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JP2012092355A - ポリアセタール樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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JP2012092355A JP2012031350A JP2012031350A JP2012092355A JP 2012092355 A JP2012092355 A JP 2012092355A JP 2012031350 A JP2012031350 A JP 2012031350A JP 2012031350 A JP2012031350 A JP 2012031350A JP 2012092355 A JP2012092355 A JP 2012092355A
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Abstract

【課題】熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れたポリアセタール樹脂組成物の製造方法を提供すること
【解決手段】(I)100質量部のポリアセタール樹脂に対して、
(II)5質量部を超えて100質量部未満の、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)が3以下であって、炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびその金属塩によって表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム、および
(III)0.005〜10質量部の有機酸を
ポリアセタール樹脂(I)の融点以上で同時に溶融混練する工程からなるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアセタール樹脂および特定の形状を有する炭酸カルシウム、有機酸を含み、特定量のNa,Srを含有するポリアセタール樹脂組成物であって、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れたポリアセタール樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリアセタール樹脂は剛性、強度、靭性、耐クリープ寿命、耐疲労性、耐薬品性及び摺動性、耐熱性等のバランスに優れ、且つその加工性が容易であることから、エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、自動車部品及びその他の機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。
特に、ポリアセタール樹脂の特徴的用途として、電気、電子機器の構造部品においてギアやカムといった摺動関連部品に使われる。ギアやカムといった摺動関連用途の部品は、部品にある一定の荷重がかかった状態で使用される環境にあることが多く、特性としては、摺動性はもちろんのこと、剛性、強度、靭性といった短期的な機械特性のみならず、耐クリープ寿命、耐疲労性といった長期的な特性、すなわち耐久性が必要な場合が多々ある。
近年、これら摺動関連用途の部品などにおいて、部品の軽量化や小型化、高耐久化の要求があり、それに伴い、剛性、強度、靭性といった短期的な機械特性の向上のみならず、摺動性や耐クリープ寿命、耐疲労性といった長期的な特性を向上させたポリアセタール樹脂組成物が望まれている。
そこで、一般的な手法として、ポリアミド等他のエンジニアリングプラスチックスの場合と同様に、ガラス繊維やタルク、ワラストナイト、炭素繊維などといった無機フィラーを配合してその性能の向上が図られている。しかしながらポリアセタール樹脂に対して、ガラス繊維や無機フィラーを配合した場合、剛性、強度といった機械特性の改良には効果があるものの、ポリアセタール樹脂本来の特徴である摺動性や耐クリープ寿命、耐疲労性といった長期的な特性、さらには靭性が著しく損なわれる場合があり、効果的な手法とはいえなかった。またこれらガラス繊維や無機フィラーを多量に配合した場合、ポリアセタール樹脂の熱安定性を低下させる場合があり、成形性、または耐熱エージング性などに悪影響を及ぼす可能性があり問題となる場合があった。
ここで、ポリアセタール樹脂と炭酸カルシウムからなるポリアセタール樹脂組成物において、ポリアセタール樹脂と炭酸カルシウムの界面接着促進剤として、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、およびその金属塩を用いたポリアセタール樹脂組成物(例えば、特許文献1から3)や、界面接着促進剤として、特定の硫酸化合物を用いたポリアセタール樹脂組成物(例えば、特許文献4)が知られている。該ポリアセタール樹脂組成物は、剛性と靭性のバランスに優れ、かつ熱安定性や摺動性に優れることが知られている。さらにポリアセタール樹脂と炭酸カルシウムおよび特定の脂肪酸エステルからなるポリアセタール樹脂組成物は、特に摺動性に優れることが知られている(例えば特許文献5,6)。
上記ポリアセタール樹脂と炭酸カルシウムからなるポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂に対してガラス繊維や無機フィラーを配合した場合と比較して、剛性と靭性のバランスや摺動性、熱安定性に優れる特徴がある。しかしながら、実際の構造部品として用いる場合、さらなる剛性や靭性が求められる場合があった。また、構造部品の高耐久化に関しては、耐クリープ寿命や耐疲労性といった長期的な特性の観点で、不十分である場合があった。
また上記のような問題の他に、ポリアセタール樹脂の酸に対する耐性、すなわち耐酸性の向上が要求される場合がある。ここでいう耐酸性とは、ポリアセタール樹脂の成形品が、酸の雰囲気下にあるときに、成形品自体が腐食され、質量の減少および機械的物性が低下することをさす。具体的な例としては、自動車部品における燃料搬送ユニットをあげることができる。従来、ポリアセタール樹脂は耐薬品性、特にガソリン燃料透過性に優れるといった特性から、ガソリンと直接接触する、燃料ポンプモジュールなどの大型部品に用いられている。近年の地球温暖化防止への寄与を目的に、ガソリン燃料車に変わって二酸化炭素排出量の少ないディーゼル燃料車を積極的に普及させようとの動きがあり、ポリアセタール樹脂をディーゼル燃料用の燃料搬送ユニットへ用いることが試みられている。しかしながら、ディーゼル燃料として用いられる軽油はガソリン燃料に対して硫黄含有量、すなわち硫黄酸化物の含有量が多いことや最高使用温度がガソリン燃料の場合よりも高いことから、ディーゼル燃料に直接接触する部品、例えばポンプモジュール、燃料バルブ、燃料タンクフランジ、燃料レベル計などでは従来のポリアセタール樹脂では部品が腐食され、部品として十分な耐久性が得られないという問題があった。
このような問題を解決すべく、ポリアセタール樹脂に対してヒンダードフェノール系化合物、特定のリン系安定剤、特定の窒素化合物、特定の水酸化金属又はアルコキシ金属を配合してなる組成物(特許文献7)やポリアセタール系樹脂母材中にアルカリ性添加剤を含ませた材料(特許文献8)、さらにポリアセタール樹脂に対して酸化亜鉛、ポリアルキレングリコールからなる組成物(特許文献9)などが開示されている。この結果、耐酸性は従来のポリアセタール樹脂に対して向上する傾向にあるものの、各種添加剤を加えた結果、剛性と靭性のバランスが崩れる傾向にあり、剛性や靭性の不足から燃料ポンプなどの大型部品に使用する場合は肉厚での設計が必要となる場合があった。また、耐クリープ寿命等の長期的な特性の不足から材料の信頼性にかけるといった問題点があった。
