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JP2019098868A - シール部材と乗物用ドアおよび建物用ドア - Google Patents

シール部材と乗物用ドアおよび建物用ドア Download PDF

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健吾 後藤
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Tomonori Nakajima
友則 中島
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Abstract

【課題】耐熱性および耐候性と遮音性が高く、さらに製造が容易であるとともに、重量の増大を抑制できるシール部材を提供する。【解決手段】本発明の弾性変形可能なシール部材1は、中空のチューブ6と、チューブ6の内部に挿入されているフィルム7と、を有する。チューブ6の内部はフィルム7によって完全に塞がれてはおらず、チューブ6の内壁の一部とフィルム7の一部との間に、空気保持空間8が設けられており、フィルム7は樹脂材料からなり、厚さが0.001mm以上2mm未満であって、少なくとも一部に折られた部分または曲げられた部分を有し、チューブ6内に挿入されるフィルム7の体積は、チューブ6の30%圧縮状態におけるチューブ6の内容積の0.03%より大きく50%以下である。【選択図】図4

Description

本発明は、乗物や建物のドア等に用いられるシール部材と、シール部材を含む乗物用ドアおよび建物用ドアに関する。
自動車等の乗物や建物に設けられるドアは、通常、金属等の剛体からなるドア本体の外周縁部に、密閉性を高めるためのシール部材(パッキン)が取り付けられた構成である。シール部材は、水や埃の浸入を抑制し、かつ、耐熱性や耐候性に加えて、室内を静粛に保つための高い遮音性を有していることが望ましい。通常のシール部材は、ドア本体の外周縁部に取り付けられて、ドア本体とドア枠との間に挟みつけられて圧縮させられた状態で、優れたシール性を発揮する。従って、シール部材は、ドア本体とドア枠との間に挟みつけられて圧縮させられるように、容易に弾性変形可能なエラストマーからなる中空のチューブ状であるものが多い。
特許文献1には、中空のチューブ(中空シール部)の内部に硬質芯材と軟質充填剤が挿入され、過剰変形を阻止する構成が開示されている。特許文献2に記載された構成では、中空のチューブ(中空シール部)の内部に、ゴム製または合成樹脂製の高発泡スポンジからなる柱状クッション部が設けられている。チューブの内部は柱状クッション部によって完全に塞がれてはおらず、チューブの内部に2つの空気保持空間(密閉空間部)が残されている。特許文献3に記載された構成では、中空のチューブ(中空シール部)の内部に、ゴム製または合成樹脂製の高発泡スポンジ材が設けられている。チューブの内部は高発泡スポンジ材によって完全に塞がれてはおらず、チューブの内部に空気保持空間(空気層)が残されている。また、特許文献4に記載された構成では、中空のチューブ(中空シール部)の内部に、多孔質の吸音材を充填した防水チューブが挿入されている。これらの中空のチューブは、例えば特許文献5に記載されている材料で形成することができる。
特開平9−286239号公報 特開2003−81026号公報 特開2001−206166号公報 実開平2−75316号公報 国際公開2009/072503号
近年、電気モータを駆動源とする自動車(電気自動車やハイブリット車)が普及している。電気モータはガソリンエンジンに比べて高い周波数(約2000Hz〜約16000Hz)のノイズを発生する。この高い周波数のノイズは非常に耳障りであるため、電気モータを備えた乗物のドアのシール部材には、従来よりも遮音性の向上が求められている。また、建物のドアにおいても、環境変化に伴ってできるだけ高い遮音性を有することが求められる傾向がある。
特許文献1に記載された構成のように中空のチューブの内部が樹脂等によって完全に塞がれていると、振動の減衰が小さく、遮音性に乏しい。特許文献2,3には、中空のチューブの内部に高発泡スポンジが配置された構成のウェザーストリップが開示されている。さらに、ウェザーストリップの機能として、防音だけでなく防水の機能を持つことも開示されている。このウェザーストリップは、変形することで、期待される性能を発揮するため、変形し易くするための空気抜き孔を設置することは当業者にとって周知の事項であると言える。その為、水が浸入する場合に備えて、高発泡の材料のうち特に吸水性の高い材料を選択してウェザーストリップに使用する動機は無い。また、特許文献2,3に記載されている発明では、中空のシール部と高発泡スポンジとは一体に押出成形されており、基本的には同種の材料(ゴム製または合成樹脂製の発泡スポンジ)からなる。すなわち、遮音性の向上を目的として、中空のチューブの内部に設けられる部材について、チューブの材料とは無関係に様々な材料の中から任意に選択することは想定されていない。
特許文献4に記載の構成は、グラスウールなどの吸音材が防水チューブ内に挿入された上で、中空のチューブ(中空シール部)の内部に挿入されている、二重のチューブ構造である。従って、膜厚が薄い防水チューブの内部にグラスウール等の吸音材を充填することによって挿入部材を製造してから、その挿入部材を中空のチューブの内部に挿入する必要があるため、製造工程が多く煩雑である。また、防水チューブは、吸音材の吸音性が低下しないように膜の厚みを薄くする必要があり、防水チューブが薄いほど、吸音材を充填する工程が煩雑になる。従って、特許文献4に記載の発明において、吸音材による吸音効果を維持することと、製造工程の煩雑さを緩和することを両立させるのは困難である。
また、特許文献1〜4のいずれにも、遮音性の周波数選択性に関する言及は無い。
また、シール部材の用途として考えられる乗物用ドアや建物用ドアにおいては、耐熱性および耐候性と遮音性とに加えて、軽量化が望まれている。乗物用ドアにおいては、走行性能や操縦性の向上や低燃費化のために、乗物全体の軽量化は重要な要因であり、シール部材の重量も無視できない。また、建物用ドアは、設置作業に加えて、設置場所までの運搬作業が必要であるため、特に建物の高層階に設置する場合にはこれらの作業を容易にするために軽量化が望まれている。しかし、特許文献1〜4では、遮音性を高めるための挿入部材(硬質芯材および軟質充填剤、柱状クッション部、高発泡スポンジ材、吸音材および防水チューブ)による重量の増大については全く配慮されていない。
