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JP2017016129A - 磁性トナー、画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents

磁性トナー、画像形成装置および画像形成方法 Download PDF

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JP2017016129A JP2016127207A JP2016127207A JP2017016129A JP 2017016129 A JP2017016129 A JP 2017016129A JP 2016127207 A JP2016127207 A JP 2016127207A JP 2016127207 A JP2016127207 A JP 2016127207A JP 2017016129 A JP2017016129 A JP 2017016129A
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怜士 有村
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Tomohisa Sano
智久 佐野
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禎崇 鈴村
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梢 浦谷
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Abstract

【課題】耐久性が改善されたトナーを提供することである。【解決手段】結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、微小圧縮試験において、該磁性トナーの1粒子に荷重9.8×10-4Nの負荷を与えたときの変形量が3.0μm以下であり、該磁性トナーの表面自由エネルギーが5mJ/m2以上20mJ/m2以下であり、該磁性トナーの100℃時点での溶融粘度η’が5.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられる磁性トナーに関するものである。
装置の小型化や高画質化という点で有利な磁性一成分接触現像方式の検討がなされており、特に小型化に有利なクリーナーレスシステムが検討されている。適している。クリーナーレスシステムではクリーニングブレード、クリーナー容器が無いため、現像装置を大幅に小型化できる。
このような装置を成立させるためには、現像耐久性に優れたトナーが必要となる。
トナーの現像耐久性を高める手法はこれまで数多く提案されている。例えば特許文献1では、トナー変位量を小さくして、特に高温高湿度環境下における耐久性を改善したトナーが開示されている。
特許文献2においては、無機微粒子を表面に強く固着し、耐久時の劣化を抑制したトナーが開示されている。
また、摩擦帯電性の観点からの検討もなされており、トナーの表面自由エネルギーを制御する技術も知られている。
特開2010−145549号公報 特開2006−146056号公報 特開2011−47989号公報
上記のような技術が知られていたが、更に多数枚の画像形成を行った場合であっても、安定して優れた画像を得ることができるトナーが求められていた。特に、トナーに対するメカニカルストレスが大きい磁性一成分接触現像方式で画像形成を行った場合においても、長期にわたり良好な画像形成が可能なトナーが求められていた。本発明は、耐久性が改善されたトナーを提供するものである。本発明のトナーを用いることにより、多数枚の画像形成後であっても、ゴーストやカブリなどの発生が抑制された鮮明な画像を得ることができる。
上記課題を解決するための本発明は、結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
微小圧縮試験において、該磁性トナーの1粒子に荷重9.8×10-4Nの負荷を与えたときの変形量が3.0μm以下であり、
該磁性トナーの表面自由エネルギーが5mJ/m2以上20mJ/m2以下であり、
該磁性トナーの100℃における溶融粘度η’が5.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
また、本発明は、上記の磁性トナーを用いる画像形成方法、または画像形成装置に関する。
本発明によれば、耐久性が改善されたトナーを提供することができる。そのようなトナーを用いることにより、多数枚の画像形成後であっても、ゴーストやカブリなどの発生が抑制された鮮明な画像を得ることができるようになる。
トナー粒子断面から表層を計測する方法の一例である。 (a)本発明において好適に用いられる撹拌装置を循環ラインの中に組み込んだシステムの一例であり、(b)本発明において好適に用いられる撹拌装置を循環ラインの中に組み込んだシステムの本体側面図の一例である。 (a)本発明において好適に用いられる撹拌装置の断面図の一例、(b)本発明において好適に用いられる撹拌装置の断面図の一例、(c)本発明において好適に用いられる撹拌装置の回転子の斜視図の一例、(d)本発明において好適に用いられる撹拌装置固定子の斜視図の一例である。 画像形成装置の一例である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
微小圧縮試験において、該磁性トナーの1粒子に荷重9.8×10-4Nの負荷を与えたときの変形量が3.0μm以下であり、
該磁性トナーの表面自由エネルギーが5mJ/m2以上20mJ/m2以下であり、
該磁性トナーの100℃における溶融粘度η’が5.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることを特徴とする。
本発明者らによれば、上記トナーを用いることにより、耐久性に優れたトナーが得られる。そのようなトナーを用いることによって、多数枚の画像形成後であっても、ゴーストやカブリなどの発生が抑制された鮮明な画像を得ることができるようになる。
磁性一成分現像において、磁性トナーはトナー担持体により担持されて搬送される。そして、規制部材と当接する部位(以降、規制部)を通過することにより、トナー担持体に担持された磁性トナーのコート層厚が規制される。また、規制部を通過する際に、トナー層の表面に存在するトナーと内側に存在するトナーとの入れ替わりが生じ、この動きの中で、トナーは規制部材やトナー担持体と摺擦されて、摩擦帯電する。そのため、メカニカルストレスを受けた場合に、凝集しやすいトナーであると、トナーの入れ替わりが起こりにくく、安定した摩擦帯電が困難となる。特に、小径のトナー担持体を用いた場合には、規制部材の当接圧が高くなるため、トナーの凝集が生じやすく、安定した摩擦帯電が困難となる。更に、接触現像方式で現像を行う場合には、更に、トナーがメカニカルストレスにさらされることになるため、より高い耐久性を有することが求められる。
本発明のトナーが有する表面自由エネルギーは、従来のトナーよりも低い値である。表面自由エネルギーとは、物質の表面積を小さくしようとするエネルギーである。そのため、表面自由エネルギーが大きいと、粒子の合一や凝集が促進されやすくなり、表面自由エネルギーが小さいと、粒子の合一や凝集は促進されず、そのままで独立して存在しやすくなる。よって、トナーの表面自由エネルギーを低くすることによって、部材に対するトナーの付着力やトナーの粒子同士の付着力を抑えることができ、トナーの入れ替わりが起こりやすくなり、トナーの摩擦帯電が安定して行われるようになる。
また、トナーが変形しやすいと、規制部においてトナーにかかる圧力によって、トナーの変形が生じる。この場合、トナー粒子間やトナーと周辺部材との間の接触機会、接触面積が増加し、上述したようなトナーの入れ替わりが起こりにくくなる。そのため、トナーの変形をある程度抑制する必要がある。
本発明者らが鋭意検討したところ、微小圧縮試験において、トナーの1粒子に荷重9.8×10-4Nの負荷を加えたときの変形量が3.0μm以下であり、かつ表面自由エネルギーが5mJ/m2以上20mJ/m2以下であることで、トナーの良好な入れ替わり性が得られるとの知見を得た。また、この規定を満たすトナーであれば、トナー粒子間、トナーと周辺部材との間の過度の接触を抑制することができ、また変形量が小さく、ストレスに対して高い耐性を有するため、多数枚の画像形成を経た後であっても優れた性質を維持できる。
トナーの表面自由エネルギーを20mJ/m2以下とすることによって、上述のようにトナーの付着力を軽減することができ、規制部でのトナー凝集を抑制することができる。しかし、表面自由エネルギーが5mJ/m2未満の場合は付着力が小さくなりすぎることによって、トナー担持体へのトナーコートが不安定となり、画像濃度の低下やゴーストなどの画像欠陥を生じることとなる。
凝集を抑制する効果は、アスペクト比(短径/長径)が0.88以上1.00以下のトナー粒子でより顕著になる。
また、本発明において、トナーの100℃での溶融粘度η’が5.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることが重要である。上記範囲にあることによって、良好な低温定着性を達成することができる。
溶融粘度η’が5.0×103Pa・s未満の場合は、トナーの堅牢性が低下し、現像装置内でのトナー劣化を十分に抑制することができなくなる。溶融粘度η’が1.0×105Pa・sを超える場合には、定着工程において高温の温度設定としなくてはならず、省エネ性に劣る傾向になり好ましくない。
