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JP2013002032A - 波形鋼板耐震壁、及びこれの初期弾性せん断剛性算出方法 - Google Patents

波形鋼板耐震壁、及びこれの初期弾性せん断剛性算出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】施工性を向上しつつ、複数の開口部を形成することができる波形鋼板耐震壁、及びこれの初期弾性せん断剛性算出方法を得ることを目的とする。
【解決手段】波形鋼板30には、複数の開口部40が形成されている。これらの開口部40は半径が同一の円形の孔とされており、隣接する開口部40間に上下方向に対して反対方向へ傾斜する応力伝達部42A,42Bが形成されるように、波形鋼板30の各平板部30Pに千鳥状に配列されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、波形鋼板耐震壁、及びこれの初期弾性せん断剛性算出方法に関する。
波形鋼板に設備用等の開口部が形成された波形鋼板耐震壁が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、開口部の周辺部が当て板等で補強されている。
特開2010−127051号公報
ところで、設備用以外にも採光性、風通性等の観点から複数の開口部を波形鋼板耐震壁に形成することが考えられる。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、開口部の数に応じて当て板等の補強材が増加するため、施工性の点で改善の余地がある。
本発明は、上記の事実を考慮し、施工性を向上しつつ、複数の開口部を形成することができる波形鋼板耐震壁、及びこれの初期弾性せん断剛性算出方法を得ることを目的とする。
請求項1に記載の波形鋼板耐震壁は、一対の柱の間に架設された上下の水平部材に、幅方向を前記水平部材の軸方向にして取り付けられる波形鋼板と、長手方向を上下方向にすると共に前記幅方向に間隔を空けて前記波形鋼板に設けられ、該波形鋼板から伝達された応力を前記柱又は前記水平部材へ伝達する縦材と、前記波形鋼板に複数の開口部を形成することにより該開口部間に設けられ、上下方向に対して反対方向へ傾斜する傾斜方向にそれぞれ延びて、前記開口部間に発生する応力を前記水平部材又は前記縦材へ伝達する複数の応力伝達部と、を備えている。
請求項1に係る波形鋼板耐震壁によれば、応力伝達部によって、波形鋼板の開口部間に発生した応力(圧縮応力、引張り応力等)が水平部材又は縦材へ伝達される。縦材へ伝達された応力は柱又は水平部材へ伝達される。これにより、開口部周辺の応力集中が低減される。従って、開口部周辺の補強を低減することができるため、波形鋼板耐震壁の施工性を向上することができる。
請求項2に記載の波形鋼板耐震壁は、請求項1に記載の波形鋼板耐震壁において、前記開口部が、半径が同一の円形の孔とされると共に、前記波形鋼板における折り目間の平板部に式(1)を満たすように千鳥状に配列されている。
請求項2に係る波形鋼板耐震壁によれば、波形鋼板の平板部に応力伝達部が直線状に形成される。従って、開口部間に発生する応力を水平部材又は縦材へ伝達する応力伝達部の伝達効率が向上する。
請求項3に記載の波形鋼板耐震壁は、請求項1に記載の波形鋼板耐震壁において、前記開口部が、半径が同一の円形の孔とされると共に、前記波形鋼板における折り目間の平板部に式(2)を満たすように上下方向及び前記幅方向に配列されている。
請求項3に係る波形鋼板耐震壁によれば、波形鋼板の平板部に応力伝達部が直線状に形成される。従って、開口部間に発生する応力を水平部材又は縦材へ伝達する応力伝達部の伝達効率が向上する。
請求項4に記載の初期弾性せん断剛性算出方法は、請求項2又は請求項3に記載の波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性Gを式(3)から算出する。
請求項4に係る波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性算出方法によれば、波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性を式(3)から算出することにより、波形鋼板耐震壁の設計が容易となる。
本発明は、上記の構成としたので、施工性を向上しつつ、複数の開口部を形成することができる。
