近年、半導体装置の高集積化が著しく進行し、半導体装置における実装技術に対しても高密度化が求められている。
半導体装置の高密度実装技術としては、ワイヤーボンディング技術やTAB技術等が代表的に挙げられるが、コンピュータ機器等の半導体装置に対し最も高密度化が可能な実装技術として、フリップチップ実装技術が多く用いられている。
フリップチップ実装技術は、図26に示す様に、米国特許第3401126号公報、米国特許第3429040号公報が開示されて以来、広く公知の技術になっている。
ところが、上述したように、半導体チップをフリップチップ実装した場合には、接続部分が半導体チップの下方に配置される実装構造上の特徴から、その接続部分を顕微鏡等を用いて直接検査することが困難であった。このため、X線透過法や超音波印加法等を用いた非破壊検査法が多く提案されてきたが、これを実施するための装置が大規模なものとなり製造コストを増加させる原因となっていた。
そこで、フリップチップ実装する半導体チップを回路基板上に実装する前に予め検査するKGD(Known Good Die)技術が開発され、実装時の接続の信頼性は極めて向上するようになってきた。
KGD技術として、一般的には、検査ボードによるプロービング方法が用いられるが、微細なバンプが半導体チップ上に、エリア状に配置されるようになってくると、それに対応して、検査ボード上に配置するプローブにも微細なエリア状に配置されたレイアウトが必要となっていた。
検査ボードとしての回路基板の微細化を進める上での最大の問題は、層間接続に用いるスルホール径をいかに小さくするかである。大きなスルホール径を用いた層間接続は、大きな層間接続面積を必要とするばかりでなく、他層における配線禁止領域の発生や接続部のインピーダンス不整合による信号反射の発生等、電気特性の面でも悪影響を与える。
一般的に、層間接続に用いるスルホール径を小さくする方法としては、感光性樹脂を用いたビアホールによる層間接続方式を回路基板に応用したビルドアップ配線基板が挙げられる。これは、図27(a)に示す様に、従来のプリント配線基板をコアとして、感光性樹脂の塗布、露光、現像によりビアホールを形成し、めっき技術により、配線を順次、必要な所まで積み上げていくものである。
さらに、図27(b)に示したように、めっきにより形成される金属柱を用い層間接続を行うビアポスト型ビルドアップ配線基板も開発されている。この方式によれば、高解像度のドライフィルムを使用することにより、ビアホールよりも接続面積を小さくすることが可能である。
ところが、これらの方法はいずれも基板の片面に配線層を形成するもので、検査ボードとしての回路基板の両面に配線層を形成するためには、図28に示すように、基板の主面と裏面とを電気的に貫通して接続するスルホールを形成する必要がある。
このスルホールを形成する方法として、一般的には、“特集「プリント配線板用めっき」プリント配線基板製造におけるめっき”(サーキットテクノロジー、Vol.18、NO.5、 pp351‐356 、1996)に記載されているように、無電解めっき後、電気めっきで銅を厚く形成することによりスルホールを形成する方法がある。
スルホールの壁面を金属化する無電解めっき法は、複雑な形状品に対しても金属膜が得られ、電気めっきのように通電するための特別な冶具や設備を必要としない。さらに、無電解めっき法は、導体および不導体でも前処理を施せばめっきが可能な技術である。
一方、無電解めっき法で金属化されたスルホールの壁面の金属を厚くする電気めっき法は、めっき槽の中央部の陰極に回路基板を固定するとともに、両側に陽極を配置し、電気分解反応で陰極の回路基板に金属を析出させる技術である。さらに、陽極にはめっきする金属と同種の金属を板あるいはボールを配置し、めっき液中の金属イオンの補給源とするのが一般的である。但し、陽極における金属の溶解反応が遅いときには、陽極にカーボンや白金などの不溶解性材料を使用することも可能となっている。この場合、めっき液中の金属イオンはめっきする金属塩の水溶液で補充する。
さらに、電気めっき装置は、めっき槽の材質、深さ、幅、容量、陽極および陰極の形状と配置、陰極に接続された回路基板の揺動、めっき液の撹拌条件、温度、電流密度および不純物などが均一な電着性に影響を与えるため、シールド板または補助電極などを用いた電気めっきが行われ、近年では、信頼性の高いスルホールめっきが実現される様になってきた。
また、図27(b)に示す金属柱を用いて接続を行うビアポスト型ビルドアップ配線基板では、Proceeding of 1996 ISHM Symposium, pp243-248, 1996にも記載されている噴流式電気めっき装置を用いることを行われている(図13参照)。
この電気めっき装置によれば、電気めっきの均一な電着性に影響する装置の各パラメータも最適化できるため、近年の高密度・高速実装を目的としたMCM(Multichip Module)基板も高精度に形成することが可能となっている。
ところが、検査ボードとなる回路基板には電子機器より発生する熱に起因する温度上昇および冷却による温度低下の繰り返しによる熱ストレスによりスルホールめっき部分にクラックが発生する。これは、回路基板の基材となる材料の熱膨張係数とスルホールにめっきされる金属との熱膨張係数とが異なるため発生するもので、スルホールの内部における膜剥れクラックや基板の表面とスルホール部分の境界部分とに生じる歪クラックなどがある。
そこで、スルホール部の熱ストレス信頼性を向上させるため、めっき金属被膜の信頼性を向上させることが行われ、めっき条件管理、めっき被膜管理および工程能力管理などが行われてきた。しかしながら、この方法は、めっきに際するプロセス管理を行うことにより信頼性を向上させるもので、必ずしも十分な信頼性を向上させるものではなかった。
また、一方では、KGDを実施するため、微細なエリアバンプ電極を検査ボードに位置合せすることも困難となっていた。
そこで、ガラス基板の両面に検査配線を形成した検査ボードを用いることにより、ガラス基板を透過してプロービング時の半導体チップと検査ボードとの位置合わせを容易に行う方法が適用されるようになってきたが、無機セラミック材料であるガラス基板の両面を微細なスルホールを通して電気的に接続することは極めて困難なものであり、また、レーザなどを用いてガラス基板を微細加工することもコスト的に極めて高いという問題があった。
そこで、日刊工業新聞(1996年7月17日6ページ)に記載されている様に、ガラス基板のスルホール壁面に金属を密着接合することにより、ガラス基板に低コストで貫通スルホールを形成する提案が行われた。これは、多層配線基板のスルホール内部の壁面と電極間との隙間を高圧鋳造法で完全になくすもので、スルホール形成したガラス基板を焼結後、電極となる溶融アルミニウムをスルホール内部に1平方ミリメートル当り1〜15kgの圧力を加えながら注入することにより、アルミニウム電極とスルホール内部壁面を完全に密着させるものである。これにより熱膨張係数と熱収縮による応力歪をガラス基板に分散させクラックを防止することが可能になって、多層配線基板における電極の接続信頼性を格段に向上させることができるようになったが、溶融温度が3380℃と高いタングステン、アルミニウム、銅および錫などを用いているため、使用できるガラス基板に制限があり耐熱性の低いガラス基板には使用できない問題があった。
一方、スルホール内部を金属導体により低温で充填する方法として、有機樹脂バインダーを含有したペーストを真空充填する方法があるが、アスペクト比10を超える極めて高いアスペクト比のスルホールに適応することは技術的に困難であるばかりでなく、充填材として有機樹脂をバインダーとした材料を用いているため接続信頼性も充分なものではなかった。