そこで、本発明の目的は、耐熱性および耐候性と遮音性が高く、さらに製造が容易であるとともに、重量の増大を抑制できるシール部材と乗物用ドアおよび建物用ドアを提供することにある。
本発明の弾性変形可能なシール部材は、中空のチューブと、チューブの内部に挿入されているフィルムと、を有する。チューブの内部はフィルムによって完全に塞がれてはおらず、チューブの内壁の一部とフィルムの一部との間に、空気保持空間が設けられており、フィルムは樹脂材料からなり、厚さが0.001mm以上2mm未満であって、少なくとも一部に折られた部分または曲げられた部分を有し、チューブ内に挿入されるフィルムの体積は、チューブの30%圧縮状態におけるチューブの内容積の0.03%より大きく50%以下である。
本発明によると、耐熱性および耐候性と遮音性が高く、さらに製造が容易であるとともに、重量の増大を抑制できるシール部材と乗物用ドアおよび建物用ドアを実現することができる。
本発明のシール部材を有する乗物用ドアの正面図である。 本発明のシール部材を有する建物用ドアの正面図である。 本発明のシール部材の一例を示す正面図である。 本発明の実施例1のシール部材の断面図である。 音響特性測定システムの一例を示す模式図である。 図5Aに示す音響特性測定システムによる音響特性測定状態を示す拡大図である。 図5Aに示す音響特性測定システムによる音響特性測定結果の一例を示すグラフである。 図6Aに示す音響特性測定結果に基づいて求められた、従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 従来例のシール部材の断面図である。 本発明の実施例1と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例2のシール部材の断面図である。 本発明の実施例2と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例3のシール部材の断面図である。 本発明の実施例3と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例4のシール部材の断面図である。 本発明の実施例4と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例5のシール部材の断面図である。 本発明の実施例5と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例6のシール部材の断面図である。 本発明の実施例6と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 比較例1のシール部材の断面図である。 比較例1と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例7のシール部材の断面図である。 本発明の実施例7と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例8のシール部材の断面図である。 本発明の実施例8と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 比較例2のシール部材の断面図である。 比較例2と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例9のシール部材の断面図である。 本発明の実施例9と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例10のシール部材の断面図である。 本発明の実施例10と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 比較例3のシール部材の断面図である。 比較例3と従来例のシール部材の遮音量を示すグラフである。 本発明の実施例1〜6と比較例1の体積占有率と遮音性改善量を示すグラフである。 本発明の複合部材であるシール部材の正面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、チューブ部材にフィルムを挿入するステップを示す説明図である。 図23Aに示すステップでフィルムが挿入された状態のチューブ部材を示す斜視図である。 図22に示すシール部材の製造方法において用いられる中子の平面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、中子の両端部にチューブ部材を取り付けた状態を示す平面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、両端部にチューブ部材が取り付けられ樹脂シートが巻かれた中子を金型のキャビティ内に配置した状態を示す平面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、プレス機による加熱および加圧状態を模式的に示す正面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、中子の外周にジョイントが形成された状態を示す平面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の、中子を取り出すステップを模式的に示す斜視図である。 図22に示すシール部材の製造方法により製造されたシール部材を示す平面図である。 図22に示すシール部材の製造方法の他の例の、両端部にチューブ部材が取り付けられた中子を金型のキャビティ内に配置した状態を示す平面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のシール部材1は、主に、図1に示す乗物用ドア2や図2に示す建物用ドア4において用いられる。具体的には、シール部材1は、例えば、図1に示す乗物用ドア2の乗物用ドア本体2aの外周縁部に取り付けられて、乗物用ドア本体2aと、2点鎖線で模式的に要部を示す車体3のドア枠3aとの間に挟みつけられて圧縮された状態で用いられる。また、シール部材1は、図2に示す建物用ドア4の建物用ドア本体4aの外周縁部に取り付けられて、建物用ドア本体4aと、2点鎖線で模式的に要部を示す駆体5のドア枠5aとの間に挟みつけられて圧縮された状態で用いられる場合もある。以下に、主に図1に示す乗物用ドア2に用いられるシール部材1を例に挙げて説明するが、以下の説明は、建物用ドア4に用いられるシール部材1にもほぼ当てはまる。
