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JP2009154704A - ランフラットタイヤ - Google Patents

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JP2009154704A
JP2009154704A JP2007334806A JP2007334806A JP2009154704A JP 2009154704 A JP2009154704 A JP 2009154704A JP 2007334806 A JP2007334806 A JP 2007334806A JP 2007334806 A JP2007334806 A JP 2007334806A JP 2009154704 A JP2009154704 A JP 2009154704A
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Bunichi Yamashita
文一 山下
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Abstract

【課題】ランフラット耐久性を向上しつつ車両の片流れを改善させる。
【解決手段】カーカス6とベルト層7とサイド補強ゴム層11とを具えるランフラットタイヤ1である。ベルト層7は、第1のベルトプライ7Aと、該第1のベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配される第2のベルトプライ7Bとを具えるとともに、第1、第2のベルトプライ7A、7Bは、それぞれタイヤ軸方向で分割され、かつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコード27,28を有する2つのプライ片からなる。また、カーカス6は、アラミド繊維からなるカーカスコード20をトッピングゴムで被覆したカーカスプライ6Aからなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ランフラット耐久性を向上し得るとともに、車両の片流れを改善し得るランフラットタイヤに関する。
例えば、パンク等によりタイヤ内の空気が抜けた状態においても比較的長距離を走行(以下、このような走行を、単に「ランフラット走行」と言う。)しうるランフラットタイヤとして、サイドウォール部に、断面略三日月状のサイド補強ゴム層が設けられたサイド補強タイプのものが知られている(例えば特許文献1など参照)。
特開平2000−351307号公報
しかしながら、近年では、ランフラット走行の高速化及び長距離化の要請が強く、ランフラット耐久性の更なる向上が求められている。
また、ランフラットタイヤと言えども、適正に内圧が充填された通常走行時の直進安定性が求められるのは言うまでもない。特に、ハンドルを手放して所定の距離を走行する間、車両が直進方向線に対して片側に横流れする車両片流れを抑制することは、直進安定性を高める上で重要な課題となる。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐熱性に優れかつ高弾性であるアラミド繊維をカーカスコードに使用するとともに、ベルト層の各ベルトプライを、タイヤ軸方向で分割され、かつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコードを有する2つのプライ片で構成することを基本として、ランフラット耐久性を向上しつつ車両の片流れを抑制して直進安定性を向上しうるランフラットタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、トレッド部の内方かつ前記カーカスの半径方向外側に配されるベルト層と、前記サイドウォール部のカーカス内側に配された断面略三日月状のサイド補強ゴム層とを具えるランフラットタイヤであって、前記ベルト層は、タイヤ半径方向内側に配される第1のベルトプライと、該第1のベルトプライのタイヤ半径方向外側に配される第2のベルトプライとを具えるとともに、前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライは、それぞれタイヤ軸方向で分割されかつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコードを有する2つのプライ片からなり、しかも、前記カーカスは、タイヤ赤道に対して45〜90°の角度で配列したアラミド繊維からなるカーカスコードをトッピングゴムで被覆したカーカスプライからなることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記アラミド繊維コードは、次式(1)で示す撚り係数Tが0.50〜0.70である請求項1記載のランフラットタイヤである。
T=N×√{(0.125×D/2)/ρ}×10−3 …(1)
(ただし、Nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス(繊度)、ρはコード材料の比重である。)
また請求項3記載の発明は、前記第1のベルトプライのタイヤ軸方向の一方側のプライ片及び前記第2のベルトプライのタイヤ軸方向の他方側のプライ片は、同じ向きに傾けられたベルトコードを有し、かつ前記第1のベルトプライのタイヤ軸方向の他方側のプライ片及び前記第2のベルトプライのタイヤ軸方向の一方側のプライ片は、前記第1のベルトプライの一方側のプライ片と逆向きに傾けられたベルトコードを有する請求項1又は2記載のランフラットタイヤである。
また請求項4記載の発明は、前記第1のベルトプライ及び前記第2のベルトプライは、それぞれタイヤ赤道で分割されている請求項1乃至3のいずれかに記載のランフラットタイヤである。
