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JP2019012733A - 電子機器筐体及び電子機器筐体成形用樹脂組成物 - Google Patents

電子機器筐体及び電子機器筐体成形用樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性及び軽量化の両立が可能な電子機器筐体及び電子機器筐体成形用樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む樹脂組成物の成形物である電子機器筐体1は、板形状を有する本体部2と、本体部2の縁に設けられ、本体部2から突出する壁部32aと、を備える。電子機器筐体用樹脂組成物はポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む。【選択図】図3

Description

本発明は、電子機器筐体及び電子機器筐体成形用樹脂組成物に関する。
各種家電製品、携帯電話、及びPC(Personal Computer)等の電子機器の筐体として、樹脂組成物を成形してなる筐体が一般的に用いられている。例えば、下記特許文献1には、高温及び低温における衝撃特性に優れた成形品を得るために、ポリチオエーテル、繊維状強化剤、及び熱可塑性エラストマーが配合される樹脂組成物と、金属又は無機固体とをインサート成形してなるインサート成形品が記載されている。
特開2005−161693号公報 特開2003−82228号公報
上述したような樹脂組成物を成形してなる筐体として、例えば携帯可能な電子機器用の筐体がある。このような筐体に対しては、落下等に対する耐衝撃性を維持しつつ、さらなる軽量化が求められている。特に、落下等の際に生じる衝撃を受けやすい部分(例えば、筐体の縁に設けられる壁部等)の耐衝撃性を維持しつつ、軽量化を実現することが求められている。
本発明は、耐衝撃性及び軽量化の両立が可能な電子機器筐体を提供することを目的とする。また、本発明は上記電子機器筐体の材料となる電子機器筐体成形用樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る電子機器筐体は、ポリチオエーテルとポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む樹脂組成物の成形物である電子機器筐体であって、板形状を有する本体部と、本体部の縁に設けられ、本体部から突出する壁部と、を備える。
この電子機器筐体は、ポリチオエーテルとポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む樹脂組成物の成形物である。この樹脂組成物が上記ガラス繊維を含むことにより、成形された電子機器筐体の曲げ強さが向上される。加えて、本体部の縁に設けられ、本体部から突出する壁部内のガラス繊維は、当該壁部の突出方向に配向する傾向にある。これにより、上記突出方向における壁部の靱性が向上し、当該壁部における割れ等の発生が抑制される。したがって、例えば電子機器筐体の全体を薄肉化して軽量化を実現した場合であっても、壁部の耐衝撃性を維持できる。すなわち、耐衝撃性及び軽量化の両立が可能な電子機器筐体を提供できる。
壁部の突出方向における壁部の曲げ強さをMDとし、突出方向に直交する幅方向における壁部の曲げ強さをTDとした場合、TD/MDは、0.45以上であってもよい。この場合、壁部は、突出方向だけでなく幅方向においても良好な耐衝撃性を有する。
樹脂組成物を、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用いると共に、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて6秒間成形したときの成形物のスパイラルフロー長は、750mm以上であってもよい。このような樹脂組成物を用いて成形することにより、壁部のガラス繊維の配向性が向上する。このため、壁部等の靱性をさらに向上できる。
壁部の厚さは、0.1〜1.0mmでもよい。この場合、上記樹脂組成物が成形してなる壁部は、十分な耐衝撃性を有している。また、本体部の厚さを壁部と同程度にすることができ、薄肉化による軽量化が実現される。
壁部の厚さをtとし、壁部の高さをhとした場合、h/tは、5〜30であってもよい。
壁部の先端部には爪部が設けられていてもよい。突出方向における壁部の靱性が向上しているので、爪部が電子機器の本体などに係止する際における壁部のしなりに起因する破損は、良好に抑制される。
上記電子機器筐体は、リサイクル品であってもよい。上記樹脂組成物は、リサイクル工程にて性能が劣化しにくいポリチオエーテルを含有している。このため、電子機器筐体がリサイクル品であっても、耐衝撃性及び軽量化の両立が可能になっている。
本発明の他の一態様に係る電子機器筐体成形用樹脂組成物は、ポリチオエーテルとポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含有し、ポリチオエーテルとポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維との合計100重量部に対して、ポリチオエーテルとポリカーボネートとの合計が40〜60質量部の範囲であり、断面長円形状を有するガラス繊維が60〜40重量部の範囲である。
また、本発明の他の一態様に係る電子機器筐体成形用樹脂組成物における、ポリチオエーテルとポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維との合計割合は、電子機器筐体成形用樹脂組成物100重量部当たり、80重量部以上、かつ100重量部以下の範囲である。当該割合が80重量部以上、かつ100重量部未満の範囲の場合、他に後述する任意成分を含んでいてもよい。