図3,4に示すように、本発明のシール部材1は、中空のチューブ6と、チューブ6の内部に配置されたフィルム7とを有する。チューブ6は、弾性変形可能なエラストマーからなり、図1に示す乗物用ドア本体2aの外周縁部に密着するように取り付けられている。チューブ6は、初期状態(非圧縮状態)における内径が5〜25mm程度の略円形の断面形状の中空部を有している。図3,4には比較的簡単な形状のチューブ6を示しているが、乗物用ドア本体2aに取り付けるための係合部や取付部がさらに設けられた形状であってもよい。チューブ6を構成するエラストマーの一例は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であり、非圧縮状態における比重が0.3以上1.0以下かつ吸水率が50%未満である。ただし、この例に限定されず、他の材料のチューブ6を用いることもでき、その比重や吸水率は前述した例と異なっていてもよい。吸水率の測定は以下のようにして行う。すなわち、チューブ形状の加工品から、20mm×20mmの試験片を打ち抜き、この試験片を水面下50mmの位置で−635mmHgまで減圧し、3分間保持した。続いて大気圧に戻し3分間経過した後に、吸水した試験片の重量を測定し、以下の式から試験片の吸水率を算出する。
吸水率[%]={(W2−W1)/W1}×100
W1:浸せき前の試験片の重量(g)
W2:浸せき後の試験片の重量(g)
図4に示すように、本発明のシール部材1では、チューブ6の内部(中空部)にフィルム7が挿入されている。ただし、チューブ6の内部はフィルム7によって完全に塞がれてはおらず、チューブ6の内壁の一部とフィルム7の一部との間に、空気保持空間8が設けられている。すなわち、本願における空気保持空間8とは、中空のチューブ6の内壁(内部空間を構成する面)と、フィルム7とで囲まれた空間を指す。例えば、空気保持空間8の最大幅(フィルム7の各部に直交する方向における、チューブ6の内壁とフィルム7の表面との間の間隔の最大値)は好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは8mm以上である。チューブ6内において空気保持空間8が占める部分の割合は、フィルム7の体積の割合で表すことができる。具体的には、フィルム7の体積(折られていない状態でのフィルム7の長さ×幅×厚さの値)を、チューブ6の内容積(チューブ6の圧縮方向の寸法が30%低減するまで圧縮した状態(30%圧縮状態)でのチューブ6の内部の中空部分の断面積×チューブ6の長さの値)で割った値である体積占有率によって、フィルム7と空気保持空間8との割合を示す。本発明では、チューブ6内に挿入されたフィルム7の体積占有率は、0.03%より大きく50%以下である。
空気保持空間8は、シール部材1の使用時にドア本体2aとドア枠4との間に挟みつけられて圧縮させられた状態でも、無くなることはなく維持される。
フィルム7の材料の例としては、熱可塑性樹脂、トリアセテート、セロファンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレンとプロピレンとブテンのうちの少なくとも2種類からなる共重合体など)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのナイロン(これらは商標)や、ポリp−フェニレンテレフタルアミド、ポリジアミノフェニレンテラフタルアミド、m−フェニレンイソフタルアミドなどのアラミドなど)、ポリカーボネート、ポリスルファイド(ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンスルファイドなど)、ポリスルフォン、などが挙げられる。
シール部材1等の遮音性は、例えば図5A,5Bに示す音響特性測定システムにより測定可能である。この音響特性測定システムは、2つの室、すなわち第1の室である残響室9と、第2の室である半無響室10または無響室とを有する。残響室9と半無響室10は隣接しており、壁の一部(隔壁部11)を共有している。残響室9は内壁が金属板等の反響板から構成されている。半無響室10は、床面を除く内壁が吸音構造(図示しない吸音部材が内壁のほぼ全体に設けられた構造)である。床面を含めてすべての内壁が吸音構造である室は無響室と呼ばれる。本発明の第2の室は半無響室10であっても無響室であってもよい。隔壁部11には、残響室9と半無響室10とを連通させる開口部12が設けられており、この開口部12に対向して、図5Bに示すように試験片(本例ではシール部材1)を圧縮させながら保持する保持機構13が設けられている。シール部材1を圧縮状態で保持したまま、残響室9内のスピーカー14から発音する。発生する音の一例は、図6Aに示すように、400Hz以上のほぼすべての周波数にわたって一定の音圧レベル(約100dB)を有する。そして、半無響室2のマイクロフォン15によってそれぞれ収録したシール部材1を設置しない場合の音の音圧レベルSPL0と、シール部材1を設置した場合の音の音圧レベルSPL1とに基づいて、以下の式から遮音量を算出する(図6B参照)。
遮音量[dB]=SPL0[dB]−SPL1[dB]
ここで、シール部材1の遮音性能は、特定の周波数範囲(例えば4000Hz〜10000Hz)の遮音量のデシベル平均値で表すこともできる。本発明のシール部材1の特定の周波数範囲の遮音量のデシベル平均値を算出して、中空のチューブ6の内部に何も挿入されていない構成の従来のシール部材(図7)の、同じ周波数範囲の遮音量(図6B)のデシベル平均値と比較することによって、本発明による遮音量の改善量を示すことも可能である。個々のシール部材の遮音効果については、基準とするシール部材の遮音量に対する改善量に基づいて次のように4段階に判定し、後述する表1〜3に表示した。◎:6dB以上、○:2dB以上6dB未満、△:1dB以上2dB未満、×:1dB未満。
