JP6165017B2 - トナー - Google Patents
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大規模オフィスのセンターマシンは、高速かつ多数枚の複写またはプリントによっても画質低下のない高耐久性が主に要求される。一方で、スモールオフィスや家庭では、高画質な画像を得ると共に、省スペース・省エネルギー・軽量化が求められる傾向がある。省エネルギーの代表的手段は、定着温度の低温化が必要となる。上記要求を考慮すると、環境安定性、耐部材汚染、低温定着性、現像耐久性及び長期保存性といったトナー性能のさらなる向上が必要となる。
各トナー性能を上げる手段は多数提案されているが、低温定着を達成することを優先してトナーの結着樹脂を設計すると、耐久性や現像性に悪影響を及ぼす場合が多い。高温環境では、上記トレードオフ関係がより明確な課題となる。例えば、低温定着化を図るために、結着樹脂の低分子量化でトナーを軟化させる手法があるが、この方法だけでは、耐熱保存性の低下あるいは現像耐久性の低下が起こる。
そこで、低温定着性と耐熱保存性を両立するトナーを実現するために、結晶構造を取りうる部位を有する樹脂(以下、結晶性樹脂ともいう。)を結着樹脂として用いる手法が検討されている。結晶性樹脂は一般的に熱に対する粘弾性変化の応答速度に優れる。よって、従来の非晶性樹脂のみを結着樹脂として使用したトナーと比べて、より低温側で急激に粘性が低下(以下、この現象をシャープメルト性と表現する)して紙への定着が達成できる設計をしやすい。しかしながら、結晶性を有するがゆえに、樹脂を構成する高分子同士が絡まり構造をとりにくいため、外力に対して脆い性質を示す傾向があり、現像耐久性を損なう場合がある。さらに、結晶性樹脂は非晶性樹脂に比べて体積抵抗が低いため、電荷の漏えいが生じやすい傾向にある。そのため、結晶性樹脂を結着樹脂として用いたトナーは帯電性能が不十分になる可能性がある。
現像耐久性や耐熱保存性を改善する手段としては、トナーの表面を樹脂で覆う方法がある。トナー内部は低温定着に有利な樹脂を選択し、トナー表面を耐久性に有利な硬い物質で覆うことで、低温定着性と現像耐久性の両立を図る方法である。
例えば、高温保存性及び印刷時の常温常湿環境下や高温高湿環境下における印字耐久性に優れたトナーとして、無機微粒子を表面に強く固着したトナーが開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、強く固着しても無機微粒子同士の隙間から離型剤、樹脂成分のブリードや耐久劣化による無機微粒子の遊離又は埋没により、耐久性及び部材汚染には若干の課題を有している。
また、着色剤や極性物質がトナー表面に露出することなく、狭い帯電量分布を有し、帯電量の湿度依存性が極めて少ないトナーとして、反応系にシランカップリング剤を添加することを特徴とする重合トナーの製造方法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、トナー表面へのシラン化合物の析出量や加水分解重縮合が不十分であり、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーとしては若干の課題を有している。
さらに、トナーの帯電量制御を行い、温度、湿度の環境に左右されにくく良質な印刷画像を形成する手段として、表面部に連続した薄膜の形で施されたケイ素化合物を含んでいる重合トナーが開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、有機官能基の極性が大きく、トナー表面へのシラン化合物の析出量や加水分解重縮合が不十分であり、架橋度が弱く、高温高湿下における帯電性の変化による画像濃度変化や耐久劣化による部材汚染
が発生し若干の課題を有している。
さらに、流動性、流動化剤の遊離、低温定着性、ブロッキング性を改善するトナーとして、ケイ素化合物を含む粒状塊同士が固着された被覆層を有する重合トナーが開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、粒子塊の隙間から離型剤や樹脂成分のブリード、トナー表面へのシラン化合物の析出量や加水分解重縮合が不十分であり、高温高湿下における帯電性の変化による画像濃度変化やトナー融着による部材汚染が発生し若干の課題を有している。
すなわち、本発明は、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子は、前記トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、下記式(1)で表される部分構造を0.050個以上含有し、
前記トナー粒子は、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方を、1.0質量%以上90.0質量%以下含有し、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成するアルキル基が炭素数16乃至34の直鎖アルキル基であることを特徴とするトナーである。
本発明のトナーは、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該有機ケイ素重合体は、シロキサン結合を有する上記式(1)で表される部分構造を有し、該トナー粒子は、該トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、上記式(1)で表される部分構造を0.050個以上含有し、該トナー粒子は、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方を、1.0質量%以上90.0質量%以下含有し、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成するアルキル基が炭素数16乃至34の直鎖アルキル基であることを特徴とする。
該構成により、現像耐久性、長期保存性、過酷環境安定性、耐部材汚染及び低温定着性に優れた特性を奏する。
融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、又は、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体とは、結晶構造が解放されて非晶構造になる特定の温度を有する重合体又は共重合体であることを意味している。その特定の温度が融点である。融点の測定方法は後述する。ここで、上記表現形式における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体とは、アクリル酸アルキルエステルの重合体及び/又はメタクリル酸アルキルエステルの重合体を表す。
上記重合体又は共重合体が融点を有する理由は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が比較的炭素数の多い直鎖アルキル基であるため、その直鎖アルキル部分が規則的に配列しやすく、結晶構造を示すためである。一般的に、側鎖結晶性樹脂と呼ばれるものである。融点を有するがゆえに、シャープメルト性を示し、低温定着性を発現させることが出来る。ただし、このような結晶性樹脂を単純にトナーに含有させるだけでは、前述したように、弱い脆性によって圧力や摩擦に屈し易く、低い電気抵抗に起因した帯電性悪化の影響を及ぼす場合がある。
次に、トナー粒子に上記有機ケイ素重合体と上記アクリル系重合体が含まれている状態を考える。それら二つが特定の条件を満たすと、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体による低温定着性改善効果を生じつつ、現像耐久性、耐熱保存性、長期保存性、過酷環境安定性および耐部材汚染性を高いレベルで達成し得ることを見出した。
効果発現の条件の一つは、シロキサン結合を持つ式(1)で示されるR1−SiO3/2におけるR1組成と、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成する直鎖アルキル基の炭素数との間で、特定の関係が満たされることである。
R1−SiO3/2で示される有機ケイ素重合体は、Si原子の4個の原子価について、1個はR1で示される有機基と、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する要素である。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。すなわち、下記式(4)のような構造である。
本発明者らが鋭意検討した結果、上記R1は、炭素数が1乃至6の飽和炭化水素基又はアリール基であること、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成するアルキル基は、炭素数16乃至34の直鎖アルキル基であることが、本発明効果発現の1つの条件であることがわかった。
すなわち、シャープメルト性を有し低温定着が有利になる上記アクリル系樹脂の効果を生かし、それらアクリル系樹脂をトナーに使用する際に発生し易い、帯電性や耐久性の悪化を効果的に防止する条件の一つである。
耐久性悪化や帯電性悪化が効果的に抑制できる理由として、R1−SiO3/2の−SiO3/2構造が上記アクリル系樹脂に近しい場所に存在出来るためであると、本発明者らは考察している。