このように、さまざまな用途において、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスにより優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れたポリアセタール樹脂組成物が望まれている。
英国特許出願公開第1123358号明細書 特開平1−170641号公報 特表2004−506772号公報 米国特許出願公開第4456710号明細書 特開平1−263145号公報 特開平5−51514号公報 特許第3157579号公報 特開平11−302497号公報 特開2001−11284号公報
本発明は、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れたポリアセタール樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂および特定の形状を有する炭酸カルシウム、有機酸を含み、特定量のNa,Srを含有するポリアセタール樹脂組成物が、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
) (I)100質量部のポリアセタール樹脂に対して、
(II)5質量部を超えて100質量部未満の、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)が3以下であって、炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびその金属塩によって表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム、および
(III)0.005〜10質量部の有機酸を
ポリアセタール樹脂(I)の融点以上で同時に溶融混練する工程からなるポリアセタール樹脂組成物の製造方法、
)ポリアセタール樹脂(I)の、窒素気流下、220℃で加熱した時の、加熱時間2分から10分、10分から30分、および50分から90分の間のホルムアルデヒド発生速度が、15ppm/min以下である上記()に記載の製造方法、
)ポリアセタール樹脂(I)が、下記式で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させて得られた熱安定化ポリアセタール樹脂である上記()または()に記載の製造方法、
[R−n
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6から20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6から20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、上記非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1から3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1から20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1から20の有機チオ酸の酸残基を表す。)、
)ポリアセタール樹脂(I)が164〜172℃の融点を有するコポリマーである上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
軽質炭酸カルシウム(II)において、Caに対するNaの量が250ppm以下であり、かつCaに対するSrの量が500から2500ppmである上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
軽質炭酸カルシウム(II)の平均粒径が0.1μmから1.0μmである上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
軽質炭酸カルシウム(II)が有する、粒径1μm以下の粒子の含有率が90%以上である上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
軽質炭酸カルシウム(II)のBET比表面積が10〜200m/gであることを特徴とする上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
軽質炭酸カルシウム(II)が球状粒子、立方体状粒子、直方体状粒子、不定形粒子またはこれらの混合物からなる上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
10)有機酸(III)が炭素数8から36の飽和脂肪酸である上記()から()のいずれかに記載の製造方法、
である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れる効果を有する。
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明で用いられるポリアセタール樹脂(I)は、公知のポリアセタール樹脂であって特に限定されるものではない。例えば、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマーを挙げることができる。ここで、ポリアセタールコポリマーのうち、より剛性、靭性、耐熱性のバランスに優れるといった観点から、好ましい1,3−ジオキソラン等のコモノマーの添加量は、トリオキサン1molに対して0.1〜60mol%であり、より好ましくは0.1〜20mol%であり、もっとも好ましくは0.15〜10mol%である。このとき、ポリアセタール樹脂の融点はコモノマー量に依存するが、好ましい融点は164℃から172℃であり、さらに好ましくは165℃から171℃であり、もっとも好ましくは167℃から170℃である。
また、ポリアセタールコポリマーとして、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有する分岐型ポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有する架橋型ポリアセタールコポリマーも用いることができる。さらに、両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するブロック型ポリアセタールホモポリマーや、同じく両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するブロック型ポリアセタールコポリマーも用いることができる。本発明において、上記ポリアセタール樹脂は一種類、もしくは二種類以上の混合物で用いても差し支えない。
上記ポリアセタール樹脂のうち、剛性、靭性、熱安定性のバランスに優れるといった観点から、ポリアセタール樹脂(I)としては、コモノマー成分がランダムに結合したランダム型、ブロック型、分岐型または架橋型のポリアセタールコポリマーおよびこれらの混合物が好ましく、さらにコストの観点からランダム型、ブロック型のポリアセタールコポリマーがより好ましい。
さらに熱安定性の観点から、ポリアセタール樹脂(I)としては、窒素気流下、220℃で加熱した時、加熱時間2分から10分、10分から30分、および50分から90分の間のホルムアルデヒド発生速度がそれぞれ15ppm/min.以下であることが好ましく、10ppm/min.以下がより好ましく、5ppm/min.以下であることがもっとも好ましい。ここで、上記ホルムアルデヒド発生速度の測定を具体的に記すと、窒素気流下(50NL/hr)において、ポリアセタール樹脂を220℃に加熱溶融し、発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定する。その際、加熱開始から2分後までのホルムアルデヒド発生量(ppm)をY、同10分後までをY10、同30分をY30、同50分をY50、同90分をY90としたときに、
2分〜10分の発生速度(Y10−Y)/8(ppm/min.)
10分〜30分の発生速度(Y30−Y10)/20(ppm/min.)
50分〜90分の発生速度(Y90−Y50)/40(ppm/min.)
