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JP2015164400A - 容器詰めコーヒー飲料の製造方法 - Google Patents

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JP2015164400A JP2014039928A JP2014039928A JP2015164400A JP 2015164400 A JP2015164400 A JP 2015164400A JP 2014039928 A JP2014039928 A JP 2014039928A JP 2014039928 A JP2014039928 A JP 2014039928A JP 2015164400 A JP2015164400 A JP 2015164400A
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Abstract

【課題】
ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】
容器詰め飲料の調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度が特定範囲となるように、特定の粒子径に微粉砕された焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)と、焙煎コーヒー豆の抽出物とを配合し、この調合液を加熱殺菌処理すると、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料が得られることを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料に関する。
コーヒーとは、コーヒー豆(コーヒーノキの種子)を焙煎して挽いた粉末から、湯水で成分を抽出して得られる飲料である。抽出原料となるコーヒー豆の種類は、アラビカ種とロブスタ種(カネフォラ種)に大別され、これら2つの種類から製造されたコーヒーは、異なる香味特性を有することが知られている。アラビカコーヒーは、まろやかで芳香性が高く、風味や香りの点で高く評価されることが多いが、ロブスタコーヒーは、ロブ臭とも呼ばれる独特の土臭い風味と後味を有し、苦味が強いことから、アラビカコーヒーよりも低く評価されることが多い。そのため、ロブスタ種は比較的安価で流通して容易に入手できるコーヒー豆であるが、アラビカ種をメインにしたブレンドに増量剤的に用いられる場合がほとんどであった。増量剤として使用される場合にも、不快なロブ臭のためにアラビカ種への配合量には制限があり、その使用範囲を拡げるために、様々な品質改良法が提案されている。
例えば、コーヒー生豆をスチーム処理してから焙煎する方法(特許文献1)、コーヒー生豆をタンニン処理してから焙煎する方法(特許文献2)、ロブスタ種焙煎豆をクエン酸溶液で処理する方法(特許文献3)、ロブスタ種コーヒー豆抽出液に、スクラロース又はソーマチンを添加する方法(特許文献4)等が挙げられる。
特開平6−303905号公報 特開平4−144642号公報 特開2004−337061号公報 特開2013−208080号公報
アイスコーヒーは苦味が重視されることから、ロブスタ種を深く焙煎したコーヒー豆が用いられることもあるが、その独特の風味や後味が問題となることがあった。特に、加熱殺菌処理して得られる容器詰めコーヒー飲料で常温以下(好ましくは、冷蔵以下)の温度で飲用するタイプのアイスコーヒーは、加熱臭と相俟ってロブ臭が顕著に知覚され、一部の消費者には受け入れられないものとなっている。
本発明は、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、容器詰め飲料の調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度が特定範囲となるように、特定の粒子径に微粉砕された焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)と、焙煎コーヒー豆の抽出物とを配合し、この調合液を加熱殺菌処理すると、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下を包含する。
(1)焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が50〜300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程1、
焙煎コーヒー豆の粉砕物に抽出処理を行って焙煎コーヒー豆の抽出物を準備する工程2、