また、ガラス基板に微細な貫通孔を形成する方法として、例えば“化学切削用感光性ガラス”(実務表面技術、pp.552~558、vol.35、 No.11、1988)に記載されている様に、感光性ガラスを用いるものがある。このガラスは、紫外線照射による紫外線エネルギーによりCe3+から光電子が放出され、1部はガラス構造中の空孔に捕らえられるが、1部は感光性イオンに捕らえられて中性化するか金属原子となり、450℃〜600℃の温度で熱処理を施すことにより金属コロイドが生成するものである。さらに、金属コロイドを結晶核にしてメタケイ酸リチウム(Li2O‐SiO2)が析出するが、この結晶は薄いフッ酸に対する溶解度が結晶化前ガラスの50倍にもなるため、エッチングにより紫外線照射したLi2O‐SiO2結晶の部分だけが溶解されて正確な化学切削をおこなうことができる。こうして、微細貫通孔をガラス基板に形成できるが、ガラス基板は、エッチングするときのフッ酸により表面と裏面が侵食され、5μm〜6μmにも達する凹凸が形成されるため、すりガラスのように不透明なものとなる。従って、透過性を保持するには表面および裏面を研磨剤により研磨する必要があった。
ところが、粒径2μm〜3μmのアルミナの研磨剤や酸化セリウムの研磨剤を使用すると、エッチングにより形成した貫通孔に研磨剤が侵入し、研磨後に洗浄したとしてもこれを除去できないという問題があった。これは、貫通孔内部にも凹凸が形成され、この部分に研磨剤が残留するためである。また、ガラス基板の表面を平坦化する研磨加工は、例えば、高出力レーザを用いて貫通孔を形成する場合に発生するガラス基板表面の“ばり”を研磨で除去する場合にも必要なものなので、この場合にも、エッチングにより形成した貫通孔に研磨剤が侵入し、研磨後に洗浄したとしてもこれを除去できないという問題があった。
さらに、スルホールを形成する際には、必要な部分に貫通孔が形成されているか否かを検査することが求められており、貫通孔が数十個程度と少ない場合には目視による検査も可能であるが、1000個を超える貫通孔が形成されている場合には、目視による検査は事実上、不可能であるという問題があった。また、貫通孔に金属が完全充填されてスルホールが電気的に接続されているか否かを検査する場合にも同様の問題があった。
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、接続信頼性の極めて高いスルホールを備えた回路基板を経済的に提供することを目的とする。
また、本発明は、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、接続信頼性の極めて高いスルホールを備えた回路基板を経済的にかつ確実に得ることができる回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、接続信頼性の極めて高いスルホールを備えた回路基板を経済的にかつ確実に得ることができる回路基板の製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、スルホールを備えた回路基板を経済的にかつ確実に得ることができる回路基板の検査方法を提供することを目的とする。
本発明に係る回路基板は、第1の金属柱と、前記第1の金属柱の側面を覆う第2の金属柱と、前記第2の金属柱の側面を覆う絶縁基板とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板によれば、絶縁基板に対し、第1の金属柱と、該第1の金属柱の側面を覆う第2の金属柱から構成されるスルーホールを設けたことにより、上記金属柱と絶縁基板との密着性を向上させるとともに、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができるので、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的に実現することが可能となる。
また、本発明に係る回路基板の製造方法は、絶縁基板に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の形成された絶縁基板を、第1の金属をイオンとして含有する第1の溶液に浸漬し、前記貫通孔による連通が保たれるように前記絶縁基板上に前記第1の金属を析出させる工程と、前記第1の金属が析出した絶縁基板を、前記第1の金属が前記貫通孔のみに残留するよう処理する工程と、前記処理された絶縁基板を、第2の金属をイオンとして含有する第2の溶液に浸漬し、前記第1の金属上に前記絶縁基板より突出するまで前記第2の金属を析出させる工程と、前記絶縁基板より突出した第2の金属を除去する工程とを具備したことを特徴としている。
本発明にかかる回路基板の製造方法によれば、貫通孔の形成された絶縁基板を、第1の金属をイオンとして含有する第1の溶液に浸漬し、貫通孔による連通が保たれるように絶縁基板上に第1の金属を析出させ、第1の金属が析出した絶縁基板を、第1の金属が貫通孔のみに残留するよう処理した後、処理された絶縁基板を、第2の金属をイオンとして含有する第2の溶液に浸漬し、第1の金属上に絶縁基板より突出するまで第2の金属を析出させて、絶縁基板より突出した第2の金属を除去することにより、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、貫通孔に第1および第2の金属を完全に充填させることができるので、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。
さらに、本発明に係る回路基板の製造方法は、絶縁基板に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を、該貫通孔による連通が保たれるよう第1の金属で覆う工程と、第2の金属がイオンとして含有される溶液を、第1および第2の領域に分割するよう前記溶液中に前記絶縁基板を配置する工程と、前記第1の領域から前記第2の領域に向け前記溶液の流れを形成し、前記第1および第2の領域において前記溶液にかかる第1および第2の圧力を測定しつつ、前記第1の金属を前記第2の金属で覆う工程と、少なくとも前記測定された第1の圧力と第2の圧力とが異なるまで、前記溶液中に前記絶縁基板を配置しつづける工程とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板の製造方法によれば、絶縁基板に設けた貫通孔を、その連通が保たれるよう第1の金属で覆った後、第2の金属がイオンとして含有される溶液が第1および第2の領域に分割されるよう該溶液中に絶縁基板を配置して第1の領域から第2の領域に向け溶液の流れを形成し、第1および第2の領域において溶液にかかる第1および第2の圧力を測定しつつ、少なくとも測定された第1の圧力と第2の圧力とが異なるまで、溶液中に絶縁基板を配置しつづけることにより、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、第2の金属が第1の金属を覆うように貫通孔を完全に充填することができるので、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。