即ち、本発明のトナーは、現像耐久性と低温定着性とが両立したトナーである。本発明の規定を満たすようなトナーは、トナー粒子の表面状態や磁性体の存在状態を制御したり、結着樹脂の架橋構造を制御したりすることによって達成できる。また、トナー粒子表面に存在させる外添剤の種類や存在状態の影響も受ける。
トナー粒子表面の状態制御としては、下記式(T3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体がトナー粒子表面に存在していることが好ましい。尚、O1/2という表記は、1つの酸素原子に対して2つのSi原子が結合しており、各Si原子における酸素原子の持ち分が酸素原子1/2個であることを意味する。
Figure 2017016129
(式(T3)中、Rは炭素数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表す。)
更にトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の29Si−NMRの測定において、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する式(T3)で表わされる部分構造のピーク面積の割合[ST3]が40%以上であることがより好ましい。
上記式(T3)構造を有する有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面にある一定量以上存在させて、シェルを形成することが、トナー変位量及び溶融粘度η’を制御しやすいという観点から好ましい。上記式(T3)構造を有する有機ケイ素重合体の割合は、有機ケイ素重合体の形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応の温度、時間、溶媒及びpHによって制御できる。
また、シェルを形成して、ワックスなどの吸水性の高い化合物の露出を抑制することは、トナーの表面自由エネルギーを低下させることにもつながる。
またトナー変位量の制御は、トナー粒子内部における磁性体の存在状態を制御することによって行うことができる。
具体的には、磁性体を表面近傍に偏在させることによってトナー変位量を制御できる。トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、磁性体の疎水化処理の状態を変えることによって制御でき、疎水化処理剤の種類、処理量、処理時のpHや処理方法などを変更することで制御することができる。
また、トナーは、周波数100kHz、温度30℃における誘電損率(ε”)が0.05pF/m以上0.25pF/m以下であることがより好ましい。上記範囲にあることによって、トナーの電荷のリークを抑制でき、規制部で十分トナーに電荷を付与することができるようになる。誘電損率(ε”)はトナー表面近傍の磁性体の存在状態を制御することで、制御することができる。
また、トナー粒子表面に存在する外添剤は、トナーの表面自由エネルギーに影響を与える。外添剤を多量に用いることにより、表面自由エネルギーを低くすることができるが、この場合、多数枚の画像形成を行う場合において、現像性の変動が大きくなる可能性があるため、外添剤に頼らない制御方法が好ましい。上記の式(T3)構造を有する有機ケイ素重合体のシェルをトナー粒子表面に形成した場合には、外添剤の使用量を減らしたり、外添剤を使用しなくても良くなったりするため、本発明で規定する物性を制御する手段として非常に好ましい方法である。
以下、有機ケイ素重合体に関して記載する。
上記式(T3)で表される部分構造において、Rは、トナー表面の疎水性を制御し、環境安定性を良好にする観点から、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。炭素数が1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく例示できる。さらに好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、Rは、メチル基である。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解重縮合によって生成されることが好ましい。
式(T3)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を重合して得られる有機ケイ素重合体であることが好ましい。
Figure 2017016129
(式(Z)中、R1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表し、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又はアルコキシ基である。)
置換基R1を有することにより疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。R1としては、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。R1の疎水性が大きい場合、広範な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みて、R1は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
炭素数が1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はプロピル基が好ましく例示できる。また、R1としてフェニル基も好ましく例示できる。この場合、帯電性及びカブリ防止が良好となる。さらに好ましくは、環境安定性と保存安定性の観点から、R1はメチル基である。
R2〜R4は、反応性を有する基であり、加水分解、付加重合及び縮合重合して架橋構造を形成するのに寄与する。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー表面への析出性と被覆性の観点から、アルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基、あるいはエトキシ基であることがより好ましい。
また、本発明において、有機ケイ素重合体の含有量は、トナー粒子中に0.50質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、0.75質量%以上40.00質量%以下であることがより好ましい。
上記式(Z)で表される構造を有する化合物としては以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシランの如き三官能性のメチルシラン。
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシランの如き三官能性のシラン。
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランの如き三官能性のフェニルシラン。
式(T3)で表わされる単位構造は、有機ケイ素重合体中を形成する全ケイ素原子を基準として50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上である。式(T3)で表わされるT単位構造の含有量を50モル%以上とすることによって、さらにトナーの環境安定性を向上させることができる。
また、本発明において、本発明の効果を損なわない程度に、式(T3)で表わされるT単位構造を有する有機ケイ素化合物と、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)とを併用してもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては以下のようなものが挙げられる。
ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルメトキシシラン、t−ブチルジメチルエトキシシラン、t−ブチルジジフェニルクロロシラン、t−ブチルジフェニルメトキシシラン、t−ブチルジフェニルエトキシシラン、クロロ(デシル)ジメチルシラン、メトキシ(デシル)ジメチルシラン、エトキシ(デシル)ジメチルシラン、クロロジメチルフェニルシラン、メトキシジメチルフェニルシラン、エトキシジメチルフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、クロロメチル(ジメトキシ)メチルシラン、クロロメチル(ジエトキシ)メチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジブチルジクロロシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジメトキシデシルメチルシラン、ジエトキシデシルメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジクロロ(メチル)−n−オクチルシラン、ジメトキシ(メチル)−n−オクチルシラン、ジエトキシ(メチル)−n−オクチルシラン。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。具体的には、反応媒体が酸性である場合には、水素イオンが一つの反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))の酸素に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロシリル基になる。水が十分に存在している場合には、H+ひとつで反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))の酸素をひとつ攻撃するため、反応媒体中のH+の含有率が少ないときには、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランに付いた反応基のすべてが加水分解する前に重縮合反応が生じ、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成し易い。