−SiO3/2を構成する骨格は、本質的にシロキサン結合のみで構成されるガラス(SiO2)と類似の性質を有することが考えられることは、上記説明の通りである。したがって、この−SiO3/2構造は、高い絶縁性と高い硬度を有していると考えられる。R1とシロキサン骨格が結合していることが式(1)の意味であり、R1が比較的構造の小さい原子団であるため、上記アクリル系樹脂の直鎖アルキル基とR1が親和した場合、そのアクリル系樹脂近傍にシロキサン骨格が存在することができる。その結果、トナーの硬度を高め、なおかつ電荷のリークを抑制していると、本発明者らは推測している。
R1が6よりも大きい炭化水素基であると、特に高湿環境において、帯電量の低下が認められるようになる。理由の一つとして、−SiO3/2骨格と、トナー粒子に含まれる融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体との距離が、遠ざかるためであると推定している。その結果、−SiO3/2骨格のリーク抑制効果が減少しているのではないかと、本発明者らは推測している。あるいは、R1の炭素数が6よりも大きいと、R1基同士で集合しやすくなり、トナー粒子内部に、上記アクリル系重合体の集合体の周囲に、電荷のリークを抑制するような何らかの効率的な配置が取り難くなっているのではないかと、推測する。
本発明において、有機ケイ素重合体のR1は、メチル基、エチル基であることが好ましい。有機基であるR1構造が小さいことで、−SiO3/2で表される部分構造が、より緻密な構造になるためである。これにより、耐久性や高温放置安定性がより向上する。
また、R1における炭素数が1乃至6の炭化水素基は、飽和炭化水素基である。詳細なメカニズムは不明だが、R1が飽和炭化水素基であることで、不飽和炭化水素基の場合と比べて、高湿環境における帯電量低下の抑制効果が大きいからである。R1が飽和炭化水素であることで、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体の直鎖アル
キル基と隣接しやすくなることを推定している。
上記(メタ)アクリル酸アルキルのアルキルエステルを構成するアルキル基は、炭素数18乃至28の直鎖アルキル基であることが好ましい。低温定着性と現像耐久性を、よりバランスよく性能発揮させやすいためである。
また、該アルキルエステルを構成するアルキル基は、直鎖アルキル基である。直鎖アルキル基であることで、シャープな融点を有する重合体となり得る。分岐鎖では、融点を有するような重合体とすることは困難である。
例えば、Si原子の4つの原子価のうち、3つが酸素と結合してさらにそれら酸素がSi原子と結合することが、−SiO3/2の意味であるが、そのうち1つがSiOHであったとすると、そのケイ素の部分構造は、R1−SiO2/2−OHで表現される。この構造では、SiO2のようなガラス骨格と言うよりも、ジメチルシリコーンに代表される2置換シリコーン樹脂に類似しており、ガラス(SiO2)のような強度にはなり得ないと考えられる。推定だが、−SiO3/2の構造が5.0%未満であると、樹脂的性質が支配的となり、5.0%以上であると、ガラスのような硬い性質が発現し始めると考えられる。好ましくは、トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、上記式(1)で表される部分構造が、0.200個以上であることが好ましく、より好ましくは0.400個以上である。該範囲を満たすことで、より一層構造が強化され、帯電安定性も増す為である。一方、耐久性と構造安定性の観点より、トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、上記式(1)で表される部分構造が、1.00個以下であることが好ましい。種々の手段で1.00個に近づけることが最も好ましい。
なお、当該トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たりの、上記式(1)で表される部分構造の個数は、有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、並びに、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明の有機ケイ素重合体の作製手段詳細については、後述する。
アクリル系重合体等自身のシャープメルト性は、アクリル系重合体等以外の周りのトナー樹脂をも同時に可塑させる効果がある。よって、少量の添加でも低温定着化に効果が見られるようになり、その閾値が1.0質量%である。
一方、該アクリル系重合体等の含有量が、90質量%を越えると、高温高湿環境での現像耐久性、及び過酷環境安定性、について、未だ課題を有する。融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体が有する、低い電気抵抗と脆性が、本発明の有機ケイ素重合体を持ってしても補いきれない領域であるためである。
融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の好ましい含有量は、5.0質量%以上60.0質量%以下である。低温定着性と現像耐久性を、よりバランスよく性能発揮させやすいためである。
具体的には、トナー粒子の表面のX線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いた測定において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが1.0atomic%以上であることが好ましい。より好ましくは、9.0atomic%以上である。一方、該ケイ素原子の濃度dSiは、構造安定性の観点より、28.6atomic%以下であることが好ましい。
耐久性と耐帯電リーク性は、粒子内部よりも粒子表面の方がより支配的であると考えられる。通常考えられるトナー粒子の主要原子は、炭素(C)、酸素(O)であり、本発明においては、トナー粒子表面にケイ素(Si)原子が存在した場合、そのSi原子にO原子が結合している部分が必ず存在するはずである。よって、トナー粒子表面に本発明の有機ケイ素重合体を存在させることで、上記性能が向上するのである。
割合(以下、表面層の厚み2.5nm以下の割合ともいう)が、20.0%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0%以下である。
有機ケイ素重合体を含有するトナー表面層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が20.0%以下であることで、広範な環境や厳しい使われ方においても、優れた耐久性を有するトナーを得ることができる。詳細は後述するが、有機ケイ素重合体を含有するトナー表面層の測定は、トナー粒子の断面画像を1粒子につき32か所の表面層厚みを測ることで定義される。この条件は、トナー粒子の表面層のうち、少なくとも80.0%以上が、2.5nm以上の有機ケイ素重合体を含む表面層で構成されていることを近似している。そのため、本条件を満たすと、−SiO3/2構造による遮蔽効果が強く働くと考えられ、実際、高温環境に放置しても、トナーの耐久性や帯電性が良好に維持されることが見出された。これは、−SiO3/2構造により、トナー粒子に含まれる成分がトナー粒子表面に染み出してくる、いわゆるブリード現象をも効果的に抑制できるためと考えられる。
上記有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子表面層の平均厚みDav.、及び、上記表面層の厚み2.5nm以下の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、付加重合及び縮合重合の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量によっても制御することができる。
水系媒体中で製造されることから、トナー粒子を、有機ケイ素重合体を有する表面層で容易に覆うことができるためである。また、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体をトナー粒子内部に閉じ込め、トナー粒子最表面への露出を防ぐことが出来ることで、これまで述べてきた効果がすべて相乗して働くためである。
ゾルゲル法は、金属アルコキシドM(OR)n(M:金属、O:酸素、R:炭化水素、n:金属の酸化数)などを出発原料に用いて、溶媒中で加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経て、ゲル化して、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法である。本方法によればコーティング層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から容易に作製することができる。
さらに、ゾルゲル法は、溶液から出発し、そのゲル化によって材料を作っているため様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基などの親水基による親水性によって表面に析出しやすくなる。しかし疎水性が大きい場合、例えば有機ケイ素化合物の炭化水素基の炭素数が6より多い炭化水素基がある場合には疎水性が強くなる。そのため、トナー表面に粒子の凝集体を形成し易い傾向がある。
本発明における有機ケイ素重合体を作製するための有機ケイ素化合物として、具体的に以下が挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルメトキシジクロロシラン、ブチルエトキシジクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。該有機ケイ素化合物は単独で用いても、或いは2種類以上を複合して用いてもよい。