また、本発明に係る回路基板の製造装置は、電解液を保持する電解槽と、前記電解槽に保持された電解液を第1および第2の領域に分割するよう、前記電解槽に絶縁基板を配置する手段と、前記絶縁基板により分割される第1の領域から前記第2の領域に向かって前記溶液の流れを形成する手段と、前記第1および第2の領域における溶液の圧力を検出する手段と、前記検出された第1および第2の領域における溶液の圧力が異なるか否かを判定する手段とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板の製造装置によれば、電解槽に保持された電解液を第1および第2の領域に分割するよう電解槽に絶縁基板を配置する手段と、絶縁基板により分割される第1の領域から第2の領域に向かって溶液の流れを形成する手段と、絶縁基板により分割された第1および第2の領域における溶液の圧力を検出する手段と、検出された第1および第2の領域における溶液の圧力が異なるか否かを判定する手段とを設けたことにより、絶縁基板に設けた貫通孔に対して第1の領域から第2の領域に向け溶液の流れを形成し、第1および第2の領域において溶液にかかる第1および第2の圧力を測定しつつ、少なくとも測定された第1の圧力と第2の圧力とが異なるまで、溶液中に絶縁基板を配置しつづけることができるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、第2の金属が第1の金属を覆うように貫通孔を完全に充填することが可能となる。したがって、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板の製造装置を経済的に実現することができる。さらに、本発明に係る回路基板の製造方法は、絶縁基板を、該絶縁基板に対し貫通孔が形成されるよう処理する工程と、前記処理された絶縁基板を、前記貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるよう処理する工程と、前記絶縁基板を、前記絶縁材を有するべき領域が含まれるように研磨する工程と、前記研磨された絶縁基板に対し光を照射して前記絶縁材が充填されているか否かを判定する工程と、前記貫通孔に前記絶縁材が充填されていると判定された場合、前記絶縁材を除去する工程と、前記絶縁材が除去された貫通孔に金属を充填する工程とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板の製造方法によれば、貫通孔が形成されるよう処理された絶縁基板を、貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるよう処理し、絶縁基板を、絶縁材を有するべき領域が含まれるように研磨した後、絶縁基板に対し貫通孔を有するべき面から光を照射して絶縁材が充填されているか否かを判定し、貫通孔に絶縁材が充填されていると判定された場合に、絶縁材を除去して貫通孔に金属を充填することにより、貫通孔に対する研磨剤の残留を防止するとともに、貫通孔の形成が確実に確認されるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。
また、本発明に係る回路基板の製造方法は、少なくとも可視光を通過させる絶縁基板を、該絶縁基板に対し貫通孔が形成されるよう処理する工程と、前記処理された絶縁基板を、前記貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるよう処理する工程と、前記処理された絶縁基板を、前記絶縁材を有するべき領域が含まれるように研磨する工程と、前記研磨された絶縁基板に対して光を照射し、前記絶縁基板に対し貫通孔が形成されるべき領域として予め取得された第1のデータと、前記光に対する前記絶縁基板および前記絶縁材前記の吸収率の差として予め取得された第2のデータとを比較して、前記絶縁材が充填されているか否かを判定する工程と、前記貫通孔に前記絶縁材が充填されていると判定された場合、前記絶縁基板を、前記貫通孔より前記絶縁材が除去されるように処理する工程と、前記処理された絶縁基板を、前記貫通孔に金属が充填されるように処理する工程と、前記処理された絶縁基板に対して前記光を照射し、前記第1のデータ、前記第2のデータ、および前記光に対する前記絶縁基板と前記金属との吸収率の差と該吸収率の差が生じる位置を備え、予め取得された第3のデータとを比較して、前記金属が充填されているか否かを判定する工程とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板の製造方法によれば、上記第1のデータと第2のデータとを比較して、形成されるべき貫通孔に絶縁材が充填されているか否かを判定し、貫通孔に前記絶縁材が充填されていると判定された場合、絶縁基板を、貫通孔より絶縁材が除去されるように処理し、貫通孔に金属が充填されるように処理した後、絶縁基板に対して貫通孔を有するべき面から前記光を照射して、第1のデータ、第2のデータおよび上記第3のデータを比較して、貫通孔に金属が充填されているか否かを判定することにより、貫通孔に対する研磨剤の残留が防止されるとともに貫通孔の形成が確実に確認され、かつ貫通孔への金属の充填が確実に確認されるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的かつ確実に製造することが可能となる。
また、本発明に係る回路基板の検査方法は、貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるように処理された絶縁基板に対し光を照射する工程と、前記絶縁基板に対する前記光の吸収率の差に基づいて、前記貫通孔に樹脂が充填されているか否かを判定する工程とを具備したことを特徴としている。
本発明に係る回路基板の検査方法によれば、貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるように処理された絶縁基板に対し光を照射し、絶縁基板に対する光の吸収率の差に基づいて、貫通孔に樹脂が充填されているか否かを判定することにより、貫通孔の形成が容易かつ確実に確認されるので、スルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。
本発明において、絶縁基板としては、各種セラミック基板を用いることができ、さらに透過性を有するガラス基板を用いることができる。このようなガラス基板を構成するガラスとしては、例えば、SiO2 ‐LiO2 ‐Al2 O3 系ガラスやCeO2 を含有したガラス等を挙げることができる。
また、第1および第2の金属柱は、スルーホールとして機能するのであれば、その形態は特に限定されないが、第1および第2の金属柱の形状を、例えば、絶縁基板の中央部における開口径が基板の両面における開口径に比較して小さい値を有する、換言すれば、絶縁基板の中央において括れる鼓型の形状にすることにより、第1および第2の金属柱に生じた歪みをより効果的に絶縁基板に逃がすよう構成することができる。
さらに、第1の金属柱を形成する金属としては、絶縁基板と親和性の高い物質を用いることが望ましく、例えば、ニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金を挙げることができる。また、第1の金属柱の側面を覆う第2の金属柱を構成する金属としては、第1の金属柱に上記ニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金を用いた場合、特に、パラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの合金を適用することが望ましい。さらに、第1の金属柱にボロンが含有されたニッケル合金やリンが含有されたニッケル合金を用いた場合には、第2の金属柱に対し、例えば、銀合金を好適に用いることができる。
