JP2008266783A - 電気・電子機器用銅合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ニッケル(Ni)を1.5〜5.0質量%、ケイ素(Si)を0.4〜1.5質量%含有し、ニッケル(Ni)/ケイ素(Si)の質量比が2以上7以下で、残部が銅(Cu)と不可避不純物とからなり、平均結晶粒径が2μm以上20μm以下で、かつ、その結晶粒径の標準偏差が10μm以下である電気・電子機器用銅合金。
【選択図】なし
Description
さらに、Ni:0.4〜4.8%(質量)、Si:0.1〜1.2%、Mg等:〜0.3%を含み、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金で、平均結晶粒径が1μm以下で、粒径3μm未満の結晶粒が90%以上の面積を占めるものが公知であり(例えば、特許文献3参照)、引張強さ、導電率および加工性を改良したものである。
(1)Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%含有し、Ni/Siの質量比が2以上7以下で、残部がCuと不可避不純物とからなり、平均結晶粒径が2μm以上20μm以下で、かつ、その結晶粒径の標準偏差が10μm以下である電気・電子機器用銅合金。
(2)前記平均結晶粒径が15μm以下の範囲にあり、かつ、その結晶粒径の標準偏差が8μm以下である(1)記載の電気・電子機器用銅合金。
(3)前記平均結晶粒径が10μm以下の範囲にあり、かつ、その結晶粒径の標準偏差が5μm以下である(1)記載の電気・電子機器用銅合金。
(4)銅合金が、上記成分に加えてさらにMg、Sn、及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を0.005〜2.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物とからなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金。
(5)銅合金が、上記成分に加えてさらにAg、Co、Cr、Fe、Mn、P、Ti、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種を0.005〜2.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物とからなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1に記載の電気・電子機器用銅合金。
(6)少なくとも下記の工程a、工程b、及び工程cを含むことを特徴とする電気・電子機器用銅合金の製造方法。
[工程a:Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%含有し、Ni/Siの質量比が2以上7以下で、残部がCuと不可避不純物とからなる銅合金を鋳造し、その後、熱間加工、冷間加工を行う工程]
[工程b:前記工程aの後に、昇温速度を10℃/秒以上、到達温度を700〜950℃、保持時間を5〜300秒、300℃までの冷却速度を20℃/秒以上である再結晶化熱処理を行う工程]
[工程c:前記工程bの後に、時効析出を行う工程]
NiとSiはNi−Si化合物を析出して強度向上に寄与する。Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%に規定した理由は、いずれかが下限値を下回っても十分な強度が得られず、いずれかが上限値を上回っても強度が飽和し、導電率が低下するためである。また、Ni/Si比が2〜7以外の範囲にある場合、強度と導電率のバランスは著しく悪くなり、必須とされる高強度高導電の電気電子機器用合金として適当でない。
本実施態様の製造方法においては、上記工程a、工程b、及び工程cを有することが好ましく、具体的には次の(1)〜(10)の工程を順に用いることがより好ましい。
(1)Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%含有し、Ni/Siの質量比が2以上7以下で、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を鋳造する工程、
(2)熱間加工、冷間加工を行う工程
(3)再結晶化熱処理工程
(3−1)到達温度までの昇温速度を10℃/秒以上とすることが好ましく、10℃/秒以上100℃/秒以下とすることがより好ましい(昇温速度)。
(3−2)到達温度は700〜950℃であることが好ましい(到達温度)。
(3−3)保持時間は5〜300秒であることが好ましい(保持温度)。
(3−4)例えば300℃までの冷却速度を20℃/秒以上とすることが好ましく、20℃/秒以上200℃/秒以下とすることがより好ましい(冷却速度)。、
(4)時効析出工程
(4−1)到達温度300〜600℃、処理時間0.5〜10hr、その際の室温から最高温度に到達するまでの昇温速度は2〜25℃/分の範囲内にすることが好ましい(昇温条件)。
(4−2)降温に際しては、300℃以上においては炉内で1〜2℃/分の範囲内で冷却を行うことが好ましい(冷却条件)。
(5)歪み取り焼鈍工程として、250〜400℃の温度で0.5〜5hr、もしくは600〜800℃の温度で5〜60秒加熱を行うことが好ましい。
このようにして、上記所望の特性を有する銅合金を効率よく得ることができる。なお、工程(4)と工程(5)の間に圧延率30%以下(0%を含む)の冷間加工を行う工程を入れることが好ましい。
本発明の銅合金においては、その平均結晶粒径は2μm以上20μm以下であり、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。平均結晶粒径が小さすぎると、前工程における加工組織の残存が確認され、曲げ加工性が著しく劣化することがある。一方、平均結晶粒径が大きすぎると、曲げ加工時にクラックが起きやすくなり、曲げ加工性が劣化する。平均結晶粒径の標準偏差は10μm以下であるが、これが大きくなりすぎると、大きな粒径と小さな粒径が混在している状態となる。このとき大きな粒径が曲げ頂点に存在する場合、曲げ面にクラックが入ったり、曲げ時に大きな粒径付近にできるシワの大きな起伏付近よりめっき剥離が起きたりすることがある。