(A)パルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの総量[(A)+(B)]が0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下となるように、工程1の不溶性コーヒー粉末と工程2の焙煎コーヒー豆の抽出物を配合してコーヒー調合液を調製する工程3、
調合液を加熱殺菌処理する工程4、及び
容器に充填する工程5
を含む容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
(2)工程2において、さらに(A)ジパルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの割合[(A)/(B)]を0.01以上0.50以下に調整する工程を含む、(1)に記載の製造方法。
(3)不溶性コーヒー粉末の固形分と焙煎コーヒー豆の抽出物の可溶性固形分の総量のうちの50重量%以上がロブスタ種である、(1)または(2)記載の製造方法。
(4)工程3において、調合液中のカフェイン濃度が10mg/100ml以上60mg/100ml以下となるように調製する、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
本発明によると、大掛かりな装置や煩雑な工程を必要とせずに、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した容器詰めコーヒー飲料が得られる。
(不溶性コーヒー粉末)
本発明の「不溶性コーヒー粉末」とは、焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるもの(焙煎コーヒー豆微粉末)をいう。ここで、「焙煎コーヒー豆」とは、コーヒーの生豆に対して焙煎と呼ばれる加熱処理を施したものである。焙煎によって生豆に含まれている成分が化学変化してコーヒーの風味(強い芳香性やフレーバー)が醸し出されており、また、空隙含有構造体が形成されている。
本発明の不溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度に仕上げればよい。ただし、焙煎度が高いと油脂成分がコーヒー豆表面に析出しやすくなり、粉砕が困難になったり、粉砕処理して得られる微粉末がケーキングを起こし易くなったりする。この観点から、アグトロンカラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標として、45〜70程度、好ましくは50〜60程度となるように焙煎された焙煎コーヒー豆が好適に用いられる。なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種のいずれも使用できるが、ロブスタ種は本発明のコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度を特定範囲に調整しやすいことから、好ましい態様の一例である。
この焙煎コーヒー豆を粉砕処理して、本発明の不溶性コーヒー粉末を得る。粉砕処理は、焙煎後、24時間以内、好ましくは20時間以内、より好ましくは15時間以内、特に好ましくは10時間に行うことが好ましい。焙煎後の放置時間が長いと、油脂成分がコーヒー豆表面に析出しやすくなる。
乾式での粉砕処理は、メジアン径で1mm以下に粗粉砕した後、微粉砕することが好ましい。微粉砕をする前に、予め粗粉砕することにより、一層効率よく短時間に微粉砕することができ、コーヒーの香り(フレーバー)の飛散を最小限に抑えることができる。また、粒度分布を狭くできるという利点もある。粗粉砕は、メジアン径で約1mm以下、好ましくは0.5mm以下になるように粉砕するが、その方法は特に制限されない。ロール式ミル、ボール式ミル、石臼式ミル等、種々の形式の粉砕機を使用することができる。
焙煎コーヒー豆の微粉砕は、メジアン径で50〜300μmとなるように粉砕する。メジアン径で300μmを超える粉末は、食感や舌触りなどのテクスチャーに違和感を与えることがある。より好ましい微粉砕の程度の上限はメジアン径で250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。また、メジアン径で50μm未満となるまで微粉砕処理した場合には、保存安定効果が得られない傾向がある。より好ましい微粉砕の程度の下限はメジアン径で70μm以上、さらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは90μm以上である。微粉砕の方法も特に制限されず、ロール式粉砕機、バーハンマー式やピンハンマー式等の衝撃式粉砕機、気流式粉砕機など、種々の形式の粉砕機を使用することができるが、ロール式粉砕機が好ましく用いられる。