様々な材料からなるフィルム7を用いた本発明のシール部材1と、従来例および比較例のシール部材について、それぞれ遮音効果を測定した結果を以下に説明する。以下の全ての例において、特許文献5に準拠して作製したチューブ6はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体からなり、非圧縮状態における吸水率は0.49%であり、非圧縮状態における比重は0.62である。そして、非圧縮状態における外径が19〜22mmで内径が15〜16mm程度の円筒に取付部が設けられた形状であり、チューブ全長は840mmである。測定時には、例えば図5A,5Bに示す音響特性測定システムを用いて、前述したようにシール部材(チューブ6)を30%圧縮状態に保持する。
[従来例]
本発明のシール部材1を説明する前に、図7に示す、フィルム7を有しておらずチューブ6のみからなる従来のシール部材の遮音効果について説明する。図7に示すように、シール部材(チューブ)は使用時に30%圧縮状態にされる場合がある。このシール部材の質量は81.4gである。フィルムを持たないシール部材による、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および図6Bに示すとともに、後述する各実施例および各比較例の遮音量の基準にするため、図8B以降の各図面のグラフにも示している。従来例では特に8000Hz以上の高周波数において遮音量が低下している。
[実施例1]
本発明の実施例1のシール部材1について説明する。このシール部材1は、図4に示したものであり、チューブ6の内部にフィルム7が挿入されている。フィルム7は、少なくとも一部に折られた部分または曲げられた部分を有するものであり、実施例1のフィルム7はランダムに折られた形状である。このシール部材の質量は81.7gである。フィルム7は、厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルム(商品名:サランラップ(登録商標、旭化成ホームプロダクツ株式会社製))であり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(25mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.11%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図8に示している。このシール部材1の遮音性は比較的良好であり、特に8000Hzより高い高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は2.1dBであった。
[実施例2]
図9Aに示す本発明の実施例2のシール部材1でも、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は82.7gである。フィルム7は、実施例1と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(100mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.44%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図9Bに示している。このシール部材1の遮音性は比較的良好であり、特に8000Hzより高い高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は3.7dBであった。
[実施例3]
図10Aに示す本発明の実施例3のシール部材1でも、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は85.0gである。フィルム7は実施例1,2と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(280mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は1.23%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図10Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に8000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、平均の遮音性改善量は12.0dBであった。
[実施例4]
図11Aに示す本発明の実施例4のシール部材1でも、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は87.1gである。フィルム7は実施例1〜3と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(440mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は1.94%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図11Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に5000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、平均の遮音性改善量は14.6dBであった。
[実施例5]
図12Aに示す本発明の実施例5のシール部材1でも、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は95.7gである。フィルム7は、実施例1〜4と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(1100mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は4.85%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図12Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に5000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、平均の遮音性改善量は16.0dBであった。
[実施例6]
