以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示し、図2に、この車両用空調装置1の電気制御部の構成を示す。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
まず、本実施形態のハイブリッド車両について説明する。本実施形態のハイブリッド車両は、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給された電力を図1のバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停止時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定められた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、図1の発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、図2に示す空調制御装置50とを備えている。
図1に示すように、室内空調ユニット10は、ケーシング11、送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15等を備え、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。そして、室内空調ユニット10は、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14、PTCヒータ15等を収容したものである。
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
したがって、内外気切替ドア23は、ケーシング11内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング11内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング11内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気および外気を共に導入しつつ内気と外気との導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、ブロワモータ121と遠心多翼ファン(シロッコファン)122とを備え、遠心多翼ファン122をブロワモータ121にて駆動する電動の送風装置である。送風機12は、ケーシング11に形成された空気吹出口24〜26から、温度調整された空調空気を吹き出させる。送風機12は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)31、凝縮器32、気液分離器33、および膨張弁34等とともに、冷凍サイクル30を構成している。車両用空調装置1は、圧縮機31、凝縮器32、気液分離器33、および膨張弁34等も備えている。蒸発器13は、冷凍サイクル30において圧縮機31での圧縮後に膨張弁34によって膨張させられた冷媒を蒸発させ、その冷媒と送風空気とを熱交換させることにより送風空気を冷却する。蒸発器13は、エバポレータとも呼ばれる。
圧縮機31は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構31aを電動モータ31bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ31bは、インバータ61(図2参照)から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、空調制御装置50は、図2に示すように、圧縮機31の目標回転数Nctを示す制御信号をインバータ61へ出力し、インバータ61は、その制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機31の冷媒吐出能力が変更される。その一方で、インバータ61は、圧縮機31の消費電力Wcpを示す信号を空調制御装置50へ出力する。
図1に示す凝縮器32は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン35から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。送風ファン35は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器33は、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すものである。膨張弁34は、液冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器13は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるものである。
また、ケーシング11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の送風空気すなわち蒸発器13で冷却された送風空気を加熱する加熱装置としてのヒータコア14およびPTCヒータ15が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。
ヒータコア14は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
具体的には、ヒータコア14とエンジンEGとの間に冷却水流路41が設けられており、ヒータコア14とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための電動ウォータポンプ42が設置されている。電動ウォータポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
また、PTCヒータ15は、PTC素子(正特性サーミスタ素子)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア14通過後の空気を加熱する補助暖房手段としての電気ヒータである。本実施形態のPTCヒータ15は、複数のPTCヒータから構成されている。具体的には、第1PTCヒータ15a、第2PTCヒータ15b、および第3PTCヒータ15cから構成されている。空調制御装置50は、スイッチ切替え等により、通電するPTCヒータ15の本数を変化させ、それによって複数のPTCヒータ15全体としての加熱能力が制御される。
上述したように蒸発器13はケーシング11内を流れる送風空気を冷却する一方で、ヒータコア14およびPTCヒータ15はその送風空気を加熱するので、蒸発器13、ヒータコア14、およびPTCヒータ15は全体として、空気吹出口24〜26から吹き出される空気を調温する加熱冷却装置として機能する。そして、この加熱冷却装置によって調温された空調空気は空気吹出口24〜26から車室内へ吹き出される。
図1中の冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す空気吹出口24〜26が配置されている。この空気吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調空気を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調空気を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス74の内側面74aに向けて空調空気を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回動操作される。この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。このように、フェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26a、および電動アクチュエータ64は、各空気吹出口24、25、26の開口面積をそれぞれ調整する吹出口調整装置を構成している。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモード(フットデフモードとも呼ぶ)がある。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
空調制御装置50の出力側には、送風機12、圧縮機31の電動モータ31b用のインバータ61、室外ファンとしての送風ファン35、内外気切替ドア(内外気切替ドアダンパ)23用の電動アクチュエータ62、吹出口モードドア(吹出口ダンパ)24a、25a、26a用の電動アクチュエータ64、各PTCヒータ15a、15b、15c、および電動ウォータポンプ42等が接続されている。
また、車両用空調装置1は、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリングヒータ66と、車両シートにおいて乗員の臀部および背中に接触するシート表皮から空気を吹き出すシート送風装置68と、運転席に着座している運転者の膝へ向けて輻射熱を発する膝輻射ヒータ70と、電気ヒータで車両シートを加熱するシート暖房装置72とを有している。これらの装置66、68、70、72は、乗員が車室内の空調に対して感じる空調感を補うための空調補助機器(言い換えれば、補助冷暖房装置)として設けられている。そして、これらの空調補助機器66、68、70、72は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、および、圧縮機31の吐出冷媒圧力Pcを検出する冷媒圧力センサである吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)等のセンサ群が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、これらの図2に示すセンサ群の他に、圧縮機31の吐出冷媒温度Tcを検出する吐出温度センサ(吐出温度検出手段)、蒸発器13からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ(蒸発器温度検出手段)、圧縮機31に吸入される冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ、および、エンジンEGから流出したエンジン冷却水の冷却水温度TWを検出する冷却水温度センサ(冷却水温度検出手段)等の不図示のセンサ群も接続されている。
なお、上記蒸発器温度センサは、具体的に蒸発器13の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、その蒸発器温度センサは、蒸発器13のその他の部位の温度を検出してもよいし、蒸発器13を流通する冷媒自体の温度を直接検出してもよい。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60には、各種空調操作スイッチとして、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフ(具体的には圧縮機31のオン・オフ)を切り替えるエアコンスイッチ60a、オートスイッチ60b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する車室内温度設定スイッチ(図示せず)等が設けられている。オートスイッチ60bは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。
