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JP2009209429A - 耐摩耗性に優れた軸受用鋼材 - Google Patents

耐摩耗性に優れた軸受用鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】軸受に適用したときに転動時における耐摩耗性に優れ、しかもコストアップを招くことなく製造できるような、汎用性のある軸受用鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.95〜1.10%(質量%の意味、化学成分については以下同じ)、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下(0%を含まない)、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)、Cr:1.30〜1.60%を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、焼入れ・焼戻しした後の任意の断面における炭化物の平均面積率が10〜16%であると共に、炭化物の平均個数が0.35〜0.50個/μm2である。
【選択図】なし

Description

本発明は、軸受部品として用いたときに優れた耐摩耗性を発揮する様な軸受を製造するための鋼材に関するものである。
地球環境保全の観点から、軸受部品(以下、単に「軸受」と呼ぶことがある)は、軽量・小型化が進む傾向にあり、それに伴って軸受の使用環境は益々過酷になっている。そして過酷な使用環境の下で、軸受に対する面圧が増大する結果、転動時における軸受の摩耗が顕著化している。こうした摩耗が顕著化すると、軸受の精度が低下するため、軸受としての機能が十分に発揮されず、短期間で交換等のメンテナンスを実施する必要があり、問題となっている。
軸受の素材として用いられる鋼材(軸受用鋼材)として、従来からJIS G 4805(1999)に規定されるSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼が、自動車や各種産業機械等の種々の分野で用いられている。しかしながら、こうした軸受用鋼材を用いて通常の方法で軸受を構成しても、近年要求される耐摩耗性には対応できず、更なる改善が求められているのが実情である。
この問題に対し、鋼材(軸受用鋼材)そのものを改善して軸受の耐摩耗性を改善する技術も提案されている。例えば、特許文献1には、鋼材にMo,W,V等の炭化物形成元素を含有させることによって炭化物を多量に生成させ、これによって軸受用鋼材の耐摩耗性を向上させることが開示されている。しかしこの様な多量の合金元素の使用は、コスト、加工性、製造性に問題が生じやすく、SUJ2ほど汎用性に優れているとは考えにくい。
また、特許文献2では、肌焼鋼を素材とし、これに浸炭や浸炭窒化後に高周波焼入れを行って炭化物を微細分散させ、軌道面の表層部の炭素含有量および硬さを規定することによって、耐摩耗性を向上させる技術が提案されている。この技術では、焼入れ・焼戻し工程だけで軸受を製造できるSUJ2とは異なり、浸炭処理+高周波焼入れ処理を行って軸受を製造するものであるので、浸炭炉や高周波設備が必要となることや、従来の製造工程の変更を余儀なくされることになり、コストアップを招くばかりか、実用化が難しいと思われる。
一方、汎用性のあるSUJ2鋼を用いることを前提とし、その特性を改善する方法も提案されている。こうした観点から、特許文献3には、素材鋼材としてSUJ2鋼を用い、これに対して温間圧延を行うことによって、全炭化物に対して平均粒径0.5μm以下の炭化物を全炭化物に対して50面積%以上とすると共に、平均粒径1μm以上の炭化物を2面積%以下とすることによって、軸受の摩耗量の低減、更には高寿命化や音響特性の改善が図れることが示されている。
しかしながら、こうした技術によっても、耐摩耗性改善の点で不十分な場合がある。即ち、炭化物の面積率や大きさを規定するだけでは、炭化物間の距離の概念が存在せず、通常の製造方法では炭化物が偏って生成する場合が有り、炭化物生成量が少ない箇所から摩耗が生じやすく、良好な耐摩耗性が発揮されないことがある。