この電子機器筐体成形用樹脂組成物では、上記範囲の割合でガラス繊維が含まれることにより、当該樹脂組成物を成形してなる電子機器筐体の曲げ強さが向上される。加えて、上記樹脂組成物は、高い流動性を有しているので、電子機器筐体におけるガラス繊維の配向性が高くなる傾向にある。このため、電子機器筐体の壁部等の衝撃を受けやすい部分においても、ガラス繊維の配向性が高くなり、上記衝撃を受けやすい部分の靱性が向上する傾向にある。したがって、上記樹脂組成物を用いることによって、電子機器筐体の全体を薄肉化して軽量化を実現した場合であっても、上記衝撃を受けやすい部分の耐衝撃性を維持することができる。すなわち、上記樹脂組成物を用いることにより、耐衝撃性及び軽量化の両立可能な電子機器筐体を成形できる。
樹脂組成物を140℃で2時間乾燥した後に射出成形した成形物において、樹脂組成物の射出方向における成形物の曲げ強さをMDとし、射出方向に直交する方向における成形物の曲げ強さをTDとした場合、TD/MDは、0.45以上であってもよい。このような樹脂組成物を用いることにより、射出方向だけでなく当該射出方向に直交する方向においても良好な耐衝撃性を有する成形物を成形できる。
樹脂組成物を、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用いると共に、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて6秒間成形したときの成形物のスパイラルフロー長は、750mm以上であってもよい。このような樹脂組成物を用いることにより、成形物のガラス繊維の配向性が向上する。
この電子機器筐体成形用樹脂組成物は、リサイクル品であってもよい。この電子機器筐体成形用樹脂組成物は、リサイクル工程にて性能が劣化しにくいポリチオエーテルを含有している。このため、リサイクル品を用いた場合であっても、耐衝撃性及び軽量化の両立可能な電子機器筐体を成形できる。
本発明の一態様によれば、耐衝撃性及び軽量化の両立が可能な電子機器筐体を提供できる。また、本発明の他の一態様によれば、上記電子機器筐体の材料となる電子機器筐体成形用樹脂組成物を提供できる。
図1は、実施形態に係る電子機器筐体を示す概略平面図である。 図2は、図1の一部を拡大した図である。 図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。 図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。 図5は、実施例1〜6のそれぞれの樹脂組成物およびその測定結果が記載された表を示す図である。 図6は、実施例7、8及び比較例1〜3のそれぞれの樹脂組成物およびその測定結果が記載された表を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
本実施形態に係る電子機器筐体は、ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む樹脂組成物の成形物である筐体である。以下では、電子機器筐体の成形材料である樹脂組成物(電子機器筐体成形用樹脂組成物、以下、単に「樹脂組成物」と略すことがある)、当該電子機器筐体成形用樹脂組成物を成形してなる電子機器筐体成形用樹脂成形品について説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、ガラス繊維とを含んでいる。この樹脂組成物において、ポリチオエーテルとポリカーボネートとガラス繊維とは主成分である。該樹脂組成物におけるポリチオエーテルとポリカーボネートとガラス繊維との合計割合は、該樹脂組成物100重量部当たり、80重量部以上、かつ100重量部以下の範囲であることが好ましい。また、該樹脂組成物におけるポリチオエーテルとポリカーボネートとの合計の割合は、ポリチオエーテルとポリカーボネートとガラス繊維の合計100重量部に対して40重量部以上、かつ60重量部以下の範囲であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、ガラス繊維に対する、ポリチオエーテルとポリカーボネートとの合計の割合( 〔ポリチオエーテルとポリカーボネートの合計〕の重量部/ガラス繊維 の重量部)は、例えば、2/3以上、かつ3/2以下の範囲であることが好ましい。上記割合が2/3以上の範囲であることにより、樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、及び成形品の寸法安定性を確保できる傾向にあるため好ましい。加えてこの場合、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用い、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて、樹脂組成物を6秒間成形してなる成形物のスパイラルフロー長が、750mm以上になり得る傾向にあるため好ましい。上記割合が3/2以下の範囲であることにより、成形品の強度(例えば、曲げ強さ)を確保できる傾向にあるため好ましい。
チオエーテルは、スルフィドとも呼称され、一般式「R−S−R」で示される有機化合物である(R,Rは任意の有機基であり、Sは二価の硫黄である)。ポリチオエーテルは、構造単位が下記化学式で示されるポリマーである。Rは、任意の有機基であり、例えば低級アルキル基、高級アルキル基、又はアリーレン基等である。Rがアリーレン基である場合、又はRがフェニレン基である場合、以下のようにそれぞれ呼称されることがある。
Figure 2019012733
本実施形態のポリチオエーテルの製造方法は、公知の方法で製造することができる。例えば、日本国特開2010−126621号公報に記載されている方法により製造される低塩素含有ポリチオエーテルが好ましいものとして挙げられる。この低塩素含有ポリチオエーテルは、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)等の極性溶媒中で、硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物と、ジクロロベンゼン等のジハロ芳香族化合物とを反応させる際に、該ジハロ芳香族化合物の反応率が0〜40%の時点でメルカプト化合物、メルカプト化合物の金属塩、フェノール化合物、フェノール化合物の金属塩およびジスルフィド化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(好ましくはチオフェノール、ジフェニルジスルフィド、及びチオフェノールナトリウム塩など)を添加することによって、製造することができる。ポリチオエーテルは、結晶性ポリマーであってもよい。なお、低級アルキル基は、炭素を1〜6個有する有機基であり、高級アルキル基は、炭素を7個以上有する有機基である。
