体を作製した。
表面層の材料として、ポリオールJ−1 63.4質量部に対し、イオン導電剤A−1 3.0質量部、イソシアネート基末端プレポリマーC−1 236.6質量部、及び樹脂粒子K−6 30.0質量部、を撹拌混合した。
以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして比較例1に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして弾性ローラE−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、比較例1の現像剤担持体を作製した。
表面層の材料として、下記表15の材料を用いた以外は比較例1と同様にして、表面層形成用塗料を作成した。そして、各塗料を弾性ローラに対して、比較例1と同様にして塗布、乾燥及び加熱を行って比較例2〜8に係る現像剤担持体を作製した。
表面層の材料として、ポリオールJ−1 63.4質量部に対し、イオン導電剤A−25 2.6質量部、イソシアネート基末端プレポリマーC−1 236.6質量部、及び樹脂粒子K−1 30.0質量部、を撹拌混合した。以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして、参考例1に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして、弾性ローラE−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、参考例1の現像剤担持体を作製した。イオン導電剤の種類と量を下記表16に示すとおりに変更した以外は参考例1と同様にして、参考例2の現像剤担持体を作製した。
本実施例で得られた表面層については、熱分解装置(商品名:パイロホイルサンプラーJPS−700、日本分析工業社製)及びGC/MS装置(商品名:Focus GC/ISQ、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、熱分解温度を590℃、キャリアガスとしてヘリウムを使用し、分析を行った。その結果、得られたフラグメントピークから、表面層が、構造式(1)〜(2)に示される構造を有していることが確認された。
こうして得られた実施例1〜21、比較例1〜8及び参考例1〜2に係る現像剤担持体に対して、以下の項目について評価を行った。
現像剤担持体のローラ電流値の測定は、23℃、45%RH(以下N/Nと記す)の環境中に6時間以上現像剤担持体を放置し、N/N環境下で測定を行った。
図4に本発明に係るローラ電流値評価冶具の概略構成図を示す。表面層の導電性が高い(抵抗が低い)と、ローラに流れる電流値が大きくなる。そのため、一定電圧印加時の現像剤担持体に流れる電流値を測定することで、表面層の導電性を評価できる。まず、図4(a)において、導電性の軸受け38を介して導電性の基体2の両端を各々4.9Nの荷重で押しながら、直径40mmの円柱形金属37を回転させ、現像剤担持体16を60rpmの速度で従動回転させる。次に高圧電源39によって電圧50Vを印加し、円柱形金属37とグランドとの間に配設した既知の電気抵抗(現像剤担持体16の電気抵抗に対して2桁以上電気抵抗が低いもの)を有する抵抗器の両端の電位差を計測した。当該電位差の計測には、電圧計40(FLUKE社製 189TRUE RMS MULTIMETER)を用いた。測定した電位差と抵抗器の電気抵抗から、現像剤担持体16を介して円柱形金属に流れた電流を計算により求める。ここで、該電位差の計測は電圧印加2秒後から1.5時間サンプリングを行い、電圧印加後2秒から3秒までの1秒間の平均値から計算される値を初期ローラ電流値、1.5時間後1秒間の平均値から計算される値通電後ローラ電流値とした。
現像剤担持体の摩擦帯電量の測定は、温度35℃、相対湿度85%(以下H/H)の環境中に6時間以上現像ローラを放置してから、H/H環境下において、下記手順に従って行った。
測定には、図5に示した測定部を、カスケード式表面帯電量測定装置TS−100AT(商品名、京セラケミカル社製)に接続して使用した。図5のように絶縁支持棒48に現像ローラ42を設置し、キャリア43を粉体投入口41に投入して10秒間落下させてキャリア43に接触帯電を生じさせた。キャリアは、標準キャリアN−01(日本画像学会)を使用した。絶縁板45上に設置された受け皿44内に落下したキャリア43の総帯電量を、コンデンサ46と並列に接続された電位計47で測定し、帯電量Q〔μC〕とした。さらに、受け皿44内に落下したキャリアの質量(g)を測定し、これらの値から、単位質量あたりの帯電量Q/M(μC/g)を帯電量とした。なお、本測定での現像剤担持体によって得られる摩擦帯電量を、初期ローラ帯電量とした。さらに、下記[かぶり画像評価]の際に、画像10000枚出力後の現像剤担持体をレーザープリンターから取出し、図5に示す測定装置に設置し、再度ローラ帯電量を測定し、耐久後のローラ帯電量とした。
評価対象としての現像剤担持体を、図3に示す構成を有するレーザープリンター(商品名、LBP7700C;キヤノン(株)製)に装填してかぶりの評価を行った。先ず、評価対象の現像剤担持体を装填したレーザープリンターをH/H環境中に設置後6時間以上静置した。次いで、黒色で、印字率1%の画像を所定枚数のコピー用紙に対して、100枚ごとに10分の休止時間を設けながら、間欠出力した後に、新しいコピー用紙に白ベタ画像を出力し、白ベタ画像の出力中にプリンターを停止した。この時、感光体上に付着した現像剤をテープ(商品名、CT18;ニチバン(株)製)ではがし取り、反射濃度計(商品名、TC−6DS/A;(有)東京電色製)にて反射率を測定した。テープの反射率を基準としたときの反射率の低下量(%)を測定し、これをかぶり値とした。
