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JP2001065576A - 軸受部品素材 - Google Patents

軸受部品素材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】ショットピーニングの投射時間を過剰に長くす
ることなく、要求寿命を確保できる軸受部品素材を提供
する。 【解決手段】熱処理硬化させた鋼からなる軸受部品素材
において、ショットピーニング前の表層部の焼戻しマル
テンサイト組織を、炭化物の平均粒径が1μm未満、炭
化物の面積率が10〜15%、残留オーステナイト量を
7〜14%、硬さがHRC=61〜65に調整し、その
後ショットピーニングを行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、転がり軸受の軌
道輪等を製作するための軸受部品素材に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受は、軌道面の摩耗やピッチン
グと呼ばれる表面剥離の発生によって、寿命が大きく左
右される。このため、軸受部品には、炭素含有量の多い
軸受鋼や、浸炭処理を施すことにより表面部に浸炭層を
形成できる浸炭鋼が用いられ、さらに、その組織を、焼
き入れ焼戻し処理を施して、焼戻しマルテンサイト組織
とすることにより、摩耗を抑制するための所要の硬さと
ピッチングを防止するための靭性とが確保されている。
ところが、近年、自動車等に用いられる軸受について
は、使用条件が過酷になり、要求寿命が達成できなくな
ってきた。このため、要求寿命を確保できる軸受が求め
られ、上記の熱処理後の軸受部品に、ショットピーニン
グ処理を施して軌道面に圧縮残留応力を付与することに
より、寿命を改善することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ショットピーニング処理によっても、軸受の寿命がばら
つくために、要求される寿命を確実に確保する手段とし
て、ショットピーニングの投射時間を長くすることが行
われている。このため、生産効率が低く、コストが高い
という問題がある。
【0004】上記のような従来の問題点に鑑み、この発
明は、ショットピーニングの投射時間を過剰に長くする
ことなく、要求寿命を確保できる軸受部品素材を提供す
ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
のこの発明の軸受部品素材は、熱処理硬化させた鋼から
なり、ショットピーニングを行う表層部が焼戻しマルテ
ンサイト組織を呈する軸受部品素材において、上記焼戻
しマルテンサイト組織の、炭化物の平均粒径が1μm未
満であり、炭化物の面積率が10〜15%であり、残留
オーステナイト量が7〜14%であり、硬さがHRC=
61〜65であることを特徴とするものである。上記構
成の軸受部品素材では、ショットピーニングにより、投
射時間を長くすることなく表面から内部に向かって深く
塑性変形を施すことができる。このため、圧縮残留応力
を効果的に付与できるので、過酷な使用条件でも寿命ば
らつきを抑え長寿命化を達成できる。すなわち、この発
明は、従来の寿命ばらつきがショットピーニング前の軸
受部品素材の組織ばらつきによるものであり、熱処理組
織を、炭化物の平均粒径と、炭化物の面積率と、残留オ
ーステナイト量と、硬さとにより適正に制御して、ショ
ットピーニングによる塑性変形を表面から内部に深く付
与することにより、圧縮残留応力の効果を最大限に引き
出して寿命改善が達成できることを見出し、かかる知見
に基づいて完成されたものである。
【0006】なお、炭化物の平均粒径を1μm未満とし
たのは、1μm以上の炭化物が存在すると、ショットピ
ーニングによって付与する圧縮残留応力が表面から浅い
部位に留まるためである。炭化物の面積率を10〜15
%としたのは、15%を超えるとショットピーニングに
よって付与する圧縮残留応力が表面から浅い部位に留ま
るためであり、10%未満では、転動疲労寿命特性が損
なわれるためである。残留オーステナイト量を7〜14
%としたのは、7%未満では残留オーステナイトの変態
による圧縮残留応力が十分得られず、14%を超えると
表層部でマルテンサイト変態が優先的に起きて内部の残
留オーステナイトの変態が阻止され、その結果、圧縮残
留応力を内部にまで付与できないためである。硬さをH
RC=61〜65としたのは、65を超えるとショット
ピーニングによる塑性変形量が少なく圧縮残留応力を内
部にまで付与できないためであり、61未満では弾性変
形量が多くなることにによって塑性変形が減少し、同じ
く圧縮残留応力を内部にまで付与できないためである。
【0007】上記軸受部品素材に用いる鋼としては、軸
受鋼であるのが好ましい(請求項2)。この場合には、
表面からより深い部位まで圧縮残留応力を付与でき、寿
命をより効果的に向上させることができる。
【0008】
【実施例】以下、この発明の実施例について詳述する。
ただし、この発明はこの実施例のみに限定されるもので
はない。 [実施例1]実施例1として、SUJ2を用い、外周部に
R4.8の軌道溝を設けた、外径40.7mm、内径3
0mm、厚さ16mmの回転側軌道輪を製作し、軌道溝
に粗研削を施した後に、当該回転側軌道輪に焼入れ焼戻
し処理を施して、炭化物平均粒径を0.9μm、炭化物
の面積率を10%、残留オーステナイト量を14%、硬
さをHRC=61に調整した。 [実施例2]実施例2として、SUJ2を用い、実施例1
と同一形状の回転側軌道輪を製作した。当該回転側軌道
輪に焼入れ焼戻し処理を施して、炭化物平均粒径を0.