として算出する。これらの値はそれぞれ、ポリアセタール樹脂に付着したホルムアルデヒド起因、ポリアセタール樹脂の末端分解によって生じるホルムアルデヒド起因、ポリアセタール樹脂の主鎖分解によって生じるホルムアルデヒド起因といわれて、これらの値が小さいほど熱安定性に優れている。
上記ポリアセタール樹脂(I)のメルトフローインデックスMFI(ASTM−D1238で測定)は特に限定されるものではないが、加工性の観点から、好ましくは0.1g/10分〜150g/10分、さらに好ましくは0.5g/10分〜130g/10分、最も好ましくは1g/10分〜100g/10分である。
本発明において、ポリアセタール樹脂(I)の製造方法は公知のポリアセタール樹脂の製造方法をとることができ、特に限定されるものではない。例えば、前記ポリアセタールホモポリマーの場合、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法をあげることができる。また、前記ポリアセタールコポリマーの場合、高純度のトリオキサンおよび、エチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分、分子量調整用の連鎖移動剤をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸等の重合触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化をおこなうことによる製造法、あるいは溶媒を全く使用せずに、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機の中へトリオキサン、共重合成分、分子量調整用の連鎖移動剤および触媒を導入して塊状重合した後さらに水酸化コリン蟻酸塩等の第4級アンモニウム化合物を添加して不安定末端を分解除去して製造する方法等をあげることができる。
ここで、熱安定性に優れる好ましいポリアセタール樹脂(I)を得る方法として、ポリアセタール樹脂を下記式で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させる方法をあげることができる。
[R−n
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6から20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6から20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、上記非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1から3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1から20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1から20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
上記一般式において、好ましいR、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、さらに好ましくは、R、R、R、Rの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基である。R、R、R、Rの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物、硫酸、炭酸、ホウ酸、カルボン酸の塩が好ましい。さらにカルボン酸において、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このとき、上記第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリアセタール樹脂と第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する、下記式で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppm、好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール樹脂に対する濃度(質量ppm)を表し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
このとき、第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部分解除去後のポリアセタール樹脂の色調が低下する傾向にある。
上記安定化させる方法として、好ましくは上記第4級アンモニウム化合物とポリアセタール樹脂をポリアセタール樹脂の融点以上260℃以下の樹脂温度で押出機、ニーダーなどを用いて熱処理を行うものである。ここで、260℃を超えると着色の問題、およびポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。また、第4級アンモニウム化合物の添加方法は、特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、樹脂パウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタール樹脂を熱処理する工程で添加されていれば良く、押出機の中に注入したり、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端の分解を実施してもよい。不安定末端の分解は、重合で得られたポリアセタール樹脂中の重合触媒を失活させた後に行うことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
本発明で用いられる炭酸カルシウム(II)は、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)が3以下であれば特に限定されるものではない。例えば、炭酸カルシウムの結晶形態としては、一般に知られている、カルサイト、アラゴナイト、バテライトのいずれであってもよく、また製法、種類においても、天然に存在する重質炭酸カルシウムであっても、あるいは人工的な合成法によって得られる軽質炭酸カルシウム(またはコロイド状炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、活性炭酸カルシウム等で呼ばれることもある)であってもよい。これらは上記範囲内であれば一種類で用いてもよいし、二種類以上の混合物で用いても差し支えない。
ここで、本発明で用いられる炭酸カルシウム(II)において、適度なポリアセタール樹脂とのぬれ、なじみ、接着性を有し、さらに分散性に優れ、ポリアセタール樹脂の機械的特性のバランスや耐クリープ寿命、耐疲労性に優れるといった観点から、好ましい炭酸カルシウムとしては軽質炭酸カルシウムをあげることができ、同様に結晶形態としてはカルサイトであることが好ましい。このとき、炭酸カルシウムの形状は、球状、立方体状、直方体状、紡錘状、さらには不定形状などであるが、好ましい形状としては、球状、立方体状、直方体状、不定形状、またはこれらの混合物である。さらに好ましくは球状、立方体状、直方体状、またはこれらの混合物である。さらに、好ましい炭酸カルシウムの平均粒径は0.1〜1.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.6であり、最も好ましくは0.10〜0.40μmである。さらに、粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)は好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、もっと好ましくは1.5以下である。ここで、本発明では炭酸カルシウムの粒子の形状においては、Heywoodの定義を用いて、粒子の平面図について輪郭に接する二つの平行線の最短距離を短径、それに直角方向の平行線の最大距離を長径とする。また、平均粒径、平均長径、平均短径、平均アスペクト比とは、単位体積中に長径L、短径dの炭酸カルシウムがN個存在するとき、
平均粒径=平均長径=ΣL /ΣL
平均短径=Σd /Σd
平均アスペクト比L/d=(ΣL /ΣL)/(Σd /Σd
と定義して用いる。より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて検査する炭酸カルシウムのサンプリングを行い、これを用いて粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低100個の炭酸カルシウムの粒子からそれぞれ長さを測定し求める。
同様の理由から好ましい炭酸カルシウム(II)の平均粒径については、粒径1μm以下の粒子の含有率が90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、もっとも好ましくは98%である。ここでいう平均粒径の測定方法とは光透過法粒度分析法によって得られるものである。