ポリチオエーテルに含有されるフェニレン基としては、例えば、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、低級アルキル置換フェニレン、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン、p,p’−ジフェニレンスルフォン、p,p’−ビフェニレン、p,p’−ビフェニレンエーテル、p,p’−ビフェニレンカルボニル及びナフタレン等が挙げられる。これらのフェニレン基の少なくとも何れかを有するPPSとしては、例えば、同一の構造単位からなるホモポリマー、2種以上の異なるフェニレン基からなるコポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。なお、コポリマーは、ランダムコポリマーでもよいし、ブロックコポリマーでもよい。
加工性及び入手容易性の観点から、p−フェニレンサルファイドを構造単位の主構成要素とするPPSを用いてもよい。また、この他に、ポリフェニレンケトンサルファイド、ポリフェニレンケトンケトンサルファイド等を使用してもよい。また、コポリマーとして、p−フェニレンサルファイドの構造単位とm−フェニレンサルファイドの構造単位とを有するコポリマー、フェニレンサルファイドの構造単位とフェニレンケトンサルファイドの構造単位とを有するコポリマー、フェニレンサルファイドの構造単位とフェニレンケトンケトンサルファイドの構造単位とを有するコポリマー、フェニレンサルファイドの構造単位とフェニレンスルホンサルファイドの構造単位とを有するコポリマーが挙げられる。
PPSは、例えば、極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロゲン置換芳香族化合物とを重合反応させることによって得ることができる。アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられる。反応系中にて、水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとを反応させることにより生成した硫化ナトリウムを使用してもよい。ジハロゲン置換芳香族化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、p−ジブロモベンゼン、2,6−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、p,p’−ジクロロフェニルエーテル、4,4’−ジクロロフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、及び4,4’−ジクロロジフェニルケトン等が挙げられる。アルカリ金属硫化物とジハロゲン置換芳香族化合物とのそれぞれは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
ポリフェニレンサルファイドに分岐構造又は架橋構造を形成するために、1分子当たり3〜6個のハロゲン置換基を有するポリハロゲン置換芳香族化合物が併用されてもよい。ポリハロゲン置換芳香族化合物としては、例えば、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン等が挙げられる。ハロゲン置換芳香族化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。物性等の観点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、及び1,2,3−トリクロロベンゼンの少なくとも何れかが用いられてもよい。なお、上記ハロゲン置換芳香族化合物のアルキル置換化合物が用いられてもよい。
極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン、テトラアルキル尿素、ヘキサアルキル燐酸トリアミド等に代表される芳香族有機アミド溶媒が用いられてもよい。この場合、反応系の安定性が高くなり、高分子量のポリマーを得やすくなる。本実施形態のPPSは、実質的に直鎖状のPPSであってもよく、それ以外でもよい。また、PPSには、重合後に洗浄及び熱処理の少なくとも何れかが施されてもよい。
本発明に用いられるポリカーボネートは、特に制限はなく公知の種々のポリカーボネート樹脂を用いることができる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
特に好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
また、ポリカーボネートは、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネートであってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネートであってもよい。また、種々のポリカーボネートの混合物を用いることもできる。本発明において用いることができるポリカーボネートは、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、10,000〜100,000のものが好ましく、特に14,000〜40,000のものが好適である。なお、本発明におけるポリカーボネート成分の粘度平均分子量は、塩化メチレン100cmにポリカーボネートを20℃で溶解した溶液をウベローデ粘度計を用いて測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
(ηsp)/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10−50.83
(但し、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である)