図13Aに示す本発明の実施例6のシール部材1では、チューブ6の内部に、比較的規則的に折り畳まれたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は83.0gである。フィルム7は実施例1〜5と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(120mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.53%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図13Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に8000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、平均の遮音性改善量は7.3dBであった。
[比較例1]
図14Aに示す比較例1のシール部材1では、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は81.5gである。フィルム7は実施例1〜6と同様な厚さが0.01mmのポリ塩化ビニリデンからなるフィルムであり、比重が1.55、吸水率は0.52%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(6mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.03%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図14Bに示している。このシール部材1の遮音性はあまり良好ではなく、遮音量は従来例とほぼ同じであり、平均の遮音性改善量は0.1dBしか向上していない。
[実施例7]
図15Aに示す本発明の実施例7のシール部材1は、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は82.9gである。フィルム7は、厚さが0.01mmのポリエチレンからなるフィルム(商品名:ハイラップ(リケンファブロ株式会社製))であり、比重が1.73、吸水率は0.02%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(100mm)×厚さ(0.01mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.44%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図15Bに示している。このシール部材1の遮音性は比較的良好であり、特に8000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は3.6dBであった。
[実施例8]
図16Aに示す本発明の実施例8のシール部材1は、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は82.9gである。フィルム7は、厚さが0.03mmのポリプロピレンからなるフィルム(商品名:OPP FILM(株式会社オーセロ製))であり、比重が1.82、吸水率は0.06%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(33mm)×厚さ(0.03mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.44%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図16Bに示している。このシール部材1の遮音性は比較的良好であり、特に8000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は5.4dBであった。
[比較例2]
図17Aに示す比較例2のシール部材1は、チューブ6の内部に、ランダムに折られたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は81.5gである。フィルム7は、実施例8と同様な厚さが0.03mmのポリプロピレンからなるフィルム(商品名:OPP FILM(株式会社オーセロ製))であり、比重が1.82、吸水率は0.06%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(2mm)×厚さ(0.03mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.03%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図17Bに示している。このシール部材1の遮音性はあまり良好ではなく、遮音量は従来例とほぼ同じであり、平均の遮音性改善量は0.4dBしか向上していない。
[実施例9]
図18Aに示す本発明の実施例9のシール部材1は、チューブ6の内部に、一部が曲げられたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は82.6gである。フィルム7は、厚さが0.06mmのポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(商品名:ルミラー(東レ株式会社製))であり、比重が1.43、吸水率は0.00%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(17mm)×厚さ(0.06mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.44%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図18Bに示している。このシール部材1の遮音性はやや良好であり、特に8000Hzより高い高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は1.1dBであった。
[実施例10]