同様の理由から好ましい炭酸カルシウム(II)の比表面積は、BET吸着法において、10〜200m/gであり、さらに好ましくは10〜100m/gであり、もっと好ましくは10〜50m/gである。ここでいうBET吸着法とは窒素ガス吸着法によるものである。
本発明のポリアセタール樹脂組成物において、組成物中のCaに対するNaの量およびSrの量がそれぞれ250ppm以下、500から2500ppmであるが、これらNa,Srは炭酸カルシウム(II)中に含まれる不純物由来である。一般に炭酸カルシウムは、天然に存在する重質炭酸カルシウムを粉砕、精製する方法や、水酸化カルシウム水溶液に炭酸ガスを吹き込む人工的な合成、精製、さらに場合によっては凝集防止剤や表面処理剤を添加する方法等が知られているが、該工程のいずれかにおいて、水等に含まれるNaや、Caと置換可能なSrが不純物として炭酸カルシウム中に取り込まれる場合がある。また、炭酸カルシウムの原料となる石灰石等に不純物として含まれる場合もある。本発明中のNa,SrのCaに対する含有量が上記の範囲では、得られるポリアセタール樹脂組成物の熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性に優れる。これらの理由については明らかではないが、炭酸カルシウムの粒径を小さくしたり、粒度分布をシャープにする効果があり、さらにポリアセタール樹脂とのぬれや界面がより良好になるためであると推測される。上記の理由から、本発明で用いられる炭酸カルシウム(II)におけるCaに対するNaの量は好ましくは250ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、さらに好ましくは150ppm以下であり、最も好ましくは100ppm以下である。同様に、Caに対するSrの量は好ましくは500から2500ppmであり、より好ましくは600から1500ppmであり、さらに好ましくは700から1300ppmであり、最も好ましくは800ppmから1000ppmである。ここで、上記Caに対するNa,Srの量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によって求めることができる。より具体的には、炭酸カルシウム0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mL及び純水5mLを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え測定可能な濃度とし、ThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により各金属の特性波長によって定量を行う。その後、Caに対するNa,Srの量を算出する。
本発明で用いられる炭酸カルシウム(II)は、炭酸カルシウムの製造工程、とくに軽質炭酸カルシウムの製造工程における、炭酸カルシウムスラリーから炭酸カルシウムを分離、乾燥する工程において、粒子の凝集を防止する目的で、公知の表面処理剤、付着剤または錯化剤、さらに凝集防止剤が添加され、その結果表面が該物質によって表面処理されていても差し支えない。ここで、表面処理剤、付着剤または錯化剤、凝集防止剤とは、例えば「分散・凝集の解明と応用技術、1992年」(北原文雄監修・(株)テクノシステム発行)の232〜237ページに記載されているようなアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などを用いることができる。また、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、さらには脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸及び樹脂酸や金属石鹸をあげることができる。
ここで、本発明のポリアセタール樹脂組成物において、より剛性、靭性の機械的物性のバランスに優れ、耐クリープ寿命に優れるといった観点から、炭酸カルシウム(II)は上記表面処理剤、付着剤または錯化剤、さらに凝集防止剤が3.0重量%未満であることが好ましく、より好ましく1.0重量%未満であり、さらにより好ましくは0.5重量%未満であり、最もより好ましくは実質的に添加されていないことである。そのうち、特に炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびその金属塩によって表面処理がなされていない炭酸カルシウムは耐クリープ寿命に優れる効果があり、特に好ましい。
ここで上記表面処理剤、付着剤または錯化剤、さらに凝集防止剤の定量は熱重量分析(TGA)法によって確認することができる。具体的には、炭酸カルシウムを熱重量分析機(TGA)にかけ、100℃まで100℃/分で昇温し、そのまま10分熱処理し炭酸カルシウムの水分を除去後、550℃まで100℃/分で昇温、そのまま60分熱処理を行なう。その後、上記有機成分の量=[(100℃、10分熱処理完了後の質量)−(550℃、60分熱処理完了後の質量)]/(100℃、10分熱処理完了後の質量)×100(%)で求めることができる。
一般的に無機フィラーに対して上記表面処理剤等を添加することは、樹脂への分散性を向上させ、機械的特性に優れる傾向にあり好ましいといわれる。しかしながら本発明で用いられる微細な炭酸カルシウムに関しては、微細な炭酸カルシウムの製造工程上、必要な量以上に上記表面処理剤等を添加することは、粒子のかさ密度が上昇し、取り扱い時に大気中に舞いだしたり、もしくは逆に粒子が硬く凝集する傾向がある。そのため、ポリアセタール樹脂組成物の製造時に作業環境が悪化する、作業の手間がかかる等の問題が生じる場合がある。さらには溶融混練を用いてポリアセタール樹脂組成物を生産する際、溶融混練機への定量的な供給が困難となり、得られるポリアセタール樹脂組成物の品質的な観点から問題となる場合がある。本発明によれば、このような問題を解決し、上記表面処理剤等を実質上使用することなく、炭酸カルシウムのポリアセタール樹脂への好ましい分散が達成でき、また界面が適度なぬれ、接着性を有し、得られるポリアセタール樹脂組成物の剛性、靭性といった機械的物性のバランスに優れ、さらに耐クリープ寿命において特に優れる。
本発明で用いられる有機酸(III)は、脂肪族基あるいは芳香族基を有する一価または多価カルボン酸、およびこれらの一部に水酸基等の置換基が導入されているもの、またはこれらの酸の酸無水物、さらに脂肪族基あるいは芳香族基を有する一価または多価のスルフォン酸、およびこれらの一部に水酸基等の置換基が導入されているもの、さらに脂肪族基あるいは芳香族基を有する一価または多価リン酸、およびこれらの一部に水酸基等の置換基が導入されているものを指し、公知のものであれば特に限定されない。例えば、飽和脂肪酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸、さらにはエチレンジアミン四酢酸などを、不飽和脂肪酸として、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、リノール酸、リシノール酸などを、脂環式カルボン酸としてナフテン酸などを、樹脂酸として、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸などを、さらにはこれらの酸無水物を、一価または多価のスルホン酸として、ラウリルスルホン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸等をあげることができる。これらは一種類で用いても二種類以上の混合物で用いても差し支えない。
これらのうち、熱安定性や色調の観点から好ましくは一価および多価カルボン酸である飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸を挙げることができ、さらにポリアセタール樹脂への分散性、およびより色調に優れるといった観点から飽和脂肪酸が好ましく、さらに得られるポリアセタール樹脂組成物において成形品表面へのカルボン酸のブリードまたは金型に付着する有機物類の汚染物などの観点から炭素数8から36、さらに好ましくは10から30、最も好ましくは12から24である飽和脂肪酸が好ましい。例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、リノール酸、アラギン酸等をあげることができる。