また、操作パネル60には、上記の各スイッチに加えて、乗員の体の一部位である申告部位とその申告部位において乗員が感じる体感状態である申告体感状態とから構成された申告が入力される申告入力装置60cも設けられている。その申告入力装置60cは、例えばタッチパネルまたは音声認識装置などの入力装置で構成することができるが、本実施形態では、タッチパネルが申告入力装置60cとして採用されている。
上記申告部位としては例えば人間の手または足などが該当し、上記申告体感状態として例えば「暑い」または「寒い」などの乗員が不快に感じる状態が該当する。従って、その申告部位と申告体感状態とから構成された乗員の申告としては、「足が暑い」、「手が冷たい」などが例示される。本実施形態の申告入力装置60cは、予め設定された複数の選択肢の中から一つの選択肢を乗員が選ぶことにより申告を受け付けるようになっている。具体的には、「足が暑い」、「手が冷たい」、および「足が寒い」の3つの選択肢が予め設定されており、申告入力装置60cは、この3つの選択肢の中から乗員のタッチパネル操作によって選択された選択肢を、乗員からの申告として受け付ける。
また、空調制御装置50は、エンジンEGの作動を制御するエンジンコンピュータであるエンジン制御装置90に電気的に接続されており、空調制御装置50およびエンジン制御装置90は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置90へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。また、空調のためにエンジンEGが作動している場合には、空調制御装置50がエンジンEGの作動要求信号を出力しないことによって、エンジンEGを停止させることができる。
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置90は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。例えば、空調制御装置50のうち、PTCヒータ15の作動と停止との切り替えを制御する構成がPTCヒータ制御手段を構成している。
次に、空調制御装置50による制御を、図3〜図9を用いて説明する。図3は、空調制御装置50の処理の一例を示したフローチャートである。まず、イグニッションスイッチがオンされて、空調制御装置50に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラムが実行される。イグニッションスイッチがオンされた時は、ユーザーの操作によって車両が駐車状態から走行可能な走行状態になった時である。
ステップS1では、空調制御装置50内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容等を初期化(イニシャライズ)し、ステップS2に進む。ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tsetの設定信号、オートスイッチ60bの操作信号等がある。また、申告入力装置60cの操作信号もステップS2において読み込まれる。
次に、ステップS3では、各種センサからのセンサ信号を読込み、ステップS4に進む。なお、ステップS2、S3では、各種データがデータ処理用メモリに読み込みこまれる。センサ信号としては、例えば、内気センサ51が検知する内気温度(車室内温度)Tr、外気センサ52が検知する外気温度Tam、日射センサ53が検知する日射量Ts、蒸発器後温度センサが検知する蒸発器後温度(Te)、および冷却水温センサが検知するエンジン冷却水温Twがある。
ステップS4では、予め記憶している下記の数式F1に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算し、ステップS5に進む。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C …(F1)
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気温度、Tamは外気温度、Tsは日射量である。また、Kset、Kr、KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、この目標吹出温度TAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア19のアクチュエータの制御値および電動ウォータポンプ42の回転数の制御値等を算出する。
ステップS5では、ブロワ電圧を決定する処理を実施する。ブロワ電圧は、ブロワモータ121に印加される電圧であり、ブロワ電圧に応じて吹出風量が変更される。ブロワ電圧決定処理の詳細については後述する。次に、ステップS6では、吸込口モード決定処理を実行し、目標吹出温度TAOに基づき、室内空調ユニット10の内外気切替箱20内に空気を取り込む吸込口を決定し、ステップS7に進む。吸込口モード決定処理の詳細については後述する。
ステップS7では、後述する吹出口モード決定処理を実施し、目標吹出温度TAOに基づき、車室内に空調風を吹き出す吹出口を決定し、ステップS8に進む。
ステップS8では、後述する圧縮機回転数決定処理を実施し、ステップS9に進む。ステップS9では、電気ヒータを構成するPTCヒータ15(単にPTCともいう)の作動本数を決定する処理を行う。例えば、PTCヒータ15の作動本数は、予め設定されたマップに従って決定され、エンジン冷却水温Twが低いほど多くされる。また、ステップS9では、ステアリングヒータ66等の空調補助機器66、68、70、72を作動させるか否かを決定する処理も行う。
次に、ステップS10では、要求水温決定処理を実施し、ステップS11に進む。要求水温決定処理は、エンジン冷却水を暖房および防曇等の熱源にするため、目標吹出温度TAO等に基づきエンジン冷却水の要求水温を決定する。そして、そのエンジン冷却水の要求水温に基づいて、エンジン制御装置90に対してエンジンEGの始動を要求するエンジンオン要求の要否を決定する。
次に、ステップS11では、電動ウォータポンプ作動決定処理を実施し、ステップS12に進む。電動ウォータポンプ作動決定処理は、エンジン冷却水温Tw等に基づいて、電動ウォータポンプ42(図1参照)のオンオフを決定する処理である。電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細については後述する。
次に、ステップS12では目標エバポレータ温度TEOすなわち目標蒸発器温度TEOを決定する。この目標蒸発器温度TEOは蒸発器温度TEの目標温度である。目標蒸発器温度TEOの決定処理の詳細については後述する。
ステップS13では、上記各ステップS4〜S12で算出または決定された各制御状態が得られるように、各種アクチュエータおよびエンジン制御装置90等に対して制御信号を出力する。また、操作パネル60に対して制御信号を出力し、操作パネル60の表示を切り替える。ステップS13の次はステップS14に進む。
ステップS14では、制御周期Tの間待機し、制御周期Tの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期Tを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。次に、空調制御装置50の各ステップの詳細に関して更に詳しく説明する。
まず、ブロワ電圧決定処理(ステップS5)に関して説明する。ステップS5は、具体的には、図4に従って実行される。ブロワ電圧は、電池の電力により駆動されるブロワモータ121に印加される電圧である。図4に示すように、本制御がスタートすると、ステップS501にて風量設定がオート(自動)であるか否かを判定し、オートの場合は、ステップS503へ進み、オートでない場合にはステップS502へ進む。この風量設定がオートであるか否かは、操作パネル60のスイッチ操作に基づいて判定される。
オートの場合、ステップS503にて、目標吹出温度TAOに基づき、ベースとなる仮のブロワレベルf(TAO)dを図4のマップから演算する。エコモードの場合、エコモード以外の時(エコOFFモード時)に比べて低いブロワレベルを出力するようにしている。これにより、ブロワ消費電力が抑制されて省燃費になると共に、冷房時は蒸発器13の温度上昇が遅くなる。また、暖房時はエンジン水温の低下が遅くなるので、圧縮機31の省燃費運転が可能になる。なお、エコモードとは、車両用空調装置1の省エネルギ運転を行う運転モードであり、エコモードのオンオフは、操作パネル60のスイッチ操作により切り替えられる。
次に、ステップS504において、乗員(ユーザー)からの申告が申告入力装置60cへ入力されたか否か、すなわち、乗員からの申告が申告入力装置60cに対してあったか否かを判定する。この申告としては音声が望ましいが、タッチパネル画面に対するタッチ操作での選択でもよく、本実施形態では、タッチ操作によって申告される。
ステップS504にて、乗員からの申告があったと判定した場合にはステップS505へ進み、ステップS504にて、乗員からの申告がないと判定した場合にはステップS506へ進む。
ステップS505において、下記数式F2のように、仮のブロワレベルf(TAO)を、ステップS503にて設定された仮のブロワレベルf(TAO)dに対し10レベル高くした値に設定する。ステップS505の次はステップS507へ進む。
f(TAO)=f(TAO)d+10 …(F2)
この数式F2による仮のブロワレベルf(TAO)の設定により、送風機12の送風量を増加させる。これにより、車両前面窓ガラス74への送風量の低下を緩和することができる。または/及び、車室内の換気量を増大できるので、車両前面窓ガラス74を含む車両窓ガラスの防曇性を確保することができる。
また、後述の図6のステップS706、S712、S718で所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、送風機12の送風量を増加させることになるので、乗員が申告入力装置60cに対して申告した申告部位の温感向上を短時間で行うことが可能である。
また、ステップS505における送風量の増加は、後述のステップS701がステップS504と同様の判定ステップであることから判るように、後述のステップS706、S712、S718において所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させることと共に行われる。
ステップS506では、下記数式F3のように、仮のブロワレベルf(TAO)を、ステップS503にて設定された仮のブロワレベルf(TAO)dと同じ値に設定する。ステップS506の次はステップS510へ進む。
f(TAO)=f(TAO)d …(F3)
ステップS507では、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dと同じ値から10レベル高い値に設定変更した時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、上記10レベル高い値に設定することを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、申告入力装置60cに対する乗員の申告に含まれる申告部位の快適性がその申告に含まれる申告体感状態よりも向上したと推定される時間として予め実験的に設定されており、本実施形態では2分間に設定されている。
ステップS507にて、上記所定時間が経過したと判定した場合には、ステップS508にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS504では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、仮のブロワレベルf(TAO)が上記数式F3により決定されることになる。要するに、ステップS508では、送風機12の送風量を、乗員からの申告が為される前に戻す。ステップS508の次はステップS510へ進む。