一方、反応媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素に付加して5配位中間体を経由する。そのため全ての反応基(例えば、アルコキシ基(−OR基))が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3個以上の反応基を有するケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合の多い有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
従って、有機ケイ素重合体を形成するには、アルカリ性の下でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上、反応温度90℃以上、反応時間5時間以上で反応を進めることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。
また、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体として、2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体;1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する、アクリル酸アルキルエステルと、1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される
繰り返し単位を有する、メタクリル酸アルキルエステルとの共重合体;1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する、アクリル酸アルキルエステルと、スチレン、アクリル酸、アルコール及び、カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し単位との共重合体;1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する、メタクリル酸アルキルエステルと、スチレン、アクリル酸、アルコール及び、カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し単位との共重合体;又は、1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する、アクリル酸アルキルエステルと、1種類若しくは2種類以上の下記式(8)で表される繰り返し単位を有する、メタクリル酸アルキルエステルと、スチレン、アクリル酸、アルコール、及び、カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し単位との共重合体が挙げられる。
これらにおいて、本発明に用いられるトナー粒子は、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方を、1.0質量%以上90.0質量%以下含有する。
本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、又は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)は、15000以上30000以下であることが好ましい。該重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることによって、定着性と耐久性の両立をより際立たせることができる。なお、該重量平均分子量(Mw)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、又は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の製造時の反応温度、反応時間、触媒量、及びモノマー種により調整することができる。
本発明において、上記融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体以外にも、本発明の効果に影響を与えない範囲で、以下の樹脂又は(共)重合体を用いることができる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタ
リン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらは、単独或いは混合して使用できる。
第一製法としては、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方、及び重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に懸濁、造粒し、重合性単量体を重合してトナー粒子を得る態様(以下、懸濁重合法とも称する)である。
当該トナー粒子を有するトナーは、トナー表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合されるため過酷環境下での帯電性が特に良好となる。また、有機ケイ素化合物が均一に析出し易いため、過酷環境下においてトナー内部の離型剤や樹脂のブリードや移動によるトナー表面変化が抑制される。
第二製法としては、先にトナー粒子母体を得た後、トナー粒子母体を水系媒体中に投入して、水系媒体中でトナー粒子母体に有機ケイ素重合体の表層を形成する態様である。トナー粒子母体は、重合性単量体を重合等して得た結着樹脂、及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方、並びに、必要に応じて添加される着色剤及び離型剤を溶融混練し、粉砕して得ても良く、結着樹脂粒子、及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方の樹脂粒子、並びに、必要に応じて添加される着色剤粒子等を、水系媒体中で凝集し、会合して得ても良く、結着樹脂、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方、及び有機ケイ素化合物、並びに必要に応じて添加される着色剤等を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去して得ても良い。
トナー表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合されるため過酷環境下での帯電性が特に良好となる。また、架橋構造を有するため、過酷環境下においてトナー内部の離型剤や樹脂のブリードや移動によるトナー表面変化が抑制される。
第三製法としては、結着樹脂、及び有機ケイ素化合物、並びに、必要に応じて添加される着色剤等を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去してトナー粒子を得る態様である。当該トナー粒子を有するトナーは、トナー表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合されるため過酷環境下での帯電性が特に良好となる。また、架橋構造を有するため、過酷環境下においてトナー内部の離型剤や樹脂のブリードや移動によるトナー表面変化が抑制される。しかし、有機溶剤を除去する必要があるため離型剤や低分子成分が染み出す可能性がある。
本発明において、トナー粒子の製造方法として、上述した製造方法の中でも、懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法では有機ケイ素重合体が表面に均一に析出し易く、表層内部との接着性に優れ、長期保存性、過酷環境安定性及び耐久性が良好になる。以下、懸濁重合法を例に挙げて説明を加える。
本発明において、懸濁重合法は、有機ケイ素重合体を形成するための有機ケイ素化合物、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方、及び重合性単量体を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に懸濁して、重合性単量体組成物の液滴を製造する造粒工程、該液滴中の重合性単量体及び有機ケイ素化合物を重合する重合工程を少なくとも経ることによりトナー粒子を製造する方法である。上記重合性単量体組成物には、必要に応じて着色剤、離型剤、極性樹脂、及び低分子量樹脂等を添加することができる。また、重合工程終了後は、生成した粒子を洗浄、濾過により回収し、乾燥してトナー粒子を得る。なお、上記重合工程の後半に昇温しても良い。更に未反応の重合性単量体又は副生成物を除去する為に、重合工程後半又は重合工程終了後に一部分散媒体を反応系から留去することも可能である。
また、重合に際して、用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5乃至30.0質量%の添加が好ましく、単独でも又は併用してもよい。
また、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量としては、重合性単量体の0.001乃至15.000質量%である。
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量をコントロールする為に、重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA 日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