本発明で用いられる脂肪酸エステル(IV)とは一価または多価アルコールと脂肪酸の重縮合によって得られる公知の脂肪酸エステルであって特に限定されるものではない。一価または多価アルコールの例としては、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ぺンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデ シルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、べヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−イソヘプチルイシウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ラチルステアリンアルコール、ユニリンアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールをあげることができる。脂肪酸としては、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸をあげることができ、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラギン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、 セロプラスチン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸などをあげることができる。より具体的には、例えばグリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリントリパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリンモノモンタネート、グリセリンジモンタネート、グリセリントリモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールジベヘネート、ペンタエリスリトールトリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ペンタエリスリトールジモンタネート、ペンタエリスリトールトリモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールトリパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールジベヘネート、ソルビトールトリベヘネートソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート、ソルビトールトリモンタネートをあげることができる。これらは一種類で用いても、二種類以上の混合物として用いても差し支えない。
ここで、機械的特性や離型性、摺動性、成形品表面へのブリードまたは金型に付着する有機物類の汚染物などの観点から好ましい脂肪酸エステルとしては、一価、または多価アルコールとして、炭素数2から22、さらに好ましくは炭素数2から20、最も好ましくは2から18のアルコールと、脂肪酸として、炭素数8から32、さらに好ましくは炭素数10から24、最も好ましくは12から22の飽和脂肪酸、または不飽和脂肪酸からなる脂肪酸エステルをあげることができる。具体的には、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、エチレングリコールジステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノベヘネート等をあげることができる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ平均アスペクト比(L/D)が3以下である炭酸カルシウム(II)5質量部を超えて100質量部未満、有機酸(III)0.005から10質量部、脂肪酸エステル(IV)0から0.05質量部未満を含有してなるポリアセタール樹脂組成物であって、該組成物中のCaに対するNaの量が250ppm以下であり、かつCaに対するSrの量が500から2000ppmである。ここで、より剛性、靭性等の機械的物性バランスに優れ、耐クリープ寿命や耐疲労性に優れるポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、該組成物において、Caに対するNaの量は好ましくは200ppm以下であり、さらに好ましくは150ppm以下であり、最も好ましくは100ppm以下である。同様に、Caに対するSrの量は好ましくは600から1500ppmであり、さらに好ましくは700から1300ppmであり、最も好ましくは800ppmから1000ppmである。このとき、該組成物中のCaに対するNa,Srの量は高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析によって求めることができる。より具体的には、ポリアセタール樹脂組成物0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mL及び純水5mLを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え測定可能な濃度とし、ThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により各金属の特性波長によって定量を行う。その後、Caに対するNa,Srの量を算出する。
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物において、熱安定性や成型加工性に優れるといった観点から、窒素気流下、220℃で加熱した時、加熱時間2分から10分、10分から30分、および50分から90分の間のホルムアルデヒド発生速度がそれぞれ30ppm/min.以下であることが好ましく、25ppm/min.以下がより好ましく、15ppm/min.以下であることがもっとも好ましい。
ここで、ポリアセタール樹脂組成物が、より剛性、靭性のバランスに優れ、さらに耐クリープ寿命や耐疲労性に優れるといった観点から、好ましい炭酸カルシウム(II)の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、10質量部を超えて80質量部であり、さらに好ましくは15質量部を超えて60質量部であり、最も好ましくは20質量部を超えて50質量部である。同様の理由から、好ましい有機酸(III)の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.01から8質量部であり、さらに好ましくは0.015から5質量部であり、最も好ましくは0.02から4質量部である。また、剛性、靭性のバランスと摺動性、さらに成型加工時の可塑化工程の安定性に優れるといった観点から、好ましい脂肪酸エステル(IV)の添加量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0から0.04質量部であり、さらに好ましくは0から0.03質量部であり、最も好ましくは0から0.02質量部である。
本発明において、得られるポリアセタール樹脂組成物が、よりよい剛性、靭性のバランスを有し、さらに耐クリープ寿命や耐疲労性に優れるといった観点から、ポリアセタール樹脂組成物中の炭酸カルシウム(II)が、最大凝集粒子径において好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下、さらに最も好ましくは1μm以下で分散していることである。さらに理想的には炭酸カルシウムの平均粒径で単分散していることである。ここで、最大凝集粒径とは、ポリアセタール樹脂組成物中の炭酸カルシウム(II)の二次凝集をおこしている粒子の最大の大きさを表す。ここで、最大凝集粒子径は、樹脂組成物のペレットからASTM D638のTYPEI試験片を成形し、この試験片の中央部、樹脂流動方向に垂直な面の薄片をミクロトームなどによって切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば、写真倍率1.0万倍から5.0万倍の範囲で凝集の大きさに応じて選択)により観察し、その値の最大値を示す。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は、ポリアセタール樹脂(I)を溶媒に溶解させた後に炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)を添加、混合し、溶媒を除去する方法、ポリアセタール樹脂(I)の加熱溶融物に炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)を添加、混合する方法、予め作成した炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)をマスターバッチとして添加する方法、またはこれらを組み合わせた方法などが挙げられ、特に限定されるものではない。さらに、ポリアセタール樹脂(I)、炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)の混合順序においても特に制限されるものではなく、例えば、炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)のすべて、もしくはその一部をコーン型ブレンダー等で混合した後にポリアセタール樹脂(I)の加熱溶融物に添加する方法であってもよい。また、炭酸カルシウム(II)と有機酸(III)は、有機酸(III)の融点の以上でヘンシェルミキサー等を用いて攪拌、混合し、炭酸カルシウム(II)の表面をコーティングしていても差し支えない。