こうして、例えば、貫通孔の壁面に絶縁基板と親和性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの合金である第1の金属を形成するとともに、第1の金属上に熱サイクルによるストレスに対して耐性を有するニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金である第2の金属を堆積して、絶縁基板の主面と裏面とを貫通する貫通孔を完全に充填することにより、第1の金属を接着層とした、第1および第2の金属からなる充填構造が容易に実現され、熱ストレスに対して強固なスルホールを形成することができる。特に、上述したように、貫通孔の形状を、絶縁基板の中央部における開口径が絶縁基板の両面における開口径に比較して小さい鼓型とすることにより、スルホールの内部に発生する応力歪を絶縁基板の両面に向かって段階的に緩和することが可能となり、スルホールを構成する金属全体のクラックを確実に防止することが可能になる。
さらに、絶縁基板として、例えば、透過性を有するSiO2 ‐LiO2 ‐Al2 O3 系ガラスを適用し、第1の金属として銀合金、第2の金属としてボロンが含有されたニッケル合金またはリンが含有されたニッケル合金を用いた場合には、透過性を有する絶縁基板とスルホールを構成する金属との密着強度を高くすることができ、接続信頼性の高いスルホールを、透過性が要求されるKGD検査ボードに対しても実現することができる。
また、本発明において、絶縁基板上に第1の金属を析出させる方法としては、例えば、銀鏡反応等を適用することができる。また、貫通孔の壁面を除いて、絶縁基板に付着した第1の金属を除去する方法としては、例えば、研磨法またはラビング法を用いることができ、第1の金属上に、第2の金属を絶縁基板より突出するまで析出させる方法としては、例えば、ジメチルアミノボランまたは次亜リン酸ナトリウムのいずれか一方を還元剤とする溶液中でニッケル合金を析出させる無電解めっき法を適用することができる。また、絶縁基板より突出した第2の金属を除去する方法としては、例えば、絶縁基板を機械的に研磨する方法を挙げることができる。
こうして、第1の金属上に第2の金属を堆積させ、第1の金属と第2の金属とにより貫通孔を完全に充填するので、第1の金属を接着層とした第1および第2の金属による充填構造が実現され、熱ストレスに対して強固なスルホールを容易に形成することが可能になる。さらに、第1および第2の金属は、回路基板の面と同一の平面を構成するよう貫通孔に完全に充填されているため、貫通孔の壁面に第2の金属のみを形成する構造と比較して、絶縁基板の両面に形成する回路配線とスルホールとの接触面積を大きくすることができ、接続抵抗を低くすることができる。
また、絶縁基板に貫通孔を形成する方法としては、例えば、レーザを用いる方法等、特に限定されることはない。なお、感光性金属として金、銀および銅から選択される少なくとも1種類の金属と、増感剤としてのCeO2 とを少量含有したSiO2 ‐LiΟ2 ‐Al2 O3 系の感光性ガラスを用いた場合には、貫通孔は、ガラスマスクを通じて紫外線を照射した後、フッ酸を用いて溶解除去された現像部分として得ることができる。
さらに、本発明において、第2の金属イオンの含有された電解液中に第1の金属により被覆された貫通孔を備えた基板を配置して、貫通孔の内部を第1および第2の金属により充填する方法としては、該貫通孔を確実に金属により充填できることから、該電解液を絶縁基板により2つの領域に分割し、第1の領域における電解液を加圧することにより、電解液を絶縁基板の貫通孔の内部を通過させて第2の領域に移動させ、このとき、貫通孔の壁面に形成された第1の金属上に選択的に第2の金属を析出させる無電解めっき法を適用することが望ましい。こうして、貫通孔に金属が完全に充填された、熱ストレスに強固なスルホールを、透過性の要求されるガラス基板に対しても容易に実現できるとともに、これまで検出が困難であったスルホールにおけるめっきの完了時点も容易に決定することができる。したがって、壁面のみを金属化したスルホールと比較して、スルホールの形状を応力歪に強固な形状に制御できるため、接続信頼性の高い回路基板を実現することができる。
また、第2の金属イオンの含有された電解液中に、第1の金属により被覆された貫通孔を備えた絶縁基板を配置して、貫通孔の内部を第1および第2の金属で充填する方法は、該電解液を絶縁基板により2つの領域に分割し、第1の領域における電解液を加圧することにより、電解液を絶縁基板の貫通孔の内部を通過させて第2の領域に移動させ、該貫通孔の壁面に形成された第1の金属上にのみ選択的に第2の金属を析出させる無電解めっき法であるため、スルホール内部におけるめっき液の交換を容易に実現でき、局所的なめっき液の濃度低下を防止でき、形状等がほぼ正確に制御されたスルホールを実現できる。これは、第1の領域から第2の領域に向かって、めっき液を、該めっき液が貫通孔の内部を通過するように循環させているため、貫通孔が金属により完全に充填されて、第1の領域と第2の領域とにおける圧力の間に、一定の差が発生するまでめっき液が貫通孔を通過して、一定の圧力差が生じた時点をめっきの完了時点として認めることができるからであり、金属により完全に充填された、熱ストレスに強固なスルホールを、ガラス基板等の絶縁基板に対して容易に形成することができる。
ここで、電解液を保持する電解槽は、処理対象となる基板の種類、形状および枚数等に鑑みて適宜設計すればよく、内部に保持する電解液により腐食等がないものであれば、特に限定されるものではない。また、電解槽に保持された電解液を第1および第2の領域に分割するよう、電解槽に絶縁基板を配置する手段としては、例えば、電解槽の内部に絶縁基板を固定するフック等を設けて絶縁基板を支持するとともに、絶縁基板の周囲をOリング等の部材により完全に封止することで容易に実現することができるが、特に限定はされない。
さらに、絶縁基板により分割される第1の領域から第2の領域に向かって電解液の流れを形成する手段としては、通常の水流ポンプ等を適用することができ、第2の領域から第1の領域に向かって電解液を循環させることで連続的な運転を実現することができる。このとき、必要に応じて電解液を交換できることはいうまでもない。また、第1および第2の領域における溶液の圧力を検出する手段としては、例えば、通常の圧力計を用いればよく、検出された第1および第2の領域における溶液の圧力が異なるか否かの判定は、CPU等を搭載した一般的な制御系を適用して実行することができる。
また、本発明においては、絶縁基板に設けた貫通孔の内部に、透過性を有する絶縁材を完全に充填して絶縁基板を研磨して該絶縁基板面を平坦化し、該絶縁基板に検査光を照射することにより貫通孔を通過する光の吸収率を光学的に検出するので、貫通孔の形成後に実施された研磨工程における貫通孔の内部への研磨剤の残留が、絶縁材により防止されるばかりでなく、所定の部分に貫通孔が形成されているか否かの検査も容易に実現でき、透過性を示すガラス基板等においてもスルホールを容易に構成することができる。