一方、反応媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのため全ての反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。また、ゾルゲル反応は、反応温度90℃以上、かつ、反応時間5時間以上で行うことが好ましい。
このゾルゲル反応を上記反応温度及び反応時間で行うことによって、トナー粒子表面のゾルやゲルの状態のシラン化合物同士が結合した合一粒子の形成を抑制することができる。
更に、本発明の効果を損なわない程度に、上記有機ケイ素化合物と共に、有機チタン化合物や有機アルミ化合物を用いても良い。
有機チタン化合物としては、以下のものが挙げられる。チタンメトキサイド、チタンエトキサイド、チタンn−プロポキサイド、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンイソブトキサイド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンラクテート、チタンメタクリレートイソプロポキサイド、トリイソプロポキシチタネート、チタンメトキシプロポキサイド、チタンステアリルオキサイド。
有機アルミ化合物としては、以下のものが挙げられる。アルミニウム(III)n−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)t−ブトキサイド、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプロポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキサイド、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキサイド、アルミニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)イソプロポキサイド、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキサイド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウムフェノキサイド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート。
尚、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。これらを適宜に組み合わせたり、添加量を変えたりすることで、帯電量を調節することができる。
本発明において、トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割し、該中心からトナー粒子の表面へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1〜32)としたときに、該分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の平均厚みDav.が5.0nm以上150.0nm以下であることが好ましい(図1参照)。本発明において、有機ケイ素重合体を含有する表層と表層以外の部分(いわゆる芯部分)は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子表層が均一にトナー粒子を覆うことができるため保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。保存安定性の観点から、トナー粒子の表層の平均厚みDav.は7.5nm以上125.0nm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10.0nm以上100.0nm以下である。
トナー粒子の表層の平均厚みDav.は、上記式(Z)中の炭化水素基の炭素数、親水性基の数、有機ケイ素重合体形成時の付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量で制御することもできる。更に、トナー粒子の製造方法の影響も与える。
また、後述の方法で求められる、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが5.0nm以下である分割軸の数の割合(以下、“表層の厚み5.0nm以下の割合”ともいう)が、20.0%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下である(図1参照)。
表層の厚み5.0nm以下の割合が上記範囲内である場合、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子表層が均一にトナー粒子を覆うことができるため保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。
以下、トナーに含有される有機ケイ素重合体以外の成分に関して記載する。
トナーを構成する結着樹脂としては、トナー用の結着樹脂として公知の樹脂を制限なく用いることができる。例えば、スチレンアクリル系樹脂やポリエステル樹脂を用いることができる。尚、懸濁重合法によってトナー粒子を製造する場合には、後述する重合性単量体が重合することによって生成する重合体が結着樹脂となる。
トナー粒子を構成する材料の一つとして、離型剤を含有することが好ましい。該トナー粒子に使用可能な離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコーン樹脂が挙げられる。誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
なお、離型剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して5.0〜20.0質量部であることが好ましい。
次に、本発明のトナーに好適に用いられる磁性体について説明する。
本発明におけるトナー粒子は、磁性体を含有する。本発明のトナーに使用する磁性体は、磁性酸化鉄をシラン化合物により表面処理した処理磁性体であることが好ましい。これは磁性体の分散性を制御する際に好ましく用いられる懸濁重合法による製造の際に、磁性体を疎水化処理することが好ましいためである。
磁性トナーにおいて、誘電損率(ε”)はトナー表面近傍の磁性体の存在状態を制御することで、制御することができる。誘電損率(ε”)の値を高くするためには、磁性体をトナーの表面或いは表面近傍に存在させればよい。樹脂と比べて低抵抗の磁性体がトナー表面或いは表面近傍に多くなることによって、電荷が散逸しやすくなる。一方、誘電損率(ε”)の値を低くするには、トナー表層における磁性体の存在量を少なくすれば良く、磁性体をトナー内部にわたって分散させればよい。
磁性体は、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理に好適に用いられる化合物としてシランカップリング剤があり、中でも下記式(1)で示されるアルキルアルコキシシランに加水分解処理を施して使用するのが好ましい。
p2p+1−Si−(OCq2q+13 式(1)
[式中、pは2〜20の整数を示し、qは1〜3の整数を示す。]
アルコキシシランを加水分解すると末端がOH基になるため、未処理の磁性体表面に存在するOH基との親和性が高まる。それにより処理剤が未処理の磁性体表面に吸着されやすくなるため、十分に表面を被覆でき、未処理部分が残り難くなる。
ゆえに、処理均一性と十分な疎水性を満たす観点より式(1)におけるpが2以上20以下であることが好ましく、pが4以下であることがさらに好ましく、3以上4以下が特に好ましい。pが3以上であると磁性体に疎水性を十分に付与できると共に、単位面積あたりに吸着できる処理剤の分子数が多いために処理磁性体表面の均一性がより高まる。また、4以下であると磁性体表面の処理剤の密度も高く維持される。つまり、pは3以上4以下であれば、疎水性と処理の均一性を両立することができる。また、水系媒体中での磁性トナーの製造においては、磁性トナーの表面近傍に磁性体を分布させることができる。qに関してはアルキルアルコキシシランの反応性を高め、十分に疎水化処理する観点からqが1から3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すアルキルトリアルコキシシランを使用することが好ましい。
誘電損率を低く制御するためには、トナー粒子内に磁性体を高度に分散させる手法があるが、その為には疎水性の異なる磁性体を複数使用することが好ましい。
さらに、ケイ素を含有する磁性酸化鉄を磁性体として用い、その表面をシラン化合物で疎水化処理をすることが好ましい。これにより、磁性酸化鉄表面とシラン化合物との親和性が向上し、シラン化合物による処理の均一性がより向上する。
磁性体の1次粒子の個数平均径は結着樹脂中で磁性体同士の凝集を抑制させつつ、トナー表層に密に磁性体を偏在させることで耐久性、保存安定性を向上させる観点から150〜220nmであることが好ましい。また、本発明のトナーにおいて磁性体の含有量は、低温定着性と耐熱保存性の観点から、結着樹脂100質量部に対して50〜110質量部が好ましい。