また請求項5記載の発明は、前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライそれぞれにおいて、2枚のプライ片は、タイヤ軸方向に離間して配され、前記第1のベルトプライは、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向の一方側にプライ片が離間した離間部を有するとともに、前記第2のベルトプライは、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向の他方側に離間部を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のランフラットタイヤである。
また請求項6記載の発明は、前記第1のベルトプライの離間部と、前記第2のベルトプライの離間部とは、タイヤ赤道に関してタイヤ軸方向の対称位置に設けられる請求項5に記載のランフラットタイヤである。
また請求項7記載の発明は、前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライの各離間部のタイヤ軸方向の長さは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されしかも無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、各ベルトプライのタイヤ軸方向の幅の0.15倍以下である請求項5又は6に記載のランフラットタイヤである。
また請求項8記載の発明は、タイヤ赤道から前記離間部までのタイヤ軸方向の距離は、第1のベルトプライの0.05〜0.15倍である請求項5乃至7の何れかに記載のランフラットタイヤである。
また請求項9記載の発明は、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されしかも無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、タイヤ外面のプロファイルは、タイヤ赤道面Cからタイヤ最大断面幅SWの45%の距離SPを隔てるタイヤ外面上の点をPとするとき、タイヤ外面の曲率半径RCが、タイヤ赤道点CPから前記点Pに至るまでの間で徐々に減少するとともに、前記タイヤ赤道面Cから前記タイヤ最大断面幅SWの半幅(SW/2)の60%、75%、90%及び100%の距離X60、X75、X90及びX100 を夫々隔てるタイヤ外面上の各点と、タイヤ赤道点CPとの間の各半径方向距離をそれぞれY60、Y75、Y90及びY100 とし、かつタイヤ断面高さをSHとするとき、
0.05< Y60 /SH ≦0.1
0.1< Y75 /SH ≦0.2
0.2< Y90 /SH ≦0.4
0.4< Y100 /SH ≦0.7
の関係を満足する請求項1乃至8の何れかに記載のランフラットタイヤである。
なお前記正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。また前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" を意味するが、乗用車用タイヤの場合には180kPaとする。
本発明のランフラットタイヤは、アラミド繊維からなるカーカスコードを、トッピングゴムで被覆したカーカスプライからなる。これにより、タイヤの剛性と荷重支持能力とが高められる。また、アラミド繊維コードは、耐熱性に優れるので、ランフラット走行時の温度上昇によるコード損傷についても抑制できる。これらの相乗作用により、本発明のランフラットタイヤは、実質的な質量増加なしに耐久性が向上する。
また、車両の片流れを抑制するためには、セルフアライニングトルクが0のときにタイヤに発生する横力である残余コーナリングフォース(以下、「残余CF」と表示することがある)を低減することが有効である。本発明では、ベルト層のタイヤ半径方向内、外に配される第1及び第2のベルトプライは、それぞれタイヤ軸方向で分割されかつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコードを有する2つのプライ片からなる。このようなプライ片は、ベルトコードの傾斜に起因して生じる残余CFを互いに相殺させることができるので、車両片流れを効果的に抑制し、直進安定性を高めうる。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のランフラットタイヤ1の正規状態におけるタイヤ子午断面図である。本実施形態のランフラットタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の半径方向外側に配されるベルト層7と、ベルト層の半径方向外側に重ねられたバンド10とを具える。
前記カーカス6は、タイヤ赤道に対して45〜90°の角度で配列されるカーカスコードをトッピングゴムにより被覆した1枚以上のカーカスプライから形成される。本実施形態のカーカス6は、カーカスコードがタイヤ赤道に対して80〜90°の角度で配列された1枚のカーカスプライ6Aから構成されている。また、カーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間を跨るトロイド状の本体部6aと、前記ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された一対の折返し部6bとを具える。
前記本体部6aと折返し部6bとの間には、例えばゴム硬度が65〜98度の硬質のゴムからなり、前記ビードコア5から半径方向外側に先細状にのびるビード補強用のビードエーペックスゴム8が配される。なお、本明細書においては、「ゴム硬度」は、JIS−K6253に準拠し、温度23℃で測定されたデュロメータータイプAによる硬さを意味する。このビードエーペックスゴム8のビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さhaは、特に限定はされないが、小さすぎるとランフラット耐久性が低下するおそれがあり、逆に大きすぎるとタイヤ質量の過度の増加や乗り心地の悪化を招くおそれがある。このような観点より、ビードエーペックスゴム8の前記高さhaは、タイヤ断面高さSHの10〜60%、より好ましくは20〜50%が望ましい。