また、多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。好ましい添加量としては、重合性単量体に対して0.001乃至15.000質量%である。
上記重合の際に用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の水系媒体中での分散安定剤として以下のものを使用することができる。
無機分散安定剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
また、有機系分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンが挙げられる。
さらに、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
本発明において、難水溶性無機分散安定剤を用い、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至2.0質量部であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤を得るためには、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、難水溶性無機分散剤を生成させてもよい。具体的には、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、上記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合して、更には固溶体の状態で用いることが出来る。
なお、着色剤の含有量は、トナー粒子の樹脂成分又は重合性単量体100質量部に対して3.0乃至15.0質量部であることが好ましい。
該荷電制御剤としては、公知のものが使用できる。特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。荷電制御剤としては、有機金属化合物及びキレート化合物として、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系化合物等、樹脂系荷電制御剤(荷電制御樹脂;スルホン酸系官能基を有する重合体等)が挙げられる。これらの中でも、金属含有サリチル酸系化合物(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物)、トリフェニルメタン系化合物が好ましい。本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独あるいは2種以上組み合わせて含有することができる。
これらの荷電制御剤の添加量としては、トナー粒子の樹脂成分又は重合性単量体100質量部に対して、0.01乃至10.00質量部であることが好ましい。
該トナー粒子に用いられる離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸の如き脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ン樹脂が挙げられる。
なお、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
なお、離型剤の含有量は、トナー粒子の樹脂成分又は重合性単量体100.0質量部に対して3.0乃至20.0質量部であることが好ましい。
有機微粉体又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機微粉体又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナーの帯電均一化のためにトナー粒子の表面を処理する。有機微粉体又は無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電性の調整、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された有機微粉体又は無機微粉体を用いることが好ましい。
有機微粉体又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独であるいは併用して用いても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時にあるいは処理した後に、シリコーンオイルより処理したものである。シリコーンオイルで処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上で良い。
これら有機微粉体又は無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対し、0.01乃至10.00質量部であることが好ましく、0.02乃至3.00量部であることがより好ましく、0.03乃至1.00質量部がさらに好ましい。添加量の適正化により、有機微粉体または無機微粉体のトナー粒子への埋め込みや遊離による部材汚染が良化する。これら有機微粉体又は無機微粉体は、単独で用いても、又、複数併用しても良い。
ここで、有機微粉体又は無機微粉体のBET比表面積は、10m2/g以上450m2/g以下であることが好ましい。有機微粉体又は無機微粉体の比表面積BETは、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置「ジェミニ2375 Ver.5.0」(島津製作所社製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m2/g)を算出することができる。
<NMRの測定方法>
固体NMR測定における、測定条件及び試料調製方法は以下の通りである。
「測定条件」
装置:日本電子社製 JNM−EX400
プローブ:6mm CP/MASプローブ
測定温度:室温
基準物質:ポリジメチルシラン(PDMS) 外部基準:−34.0ppm
測定核:29Si (共鳴周波数79.30MHz)
パルスモード:CP/MAS
パルス幅:6.4μsec
繰り返し時間:ACQTM=25.6msec PD=15.0sec
データ点:POINT=4096 SAMPO=1024
コンタクト時間:5msec
スペクトル幅:40kHz
試料回転数:6kHz
積算回数:2000回
試料:測定試料200mg(調製方法は以下)を直径6mmのサンプルチューブに入れる。
なお、本発明において、トナーに上記有機微粉体又は無機微粉体が外添されている場合は、下記方法によって、該有機微粉体又は無機微粉体を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
カーブフィティングは日本電子社製のJNM−EX400用ソフトのEXcalibur for Windows(登録商標) version 4.2(EX series)を用いた。メニューアイコンから「1D Pro」をクリックして測定データを読み込む。
次に、メニューバーの「Command」から「Curve fitting functinon」を選択し、カーブフィティングを行った。その一例を図2に示す。合成ピーク(b)と測定結果(d)の差分である合成ピーク差分(a)のピークが最も小さくなるようにピーク分割を行った。
Q1構造の面積、Q2構造の面積、Q3構造の面積、Q4構造の面積を求めて以下の式によりSQ1、SQ2、SQ3、SQ4を求めた。
Q2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2)2 式(5)
Q3構造:RfSi(O1/2)3 式(3)
Q4構造:Si(O1/2)4 式(7)
SQ1+SQ2+SQ3+SQ4=1.00
SQ1={Q1構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ2={Q2構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ3={Q3構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
SQ4={Q4構造の面積/(Q1構造の面積+Q2構造の面積+Q3構造の面積+Q4構造の面積)}
本発明においては、トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、下記式(1)で表される部分構造を0.050個以上含有している。この測定方法において、−SiO3/2構造を示す値は上記SQ3である。この値が、0.050以上であることが本発明の条件である。
式(1)のR1で表される飽和炭化水素基又はアリール基の有無は、13C−NMRにより確認した。
また、式(1)の詳細な構造は1H−NMR,13C−NMR及び29Si−NMRに
より確認した。使用した装置及び測定条件を以下に示す。
「測定条件」
装置:BRUKER製 AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(上記NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れた。
当該方法にて、式(1)のR1で表される飽和炭化水素基又はアリール基の有無を確認した。シグナルが確認できたら、式(1)の構造は“あり”とした。
「13C−NMR(固体)の測定条件」
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
本発明において、トナー粒子の断面観察は以下の方法により行う。