一方、ステップS507にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS509へ進み、ステップS509では、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dに対し10レベル高くした値のまま継続する。このように、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dに対し10レベル高い値にした状態は上記所定時間継続されるだけであるので、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ又は冷やしすぎを防止することができる。ステップS509の次はステップS510へ進む。
ステップS510において、ヒータコア14の水温およびPTCヒータ15のPTC作動本数に応じてウオームアップ風量f(Tw)を算出する。ステップS510の次はステップS511へ進む。
ステップS511では、吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)、バイレベルモードでの吹出口からの吹出状態(B/L)、およびフットデフモードでの吹出口からの吹出状態(F/D)のいずれかであるか否かを判定する。
上記吹出口のいずれかであり、YESと判定された時は、ステップS512へ進む。このステップS512では、上記f(TAO)の値とf(Tw)の値との何れか小さい方をブロワレベルとして選択する。続くステップS513では、ステップS512で選択されたブロワレベルを図4のマップを用いてブロワ電圧に変換する。
ステップS511でNOと判定された時は、つまり、例えばフェイス(FACE)吹出口のみから吹出されているような場合は、ステップS514に進み、ブロワレベルとして上記f(TAO)を選択する。次のステップS515では、選択されたブロワレベルf(TAO)をマップにてブロワ電圧に変換する。
なお、ステップS501において、風量設定がオート(自動)でなくマニュアル操作されていると判定した場合にはステップS502へ進む。そのステップS502では、4ボルトから12ボルトの範囲内でマップからブロワ電圧を指定し、その指定したブロワ電圧をブロワモータ121に印加する。
次に、吸込口モード決定処理(図3のステップS6)に関して説明する。図3のステップS6は、具体的には、図5にしたがって実行される。図5に示すように、ステップS601にて吸込口制御がオートか否かを判定する。この吸込口制御がオートであるか否かは、操作パネル60のスイッチ操作に基づいて判定される。オートの場合、ステップS603にて、目標吹出温度TAOに応じた内外気切換制御を行う。オートではなくマニュアルの場合、ステップS602において、マニュアル設定に応じた内外気切換制御を行う。つまり、内気モード(REC)の時は、外気導入率を0%とする。また、外気モード(FRS)の時は、外気導入率を100%に設定する。
次に、吹出口モード決定処理(ステップS7)に関して説明する。図3のステップS7は、具体的には、図6にしたがって実行される。図6のステップS701では、上述のステップS504と同様に、申告入力装置60cに対し乗員(ユーザー)からの申告があったか否かを判定する。この申告は、乗員からの暑い部位または寒い部位の申告であり、具体的には、「足が暑い」、「手が冷たい」、および「足が寒い」の3つの選択肢の中から乗員により選択されるものである。
ステップS701において、申告が無かったと判定した場合には、ステップS702へ進む。ステップS702では、目標吹出温度TAOに基づき図6のマップから、フェイス(FACE)、バイレベル(B/L)、フット(FOOT)のいずれかに吹出口モードを決定する。なお、各センサからの検出信号に基づき車両窓ガラスの窓曇りの可能性があると判断した場合には、フットデフ(F/D)に吹出口モードを決定する。例えば、外気温Tamが極めて低い寒冷地での走行中に暖房されるときには、車両窓ガラスの窓曇りの可能性があると判断される。
その一方で、ステップS701において、申告があったと判定した場合には、ステップS703へ進む。
ステップS703では、乗員からの申告を構成する申告部位(例えば手または足)および申告体感状態(例えば暑いまたは寒い)について判定する。具体的には、ステップS703において、乗員からの申告が「足が暑い」というものであると判定した場合には、ステップS704へ進む。また、乗員からの申告が「手が冷たい」というものであると判定した場合には、ステップS710へ進む。また、乗員からの申告が「足が寒い」というものであると判定した場合には、ステップS716へ進む。
ステップS704では、上記申告が為される前の吹出口がフェイスモードでの吹出口からの吹出状態(FACE)であるか否か、要するに、申告前の吹出口モードがフェイスモード(FACE)であるか否かを判定する。この判定される吹出口は、ステップS702で決定されるものであるので、例えば後述のステップS706にて吹出口が変更されてもステップS704の判定には影響しない。
ステップS704において、申告前の吹出口がフェイスモードでの吹出口からの吹出状態(FACE)ではないと判定した場合にはステップS705へ進む。ステップS705では、吹出口を申告前と同じにする。すなわち、吹出口を申告前に対して変更しない。
また、ステップS704において、申告前の吹出口がフェイスモードでの吹出口からの吹出状態(FACE)であると判定した場合にはステップS706へ進む。このとき、申告前の吹出口は上記吹出状態(FACE)であるので、ステップS702で用いられる図6のマップから判るように、室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ている空気は、目標吹出温度TAOに従って冷風となっている。
すなわち、ステップS704でFACEと判定された場合には、乗員からの申告「足が暑い」に含まれる申告部位「足」の体感状態を申告体感状態「暑い」とは反対の体感状態(例えば涼しい又は寒い)へ近づけることが可能な温度の送風空気(冷風)が吹出口24、25、26の少なくとも何れかから吹き出ている。なお、その申告部位の体感状態を申告体感状態とは反対の体感状態へ近づけることが可能な温度の送風空気とは、その申告体感状態が「暑い」または「熱い」であれば、車室内温度Trよりも低い温度の送風空気すなわち冷風のことである。逆に、その申告体感状態が「寒い」または「冷たい」であれば、車室内温度Trよりも高い温度の送風空気すなわち温風のことである。
ステップS706では、電動アクチュエータ64を作動させることにより、空調された送風空気の吹出口をバイレベルモードでの吹出口からの吹出状態(B/L)とする。
ここで、乗員が申告した申告部位は「足」であるので、フット吹出口25は、複数の空気吹出口24、25、26のうち申告部位の最も近くへ送風空気を吹き出す所定空気吹出口、言い換えれば、その申告部位へ向けて送風空気を吹き出す所定空気吹出口に該当する。そして、ステップS706において吹出口が上記FACEから上記B/Lに変更されることで、上記フット吹出口25の吹出風量割合が増加する。
なお、上記吹出風量割合は、フット吹出口25を例とすれば、フット吹出口25の全開時における全開風量に対する、フット吹出口25から吹き出す風量の割合であると定義される。また、上記の所定空気吹出口と申告部位との関係は、例えば、申告を行う乗員がステアリングを握って運転席に着座している運転者であるとして定められるものである。
このようにステップS706の実行により、申告部位である足へ空調風(冷風)が供給され、足の暑さが解消すると共に、フェイス吹出口24からの吹出風量も確保されるので、上半身が暑くなりすぎることもない。ステップS706の次はステップS707へ進む。
ステップS707では、吹出口を上記FACEから上記B/LへステップS706にて切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS706の実行により吹出口を上記B/Lとすることを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS707にて、上記所定時間が経過したと判定した場合には、ステップS708にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS701では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、吹出口はステップS702で決定されるものに復帰する。要するに、ステップS708では、吹出口からの吹出状態を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS707にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS709へ進み、ステップS709では、ステップS706で決定したままの吹出口(B/L)を継続する。これらステップS707、S708、S709により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS710では、乗員からの申告が為される前の吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)であるか否か、要するに、申告前の吹出口モードがフットモード(FOOT)であるか否かを判定する。
ステップS710において、申告前の吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)ではないと判定した場合にはステップS711へ進む。ステップS711では、吹出口を申告前と同じにする。すなわち、吹出口を申告前に対して変更しない。
また、ステップS710において、申告前の吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)であると判定した場合にはステップS712へ進む。このとき、申告前の吹出口は上記吹出状態(FOOT)であるので、ステップS702で用いられる図6のマップから判るように、室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ている空気は、目標吹出温度TAOに従って温風となっている。すなわち、ステップS710でFOOTと判定された場合には、乗員からの申告「手が冷たい」に含まれる申告部位「手」の体感状態を申告体感状態「冷たい」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は熱い)へ近づけることが可能な温度の送風空気(温風)が吹出口24、25、26の少なくとも何れかから吹き出ている。
ステップS712では、上述のステップS706と同様に、電動アクチュエータ64を作動させることにより、空調された送風空気の吹出口をバイレベルモードでの吹出口からの吹出状態(B/L)とする。
ここで、乗員が申告した申告部位は「手」であるので、フェイス吹出口24が上述の所定空気吹出口に該当する。そして、ステップS712において吹出口が上記FOOTから上記B/Lに変更されることで、上記フェイス吹出口24の吹出風量割合が増加する。
このようにステップS712の実行により、申告部位である手へ空調風(温風)が供給され、手の冷たさが解消すると共に、フット吹出口25からの吹出風量も確保されるので、下半身が寒くなりすぎることもない。ステップS712の次はステップS713へ進む。