本発明において、トナー粒子は荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナー粒子を負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、又はエステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、スルホン酸系官能基を有する重合体が挙げられる。
一方、トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩の如きによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
これら荷電制御剤は単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。これら荷電制御剤の中でも、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
これらの荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂又は重合性単量体100.00質量部に対して、0.01〜10.00質量部であることが好ましい。
本発明のトナーは、各種特性付与を目的として、各種有機微粉体又は無機微粉体でトナー粒子表面を処理し、トナーとすることができる。有機微粉体又は無機微粉体は、トナー粒子に添加した時の耐久性から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
有機微粉体又は無機微粉体としては、以下のようなものが用いられる。これらは、疎水化処理剤(シラン化合物やシリコーンオイル)によって処理されていることが好ましい。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロムの如き金属酸化物、窒化ケイ素の如き窒化物、炭化ケイ素の如き炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの如き金属塩。
(3)滑剤:フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンの如きフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの如き脂肪酸金属塩。
(4)荷電制御性粒子:酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナの如き金属酸化物、カーボンブラック。
これら有機微粉体又は無機微粉体の添加量は、トナー粒子100.00質量部に対し、0.01〜10.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5.00量部であり、さらに好ましくは0.03〜1.00質量部である。添加量の適正化により、有機微粉体又は無機微粉体のトナー粒子への埋め込みや遊離による部材汚染が良化する。これら有機微粉体又は無機微粉体は、単独で用いても、又、複数併用してもよい。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、4.0〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは5.0〜10.0μmであり、さらに好ましくは6.0〜9.0μmである。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は35〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜80℃であり、さらに好ましくは45〜70℃である。ガラス転移温度が上記範囲であることによって、保存安定性と低温定着性を両立させやすい。
次に、トナー粒子の製造方法について説明する。
以下、有機ケイ素重合体をトナー粒子表層に含有させる具体的態様について説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
第一製法としては、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物、及び結着樹脂を形成するための重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、重合性単量体を重合することによってトナー粒子を得る態様(以下、懸濁重合法とも称する)が挙げられる。水系媒体としては、水;メタノール、エタノール、及びプロパノールの如きアルコール類、並びに、これらの混合溶媒を用いることができ、この点は、他の製法においても同じである。
第二製法としては、先にトナー粒子母体を得た後、トナー粒子母体を水系媒体中に投入して、水系媒体中でトナー粒子母体に有機ケイ素重合体の表層を形成する態様が挙げられる。トナー粒子母体は、
(i)結着樹脂を溶融混練し、粉砕することによって得られたもの、
(ii)結着樹脂粒子を水系媒体中で凝集し、会合することによって得られたもの、
(iii)結着樹脂を有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去することによって得られたもの、
のいずれであって良い。
第三製法としては、結着樹脂、及び有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去してトナー粒子を得る態様が挙げられる。
第四製法としては、結着樹脂粒子、及びゾルまたはゲル状態の有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物含有粒子を、水系媒体中で凝集し、会合してトナー粒子を形成する態様が挙げられる。
第五製法としては、トナー粒子母体の表面に、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物を含有する溶媒をスプレードライ法によりトナー粒子母体表面に噴射し、熱風及び冷却により表面を重合又は乾燥させて、有機ケイ素重合体をトナー粒子の表層に形成する態様が挙げられる。トナー粒子母体は、結着樹脂を溶融混練し、粉砕して得ても良く、結着樹脂粒子を、水系媒体中で凝集し、会合して得ても良く、結着樹脂を有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去して得ても良い。
これらの製造方法によって製造されたトナー粒子は、有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面近傍で形成されるため、環境安定性が良好となる。また、過酷環境下においてもトナー内部に存在する樹脂や、必要に応じて添加される離型剤のブリードによるトナー粒子の表面状態の変化が抑制される。
本発明においては、得られたトナー粒子またはトナーを、熱風を用いて表面処理しても良い。熱風を用いてトナー粒子またはトナーの表面処理を行うことによって、トナー粒子の表面近傍の有機ケイ素重合体の縮重合を促進して、環境安定性と現像耐久性を向上させることができる。
本発明のトナー粒子の製造方法として、上述した製造方法の中でも、第一製法である懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体がトナー粒子の表面に均一に析出し易く、表層と内部との接着性に優れ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性が良好になる。
以下、懸濁重合法についてさらに説明する。
懸濁重法においては、重合性単量体に少なくとも磁性体を分散させて磁性体分散単量体を得る分散工程;得られた磁性体分散単量体に離型剤や極性樹脂などの他の必要な成分を混合し、重合性単量体組成物を得る調製工程;を有することが好ましい。また、上述の分散工程および調製工程は、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円状に多段に形成された回転子と同様の形状の固定子が一定間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置された撹拌装置(図2および図3参照)を用いて処理されることが好ましい。
本発明の分散工程および調製工程にて好ましく用いられる、高剪断力を有する撹拌装置を循環経路の中に組み込んだシステムを図2(a)、撹拌装置の本体側面図を図2(b)に示す。但し、本発明に用いられる撹拌装置としては、これに限定されるものではない。図3(a)、図3(b)は、撹拌装置の本体断面図であり、それぞれ、図2(a)中のA−A’断面図、図2(b)中のB−B’断面図である。また、図3(c)、図3(d)は、それぞれ、撹拌装置の回転子の斜視図、固定子の斜視図を示す。
以下、撹拌装置について具体的に説明する。
図2(a)において、ホールディングタンクA8に、重合性単量体と少なくとも磁性体を投入し調製液とする。投入された調製液は、循環ポンプA10を介して、混合装置入口より供給され、撹拌装置においては、ケーシングA2の内部に具備された、回転子A25と固定子A22のスリットを通過し、遠心方向に排出される。撹拌装置内を調製液が通過する際、回転子、固定子のスリットのずれにより生じる遠心方向への圧縮、吐出による衝撃と回転子、固定子間のせん断による衝撃により調製液は混合及び分散され、磁性体分散単量体を得る(分散工程)。さらに、ホールディングタンクA8内の磁性体分散単量体中に、離型剤を投入し、同様に撹拌装置とホールディングタンクA8間を循環させて混合及び分散し、重合性単量体組成物を得る(調製工程)。