例えば、絶縁基板を、350nm以上の波長の光に対して透過率85%以上を示すガラス基板とし、貫通孔に充填する絶縁材を、350nm以上の波長の光に対して透過率80%以下を示す波長吸収帯を有する熱硬化性樹脂とした場合には、光の吸収率を光学的に検出する波長帯を350nm以上とすればよい。また、絶縁基板の研磨は、例えば、液体研磨剤を用いる湿式研磨法や、液体研磨剤を用いない乾式研磨法を単独で、あるいは組み合わせて適用することができる。また、絶縁材の除去は、該絶縁材を溶解する溶媒に絶縁材を溶解させることにより実施することができるが、絶縁材の充填された貫通孔の部分と貫通孔の形成されていない部分とを、物性的に光学吸収の少ない350nm以上の波長の光を用い、該光の透過率の相異を効果的に利用して検出することが可能となるので、貫通孔の欠陥を容易に検出することが可能となる。さらに、絶縁材を溶解させる溶媒を、絶縁材に含有される溶媒の組成と異ならせることにより、熱硬化により溶媒溶解度の低くなった樹脂等であってもこれを容易に除去することが可能となる。また、湿式研磨法または乾式研磨法の少なくともいずれかの方法を研磨に用いているため、絶縁基板の表面のミクロな凹凸まで完全に除去でき、絶縁基板としてガラス基板を用いた場合にも、透過性の高いガラス基板を得ることが可能になる。また、絶縁材として液体熱硬化性樹脂を貫通孔に充填することにより、アスペクト比の高い貫通孔の内部に、毛細管現象を利用して絶縁材を完全に充填し、かつその硬化を容易に達成することが可能となる。
さらに、貫通孔を光学的に検査するに際し、例えば、貫通孔が形成されるべき位置のパターンを第1のデータとし、一方、絶縁基板を構成する物質および貫通孔に充填される絶縁材の検査光に対する吸収率差を第2データとして予め取得しておき、第1のデータと第2のデータとを比較するように構成すれば、絶縁基板上の貫通孔が形成されていない位置を容易に検出することができる。また、金属により充填されたスルホールを光学的に検査するに際しては、貫通孔に充填された金属および絶縁基板を構成する物質の検査光に対する吸収率差と、該吸収率差が生じる位置とを第3のデータとして取得しておき、第3のデータを、第1のデータおよび第2のデータと比較するように構成すれば、貫通孔に金属が完全充填されていない位置を容易に検出することができる。したがって、絶縁基板上に形成されるべき貫通孔および金属が充填されるべきスルホールの欠陥を容易かつ自動的に検出することができる。
本発明に係る回路基板によれば、絶縁基板に対し、第1の金属柱と、該第1の金属柱の側面を覆う第2の金属柱から構成されるスルーホールを設けたことにより、上記金属柱と絶縁基板との密着性を向上させるとともに、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができるので、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を提供することが可能となる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で実現することが可能になる。
また、本発明にかかる回路基板の製造方法によれば、貫通孔の形成された絶縁基板を、第1の金属をイオンとして含有する第1の溶液に浸漬し、貫通孔による連通が保たれるように絶縁基板上に第1の金属を析出させ、第1の金属が析出した絶縁基板を、第1の金属が貫通孔のみに残留するよう処理した後、処理された絶縁基板を、第2の金属をイオンとして含有する第2の溶液に浸漬し、第1の金属上に絶縁基板より突出するまで第2の金属を析出させて、絶縁基板より突出した第2の金属を除去することにより、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、貫通孔に第1および第2の金属を完全に充填させることができるので、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板の製造方法を提供することができる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板の製造方法を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で製造することが可能になる。
さらに、本発明に係る回路基板の製造方法によれば、絶縁基板に設けた貫通孔を、その連通が保たれるよう第1の金属で覆った後、第2の金属がイオンとして含有される溶液が第1および第2の領域に分割されるよう該溶液中に絶縁基板を配置して第1の領域から第2の領域に向け溶液の流れを形成し、第1および第2の領域において溶液にかかる第1および第2の圧力を測定しつつ、少なくとも測定された第1の圧力と第2の圧力とが異なるまで、溶液中に絶縁基板を配置しつづけることにより、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、第2の金属が第1の金属を覆うように貫通孔を完全に充填することができるので、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板の製造方法を提供することができる。また、第1の圧力と第2の圧力とが異なる時点を確認することにより、絶縁基板の貫通孔に対する第1および第2の金属の充填乾完了時点を検出することができるので、第1および第2の金属により貫通孔を完全に充填することができる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板の製造方法を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で製造することが可能になる。
また、本発明に係る回路基板の製造装置によれば、電解槽に保持された電解液を第1および第2の領域に分割するよう電解槽に絶縁基板を配置する手段と、絶縁基板により分割される第1の領域から第2の領域に向かって溶液の流れを形成する手段と、絶縁基板により分割された第1および第2の領域における溶液の圧力を検出する手段と、検出された第1および第2の領域における溶液の圧力が異なるか否かを判定する手段とを設けたことにより、絶縁基板に設けた貫通孔に対して第1の領域から第2の領域に向け溶液の流れを形成し、第1および第2の領域において溶液にかかる第1および第2の圧力を測定しつつ、少なくとも測定された第1の圧力と第2の圧力とが異なるまで、溶液中に絶縁基板を配置しつづけることができるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールとして機能する第1および第2の金属と絶縁基板との密着性を向上させつつ、第2の金属が第1の金属を覆うように貫通孔を完全に充填することが可能となる。したがって、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板の製造装置を経済的に実現することができる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板の製造装置を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で製造することが可能になる。
また、本発明に係る回路基板の製造方法によれば、貫通孔が形成されるよう処理された絶縁基板を、貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるよう処理し、絶縁基板を、絶縁材を有するべき領域が含まれるように研磨した後、絶縁基板に対し光を照射して絶縁材が充填されているか否かを判定し、貫通孔に絶縁材が充填されていると判定された場合に、絶縁材を除去して貫通孔に金属を充填することにより、貫通孔に対する研磨剤の残留を防止するとともに、貫通孔の形成が確実に確認されるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板の製造方法を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で製造することが可能になる。