また温間圧延前の圧延組織において、大きな板状セメンタイトが生成していた場合には、温間圧延だけでは炭化物の微細化が不十分になるだけでなく、大きな板状セメンタイトが存在していた付近では、炭化物が偏った状態で存在するため、良好な耐摩耗性が得られないことがある。しかも、この技術では熱間圧延の後に更に温間圧延を行うものであるため、設備投資に要するコストアップを招くばかりか、汎用性の点も依然として解消されないままである。
特開昭63−143239号公報 特開2002−194438号公報 特開平10−259451号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、軸受に適用したときに転動時における耐摩耗性に優れ、しかもコストアップを招くことなく製造できるような、汎用性のある軸受用鋼材を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の軸受用鋼材とは、JIS G 4805(1999)で規定するSUJ2相当鋼、即ちC:0.95〜1.10%(質量%の意味、化学成分については以下同じ)、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下(0%を含まない)、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)、Cr:1.30〜1.60%を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、焼入れ・焼戻しした後の任意の断面における炭化物の平均面積率が10〜16%であると共に、炭化物の平均個数が0.35〜0.50個/μm2である点に要旨を有するものである。尚、焼入れ・焼戻しした後とは、鋼材を熱間圧延した後球状化処理し、引き続いて所定の形状としてから、焼入れ・焼戻しした後の状態を意味する。
本発明の軸受用鋼材では、SUJ2鋼を素材として用いることを前提とし、既存の設備を用いて製造条件を適切にすることによって、硬質の炭化物を理想的な分散状態とすることができ、コストアップを招くことなく、従来材に比べて摩耗速度を1/2以下にできるような耐摩耗性に優れた軸受を製造することのできる鋼材が実現でき、こうした軸受用鋼材は汎用性にも優れたものとなる。
本発明者らは、耐摩耗性に優れた軸受を製造するための鋼材(軸受用鋼材)を実現すべく様々な角度から検討した。その結果、軸受を耐摩耗性に優れたものとするためには、硬質の炭化物(セメンタイト)を理想的な状態に分散させ、局部的に摩耗する部分を極力低減することが重要であるとの知見が得られた。例えば、鋼材中の炭化物面積率が大きい状態であっても、分散状態が悪く(単位面積当りの個数が少ない)、炭化物が存在しない領域が多くなると、軸受部品全体としての良好な耐摩耗性が確保できなくなる。
一方、炭化物の分散状態が良好(単位面積当りの個数が多い)であっても、炭化物の面積率が小さくなれば、炭化物が存在しない部分が多くなり、この場合にも軸受全体としての耐摩耗性が悪くなる。即ち、軸受の転動時における耐摩耗性を改善するためには、軸受における炭化物の面積率を大きくすると共に、炭化物の単位面積(任意の断面)当りの個数を多くする必要がある。
本発明者らは、素材鋼材としてSUJ2相当鋼を用いて、軸受における炭化物の面積率を大きくすると共に、炭化物の単位面積(任意の断面)当りの個数を多くするための条件について検討した。また、軸受の炭化物の分散状態は焼入れ・焼戻し前の組織に大きく依存することから、焼入れ・焼戻し前の組織において炭化物の面積率や個数を理想的な状態に分散する必要がある。換言すれば、焼入れ・焼戻し前の鋼材の段階の組織において炭化物の面積率や個数が理想的な状態に分散されていれば、その鋼材を用いて所定の形状に成形した後焼入れ・焼き戻しして軸受部品とされた後においても、炭化物の面積率や個数は理想的な状態に分散して残ることになる。
その結果、熱間圧延をオーステナイト域で比較的低温で行うと共に、その後の球状化処理(球状化焼きなまし処理)の条件を適切にすれば、SUJ2相当鋼を用いても炭化物の面積率を所定量確保できると共に、炭化物の理想的な分散状態が得られ、優れた耐摩耗性を発揮する軸受を得るための鋼材(軸受用鋼材)が実現できた。