図19Aに示す本発明の実施例10のシール部材1は、チューブ6の内部に、一部が曲げられたフィルム7が挿入されている。このシール部材の質量は83.9gである。フィルム7は、実施例9と同様な厚さが0.06mmのポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(商品名:ルミラー(東レ株式会社製))であり、比重が1.43、吸水率は0.00%である。使用するフィルム7の体積(折られていない状態でのフィルムの長さ(840mm)×幅(34mm)×厚さ(0.06mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は0.90%である。この材料からなるフィルム7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図19Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に8000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して改善しており、平均の遮音性改善量は6.5dBであった。
[比較例3]
図20Aに示す比較例3のシール部材1は、チューブ6の内部に、厚板状のシート7’が挿入されている。このシール部材の質量は96.2gである。シート7’は、厚さが2mmのポリプロピレン(ランダムPP F327)からなる厚板状のシート(商品名:プライムポリプロ(株式会社プライムポリマー製))であり、比重が0.88、吸水率は0.06%である。使用するシート7’の体積(シートの長さ(840mm)×幅(10mm)×厚さ(2mm))を、使用状態(チューブ6の30%圧縮状態)のチューブ6の内容積と比較したときの体積占有率は8.81%である。この材料からなるシート7’がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および図20Bに示している。このシール部材1の遮音性は良好ではなく、遮音量は従来例より低下し、平均の遮音性改善量は−0.4dBであった。
以上説明した通り、本発明の実施例1〜10によると、特に電気自動車やハイブリッド車に用いられる電気モータが発生する高周波ノイズの周波数(特に約8000Hz以上)の範囲において、従来例よりも優れた遮音性を発揮する。このように実施例1〜10によって優れた遮音性が得られる主な原因は、ランダムに折られるか、または折り畳まれることによって各フィルム7に生じた隙間の空間と空気保持空間8内の空気による吸音および振動減衰であると考えられる。フィルム7が設けられていない構成(従来例)やチューブ6内に空気保持空間が存在しない構成では、十分な振動減衰効果と十分な吸音効果とを両立することが困難であると考えられる。また、比較例3のように、厚板状のシート7’をチューブ6内に挿入した構成では高い遮音性が得られない。その1つの理由は、フィルム7が折られることによって吸音効果または振動減衰効果を発揮する隙間が生じるのに対して、折られることのない厚板のシート7’ではそのような隙間が形成されないことであると考えられる。大まかに言うと、フィルムの厚さは0.001mm以上2mm未満であり、好ましくは0.001mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.003mm以上1.0mm以下、さらに好ましくは0.008mm以上0.1mm以下である。
同じ材料からなるフィルムを用いている実施例1〜5に関する表2および図21を見ると、使用するフィルム7の体積の、チューブ6の内容積に対する割合である体積占有率が大きいほど遮音性改善量が大きい傾向がある。他の材料からなるフィルムを用いる実施例及び比較例においても同様な傾向が見られる。一方、本発明のシール部材1を装着したドア(図1に示す乗物用ドア2や図2に示す建物用ドア4など)の閉まり易さを考慮すると、フィルム7の体積占有率が大き過ぎることは好ましくない。具体的には、遮音量改善量が1dB以上になるように本発明のフィルム7の体積占有率は0.03%より大きく50%以下であり、好ましくは0.05%以上30%以下、より好ましくは0.07%以上30%以下、さらに好ましくは0.1%以上10%以下である。なお、ここで言うフィルム7の体積とは、チューブ内に挿入されるフィルムの折られていない状態での長さと幅と厚さの積である。そして、ここで言うチューブの内容積とは、チューブ6の30%圧縮状態におけるチューブの内容積である。実施例1〜5で用いられている材料とは異なる材料のフィルム7を含むシール部材(実施例6〜10)においても、概ね同様に、体積占有率が大きいほど遮音性改善量が大きい傾向がある。
本発明は、一般に吸音効果があるとは考えられていなかった薄いフィルム7を用いるシール部材1において、特に高い周波数(例えば8000Hz以上)において優れた遮音性を発揮できることを見出したものである。しかも、フィルム7は吸水性が非常に低いので、隙間から進入した水を吸うことによって重量が重くなったり、吸われた水がシール部材の本来の遮音性の妨げになったりすることが抑制できる。
また、本発明のシール部材1の主な用途である乗物用ドアや建物用ドアは、前述したように軽量化が求められている。本発明のシール部材1のチューブ6は従来例と同様なものであり、このチューブ6内に挿入されるフィルム7の分だけシール部材1の重量が増加する。ただしこのフィルム7は比較的軽いため、重量をあまり大きくすることなく遮音性の向上が図れるという非常に優れた効果が得られる。すなわち、遮音性と軽量化の両立という、従来は困難であった格別の効果を実現している。
また、本発明のシール部材1では、チューブ6の内部に挿入するフィルム7を防水チューブ等に予め挿入する必要がないため、シール部材1の製造工程が煩雑ではなく、部品点数が増えることもない。そして、圧縮応力が小さい材料からなるフィルム7を用いると、フィルム7の取り付けや、シール部材1の使用時の圧縮が容易に行え、作業性が良好であるとともに、ドア本体2a,4aの外周縁部やドア枠3a,5aに小さな力で容易に密着可能であるため、シールの信頼性(耐熱性や耐候性)が良好である。
実施例1〜10によると、フィルム7の材料が変わっても同様な遮音効果が得られることがわかる。すなわち、薄いフィルム7を中空のチューブ6内に挿入することにより優れた遮音性を有するシール部材が得られることは、特定の材料からなるフィルム7に限られず、比較的幅広い材料からなるフィルム7を用いることができる。ただし、前述したように、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、トリアセテート、ポリカーボネート、ポリスルファイド、ポリスルフォン、セロファンなどからなるフィルム7が、特に好適に用いられる。