本発明の樹脂組成物において、ポリチオエーテルとポリカーボネートとの割合は、重量比で(ポリカーボネート)/(ポリチオエーテル)が5/95以上、かつ30/70以下の範囲であることが好ましく、8/90以上、かつ25/75以下の範囲であることがより好ましく、さらに機械的強度に優れる点から10/90以上、かつ15/85以下の範囲であることがに好ましい。上記割合が30/70以下の範囲であることにより、樹脂組成物の流動性、機械的強度、及び成形品の寸法安定性を確保できる傾向にあるため好ましい。上記割合が5/95以上であることにより、成形品の耐衝撃性と、ポリチオエーテル以外の樹脂等の異種材料との接着性が向上する傾向にあるため好ましい。異種材料との接着性向上は複合成形品の製造をより容易とするため好ましい。特に該異種材料がポリカーボネート等の透明樹脂である場合にはレーザー溶着加工により本発明の樹脂組成物の成形品とポリカーボネート等の透明樹脂との複合成形品を容易に製造できるため好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、ガラス繊維とを含むほかに、任意成分としてエポキシ樹脂を含んでいてもよい。エポキシ樹脂としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、たとえば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂やポリアリーレンエーテル構造(α)を有するエポキシ樹脂などが挙げられ、このうち、接着性に優れることからビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましいものとして挙げられる。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂の種類としては、ビスフェノール類のグリシジルエーテルが挙げられ、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、またはテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂の場合、流動性、金属との接着性が向上する観点からエポキシ当量が170〜5000〔g/eq.〕の範囲であることが好ましく、さらにガス発生量が低減できる観点と、冷熱衝撃性が向上する観点から200〜4000〔g/eq.〕の範囲のものが好ましく挙げられる。
また、前記ノボラック型エポキシ樹脂の種類としてはフェノール類とアルデヒドとの縮合反応により得られたノボラック型フェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられ、具体例には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂がノボラック型エポキシ樹脂の場合、冷熱衝撃性が向上する観点と、流動性、金属部材との密着性が向上する観点とから、エポキシ当量が170〜300〔g/eq.〕の範囲が好ましく、さらに190〜250〔g/eq.〕の範囲のものがより好ましい。
なお、本発明の樹脂組成物に含まれるこれらのエポキシ樹脂は、硬化剤が存在すると溶融混練時に硬化反応によりエポキシ基が消失するため、硬化剤の割合はエポキシ樹脂成分中のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.1当量以下、より好ましくは0.01当量以下、最も好ましくは0当量、すなわち不存在下である。
本発明において任意成分であるエポキシ樹脂を用いる場合、その配合の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれるポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、エポキシ樹脂の合計100重量部に対して、エポキシ樹脂が1〜20重量部の範囲であることが好ましく、さらに、2〜15重量部の範囲であることがより好ましい。上記割合でエポキシ樹脂を配合することで樹脂組成物がさらに優れた機械的強度を確保できるだけでなく、エポキシ樹脂およびそれを含む硬化性樹脂組成物との接着性が向上する傾向にあるため好ましい。
ガラス繊維は、断面長円形状を有する繊維であり、樹脂組成物の強度を向上させるために用いられる。ガラス繊維は、樹脂組成物内に分散している。樹脂組成物に添加されるガラス繊維の平均長さは、例えば3000μmである。一方、後述する電子機器筐体内のガラス繊維の平均長さは、例えば280μm〜500μmであり、樹脂組成物に添加されるガラス繊維の平均長さよりも短くなっている。これは、樹脂組成物の生成時等にガラス繊維に割れが発生するためである。
ガラス繊維の扁平率は、例えば0.05〜0.5である。ガラス繊維の扁平率の下限値は、0.1でもよく、0.15でもよい。また、ガラス繊維の扁平率の上限値は、0.4でもよく、0.3でもよい。ガラス繊維の扁平率が0.05以上である場合、樹脂組成物を用いた成形物は、十分な強度を有する。また、ガラス繊維の扁平率が0.5以下である場合、成形物は、十分な弾性率を有する。ガラス繊維の扁平率は、断面の短径をD1、断面の長径をD2としたとき、D1/D2で表される。短径D1は、例えば0.5μm〜25μmである。ガラス繊維の短径D1が0.5μm以上であることにより、当該ガラス繊維の紡糸が容易になる。また、ガラス繊維の短径D1が25μm以下であることにより、ガラス繊維同士が十分な接触面積を有する。なお、長径D2は、例えば1.0μm〜300μmである。
本発明の樹脂組成物には、上記以外の各種充填剤及び有機溶媒等が任意成分として含まれてもよい。例えば充填剤として、バインダ(結合剤)、硬化促進剤、シランカップリング剤、重合開始剤、離型剤(例えばエステルワックス)、防錆剤(例えば塩基性炭酸亜鉛)、及び顔料等が樹脂組成物に含まれてもよい。また、例えば有機溶媒として、ポリチオエーテル及びガラス繊維を分散させるための溶媒が用いられてもよい。
次に、上記樹脂組成物の成形物である電子機器筐体について図1〜図4を用いながら詳細に説明する。以下にて説明する本実施形態に係る電子機器筐体は、上記樹脂組成物を金型を用いて射出成形してなる携帯電子機器(より具体的には、ラップトップPC)用の筐体である。