粒子径は、多数個の測定結果を粒子径毎の存在比率の分布として表すのが一般的であり、これを粒子径分布という。存在比率の基準としては体積基準と個数基準などがあるが、本明細書では体積基準での存在比率で表わし、レーザー回折・散乱法に基づいた測定装置にて測定することができる。測定装置の例としては、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製)である。そして、本明細書において焙煎コーヒー豆の微粉砕物の粒子径をメジアン径で表わしているが、メジアン径とは粒子径の累積データの50%径であり、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径のことである。
このようにして得られる不溶性コーヒー粉末の比表面積は、0.05〜0.50m/g、好ましくは0.10〜0.30m/g程度である。なお、本明細書でいう「比表面積」は、BET式多点法で測定される値を意味する。
(コーヒー抽出液)
本発明の「焙煎コーヒー豆の抽出物」とは、焙煎コーヒー豆の抽出液(本明細書中、「コーヒー抽出液」とも表記する)をいい、コーヒー抽出液を乾燥させて粉末状に加工したものも含む。
本発明のコーヒー抽出液の原料となる焙煎コーヒー豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度に仕上げればよい。メカニズムは不明であるが、不溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー豆と異なる焙煎度のコーヒー豆、特に不溶性コーヒー粉末の焙煎コーヒー豆よりも焙煎度が高い、すなわちアグトロン値が小さい焙煎度のコーヒー豆をコーヒー抽出液の抽出原料に用いると、本発明の効果をより一層顕著に発現できる。アグトロンカラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標として、35〜60程度、好ましくは45〜50程度となるように焙煎された焙煎コーヒー豆は好適な態様の一例である。なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種のいずれも使用できるが、ロブスタ種は本発明のコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度を特定範囲に調整しやすいことから、好ましい態様の一例である。コーヒー抽出液は、上記の焙煎コーヒー豆に温水等の水溶性溶媒を用いて定法により抽出することにより得られる。
(容器詰めコーヒー飲料)
本明細書でいう「コーヒー飲料」とは、コーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造される飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これは、本発明におけるコーヒー飲料に含まれるものとする。
本発明のコーヒー飲料は、コーヒー分として、上記の不溶性コーヒー粉末及び上記のコーヒー抽出液を混合し、必要に応じて乳成分、甘味料、pH調整剤等を添加してコーヒー調合液を得、これを加熱殺菌処理して容器に充填して製造される。
本発明のコーヒー飲料は、ロブスタ種特有の風味と香りを軽減した飲料であり、ロブスタ種がコーヒー分の主成分であるコーヒー飲料は、本発明の好ましい飲料の一態様である。ロブスタ種がコーヒー分の主成分とは、不溶性コーヒー粉末の固形分とコーヒー抽出液の可溶性固形分の総量のうちの50重量%以上(好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%以上)がロブスタ種由来であることを意味する。
本発明における不溶性コーヒー粉末は、コーヒー飲料100mLあたりの水不溶性固形分が0.01〜1g、好ましくは0.1〜0.5gとなるように配合する。ここで、水不溶性固形分とは、飲料中の不溶性固形分を濾紙上に集めて乾燥して得られる固形分(重量)をいう。飲料100mLあたりの水不溶性固形分が0.01g未満であると、ロブ臭を低減するのに十分な効果が得られないことがあり、飲料100mLあたりの水不溶性固形分が1gを超えると、飲用時にザラツキを感じたり、好ましくない加熱臭を強く感じることがある。
また、コーヒー調合液を調製する際には、調合液中のジテルペン化合物の濃度が、0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下となるように不溶性コーヒー粉末及びコーヒー抽出液を配合することが重要である。好ましい上限値は5.5mg/kg以下、より好ましくは5.0mg/kg以下、さらに好ましくは4.5mg/kg以下、特に好ましくは4.0mg/kg以下の濃度であり、好ましい下限値は0.5mg/kg以上、好ましくは0.7mg/kg以上、より好ましくは1.0mg/kg以上、より好ましくは1.2mg/kg以上、さらに好ましくは1.5mg/kg以上の濃度である。ここで、本明細書でいう「ジテルペン化合物」とは、後述する実施例に記載の方法で測定されるカーウェオール(kahweol)とカフェストール(cafestol)にパルミチン酸がエステル結合した、(A)パルミチン酸カーウェオール(略記:KwO-pal)と(B)パルミチン酸カフェストール(略記:CfO-pal)の総量[(A)+(B)]をいう。