ステップS713では、吹出口を上記FOOTから上記B/LへステップS712にて切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS712の実行により吹出口を上記B/Lとすることを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS713にて、上記所定時間が経過したと判定した場合には、上述のステップS708と同様に、ステップS714にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。その一方で、ステップS713にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS715へ進み、ステップS715では、ステップS712で決定したままの吹出口(B/L)を継続する。これらステップS713、S714、S715により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS716では、乗員からの申告が為される前の吹出口がフットデフモードでの吹出口からの吹出状態(F/D)であるか否か、要するに、申告前の吹出口モードがフットデフモード(F/D)であるか否かを判定する。
ステップS716において、申告前の吹出口がフットデフモードでの吹出口からの吹出状態(F/D)ではないと判定した場合にはステップS717へ進む。ステップS717では、吹出口を申告前と同じにする。すなわち、吹出口を申告前に対して変更しない。
また、ステップS716において、申告前の吹出口がフットデフモードでの吹出口からの吹出状態(F/D)であると判定した場合にはステップS718へ進む。このとき、申告前の吹出口は上記吹出状態(F/D)であるので、ステップS702で吹出口モードを決定する条件から判るように、室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ている空気は温風となっている。すなわち、ステップS716でF/Dと判定された場合には、乗員からの申告「足が寒い」に含まれる申告部位「足」の体感状態を申告体感状態「寒い」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は暑い)へ近づけることが可能な温度の送風空気(温風)が吹出口24、25、26の少なくとも何れかから吹き出ている。
ステップS718では、電動アクチュエータ64を作動させることにより、空調された送風空気の吹出口をフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)とする。
ここで、乗員が申告した申告部位は「足」であるので、フット吹出口25が上述の所定空気吹出口に該当する。そして、ステップS718において吹出口が上記F/Dから上記FOOTに変更されることで、上記フット吹出口25の吹出風量割合が増加する。
このようにステップS718の実行により、申告部位である足への空調風(温風)が増加し、足の寒さが解消する。それと共に、フットモードではデフロスタ吹出口26の吹出風量も確保されるので、車両前面窓ガラス74の防曇性が悪化しすぎることもない。ステップS718の次はステップS719へ進む。
ステップS719では、吹出口を上記F/Dから上記FOOTへステップS718にて切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS718の実行により吹出口を上記FOOTとすることを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS719にて、上記所定時間が経過したと判定した場合には、上述のステップS708と同様に、ステップS720にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。すなわち、このステップS720、上述のステップS708、およびステップS714の何れかのステップと上述のステップS508とを共に実行することで、吹出口モードおよび送風機12の送風量等で構成される室内空調ユニット10の空調状態を、申告入力装置60cへ申告が入力されたと判定される前の状態に戻す。
その一方で、ステップS719にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS721へ進み、ステップS721では、ステップS718で決定したままの吹出口(FOOT)を継続する。これらステップS719、S720、S721により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
図4および図6のフローチャートについて上述したように、本実施形態の空調制御では、上記の所定空気吹出口の吹出風量割合を乗員(ユーザー)が直接指定することなく、乗員が申告した申告部位の体感状態の快適性が向上するように所定空気吹出口の吹出風量割合が自動的に増加させられる。従って、乗員が車両用空調装置1の空調の仕組みを理解する必要がなく、車両用空調装置1を操作する操作性が向上する。それと共に、上記申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎと、車両前面窓ガラス74の内曇り及び外曇りを防止することができる。そして、後席の暑さ及び寒さを抑えることが可能である。
また、ステアリングヒータ66によるステアリング暖め等を行えば、走行の安全性が向上する。また、送風機12の送風量を増加させることで、車両前面窓ガラス74への送風量の低下を緩和でき、または/及び、車室内の換気量を増大できるので、車両窓ガラスの防曇性を確保することができる。更に、乗員が申告入力装置60cに対して申告した申告部位の温感向上を短時間で行うことが可能である。
次に、圧縮機回転数決定処理(ステップS8)に関して説明する。ステップS8は、具体的には、図7にしたがって実行される。図7に示すように、まず、ステップS801では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_cを求める。図7のステップS801には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、前回のステップS12(図3参照)で決定した目標蒸発器温度TEOと蒸発器温度TEとの偏差En(En=TEO−TE)と、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率EDOT(EDOT=En−(En−1))とに基づいて蒸発器13の着霜が防止されるようにΔf_cが決定される。
続くステップS802では、車両用空調装置1の作動モードがエコモードであるか否かを判定する。具体的には、操作パネル60に設けられたエコノミースイッチがオンに操作されている場合には、作動モードがエコモードであると判定する。逆に、エコノミースイッチがオフに操作されている場合には、作動モードがエコモードではないと判定する。
車両用空調装置1の作動モードがエコモードであると判定した場合、ステップS804にて、MAX回転数を7000rpmに決定してステップS805へ進む。一方、車両用空調装置1の作動モードがエコモードでないと判定した場合、ステップS803にて、MAX回転数を10000rpmに決定してステップS805へ進む。なお、MAX回転数は、圧縮機回転数の上限値である。
続くステップS805では、空調使用許可電力から圧縮機消費電力(電動コンプレッサ消費電力とも呼ぶ)を減算した値、すなわち「空調使用許可電力−圧縮機消費電力」の値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された図7の制御マップを参照して、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を決定する。
空調使用許可電力は、「車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力」であり、不図示の電力制御装置から空調制御装置50へ出力される。その電力制御装置は、空調制御装置50と互いに通信可能接続されており、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う。
本実施形態では、空調使用許可電力は次のように算出される。まず、仮の空調使用許可電力と空調使用可能電力とが算出され、仮の空調使用許可電力および空調使用可能電力のうち小さい方の値が空調使用許可電力とされる。
仮の空調使用許可電力は次のように算出される。エコモードでなく且つバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っていない場合、仮の空調使用許可電力が8000Wと決定される。エコモードである場合、またはバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っている場合、仮の空調使用許可電力が4000Wと決定される。
空調使用可能電力は、次の数式F4により算出される。
空調使用可能電力=最大供給電力−空調以外の消費電力 …(F4)
最大供給電力は、バッテリ81が供給できる最大の電力のことであり、空調以外の消費電力は、空調以外の用途で消費される電力のことである。
ステップS805では、具体的には、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を次のように決定する。図7のステップS805に示すように、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極小域(本実施形態では、−1000W以下)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が負の値(本実施形態では、−300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極大域(本実施形態では、1000W以上)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が正の値(本実施形態では、+300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の中間域(本実施形態では、−1000W以上、1000W以下)では、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の上昇に応じて回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を増加させる。
続くステップS806では、圧縮機31の回転数変化量Δfを次の数式F5により算出して、ステップS807へ進む。
Δf=MIN(Δf_c、f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)) …(F5)
なお、数式F5のMIN(Δf_c、f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))とは、Δf_cとf(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)とのうち小さい方の値を意味している。
続くステップS807では、今回の圧縮機回転数(コンプレッサ回転数)を次の数式F6により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf)、MAX回転数}…(F6)
なお、数式F6のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf)、MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfとMAX回転数とのうち小さい方の値を意味している。
これにより、エコモード時や圧縮機消費電力が大きい場合、すなわち空調用電力を減少させる必要がある場合に、圧縮機31の冷媒吐出能力を低下させて圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。