図1は、実施形態に係る電子機器筐体を示す平面図である。図2は、図1に記載される破線で囲われた部分の拡大図である。図1及び図2に示されるように、電子機器筐体1における本体部2は、ハードディスク又はバッテリー等の部材が載置される部材であり、板形状を有する弾性部材である。本体部2は、板形状を有する主部3と、主部3の各縁から延在し、板形状を有する縁部4〜7とを有している。
主部3の主面3aは、略長方形状を有している。このため、主部3の縁は、主面3aの各辺3b〜3eに相当する。縁部4〜7は、主面3aの対応する辺3b〜3eからそれぞれ延在している。各縁部4〜7は、主部3に対して折れ曲がるように成形されている。換言すると、主部3と縁部4〜7とは、互いに平行にならないように設けられている。なお、縁部4の一部には、電子機器の別部材が嵌合される切欠部4a,4bが設けられている。
本体部2の厚さ(すなわち、主部3及び縁部4〜7の厚さ)は、例えば0.1mm〜10mmである。特に、本体部2の最も薄い部分(以下、最も薄い部分を「薄肉部」と定義する)の厚さは、例えば0.1mm〜1.0mmである。本体部2における薄肉部の厚さが0.1mm以上であることにより、本体部2の耐衝撃性を確保できる。また、本体部2における薄肉部の厚さが1mm以下であることにより、本体部2の重量を抑制できる。
電子機器筐体1の本体部2には、複数の開口部が設けられている。具体的には、本体部2の主部3において、辺3c,3dの交点付近には、後述する円筒形状を有する突出部21aに囲まれる開口部11aが設けられている。同様に、辺3cの中心付近と、辺3d,3eの交点付近と、辺3eの中心付近とには、それぞれ後述する円筒形状を有する突出部21b〜21dに囲まれる開口部11b〜11dが設けられている。また、縁部4には、後述する円筒形状を有する突出部24a〜24dにそれぞれ囲まれる開口部12a〜12dと、平面視にて矩形状を有する複数の開口部13とが設けられている。開口部11a〜11d,12a〜12dのそれぞれには、電子機器の別部材に設けられた突起又はねじ等が挿入される。複数の開口部13は、例えば、排熱用の空気穴として機能するように密集して設けられている。これらの開口部11a〜11d,12a〜12d,13は、本体部2の成形と同時に形成される。
本体部2には、本体部2と一体成形されており、且つ、本体部2から突出する複数の突出部が設けられている。主部3には、開口部11a〜11dをそれぞれ囲むと共に円筒形状を有する突出部21a〜21dと、円筒形状を有する突出部22a〜22cと、多角柱形状を有する突出部23a〜23cとが設けられている。突出部22a〜22c,23a〜23cは、主部3の主面3a上における所望の位置に設けられる。突出部22a〜22cの内側には、電子機器の別部材に設けられた突起等が挿入されうる。突出部23a〜23cは、本体部2上に載置される部材の位置を示すマーク、及び当該部材の移動を妨げる壁として設けられる。突出部23aは、平面視にて略T字形状を有しており、突出部23bは、平面視にて略十字形状を有しており、突出部23cは、平面視にて略L字形状を有している。突出部21a〜21d,22b,22cの外周面には、耐衝撃性を向上するための補強部が設けられている。なお、突出部21a〜21d,22a〜22c,23a〜23cのそれぞれの厚さは、例えば0.1mm〜1.0mmである。
また、縁部4には、開口部11a〜11dをそれぞれ囲むと共に円筒形状を有する突出部24a〜24dが設けられている。突出部24b,24cの外周面には、耐衝撃性を向上するための補強部が設けられている。なお、突出部24a〜24dのそれぞれの厚さは、他の突出部と同様に、例えば0.1mm〜1.0mmである。
本体部2の縁(すなわち、縁部4等における主部3と反対側の縁)には、本体部2と一体成形されており、且つ、本体部2から突出する複数の壁部が設けられている。複数の壁部の突出方向は、突出部21a〜21d等の突出方向と略同一である。縁部4における辺3bの反対側に位置する縁には、壁部31a〜31cが設けられている。また、縁部5における辺3cの反対側に位置する縁には、壁部32a〜32hが点在して設けられている。加えて、縁部7における辺3eの反対側に位置する縁には、壁部33a〜33eが点在して設けられている。なお、壁部31a〜31c,32a〜32h,33a〜33eのいずれにおいても、互いに離間して設けられている。
ここで、図2〜4を用いながら本体部2に設けられる壁部32a,32bについて詳細に説明する。図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。まず、壁部32aについて説明する。図2及び図3に示されるように、壁部32aは、板形状を有しており、縁部5に対して折れ曲がるように成形されている。壁部32aの主面は略長方形状であり、先端側の角部は丸められてもよい。
壁部32aの高さは、上記突出方向に沿った長さに相当する。壁部32aの幅は、主面3aの辺3cの延在方向に沿った長さに相当する。壁部32aの厚さは、上記突出方向及び上記延在方向に直交する方向に沿った長さに相当する。この場合、壁部32aの高さhは、例えば0.1mm〜1.0mmであり、壁部32aの厚さtは、例えば0.1mm〜1.0mmである。壁部32aにおいて、厚さtに対する高さhの割合(h/t)は、5〜30に設定されることが好ましい。
壁部32aの幅に沿った方向(以下、単に「幅方向」とする)における両端には、壁部32aを支持する支持部41,42がそれぞれ設けられている。支持部41,42のそれぞれは、略L字板形状を有しており、壁部32a及び縁部5の両方と一体化している。支持部41,42は、本体部2及び壁部32aと一体成形されている。
図3に示されるように、壁部32aを構成する樹脂組成物内のガラス繊維51は、壁部32aの突出方向に配向している。ガラス繊維51が上記突出方向に配向するとは、ガラス繊維51の長さ方向と、上記突出方向にほぼ揃っていることを意味する。壁部32a内のガラス繊維51の配向性は、例えば射出成形にて、後に主部3となる空間の複数箇所から、金型内の空間に樹脂組成物を供給することによって実現できる。本実施形態では、壁部32a内におけるガラス繊維51の半分以上(1/3以上、もしくは1/4以上でもよい)が上記突出方向に配向している場合、ガラス繊維51が壁部32aの突出方向に配向しているとみなすことができる。