印字率1%の画像を100枚出力した後に測定したかぶり値を初期かぶり値、印字率1%の画像を10000枚出力した後に測定したものを耐久後かぶり値とした。
トナーに対する現像剤担持体の帯電付与性を評価するために、摩擦帯電量を測定した。上記かぶり画像評価の際に、現像剤担持体の、現像剤規制ブレードと、感光体当接位置に挟まれた部分のうち範囲が狭い部分に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集する。その際、金属円筒管を通じてコンデンサに蓄えられた電荷量(測定機 商品名、8252;エーディーシー社製)と、吸引された現像剤の質量を測定した。これらの値から、単位質量あたりの電荷量(μC/g)を算出した。負帯電性のトナーを用いる場合、単位質量あたりの電荷量の符号が負であり、絶対値が大きいほど、現像剤担持体の帯電付与性が高いと言える。上記かぶり評価の時と同様に、印字率1%の画像を100枚出力した後に測定した帯電量を初期帯電量、印字率1%の画像を10000枚出力した後に測定したものを耐久後帯電量とした。
実施例毎に用いたイオン導電剤及びアミノ化合物の種類と、得られた現像剤担持体の電流値、初期及び耐久後の現像剤担持体の摩擦帯電量、初期及び耐久後の帯電量とかぶりの値を、表17及び表18に示す。
樹脂粒子の構造に関して、たとえば実施例1〜3と実施例4,5とを比較すると、実施例1〜3は構造式(3)で示されるエステルウレタン構造を樹脂粒子中に含有しているので、樹脂粒子中のアニオンの通過をより抑制することができる。そのため、耐久前後の帯電量変動がより小さく、安定して高品質な画像が得られている。
また、バインダー樹脂のTgに関して、たとえば実施例7〜10と実施例11〜14を比較する。すると、実施例11〜14はバインダー樹脂のTgが−65℃〜0℃であるため、適切な電気抵抗を持ち、かつ別の部材と当接した際に十分にバインダー樹脂が変形するためアニオン−カチオン性有機基間距離が接近し、アニオンの局在化を回復しやすい。そのため、現像剤担持体表面電荷の正負のバランスが変化しにくく、耐久前後の帯電量変動がより小さく、安定して高品質な画像が得られている。
また、フッ素含有アニオンを用いると帯電量の変動をさらに抑制できることが、たとえば実施例16,17と実施例18〜21から明らかであり、フッ素含有アニオンを用いることが高品質な画像を安定して得るために有効であるとわかる。
上記実施例に対し、比較例1〜4に係る樹脂は、本発明に係る樹脂粒子のTgの範囲を逸脱しているため、耐久前後の帯電量の変化が大きく、かぶりが悪化している。
また比較例5〜8に係る樹脂は、本発明に係るイオン導電剤を用いていないため、耐久前後の帯電量の変化が大きく、かぶりが悪化している。
また参考例1、2に係る樹脂は、イオン導電剤の水酸基の数が3個以上である。そのため耐久前後の帯電量の変動が発生していない。
Claims (8)
- 導電性の基体と、
該基体上に弾性層及び表面層を有する現像剤担持体であって、
該表面層は、
分子内にカチオン
構造を有するバインダー樹脂、
アニオン、及び、
該バインダー樹脂中に分散されている樹脂粒子を含み、
該現像剤担持体の表面は、該樹脂粒子に由来の凸部を有しており、かつ、該樹脂粒子は、該現像剤担持体の表面に露出しておらず、
該樹脂粒子は、ガラス転移温度(Tg)が、+10〜+40℃であり、
該バインダー樹脂は、構造式(1)で示されるカチオン構造、及び、構造式(2)で示されるカチオン構造の何れか一方又は両方を分子内に含むことを特徴とする現像剤担持体:
[構造式(1)中、
Xは窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表し、
Xが窒素原子の場合、pは1であり、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、pは0であり、
R11〜R15は、各々独立に、下記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかあって、かつR11〜R15のうち何れか2つは(c)である、
(a)水素原子、
(b)炭素数1〜6の飽和炭化水素基、
(c)該バインダー樹脂のポリマー鎖と結合している部分を含む構造]、
[構造式(2)中、R21〜R26は、各々独立に、前記(a)〜(c)からなる群から選択される何れかであって、かつ、R21〜R26のうちの何れか2つが(c)である。]。 - 前記アニオンが、フッ化スルホン酸アニオン、フッ化カルボン酸アニオン、フッ化スルホニルイミドアニオン、フッ化スルホニルメチドアニオン、フッ化アルキルフッ化リン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、及びジシアンアミドアニオンからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の現像剤担持体。
- 前記樹脂粒子が、エステルウレタン樹脂又はポリエーテルエステル樹脂を含む請求項1又は2に記載の現像剤担持体。
- 前記バインダー樹脂のTgが、−65℃〜0℃である請求項1〜4の何れか一項に記載の現像剤担持体。
- 前記バインダー樹脂がウレタン樹脂である請求項1〜5の何れか一項に記載の現像剤担持体。
- 電子写真画像形成装置の本体に着脱自在に構成されており、少なくとも現像手段を有しているプロセスカートリッジであって、該現像手段が、請求項1〜6の何れか一項に記載の現像剤担持体を有していることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 少なくとも現像手段を有している電子写真画像形成装置であって、該現像手段が、請求項1〜6の何れか一項項に記載の現像剤担持体を有していることを特徴とする電子写真画像形成装置。
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