これらのうち、生産性に優れるといった観点から好ましい製造方法としてはポリアセタール樹脂(I)の加熱溶融物に炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)、脂肪酸エステル(IV)を添加、混合する方法、すなわち溶融混錬法をあげることができる。
上記溶融混練により製造する場合、その装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が最も好ましい。溶融混練の方法は、全成分を同時に混練する方法、あらかじめ予備混練したブレンド物を用いて混練する方法、更に押出機の途中から逐次、各成分をフィードし、混練する方法などをあげることができる。また、炭酸カルシウム(II)等をあらかじめ溶媒に分散させ、このスラリー状態で添加することも可能である。その場合、液体添加ポンプを用いてフィードすることも可能である。
ここで、溶融混練の条件は、特に制限されるものではないが、減圧度に関しては、0〜0.07Mpaが好ましい。混練の温度は、JISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点又は軟化点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160度から240度である。混練機での剪断速度は100(SEC−1)以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、1〜15分が好ましい。樹脂組成物中の溶媒は1質量%以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、生産性に優れ、得られるポリアセタール樹脂組成物の変色を抑える傾向にある。
上記溶融混錬法において、剛性、靭性等の機械的物性のバランスにより優れ、かつ耐クリープ寿命に特に優れるポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、さらにより好ましい製造方法としては、(I)100質量部のポリアセタール樹脂に対して、(II)5質量部を超えて100質量部未満の、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)が3以下であって、炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびその金属塩によって表面処理がなされていない炭酸カルシウム、および(III)0.005〜10質量部の有機酸をポリアセタール樹脂(I)の融点以上で同時に溶融混練する工程を含む製造方法をあげることができる。より具体的には、有機酸(III)に相当する炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸や、炭素数8から32の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の金属塩を用いて炭酸カルシウム(II)をヘンシェルコーティング等により予め表面処理またはコーティングするといった工程を経ることなく、ポリアセタール樹脂(I)の溶融状態で炭酸カルシウム(II)、炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などの有機酸(III)両者を同時に混練することである。該製造方法において、特に耐クリープ寿命等で優れる理由としては明らかではないが、ポリアセタール樹脂(I)、炭酸カルシウム(II)、有機酸(III)が分散と同時に良好な界面を形成するためと推測している。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れた特徴を有しているが、該ポリアセタール樹脂組成物100質量部に対して、さらにポリアルキレングリコール(V)を0.1から10質量部、好ましくは0.3から5質量部、より好ましくは0.5から3質量部、最も好ましくは1.0から2.0質量部添加してなるポリアセタール樹脂組成物は剛性、靭性などの機械的物性バランスや耐クリープ寿命などを保持しながら、耐酸性、とくに硫黄酸化物に対する耐性により優れる。そのため、ガソリン燃料やディーゼル燃料に直接接触する部品、例えば大型部品であるポンプモジュールや燃料バルブ、燃料タンクフランジ、燃料レベル計等に使用することが期待できる。
ここで、上記ポリアルキレングリコール(V)とは、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物であって、公知のものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックポリマー等をあげることができる。
該アルキレングリコールは、脂肪族アルコールによって末端の一部もしくは全てがエーテル化されていても差し支えない。例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオキチルフェニルエーテル等をあげることができる。
また、該アルキレングリコールは、脂肪酸によって末端の一部もしくは全てがエステル化されていても差し支えない。具体的には、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等をあげることができる。
このうち、コスト的な観点から、好ましいポリアルキレングリコール(V)としては、ポリエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールをあげることができる。さらに酸に対する耐性に優れるといった観点から好ましい数平均分子量としては10000〜45000であり、さらに好ましくは13000〜35000であり、さらに好ましくは15000〜25000である。
該ポリアルキレングリコール(V)の添加、配合方法は特に限定されるものではなく、例えば、前記(I)から(IV)からなるポリアセタール樹脂組成物を製造する際に添加されてもよし、該ポリアセタール樹脂組成物に対して溶融混錬法やマスターバッチ法によって添加されてもよい。
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、耐侯(光)安定剤、離型剤、摺動性付与剤、潤滑剤、結晶核剤、無機充填材、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマー、顔料などをあげることができる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れる。また、成形品の反りやウエルド強度にも優れる特徴があるため、さまざまな用途の部品に使用することができる。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリン燃料およびディーゼル燃料タンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター及び、ボタン、散水用のノズル及び、散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び、床材の支持具、電動シャッター構造部品など建築用品、使い捨てカメラ、玩具、パチンコ、パチスロ等の遊戯台関連、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品などとして好適に使用できる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
(1)メルトフローインデックス(MFI:g/10min.)
ASTM−D1238により東洋精機(株)製のMELT INDEXERを用いて190℃、2160gの条件下で測定した。
(2)ポリアセタール樹脂およびポリアセタール樹脂組成物のホルムアルデヒド発生速度(ppm/min.)の測定
あらかじめ140℃で1時間乾燥処理を施したポリアセタール樹脂、またはポリアセタール樹脂組成物のペレット3gを、窒素気流(50NL/hr)下、220℃に加熱溶融し、発生するホルムアルデヒドを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定した。その際、加熱開始から2分後までのホルムアルデヒド発生量(ppm)をY、同10分後までをY10、同30分をY30、同50分をY50、同90分をY90としたときに、
2〜10分の発生速度(Y10−Y)/8(ppm/min.)
10分〜30分の発生速度(Y30−Y10)/20(ppm/min.)
50分〜90分の発生速度(Y90−Y50)/40(ppm/min.)