本実施形態では、カーカスプライ6Aの折返し部6bが、ビードエーペックスゴム8を半径方向外側に超えて巻き上がり、その外端部6beが、本体部6aとベルト層7との間に挟まれて終端するいわゆる超ハイターンアップ構造を具える。これにより、1枚のカーカスプライ6Aを用いて、サイドウォール部3が効果的に補強される。また折返し部6bの外端部6beが、ランフラット走行時に大きく撓むサイドウォール部3から遠ざかるため、該外端部6beを起点とした損傷が好適に抑制される。このような観点より、折返し部6bとベルト層7との重なり部のタイヤ軸方向幅EWは、好ましくは5mm以上、さらには10mm以上が好ましい一方、軽量化の観点より、好ましくは40mm以下、さらには30mm以下が好ましい。なお前記カーカス6が複数枚のカーカスプライから形成される場合、少なくとも1枚のカーカスプライがこのようなハイターンナップ構造を有するのが好ましい。
前記バンド10は、タイヤ赤道に対して5°以下の角度で螺旋状に巻回されるバンドコードをトッピングゴムにて被覆した1枚以上のバンドプライからなり、前記ベルト層7を拘束し、操縦安定性及び高速耐久性等を向上させる。前記バンドプライとしては、ベルト層7のタイヤ軸方向外端部のみを被覆する左右一対のエッジバンドプライ、及びベルト層7の略全幅を覆うフルバンドプライがあり、これらを単独で又は組み合わせて使用される。本実施形態のバンド10は、1枚のフルバンドプライからなる。
また前記サイドウォール部3には、ランフラット性能を発揮させるためのサイド補強ゴム層11が配される。このサイド補強ゴム層11は、最大厚さを有する中央部分11aから、タイヤ半径方向内端11i及び外端11oに向かってそれぞれ厚さを徐々に減じてのびる断面略三日月状をなす。前記内端11iは、ビードエーペックスゴム8の外端よりもタイヤ半径方向内側に位置し、前記外端11oは、ベルト層7の外端7eよりもタイヤ軸方向内側に位置する。とりわけ、サイド補強ゴム層11とビードエーペックスゴム8とのタイヤ半径方向の重なり幅Wiは好ましくは5〜50mm、かつ、サイド補強ゴム層11とベルト層7とのタイヤ軸方向の重なり幅Woは、好ましくは0〜50mmが好ましい。これらにより、前記外端11o及び内端11iでの剛性段差の発生を抑えることができる。
前記サイド補強ゴム層11は、本実施形態では、カーカス6の本体部6aの内側(タイヤ内腔側)に配される。そのため、サイドウォール部3の曲げ変形時には、サイド補強ゴム層11には主として圧縮応力が、またコード材を有するカーカスプライ6Aには主として引張応力が作用する。ゴムは圧縮に強く、かつコード材は引張に強いため、上記のようなサイド補強ゴム層11の配設構造は、サイドウォール部3の曲げ剛性を効率良く高め、ランフラット走行時のタイヤの縦撓みを効果的に低減しうる。
前記サイド補強ゴム層11の複素弾性率E*は、好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上が望ましい。前記複素弾性率E*が5MPa未満であると、ランフラット走行時の圧縮歪が大きくなって、ランフラット性能が低下するおそれがある。逆に、前記複素弾性率E*が高すぎても、タイヤの縦バネ定数が過度に上昇して乗り心地を悪化させる。このような観点より、前記サイド補強ゴム層11の複素弾性率E*は、好ましくは40MPa以下、さらに好ましくは30MPa以下が望ましい。またサイド補強ゴム層11の最大厚さtは、タイヤサイズや、タイヤのカテゴリ等によって適宜設定されるが、乗用車用タイヤの場合5〜20mmが好適である。
また、本実施形態のビード部4には、リムプロテクトリブ12が凸設される。このリムプロテクトリブ12は、図2に示されるように、リムフランジJFを覆うようにタイヤの基準輪郭線jから突出してタイヤ周方向に連続してのびるリブ体であり、前記リムフランジJFの先端を越えてタイヤ軸方向外側に最も突出する突出面部12cと、この突出面部12cからビード外側面に滑らかに連なる半径方向内側の斜面部12iと、前記突出面部12cからタイヤ最大幅点M近傍位置で前記基準輪郭線jに滑らかに連なる半径方向外側の斜面部12oとで囲まれる断面略台形状をなす。なお前記内側の斜面部12iは、リムフランジJFの円弧部の外面よりも大きい曲率半径rで形成された凹円弧面で形成され、通常走行時においては、縁石等からリムフランジJFを保護する。またランフラット走行時には、内側の斜面部12iがリムフランジJFの円弧部に寄りかかって接触するため、ビード変形量を軽減でき、ランフラット時の操縦安定性及びランフラット耐久性の向上に役立つ。
また、本発明では、ランフラット走行時の操縦安定性及び耐久性を向上するために、前記カーカスコード20にアラミド繊維が採用される。
前記アラミド繊維は、高弾性を有する。このため、ランフラットタイヤ1のカーカスコードに使用することにより、タイヤの荷重支持能力を高めることができる。従って、例えばカーカスプライ枚数の低減、カーカスコードの細径化及び/又はコード配列密度(コードエンド数)の低下などによるタイヤの軽量化を図りながら、ランフラット時のタイヤ変形量を低減できる。
しかも、アラミド繊維は、他の有機繊維コード材料に比べて、100〜150℃の高温下においても弾性率の低下が小さく、耐熱性に優れる。従って、ランフラット走行時のタイヤ温度上昇によっても、カーカスコードの強度低下、弾性率の低下によるタイヤ変形量の増加及びそれに伴うさらなるタイヤ温度上昇などを防止でき、その結果、ランフラット耐久性を確実に向上できる。さらにタイヤ温度上昇によっても、高弾性率を維持してタイヤ剛性を高めうるため、ランフラット時の操縦安定性を向上することもできる。これによりランフラット走行における高速化及び長距離化が達成される。