本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁を示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁を示す図1の2−2線断面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁を示す図1の一部拡大正面図である。 本発明の一実施形態における波形鋼板の平板部を部分的に示す正面図である。 本発明の一実施形態における波形鋼板の平板部を部分的に示す正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の変形例を示す図3に相当する一部拡大正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の変形例を示す図5に相当する正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の変形例を示す図4に相当する正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の変形例を示す図1に相当する正面図である。 本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性算出方法を説明する図5に相当する正面図である。 載荷試験で用いた試験体を示す正面図、断面図、一部拡大正面図である。 試験体の水平荷重とせん断変形角との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る波形鋼板耐震壁について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Hは上下方向(波形鋼板の高さ方向)を示し、矢印Wは波形鋼板の幅方向を示している。
図1及び図2には、本実施形態に係る波形鋼板耐震壁10が取り付けられた架構12が示されている。架構12は、鉄筋コンクリート造の左右一対の柱14と、これらの柱14の間に架設された鉄筋コンクリート造の上下一対の梁(水平部材)16とを有して構成されたラーメン構造とされている。柱14及び梁16には、主筋及びせん断補強筋が適宜埋設されている。なお、図2における符号18、20は、梁16に埋設された主筋、せん断補強筋である。
図1及び図2に示されるように、波形鋼板耐震壁10は、波形鋼板30と、横フランジ32と、縦材としての縦フランジ34と、縦材としての縦補強リブ36とを備えている。波形鋼板30は、その断面形状が山部と谷部が交互に繰り返す波形形状とされ、折り目Kを横(折り目Kの向きを水平方向)にして架構12の構面に配置されている。また、波形鋼板30における折り目K間の平板部30Pには、後述する複数の開口部40が形成されている。なお、波形鋼板30の材料としては、普通鋼(例えば、SM490、SN400等)や低降伏点鋼(例えば、LY225等)等が用いられる。
波形鋼板30の幅方向の両端部には、縦フランジ34がそれぞれ設けられている。縦フランジ34は平板状の鋼板で構成され、波形鋼板30の幅方向の両端部に沿って溶接等で接合されている。また、波形鋼板30の上下方向の両端部には、横フランジ32がそれぞれ設けられている。これらの横フランジ32は平板状の鋼板で構成され、波形鋼板30の上下方向の両端部に沿って溶接等で接合されている。
また、縦フランジ34及び横フランジ32には、せん断力伝達手段としてのスタッド38がそれぞれ突設されている。これらのスタッド38は柱14及び梁16に埋設されており、これにより波形鋼板30が柱14及び梁16に取り付けられている。また、スタッド38を介して波形鋼板30と柱14及び梁16との間でせん断力等が伝達可能となっている。
なお、縦フランジ34と柱14、横フランジ32と梁16の接合方法は、上記したものに限らない。例えば、スタッドが立設された接合用プレートを柱14及び梁16にそれぞれ埋設し、この接合用プレートに縦フランジ34及び横フランジ32を溶接又はボルト等で接合しても良い。また、エポキシ樹脂等の接着剤により、縦フランジ34と柱14、横フランジ32と梁16を接着接合しても良い(接着工法)。更に、縦フランジ34及び横フランジ32は板状に限らず、H形鋼、L形鋼、T形鋼、C形鋼等でも良い。
また、波形鋼板30には、複数(本実施形態では、4つ)の縦補強リブ36が設けられている。縦補強リブ36は平板状の鋼板で構成されており、長手方向を上下方向(矢印H方向)にすると共に、波形鋼板30の幅方向に間隔を空けて配置されている。また、縦補強リブ36の長手方向に沿った一端部(長辺部)は、波形鋼板30の波形形状に応じて切り欠かれており、波形鋼板30の表面に組み合わされて当該表面に溶接等で接合されている。これらの縦補強リブ36によって波形鋼板30に面外剛性が付与されており、波形鋼板30のせん断座屈が抑制されている。なお、波形鋼板30を幅方向に分割し、分割された波形鋼板30の間に平板状の縦補強リブを配置して当該縦補強リブに波形鋼板30の端部を突き当てて溶接等で接合しても良い。