本発明で用いられる回転子と固定子の形状は、複数のスリットを具備するリング状の突起が同心円上に多段に形成された形状であり、一定の間隔を保ち、相互に噛み合うように同軸上に設置されていることが好ましい。回転子及び固定子が相互に噛み合うように設置された形状であることにより、ショートパスが軽減され、調製液の分散が十分に行える。また、回転子と固定子が同心円方向に交互に多段に存在することにより、調製液が遠心方向に進行する際に、多くのせん断・衝撃を受ける為、一層、分散レベルを高めることができる。ホールディングタンクA8は、ジャケット構造であるため、処理物の冷却・加熱が可能である。本発明における回転子及び固定子の周速とは、回転子及び固定子の最大径の周速である。本発明においては、回転子25の周速をG(m/s)とすると、20≦G≦60で回転させ調製液を撹拌することが好ましい。より好ましくは、回転子の周速Gが30≦G≦40である。回転子の周速Gが20≦G≦60であれば、回転子及び固定子のスリットのずれにより生じる調製液の遠心方向への圧縮、吐出による衝撃と回転子、固定子間のせん断による衝撃が増し、高度な分散が達成される。これにより、従来以上に、調製液の分散ムラが非常に少なく、均一な分散状態に達することができる。上述の撹拌装置としては、例えば、キャビトロン(ユーロテック社製)を好適に用いることができるが、この限りではない。
また、重合工程終了後は、生成した粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥してトナー粒子を得る。なお、上記重合工程の後半に昇温しても良い。更に未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
なお、以下に記載される材料は、懸濁重合法にのみ適用されるものではなく、上記他の製法にも適用できるものである。
重合性単量体として、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニルの如きビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン。
上記重合性単量体の重合に際して、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5〜30.0質量%の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の添加量としては、重合性単量体の0.001〜15.000質量%であることが好ましい。また、重合開始剤の添加方法は、一括または分割で添加することが可能である。
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合性単量体の重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
また、多官能の架橋剤としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。架橋剤の添加量としては、重合性単量体に対して0.001〜15.000質量部であることが好ましい。
重合性単量体組成物に含有させる極性樹脂としては、飽和又は不飽和のポリエステル樹脂が好ましく例示できる。
ポリエステル樹脂としては、下記に挙げるカルボン酸とアルコールとを縮合重合したものを用いることができる。
カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、トリメリット酸が挙げられる。アルコールとしては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、及び、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂は、ウレア基を含有したポリエステル樹脂であってもよい。
本発明において、極性樹脂の重量平均分子量は、4,000以上100,000以下であることが好ましい。また、極性樹脂の含有量は、トナー粒子に含有される結着樹脂成分を基準として、3.0〜70.0質量%であることが好ましく、より好ましくは3.0〜50.0質量%であり、さらに好ましくは5.0〜30.0質量%である。
上記重合性単量体の重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の水系媒体中での分散安定剤として以下のものを使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
さらに、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
本発明において、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の添加量は重合性単量体100.0質量部に対して、0.2〜2.0質量部であることが好ましい。また、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3,000質量部の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤を得るためには、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、難水溶性無機分散剤を生成させてもよい。具体的には、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成方法(画像形成装置)について説明する。
本発明のトナーは、以下のような電子写真プロセスを有する画像形成方法に適用することができる。
接触式帯電ローラを用いて静電潜像担持体の表面を帯電する帯電工程;
帯電された該静電潜像担持体の表面を露光して、静電潜像を形成する像露光工程;
該静電潜像を磁性トナーにて現像し、トナー像を形成する現像工程:
中間転写体を介してまたは介さずに該トナー像を転写材に転写する転写工程;および、
該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程。
また、転写工程後、かつ、帯電工程前に、静電潜像担持体表面に存在する残留トナーを除去するクリーニング工程を有さず、残留トナーを現像工程において回収する画像形成方法であっても良い。
また、上記の画像形成方法を適用できる画像形成装置としては、以下のような構成を有する装置を例示することができる。
磁性トナー;
静電潜像担持体;
該静電潜像担持体を帯電する接触式帯電ローラ;
帯電された該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成するための像露光手段;
該静電潜像を該磁性トナーにて現像し、トナー像を形成する現像手段;
中間転写体を介してまたは介さずに該トナー像を転写材に転写するための転写手段、及び、
該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着するための定着手段。
また、静電潜像担持体の表面に沿って、転写手段の下流側、かつ、接触式帯電ローラの上流側の領域に、該静電潜像担持体を除去するためのクリーニング手段を備えておらず、現像手段において、転写残トナーの回収を行う構成であっても良い。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図4に沿って具体的に説明する。図4(a)は現像器の拡大図であり、図4(b)は現像器を備えた画像形成装置の全体図である。図4において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラ117、トナー担持体(現像スリーブ)102を有する現像器140、転写帯電ローラ114、クリーナー116、レジスタローラ124等が設けられている。尚、現像器140には、トナー担持体上のトナー層の厚さを規制する規制部材142、現像器内の現像剤の撹拌を行う撹拌部材141が配設されている。感光ドラム100は一次帯電ローラ117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kV(ピークトゥピーク)、直流電圧−620V)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材Pを介して感光体に当接された転写ローラ114により転写材P上へ転写される。トナー画像を載せた転写材Pは搬送ベルト等により定着器126へ運ばれ転写材P上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。なお、図4の装置は、トナー像を中間転写体を介さずに転写材Pに転写するものであるが、中間転写体を介する装置も好適に用いることができる。また、転写ローラ114の下流側かつ帯電ローラ117の上流側に位置するクリーナー116を備えないクリーナーレスにも、本発明は好適に用いることができる。
<トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分の分離>
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように分離した。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に、マグネチックスターラーとともに入れ、ソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、トナー粒子中に含有されていた磁性体が付着したマグネチックスターラーを取り除き、円筒濾紙中のろ物を40℃で数時間真空乾燥して得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。