次に、電動ウォータポンプ作動決定処理(図3のステップS11)に関して説明する。ステップS11は、具体的には、図8に従って実行される。図8に示すように、本制御がスタートすると、ステップS1101にて、冷却水温センサによって検出されるエンジン冷却水温(水温)Twが蒸発器温度TEより高いか否かを判定する。エンジン冷却水温Twが、蒸発器温度TE以下であると判定されると、ステップS1102で電動ウォータポンプ42をオフする要求すなわち電動ウォータポンプOFF要求を決定し、本制御を終了する。
ステップS1101にて、冷却水温センサによって検出される冷却水温Twが比較的低く、エンジン冷却水温Twが蒸発器温度TE以下であると判定されると、エンジン冷却水をヒータコア14に流した時、かえって吹出温度を低くしてしまうため、ステップS1102で電動ウォータポンプ42をオフするのである。
ステップS1101でエンジン冷却水温Twが、蒸発器後温度TEよりも高いと判定すると、ステップS1103にて、図1の送風機(ブロワ)12をオン(運転)した状態であるか否かを判定する。送風機12をオンしていない状態であれば、ステップS1102に進み、電動ウォータポンプOFF要求を決定し、本制御を終了する。送風機12をオンした状態であれば、ステップS1104に進み、電動ウォータポンプ42をオンする要求すなわち電動ウォータポンプON要求を決定し、本制御を終了する。
つまり、エンジン冷却水温Twが比較的高い時に送風機12がオフ(停止)の時は、省燃費のため、電動ウォータポンプ42をオフする。一方、ブロワオンの時は、電動ウォータポンプON要求を行う。これにより、エンジンオフの時でも、エンジン冷却水が持っている熱量を空調に利用することができる。従って、吹出温度が上がり、吹出温度を目標吹出温度TAOに近づけることができるので、エンジンオフの状態でも室温が下がるのを緩和できる。
次に、目標蒸発器温度TEOの決定処理(図3のステップS12)に関して説明する。ステップS12は、具体的には、図9に従って実行される。図9に示すように、本制御がスタートすると、ステップS1201において、ステップS4(図3参照)で決定した目標吹出温度TAOに基づき、図9に示す制御マップを参照して、f(TAO)の値を決定する。このf(TAO)の値はそのまま目標蒸発器温度TEOとされる。この図9の制御マップは、空調制御装置50に予め記憶されている。
具体的に、図9の制御マップに示すように、目標吹出温度TAOの極低温域では、目標蒸発器温度TEO(TEO=f(TAO))を低温にする。目標吹出温度TAOの極高温域では、目標蒸発器温度TEOを高温にする。目標吹出温度TAOの中間温度域では、目標吹出温度TAOの上昇に応じて目標蒸発器温度TEOを上昇させる。なお、図9の制御マップは、目標蒸発器温度TEOが、蒸発器13に流入する空気の露点温度以下の温度となるように設定されている。
なお、上述した図3〜9の各ステップでの処理は、それぞれの機能を実現する手段を構成している。後述する図11〜15のフローチャートでも同様である。また、図6のステップS701は本発明の入力判定手段に対応し、ステップS706、S712、S718は本発明の吹出口制御手段に対応し、図4のステップS505は本発明の送風制御手段に対応し、図4のステップS508、及び図6のステップS708、S714、S720は本発明の復帰手段に対応する。
本実施形態によれば、空調制御装置50は、図6のステップS706、S712、S718にて記所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させた時から所定時間が経過した場合には、室内空調ユニット10の空調状態を、乗員からの申告が入力されたと判定する前の状態に戻す(ステップS508、S708、S714、S720)。従って、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ又は冷やしすぎを防止することができる。そして、乗員からの申告に応じた空調制御である対応制御を短時間にすることで燃費の悪化を防止することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。後述の第3実施形態以降でも同様である。
図10は、本実施形態における車両用空調装置1の全体構成を示した図であり、図1に相当する図である。本実施形態では、車両用空調装置1を、内燃機関を有さず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車に適用している。そのため、図1に示すように、エンジンEG(図1参照)等に替えて、水加熱ヒータ82が設けられている。その水加熱ヒータ82は、不図示の電源から電力供給を受けて、ヒータコア14を循環する熱媒体を加熱する。その熱媒体は、第1実施形態のエンジン冷却水に相当する液体である。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、第1実施形態とは異なり、電動アクチュエータ64は、デフロスタドア26aと機械的に連結されていない。すなわち、電動アクチュエータ64は、フェイスドア24aおよびフットドア25aと機械的に連結されており、それらのドア24a、25aを開閉作動させる。そのため、車両用空調装置1は、電動アクチュエータ64とは別の電動アクチュエータ65を備えている。その電動アクチュエータ65は、デフロスタドア26aと機械的に連結されており、空調制御装置50から出力される制御信号に従ってデフロスタドア26aを開閉作動させる。従って、デフロスタドア26aは、フェイスドア24aおよびフットドア25aに対して別個に開閉作動させられる。
図11は、本実施形態における吹出口モード決定処理を示すフローチャートであり、第1実施形態の図6に相当する図である。本実施形態では、図6のステップS712が図11のステップS712−1に置き換わり、図6のステップS718が図11のステップS718−1に置き換わっている。これら以外のステップにおいては、図11は図6と同じである。
図11のステップS712−1では、電動アクチュエータ64、65を作動させることにより、空調された送風空気の吹出口をバイレベルモードでの吹出口からの吹出状態(B/L)とし、それと共に、デフロスタ吹出口26の開口割合を30%とする。その開口割合とは、空気吹出口の全開時に対する開口面積の割合である。このステップS712−1でも、第1実施形態のステップS712と同様に、フェイス吹出口24の吹出風量割合が増加する。
このようにステップS712−1の実行により、前述の第1実施形態と同様に、申告部位である手へ空調風(温風)が供給され、手の冷たさが解消すると共に、フット吹出口25からの吹出風量も確保されるので、下半身が寒くなりすぎることもない。また、デフロスタ吹出口26の開口割合を30%とするので、デフロスタ吹出口26の吹出風量割合が増加し、車両前面窓ガラス74への送風量の低下を緩和して防曇性を確保できる。ステップS712−1の次はステップS713へ進む。
図11のステップS718−1では、電動アクチュエータ64、65を作動させることにより、空調された送風空気の吹出口をフットモードでの吹出口からの吹出状態(FOOT)とし、それと共に、デフロスタ吹出口26の開口割合を40%とする。ステップS718−1の次はステップS719へ進む。
ここで、デフロスタ吹出口26の開口割合を40%とすることにより、デフロスタ吹出口26の吹出風量は、吹出口がF/DからFOOTに変更されても低下せずに維持されるので、車両前面窓ガラス74の防曇性が悪化しすぎることはない。
また、フェイス吹出口24からの送風空気は、車室前面の中央で開口したセンターフェイス吹出口と、車室前面の側方で開口したサイドフェイス吹出口とに分かれて車室内へ吹き出し、F/Dではサイドフェイス吹出口から少量の送風空気が吹き出している。ステップS718−1では、吹出口がF/DからFOOTに変更されると、サイドフェイス吹出口の吹出風量割合が減少すると共に、フット吹出口25の吹出風量割合が増加する。そのため、申告部位である足への空調風(温風)が増加し、足の寒さが解消する。
すなわち、空調制御装置50は、図11のフローチャートを実行することにより、申告が入力されたと判定する前と比較して、デフロスタ吹出口26から吹き出される吹出風量が低下しないように、上記所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させるので、車両前面窓ガラス74の防曇性を悪化させないように、申告部位の暑さまたは寒さの解消を図ることが可能である。また、前述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、図11のステップS712−1、S718―1は本発明の吹出口制御手段に対応する。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図12は、本実施形態において、図3のステップS4で目標吹出温度TAOを決定する処理すなわち目標吹出温度TAOの決定処理を示すフローチャートである。前述の第1実施形態では、目標吹出温度TAOは、上記数式F1から算出されるが、本実施形態では、図12のフローチャートの実行により目標吹出温度TAOが算出される。すなわち、図3のステップS4は、具体的には、図12のフローチャートにしたがって実行される。
図12のステップS401では、前述の図6のステップS701と同様に、申告入力装置60cに対し乗員(ユーザー)からの申告があったか否かを判定する。この申告の選択肢は、前述の第1実施形態と同じである。
ステップS401において、申告が無かったと判定した場合には、ステップS402へ進む。ステップS402では、予め記憶している下記の数式F7に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算する。
TAO=7×Tset−3×Tr
−1.1×Tam−1.5×Ts/60−45 …(F7)
上記数式F7は、上記数式F1に含まれる定数に具体的な数値を当て嵌めたものである。上記数式F7において、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度(単位は℃)、Trは内気温度すなわち室温(単位は℃)、Tamは外気温度(単位は℃)、Tsは日射量(単位はW/m2)である。この各パラメータの定義については、後述の数式F8、F9でも同じである。
上記のように目標吹出温度TAOを決定すると、この目標吹出温度TAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア19のアクチュエータの制御値および電動ウォータポンプ42の回転数の制御値等を算出する。この制御値等の算出については、後述のステップS404、S408、S412でも同様である。
一方、ステップS401において、申告があったと判定した場合には、ステップS403へ進む。
ステップS403では、前述の図6のステップS703と同様に、乗員からの申告を構成する申告部位および申告体感状態について判定する。
具体的には、ステップS403において、乗員からの申告が「足が暑い」というものであると判定した場合には、ステップS404へ進む。また、乗員からの申告が「手が冷たい」というものであると判定した場合には、ステップS408へ進む。また、乗員からの申告が「足が寒い」というものであると判定した場合には、ステップS412へ進む。
ステップS404では、予め記憶している下記の数式F8に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算する。すなわち、下記の数式F8から判るように、上記数式F7により決定される基準としての目標吹出温度TAOに対して−15℃の補正を行う。これにより、吹き出される送風空気の温度が下がり冷風が供給され、ステップS706(図6参照)での送風空気の吹出口切替えとの相乗効果により、申告部位である足の暑さが解消する。これと共に、フェイス吹出口24から吹き出される空気の吹出温度も下がるので、乗員の上半身が暑くなりすぎることもない。ステップS404の次はステップS405へ進む。