なお、アラミド繊維は、弾性率が高いゆえに耐疲労性に劣る傾向がある。そのため本実施形態では、カーカスコード20に、図3に略示するように、下撚りしたアラミド繊維のフィラメント束21(即ちストランド21)の2本を、さらに上撚りにて互いに撚り合わせた2本撚り構造が採用されるとともに、このときの撚り合わせを、従来よりも高い撚り係数Tで行うことが望ましい。
ここで、前記「撚り係数T」は、コードの上撚り数をN(単位:回/10cm)、コード1本のトータル表示デシテックス(トータル繊度)をD(単位:dtex)、コード材料の比重をρとしたとき、次式(1)で示される。
T=N×√{(0.125×D/2)/ρ}×10−3 …(1)
そして、この撚り係数Tを0.50〜0.70の範囲まで高めることにより、アラミド繊維コードの欠点である耐疲労性を改善することができ、例えばレーヨンコードを用いた場合に比して、ランフラット耐久性を大幅に向上することが可能となる。なお前記カーカスコード20の撚り係数Tが0.50を下回ると、耐疲労性の向上効果が少なく、ひいてはランフラット耐久性を十分に高めることができない。逆に、撚り係数Tが0.70を上回ると、コードの撚り加工が難しくなり生産性に不利となる。とりわけ、撚り係数Tは、0.60以上が好ましく、これによりコードの耐疲労性がさらに改善され、ランフラット耐久性が向上される。
また、本実施形態において、カーカスコード20には、アラミド繊維の重要な特性である高弾性を活かして優れた補強効果を発揮させるために、2本撚り構造が採用されている。そのとき、下撚り数と、上撚り数とが等しい所謂バランス撚りが好ましいが、撚り数の比(下撚り数/上撚り数)が0.2〜2.0の範囲内、好ましくは0.5〜1.5の範囲内で、下撚り数と上撚り数とを相違させても良い。
また前記トータル表示デシテックスD(繊度)は、特に限定されるものではないが、ランフラットタイヤの場合、1500〜5000dtexの範囲が好ましい。またカーカスプライ6Aにおけるコードエンド数n(本/5cm)と前記トータル表示デシテックスDとの積は、70000〜150000の範囲が好ましく、70000未満では、アラミド繊維コードとはいえ、ランフラット耐久性や操縦安定性が不十分となり、逆に150000を越えると、カーカス剛性が過大となって乗り心地を損ねるとともに、質量やコストの不必要な増加を招く。このような観点より、前記積(D×n)は、より好ましくは100000以上であり、かつ、120000以下がさらに好ましい。
また耐疲労性に原因するカーカスコード20の損傷は、タイヤ変形時に圧縮歪を受ける部位、即ち図2に示すように、折返し部6bのうちのビード側部分6b1にて発生しやすい。しかしながら、本実施形態では、前述の如くビード部4にリムプロテクトリブ12を凸設しているいため、ランフラット走行時におけるビード変形が軽減され、カーカスコード20に圧縮歪が作用しにくくなる。その結果、アラミド繊維を採用した場合のカーカスコード20の疲労損傷をさらに抑えることができ、ランフラット耐久性の一層の向上が図れる。
さらに、本実施形態では、前記カーカスプライ6Aのトッピングゴムとして、複素弾性率E*が、5〜13MPaの範囲と、従来のカーカストッピングゴムに比して高弾性のゴムを採用している。なお従来のカーカストッピングゴムの複素弾性率E*は3.8MPa程度である。このように高弾性のゴムをトッピングゴムに採用することで、タイヤ変形時、カーカスコード20に掛かる歪みを低減でき、ランフラット耐久性のさらなる向上を達成しうる。なお複素弾性率E*が5MPaを下回ると前記効果が期待できず、逆に13MPaを上回ると、ゴムが硬くなり過ぎ、乗り心地が一気に悪化してしまう。このような観点から、複素弾性率E*は、好ましくは5.5MPa以上、さらに好ましくは6MPa以上が好ましく、また好ましくは11MPa以下、さらに好ましくは9MPa以下が好ましい。
なお、本明細書において、前記複素弾性率は、JIS−K6394の規定に準じ、次に示される条件で(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
また、図4に展開して示されるように、前記ベルト層7は、タイヤ半径方向内側に配される第1のベルトプライ7Aと、該第1のベルトプライ7Aのタイヤ半径方向外側に配される第2のベルトプライ7Bとから構成される。そして、第1及び第2のベルトプライ7A、7Bは、それぞれタイヤ軸方向で分割されかつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコード27、28を有する2つのプライ片によって形成される。
本実施形態において、第1のベルトプライ7Aは、タイヤ軸方向の一方側S1に配された一方側の第1プライ片25Aと、タイヤ軸方向の他方側S2に配された他方側の第1プライ片25Bとによって形成される。これらのプライ片25A及び25Bは、タイヤ赤道上でその側縁が実質的に突き合わされるように配置されている。また、一方側の第1プライ片25Aのタイヤ軸方向の幅Wa1は、他方側の第1プライ片25Bのタイヤ軸方向の幅Wa2と実質的に等しく形成される。
また、第2のベルトプライ7Bも、タイヤ軸方向の一方側S1に配された一方側の第2プライ片26Aと、タイヤ軸方向の他方側S2に配された他方側の第2プライ片26Bとによって形成される。これらのプライ片26A及び26Bは、タイヤ赤道上でその側縁が実質的に突き合わされるように配置されている。また、一方側の第2プライ片26Aのタイヤ軸方向の幅Wb1は、他方側の第2プライ片26Bのタイヤ軸方向の幅Wb2と実質的に等しく形成される。
なお、各第2のプライ片26A及び26Bの幅Wb1(=Wb2)は、前記各第1のプライ片25A及び25Bの幅Wa1(=Wa2)よりも小さく形成されている。これにより、第1のベルトプライ7Aの外縁7Ae(これは、ベルト層7の外端7eをも構成する。)と、第2のベルトプライ7Bの外縁7Beとが重なることによる大きな剛性段差が形成されるのを防止できる。なお、前記外縁7Ae及び7Beは、いずれもタイヤ赤道に関して実質的に対称位置に設けられている。