表1,2に示すように、チューブ6内に挿入されたフィルム7の形態としては、実施例6のように複数回折り畳まれた形態(特に規則的に交互に折り返された状態を含む)であっても、実施例1〜5のようにランダムに折られた形態(特にしわくちゃにされた状態を含む)と同等かそれ以上の遮音効果が得られる。すなわち、本発明のフィルム7は、遮音効果の観点からは、ランダムに折られていても複数回折り畳まれていても構わない。
なお、本発明は、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6に限られず、図22に示すような閉じたループ状のチューブ6の一部を構成するものであってもよい。図22に示す例では、1対のチューブ部材6a,6bがコーナージョイント6cを介して接合されることにより、複合部材であるループ状のチューブ6が構成されている。この場合、1対のチューブ部材6a,6bの一方または両方に、前述したようにフィルム7を挿入することによって、直線状または曲線状のシール部材1を構成することができる。図1に示すような乗物用ドア2に用いられるシール部材1の場合、装着時に上部(天井側)に位置する上部チューブ部材6aと、下部(床側)に位置する下部チューブ部材6bとが接合されてループ状のチューブ6が構成されることが一般的であり、乗員の耳に近い位置に配置される上部チューブ部材6aにフィルム7を配置して遮音性を向上させることが特に好ましい。その場合、下部チューブ部材6bにもフィルム7を配置して遮音性を向上させてもよく、あるいは、乗員の耳から遠い下部チューブ部材6bにはフィルム7を配置せず製造コストのさらなる抑制や軽量化を図ってもよい。
コーナージョイント6cを介して他のチューブ部材(例えば下部チューブ部材6b)と接合されるチューブ部材(例えば上部チューブ部材6a)は、成形および接合工程の都合上、両端部が開口しているのが一般的である。従来は、このようなチューブ部材を含むシール部材は、チューブ部材の開口端部からの音漏れがあるために、高い遮音性を実現することが困難であった。これに対し、前述した実施例1〜10では、開口端部からの音漏れをフィルム7によって抑制している。
このように中空のチューブ6の内部にフィルム7を挿入することは、図3に示すような閉じたループ状のシール部材1においても、図22に示すような複合部材であるループ状のチューブ6の一部を構成する部分品である、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ部材6aからなるシール部材1においても有効である。
以上説明した本発明のシール部材1は、乗物用ドア本体や建物用ドア本体の外周縁部に取り付けられる構成に限られず、ドア枠の内側に取り付けられてもよい。また、本発明のシール部材1は、乗物用駆動装置、例えば自動車のガソリンエンジンや電気モータ等の格納部分の外周縁部に取り付けられて、筐体フレームとの間に挟みつけられて圧縮させられてシールするものであってもよい。さらに、電気製品等のシールが必要な様々な部材において利用することができ、その応用範囲は限定されない。
[シール部材の製造方法]
次に、本発明のシール部材1の製造方法について説明する。この方法は、前述したように複数のチューブ部材6a,6b(部分品)がジョイント6cを介して接合されて構成された複合部材である中空のチューブ6の内部にフィルム7が配置された構成のシール部材1を製造するための方法である。なお、図23A〜31では、便宜上、フィルム7が厚いシート状であるかのように示されているが、実際には、図4,9A,10A,11A,12A,13A,15A,16A,18A,19Aに示すように、ランダムに折られるか、または折り畳まれた薄いフィルム7である。
通常、複合部材である中空のチューブ6を形成する場合、中空の部分品である複数のチューブ部材を、ジョイントを介して接合させる。一例としては、ジョイントの中空部分を形成するための棒状(円柱状)の中子の一端部に一方のチューブ部材を嵌め込み、中子の他端部に他方のチューブ部材を嵌め込む。そして、中子の外周を覆うように未加硫ゴム層または樹脂層を形成して、加熱加圧によりゴム層を加硫接着すること、または加熱加圧とその後の冷却加圧により樹脂層を固化させることによって、弾性変形可能な加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイントを形成する。
本発明では、ジョイント6cの形成およびチューブ部材6a,6bの接合に先だって、図23A,23Bに示すように、チューブ部材6a,6bの内部にフィルム7を予め挿入しておく。そして、図24に示す湾曲した棒状(円柱状)の中子16の両端部に、フィルム7が挿入されたチューブ部材6a,6bをそれぞれ嵌め込んで取り付ける(図25)。それから、例えば、フィルム7が挿入されたチューブ部材6a,6bが取り付けられた中子16の外周に、未加硫ゴムシートまたは熱可塑性樹脂シートを巻き付ける。そして、図26に示すように、チューブ部材6a,6bが取り付けられ未加硫ゴムシートまたは樹脂シートが巻かれた状態の中子16を、金型17のキャビティ17a内に配置する。図27に模式的に示すように、金型17をプレス機18にセットして、加熱および加圧することによってゴムを加硫させて、または、加熱および加圧してその後に冷却および加圧することによって樹脂シートを熱溶着させて、加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイント6cを形成する。ゴムを加硫してジョイント6cを形成する場合の加熱条件としては、例えば、170℃で15分加熱、180℃で8分加熱、または190℃で4分加熱などが挙げられる。熱可塑性樹脂を固化させてジョイント6cを形成する場合の加熱条件としては、200℃で予熱10分、加熱加圧5分、冷却加圧5分などが挙げられる。ジョイント6cが完成したら、図28に示すように金型17から取り外す。そして、図29に示すように、ジョイント6cを弾性変形させながら、金型に設けられた凸部(図示せず)等により予め形成されたジョイント6cのスリット部19から、あるいは、予めスリット部が形成されていない場合にはジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製した後にそのスリット部19から、中子16を取り出す。このようにして、図30に示すようにチューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合された構成のチューブ6が完成する。