なお、有機微粉体又は無機微粉体でトナー粒子表面が処理されている場合は、下記方法によって、有機微粉体又は無機微粉体を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水16.0g、コンタミノンN(和光純薬製中性洗剤、商品No.037−10361)4.0gをガラス製の30mLバイアルに投入し、十分混合する。作成した溶液に磁性トナー1.50gを投入して磁石を底面から近付け、磁性トナーを全て沈める。その後、磁石を動かして気泡を除くと共に溶液に磁性トナーを馴染ませる。
超音波振動機UH−50(株式会社エスエムテー製、先端径6mmのチタン合金チップ使用)の先端が、バイアルの中央部であり、かつ、バイアル底面から5mmの高さになるようにセットし、超音波分散による無機微粒子の除去を行う。30分間、超音波を掛けた後、磁性トナーを全量取り出して、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕して、磁性体を含有するトナー粒子を得る。
<式(T3)で表される部分構造の確認方法)>
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(T3)で表される部分構造の確認には以下の方法を用いる。
式(T3)のRで表されるアルキル基及びフェニル基の有無は、13C−NMRにより確認した。また、式(T3)の詳細な構造は1H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRにより確認した。使用した装置及び測定条件を以下に示す。
・測定条件
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れた。
当該方法にて、式(T3)のRで表されるアルキル基及びフェニル基の有無を確認した。シグナルが確認できたら、式(T3)の構造は“あり”とした。
13C−NMR(固体)の測定条件
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
29Si−NMR(固体)の測定方法
装置:BRUKER製 AVANCE III 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
90°パルス幅:4.00μs,−1dB
コンタクト時間:1.75ms〜10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
<トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(T3)で表される部分構造(T3構造)及びケイ素に結合するO1/2の数が2.0である構造(X2構造)の割合の算出方法>
[T3構造、X1構造、X2構造、X3構造、X4構造の確認及び定量方法]
T3、X1、X2、X3及びX4の部分構造は、1H−NMR、13C−NMR及び29Si−NMRにより確認できる。
トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR測定後に、トナー粒子における置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分をカーブフィティングにて、下記一般式(X4)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が4.0であるX4構造、下記一般式(X3)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が3.0であるX3構造、下記一般式(X2)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が2.0であるX2構造、下記一般式(X1)で示されるケイ素に結合するO1/2の数が1.0であるX1構造、式(T3)で表わされるT単位構造にピーク分離して、各ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
Figure 2017016129
Figure 2017016129
(式(X3)中のRfはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
Figure 2017016129
(式(X2)中のRg、Rhはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
Figure 2017016129
(式(X1)中のRi、Rj、Rkはケイ素に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基)
カーブフィティングは日本電子社製のJNM−EX400用ソフトのEXcalibur for Windows(登録商標) version 4.2(EX series)を用いる。メニューアイコンから「1D Pro」をクリックして測定データを読み込む。次に、メニューバーの「Command」から「Curve fitting functinon」を選択し、カーブフィティングを行う。合成ピークと測定結果の差分である合成ピーク差分のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行う。
X1構造の面積、X2構造の面積、X3構造の面積、X4構造の面積を求めて以下の式によりSX1、SX2、SX3、SX4を求める。
本発明では化学シフト値でシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si−NMRの測定において全ピーク面積からモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を有機ケイ素重合体の全ピーク面積とした。SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
ST3={T3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
X1構造、X2構造、X3構造及びX4構造におけるケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X1構造の一例(Ri=Rj=−OC25、Rk=−CH3):−47ppm
X2構造の一例(Rg=−OC25、Rh=−CH3):−56ppm
X3構造の一例(R=−CH3):−65ppm
また、X4構造がある場合のケイ素の化学シフト値を以下に示す。
X4構造:−108ppm
[透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察によって測定される、トナー粒子の表層の平均厚みDav.の測定]
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四三酸化ルテニウム染色法及び四三酸化オスミウム染色法を用いる。トナー粒子中の各種元素の存在状態は、透過型電子顕微鏡を用いて各種元素のマッピングによって確認できる。当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi−K端(99eV)のEFマッピング像を取得して表層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、以下の観察を行う。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面の観察において、
i)前記トナー粒子断面の最長径を与える弦を長軸Lとし、
ii長軸Lをその中点で分割した際の一方の線分を線分aとし、
iii)該線分aを基準として、11.25°ずつずらして長軸Lの中点からトナー粒子表面まで引いた32本の線分をそれぞれArn(n=1〜32)とする(図1参照)。
更に、Arn(n=1〜32)上における表層の長さをFRAn(n=1〜32)とする。
1つのトナー粒子の表層の平均厚みD(n)は、下式より算出される。
(n)=(FRAn(n=1〜32)の合計)/32
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
また、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表層の厚みが5.0nm以下である分割軸の数の割合は、上記の32本の線分に占める表層の厚みが5.0nm以下である線分の割合として算出する。この場合も、トナー粒子10個について割合を算出し、それらの平均値を算出する。
[透過型電子顕微鏡(TEM)写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)を下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(FRA1+FRA2+・・・+FRA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
<トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定>
トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<表面自由エネルギーの測定方法>
磁性トナー表面の表面自由エネルギーは、下記装置を用い、該装置の操作マニュアルに従い、表面自由エネルギー3成分が既知のプローブ液体(水、ジヨードメタン、エチレングリコール)を使用して、下記条件にて測定した。
具体的には、協和界面科学(株)製の接触角計CA−X ROLL型を使用し、磁性トナーの表面における上記各プローブ液体の接触角θを測定し、北崎・畑の理論の式を用い、表面自由エネルギーを求めた。
(i)接触角θの詳細な測定条件は以下のとおりである。