本発明の軸受用鋼材は、上記成分組成を満足する鋳片(例えば連続鋳造によって得られるスラブ鋳片)を、通常の分塊圧延および均熱処理(ソーキング炉による均熱拡散処理)等を行った後、熱間圧延および球状化処理(球状化焼なまし処理)を行うに際し、これらの条件を適切に制御することにより得られるが、このときの具体的条件は下記の通りである。
球状化組織における炭化物を確保するために、オーステナイト域で極力低温での熱間圧延を行うことが有効である。即ち、低温で熱間圧延を行えば、オーステナイト結晶粒が微細となり、これによって炭化物形成の核の起点となる粒界が多くなり、更には球状化処理時、母相に溶け込むのに時間がかかる初析セメンタイトも分散して生成するため、最終的に鋼材中の炭化物の個数を高めることができる。また、結晶粒の微細化に伴って、焼入れ性が低下し、圧延材のパーライト組織のラメラー間隔が大きくなるため、球状化時の炭化物の母相への溶け込みに時間がかかることになる。その結果、炭化物が残留しやすい状態となるため、炭化物の更なる増加が可能となる。従って、オーステナイト結晶粒を可能な限り微細にするため、A変態点以上、850℃以下で熱間圧延を行うことが有効である。
上記の熱間圧延の後は、球状化処理(球状化焼きなまし処理)を行うが、このときの条件は780〜810℃で4〜6時間加熱後、冷却速度を12〜18℃/時として680℃以下まで冷却することが有効である。球状化処理における冷却過程(加熱後の冷却過程)において、鋼材中の炭化物は成長する。このときの冷却速度を低下させれば、炭素の拡散量が多くなるため、炭化物の面積率を大きくすることができる。しかしながら、冷却速度が遅過ぎると、更なる炭素の拡散が進むため炭化物が粗大化凝集してしまい、炭化物の個数が減少することになる。その一方で冷却速度を速くすれば、炭素の拡散が十分でないため、炭化物が成長せず、炭化物面積率を確保できなくなる。こうしたことから、本発明において所定量の炭化物面積率および個数を確保するためには、球状化時の冷却速度(以下、「球状化処理時冷却速度」と呼ぶことがある)を12〜18℃/時に制御する必要がある。
球状化処理時の冷却停止温度は、680℃以下とする必要があるが、これは球状化がほとんど進行しない温度である。尚、一般的な球状化処理条件としては、780〜810℃で4〜6時間加熱後、冷却速度を10℃/時以下で徐冷し、600℃で冷却を停止した後放冷することが行われているが(例えば、「鋼の熱処理 改訂第5版」 社団法人鉄鋼協会編者 昭和56年8月20日発行、第427頁)、このような球状化処理では炭化物の個数は確保できない。
上記したような製造条件で、熱間圧延および球状化処理を施した鋼材を用い、焼入れ・焼戻しを行うことによって、炭化物の平均面積率(以下、単に「面積率」と呼ぶことがある)を10%以上に確保できると共に、単位面積当りの炭化物の平均個数(以下、単に「個数」と呼ぶことがある)を0.35個/μm2以上に確保できる鋼材であり、こうした鋼材によって耐摩耗性の良好な軸受を製造することができる。前記炭化物の面積率は増大すればするほど、耐摩耗性は向上するが、鋼材の化学成分や製造条件等の関係から16%程度が上限となる。こうしたことは、単位面積当りの炭化物の個数についても同様であり、前記炭化物の個数は多くなればなるほど、耐摩耗性は向上するが、鋼材の化学成分や製造条件等の関係から、0.50個/μm2程度が上限となる。
本発明の軸受用鋼材は、所定の部品形状に加工(必要により伸線加工されてから部品形状に加工)された後、焼入れ・焼戻しされて、軸受とされる(必要により軸受表面は研磨される)。本発明の軸受用鋼材は、基本的に軸受を容易に製造することのできる線状・棒状の鋼材として得られるが、そのサイズは、最終製品に応じて適宜決めることができる。即ち、本発明の軸受用鋼材は、製品に成形される前(圧延後)に、必要によって伸線加工された段階のものも含む趣旨である。