TAO=7×Tset−3×Tr
−1.1×Tam−1.5×Ts/60−45−15 …(F8)
ここで、ステップS404は、「足が暑い」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「足が暑い」という申告が為された場合には図6のステップS706も実行される。また、ステップS706は、冷風が室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ているときに実行される。すなわち、ステップS706は、申告部位「足」の体感状態を申告体感状態「暑い」とは反対の体感状態(例えば寒い又は涼しい)へ近づけるものであり、ステップS706の実行は、その申告部位を冷やすことである。
従って、申告部位の体感状態を申告体感状態とは反対の体感状態へ近づけることがその申告部位を冷やすことである場合において、ステップS706で上述の所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図12のステップS404では、「足が暑い」という申告が為される前と比較して、室内空調ユニット10から吹き出される空気の吹出温度を低くする。
ステップS405では、目標吹出温度TAOに対し上記−15℃の補正を行った時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS404の実行による目標吹出温度TAOの−15℃の補正を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS405にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS406へ進み、ステップS406にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS401では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、目標吹出温度TAOは上記数式F7により算出されるものに復帰する。要するに、ステップS406では、吹出口24、25、26から吹き出される空気の吹出温度を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS405にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS407へ進み、ステップS407では、ステップS404で決定したままの目標吹出温度TAOを継続する。これらステップS405、S406、S407により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS408では、予め記憶している下記の数式F9に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算する。すなわち、下記の数式F9から判るように、上記数式F7により決定される基準としての目標吹出温度TAOに対して+15℃の補正を行う。これにより、吹き出される送風空気の温度が上がり温風が供給され、ステップS712(図6参照)での送風空気の吹出口切替えとの相乗効果により、申告部位である手の冷たさが解消する。これと共に、フット吹出口25から吹き出される空気の吹出温度も上がるので、乗員の下半身が寒くなりすぎることもない。ステップS408の次はステップS409へ進む。
TAO=7×Tset−3×Tr
−1.1×Tam−1.5×Ts/60−45+15 …(F9)
ここで、ステップS408は、「手が冷たい」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「手が冷たい」という申告が為された場合には図6のステップS712も実行される。また、ステップS712は、温風が室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ているときに実行される。すなわち、ステップS712は、申告部位「手」の体感状態を申告体感状態「冷たい」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は熱い)へ近づけるものであり、ステップS712の実行は、その申告部位を暖めることである。
従って、申告部位の体感状態を申告体感状態とは反対の体感状態へ近づけることがその申告部位を暖めることである場合において、ステップS712で上述の所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図12のステップS408では、「手が冷たい」という申告が為される前と比較して、室内空調ユニット10から吹き出される空気の吹出温度を高くする。
ステップS409では、目標吹出温度TAOに対し上記+15℃の補正を行った時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS408の実行による目標吹出温度TAOの+15℃の補正を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS409にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS410へ進み、ステップS410にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS401では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、目標吹出温度TAOは上記数式F7により算出されるものに復帰する。要するに、ステップS409では、吹出口24、25、26から吹き出される空気の吹出温度を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS409にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS411へ進み、ステップS411では、ステップS408で決定したままの目標吹出温度TAOを継続する。これらステップS409、S410、S411により、これにより、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS412では、上記のステップS408と同様に、上記数式F9に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算する。これにより、吹き出される送風空気の温度が上がり温風が供給され、ステップS718(図6参照)での送風空気の吹出口切替えとの相乗効果により、申告部位である足の寒さが解消する。これと共に、デフロスタ吹出口26から吹き出される空気の吹出温度も上がるので、車両前面窓ガラス74の防曇性が悪化しすぎることもない。ステップS412の次はステップS413へ進む。
ここで、ステップS412は、「足が寒い」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「足が寒い」という申告が為された場合には図6のステップS718も実行される。また、ステップS718は、温風が室内空調ユニット10から車室内へ吹き出ているときに実行される。すなわち、ステップS718は、申告部位「足」の体感状態を申告体感状態「寒い」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は暑い)へ近づけるものであり、ステップS718の実行は、その申告部位を暖めることである。
従って、申告部位の体感状態を申告体感状態とは反対の体感状態へ近づけることがその申告部位を暖めることである場合において、ステップS718で上述の所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図12のステップS412では、「足が寒い」という申告が為される前と比較して、室内空調ユニット10から吹き出される空気の吹出温度を高くする。
ステップS413は、上述のステップS409と同様である。すなわち、ステップS413では、ステップS412の実行による目標吹出温度TAOの+15℃の補正を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS413にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS414へ進み、ステップS414にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS401では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、目標吹出温度TAOは上記数式F7により算出されるものに復帰する。
一方、ステップS413にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS415へ進み、ステップS415では、ステップS412で決定したままの目標吹出温度TAOを継続する。これらステップS413、S414、S415により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。なお、図12のステップS404、S408、S412は本発明の空調温度制御手段に対応し、ステップS406、S410、S414は本発明の復帰手段に対応する。
本実施形態でも、上述の第1実施形態と同様に、乗員が車両用空調装置1の空調の仕組みを理解する必要がなく、車両用空調装置1を操作する操作性が向上する。それと共に、上記申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎと、車両前面窓ガラス74の内曇り及び外曇りを防止することができる。そして、後席の暑さ及び寒さを抑えることが可能である。また、ステアリングヒータ66によるステアリング暖め等を行えば、走行の安全性が向上する。また、デフロスタ吹出口26の吹出温度が高められるので、車両前面窓ガラス74の温度を上昇させ、その車両前面窓ガラス74の防曇性を確保できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図13は、本実施形態において、図3のステップS12で行われる目標蒸発器温度TEOの決定処理を示すフローチャートである。従って、本実施形態では、ステップS12は、図9に替えて、図13のフローチャートに従って実行される。本実施形態は、この点において前述の第1実施形態と異なる。
図13のステップS1202では、前述の図6のステップS701と同様に、申告入力装置60cに対し乗員(ユーザー)からの申告があったか否かを判定する。この申告の選択肢は、前述の第1実施形態と同じである。
ステップS1202において、申告が無かったと判定した場合には、ステップS1201へ進む。図13のステップS1201は、図9のステップS1201と同じである。
一方、図13のステップS1202において、申告があったと判定した場合には、ステップS1203へ進む。
ステップS1203では、前述の図6のステップS703と同様に、乗員からの申告を構成する申告部位および申告体感状態について判定する。
具体的には、ステップS1203において、乗員からの申告が「足が暑い」というものであると判定した場合には、ステップS1204へ進む。また、乗員からの申告が「手が冷たい」というものであると判定した場合には、ステップS1208へ進む。また、乗員からの申告が「足が寒い」というものであると判定した場合には、ステップS1212へ進む。