コーヒー調合液中のジテルペン化合物の濃度調整は、不溶性コーヒー粉末及びコーヒー抽出液中のジテルペン化合物濃度をそれぞれ測定し、計算により特定割合を配合することによって行うことができる。また、コーヒー抽出液(粉末状の場合はこれを水に溶解したもの)を吸着剤処理して、ジテルペン化合物を低減することもできる。吸着剤としては、ペーパーフィルター、ネル(綿)フィルター、珪藻土、ポリプロピレン製不織布を用いたフィルターカートリッジ等の多孔質ろ材が例示される。また、三相遠心分離を用いて、油分、抽出液、粕の三相に分け、油分を適量除去することによりジテルペン化合物を低減してもよい。
本発明のコーヒー飲料では、さらに、(A)パルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの割合[(A)/(B)]が、0.50以下、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.30以下となるように調整するのがよい。(A)/(B)の下限は、0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上程度である。不溶性コーヒー粉末を配合し、上記範囲となるように調整することで、ロブ臭をより一層低減させることができる。
コーヒー飲料では、その風味上の観点から、カフェインの存在が重要視されている。本発明の飲料にも、カフェインを含有させることが好ましいが、カフェイン濃度が高いと本発明のロブ臭の低減効果を損ない、かえってロブ臭が顕著に知覚されることがある。調合液中のカフェイン濃度は、飲料100mLに対して60mg以下、好ましくは55mg以下、より好ましくは50mg以下、さらに好ましくは40mg以下となるように調整するのがよい。カフェイン量の下限は、飲料100mLに対して10mg以上、好ましくは15mg以上である。
ジテルペン化合物の濃度及び割合、並びに好ましくはカフェイン濃度が特定範囲に調整されたコーヒー調合液を加熱殺菌処理して、コーヒー飲料を製造する。加熱殺菌処理の方法は特に限定されず、例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って行えばよい。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、通常120〜150℃で1〜120秒間程度、好ましくは130〜145℃で30〜120秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常110〜130℃で10〜30分程度、好ましくは120〜125℃で10〜20分間程度の条件である。
本発明のコーヒー飲料が充填される容器としては、殺菌方法や保存方法に合わせて適宜選択すればよく、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。
コーヒー飲料の評価は、官能評価によって行うことができる。例えば、加熱殺菌処理後のコーヒー飲料を、ロブスタ種特有の風味と香りの強さを指標に評価する。
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
(1)不溶性コーヒー粉末の調製
代表的なロブスタ種の豆としてインドネシア産ロブスタを用いた。このコーヒー豆を定法にてアグトロン値が50〜60(55程度)になるまで焙煎して、焙煎コーヒー豆を得た。この焙煎コーヒー豆をロール式粉砕機にて粒子径がメジアン径で105μm程度となるまで微粉砕して、焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を得た。なお、本実施例中、粒子径の測定には、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、型式:MT3300EXII)を用いた。測定は、粉体の試料をエアーで分散させながら、レーザー光を試料に照射し、回折散乱パターンから粒子径分布の測定(乾式レーザー回折散乱法)を行い、粒子径の累積データの50%径をメジアン径とした。
また、この不溶性コーヒー粉末のジテルペン化合物量を測定した(表1)。なお、本明細書中、ジテルペン化合物量は、不溶性コーヒー粉末を100mg/20mLとなるように水で希釈した希釈試料について、(A)パルミチン酸カーウェオール(KwO-pal)及び(B)パルミチン酸カフェストール(CfO-pal)の含量を、LC−MS/MSを使用し、MRMモードにて測定した値を表わす。以下に測定方法の詳細を示す。
(分析試料の調製)