前記一方側の第1プライ片25A及び他方側の第2プライ片26Bは、同じ向き(本実施形態では右上がり)に傾けて配列されたベルトコード27を具える。また、他方側の第1プライ片25B及び一方側の第2プライ片26Aは、それぞれ同じ向きかつ前記一方側の第1プライ片25Aと逆向き(本実施形態では左上がり)に傾けられたベルトコード28を具えている。前記各ベルトコード27及び28は、本実施形態ではともに同一のスチールコードが採用されるが、必要に応じてレーヨン又は芳香族ポリアミド等の高弾性の有機繊維コードを採用することもできる。
さらに、本実施形態では、前記ベルトコード27のタイヤ赤道に対する角度α1が、前記ベルトコード28のタイヤ赤道に対する角度α2と実質的に等しく構成されるとともに、各ベルトコード27、28の打ち込み本数も実質的に同一である。なお、前記ベルトコードの角度α1及びα2は、好ましく10〜45度、より好ましくは10〜35度の範囲で設定されるのが望ましい。なお、前記角度α1及びα2は、本実施形態では同一であるが、必要に応じて異ならせても良い。
このような第1及び第2のベルトプライ7A、7Bからなるベルト層7は、タイヤ赤道に関して左右対称にベルトコード27及び28が配列される。特に、最も外側に配された第2のベルトプライ7Bのベルトコードが左右対称に配列されるため、各プライ片のベルトコードに起因して生じる残余CFを互いに相殺させ、片流れを効果的に抑制して直進安定性を高めうる。なお、一方側の第1プライ片25A及び一方側の第2プライ片26Aはベルトコード27、28が互いに交差するように重なるとともに、他方側の第2プライ片25B及び他方側の第2プライ片26Bも、ベルトコード27、28が互いに交差するように重ねられる。これにより、ベルト層7の剛性を維持し、耐摩耗性や操縦安定性の悪化を防止できる。
また、本実施形態のベルト層7は、第1及び第2のベルトプライ7A、7Bがいずれもタイヤ軸方向で分割されている。換言すれば、ベルトコードは、各ベルトプライ7A、7Bにおいて、一方の側縁から他方の側縁まで連続してのびていないので、一般的なベルト層に比べて剛性が小さくなる。これは、縦バネが大きい傾向があるランフラットタイヤ1において、トレッド部2の剛性を適度に緩和して衝撃吸収能力を高め、乗り心地の著しい悪化を防止するのに役立つ。また、前述の通り、カーカスコード20には、高弾性のアラミド繊維コードが用いられるため、トレッド部2に必要な剛性を損ねることもない。
また、上記実施形態では、第1及び第2のベルトプライ7A、7Bは、いずれもタイヤ赤道にプライの分割位置e1、e2を有するものを示したが、例えば図5に示されるように、この分割位置を変更しても良いのは言うまでもない。例えば、図5(a)の態様では、第1のベルトプライ7Aの分割位置e1と、第2のベルトプライ7Bの分割位置e2とは、タイヤ赤道とは異なる同一の位置に設けられる。このようなベルト層7では、一定の方向に残余CFを小さく生じさせることによって、直進走行時のふらつきを防止するのに効果がある。また、第1のベルトプライ7Aと第2のベルトプライ7Bとの重なり部分において、全てのベルトコードをタイヤ半径方向内外で互いに交差させることができ、図4の実施形態と同様に、ベルト層7の剛性低下を効果的に防止し、耐摩耗性や操縦安定性の向上に役立つ。
また、図5(b)の態様では、第1のベルトプライ7Aの分割位置e1と、第2のベルトプライ7Bの分割位置e2とは、タイヤ赤道を除いた互いに異なる位置に設けられる。この実施形態では、第1のベルトプライ7Aの分割位置e1は、タイヤ赤道の他方側S2に設けられる一方、第2のベルトプライ7Bの分割位置e2は、タイヤ赤道の一方側S1に設けられる。このため、分割位置e1、e2間には、ベルトコードが一方向にのみ傾斜する領域Zが形成される。また、この実施形態では、分割位置e1と分割位置e2とは、タイヤ赤道に関してタイヤ軸方向の対称位置に設けられる。このようなベルト層7も、前記領域Zによってふらつきを抑制する他、トレッド部2のクラウン部の剛性が緩和されるため、乗り心地を向上させる点で望ましい。
また、図5に示される各実施形態において、車両の片流れを効果的に抑制するためには、例えば、第1のベルトプライ7Aにおいて、一方側の第1プライ片25Aの幅Wa1と、他方側の第1プライ片25Bの幅Wa2との比Wa1:Wa2は、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30、さらに好ましくは40:60〜60:40の範囲で適宜定めることが望ましい。なお、第2のベルトプライ7Bのプライ片ついても同様の幅の比率が適用されるのが望ましい。
また、図6及び図7には、本発明の他の実施形態のランフラットタイヤのトレッド部2の部分拡大断面図及びそのベルト層7の展開図を示す。この実施形態では、第1のベルトプライ7A及び第2のベルトプライ7Bにおいて、それぞれのプライ片が、タイヤ軸方向に離間して配される。即ち、本実施形態では、第1のベルトプライ7Aは、タイヤ赤道の一方側S1に、一方側の第1プライ片25Aと、他方側の第1プライ片25Bとが離間した第1離間部30Aが形成される。他方、第2のベルトプライ7Bは、タイヤ赤道の他方側S2に、一方側の第2プライ片26Aと、他方側の第2プライ片26Bとが離間した第2離間部30Bが形成される。なお、第1、第2離間部30A、30Bの位置については、このような実施形態に限定されるわけではなく、例えば、第1離間部30Aが、タイヤ赤道の他方側S2に、かつ、第2離間部30Bが、タイヤ赤道の一方側S1にそれぞれ形成されてもよい。
このようなベルト層7は、前記実施形態と同様、第1、第2のベルトプライ7A、7Bが、それぞれ互いに逆向きに傾けられたベルトコード27、28を有する2つのプライ片からなるため、ベルトコードの傾斜に起因した残余CFを相殺させ、車両の片流れを低減し得る。また、ベルト層7は、第1、第2離間部30A及び30Bによって、従来のベルト層に比べてプライ量を削減しうる結果、タイヤを軽量化し得る。また、第1離間部30A及び第2離間部30Bは、ベルトコードを有しないため、その部分のベルト層7の剛性を緩和でき、ひいては乗り心地をさらに高めるのに役立つ。また、前述の通り、カーカスコード20には、高弾性のアラミド繊維コードが用いられているため、これらの作用をランフラット性能を低下させることなく実現できる。