さらに、本発明に係る回路基板の製造方法によれば、第1のデータと第2のデータとを比較して、形成されるべき貫通孔に絶縁材が充填されているか否かを判定し、貫通孔に前記絶縁材が充填されていると判定された場合、絶縁基板を、貫通孔より絶縁材が除去されるように処理し、貫通孔に金属が充填されるように処理した後、絶縁基板に対して光を照射して、第1のデータ、第2のデータおよび第3のデータを比較して、貫通孔に金属が充填されているか否かを判定することにより、貫通孔に対する研磨剤の残留が防止されるとともに貫通孔の形成が確実に確認され、かつ貫通孔への金属の充填が確実に確認されるので、融点の低い絶縁基板を用いた場合にも、スルーホールに生じた歪みを絶縁基板に逃がすことができ、応力に基づく歪に対し耐久性が高く、また接続信頼性の極めて高いスルホールを設けた回路基板を経済的かつ確実に製造することが可能となる。また、熱ストレスに対して耐久性を備え、接続抵抗の低いスルホールを有するとともに、配線密度が高密度化され、小型化の達成された回路基板の製造方法を提供することができる。さらに、絶縁基板として、ガラス基板を用いた場合には、透過性が要求されるKGD検査ボードを高い信頼性で製造することが可能になる。
また、本発明に係る回路基板の検査方法によれば、貫通孔に少なくとも可視光を通過させる絶縁材が充填されるように処理された絶縁基板に対し光を照射し、絶縁基板に対する光の吸収率の差に基づいて、貫通孔に樹脂が充填されているか否かを判定することにより、絶縁基板に形成されるべき貫通孔の存在が容易かつ確実に確認されるので、スルホールを設けた回路基板を経済的に製造することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)図1は、本発明に係る回路基板の断面図、図2は、図1に係る回路基板の一部を拡大した図である。
ここで、図3を用いて、図1および図2に示した回路基板を製造する工程を説明する。
はじめに、ウエハ径で5インチφ、厚み0.5mmの感光性ガラス9を用意した(図3(a))。感光性ガラス9は公知のもので、詳細は、例えば“化学切削用感光性ガラス”実務表面技術(pp552 ‐558 、Vol.35、 NΟ.11 、1988)に記載されている。感光性ガラス9からは、紫外線照射による紫外線のエネルギーによりCe3+から光電子が放出され、その一部はガラス構造中の空孔に捕らえられるが、他の一部は感光性イオンに捕らえられて中性化するか、あるは金属原子となり、450℃〜600℃の温度で熱処理を施すことにより金属コロイドを生成する。また、金属コロイドを結晶核にして、メタケイ酸リチウム(Li2 O−SiO2 )が析出するが、この結晶は、薄いフッ酸に対する溶解度が、結晶化前の感光性ガラス9の50倍にもなるため、エッチングにより、紫外線照射したLi2 O−SiO2 結晶だけが溶解されて正確な化学切削を行うことができるものである。
次いで、感光性ガラス9に対して、紫外線照射および熱処理を行った。紫外線照射は、水銀ランプによる露光装置を用い、CeO2 を含有した感光性ガラス9は 320μm付近に最大感度を有しているため、この吸収波長領域で露光を行った。マスク6の材質としては石英ガラスを用いた。マスク6には、150μmピッチで40μmφのスルホールが形成できる長方形パターンが480ポイント×320ポイントで形成してある。この様に露光することで、感光性ガラス9の内部に潜像を形成した(図3(b))。さらに、熱処理により、感光した潜像部分を結晶化させ、酸に溶けやすくした。なお、熱処理は、炉内温度分布の良好な熱処理炉を使用して600℃にて行った。このとき、結晶化させるときの前処理として、未露光部にも再度紫外線7を照射した(図3(c))。
次いで、結晶化した部分を酸で溶解して除去した。エッチングには、フッ酸の薄い溶液を使用した。なお、エッチング方法については種々の方法が考えられるが、エッチング速度および加工精度から、シャワー式のエッチング方法が最も良好な結果を示した。また、フッ酸濃度としては、4%〜5%の範囲が最もエッチングに適していた。以上のように操作することで、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔2を形成した(図3(d))。
ここで、感光性ガラス9の表面は、フッ酸によるミクロな腐食が発生してすりガラス状態になっているため、透過性を向上させるため、1μm〜3μm以下の研磨剤による研磨を行うことが好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム、酸化アルミニウムおよびダイヤモンドなどを用いることができる。なお、貫通孔2は、感光性ガラス9の両面からエッチングにより形成されるため、感光性ガラス9の中央部では、感光性ガラス9の表面の40μmφよりも狭い30μmφとなっていた。このとき、感光性ガラス9の加工精度は孔公差±0.01、平面度0.003%であった。
次いで、貫通孔2が形成された感光性ガラス9に第1の金属3を形成した(図4(e))。ここで、第1の金属3としては、ガラス材料と密着性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては銀とした。
銀を感光性ガラス9上に析出させるためには、表面の濡れ性を向上させる、例えば、非アニオン系の洗剤に予め浸漬された感光性ガラス9を、硝酸銀溶液の中に浸漬した後、ホルムアルデヒドを添加することにより、貫通孔2の壁面を含めた感光性ガラス9の全体に銀を析出させた。この現象は、銀鏡反応として公知のものであり、溶解度の低い塩化銀の析出を防止するため塩素は含有されてはならない。この方法により、貫通孔2を含めた感光性ガラス9の表面全体に、銀を2μm〜3μm析出させた。次いで、ガラス基板の主面および裏面を、1μm〜2μmの研磨剤による乾式研磨法または1μm〜2μmの布で編んである乾布によるラビング法により研磨して、貫通孔2の壁面を除いて銀を機械的に除去した(図4(f))。以上のようにして、感光性ガラス9の貫通孔2の壁面のみ選択的に銀を形成することができるが、銀の密着強度を向上させるため、銀鏡反応/ラビング法による銀析出を少なくとも3回繰り返して行い、銀の密着強度を向上させると共に銀の析出膜厚を厚くすることも可能である。なお、この銀析出反応を繰り返した場合には、各ステップごとに、銀鏡反応/ラビング処理を行う前工程において、例えば、感光性ガラス9を非アニオン系溶液に浸漬することも可能である。非アニオン系溶液による処理を行うことで、感光性ガラス9への銀の析出は著しく向上する。また、尚、この前処理に用いる溶液は、非アニオン系洗剤に限定されるものではなく、ガラス基板と銀溶液との濡れ性を向上させるものであれば何ら問題はない。
次いで、貫通孔2の壁面のみに、選択的に第1の金属3として銀が形成された感光性ガラス9に第2の金属4を形成した。第2の金属4としては、第1の金属3である銀と密着性の高いニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においてはニッケルとした。