まず、希釈試料2gをガラス製遠沈管にとり、アセトニトリル4mlを加えて、ボルテックスミキサーで1分間攪拌した。これを遠心機で遠心(1680×g、30分、20℃)し、上清を10mlメスフラスコに移した。遠沈管にエタノール2mlを加え、沈殿物をピペット先端で潰して拡散させた。これを超音波洗浄機に15分かけて不溶物をさらに拡散させ、ボルテックスミキサーで1分間攪拌し、遠心機で遠心(1680×g、30分、20℃)して、上清を10mlメスフラスコに移した。同様のエタノールによる抽出作業を、さらに1回行った。抽出液を回収した10mlメスフラスコをエタノールでメスアップし、よく混ぜた液をPTFE製メンブレンフィルター(東洋濾紙社製、孔径0.2μm、直径25mm)で濾過し、分析試料とした。LC−MS/MSの測定方法は以下のとおり。
(LC−MS/MS分析条件)
〔使用機種〕
・MS:4000QTRAP(AB Sciex社製)
・LC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
〔LC条件〕
・移動相:(A)0.1%ギ酸水溶液、(B)エタノール
・流速:0.4ml/分
・グラジエント条件:0−1分(80%B)、1−5分(80−100%B)、5−7.5分(100%B)、初期移動相による平衡化2.5分
・カラム:Agilent Technologies社製 Zorbax Eclipse Plus RRHD C18 1.8μm 2.1×150mm
・カラム温度:45℃
・導入量:1μl
〔MS条件〕
・イオン源:Heated Nebulizer
・CUR:20
・CAD:Medium
・NC:5
・TEM:400
・GS1:40
・ihe:ON
・切り替えバルブ条件:カラムを通過した移動相のうち、4.5〜5.8分のみをMSに導入した
〔MRM条件〕
・パルミチン酸カーウェオール:535.41→279.17(Q1→Q3)
・パルミチン酸カフェストール:537.43→281.19(Q1→Q3)
・DP:95
・EP:10
・CE:21
・CXP:12
本実施例においては、上記条件でパルミチン酸カーウェオール標準品(MP Biomedicals社製)およびパルミチン酸カフェストール標準品(LKT Labs社製)を分析して検量線をあらかじめ作成し、試料中のパルミチン酸カーウェオールおよびパルミチン酸カフェストールを定量した。上記条件におけるパルミチン酸カーウェオールの溶出時間は5.1分、パルミチン酸カフェストールの溶出時間は5.2分であった。
(2)焙煎コーヒー豆の抽出物の調製
代表的なロブスタ種の豆としてインドネシア産ロブスタを用いた。このコーヒー豆を定法にてアグトロン値が45〜49になるまで焙煎して、焙煎コーヒー豆を得た。この焙煎コーヒー豆を原料とし、湯による抽出処理を行ってコーヒー抽出液を得、これを噴霧乾燥処理して粒子径がメジアン径で270μm程度の可溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆の抽出物)を得た。この可溶性コーヒー粉末のジテルペン化合物量を上記と同様の方法により測定した(表1)。
(3)コーヒー調合液の調製
上記(1)で調製した不溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆微粉末)と、上記(2)で調製した焙煎コーヒー豆の抽出物とを種々の割合(表2)で混合して粉体混合物を得た。このコーヒー分の粉体混合物1.5重量%、砂糖9重量%、粉乳3重量%、水86.8重量%を混合し、さらに炭酸水素ナトリウムを用いてpHを6.5調整して、水不溶性固形分及びジテルペン化合物量の異なるコーヒー調合液(カフェイン含量はいずれも50〜55mg/100mL)を得た。この調合液を食品衛生法に従った殺菌条件で加熱殺菌後、熱可塑性樹脂の容器に150gずつ充填し、容器蓋をヒートシールして密封して容器詰めコーヒー飲料を製造した。
また、得られたコーヒー飲料中の水不溶性固形分量を以下の方法で測定した。
(水不溶性固形分量の測定)
25℃に恒温したサンプル(コーヒー飲料)をよく攪拌し均一な状態にし、10gを遠沈管に定量し、卓上本架遠心機(KOKVSAN H-28F)を用いて、処理温度20℃、回転数3000rpmで10分間遠心した。保留粒子径が5μmの濾紙の乾燥質量を測定した後、遠沈管内の遠心後の上清固形分を減圧濾過により集めた。次に遠沈管中にイオン交換水を加えて攪拌し、再び同条件で10分間遠心した。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上に減圧濾過により集めた。残った固形分も該濾紙上に集めて水洗し、減圧濾過した。水洗に用いたイオン交換水は全量で100mLとした。該濾紙を乾燥後に質量を測定し、以下の式により水不溶性固形分量(質量%)を算出した。
[水不溶性固形分量(質量%)]=[(乾燥後の濾紙質量(g))−(濾紙の初期乾燥質量(g))]/10(g)×100
(4)官能評価
6種類の容器詰めコーヒー飲料を1ヶ月間常温で保存した後、冷蔵温度(5〜10℃)に冷却したものを官能評価した。官能評価は5名の専門パネラーにより、ロブ臭について、++:とても強い、+:強い、±:普通、−:弱い、――:とても弱いとし、最も多い評価で表わした。