として算出した。これらの値はそれぞれ、ポリアセタール樹脂組成物に付着したホルムアルデヒド起因、ポリアセタール樹脂の末端分解によって生じるホルムアルデヒド起因、ポリアセタール樹脂の主鎖分解によって生じるホルムアルデヒド起因であり、これらの値が小さいことは、熱安定性に優れることを示す。
(3)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
炭酸カルシウム、カップリング剤処理済炭酸カルシウムの粒子の平均粒径、平均アスペクト比(平均長径および平均短径の測定)および形状の観察には以下の装置を用いて求めた。
ファインコーター:日本電子(株)製JFC−1600
コーティング条件は30mA、60秒間で行った。
走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製JSM−6700F
測定条件は加速電圧9.00kV、印加電流10.0μAで行った。
平均粒径は、得られた粒子像から無作為に選択した最低100個の粒子についてそれぞれの長径を計測し、平均粒径=平均長径=ΣLi2Ni/ΣLiNiの式に従って求めた。
平均アスペクト比は、得られた粒子像から無作為に選択した最低100個の粒子についてそれぞれの長径、短径を計測し、平均長径=ΣLi2Ni/ΣLiNi、平均短径=Σdi2Ni/ΣdiNi、平均アスペクト比L/d=(ΣLi2Ni/ΣLiNi)/(Σdi2Ni/ΣdiNi)の式に従って求めた。
(4)炭酸カルシウムおよびポリアセタール樹脂組成物中のCa,Na,Srの定量およびCaに対するNa,Srの量の算出
炭酸カルシウムまたは、ポリアセタール樹脂組成物0.5gを白金皿に秤量し、500℃電気炉で炭化する。冷却後、塩酸5mL及び純水5mLを加えヒーター上で煮沸溶解する。再び冷却し、純水を加え測定可能な濃度とし、ThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により各金属の特性波長によって定量を行った。その後、Caに対するNa,Srの量の算出を算出した。
(5)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
樹脂組成物中の最大凝集粒子径の観察
射出成形機(住友重機械工業(株)製SH―75)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出15秒、冷却25秒の射出成形条件でASTM D638のTYPEI試験片を成形し、ReichertNissei製クライオミクロトームを用いて試験片の中央部、樹脂流動方向に垂直な面から約50nmの超薄切片を作成した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、日立製作所(株)製HF2000用いて、5000〜3.0万倍の明視野像を撮影し、二次凝集粒子各々についてその最大の大きさを測定し、その値の最大値を最大凝集粒子径とした。ただし、凝集を形成する各粒子の大きさが、添加した炭酸カルシウムの平均粒径よりも明らかに大きい場合は他の添加剤であると判断し、測定からはずした。
(6)ポリアセタール樹脂組成物の物性
射出成形機(住友重機械工業(株)製SH―75)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出15秒、冷却25秒の射出成形条件で評価用ダンベル片、短冊片を得て、以下の項目について評価を行った。
(6−1)成形時の可塑化工程の安定性
可塑化工程の安定性を下記の基準によって評価した。
○可塑化時間が安定していた。
△可塑化時間に若干のばらつきが生じた。
×可塑化時間にばらつきが生じ、スクリューが空回りする問題が生じた。
(6−2)曲げ弾性率(GPa)および曲げ強度(MPa)
ASTM D790に準じて行った。
(6−3)引っ張り伸度(%)および引っ張り強度(MPa)
ASTM D638に準じて行なった。
(6−4)ノッチ付きIzod衝撃強度
ASTM D256に準じて行った。
(6−5)耐酸性試験
射出成形機(住友重機械工業(株)製SH―75)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度70℃に設定し、射出15秒、冷却25秒の射出成形条件でJIS3号タイプの評価用ダンベル片を得た。このダンベル片をガラス製耐圧ビンに入れ、ここに0.1Nギ酸水溶液と0.1N硫酸水溶液をそれぞれ等体積量まぜあわせて作成した混合水溶液を加えて密閉し、130±5℃で3、および6時間加熱処理を行った。その後、ダンベル片を流水で洗浄し、23℃、湿度50%で48時間乾燥した。その際の質量減、引っ張り強度保持率(以下の式)、試験後の引っ張り伸度を求めた。
質量減=(試験後のダンベル片の質量)/(試験前のダンベル片の質量)×100(%)
引っ張り強度保持率=(試験後の引っ張り強度)/(試験前の引っ張り強度)×100(%)
(6−6)摺動試験
東洋精密工業(株)製ピン/プレート試験機AFT−15MSを用いて、ピン側として、SUS314、プレート側に評価用ダンベル片をセットして、往復速度30mm/s、往復距離20mm、荷重 2Kg、温度25度、湿度50%の条件で行った。そのとき5000回の往復における摩擦係数と、試験終了後のダンベル片の削れた量を磨耗深さ(μm)として測定した。
(6−7)クリープ試験
東洋精密製作所(株)製クリープ試験機100−6を用いて、JIS3号タイプのダンベル試験片に荷重応力10MPa、温度130度の条件で引っ張り試験片が破断するまでの時間を比較した。
また、実施例、比較例には下記成分を用いた。
<ポリアセタール樹脂>
(a−1)旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(コポリマー) テナック(登録商標)HC450
MFI=10g/10min.
ホルムアルデヒド発生速度:
(Y10−Y)/8(ppm/min.)=6
(Y30−Y10)/20(ppm/min.)=8
(Y90−Y50)/40(ppm/min.)=7
(a−2)旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(コポリマー) テナック(登録商標)HC450を65質量部と、旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(コポリマー) テナック(登録商標)HC750を35質量部混合したもの
MFI=15g/10min.
ホルムアルデヒド発生速度:
(Y10−Y)/8(ppm/min.)=7
(Y30−Y10)/20(ppm/min.)=10
(Y90−Y50)/40(ppm/min.)=7
(a−3)旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(コポリマー) テナック(登録商標)4520
MFI=10g/10min.
ホルムアルデヒド発生速度:
(Y10−Y)/8(ppm/min.)=3
(Y30−Y10)/20(ppm/min.)=4
(Y90−Y50)/40(ppm/min.)=3
(a−4)旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(ブロックコポリマー) テナック(登録商標)AC450
MFI=10g/10min.