上記焼入れ処理は、例えば、800〜840℃に加熱され、その温度で所定時間(例えば、30〜60分)保持した後、油焼入れされ、その後焼き戻しされる。このときの焼戻し条件は、鋼材の大きさや形状によっても異なるが(例えば、球、コロ、輪)、通常は120〜180℃×60〜250分程度である。即ち、本発明の軸受用鋼材では、一般的に行われている上記焼入れ・焼戻し条件で、鋼材中の炭化物の面積率や個数が確保できる。
但し、焼入れ条件については、加熱時間が長すぎる場合には、炭化物が過剰に母相に溶け込み、炭化物の面積率、個数が確保できず、耐摩耗性が得られないことがある。こうしたことから、加熱時間は50分程度までとすることが好ましい(後記試験No.25)。
本発明の鋼材は、JIS G 4805(1999)で規定するSUJ2相当鋼であり、C:0.95〜1.10%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下(0%を含まない)、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)、Cr:1.30〜1.60%を満たすものである。
本発明の鋼材の基本的な化学成分組成は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物である。該不可避不純物としては、Ni,Mo,Cu等が挙げられ、JISに規定される通り、Ni:0.25%未満、Mo:0.08%未満、Cu:0.25%未満である。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
C:1.01%、Si:0.25%、Mn:0.36%、P:0.0014%、S:0.0005%、Cr:1.45%、残部:鉄および不可避不純物からなる鋼(SUJ2相当鋼)を連続鋳造で溶製し、155mm角のビレットに分塊圧延した後ソーキング炉(均熱炉)で加熱(加熱温度:1200℃)した。その後、下記表1に示す圧延温度で熱間圧延を行い、直径:70mmの圧延材(丸棒材)を得た。引き続き、795℃に加熱(加熱時間:6時間)した後、下記表1に示す冷却速度(球状化処理時冷却速度)で冷却する球状化処理(球状化焼きなまし処理)を行った(冷却停止温度:680℃、その後放冷)。尚上記鋼材について、下記(1)式に基づいて求められるA1変態点は、751℃である。このとき、2500mm間隔で炉体上部(高さ:約4200mm、幅:約2000mm)の熱電対にて雰囲気を制御した炉内に試料(鋼材)を投入して処理した。
1変態点=723−10.7×[Mn]−16.9×[Ni]+29.1×[Si]
+16.9×[Cr]+290×[As]+6.83×[W] …(1)
但し、[Mn],[Ni],[Si],[Cr],[As]および[W]は、夫々Mn,Ni,Si,Cr,AsおよびWの含有量(質量%)を示す。
Figure 2009209429
こうして得られた球状化処理材に対して、840℃に加熱して油焼入れを行うと共に、160℃×120分の条件で焼戻しした。尚、焼入れに際しては、加熱時間は基本的には30分とし、一部のものについては60分とした(後記試験No.25)。
得られた鋼材(焼入れ・焼戻し材)について、直径:60mm、厚さ:6mmのスラスト試験片を作製し、下記の方法で炭化物の面積率、個数、表面硬さを測定すると共に、耐摩耗性を評価した。作製したスラスト試験片の外観形状を図1に示す。尚、図1において、1はスラスト試験片、2は荷重ボール(直径:9.525mm)、3は軌道輪を夫々示し、直径Dは60mm,軌道輪幅Wは38.5mmである。これらの結果を、一括して下記表2に示す。
(炭化物の面積率、個数の測定方法)
炭化物の面積率は、スラスト試験片の試験面の軌道輪3付近を走査型電子顕微鏡(「JSM−T220型」 日本電子株式会社製)を用いて4000倍で3視野撮影し、「粒子解析Ver.3.0」(住友金属テクノロジー株式会社製)を用いて面積率を求め、3視野の平均値を求めた。炭化物の個数については、上記炭化物面積率測定時において得られた個数に対して、測定した視野の面積(356μm2)で除した値の平均値を求めた。尚、炭化物は、あまり小さくなると炭化物周囲が判断しにくくなることから、円相当直径(面積を同一としたときに相当する円の直径)が0.1μm以上(4000倍の写真上で0.4mm以上)を測定対象とした。