4μm、炭化物の面積率を12%、残留オーステナイト
量を9%、硬さをHRC=63に調整した。 [実施例3]実施例3として、SUJ2を用い、実施例1
と同一形状の回転側軌道輪を製作した。当該回転側軌道
輪に焼入れ焼戻し処理を施して、炭化物平均粒径を0.
7μm、炭化物の面積率を15%、残留オーステナイト
量を7%、硬さをHRC=65に調整した。 [比較例1]比較例1として、SUJ2を用い、実施例1
と同一形状の回転側軌道輪を製作した。当該回転側軌道
輪に焼入れ焼戻し処理を施して、炭化物平均粒径を1.
2μm、炭化物の面積率を19%、残留オーステナイト
量を9%、硬さをHRC=64に調整した。 [比較例2]比較例2として、SUJ2を用い、実施例1
と同一形状の回転側軌道輪を製作した。当該回転側軌道
輪に焼入れ焼戻し処理を施して、炭化物平均粒径を0.
8μm、炭化物の面積率を13%、残留オーステナイト
量を17%、硬さをHRC=67に調整した。
【0009】上記実施例、比較例について、ショットピ
ーニングを行い、ショットピーニング後の圧縮残留応力
の深さの調査と寿命試験とを行った。ショットピーニン
グはエアー直圧式装置を用い、表1に示す条件で行っ
た。寿命試験は、ショットピーニング処理後に精密研削
を行い、表層15μmを除去した後に、転動疲労試験を
行い、累積破損確率を測定し、寿命を比較した。
【0010】
【表1】
【0011】ショットピーニング後の圧縮残留応力の深
さは、実施例1〜3は150μm〜160μmであり、
比較例1〜2は70μm〜90μmであり、実施例1〜
3が深いことを確認した。図1は、実施例1〜3、比較
例1〜2について、ショットピーニング後に行った転動
疲労試験による寿命測定結果を示している。また、図中
に、ショットピーニング処理を施さない場合を比較例3
として示している。図1から明らかなように、この発明
の範囲の実施例1〜3は、比較例1〜2に比べ最大2倍
の寿命であり、かつ、寿命のばらつきが小さいことが分
かる。
【0012】
【発明の効果】以上のように、請求項1に係る軸受部品
素材によれば、ショットピーニングの照射時間を過剰に
長くすることなく、残留応力を効果的に付与できるの
で、生産効率の改善と、コストダウンとが図れる。
【0013】請求項2に係る軸受部品素材によれば、表
面からより深い部位まで圧縮残留応力を付与して、寿命
を効果的に向上させることができるので、より好適な軸
受部品素材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の軸受部品素材の寿命測定結果を示す
グラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱処理硬化させた鋼からなり、ショットピ
    ーニングを行う表層部が焼戻しマルテンサイト組織を呈
    する軸受部品素材において、 上記焼戻しマルテンサイト組織の、炭化物の平均粒径が
    1μm未満であり、炭化物の面積率が10〜15%であ
    り、残留オーステナイト量が7〜14%であり、硬さが
    HRC=61〜65であることを特徴とする軸受部品素
    材。
  2. 【請求項2】上記鋼が、軸受鋼である請求項1記載の軸
    受部品素材。
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