トナー粒子の断面を観察する具体的な方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。得られた硬化物からダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出す。このサンプルを透過型電子顕微鏡(FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XT)(TEM)で1万〜10万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。
本発明においては、用いる樹脂と有機ケイ素化合物の中の原子の原子量の違いを利用し、原子量が大きいとコントラストが明るくなることを利用して確認を行っている。さらに、材料間のコントラストを付けるためには四三酸化ルテニウム染色法及び四三酸化オスミウム染色法を用いる。
当該測定に用いた粒子は、上記TEMの顕微鏡写真より得られたトナー粒子の断面から円相当径Dtemを求め、その値が後述の方法により求めたトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるものとした。
上述のように、FEI社製電子顕微鏡Tecnai TF20XTを用い、加速電圧200kVでトナー粒子断面の明視野像を取得する。次にGatan社製EELS検出器GIF Tridiemを用い、Three Window法によりSi−K端(99eV
)のEFマッピング像を取得して表面層に有機ケイ素重合体が存在することを確認する。
次いで、円相当径Dtemがトナー粒子の重量平均粒径の±10%の幅に含まれるトナー粒子1個について、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割する(図1参照)。次に、該中心からトナー粒子の表層へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1乃至32)、分割軸の長さをRAn、有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みをFRAnとする。
そして、該分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.を求める。さらに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合を求める。
本発明では、平均化するため、トナー粒子10個の測定を行い、トナー粒子1個あたりの平均値を計算した。
TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)は以下の方法で求める。まず、1つのトナー粒子に対して、TEM写真より得られるトナー粒子の断面から求めた円相当径Dtemを下記式に従って求める。
[TEM写真より得られたトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)]=(RA1+RA2+RA3+RA4+RA5+RA6+RA7+RA8+RA9+RA10+RA11+RA12+RA13+RA14+RA15+RA16+RA17+RA18+RA19+RA20+RA21+RA22+RA23+RA24+RA25+RA26+RA27+RA28+RA29+RA30+RA31+RA32)/16
トナー粒子10個の円相当径を求め、粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の断面から求めた円相当径(Dtem)とする。
トナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)は以下方法で求める。
まず、1つのトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)を以下の方法で求める。
D(n)=(分割軸上における表面層の厚みの32箇所の合計)/32
平均化するためトナー粒子10個のトナー粒子の表面層の平均厚みD(n)(n=1乃至10)を求め、トナー粒子1個あたりの平均値を計算してトナー粒子の表面層の平均厚み(Dav.)とする。
Dav.={D(1)+D(2)+D(3)+D(4)+D(5)+D(6)+D(7)+D(8)+D(9)+D(10)}/10
[表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合]=〔{表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である分割軸の数}/32〕×100
この計算をトナー粒子10個に対して行い、得られた10個の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合の平均値を求め、トナー粒子の表面層の厚み(FRAn)が2.5nm以下である割合とした。
トナー粒子の表面に存在するケイ素原子の濃度[dSi](atomic%)、炭素原子の濃度[dC](atomic%)、及び、酸素原子の濃度[dO](atomic%)は、X線光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いた表面組成分析を行い算出した。
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:ULVAC−PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回 O 10回
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて、トナー粒子の表面層に存在する、ケイ素原子の濃度[dSi]、炭素原子の濃度[dC]、酸素原子の濃度[dO](いずれも、atomic%)を算出した。
そして、トナー粒子の表面層の、炭素原子の濃度dCと酸素原子の濃度dOとケイ素原子の濃度dSiの合計(dC+dO+dSi)を100.0atomic%としたときのケイ素原子の濃度dSiの割合(atomic%)を求めた。
結晶性樹脂の融点(Tm)、非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)、結晶性樹脂の含有量は示差走査熱量分析装置(DSC)「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、測定サンプル2mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲0℃から120℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度0℃から120℃の範囲において比熱変化が得られる。結晶性樹脂の吸熱曲線における吸熱メインピークのピーク温度を融点(℃)とする。
Tgは、得られたDSCのリバーシングヒートフロー曲線における吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値をTg(℃)とする。
樹脂の重量平均分子量(Mw)数平均分子量(Mn)及びメインピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件により測定する。
[測定条件]
・カラム(昭和電工株式会社製):Shodex GPC KF−801、KF−802、KF−803、KF−804、KF−805、KF−806、KF−807(直径8.0mm、長さ30cm)の7連
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・温度:40℃
・流速:0.6ml/min
・検出器:RI
・試料濃度及び量:0.1質量%の試料を10μl
[試料調製]
測定対象[樹脂]0.04gをテトラヒドロフラン20mlに分散、溶解後、24時間静置し、0.2μmフィルター[マイショリディスクH−25−2(東ソー社製)]で濾過し、その濾液を試料として用いる。
検量線は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料として、東ソー社製TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500を用いる、このとき、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。
GPCの分子量分布の作成において、高分子量側はベースラインからクロマトグラムが立ち上がり開始点から測定を始め、低分子量側は分子量約400まで測定する。
トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター
Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(
D1)である。
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び減圧装置を備えた反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部、単量体としてスチレン88質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル6.0質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸6.0質量部を添加して撹拌しながら常圧の還流下で加熱した。重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して5時間撹拌を継続した。更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に常圧の還流下で5時間撹拌して重合を終了した。