ステップS1204では、図13の目標蒸発器温度TEOを決定するためのマップから判るように、目標蒸発器温度TEOを、目標蒸発器温度TEOの変化範囲のうちの最低温度に決定する。その最低温度は、2℃とされている。
これにより、吹き出される送風空気の温度が下がり冷風が供給され、ステップS706(図6参照)での送風空気の吹出口切替えとの相乗効果により、申告部位である足の暑さが解消する。これと共に、フェイス吹出口24から吹き出される空気の吹出温度も下がるので、乗員の上半身が暑くなりすぎることもない。ステップS1204の次はステップS1205へ進む。
ここで、ステップS1204は、「足が暑い」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「足が暑い」という申告が為された場合には図6のステップS706も実行される。そして、ステップS706が実行されると、上述したように所定空気吹出口に該当するフット吹出口25の吹出風量割合が増加する。
従って、ステップS706において所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図13のステップS1204において、「足が暑い」という申告が為される前と比較して圧縮機31の稼働率を上げる。なお、圧縮機31の稼働率とは、圧縮機31の上限出力に対する圧縮機31の出力の比率である。また、圧縮機31は間欠的に所定の出力で駆動してもよく、その場合においては、圧縮機31の稼働率は、ある有限時間内における圧縮機31の延べ駆動時間の上記有限時間に対する比率とされる。この圧縮機31の稼働率は、目標蒸発器温度TEOが低く設定されるほど、蒸発器13に流入する冷媒を冷やすために上昇させられる。
ステップS1205では、目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定した時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS1204で目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定したことを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS1205にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS1206へ進み、ステップS1206にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS1202では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、目標蒸発器温度TEOはステップS1201のマップに従ったものに復帰する。要するに、ステップS1206では、圧縮機31の稼働率を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS1205にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS1207へ進み、ステップS1207では、ステップS1204で決定したままの目標蒸発器温度TEOを継続する。これらステップS1205、S1206、S1207により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS1208では、ステップS1204と同様に、目標蒸発器温度TEOを、目標蒸発器温度TEOの最低温度(=2℃)に決定する。これにより、湿度の低い空調風が室内空調ユニット10から車室内へ供給され、車両窓ガラスの防曇性を向上させることができる。ステップS1208の次はステップS1209へ進む。
ここで、ステップS1208は、「手が冷たい」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「手が冷たい」という申告が為された場合には図6のステップS712も実行される。そして、ステップS712が実行されると、上述したように所定空気吹出口に該当するフェイス吹出口24の吹出風量割合が増加する。
従って、ステップS712において所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図13のステップS1208において、「手が冷たい」という申告が為される前と比較して圧縮機31の稼働率を上げる。
ステップS1209では、目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定した時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS1208で目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定したことを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS1209にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS1210へ進む。ステップS1210はステップS1206と同じである。
一方、ステップS1209にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS1211へ進み、ステップS1211では、ステップS1208で決定したままの目標蒸発器温度TEOを継続する。これらステップS1209、S1210、S1211により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS1212では、ステップS1204と同様に、目標蒸発器温度TEOを、目標蒸発器温度TEOの最低温度(=2℃)に決定する。これにより、湿度の低い空調風が室内空調ユニット10から車室内へ供給され、車両窓ガラスの防曇性を向上させることができる。ステップS1212の次はステップS1213へ進む。
ここで、ステップS1212は、「足が寒い」という申告が為された場合に実行されるステップであり、「足が寒い」という申告が為された場合には図6のステップS718も実行される。そして、ステップS718が実行されると、上述したように所定空気吹出口に該当するフット吹出口25の吹出風量割合が増加する。
従って、ステップS718において所定空気吹出口の吹出風量割合を増加させる場合にはそれと共に、図13のステップS1212において、「足が寒い」という申告が為される前と比較して圧縮機31の稼働率を上げる。
ステップS1213では、目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定した時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS1212で目標蒸発器温度TEOを最低温度に設定したことを上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS1213にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS1214へ進む。ステップS1214はステップS1206と同じである。
一方、ステップS1213にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS1215へ進み、ステップS1215では、ステップS1212で決定したままの目標蒸発器温度TEOを継続する。これらステップS1213、S1214、S1215により、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。なお、図13のステップS1204、S1208、S1212は本発明の圧縮機制御手段に対応し、ステップS1206、S1210、S1214は本発明の復帰手段に対応する。
本実施形態でも、上述の第1実施形態と同様に、乗員が車両用空調装置1の空調の仕組みを理解する必要がなく、車両用空調装置1を操作する操作性が向上する。それと共に、上記申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎと、車両前面窓ガラス74の内曇り及び外曇りを防止することができる。そして、後席の暑さ及び寒さを抑えることが可能である。また、ステアリングヒータ66によるステアリング暖め等を行えば、走行の安全性が向上する。また、圧縮機31の稼働率上昇により、室内空調ユニット10から車室内へ吹き出される送風空気の除湿量が増加するので、車両前面窓ガラス74の防曇性を確保できる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
前述の第1実施形態では、空調補助機器66、68、70であるステアリングヒータ66、シート送風装置68、および膝輻射ヒータ70は申告入力装置60cに対する申告に関わらずに作動させられるが、本実施形態では、空調補助機器66、68、70は図14に従って上記申告に応じて作動させられる。また、本実施形態では、第1実施形態の図4が図15に置き換わっている。
図14は、本実施形態において、図3のステップS9で空調補助機器66、68、70を作動させるか否かを決定する空調補助機器の作動決定処理を示すフローチャートである。すなわち、図3のステップS9における空調補助機器の作動決定処理は、具体的には、図14のフローチャートにしたがって実行される。なお、図3のステップS9で実行されるPTCヒータ15の作動本数を決定する処理は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
図14のステップS901では、前述の図6のステップS701と同様に、申告入力装置60cに対し乗員(ユーザー)からの申告があったか否かを判定する。
ステップS901において、申告が無かったと判定した場合には、ステップS902へ進む。ステップS902では、ステアリングヒータ66、シート送風装置68、および膝輻射ヒータ70をオフにする。すなわち、それらの空調補助機器66、68、70を非作動状態とする。
一方、図14のステップS901において、申告があったと判定した場合には、ステップS903へ進む。
ステップS903では、前述の図6のステップS703と同様に、乗員からの申告を構成する申告部位および申告体感状態について判定する。但し、本実施形態の申告入力装置60cが受け付ける申告としては、第1実施形態と異なり、「背中が暑い」、「手が冷たい」、および「足が寒い」の3つの選択肢が予め設定されている。申告入力装置60cは、この3つの選択肢の中から乗員によって選択された選択肢を、乗員からの申告として受け付ける。
従って、ステップS903において、乗員からの申告が「背中が暑い」というものであると判定した場合には、ステップS904へ進む。また、乗員からの申告が「手が冷たい」というものであると判定した場合には、ステップS908へ進む。また、乗員からの申告が「足が寒い」というものであると判定した場合には、ステップS912へ進む。
ステップS904では、シート送風装置68をオンにする。詳細には、シート送風装置68を作動させることに決定する。すなわち、ステップS904では、シート送風装置68の作動によって申告部位「背中」の体感状態を申告体感状態「暑い」とは反対の体感状態(例えば涼しい又は寒い)へ近づけるように、シート送風装置68の稼働率を上げる。
これにより、乗員の背中へ風が供給され、背中の暑さが解消する。ステップS904の次はステップS905へ進む。なお、シート送風装置68の稼働率とは、シート送風装置68の上限送風出力に対するシート送風装置68の送風出力の比率である。また、シート送風装置68は間欠的に所定の送風出力で作動してもよく、その場合においては、シート送風装置68の稼働率は、ある有限時間内におけるシート送風装置68の延べ作動時間の上記有限時間に対する比率とされる。