ホルムアルデヒド発生速度:
(Y10−Y)/8(ppm/min.)=4
(Y30−Y10)/20(ppm/min.)=3
(Y90−Y50)/40(ppm/min.)=8
(a−5)旭化成ケミカルズ(株)ポリアセタール樹脂(ホモポリマー) テナック(登録商標)4010
MFI=10g/10min.
ホルムアルデヒド発生速度:
(Y10−Y)/8(ppm/min.)=2
(Y30−Y10)/20(ppm/min.)=3
(Y90−Y50)/40(ppm/min.)=2
<炭酸カルシウム>
(b−1)丸尾カルシウム(株)製カルファイン200M
(b−2)神島化学工業(株)製炭酸カルシウム
(b−3)(b−2)神島化学工業(株)製炭酸カルシウム100質量部に対して100質量部に対して、ステアリン酸(川研ファインケミカルズ(株)製F−3)3質量部を添加して、ヘンシェルミキサーにて120℃、5000rpmで10分間攪拌を行い、表面処理を施したもの。
(b−4)丸尾カルシウム(株)製MSK−PO
(b−5)白石工業(株)製Brilliant−15
(b−6)(b−5)白石工業(株)製Brilliant−15を同様にステアリン酸で表面処理したもの。
(b−7)丸尾カルシウム(株)製カルテックス5
(b−8)(b−7)丸尾カルシウム(株)製カルテックス5を(b−6)と同様にステアリン酸で表面処理を施したもの。
(b−9)丸尾カルシウム(株)製ナノコートS−25
(b−10)白石工業(株)製PC
(b−11)(b−10)白石工業(株)製PCを(b−6)と同様にステアリン酸で表面処理を施したもの。
(b−12)白石工業(株)製シルバーW
(b−13)(b−12)白石工業(株)製シルバーWを(b−6)と同様にステアリン酸で表面処理を施したもの。
(b−14)丸尾カルシウム(株)製スーパーS
(b−15)(b−14)丸尾カルシウム(株)製スーパーSを(b−6)と同様にステアリン酸で表面処理を施したもの。
(b−16)丸尾カルシウム(株)製R重炭
(b−17)(b−16)丸尾カルシウム(株)製R重炭を(b−6)と同様にステアリン酸で表面処理を施したもの。
<有機酸>
(c−1)ステアリン酸(川研ファインケミカル(株)製F−3)
<脂肪酸エステル>
(d−1)エチレングリコールジステアレート(日本油脂(株)製ユニスターE275)
<ポリアルキレングリコール>
(e−1)エチレングリコール(三洋化成(株)製PEG−20000)
(e−2)エチレングリコール(三洋化成(株)製PEG−6000P)
<その他の添加剤>
(f−1)ハイドロタルサイトMg4.3Al(OH)12.6CO(協和化学工業(株)製DHT−4C)
[炭酸カルシウムの諸物性]
表1に用いた炭酸カルシウムの種類、平均粒径、平均アスペクト比等を示す。
[実施例1から30、参考例1から4および比較例1から22]
表2から表6に示した配合量でポリアセタール樹脂、炭酸カルシウム、有機酸等を計量した。二軸押し出し機(池貝(株)製PCM−30)を用いて、押出機のトップからそれぞれを添加して溶融混練し、ポリアセタール樹脂組成物を得た。その際、溶融混錬条件は温度200度、回転数150rpmで行った。評価結果を表2から表6に示す。
Figure 2012092355
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本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年1月21日出願の日本特許出願(特願2004−012980)、2004年3月26日出願の日本特許出願(特願2004−091048)、2004年3月26日出願の日本特許出願(特願2004−091049)、に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の樹脂組成物は、熱安定性や剛性、靭性などの機械的特性のバランスに優れ、かつ耐クリープ寿命、耐疲労性、さらに耐酸性に優れるために、自動車、電気電子、その他工業などの分野で好適に利用できる。

Claims (10)

  1. (I)100質量部のポリアセタール樹脂に対して、
    (II)5質量部を超えて100質量部未満の、平均粒径が0.1μmから1.5μm未満であり、かつ粒子の平均長径(L)と粒子の平均短径(D)の比である平均アスペクト比(L/D)が3以下であって、炭素数8から32の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびその金属塩によって表面処理がなされていない軽質炭酸カルシウム、および
    (III)0.005〜10質量部の有機酸を
    ポリアセタール樹脂(I)の融点以上で同時に溶融混練する工程からなるポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  2. ポリアセタール樹脂(I)の、窒素気流下、220℃で加熱した時の、加熱時間2分から10分、10分から30分、および50分から90分の間のホルムアルデヒド発生速度がそれぞれ、15ppm/min以下である請求項に記載の製造方法。
  3. ポリアセタール樹脂(I)が、下記式で表される少なくとも一種の第4級アンモニウム化合物を用いて、熱的に不安定な末端を処理して安定化させて得られた熱安定化ポリアセタール樹脂である請求項1または2に記載の製造方法。
    [R−n
    (式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6から20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6から20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1から30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表し、上記非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1から3の整数を表す。Xは水酸基、又は炭素数1から20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1から20の有機チオ酸の酸残基を表す。)
  4. ポリアセタール樹脂(I)が164〜172℃の融点を有するコポリマーである請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 軽質炭酸カルシウム(II)において、Caに対するNaの量が250ppm以下であり、かつCaに対するSrの量が500から2500ppmである請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 軽質炭酸カルシウム(II)の平均粒径が0.1μmから1.0μmである請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 軽質炭酸カルシウム(II)が有する、粒径1μm以下の粒子の含有率が90%以上である請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 軽質炭酸カルシウム(II)のBET比表面積が10〜200m/gである請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 軽質炭酸カルシウム(II)が球状粒子、立方体状粒子、直方体状粒子、不定形粒子またはこれらの混合物からなる請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 有機酸(III)が炭素数8から36の飽和脂肪酸である請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
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