また、縦補強リブ36の長手方向の両端部(上端部及び下端部)は、横フランジ32にそれぞれ突き当てられて溶接等で接合されている。これにより、波形鋼板30から縦補強リブ36に伝達された応力(せん断応力の鉛直成分)が、横フランジ32を介して梁16へ伝達可能になっている。
ここで、図3に示されるように、波形鋼板30には、複数の開口部40が形成されている。これらの開口部40は半径が同一の円形の孔とされており、隣接する開口部40間に上下方向に対して反対方向へ傾斜する応力伝達部42A,42Bが形成されるように、波形鋼板30の各平板部30Pに千鳥状に配列されている。応力伝達部42A,42Bは、波形鋼板30がせん断変形したときに、開口部40周辺に発生する応力を周辺の縦補強リブ36、縦フランジ34、横フランジ32へ伝達する応力伝達経路として機能するものであり、例えば、応力伝達部42A1は、波形鋼板30に発生する応力が縦補強リブ36及び横フランジ32へ伝達されるように、縦補強リブ36と横フランジ32とに渡って略直線状に延びている。これと同様に、応力伝達部42B1は、横フランジ32と縦フランジ34とに渡って設けられ、応力伝達部42A2,42B2は、縦補強リブ36と縦フランジ34とに渡って設けられている。なお、図3では、図が煩雑となるため、上下方向に対して傾斜する平板部30Pにおける応力伝達部42A,42Bの図示を省略している。
また、例えば、応力伝達部42A1の両端部は、縦補強リブ36及び横フランジ32に接合(拘束)され、これらの縦補強リブ36及び横フランジ32へ応力が伝達可能になっている。他の応力伝達部42A,42Bについても同様である。
なお、前述したように応力伝達部42A,42Bは、波形鋼板30に発生する応力を周辺の縦補強リブ36、縦フランジ34、横フランジ32へ伝達可能であれば良く、厳密に直線状である必要はない。即ち、ここでいう応力伝達部42A,42Bが略直線状に延びるとは、応力伝達部42A,42Bが厳密に直線状に延びる構成だけでなく、隣接する平板部30P間において、応力伝達部42A,42Bがずれる構成を含む概念である。
図4に示されるように、応力伝達部42Aは上下方向に対して一方側(図5において右側)へ傾斜するのに対し、応力伝達部42Bは上下方向に対して他方側(応力伝達部42Aと反対側)へ傾斜されている。これにより、波形鋼板30のせん断変形に伴って平板部30Pに作用する引張り力T及び圧縮力Cに対し、各応力伝達部42A,42Bがブレースのように抵抗するようになっている。換言すると、波形鋼板30のせん断変形に伴って平板部30Pの開口部40周辺に発生した引張り応力及び圧縮応力が、応力伝達部42A,42Bによって隣接する他の平板部30Pへ伝達されるようになっている。
また、応力伝達部42Aと応力伝達部42Bとが交差する交点N間の長さ(座屈長さ)e,eは、各応力伝達部42A,42Bに作用する圧縮力に対して座屈しないよう設定されている。
なお、本実施形態では、一例として、上下方向に対して一方側へ傾斜する応力伝達部42Aの傾斜角度α(αは、水平方向に対する傾斜角度)と、上下方向に対して他方側(応力伝達部42Aと反対側)へ傾斜する応力伝達部42Bの傾斜角度β(βは、水平方向に対する傾斜角度)とが同じ角度(α=β)に設定されている。また、応力伝達部42A,42Bに接するように各開口部40が形成されている。
ここで、本実施形態では、一例として図5に示されるように中心Oを中心とした半径rが同一の複数の円形の孔とされた開口部40が、波形鋼板30の平板部30Pに下記式(1)を満たすように千鳥状に配列されている。これにより、波形鋼板30の各平板部30Pに直線状の応力伝達部42A,42Bが設けられている。
Figure 2013002032
ただし、
r:開口部の半径
X:応力伝達部の傾斜方向に隣接する開口部の中心間距離を水平線に投影した長さ
Y:応力伝達部の傾斜方向に隣接する開口部の中心間距離を鉛直線に投影した長さ
である。
上記式(1)について解説すると、水平方向に対する応力伝達部42Aの傾斜角をαとすると、応力伝達部42の幅Sは下記式(a)で表される。また、cosαは、下記式(b)で表される。これらの式(a)及び式(b)から上記式(1)が得られる。
Figure 2013002032
なお、図6に示されるように、例えば、縦フランジ34が接合される波形鋼板30の幅方向の端部では、開口部40が円形ではなく、半円形になっても良い。
次に、本実施形態に係る波形鋼板耐震壁の作用について説明する。