ステップS905では、ステップS904での決定によりシート送風装置68を非作動状態から作動状態へ切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS904での決定によりシート送風装置68のオン状態である作動状態を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS905にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS906へ進み、ステップS906にて、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。これにより、次回の本フローチャートのサイクルからステップS901では、乗員からの申告があったという判定から申告が無いという判定に切り替わり、シート送風装置68はステップS902に従ってオフになる。要するに、ステップS906では、シート送風装置68の稼働率を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS905にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS907へ進み、ステップS907では、ステップS904で決定したままシート送風装置68のオンを継続する。
このように、シート送風装置68の稼働率を上げた時から所定時間が経過した場合には、ステップS906において、シート送風装置68の稼働率を、乗員からの申告が入力される前の稼働率に戻すので、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS908では、ステアリングヒータ66をオンにする。詳細には、ステアリングヒータ66を作動させることに決定する。すなわち、ステップS908では、ステアリングヒータ66の作動によって申告部位「手」の体感状態を申告体感状態「冷たい」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は熱い)へ近づけるように、ステアリングヒータ66の稼働率を上げる。
これにより、乗員である運転者が手で掴んでいるステアリングの温度が上昇し、手の冷たさが解消する。ステップS908の次はステップS909へ進む。なお、ステアリングヒータ66の稼働率も、シート送風装置68の稼働率と同様に定義される。
ステップS909では、ステップS908での決定によりステアリングヒータ66を非作動状態から作動状態へ切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS908での決定によりステアリングヒータ66のオン状態である作動状態を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS909にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS910へ進む。ステップS910はステップS906と同じである。すなわち、ステップS910では、ステアリングヒータ66の稼働率を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS909にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS911へ進み、ステップS911では、ステップS908で決定したままステアリングヒータ66のオンを継続する。
このように、ステアリングヒータ66の稼働率を上げた時から所定時間が経過した場合には、ステップS910において、ステアリングヒータ66の稼働率を、乗員からの申告が入力される前の稼働率に戻すので、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
ステップS912では、膝輻射ヒータ70をオンにする。詳細には、膝輻射ヒータ70を作動させることに決定する。すなわち、ステップS912では、膝輻射ヒータ70の作動によって申告部位「足」の体感状態を申告体感状態「寒い」とは反対の体感状態(例えば暖かい又は暑い)へ近づけるように、膝輻射ヒータ70の稼働率を上げる。
これにより、乗員である運転者の足へ膝輻射ヒータ70の輻射熱が供給され、足の寒さが解消する。ステップS912の次はステップS913へ進む。なお、膝輻射ヒータ70の稼働率も、シート送風装置68の稼働率と同様に定義される。
ステップS913では、ステップS912での決定により膝輻射ヒータ70を非作動状態から作動状態へ切り替えた時から所定時間が経過したか否かを判定する。言い換えれば、ステップS912での決定により膝輻射ヒータ70のオン状態である作動状態を上記所定時間継続したか否かを判定する。その所定時間は、図4のステップS507で用いられる所定時間と同じであり、2分間に設定されている。
ステップS913にて、上記所定時間が経過したと判定した場合にはステップS914へ進む。ステップS914はステップS906と同じである。すなわち、ステップS914では、膝輻射ヒータ70の稼働率を、乗員からの申告が為される前に戻す。
一方、ステップS913にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS915へ進み、ステップS915では、ステップS912で決定したまま膝輻射ヒータ70のオンを継続する。
このように、膝輻射ヒータ70の稼働率を上げた時から所定時間が経過した場合には、ステップS914において、膝輻射ヒータ70の稼働率を、乗員からの申告が入力される前の稼働率に戻すので、乗員が申告した申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎを防止することができる。
図15は、本実施形態におけるブロワ電圧決定処理を示すフローチャートであり、第1実施形態の図4に相当する図である。本実施形態では、図4のステップS505が図15のステップS505−1に置き換わり、図4のステップS509が図15のステップS509−1に置き換わっている。これら以外のステップにおいては、図15は図4と同じである。
図15のステップS505−1では、下記数式F10のように、仮のブロワレベルf(TAO)を、ステップS503にて設定された仮のブロワレベルf(TAO)dに対し5レベル低くした値に設定する。ステップS505−1の次はステップS507へ進む。
f(TAO)=f(TAO)d−5 …(F10)
この数式F10による仮のブロワレベルf(TAO)の設定により、送風機12の送風量を減少させる。
ここで、申告入力装置60cに対し乗員からの申告があった場合には、ステップS505−1と共に、上述の図14のステップS904、S908、S912の何れかが実行される。すなわち、ステップS904、S908、S912の何れかにおいて空調補助機器66、68、70の何れかの稼働率を上げる場合に、それと共に、図15のステップS505−1において、乗員からの申告が入力される前と比較して風機12の送風量を減少させる。
従って、乗員の快適性を向上させつつ或いは快適性を損なわないようにしつつ、送風機12の消費電力すなわちブロワ電力を減少させることができる。また、夏季であれば圧縮機31の消費電力も下がり、冬季であればエンジンEGを作動させるエンジンONの頻度が低下するので、ハイブリッド車両全体を省動力化につなげることが可能である。また、室内空調ユニット10に搭載されている空気の加熱装置がヒータコア14からヒートポンプの一部を構成する加熱用熱交換器に置き換わっている車両用空調装置を想定した場合には、夏季のみならず冬季でも、圧縮機31の消費電力を下げることが可能である。
図15のステップS507では、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dと同じ値から5レベル低い値に設定変更した時から所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS507にて、上記所定時間が経過したと判定した場合には、ステップS508にて、第1実施形態と同様に、乗員の申告有りという状態を解除して、乗員の申告無しという状態にする。
すなわち、図15のステップS504が図14のステップS901と同様の判定ステップであることから判るように、図15のステップS508では、空調補助機器66、68、70の何れかの稼働率を上げた時から上記所定時間が経過した場合には、送風機12の送風量を、乗員からの申告が入力される前の送風量に戻す。
その一方で、ステップS507にて、上記所定時間が経過していないと判定した場合にはステップS509−1へ進み、ステップS509−1では、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dに対し5レベル低くした値のまま継続する。このように、仮のブロワレベルf(TAO)を仮のブロワレベルf(TAO)dに対し5レベル低い値にした状態は、図14のS905、S909、S913で判定される所定時間と同じ時間にわたって継続されるだけであるので、乗員の快適性を損なわないように過不足なく、送風機12の消費電力を節約することができる。ステップS509−1の次はステップS510へ進む。なお、図14のステップS901は本発明の入力判定手段に対応し、ステップS904、S906、S908、S910、S912、S914は本発明の補助装置制御手段に対応し、図15のステップS505−1、S508は本発明の送風量減少制御手段に対応する。
本実施形態でも、上述の第1実施形態と同様に、乗員が車両用空調装置1の空調の仕組みを理解する必要がなく、車両用空調装置1を操作する操作性が向上する。それと共に、上記申告部位の暖めすぎ及び冷やしすぎと、車両前面窓ガラス74の内曇り及び外曇りを防止することができる。そして、後席の暑さ及び寒さを抑えることが可能である。また、ステアリングヒータ66によるステアリング暖め等を行えば、走行の安全性が向上する。また、空調補助機器66、68、70で不満のある部位を暖める或いは冷やす一方で、室内空調ユニット10の空調能力を低下させることで、車室内空調に対する乗員の不満を抑制しつつ、車両全体として省動力空調を行うことが可能になる。
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態において、室内空調ユニット10はPTCヒータ15を備えているが、PTCヒータ15は無くても差し支えない。
(2)上述の第1〜4実施形態では、乗員からの申告が申告入力装置60cへ入力された場合には、図4のフローチャートに従って送風機12の送風量を増加させるようにブロワ電圧決定処理が為されるが、そのブロワ電圧決定処理は、乗員からの申告があっても送風機12の送風量を増加させないものとされていても差し支えない。
(3)上述の第1および第3〜5実施形態において、車両用空調装置1が搭載される車両はハイブリッド車両であるが、走行用電動モータを備えていない単なるエンジン車両であっても差し支えない。また、上述の第2実施形態でも同様である。また、車両用空調装置1が搭載される車両が上記エンジン車両であれば、圧縮機31は電動である必要はなく、エンジンEGにより駆動されてもよい。
(4)上述の各実施形態において、空調制御装置50とエンジン制御装置90とは各々別個の制御装置として構成されているが、空調制御装置50とエンジン制御装置90とが一体として1つの制御装置を構成していても差し支えない。
(5)上述の各実施形態において、図3〜9、及び図11〜15のフローチャートに示す各ステップの処理はコンピュータプログラムによって実現されるものであるが、ハードロジックで構成されるものであっても差し支えない。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。