次に、重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルにて100μm以下に粗粉砕し、さらにジェットミルにより微粉砕した。その微粉体を250メッシュの篩により分級し、60μm以下の粒子を分別して得た。次に該粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のメタノール中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のメタノールで洗浄し、ろ過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥した。
さらに前述の真空乾燥後の粒子を10%の濃度になるようにメチルエチルケトンを加え再溶解し、得られた溶液をメチルエチルケトンの20倍量のn−ヘキサン中に徐々に投じ再沈殿した。得られた沈殿物を再沈殿に使用した量の2分の1のn−ヘキサンで洗浄し、ろ過した粒子を35℃にて48時間真空乾燥した。こうして得られた荷電制御樹脂はTgが約82℃であり、メインピーク分子量(Mp)が21,500、数平均分子量(Mn)が13,700、重量平均分子量(Mw)が22,800であり、酸価は18.4mgKOH/gであった。得られた樹脂を荷電制御樹脂1とする。
・テレフタル酸 :11.0mol・ビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物(PO−BPA):10.9mol
上記単量体をエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着し、窒素雰囲気下、減圧しながら、常法に従って210℃でTgが68℃になるまで反応を行い、ポリエステル系樹脂1を得た。重量平均分子量(Mw)は7,400、数平均分子量(Mn)は3,020であった。
(イソシアネート基含有プレポリマーの合成)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 725質量部
・フタル酸 290質量部
・ジブチルチンオキサイド 3.0質量部
上記材料を220℃にて攪拌して7時間反応し、更に減圧下で5時間反応させた後、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート190質量部と2時間反応し、イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を得た。イソシアネート基含有ポリエステル樹脂を25質量部とイソホロンジアミン1質量部を50℃で2時間反応させ、ウレア基
を含有するポリエステルを主成分とするポリエステル系樹脂(2)を得た。得られたポリエステル系樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は22300、数平均分子量(Mn)は2980、ピーク分子量は7200であった。
還流冷却管、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を入れた。
・トルエン 100.0部
・アクリル酸ベヘニル 100.0部
・2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 10.0部
(V−65、和光純薬社製)
前記容器内を撹拌し、重合温度60℃に加熱して12時間撹拌した。さらに、100℃に加熱して8時間撹拌し、溶媒を除去させて結晶性樹脂1を得た。該結晶性樹脂1は重量平均分子量が22000、融点が65.3℃であった。
表1の条件に従い、それ以外は上記結晶性樹脂1の製造と同様にして、結晶性樹脂2乃至6を得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 35.0質量部
・n−ブチルアクリレート 15.0質量部
・結晶性樹脂1 50.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(メチルトリエトキシシラン) 10.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・ポリエステル系樹脂(1) 4.0質量部
・荷電制御剤 0.1質量部
(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
・荷電制御樹脂1 0.1質量部
・離型剤〔べヘン酸ベヘニル〕 10.0質量部
・トルエン 20.0質量部
上記原料をアトライター(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、該重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた(反応1工程)。pHは5.1であった。次に、1.0N−NaOH 10.0質量部加えてpH8.0にし、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した(反応2工程)。その後、10%塩酸 4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残
存単量体およびトルエンを取り除き、重合体スラリーを得た(蒸留工程)。30℃に冷却後の重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥の後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー粒子1とした。トナー粒子1の処方及び条件を表2に示し、物性を表3に示した。
表2に示した重合性単量体組成物の組成量及び製造条件、並びに、表3に示した有機ケイ素化合物及び結晶性樹脂の種類に従い、それ以外は上記トナー粒子1の製造例に従い、トナー粒子2乃至16およびトナー粒子20乃至21を得た。得られた粒子の物性を表3に示す。
表2に示した重合性単量体組成物の組成量及び製造条件、並びに、表4に示した有機ケイ素化合物及び結晶性樹脂の種類に従い、それ以外は上記トナー粒子1の製造例に従い、比較トナー粒子22乃至27を得た。得られた粒子の物性を表4に示す。
・ポリエステル系樹脂(1) 30.0質量部
・ポリエステル系樹脂(2) 20.0質量部
・結晶性樹脂1 50.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・有機ケイ素化合物(メチルトリエトキシシラン) 10.0質量部
・荷電性制御剤 0.1質量部
(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
・荷電制御樹脂1 0.1質量部
・離型剤〔べヘン酸ベヘニル〕 10.0質量部
上記材料を、トルエン400質量部に溶解して、溶解液を得た。
リービッヒ還流管を備え付けた四つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
次に上記溶解液100質量部をTK−ホモミキサーで12,000rpmに攪拌しながら、投入し5分間攪拌した。ついでこの混合液を70℃ 5時間保持した。pHは5.1であった。1.0N−NaOH 10.0質量部を加え、pHを8.0にした。つぎに、90℃まで昇温して7.5時間保持した。その後、10%塩酸 4.0質量部とイオン交換水50質量部を加え、pHを5.1にした。イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。次に、容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って重合体スラリーを得た。重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥、風力分級による微粗粉カットをして、トナー粒子17を得た。物性を表3に示した。
「非晶性ポリエステル樹脂(1)の合成」
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 :10mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 :94mol%
・テレフタル酸 :50mol%
・フマル酸 :30mol%
・ドデセニルコハク酸 :25mol%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間で195℃まで上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。
これらモノマーの総質量に対してジステアリン酸スズを0.8質量%投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて250℃まで温度を上げ、250℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。その結果、ガラス転移温度が59.8℃、酸価が14.1mgKOH/g、水酸基価が26.2mgKOH/g、重量平均分子量が15,700、数平均分子量が4,500、軟化点114℃の非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
「非晶性ポリエステル樹脂(2)の合成」
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 :50mol%
(両末端換算2モル付加物)
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 :50mol%
(両末端換算2モル付加物)