風や地震等によって架構12に水平力が作用すると、図1に示されるように、横フランジ32及び縦フランジ34を介して波形鋼板30にせん断力が伝達される。これにより、波形鋼板30がせん断変形しながら水平力に抵抗して耐震性能を発揮する。また、水平力に対して波形鋼板30が降伏するように設計することで、鋼材の履歴エネルギーによって振動エネルギーが吸収され、制振性能を発揮する。
また、波形鋼板30の各平板部30Pには、上記式(1)を満たすように複数の開口部40が千鳥状に配列されており、これらの開口部40間に応力伝達部42A,42Bが設けられている。
ここで、例えば、図4に示されるように、波形鋼板30の平板部30Pが矢印F方向へせん断変形すると、上下方向に対して傾斜する方向から平板部30Pに引張り力T及び圧縮力Cが作用する。これにより、平板部30Pの開口部40周辺に発生する引張り応力が、応力伝達部42Aを介して隣接する他の平板部30Pの応力伝達部42Aへ伝達される。この応力伝達部42Aは、例えば、図3に示される応力伝達部42A2のように、縦補強リブ36と縦フランジ34とに渡って設けられている。これにより、各平板部30Pの開口部40周辺に発生した引張り応力が、応力伝達部42A2を介して縦補強リブ36及び縦フランジ34へ伝達される。そして、縦補強リブ36へ伝達された応力は横フランジ32を介して梁16へ伝達され、縦フランジ34へ伝達された応力は柱14へ伝達される。これと同様に、各平板部30Pの開口部40周辺に発生した圧縮応力は、応力伝達部42Bを介して梁16及び柱14へ伝達される。
このように波形鋼板30の開口部40間に略直線状に延びる応力伝達部42A,42Bを設け、波形鋼板30に発生する応力を横フランジ32、縦フランジ34、及び縦補強リブ36へ伝達する応力伝達経路を確保することにより、開口部40周辺の応力集中が低減される。従って、開口部40周辺の補強を低減することができるため、波形鋼板耐震壁10の施工性を向上することができる。
また、波形鋼板30に複数の開口部40を形成することにより、採光性、通風性、意匠性等が向上すると共に、視線が遮断されないため、例えばガラスやガラリのような機能を波形鋼板耐震壁10に付加することができる。これにより、例えば、建物のエントランス等にも波形鋼板耐震壁10を設置することができるため、波形鋼板耐震壁10の設置自由度が向上する。また、採光性、通風性を確保しつつ、所定の遮熱性能を確保することができると共に、軽量化を図ることができる。更に、展示物等のフック等を開口部40に引っ掛けることができるため、展示台としての機能も波形鋼板耐震壁10に付加することができる。更にまた、開口部40の大きさを増減することにより、採光量、通風量を調整することができると共に、耐震壁(耐力壁)としての耐力も調整することができる。
次に、本実施形態に係る波形鋼板耐震壁の変形例について説明する。
上記実施形態では、波形鋼板30の平板部30Pに複数の開口部40を千鳥状に配列したがこれに限らない。例えば、図7に示されるように、中心Oを中心し、半径rが同一の複数の開口部50を上下方向(矢印H方向)及び波形鋼板30の幅方向(矢印W方向)にマトリックス状に配列しても良い。この場合、下記式(2)を満たすように複数の開口部50を波形鋼板30の平板部30Pに配列することにより、平板部30Pに直線状に延びる応力伝達部52Aを設けることができる。
Figure 2013002032
ただし、
r:開口部の半径
X:波形鋼板の幅方向に隣接する開口部の中心間距離
Y:上下方向に隣接する前記開口部の中心間距離
である。
ここで、上記式(2)について解説すると、水平方向に対する応力伝達部42の傾斜角をαとすると、応力伝達部42の幅Sは下記式(c)で表される。また、cosαは、下記式(d)で表される。これらの式(c)及び式(d)から上記式(2)が得られる。
Figure 2013002032
なお、前述した式(1)及び式(2)は一例であって、これらの式(1)及び式(2)に限定されるものではない。また、上記実施形態では、複数の開口部40の半径rが同一とされているが、これに限らない。開口部40は、応力伝達部42A,42Bが分断されないように、応力伝達部42A,42Bで囲まれた矩形の領域内に形成すれば良く、例えば、図8に示されるように、応力伝達部42A,42Bで囲まれたひし形の領域J内に開口部40と半径が異なる開口部60を形成しても良い。また、2つの応力伝達部42にのみ接するように開口部62を形成しても良いし、領域J内に複数(図8では、2つの)の開口部64を形成しても良い。更に、開口部40は真円の孔に限らず、楕円形の孔でも良いし、三角形や四角形等の多角形の孔で良い。
また、上記実施形態では、応力伝達部42Aの傾斜角度αと、応力伝達部42Bの傾斜角度βを同じに設定したが、応力伝達部42Aの傾斜角度αと応力伝達部42Bの傾斜角度βを異なる値に設定しても良い。なお、応力伝達部42A,42Bをブレースとして機能させるためには、傾斜角度α,βを30°〜60°に設定することが好ましく、45°に設定することがより好ましい。