他の例では、前述したように予めフィルム7が挿入されたチューブ部材6a,6bが取り付けられた中子16を、図31に示す射出成形装置の金型20のキャビティ20a内に配置して、溶融した未加硫ゴムまたは樹脂をキャビティ20aに射出して、キャビティ20aの内部であって中子16の外側を溶融した未加硫ゴムまたは樹脂で満たす。そして、射出した未加硫ゴムまたは樹脂を加硫または固化させて、弾性変形可能な加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイント6cを形成する。その後は、前述した工程と同様に、金型から取り外してジョイント6cのスリット部19から中子16を取り出すことにより、チューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合された構成のチューブ6が完成する。
フィルム7は、チューブ部材6a,6bのいずれか一方の内部にのみ挿入されていてもよく、また、ジョイント6cに接する位置に到達していなくてもよい。
この製造方法によると、チューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合した後の、中子16の取り出しが容易である。これは、チューブ部材6a,6bおよびジョイント6cの内面に比べて、ポリオレフィン等からなるフィルム7の方が摩擦が小さいため、スリット部19から中子16を取り出す際に、フィルム7との接触面を滑るようにして円滑に取り出すことが可能になるからである。
以上説明したチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cの材料としては、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などの合成ゴムや、オレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば三井化学株式会社のミラストマー(商品名))等が一般的であるが、それらに限定されるわけではない。また、チューブ部材6a,6bとジョイント6cは同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成されていてもよい。フィルム7は、前述した各実施形態のうちのいずれの材料から形成されていてもよい。ジョイント6a,6bは、図29に示すような湾曲したコーナージョイントであってもよいが、湾曲していない直線的なジョイント(図示せず)であってもよい。
1 シール部材
2 乗物用ドア
2a 乗物用ドア本体
3 車体
3a ドア枠
4 建物用ドア
4a 建物用ドア本体
5 駆体
5a ドア枠
6 チューブ
6a,6b チューブ部材
6c ジョイント
7 フィルム
7’ シート
8 空気保持空間
9 残響室
10 半無響室
11 隔壁部
12 開口部
13 保持機構
14 スピーカー
15 マイクロフォン
16 中子
17,20 金型
17a,20a キャビティ
18 プレス機
19 スリット部

Claims (14)

  1. 弾性変形可能なシール部材であって、
    中空のチューブと、前記チューブの内部に挿入されているフィルムと、を有し、
    前記チューブの内部は前記フィルムによって完全に塞がれてはおらず、前記チューブの内壁の一部と前記フィルムの一部との間に、空気保持空間が設けられており、
    前記フィルムは樹脂材料からなり、厚さが0.001mm以上2mm未満であって、少なくとも一部に折られた部分または曲げられた部分を有し、
    前記チューブ内に挿入される前記フィルムの体積は、前記チューブの30%圧縮状態における該チューブの内容積の0.03%より大きく50%以下である、シール部材。
  2. 前記フィルムの厚さは0.001mm以上1.5mm以下である、請求項1に記載のシール部材。
  3. 前記フィルムの厚さは0.003mm以上1.0mm以下である、請求項1に記載のシール部材。
  4. 前記フィルムの厚さは0.008mm以上0.1mm以下である、請求項1に記載のシール部材。
  5. 前記チューブ内に挿入される前記フィルムの体積は、前記チューブの30%圧縮状態におけるチューブの内容積の0.05%以上30%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のシール部材。
  6. 前記チューブ内に挿入される前記フィルムの体積は、前記チューブの30%圧縮状態におけるチューブの内容積の0.07%以上30%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のシール部材。
  7. 前記チューブ内に挿入される前記フィルムの体積は、前記チューブの30%圧縮状態におけるチューブの内容積の0.1%以上10%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のシール部材。
  8. 前記フィルムは、ポリオレフィンとポリエステルの少なくとも一方を含む材料からなる、請求項1から7のいずれか1項に記載のシール部材。
  9. 前記フィルムは、複数回折り畳まれた状態、またはランダムに折られた状態で、前記チューブ内に保持されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のシール部材。
  10. 乗物用ドアの乗物用ドア本体の外周縁部に取り付けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載のシール部材。
  11. 乗物用駆動装置の格納部分の外周縁部に取り付けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載のシール部材。
  12. 建物用ドアの建物用ドア本体の外周縁部に取り付けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載のシール部材。
  13. 前記乗物用ドア本体と、請求項10に記載のシール部材とを含む、乗物用ドア。
  14. 前記建物用ドア本体と、請求項12に記載のシール部材とを含む、建物用ドア。
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