第2の金属4であるニッケルを、第1の金属3の析出被膜の上に析出させて貫通孔2を充填するには、貫通孔2の壁面にのみ銀が析出されている感光性ガラス9を、例えば、下記の「組成1」で構成される無電解ニッケルめっき液に5〜6時間浸漬させ、85℃〜90℃でニッケルを感光性ガラス9の表面に突出するまで析出させる。特に、組成1からなるめっき液では、還元剤として作用する次亜リン酸ナトリウムのため、リンが5wt%〜10wt%含有された、均一性、耐蝕性および耐摩耗性に優れたニッケル被膜を貫通孔2に対し充填することができる。無電解めっきを行うためのめっき装置は特に限定されるものではないが、アスペクト比の高い貫通孔2の内部におけるめっき液の交換を容易にするため、めっき液の攪拌、感光性ガラス9の揺動、2.0pa程度の超音波印加を行いながら無電解めっきする機構を備えためっき装置を用いることが望ましい。このようなめっき装置を適用することで、貫通孔2の内部に対するニッケルの充填効果が向上する。さらに、感光性ガラス9とめっき装置との位置関係も特に限定されるものではないが、めっき装置に対して感光性ガラス9を縦置きにすると、1回当たりの処理枚数を増加させることができる。
(組成1)
硫酸ニッケル 20〜30 g/L
次亜リン酸ナトリウム 25〜35 g/L
グリコール酸 25〜35 g/L
酢酸ナトリウム 15〜25 g/L
安定剤(チオ尿素) 3〜5 ppm
鉛 1〜2 mg/L
また、無電解ニッケルめっき液として、下記の「組成2」で構成される溶液を準備し、該溶液に感光性ガラス9を5〜6時間浸漬させ、60℃〜70℃にてニッケルめっきを行うことも可能である。組成2から構成されるめっき液では、還元剤として作用するジメチルアミノボランからボロンが1wt%程度含有されたニッケル被膜が析出するため、導電性の高いニッケルを貫通孔2に充填することができる。このときも、アスペクト比の高い貫通孔2の内部におけるめっき液交換を容易にするため、めっき液の攪拌、感光性ガラス9の揺動、2.0Pa程度の超音波印加を行いながら無電解めっきする機構を備えためっき装置を用いて無電解めっきを行うと、貫通孔がニッケルにより完全充填される。
(組成2)
酢酸ニッケル 30 g/L
ジメチルアミノボラン 2.5g/L
乳酸 25 g/L
クエン酸ナトリウム 25 g/L
チオグリコール酸 1.5g/L
以上のように、無電解めっきを行うことにより、感光性ガラス9に形成された貫通孔2中に、完全にニッケルを充填することができる。なお、貫通孔2中に、完全にニッケルを充填させるため、析出したニッケルが感光性ガラス9の面から少なくとも 0.1μmは突出するまでめっきを行うことが好ましい。
次いで、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように機械的に研磨した(図4(g))。研磨は、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように、マクロ研磨により感光性ガラス9の面から突出する量が±5μm程度になるまで均一化した後、ミクロ研磨により研磨した。なお、ミクロ研磨を行ったときの凹凸の公差は、回路基板面に形成する回路配線の接触抵抗上、±3μm以下の精度に保つことが好ましい。
ここで、マクロ研磨は、例えば、5μm〜10μm程度の粒径を有する酸化セリウム、または#1000程度の耐水研磨紙を用い、ミクロ研磨は、0.3μm程度の粒径を有する酸化セリウム、酸化アルミナまたはダイヤモンドを用いて行うことが好ましい。このとき、液体状の研磨ペーストを研磨剤とする湿式研磨法を用いると、感光性ガラス9、第1の金属3および第2の金属4の間に、研磨速度差が発生するため、ミクロ研磨には、ダイヤモンド等が埋め込まれたデイスク盤を用いて研磨する乾式研磨を適用することが好ましい。
以上のように、貫通孔2に第1の金属3および第2の金属4が完全充填された感光性ガラス9を得ることができた。
次いで、回路配線5を感光性ガラス9上に形成した(図4(h))。回路配線を構成する金属は特に限定されるものではないが、例えば、回路配線5に透過性を持たせたい場合には、インジウム・スズ酸化膜(ITO膜)を用いることが好ましい。このとき、図5(b)に示したように、回路配線5は、貫通孔2を、第1の金属3および第2の金属4金属により完全に充填しているため、図5(a)に示したように、スルホール11の部分にランド10を設ける必要がなく、従来のレイアウトに比較して、約1.5倍の密度で回路配線5をレイアウトすることが可能となった。
ここで、回路配線5となるITOは、例えば、以下のようにして形成することができる。すなわち、スパッタ法などを用いて、感光性ガラス9の表面上にITO膜を形成した後、OFPR−800(東京応化社製)等のレジストを被覆してパターンニングを行い、感光したITOをエッチングにより除去するとともにレジストをアセトンで除去する。さらに、感光性ガラス9の表面に形成されたITOのパターンを、例えば、ポリイミド膜(UR−3140)にて全面被覆する。
次いで、感光性ガラス9の裏面側に対しても、上記操作を施して、ITOのパターンを、例えば、ポリイミド膜(UR−3140)にて全面被覆する。こうして、回路配線5を備えた回路基板1が作製される。
尚、本実施の形態では、ITO膜を回路配線に用いる金属として適用したが、回路配線を構成する金属として、ニッケル、クロム、銅および錫から選択される金属も用いることができ、その材質は特に限定されるものではない。こうして、図1および図2に示した回路基板1を構成した。
次いで、回路基板1の接続信頼性を評価したところ以下の結果を得た。なお、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔を480ポイント×320ポイント形成し、銀およびニッケルを用いて該貫通孔を充填した試料を比較のために準備した。また、この貫通孔の密度は、図1および図2に示した回路基板1と全く同様である。さらに、評価の基準は、回路基板に温度サイクルを負荷し、480ポイント×320ポイントに渡り形成した貫通孔の中で1箇所でもスルホールの接続部分がオープンになった場合を不良とした。図6には、縦軸に累積不良率、横軸に温度サイクルが示されている。また、サンプル数は各々1000個、温度サイクルの条件は、−55℃(30min)〜25℃(5min)〜125℃(30min)〜25℃(5min)
である。
図6に示したように、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみにニッケル皮膜を形成した従来品では、点線で示したように、1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルにおいては接続不良が100%に達した。また、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみに銅皮膜を形成した場合でも、上記ニッケル皮膜を形成したときと同様に1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルで100%の不良率に達して、金属による相異はみられなかった。
ところが、図1および図2に示した回路基板1においては、3500サイクルまで接続不良は発生せず、接続信頼性が極めて向上することが確認された。なお、この接続信頼性は、第1の金属にガラス材料と親和性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの金属合金、第1の金属上に配置する第2の金属として、ニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの金属合金を用いた場合においても、金属または金属の組合わせに関わらず3500サイクルまで接続不良は確認されなかった。