次の表1に示す組成を有する銅合金を溶製し、110×160×30mmに鋳造したサイズの鋳塊を得た。この鋳塊を1000℃で30分保持し、熱間圧延によって厚み30mmから12mmまで加工後、速やかに水冷却にて焼入れを施し、表面酸化皮膜除去のため10mm前後に面削後、冷間圧延にて適宜試験項目に応じて0.15mm、0.20mm、0.25mmまで加工し、各中間試料とした。
20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕中で四端子法により比抵抗を測定して導電率を算出した。端子間距離は100mmとした。
圧延方向に平行に切り出したJIS Z2201に準拠した5号試験片を用い、JIS Z2241に準じて各2本ずつ測定し、その平均値を求めた。0.2%耐力に関してはオフセット法を用い、引張強さは最大引張力を原断面積で割った数値で求めた。
試験片の圧延方向に垂直な断面を湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、弱酸液で数秒研磨面を腐食した後、OM(光学顕微鏡)を用いて50〜600倍、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて400〜5000倍の倍率で写真をとり、断面粒径をJIS H0501の切断法に準じて平均結晶粒径を測定した。また、粒径を1個毎測定することにより、その粒径標準偏差を求めた。粒径標準偏差を求める場合、その測定母数は200とした。なお、粒径測定は圧延して粒が扁平してしまうものに関しては圧延前のサンプルの粒径(再結晶化熱処理工程終了時点が相当)を測定している。
上記の処理を施し、板厚t=0.25(mm)、板巾w=10(mm)のサンプルの酸化膜を除去した後、内側曲げ角度が90°になるような曲げを、圧延方向平行方向(以下GW)、垂直方向(以下BW)の2方向において行った。曲げの評価方法を、上述した微細クラックが入らない最も小さな曲げ半径Rをサンプル板厚tで割ったR/tで評価した。クラック有無の確認はOMを用いて50〜600倍、もしくはSEMを用いて400〜2000倍で判断を行った。この値が小さいほど、曲げ加工性が良いことを示す。
30mm×10mm試験片に厚さ1μmの光沢錫めっきを施し、これを大気中で150℃に1000hr保温した後、180°曲げを施した後に曲げ戻し、曲げ部分の錫めっきの密着状態を目視、必要に応じてOMを50〜200倍で用いて剥離有無の確認を行った。ここで曲げ部の剥離面積率が0〜10%のものを「◎」、10〜30%のものを「○」、30%〜50%のものを「△」、50%以上のものを「×」と判定した。
日本電子材料工業会標準規格(EMAS−3003)の片持ちブロック式を採用し、表面最大応力として0.2%耐力の80%の値になるように負荷応力を設定して150℃の恒温槽に1000hr保持して応力緩和率を測定した。
以上の結果について、中間試料の合金組成を表1に、銅合金試料の上記合金特性評価の結果を表2〜表4に示す。
これに対し、本発明の銅合金(銅合金試料1〜10、13〜15)はいずれの評価項目においても実用上十分な良好な合金特性を示すことが分かる。なかでも、銅合金試料No.7、8、9、10の結果が示すように、さらなる合金成分としてZnが添加されるとめっき密着性は向上し、引張強度の向上にも寄与していることがわかる。また、銅合金試料No.6、8、9、10に示すようにMgが添加されると応力緩和特性が改善される。さらに銅合金試料No.6、7、9、10に示すようにSnが添加されると応力緩和特性は向上し、その特性はMgと同時添加であるNo.9、10において特に顕著である。また、銅合金試料No.9、10に示すようにMg、Sn、Znを同時に添加することにより「引張強度」、「応力緩和特性」、「めっき密着性」が全体的に改善されていることがわかる。また、上記のMg、Sn、Znの添加による改善効果はその添加量が少なすぎると発現しないことが分かる(銅合金試料13〜15参照)。
Claims (6)
- Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%含有し、Ni/Siの質量比が2以上7以下で、残部がCuと不可避不純物とからなり、平均結晶粒径が2μm以上20μm以下で、かつ、その結晶粒径の標準偏差が10μm以下である電気・電子機器用銅合金。
- 前記平均結晶粒径が15μm以下の範囲にあり、かつ、その結晶粒径の標準偏差が8μm以下である請求項1記載の電気・電子機器用銅合金。
- 前記平均結晶粒径が10μm以下の範囲にあり、かつ、その結晶粒径の標準偏差が5μm以下である請求項1記載の電気・電子機器用銅合金。
- 銅合金が、上記成分に加えてさらにMg、Sn、及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を0.005〜2.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気・電子機器用銅合金。
- 銅合金が、上記成分に加えてさらにAg、Co、Cr、Fe、Mn、P、Ti、及びZrからなる群より選択される少なくとも1種を0.005〜2.0質量%含み、残部がCuと不可避不純物とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の電気・電子機器用銅合金。
- 少なくとも下記の工程a、工程b、及び工程cを含むことを特徴とする電気・電子機器用銅合金の製造方法。
[工程a:Niを1.5〜5.0質量%、Siを0.4〜1.5質量%含有し、Ni/Siの質量比が2以上7以下で、残部がCuと不可避不純物とからなる銅合金を鋳造し、その後、熱間加工、冷間加工を行う工程]
[工程b:前記工程aの後に、昇温速度を10℃/秒以上、到達温度を700〜950℃、保持時間を5〜300秒、300℃までの冷却速度を20℃/秒以上である再結晶化熱処理を行う工程]
[工程c:前記工程bの後に、時効析出を行う工程]
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