・テレフタル酸 :65mol%
・ドデセニルコハク酸 :30mol%
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを投入し、1時間で195℃まで上げて、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。
これらモノマーの総質量に対してジステアリン酸スズを0.7質量%投入した。さらに生成する水を留去しながら195℃から5時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を行った。次いで、温度を190℃まで下げ、無水トリメリット酸の6mol%を徐々に投入し、190℃で1時間反応を継続した。その結果、ガラス転移温度が54.0℃、酸価が12.0mgKOH/g、水酸基価が25.1mgKOH/g、重量平均分子量が51,200、数平均分子量が6,100、軟化点110℃の非晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
「樹脂粒子分散液(1)の調製」
・結晶性樹脂1 :100質量部
・メチルエチルケトン : 50質量部
・イソプロピルアルコール : 20質量部
容器にメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入した。その後、上記樹脂を徐々に投入して、撹拌を行い、完全に溶解させて結晶性樹脂(1)溶解液を得た。この結晶性樹脂(1)溶解液の入った容器を65℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で5質量部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらにエバポレータで減圧して脱溶剤を行い、結晶性樹脂(1)の樹脂粒子分散液(1)を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、140nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「樹脂粒子分散液(2)の調製」
・非晶性ポリエステル樹脂(1) :100質量部
・メチルエチルケトン : 50質量部
・イソプロピルアルコール : 20質量部
容器にメチルエチルケトン、イソプロピルアルコールを投入した。その後、上記材料を徐々に投入して、撹拌を行い、完全に溶解させて非晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液を得た。この非晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液の入った容器を40℃に設定し、撹拌しながら10%アンモニア水溶液を合計で3.5質量部となるように徐々に滴下し、さらにイオン交換水230質量部を10ml/minの速度で徐々に滴下して転相乳化させた。さらに減圧して脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂(1)の樹脂粒子分散液(2)を得た。樹脂粒子の体積平均粒径は、160nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「樹脂粒子分散液(3)の調製」
樹脂粒子分散液(2)の調製において非晶性ポリエステル樹脂(1)を非晶性ポリエス
テル樹脂(2)に変えた以外は同様に実施し、樹脂粒子分散液(3)を得た。この樹脂粒子の体積平均粒径は、160nmであった。また、樹脂粒子固形分量はイオン交換水で調整して20%とした。
「着色剤粒子分散液1の調製」
・銅フタロシアニン(ピグメントブルー15:3) : 45質量部
・荷電制御剤 :0.7質量部
・荷電制御樹脂 :0.7質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製): 5質量部
・イオン交換水 :190質量部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250MPaで20分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が130nmで、固形分量が20%の着色剤粒子分散液1を得た。
「離型剤粒子分散液の調製」
・オレフィンワックス(融点:84℃) : 60質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製):2.0質量部
・イオン交換水 :240質量部
以上を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで115℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径160nm、固形分量20%の離型剤粒子分散液を得た。
「トナー粒子18の作製」
・樹脂粒子分散液(1) :300質量部
・樹脂粒子分散液(2) :150質量部
・樹脂粒子分散液(3) :150質量部
・着色剤粒子分散液1 : 39質量部
・離型剤粒子分散液 : 60質量部
フラスコ中にイオン性界面活性剤ネオゲンRKを2.2質量部加えた後、以上の材料を撹拌した。次いで、1Nの硝酸水溶液を滴下してpH3.7にした後、これにポリ硫酸アルミニウム0.35質量部を加え、IKA製ウルトラタラックスで分散を行った。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら50℃まで加熱し、40分保持した。
その後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して系内のpHを7.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、撹拌を継続しながら徐々に90℃まで加熱し、90℃で5時間保持した。その後、有機ケイ素化合物(メチルトリエトキシシラン)12.0質量部を添加し、7.5時間保持した。その後、イオン性界面活性剤ネオゲンRKを2.0質量部加え、100℃にて蒸留を5時間行った。その後、冷却、濾過、乾燥を行った。40℃のイオン交換水5Lに再分散し、15分間撹拌翼(300rpm)で撹拌し、ろ過を行った。
この再分散とろ過の洗浄を繰り返し、電気伝導度6.0μS/cm以下となったところで、洗浄を終了し、さらに乾燥、風力分級による微粗粉カットを経て、トナー粒子18を得た。トナー粒子18の物性を表3に示した。
トルエン10.0質量部とエタノール5.0質量部と0.5N水酸化ナトリウム水溶液5.0質量部とメチルトリエトキシシラン5.0質量部を、撹拌しながら90℃で5時間反応させた。その後、ろ過し、常温環境で72時間風乾した。これにより、有機ケイ素重合体19を得た。
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた4つ口容器中にイオン交換水700質量部と0.1モル/リットルのNa3PO4水溶液1000質量部と1.0モル/リットルのHCl水溶液24.0質量部を添加し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCa
Cl2水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の材料を用いて、単量体混合物を作製した。
・スチレン 70.0質量部
・n−ブチルアクリレート 30.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.10質量部
次に、この単量体混合物を撹拌しながら60℃まで昇温し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート 16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、上記単量体混合物を水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。次に、容器内を温度90℃に昇温して7.5時間維持した。その後、10%塩酸 4.0質量部をイオン交換水50質量部に加え、pHを5.1にした。次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を5時間行って残存単量体およびトルエンを取り除き、重合体スラリーを得た。30℃に冷却後の重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。更に、ろ別、洗浄、乾燥をしてスチレンアクリル樹脂とした。
・スチレンアクリル樹脂 85.0質量部
・結晶性樹脂1 15.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・有機ケイ素重合体19 10.0質量部
・荷電性制御剤 0.1質量部
(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)
荷電制御樹脂1 0.1質量部
ポリエステル系樹脂(1) 4.0質量部
離型剤〔べヘン酸ベヘニル〕 10.0質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、135℃で二軸混練押出機によって溶融混練を行い、混練物を冷却後、カッターミルで粗粉砕、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて粉砕して、更に風力分級機を用いて分級することによって、重量平均粒径5.5μmのトナー粒子19を得た。得られたトナー粒子の物性を表3に示す。