更に、上記実施形態では、波形鋼板30の全面に開口部40を形成したがこれに限らず、波形鋼板30の一部に開口部40を形成しても良い。例えば、図9に示されるように、波形鋼板30の中央部にのみ開口部40を形成しても良い。また、図9に示されるように、波形鋼板30は、少なくとも上下の梁16に取り付けられていれば良く、縦フランジ34と柱14との間に間隔D(開口)を空けても良い。この場合、波形鋼板30から縦材としての縦フランジ34に伝達された応力は、当該縦フランジ34を介して上下の梁16へ伝達される。
更にまた、縦補強リブ36は、波形鋼板30のせん断座屈耐力に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。この場合、応力伝達部42A,42Bは、波形鋼板30の幅方向の両端部に設けられた縦フランジ34間に渡って設ければ良い。また、縦補強リブ36は、平板状の鋼板に限らず、T形鋼、L形鋼等でも良い。
また、架構12を構成する柱14及び梁16は、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレストレスコンクリート造、鉄骨造、CFT造、更には現場打ち工法、プレキャスト工法等の種々の工法を用いることができる。また、梁16に替えて水平部材としてのコンクリートスラブ又は小梁等に波形鋼板耐震壁10を取り付けても良い。なお、梁16がH形鋼等の鉄骨造の場合は、横フランジ32を省略し、波形鋼板30の上下方向の端部を梁16に溶接等で直接接合しても良い。この場合、波形鋼板30の上下方向の端部と梁16との間でせん断力等が伝達される。
更に、上記実施形態では、図2に示されるように、波形鋼板30の中心軸から外れた位置で、波形鋼板30の上端部及び下端部を梁16に接合したが、例えば、波形鋼板30の中心軸上で、波形鋼板30の上端部及び下端部を梁16に接合しても良い。また、波形鋼板30の中心軸から一方側に外れた位置で、波形鋼板30の上端部及び下端部を梁16に接合しても良いし、中心軸を挟んで互い違いになるように波形鋼板30の上端部及び下端部を梁16に接合しても良い。なお、ここでいう波形鋼板の中心軸とは、波形鋼板30の山部と谷部の中間にある仮想の軸である。
更にまた、波形鋼板耐震壁10は、建物の一部に用いても良いし、建物の全てに用いても良い。また、耐震構造や免震構造等の種々の新築建物、改築建物に適用することができる。波形鋼板耐震壁を設置することにより、耐震性能、制振性能が向上された建物を構築することができる。
次に、一実施形態に係る波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性算出方法について説明する。
例えば、上記式(1)に基づいて、半径rが同一の複数の開口部40を波形鋼板30の平板部30Pに千鳥状に形成した場合、波形鋼板耐震壁10の初期弾性せん断剛性Gは、下記式(3)から求めることができる。
Figure 2013002032
ただし、
L :隣接する縦補強リブの間隔、若しくは隣接する縦補強リブと縦フランジの間隔
α :水平方向に対して応力伝達部が傾斜する傾斜角度
:開口部がない波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性
である。
ここで、上記式(3)について解説すると、式(3)では、図10に示されるように、波形鋼板30の平板部30Pのうち、隣接する応力伝達部42A間の領域Q(グレーの領域)に弾性せん断剛性がないものと仮定し、平板部30Pに対する応力伝達部42Aの面積比率を低減率として、開口部40がない場合の波形鋼板耐震壁10の初期弾性せん断剛性Gに乗じている。
なお、式(3)におけるLは、例えば、図3に示される縦補強リブ36と縦フランジ34の間の距離である。この場合、波形鋼板耐震壁10の初期弾性せん断剛性Gは、縦補強リブ36と縦フランジ34との間の波形鋼板30(開口部40なし)の初期弾性せん断剛性となる。また、Σ(2r/sinα)は、(2r/sinα)×(幅Lの平板部30Pにある領域Qの総数)を意味する。
このように、式(3)を用いて波形鋼板耐震壁10の初期弾性せん断剛性Gを算出することにより、波形鋼板耐震壁10の設計が容易となる。
なお、上記式(3)は、半径が同一の複数の開口部が規則的に波形鋼板の平板部に形成されている場合に用いることができ、例えば、上記式(2)に基づいて複数の開口部50(図7参照)が平板部30Pに形成された波形鋼板耐震壁にも用いることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、上記実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