壁部32a内のガラス繊維51が、上記突出方向に配向している場合、壁部32aの靱性が向上する。加えて、上記突出方向における壁部32aの曲げ強さをMDとし、上記突出方向に直交する幅方向における壁部32aの曲げ強さをTDとした場合、TD/MDは、0.45以上になる。なお、MDは「Machine Direction」の略語であり、TDは「Transverse Direction」の略語である。
次に、図2及び図4を用いながら壁部32bについて説明する。図2及び図4に示されるように、壁部32bは、壁部32aと同様に板形状を有しており、本体部2から突出するように縁部5に対して折れ曲がっている。また、壁部32bは、壁部32aと同様の高さ及び厚さを有している。加えて、壁部32b内のガラス繊維51は上記突出方向に配向しているので、壁部32bは、壁部32aと同様の曲げ強さ(TD/MD)を有している。加えて、壁部32bの幅方向における両端には、壁部32aと同様の支持部43,44が設けられている。
図4に示されるように、壁部32bにおける先端部には、電子機器の別部材に係止するための爪部61が設けられている。爪部61は、壁部32bにおける主部3側の主面に設けられており、例えば上記主面から1mm程度張り出している。
壁部31a〜31c,32c〜32h,33a〜33eのそれぞれは、壁部32a,32bと同様に、板形状を有しており、本体部2から突出している。加えて、壁部31a〜31c,32c〜32h,33a〜33eのそれぞれは、壁部32a,32bと同様の高さ及び厚さを有している。また、壁部31a〜31c,32c〜32h,33a〜33eのそれぞれにおいても、壁部32a,32bと同様に、ガラス繊維は、対応する壁部の突出方向に配向している。換言すると、壁部31a〜31c,32c〜32h,33a〜33eのそれぞれは、壁部32aと同様の曲げ強さ(TD/MD)を有している。なお、32c〜32h,33a〜33eのそれぞれは、壁部32a,32bと同様に支持部を有しており、壁部32e,33a,33cは、壁部32bと同様に爪部を有している。
以上に説明した本実施形態に係る電子機器筐体1は、ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維51とを主成分として含む上記樹脂組成物が成形されてなっている。このため、成形された電子機器筐体1の曲げ強さが向上される。加えて、本体部2の縁に設けられ、本体部2から突出する壁部32a内のガラス繊維51は、壁部32aの突出方向に配向している。これにより、上記突出方向における壁部32aの靱性が向上し、壁部32aにおける割れ等の発生が抑制される。したがって、例えば電子機器筐体1の全体を薄肉化して軽量化を実現した場合であっても、壁部32aの耐衝撃性を維持できる。すなわち、耐衝撃性及び軽量化の両立が可能な電子機器筐体1を提供できる。
突出方向における壁部32aの曲げ強さをMDとし、突出方向に直交する幅方向における壁部32aの曲げ強さをTDとした場合、TD/MDは、0.45以上である。このため、壁部32aは、突出方向だけでなく幅方向においても良好な耐衝撃性を有する。
上記樹脂組成物を、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用いると共に、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて6秒間成形したときの成形物のスパイラルフロー長は、750mm以上であってもよい。このような樹脂組成物を用いて本体部2を成形することにより、壁部32aのガラス繊維51の配向性が向上する。このため、壁部32a等の靱性をさらに向上できる。
壁部32aの厚さは、0.1〜1.0mmである。このため、上記樹脂組成物が成形してなる壁部32aは、十分な耐衝撃性を有している。また、本体部2の薄肉部の厚さを壁部32aと同程度にすることができ、薄肉化による軽量化が実現される。
壁部32aの先端部には爪部61が設けられていてもよい。突出方向における壁部32aの靱性が向上しているので、爪部61が電子機器の本体などに係止する際における壁部32aのしなりに起因する破損は、良好に抑制される。
本発明に係る電子機器筐体及び電子機器筐体用樹脂組成物は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、本実施形態に係る電子機器筐体1は、必ずしも射出成形によって成形されなくてもよい。また、例えば、本体部2の主部3における主面3aには、例えば各種部材が載置される領域を判別するための目印及びライン等が設けられてもよい。
また、上記実施形態において、本体部2には、円柱形状、円錐形状、角錐形状、角錐台形状、及び円錐台形状のいずれかの突出部が設けられてもよい。また、例えば、縁部4,5,7だけでなく、縁部6に壁部が設けられてもよい。また、各壁部に設けられる支持部は、L字板形状でなくてもよい。支持部の形状は、例えば、扇板形状でもよいし、平板形状でもよい。
また、上記実施形態において、突出部21a〜21d,22a〜22c,23a〜23c,24a〜24cの突出方向におけるガラス繊維51は、壁部32aと同様に配向してもよい。すなわち、突出部21a〜21d,22a〜22c,23a〜23c,24a〜24cの少なくとも何れかにおいて、ガラス繊維は、対応する突出部の突出方向に配向してもよい。この場合、該当する突出部における耐衝撃性が向上する。
また、上記実施形態において、壁部31a〜31cは、互いに異なる形状であってもよい。したがって、壁部31a〜31cの少なくとも一部の高さ、幅又は厚さは、他の壁部と異なってもよい。同様に、壁部32a〜32hの一部は、他の壁部と異なる形状であってもよく、壁部33a〜33eの一部は、他の壁部と異なる形状であってもよい。加えて、壁部32b,32e,33a,33cに設けられる爪部の形状は、互いに同一でよいし、互いに異なってもよい。