トナー粒子1 100質量部に対し、BET法による比表面積が200m2/gであり、ヘキサメチルジシラザン4.0質量%、100cpsのシリコーンオイル3質量%で表面を疎水化処理された疎水性シリカ0.4質量部と、BET法による比表面積が50m2/gの酸化チタン0.2質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、トナー1を得た。
トナー1の製造例においてトナー粒子1をトナー粒子2乃至21に変更した以外はトナー1の製造例と同様にしてトナー2乃至21を得た。
トナー1の製造例においてトナー粒子1を比較トナー粒子22乃至27に変更した以外は、トナー粒子1の製造例と同様にして比較トナー1乃至6を得た。
図3のような構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9510Cを改造し、シアンステーションだけでプリント可能とし、さらに毎分35枚出力可能とした。このLBP9510C用トナーカートリッジを用い、トナー1を300g充
填した。そして、そのトナーカートリッジを低温低湿L/L(10℃/15%RH)、常温常湿N/N(25℃/50%RH)、高温高湿H/H(32.5℃/85%RH)の各環境下で24時間放置した。各環境下で24時間放置後にトナーカートリッジをLBP9510Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向で15,000枚までプリントアウトして、初期と15,000枚出力時(耐久後)のカブリ、15,000枚出力時(耐久後)の部材汚染(フィルミング、現像スジ)の評価を行った。
また、上記トナーカートリッジにトナー1を300g充填し、そのトナーカートリッジを過酷環境(40℃/90%RH)で168時間放置した。その後、高温高湿(H/H)に24時間放置してから、1.0%の印字比率の画像を15,000枚までプリントアウトして、初期と15,000枚出力時(耐久後)のカブリ、15,000枚出力時(耐久後)の部材汚染(フィルミング、現像スジ)の評価を行った。
トナーの摩擦帯電量は、以下に示す方法によって求めた。まず、トナーと負帯電極性トナー用標準キャリア(商品名:N−01、日本画像学会製)を以下の環境下でそれぞれ所定時間放置した。
LL環境(10℃/15%RH)では24時間、NN環境(25℃/50%RH)では24時間、HH環境(32.5℃/85%RH)では24時間、あるいは過酷環境(40℃/90%RH)で168時間放置後にHH環境にて24時間放置した。
上記放置後に、トナーの質量が5質量%となるように上記キャリアと混合し、各環境下でターブラミキサを用いて120秒間混合した。次に混合後の現像剤を混合後1分以内に常温常湿(25℃/50%RH)の環境下で、底部に目開き20μmの導電性スクリーンを装着した金属製の容器にいれ、吸引機で吸引し、吸引前後の質量差と、容器に接続されたコンデンサに蓄積された電位とを測定した。この際、吸引圧を2.5kPaとした。前記質量差、蓄電された電位、及びコンデンサの容量から、下記式を用いてトナーの摩擦帯電量を算出した。
測定に使用した負帯電極性トナー用標準キャリア(商品名:N−01、日本画像学会製)は250メッシュを通過したものを使用した。
Q=C×V/(W1−W2)
Q(mC/kg):トナーの摩擦帯電量
C(μF):コンデンサの容量
V(volt):コンデンサに蓄積された電位
W1−W2(kg):吸引前後の質量差
部材汚染は15,000枚印字後に、印刷の前半部分がハーフトーン画像(トナー載り量0.25mg/cm2)で後半部分がベタ画像(トナー載り量0.40mg/cm2)のミックス画像を画だしして、下記基準に従い評価した。
A:現像ローラ上にも、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも排紙方向の縦スジは見られない。実用上全く問題のないレベル。
B:現像ローラの両端に周方向の細いスジが1乃至2本あるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジは見られない。実用上全く問題のないレベル。
C:現像ローラの両端に周方向の細いスジが3乃至5本あるものの、ハーフトーン部、ベタ部の画像上に排紙方向の縦スジがほんの少し見られる。しかし、画像処理で消せるレベルでの実用上問題のないレベル。
D:現像ローラの両端に周方向の細いスジが6乃至20本あり、ハーフトーン部、ベタ部の画像上にも細かいスジが数本見られる。画像処理でも消せない。
E:現像ローラ上とハーフトーン部の画像上に20本以上のスジが見られ、画像処理でも消せない。
キヤノン製レーザービームプリンタLBP9510Cの定着ユニットを定着温度が調整できるように改造した改造定着器を用いた。この改造後のLBP9510Cを用いて、プロセススピ−ド260mm/secで、トナー載り量が0.6mg/cm2の未定着トナー画像を受像紙(坪量90g紙)にオイルレスで加熱加圧し、受像紙に定着画像を形成した。
定着性は、キムワイプ〔S−200(株式会社クレシア)〕用い、75g/cm2の荷重をかけて定着画像を10回こすり、こすり前後の濃度低下率が5%未満になる温度を低温オフセット終了温度とした。評価は、常温常湿(25℃/50%RH)で実施した。本発明においては、低温定着性の目標温度を150℃未満と設定した。
「リフレクトメータ」(東京電色社製)にアンバーフィルターを装着して測定した。初期及び15,000枚印刷後において、全面白地画像(0%の印字比率の画像)をプリントし、その測定値を未使用紙の測定値から差し引いて、カブリ濃度(%)を算出した。3.5%を超えると、使用上問題となるレベルである。
約10gのトナーを100mlガラス瓶にいれ、温度55℃/湿度5.0%RHで15日間放置した後に目視で判定した。A、B、Cが、実使用可能なレベルである。
ランクA:変化なし
ランクB:凝集体があるが、すぐにほぐれる
ランクC:ほぐれにくい
ランクD:流動性なし
ランクE:明白なケーキング
約10gのトナーを100mlガラス瓶にいれ、温度45℃/湿度95%RHで1カ月間放置した後に目視で判定した。A、B、Cが、実使用可能なレベルである。
ランクA:変化なし
ランクB:凝集体があるが、すぐにほぐれる
ランクC:ほぐれにくい
ランクD:流動性なし
ランクE:明白なケーキング
上記結果は、表5および表6に示した。
実施例1のトナー1をトナー2乃至21に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表5および表6に示した。
実施例1のトナー1を比較用トナー1乃至6に変更した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表7および表8に示した。
Claims (7)
- 有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記有機ケイ素重合体は、下記式(1)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子は、前記トナー粒子中に含有される有機ケイ素原子1.0個当たり、下記式(1)で表される部分構造を0.050個以上含有し、
前記トナー粒子は、融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体及び融点を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の少なくとも一方を、1.0質量%以上90.0質量%以下含有し、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキルエステルを構成するアルキル基が炭素数16乃至34の直鎖アルキル基であることを特徴とするトナー。
- トナー粒子の表面のX線光電子分光分析を用いた測定において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0atomic%としたときに、ケイ素原子の濃度dSiが1.0atomic%以上である請求項1に記載のトナー。
- 前記トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割し、前記中心からトナー粒子の表面へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1乃至32)としたときに、前記分割軸上の32箇所の有機ケイ素重合体を含有するトナー粒子の表面層の平均厚みDav.が5.0nm以上である請求項1又は2に記載のトナー。
- 前記トナー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察において、トナー粒子断面の長軸Lと、長軸Lの中心を通りかつ垂直な軸L90の交点を中心にして、トナー粒子断面を均等に16分割し、前記中心からトナー粒子の表面へ向かう分割軸をそれぞれAn(n=1乃至32)としたときに、32本存在する各分割軸上における有機ケイ素重合
体を含有するトナー粒子の表面層の厚みが2.5nm以下である分割軸の数の割合が、20.0%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。 - 前記式(1)におけるR1が、メチル基又はエチル基である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記式(2)におけるR2、R3、及びR4が、アルコキシ基である請求項6に記載のトナー。
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