次に、載荷試験について説明する。
<試験概要>
本載荷試験では、実施例に係る試験体に対し、逆対称曲げを付加するように水平荷重を正負交互に繰り返し載荷した。水平荷重は変位制御とし、せん断変形角1,2,4,6(1/1000rad)について、それぞれ正負2回ずつ載荷した。
<試験体>
図11には、本載荷試験で用いた試験体68の正面図、断面図、及び一部拡大正面図が示されている。試験体68は、波形鋼板70と、波形鋼板70の上下方向の端部にそれぞれ設けられた横フランジ72と、波形鋼板70の幅方向の端部にそれぞれ設けられた縦フランジ74と、波形鋼板70の表面に設けられた4本の縦補強リブ76を備えている。また、波形鋼板70の各平板部70Pには、半径11mmの複数の開口部80が上記式(1)に基づいて千鳥状に形成されている。なお、開口部80は、波形鋼板70の全面に渡って形成されている。
試験体68は、複数の開口部80が形成された平鋼板を波形形状に折り曲げ加工して波形鋼板70を形成し、この波形鋼板70に横フランジ72、縦フランジ74、及び縦補強リブ76を溶接することにより製造した。なお、平板部70Pの面積に対する開口部80の開口面積の比率(開口率)は約40%である。また、各種部材の寸法等は、図11及び下記表1に示される通りである。
Figure 2013002032
<試験結果>
図12には、試験体68の水平荷重とせん断変形角との関係が示されている。また、図12には、上記式(3)を用いて算出した試験体68の初期弾性せん断剛性Gが示されている。
図12から分かるように、試験体68が、開口部がない一般的な波形鋼板耐震壁と同様の紡錘形の履歴ループを描いた。このことから、試験体68が、開口部がない一般的な波形鋼板耐震壁と同等の力学的性状を有することが確認できる。
また、上記式(3)を用いて算出した試験体68の初期弾性せん断剛性Gが、試験体68の初期せん断剛性に近似する結果となった。このことから、下記式(3)の妥当性が確認できる。
10 波形鋼板耐震壁
14 柱
16 梁(水平部材)
30 波形鋼板
30P 平板部
34 縦フランジ(縦材)
36 縦補強リブ(縦材)
40 開口部
42A 応力伝達部
42B 応力伝達部
50 開口部
52A 応力伝達部
60 開口部
62 開口部
64 開口部

Claims (4)

  1. 一対の柱の間に架設された上下の水平部材に、幅方向を前記水平部材の軸方向にして取り付けられる波形鋼板と、
    長手方向を上下方向にすると共に前記幅方向に間隔を空けて前記波形鋼板に設けられ、該波形鋼板から伝達された応力を前記柱又は前記水平部材へ伝達する縦材と、
    前記波形鋼板に複数の開口部を形成することにより該開口部間に設けられ、上下方向に対して反対方向へ傾斜する傾斜方向にそれぞれ延びて、前記開口部間に発生する応力を前記水平部材又は前記縦材へ伝達する複数の応力伝達部と、
    を備える波形鋼板耐震壁。
  2. 前記開口部が、半径が同一の円形の孔とされると共に、前記波形鋼板における折り目間の平板部に式(1)を満たすように千鳥状に配列されている請求項1に記載の波形鋼板耐震壁。
    Figure 2013002032
    ただし、
    r:開口部の半径
    X:応力伝達部の傾斜方向に隣接する開口部の中心間距離を水平線に投影した長さ
    Y:応力伝達部の傾斜方向に隣接する開口部の中心間距離を鉛直線に投影した長さ
    である。
  3. 前記開口部が、半径が同一の円形の孔とされると共に、前記波形鋼板における折り目間の平板部に式(2)を満たすように上下方向及び前記幅方向に配列されている請求項1に記載の波形鋼板耐震壁。
    Figure 2013002032
    ただし、
    r:開口部の半径
    X:波形鋼板の幅方向に隣接する開口部の中心間距離
    Y:上下方向に隣接する前記開口部の中心間距離
    である。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性Gを式(3)から算出する波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性算出方法。
    Figure 2013002032
    ただし、
    L :隣接する縦材の間隔
    α :水平方向に対して応力伝達部が傾斜する傾斜角度
    :開口部がない波形鋼板耐震壁の初期弾性せん断剛性
    である。
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