また、上記実施形態に係る電子機器筐体及び電子機器筐体用樹脂組成物は、リサイクル品であってもよい。リサイクル品とは、完成された成形物を所定の方法にて加工した材料をリサイクル材料として少なくとも一部含む樹脂組成物、もしくは、当該樹脂組成物の成形物である電子機器筐体である。上記実施形態の電子機器筐体用樹脂組成物が該リサイクル材料を含む場合、当該組成物中の当該リサイクル材料の割合は、例えば、1重量%以上、かつ、50重量%以下の範囲であることが好ましい。上記割合は、5重量%以上、かつ、40重量%以下の範囲であることがより好ましく、10重量%以上、かつ、30重量%以下の範囲の割合であることが特に好ましい。成形物のリサイクル材料への加工(リサイクル処理)は、公知の方法によって実施されてもよい。例えば、裁断又は粉砕等によって、成形物をチップ状もしくはペレット状等に細分化する処理方法が挙げられる。リサイクル処理は、消費者から提供される電子機器筐体の回収品、及び電子機器筐体製造時のスペックアウト品をもとに行われることが多い。ここで、上記樹脂組成物は、リサイクル工程にて性能が劣化しにくいポリチオエーテルを含有している。このため、リサイクル品である樹脂組成物の成形物である電子機器筐体は、リサイクル品ではない樹脂成形物の成形物である電子機器筐体と同じ組成であれば、同等の耐衝撃性及び軽量化を有し得る。さらには、リサイクル品を用いることによって、成形物の廃棄処理量を減らして、環境負荷を低減できる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
図5は、実施例1〜8及び比較例1〜3のそれぞれの樹脂組成物が記載された表を示す図である。実施例1ではまず、図5に示される各材料を図5に示される割合で混合した。混合した各材料(以下、「混合材料」とする)を、株式会社日本製鋼所製ベント付き2軸押出機「TEX−30」に投入した。混合材料において、GF−1については、サイドフィーダから投入した。また、GF−1以外の材料については、タンブラーにて予め均一に混合した後にトップフィーダから投入した。そして、樹脂成分吐出量30kg/h、スクリュー回転数200min−1、設定温度330℃の条件下にて混合材料を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。なお、2軸押出機のスクリュー全長に対するトップフィーダからサイドフィーダまでの距離の比率が0.5になるように、サイドフィーダの位置を設定した。
樹脂組成物のペレットを、ギヤオーブン(エスペック株式会社製、「PH(H)−102」)を用いて、140℃の条件下で2時間乾燥した。そして、乾燥したペレットを射出成形することで、試験片を作成した。
(実施例2)
PPS−2を用い、混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。なお、実施例2の混合材料に含まれる各材料の割合は、図5に示される通りである。
(実施例3)
PPS−2を用いると共にELAを除去し、混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。なお、実施例3の混合材料に含まれる各材料の割合は、図5に示される通りである。
(比較例1)
GF−1の代わりにGF−2を用いて混合材料を作成したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。
(比較例2)
GF−1の代わりにGF−2を用いて混合材料を作成したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。
(比較例3)
GF−1の代わりにGF−2を用いて混合材料を作成したこと以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。
(実施例4)
実施例1で得られた試験片をチップ状態に細分化してリサイクル材料とした。得られたリサイクル材料を用いたこと、及び混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。
(実施例5)
実施例4と同様にして得られたリサイクル材料を用いたこと、及び混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。
(実施例6)
混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。なお、実施例6の混合材料に含まれる各材料の割合は、図5に示される通りである。
(実施例7)
さらにエポキシ樹脂を用いて、混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。なお、実施例7の混合材料に含まれる各材料の割合は、図6に示される通りである。
(実施例8)
さらにエポキシ樹脂を用いて、混合材料の割合を実施例1と変化したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物の試験片を作成した。なお、実施例8の混合材料に含まれる各材料の割合は、図6に示される通りである。
(曲げ強さ)
ISO 178に示される試験方法に準拠して、実施例1〜8及び比較例1〜3の各試験片の曲げ強さ(曲げ強度)を測定した。流動方向(射出方向)における曲げ強さの評価には、試験片の形状をISO TYPE−Aダンベルとしたものを用いた。試験片における試験部の各寸法は、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmである。また、各試験片の流動方向と直交する方向における曲げ強さの評価には、試験片の形状を幅25mm、厚さ2mmとしたものを用いた。流動方向における曲げ強さを「MD曲げ強さ」とし、流動方向と直交する方向における曲げ強さを「TD曲げ強さ」とする。実施例1〜8及び比較例1〜3のそれぞれにおけるMD曲げ強さ及びTD曲げ強さは、図5または図6に示される通りである。
図5または図6に示されるように、実施例1〜8のそれぞれは、比較例1〜3と比較して、MD曲げ強さ及びTD曲げ強さが高くなっていた。具体的には、実施例1〜8のMD曲げ強さは、いずれも300MPa以上であり、実施例1〜5のTD曲げ強さは、いずれも100MPa以上であった。実施例1〜3を比較すると、実施例1のMD曲げ強さ及びTD曲げ強さが、最も大きかった。同様に、比較例1〜3を比較すると、比較例1のMD曲げ強さ及びTD曲げ強さが、最も大きかった。このため、樹脂組成物中の総塩素量が小さい程、MD曲げ強さ及びTD曲げ強さが高くなる傾向にあることが確認された。