測定:液滴法(真円フィッティング)
液量:1μL
着滴認識:自動
画像処理:アルゴリズム−無反射
イメージモード:フレーム
スレッシホールドレベル:自動
また、接触角θに関しては、各プローブ液体を用いそれぞれ5回測定を行い、5回の平均値をもって該プローブ液体の接触角θとした。データ解析にはFAMAS(協和界面科学(株)製)を用いた。
なお、トナーはプレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を用い、以下の条件にてペレットを作成し、上記条件にて表面自由エネルギーの測定を行った。
アルミリング:直径30mm
トナー:4.1g
プレス圧:200kgf
プレス時間:3分
<誘電損率の測定方法>
4284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、1kHz及び1MHzの周波数で校正後、周波数100kHzにおける複素誘電率の測定を行い、誘電損率ε”を算出する。具体的には、磁性トナーを1.0g秤量し、19600kPa(200kg/cm2)の荷重を2分間かけて、直径25mm,厚さ1mm以下(好ましくは0.5〜0.9mm)の円盤状の測定試料に成型する。この測定試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)に装着し、温度80℃まで加熱して溶融固定する。その後、温度25℃まで冷却し、0.49N(50g)の荷重をかけた状態で100kHzの周波数一定として、毎分2℃の昇温速度で15秒毎に測定値を取り込みながら、150℃まで加熱する。得られた測定値から、温度30℃時点の誘電損率(ε”)を求める。
<100℃における溶融粘度の測定>
装置としては、例えばフローテスターCFT−500D(株式会社島津製作所製)を用い、下記の条件で測定を行う。
・サンプル:1.0gのトナーを秤量し、これを直径1cmの加圧成型器により荷重20kNで1分間加圧することで成型してサンプルとする。
・ダイ穴径:1.0mm
・ダイ長さ:1.0mm
・シリンダ圧力:9.807×105(Pa)
・測定モード:昇温法
・昇温速度:4.0℃/min
前記の方法により、50〜200℃におけるトナーの粘度(Pa・s)を測定し、100℃における溶融粘度(Pa・s)を求める。
<トナーの変形量の測定方法>
微小圧縮試験においては、(株)エリオニクス製 超微小硬度計ENT1100を用いた。使用圧子は20μm四方の平圧子を用い、測定環境は25℃、湿度60%で測定した。負荷速度9.8×10-5N/secで、最大荷重9.8×10-4Nまで荷重を掛けた。最大荷重に到達後、0.1secの間その荷重で放置し、放置後の変形量を測定した。
<アスペクト比の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定した。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて2000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定し、トナー粒子のアスペクト比を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.977μm以上、39.54μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
<磁性酸化鉄の製造>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50Lに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにて、ろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子に対してケイ素換算で0.20質量%となるケイ酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することでケイ素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して1次粒子の個数平均径が190nmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物1の製造>
iso−ブチルトリメトキシシラン30質量部をイオン交換水70質量部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうして加水分解物を含有するシラン化合物水溶液1を得た。
<シラン化合物2の製造>
シラン化合物1の製造においてiso−ブチルトリメトキシシランをn−ヘキシルトリメトキシシランに変更したこと以外は同様にしてシラン化合物水溶液2を製造した。
<磁性体1の製造>
上記の磁性酸化鉄100質量部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、8.0質量部のシラン化合物水溶液1を2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物を固着させるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体1を得た。
<磁性体2の製造>
磁性体1の製造において、シラン化合物水溶液1をシラン化合物水溶液2に変更したこと以外は同様にして磁性体2を製造した。
<トナー1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた四つ口容器中に、イオン交換水720質量部と、0.1mol/L−Na3PO4水溶液450質量部を投入して60℃に加温した後、1.0mol/L−CaCl2水溶液67.7質量部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
(分散工程)
・スチレン 80.0質量部
・n−ブチルアクリレート 20.0質量部
・メチルトリエトキシシラン 10.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.65質量部
・磁性体1 50.0質量部
・磁性体2 50.0質量部
・負荷電制御剤 T−77(保土谷化学工業(株)製) 1.5質量部
・ポリエステル樹脂 3.0質量部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られるポリエステル樹脂;Mn=5000、酸価=6mgKOH/g、Tg=68℃)
キャビトロン(ユーロテック社製)を用いて、回転子の周速を35m/sにて、上記材料2時間混合し、重合性単量体に磁性体が分散した磁性体分散単量体を得た。
(調製工程)
・ベヘン酸ベヘニル(融点Tm 72.1℃) 10.0質量部
分散工程で得られた磁性体分散単量体を65℃に加温し、上記の離型剤(ベヘン酸ベヘニル)を添加し、キャビトロン(ユーロテック社製)を用いて、回転子の周速を35m/sにて、1時間混合処理を行い、重合性単量体組成物1を得た。
その後、重合性単量体組成物1に、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート10.0質量部(トルエン溶液50%)を添加した。重合開始剤を添加した重合性単量体組成物1を水系媒体中に投入し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)の回転数を12,500rpmに維持しつつ、60℃、N2雰囲気下において、12分間造粒した。
その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。このとき水系媒体のpHは5.1であった。次に、1.0mol/L−NaOH水溶液を10.0質量部加えてpH8.0にし、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した。その後、10%塩酸4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。温度100℃にて蒸留を5時間行って、重合体スラリー1を得た。蒸留留分は300質量部であった。
30℃に冷却後、重合体スラリー1を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥をしてトナー粒子1を得た。得られたトナー粒子1は、重量平均粒径が7.7μmであった。トナー粒子1の処方及び条件を表1に示し、物性を表3に示した。
トナー粒子1についてTEM観察を行い、ケイ素マッピングを行った。その結果、表層に均一にケイ素原子が存在することが確認された。以下の実施例及び比較例においても、同様に有機ケイ素重合体を含有する表層はケイ素マッピングでも確認を行った。
<トナー粒子2〜14の製造例>
表1に記載した処方、条件に変更する以外はトナー粒子1の製造例と同様にしてトナー粒子2〜14を得た。尚、トナー粒子10〜14の製造においては、表1に記載した変更以外に、以下の点の変更も行った。
トナー粒子11:キャビトロンの回転子の周速を35m/sから40m/sに変更した。
トナー粒子12:キャビトロンをディゾルバー(エムテクニック社製)に変更し、回転数を500r/minとした。
トナー粒子13:キャビトロンの回転子の周速を35m/sから40m/sに変更した。
トナー粒子14:キャビトロンをディゾルバー(エムテクニック社製)に変更し、回転数を500r/minとした。
得られたトナー粒子の物性を表3に示した。また、トナー粒子2〜14についてTEM観察を行い、ケイ素マッピングを行った。その結果、表層に均一にケイ素原子が存在することが確認された。
トナー粒子1〜14は、外添処理を行わずに、そのままトナー1〜14として用いた。