ここで、第1離間部30A及び第2離間部30Bのタイヤ軸方向の幅Rw1及びRw2は、特に限定されるものではないが、小さすぎると十分な軽量化が図れないおそれがあり、逆に、大きすぎるとベルト層7の剛性が極度に低下するとともに、ランフラット走行時にショルダー部のリフティングが大きくなり、ひいてはランフラット耐久性を低下させるおそれがある。このような観点より、第1離間部30Aのタイヤ軸方向の幅Rw1は、第1のベルトプライ7Aの幅(外縁7Ae、7Ae間のタイヤ軸方向距離)Bw1の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.1倍以上が望ましく、また、好ましくは0.15倍以下が望ましい。同様に、前記第2離間部30Bのタイヤ軸方向の幅Rw2は、第2のベルトプライ7Bの幅(外縁7Be、7Be間のタイヤ軸方向距離)Bw2の好ましくは0.05倍以上、より好ましくは0.1倍以上が望ましく、また、好ましくは0.15倍以下が望ましい。
とりわけ、ベルト層7の構造対称性を極力確保して片流れを防止するために、第1離間部30Aの幅Rw1と第2離間部30Bの幅Rw2とは、上記の範囲内で実質的に同一、即ちRw1=Rw2に設定されるとともに、タイヤ赤道に関してタイヤ軸方向の対称位置に設けられるのが望ましい。このような実施形態では、タイヤ赤道から第1離間部30Aまでのタイヤ軸方向の距離(即ち、第1のベルトプライ7Aにおける他方側の第1プライ片25Bの内縁25Beとタイヤ赤道との間のタイヤ軸方向距離)Qw1は、タイヤ赤道から第2離間部30Bまでのタイヤ軸方向の距離(即ち、第2のベルトプライ7Bにおける一方側の第2プライ片26Aの内縁26Aeとタイヤ赤道との間のタイヤ軸方向距離)Qw2と等しく設定される。
なお、前記距離Qw1及びQw2は、適宜定めることができるが、該距離Qw1及びQw2が大きくなると、第1及び第2離間部30A及び30Bがショルダー部側に寄るため、ランフラット走行時におけるリフティング抑制効果が低下しやすい。逆に、前記距離Qw1及びQw2が小さくなると、第1離間部30Aと第2離間部30Bとが接近し、クラウン部の剛性が過度に低下するおそれがある。このような観点より、前記距離Qw1及びQw2は、好ましくは、第1のベルトプライ7Aの幅Bw1の0.01倍以上、より好ましくは0.05倍以上が望ましく、また、好ましくは0.13倍以下、より好ましくは0.10倍以下が望ましい。
さらに、本実施形態のランフラットタイヤ1は、前記正規状態のタイヤ子午断面において、タイヤ外面2Aのプロファイルは、曲率半径が異なる複数の円弧からなる曲面によって形成されている。図8に示されるように、本実施形態のプロファイルは、タイヤ外面2Aとタイヤ赤道面Cとの交点であるタイヤ赤道点CPから、接地端側に向かって曲率半径RCが漸減する複数の円弧からなる曲面によってを形成される。このようなプロファイルは、サイドウォール部3の長さを減じうるため、サイド補強ゴム層11のゴムボリュームをさらに小さくでき、タイヤの軽量化、及び乗り心地性の向上を図ることができる。
詳しく説明すると、タイヤ赤道面Cから前記タイヤ最大断面幅SWの45%の距離SPを隔てるタイヤ外面2A上の点をPとするとき、タイヤ外面2Aの曲率半径RCは、前記タイヤ赤道点CPから前記点Pに至るまでの間で徐々に減少するように設定される。なお前記「タイヤ最大断面幅SW」とは、タイヤ外面2Aの基準輪郭線jにおける最大幅であり、この基準輪郭線jは、タイヤ外面2Aに局部的に形成される例えば文字、図形、記号等を示す装飾用、情報用等の微細なリブや溝、リム外れ防止用のリムプロテクトリブ12、カット傷防止用のサイドプロテクトリブなどの局部的凹凸部を除外した滑らかな輪郭線を意味する。
また前記タイヤ赤道面Cからタイヤ最大断面幅SWの半幅(SW/2)の60%、75%、90%及び100%の距離X60、X75、X90及びX100 を夫々隔てる各タイヤ外面2A上の点をP60、P75、P90及びP100 とする。またこの各タイヤ外面2A上の点P60、P75、P90及びP100 と、前記タイヤ赤道点CPとの間の半径方向の距離をY60、Y75、Y90及びY100 とする。
そして、前記正規状態においてビードベースラインBLから前記タイヤ赤道点CPまでの半径方向高さであるタイヤ断面高さをSHとするとき、前記半径方向距離Y60、Y75、Y90及びY100 は、それぞれ以下の関係を満足することを特徴としている。
0.05< Y60 /SH ≦0.1
0.1< Y75 /SH ≦0.2
0.2< Y90 /SH ≦0.4
0.4< Y100 /SH ≦0.7
ここで、RY60=Y60/SH
RY75=Y75/SH
RY90=Y90/SH
RY100 =Y100 /SH
として前記関係を満足する範囲RYiを図9に例示する。図8及び図9のように、前記関係を満足するプロファイルは、トレッドが非常に丸くなるため、フットプリントが、接地幅が小かつ接地長さを大とした縦長楕円形状となり、騒音性能とハイドロプレーニング性能とを向上しうる(例えば、特許第2994989号公報参照)。なお前記RY60、RY75、RY90及びRY100 の値が、各下限値を下回ると、トレッド部2を中心としてタイヤ外面2Aが平坦化するため、従来タイヤとのプロファイルの差が少なくなる。逆に各上限値を上回ると、トレッド部2を中心としてタイヤ外面2Aが著しく凸状をなすため、接地幅が過小となり、通常走行において必要な走行性能を維持することができなくなる。
なおタイヤでは、予めタイヤサイズを定めることにより、JATMA、ETRTOなどのタイヤの規格から、タイヤ偏平率、タイヤ最大断面幅、タイヤ最大高さなどを概ね定め得るため、前記RY60、RY75、RY90及びRY100 の範囲を容易に算出できる。従って、前記タイヤ外面2Aは、前記各位置におけるRY60、RY75、RY90及びRY100 の範囲を満たすように、かつ曲率半径RCが徐々に減少するように、前記タイヤ赤道点CPから前記点Pまで滑らかな曲線で描くことにより適宜定めうる。