(硬さ測定方法)
図1に示したスラスト試験片(未試験のもの:試験を実施しない予備のサンプル)の軌道輪3上で、90°ずつ4箇所の位置(図1中、a〜dで示す)で、荷重98Nで測定し、その平均値を求めた。
(耐摩耗性の評価方法)
上記スラスト試験片に対して、転動疲労試験機(「FJ−5T」 株式会社富士試験機製作所製)を用いて評価した。このとき各鋼材における試験回数は、夫々16回ずつ(n=16)とした。このとき、面圧:5.24GPa、負荷速度:1500cpmで実施した。潤滑剤は、「クリセフオイルF8」(新日本石油株式会社製)を用い、摩耗速度は寿命に到達した後(軌道輪に剥離が発生した時点を寿命と判断)、軌道輪の摩耗深さを負荷回数で除して求め、その平均値(n=16)を用いた。摩耗深さについては、粗さ測定器「SE3300」(株式会社小坂研究所製)を用いて、上記4箇所を測定し、その平均値を求めた。この摩耗速度が10(×10-8)μm/回以下であれば、耐摩耗性に優れると判断した。
Figure 2009209429
これらの結果から次のように考察することができる。即ち、No.1〜9(試験No.の意味、以下同じ)は、本発明で規定する要件(炭化物の面積率、炭化物の個数)を満足する実施例であり、いずれも優れた耐摩耗性を発揮していることが分かる。
これに対し、No.10〜25のものは、本発明で規定する要件(炭化物の面積率、炭化物の個数)を外れるものであり、耐摩耗性が劣っている。
詳細には、No.10、11は、圧延温度が850℃よりも高く、球状化処理時の冷却速度が遅い場合である。これらは、オーステナイトの微細化効果が低いものの、炭化物の拡散が十分行われるので、炭化物の面積率は高くなる。しかしながら、球状化処理時の冷却速度が遅いので、炭化物の凝集が進行し、炭化物個数が不足し、耐摩耗性が劣っている。
No.12〜14は、圧延温度が850℃よりも高くなっており、球状化処理時の冷却速度が適正な場合であっても、オーステナイトの微細化効果が低いため、炭化物個数が確保できず耐摩耗性が不足している。
No.15、16は、圧延温度が850℃よりも高くなっており、球状化処理時の冷却速度が速すぎる場合である。オーステナイトの微細化効果が低く、更に炭化物が成長しないため、十分な炭化物面積率、個数が確保できず、耐摩耗性が劣っている。
No.17〜20は、圧延温度が高すぎ、オーステナイトの微細化効果が得られないため、球状化処理時の冷却速度が速くても遅くても、十分な炭化物面積率や個数を確保することができず、耐摩耗性が劣っている。
No.21、22は、適正な低温圧延を行った後、球状化処理時の冷却速度が遅い場合であり、十分な炭化物面積率が確保されているが、炭化物の凝集が進行して、炭化物の個数が確保できず、耐摩耗性が劣っている。
No.23、24は、適正な低温圧延を行った後、球状化処理時の冷却速度が速い場合であり、炭化物同士の凝集が進行しないため、炭化物の個数は確保できるが、成長に要する炭素の拡散が不十分なため、炭化物面積率が確保できず、耐摩耗性が劣っている。
No.25は、焼入れ時の加熱時間が長い場合であり、炭化物の、面積率、個数が確保されておらず、耐摩耗性が劣っている。
スラスト試験片の外観形状を示す説明図である。
符号の説明
1 スラスト試験片
2 荷重ボール
3 軌道輪

Claims (1)

  1. C:0.95〜1.10%(質量%の意味、化学成分については以下同じ)、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下(0%を含まない)、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)、Cr:1.30〜1.60%を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、焼入れ・焼戻しした後の任意の断面における炭化物の平均面積率が10〜16%であると共に、炭化物の平均個数が0.35〜0.50個/μm2であることを特徴とする耐摩耗性に優れた軸受用鋼材。
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