<比較トナー粒子1の製造例>
トナー粒子1の製造例で用いたメチルトリエトキシシラン10質量部を1質量部に変更し、更に分散工程及び調製工程で用いたキャビトロン(ユーロテック社製)をディゾルバー(エムテクニック社製)に変更し、回転数を500r/minに変更した。更に、造粒工程で用いたT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)の回転数を7500r/minに変更した。それ以外はトナー粒子1の製造例と同様にして比較トナー粒子1を得た。比較トナー粒子1の処方を表2に示し、物性を表4に示した。比較トナー粒子1についてTEM観察を行い、ケイ素マッピングを行った。その結果、表層に少量のケイ素原子が存在することが確認された。
比較トナー粒子1は、外添処理を行わずに、そのまま比較トナー1として用いた。
<比較トナー粒子2の製造例>
比較トナー粒子1の製造例において、メチルトリエトキシシラン1質量部を使用しないように変更し、更にジビニルベンゼン0.65質量部を0.90質量部に変更した。それ以外は同様にして比較トナー粒子2を作成した。
100質量部の比較トナー粒子2に対し、三井ヘンシェルミキサ(三井鉱山社製)を用いて、疎水性シリカ(BET比表面積200m2/g、ヘキサメチルジシラザン3.0質量%、100cpsのシリコーンオイル3質量%で疎水化処理したもの)0.3質量部を混合して、比較トナー2を調製した。比較トナー粒子2の処方を表2に示し、比較トナー2の物性を表4に示した。
<比較トナー粒子3の製造例>
比較トナー粒子2の製造例において、ジビニルベンゼン0.90質量部を0.65質量部に変更する以外は同様にして比較トナー粒子3を得た。
また、疎水性シリカの添加量を0.3質量部から3.0質量部に変更する以外は、比較トナー粒子2の製造例における外添工程と同様にして外添を行い、比較トナー3を調製した。比較トナー粒子3の処方を表2に示し、物性を表4に示した。
<比較トナー粒子4の製造例>
比較トナー粒子3の製造例において、ジビニルベンゼン0.65質量部を0.90質量部に変更した以外は同様にして比較トナー粒子4を得た。
また、比較トナー粒子3の製造例における外添工程と同様にして外添を行い、比較トナー4を調製した。比較トナー粒子4の処方を表2に示し、物性を表4に示した。
<評価機1>
キヤノン(株)製プリンターLBP3100を改造して画出し評価に用いた。改造点としては、図4に示すようにトナー担持体(図4;102)が静電潜像担持体(図4:100)を接触するように改造した。なお、トナー担持体を外径10mmから8mmに小径化し、静電潜像担持体の当接部が0.8mmとなるように当接圧を調整した。また、トナー担持体を小径化し、規制部との当接部面積を小さくした。さらに、印刷速度16枚/分から30枚/分になるように調整した。
<評価機2>
評価機1の改造点に加えて、クリーニングユニット(図4:116)を取り外した。
〔実施例1〕
評価機1及び評価機2に、トナー1を150g充填した。高温高湿度環境下(32.5℃/85%RH)、印字率が1%の横線を2枚プリントアウトし、その後6秒休止する間欠モードで5000枚画出しし、以下に記載したゴースト画像とカブリの評価を行った。評価機1を使用した結果を表5に、評価機2を使用した結果を表6に示す。
また、トナー1を用いて、長期保存性の評価を行い、評価機1を用いて、以下に記載した低温定着性の評価を行った。評価結果を表5に示す。
<ゴースト>
5000枚のプリントアウト後、10mm×10mmのベタ画像複数個をプリントアウトし、その後、2ドット3スペースのハーフトーン画像をプリントアウトした。ハーフトーン画像部において、前記ベタ画像の影響を受けた部分と影響を受けていない部分との画像濃度を測定し、その差を用いて評価した。画像濃度の測定には、マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いた。
A:濃度差が0.02未満
B:濃度差が0.02以上0.05未満
C:濃度差が0.05以上0.10未満
D:濃度差が0.10以上0.20未満
E:濃度差が0.20以上
<カブリ>
5000枚のプリントアウト後、ベタ白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODELTC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−ベタ白画像サンプルの反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。
A:1.0%未満
B:1.0%以上2.0%未満
C:2.0%以上3.0%未満
D:3.0%以上4.0%未満
E:4.0%以上
<長期保存性>
10gのトナー1を100mLガラス瓶にいれ、温度45℃、湿度95%で3カ月間放置した後に目視で判定した。
A:変化なし
B:細かな凝集体が見られる。
C:明確な凝集体があるが、すぐにほぐれる。
D:ほぐれにくい凝集体が発生。
E:明白なケーキングが発生。
<低温定着性>
低温定着性は、200℃の設定温度でFOX RIVER BOND紙に、マクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した画像濃度が0.75〜0.80となるようにハーフトーン画像濃度を調整し画出しを行う。
その後、定着器の設定温度を210℃から5℃ずつ低下させて画出しを行った。その後、5.4kPa(55g/cm2)の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%を超える温度を定着下限温度とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。下記の判断基準に従い、評価を行った。
A:160℃未満
B:160℃以上170℃未満
C:170℃以上185℃未満
D:185℃以上200℃未満
E:200℃以上
〔実施例2〜14〕
実施例1において、トナー2〜14を用いたこと以外は同様にして、評価を行った。評価機1を使用した結果を表5に、評価機2を使用した結果を表6に示す。
〔比較例1〜4〕
実施例1において、比較トナー1〜4を用いたこと以外は同様にして、評価を行った。評価機1を使用した結果を表5に、評価機2を使用した結果を表6に示す。
Figure 2017016129
Figure 2017016129
Figure 2017016129
Figure 2017016129
Figure 2017016129
Figure 2017016129

Claims (7)

  1. 結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
    微小圧縮試験において、該磁性トナーの1粒子に荷重9.8×10-4Nの負荷を与えたときの変形量が3.0μm以下であり、
    該磁性トナーの表面自由エネルギーが5mJ/m2以上20mJ/m2以下であり、
    該磁性トナーの100℃における溶融粘度η’が5.0×103Pa・s以上1.0×105Pa・s以下であることを特徴とする磁性トナー。
  2. 該磁性トナーのアスペクト比が0.88以上1.00以下である、請求項1に記載の磁性トナー。
  3. 該磁性トナーは、周波数100kHz、温度30℃における誘電損率(ε”)が0.05pF/m以上0.25pF/m以下である、請求項1または2に記載の磁性トナー。
  4. 接触式帯電ローラを用いて静電潜像担持体の表面を帯電する帯電工程、
    帯電された該静電潜像担持体の表面を露光して、静電潜像を形成する像露光工程、
    該静電潜像を磁性トナーにて現像し、トナー像を形成する現像工程、
    中間転写体を介してまたは介さずに該トナー像を転写材に転写する転写工程、および、
    該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程、
    を有する画像形成方法であって、
    該磁性トナーが、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性トナーである、ことを特徴とする画像形成方法。
  5. 該転写工程後、かつ、該帯電工程前に、静電潜像担持体表面に存在する残留トナーを除去するクリーニング工程を有さず、該残留トナーを該現像工程において回収する、請求項4に記載の画像形成方法。
  6. 磁性トナー、
    静電潜像担持体、
    該静電潜像担持体を帯電する接触式帯電ローラ、
    帯電された該静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成するための像露光手段、
    該静電潜像を該磁性トナーにて現像し、トナー像を形成する現像手段、
    中間転写体を介してまたは介さずに該トナー像を転写材に転写するための転写手段、及び、
    該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着するための定着手段、
    を有する画像形成装置であって、
    該磁性トナーが、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性トナーである、ことを特徴とする画像形成装置。
  7. 該静電潜像担持体の表面に沿って、該転写手段の下流側、かつ、該接触式帯電ローラの上流側の領域に、該静電潜像担持体表面に存在する残留トナーを除去するためのクリーニング手段を備えていない、ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
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