また、ランフラットタイヤは、図10に示されるように、前記正規状態のタイヤに正規荷重の80%の荷重を負荷した状態において、前記タイヤ外面2Aが接地するタイヤ軸方向最外端間のタイヤ軸方向距離である接地幅CWを、前記タイヤ最大断面幅SWの50%〜65%の範囲とするのが好ましい。これは、前記接地幅CWが、前記タイヤ最大断面幅SWの50%未満の場合、通常走行において轍でふらつきやすくなるなどワンダリング性能が低下し、かつ接地圧の不均一化により偏摩耗しやすくなるからである。なお前記接地幅CWが、タイヤ最大断面幅SWの65%を超える場合には、接地幅が過大となって前述の通過騒音とハイドロプレーニング性能との両立が難しくなる。
なお、前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
また、このようなプロファイルは、サイドウォール部の領域が短いという特徴を有するため、ランフラットタイヤに採用することにより、サイド補強ゴム層11のゴムボリュームを低減し、ランフラットタイヤにおける質量の軽減と乗り心地の向上とを達成しうる。しかし、ゴムボリュームが大なトレッド部2での変形量が通常プロファイルのタイヤに比して大きくなる。そのため耐熱性を高めたアラミド繊維のカーカスコードは、このプロファイルのタイヤにとってもより有利となりうる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図1に示す構造をなすタイヤサイズ245/40R18のランフラットタイヤを表1の仕様で試作するとともに、それらについて各種の性能等が評価された。各タイヤは、表1に記載のパラメータ以外は、以下のように同一の仕様とした。
カーカス:プライ枚数1、コード角度90度(対タイヤ赤道)
レーヨン繊維コードの比重:1.51
アラミド繊維コードの比重:1.44
ベルト層の構造
B1:図4の構造をなす2枚のベルトプライ
B2:図7の構造をなすベルトプライ2枚
B3:2つに分割されていない2枚のベルトプライ(標準品)
第1のベルトプライのタイヤ軸方向の幅:208mm
第2のベルトプライのタイヤ軸方向の幅:194mm
ベルトコードのコード構造:1×4(フィラメント径0.27mm)
ベルトコード角度:±24°
サイド補強ゴム層:複素弾性率E*:12MPa、最大厚さ9mm
タイヤ外面のプロファイル
F1:RY60=0.09、RY75=0.14、RY90=0.37、RY100=0.57
F2:RY60=0.06、RY75=0.08、RY90=0.19、RY100=0.57
なお、実施例13、14は、図7の構造を基本としているが、実施例13は、距離Qw1の値がマイナス、即ち、他方側の第1プライ片25Bの内縁25Beがタイヤ赤道Cを越えていない態様であり、また、実施例14は、距離Qw1及び距離Qw2の値がマイナス、即ち他方側の第1プライ片25Bの内縁25Be及び一方側の第2プライ片26Aの内縁26Aeが共にタイヤ赤道Cを越えていない態様である。
また、テスト方法は、次の通りである。
<ランフラット耐久性>
各供試タイヤを、バルブコアを取り去った18×8.5Jのリムに装着し、内圧零の状態でドラム試験機上を速度80km/h、縦荷重4.14kNの条件にて走行させ、タイヤが破壊するまでの走行距離が測定された。評価は、従来例を100とする指数により表示されており、数値が大きいほどランフラット耐久性に優れることを示す。
<耐摩耗性能>
テストタイヤを上記リムにリム組みし、一般道及び高速道路を合計3000km走行させて、タイヤ周方向溝g1及びg2のタイヤ軸方向内、外での摩耗量の差(タイヤ周上6カ所での平均値)をそれぞれ測定し、その和の逆数を、従来例を100とする指数で表示した。数値が大きいほど均一な摩耗であり、耐摩耗性に優れていることを示す。
<タイヤ質量>
タイヤ1本当たりの質量を測定し、従来例を100とする指数で表示した。数値が小さいほど軽量である。
<縦バネ定数>
リム18×8.5Jに装着されたテストタイヤを内圧230kPa及び荷重5kNの条件で平面に接地させ、タイヤの縦たわみ量が測定された。そして、前記荷重5kNを縦たわみ量で除すことにより、近似的に縦バネ定数を得た。結果は、従来例を100とする指数で表示した。数値が小さいほど縦バネが小さく乗り心地に有利であることを示す。
<乗り心地>
排気量4300ccの国産FR自動車の4輪に、内圧230kPa及びリム18×8.5Jの条件で装着し、ドライアスファルト路面の段差路、ベルジャン路(石畳の路面)、ビッツマン路(小石を敷き詰めた路面)を走行させた。そして、ドライバーの官能により、ゴツゴツ感、突き上げ及びダンピングを総合評価し、従来例を100とする評点で表示した。数値が大きいほど良好である。
<操縦安定性>
前記車両を用い、ドライアスファルトのタイヤテストコースを走行し、操舵応答性、グリップ感及び旋回時の限界速度などに関して官能評価を行い、従来例を100とする評点で表示した。数値が大きいほど良好である。
<タイヤ強度>
各テストタイヤをリム18×8.5Jにリム組みするとともに、内圧230kPaを充填した条件の下で、JIS−D4230に準じたプランジャー破壊試験を行った。そのときの破壊エネルギーを、従来例を100とした指数で比較した。数値が大きいほど優れている。
<車両片流れ>
乗り心地テストと同じ条件で各テストタイヤ4本を車両に装着し、1名乗車状態でテストコース内を速度80km/hで100m手放し走行させ、横流れした距離の逆数を、比較例1を100とする指数で表した。従って、数値が大きいほど、横流れ量が小さく良好である。
テストの結果などを表1に示す。
Figure 2009154704
Figure 2009154704
テストの結果、実施例のランフラットタイヤは、ランフラット耐久性に優れるとともに、車両片流れを抑制し得ることが確認できた。