また、リサイクル材料を含む実施例4、5と、リサイクル材料を含まない実施例1〜3とを比較したところ、実施例4、5のMD曲げ強さ及びTD曲げ強さは、実施例1〜3のMD曲げ強さ及びTD曲げ強さと同等レベルであった。これにより、実施例4、5は、実施例1〜3と遜色のない性能(曲げ強さ)を有することが確認された。
加えて、実施例1〜5、7、8のそれぞれにおいて、TD曲げ強さをMD曲げ強さで除した値(TD/MD)は、0.45以上となっていた。これに対して、比較例1〜3のそれぞれにおけるTD/MDは、最大でも0.42となっていた。
(流動性)
実施例1〜8及び比較例1〜3における乾燥した樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、「SE50EV−C110」)を用い、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて、厚さ1.6mmのスパイラルフロー金型内に6秒間射出成形し、成形物を形成した。各実施例及び各比較例の流動性は、成形物の長さの長短によって評価した。実施例1〜8及び比較例1〜3のそれぞれにおける成形物の長さは、図5または図6に示される通りである。
図5または図6に示されるように、実施例1〜8のそれぞれは、比較例1〜3と比較して、流動性が高くなっていた。具体的には、実施例1〜5の流動性は、いずれも750mm以上である一方で、比較例1〜3の流動性は、最大でも550mmであった。このため、図5または図6に示されるGF−1を含む樹脂組成物の流動性は、図6に示されるGF−2を含む樹脂組成物よりも高くなる傾向にあることが確認された。
また、リサイクル材料を含む実施例4、5と、リサイクル材料を含まない実施例1とを比較したところ、実施例4、5の流動性は、実施例1の流動性と同等レベルであった。これにより、リサイクル材料の有無にかかわらず、GF−1を含む樹脂組成物の流動性は、GF−2を含む樹脂組成物よりも高くなる傾向にあることが確認された。
1…電子機器筐体、2…本体部、3…主部、4〜7…縁部、21a〜21d,22a〜22c,23a〜23c,24a〜24c…突出部、31a〜31c,32a〜32h,33a〜33e…壁部、51…ガラス繊維、61…爪部。

Claims (14)

  1. ポリチオエーテルと、ポリカーボネートと、断面長円形状を有するガラス繊維とを含む樹脂組成物の成形物である電子機器筐体であって、
    板形状を有する本体部と、
    前記本体部の縁に設けられ、前記本体部から突出する壁部と、
    を備える、
    電子機器筐体。
  2. 前記壁部の突出方向における前記壁部の曲げ強さをMDとし、前記突出方向に直交する幅方向における前記壁部の曲げ強さをTDとした場合、
    TD/MDは、0.45以上である、請求項1に記載の電子機器筐体。
  3. 前記樹脂組成物を、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用いると共に、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて6秒間成形したときの成形物のスパイラルフロー長は、750mm以上である、請求項1又は2に記載の電子機器筐体。
  4. 前記電子機器筐体は、厚さ0.1〜1.0mmの範囲の壁部を有する、請求項1又は2に記載の電子機器筐体。
  5. 前記壁部の前記厚さをtとし、前記壁部の高さをhとした場合、
    h/tは、5〜30である、請求項4に記載の電子機器筐体。
  6. 前記壁部の先端部には爪部が設けられている、請求項1又は2に記載の電子機器筐体。
  7. 前記樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子機器筐体。
  8. リサイクル品である請求項1又は2に記載の電子機器筐体。
  9. ポリチオエーテルとポリカーボネートと断面長円形状を有するガラス繊維とを含有する樹脂組成物であって、
    該樹脂組成物におけるポリチオエーテルとポリカーボネートとの合計の割合が、ポリチオエーテルとポリカーボネートとガラス繊維の合計100重量部に対して40重量部以上、かつ60重量部以下の範囲であること、
    ポリチオエーテルとポリカーボネートとの割合が、重量比で(ポリカーボネート)/(ポリチオエーテル)が5/95以上、かつ30/70以下の範囲であることを特徴とする、電子機器筐体成形用樹脂組成物。
  10. 前記樹脂組成物を140℃で2時間乾燥した後に射出成形した成形物において、前記樹脂組成物の射出方向における前記成形物の曲げ強さをMDとし、前記射出方向に直交する方向における前記成形物の曲げ強さをTDとした場合、
    TD/MDは、0.45以上の範囲のものである、請求項9に記載の電子機器筐体成形用樹脂組成物。
  11. 前記樹脂組成物を、射出成形機及びスパイラルフロー金型を用いると共に、シリンダ温度330℃、金型温度150℃、射出圧力90MPaの条件下にて6秒間成形したときの成形物のスパイラルフロー長は、750mm以上である、請求項9又は10に記載の電子機器筐体成形用樹脂組成物。
  12. 前記樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂を含み、かつ、該樹脂組成物に含まれるポリチオエーテルとポリカーボネートとエポキシ樹脂の合計100重量部に対して、エポキシ樹脂が1〜20重量部の範囲である請求項9〜11のいずれか一項に記載の電子機器筐体成形用樹脂組成物。
  13. リサイクル品である請求項9〜12のいずれか一項に記載の電子機器筐体成形用樹脂組成物。
  14. 請求項9〜13のいずれか一項に記載の電子機器筐体成形用樹脂組成物を成形してなる電子機器筐体成形用樹脂成形品。
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