表3に、各種成分の測定結果及び官能評価結果を示す。表から明らかなように、特定の粒子径に微粉砕された焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を配合し、コーヒー調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール;A+B)の濃度を0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下に調整され、加熱殺菌処理されたコーヒー飲料は、ロブスタ種特有の風味と香り(ロブ臭)を軽減した容器詰めコーヒー飲料となった。特に、ジテルペン化合物濃度が1.5mg/kg以上4.5mg/kg以下に調整され、かつその割合(A/B)が0.05以上0.50以下に調整されたコーヒー飲料は、ロブ臭を大きく軽減することができた。
[実施例2]
コーヒー原料として、実施例1(1)で調製した不溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆微粉末)と、実施例1(2)で調製した焙煎コーヒー豆の抽出物(以下、「可溶性コーヒー粉末1」と表記する)と、市販の可溶性コーヒー粉末(インスタントコーヒー;ロブスタ種とアラビカ種の混合品の抽出物)(以下、「可溶性コーヒー粉末2」と表記する)とを用いた。これらを表4に示す割合で混合して粉体混合物を得、このコーヒー分の粉体混合物1.5重量%、砂糖9重量%、粉乳3重量%、水86.8重量%を混合し、さらに炭酸水素ナトリウムを用いてpHを6.5調整して、水不溶性固形分及びジテルペン化合物量の異なるコーヒー調合液(カフェイン含量はいずれも50〜55mg/100mL)を得た。この調合液を食品衛生法に従った殺菌条件で加熱殺菌後、熱可塑性樹脂の容器に150gずつ充填し、容器蓋をヒートシールして密封して容器詰めコーヒー飲料を製造した。なお、可溶性コーヒー粉末2の(A)パルミチン酸カーウェオール(KwO-pal)及び(B)パルミチン酸カフェストール(CfO-pal)の含量は、(A)=84.62 mg/kg、(B)=54.02 mg/kgであった。
得られた5種類の容器詰めコーヒー飲料について、実施例1と同様に分析・評価した。結果を表5に示す。特定の粒子径に微粉砕された焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を配合し、コーヒー調合液に含まれるコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール;A+B)の濃度を0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下に調整され、加熱殺菌処理されたコーヒー飲料は、ロブスタ種特有の風味と香り(ロブ臭)を軽減した容器詰めコーヒー飲料となった。特に、ジテルペン化合物濃度が1.5mg/kg以上5.0mg/kg以下に調整され、かつその割合(A/B)が0.05以上0.40以下に調整されたコーヒー飲料は、ロブ臭を大きく軽減することができた。

Claims (4)

  1. 焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が50〜300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程1、
    焙煎コーヒー豆の粉砕物に抽出処理を行って焙煎コーヒー豆の抽出物を準備する工程2、
    (A)パルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの総量[(A)+(B)]が0.4mg/kg以上6.5mg/kg以下となるように、工程1の不溶性コーヒー粉末と工程2の焙煎コーヒー豆の抽出物を配合してコーヒー調合液を調製する工程3、
    調合液を加熱殺菌処理する工程4、及び
    容器に充填する工程5
    を含む容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
  2. 工程2において、さらに(A)ジパルミチン酸カーウェオールと(B)パルミチン酸カフェストールの割合[(A)/(B)]を0.01以上0.50以下に調整する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 不溶性コーヒー粉末の固形分と焙煎コーヒー豆の抽出物の可溶性固形分の総量のうちの50重量%以上がロブスタ種である、請求項1または2記載の製造方法。
  4. 工程3において、調合液中のカフェイン濃度が10mg/100ml以上60mg/100ml以下となるように調製する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
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