本実施形態のランフラットタイヤの断面図である。 そのベルト層の展開図である。 図1のビード部の拡大図である。 カーカスコードを説明する平面図である。 (a)及び(b)は、他の実施形態のベルト層の展開図である。 本発明の他の実施形態のランフラットタイヤのトレッド部の拡大断面図である。 そのベルト層の展開図である。 タイヤ外面のプロファイルを示す線図である。 タイヤ外面の各位置におけるRYiの範囲を示す線図である。 本実施形態のトレッド部の拡大断面図である。
符号の説明
1 ランフラットタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
7 ベルト層
7A 第1のベルトプライ
7B 第2のベルトプライ
11 サイドゴム補強層
20 カーカスコード
25A 一方側の第1プライ片
25B 一方側の第1プライ片
26A 一方側の第2プライ片
26B 一方側の第3プライ片
30A 第1離間部
30B 第2離間部
S1 タイヤ赤道の一方側
S2 タイヤ赤道の他方側

Claims (9)

  1. トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、トレッド部の内方かつ前記カーカスの半径方向外側に配されるベルト層と、前記サイドウォール部のカーカス内側に配された断面略三日月状のサイド補強ゴム層とを具えるランフラットタイヤであって、
    前記ベルト層は、タイヤ半径方向内側に配される第1のベルトプライと、該第1のベルトプライのタイヤ半径方向外側に配される第2のベルトプライとを具えるとともに、
    前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライは、それぞれタイヤ軸方向で分割されかつタイヤ赤道に対して互いに逆向きに傾けられたベルトコードを有する2つのプライ片からなり、
    しかも、前記カーカスは、タイヤ赤道に対して45〜90°の角度で配列したアラミド繊維からなるカーカスコードをトッピングゴムで被覆したカーカスプライからなることを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 前記アラミド繊維コードは、次式(1)で示す撚り係数Tが0.50〜0.70である請求項1記載のランフラットタイヤ。
    T=N×√{(0.125×D/2)/ρ}×10−3 …(1)
    (ただし、Nは上撚り数(回/10cm)、Dはトータル表示デシテックス(繊度)、ρはコード材料の比重である。)
  3. 前記第1のベルトプライのタイヤ軸方向の一方側のプライ片及び前記第2のベルトプライのタイヤ軸方向の他方側のプライ片は、同じ向きに傾けられたベルトコードを有し、かつ
    前記第1のベルトプライのタイヤ軸方向の他方側のプライ片及び前記第2のベルトプライのタイヤ軸方向の一方側のプライ片は、前記第1のベルトプライの一方側のプライ片と逆向きに傾けられたベルトコードを有する請求項1又は2記載のランフラットタイヤ。
  4. 前記第1のベルトプライ及び前記第2のベルトプライは、それぞれタイヤ赤道で分割されている請求項1乃至3のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
  5. 前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライそれぞれにおいて、2枚のプライ片は、タイヤ軸方向に離間して配され、前記第1のベルトプライは、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向の一方側にプライ片が離間した離間部を有するとともに、
    前記第2のベルトプライは、タイヤ赤道よりもタイヤ軸方向の他方側に離間部を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のランフラットタイヤ。
  6. 前記第1のベルトプライの離間部と、前記第2のベルトプライの離間部とは、タイヤ赤道に関してタイヤ軸方向の対称位置に設けられる請求項5に記載のランフラットタイヤ。
  7. 前記第1のベルトプライ及び第2のベルトプライの各離間部のタイヤ軸方向の長さは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されしかも無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、各ベルトプライのタイヤ軸方向の幅の0.15倍以下である請求項5又は6に記載のランフラットタイヤ。
  8. タイヤ赤道から前記離間部までのタイヤ軸方向の距離は、第1のベルトプライの0.05〜0.15倍である請求項5乃至7の何れかに記載のランフラットタイヤ。
  9. 正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填されしかも無負荷である正規状態におけるタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、タイヤ外面のプロファイルは、タイヤ赤道面Cからタイヤ最大断面幅SWの45%の距離SPを隔てるタイヤ外面上の点をPとするとき、タイヤ外面の曲率半径RCが、タイヤ赤道点CPから前記点Pに至るまでの間で徐々に減少するとともに、
    前記タイヤ赤道面Cから前記タイヤ最大断面幅SWの半幅(SW/2)の60%、75%、90%及び100%の距離X60、X75、X90及びX100 を夫々隔てるタイヤ外面上の各点と、タイヤ赤道点CPとの間の各半径方向距離をそれぞれY60、Y75、Y90及びY100 とし、かつタイヤ断面高さをSHとするとき、
    0.05< Y60 /SH ≦0.1
    0.1< Y75 /SH ≦0.2
    0.2< Y90 /SH ≦0.4
    0.4< Y100 /SH ≦0.7
    の関係を満足する請求項1乃至8の何れかに記載のランフラットタイヤ。
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