また、回路基板1におけるスルホールの接続不良は、上記従来品において確認されたスルホールの金属の剥離破壊とは全く異なるモードであり、接続不良の解析からも接続信頼性が極めて向上していることが確認された。これは、回路基板1においては、スルホールの構造が従来品とは異なり、金属で完全に充填されている構造をとっているため、応力による歪を充填された金属全体で緩和して貫通孔の壁面における金属に生じるクラックを防止し、また、スルホールの形状が鼓型を有して応力による歪を回路基板の面に向かって段階的に緩和しているためと考えられる。
また、回路基板1では、スルホールは金属により完全に充填されているため、接続抵抗は0.05mΩであり、一方、上記従来品におけるスルホールでは同一組成のニッケル合金を用いた場合でも接続抵抗が0.5mΩであったことと比較すると、スルホールにおける接続抵抗は約10倍低くなっていることが確認された。これは、スルホールの断面が従来品とは異なり、約2倍以上の面積をもって回路配線と接続されているためと考えられる。
さらに、回路基板1を用いて、KGD検査ボードを作製した。その結果、従来までの不透明なガラスエポキシ材料から構成される検査ボードを用いた場合と比較して、位置合せがガラス基板を通して行えたため、該位置合せを極めて容易に実施することができた。
具体的には、1000個の半導体チップを検査するのに、従来は3時間要していた検査時間を1時間にまで短縮することができ、約1/3の検査時間でKGDを完了することができた。
さらに、従来品では、貫通孔のスルホールを避けて検査パッドを配置するレイアウトをとらなければならず、回路配線および検査ボードの高密度化は限界に達していたが、回路基板1においては、スルホールの貫通孔の部分も検査パッドとすることが可能になったため、従来品と比較して約1.5倍の高密度化が可能になり、検査ボードの面積も2/3まで縮小することができた。
また、回路基板1においては、スルホールが金属により完全に充填されているため、図7に示すように、回路基板1の裏面を液体窒素などの冷媒に接触させることが可能となり、半導体チップ12からの発熱を効果的に放熱する構成をとることが可能になった。これは、高速動作を行うCPUを所定の動作クロック以上の環境で検査するとき発生する熱を効果的に低減することができることから、その効果は極めて高いものと考えられる。このとき、冷媒は液体窒素に限定されるものではなく、冷却用純水などを用いることも可能であり、いずれにしても冷却効果は著しく向上した。また、回路基板1においては、スルホールの形状が鼓型となっているため、貫通孔に充填した金属が圧力に対して耐性を有しているためである。なお、このとき、気密性は−76mmHgまで可能であった。
さらに、回路基板1の貫通孔2に対する第1の金属3および第2の金属4の密着性を評価した。なお、比較のために、溶融金属により貫通孔を充填した以外は回路基板1と同一に構成された試料を比較のために準備した。また、評価の基準は、気密性試験を行い、−50mmHgでスルーホールの気密性が保たれなかった場合を不良とした。
評価の結果、回路基板1は、比較のために準備した従来品と比べ、回路基板1の貫通孔2に対する第1の金属3および第2の金属4の密着性が大きく向上していることが確認された。
以上から明らかなように、回路基板1は、熱サイクルに対してもスルーホールにクラック等の損傷を生じず、優れた耐性を有する信頼性の高い構造であり、回路基板上の回路配線の密度を従来品と比較して著しく向上できるものであることが確認された。また、貫通孔に対する第1の金属および第2の金属の密着性が大きく向上していることから、貫通孔を覆う金属の剥離がほぼ防止されることが確認された。
(実施の形態2)はじめに、ウエハ径で5インチφ、厚み0.5mmの感光性ガラス9を用意した(図8(a))。 次いで、感光性ガラス9に対して、紫外線照射および熱処理を行った。紫外線照射は、水銀ランプによる露光装置を用い、CeO2 を含有した感光性ガラス9は320μm付近に最大感度を有しているため、この吸収波長領域で露光を行った。マスク6の材質としては石英ガラスを用いた。マスク6には150μmピッチで40μmφのスルホールが形成できる長方形パターンが480ポイント×320ポイントで形成してある。この様に露光することで、感光性ガラス9の内部に潜像を形成した(図8(b))。さらに、熱処理により、感光した潜像部分を結晶化させ、酸に溶けやすくした。なお、熱処理は、炉内温度分布の良好な熱処理炉を使用して600℃にて行った。このとき、結晶化させるときの前処理として、未露光部にも再度紫外線7を照射した(図8(c))。
次いで、結晶化した部分を酸で溶解して除去した。エッチングには、フッ酸の薄い溶液を使用した。なお、エッチング方法については種々の方法が考えられるが、エッチング速度および加工精度から、シャワー式のエッチング方法が最も良好な結果を示した。また、フッ酸濃度としては、4%〜5%の範囲が最もエッチングに適していた。以上のように操作することで、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔2を形成した(図8(d))。
ここで、感光性ガラス9の表面は、フッ酸によるミクロな腐食が発生してすりガラス状態になっているため、透過性を向上させるため、1μm〜3μm以下の研磨剤による研磨を行うことが好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム、酸化アルミニウムおよびダイヤモンドなどを用いることができる。なお、貫通孔2は、感光性ガラス9の両面からエッチングにより形成されるため、感光性ガラス9の中央部では、感光性ガラス9の表面の40μmφよりも狭い30μmφとなっていた。このとき、感光性ガラス9の加工精度は孔公差±0.01%、平面度0.003%であった。
次いで、貫通孔2が形成された感光性ガラス9に第1の金属3を形成した(図9(e))。ここで、第1の金属3としては、ガラス材料と密着性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては銀とした。
銀を感光性ガラス9上に析出させるためには、表面の濡れ性を向上させる、例えば、非アニオン系の洗剤に予め浸漬された感光性ガラス9を、硝酸銀溶液の中に浸漬した後、ホルムアルデヒドを添加することにより、貫通孔2の壁面を含めた感光性ガラス9の全体に銀を析出させた。この現象は、銀鏡反応として公知のものであり、溶解度の低い塩化銀の析出を防止するため塩素は含有されてはならない。この方法により、貫通孔2を含めた感光性ガラス9の表面全体に、銀を2μm〜3μm析出させた。次いで、ガラス基板の主面および裏面を、1μm〜2μmの研磨剤による乾式研磨法または1μm〜2μmの布で編んである乾布によるラビング法により研磨して、貫通孔2の壁面を除いて銀を機械的に除去した(図4(f))。このとき、銀が貫通孔2の内部に入り込んだとしても、後工程の無電解めっきの核として機能するため何ら問題はない。以上のようにして、感光性ガラス9の貫通孔2の壁面のみ選択的に銀を形成することができたが、銀の密着強度を向上させるため、銀鏡反応/ラビング法による銀析出を少なくとも3回繰り返して行い、銀の密着強度を向上させると共に銀の析出膜厚を厚くすることも可能である。なお、この銀析出反応を繰り返した場合には、各ステップごとに、銀鏡反応/ラビング処理を行う前工程において、例えば、感光性ガラス9を非アニオン系溶液に浸漬することも可能である。非アニオン系溶液による処理を行うことで、感光性ガラス9への銀の析出は著しく向上する。また、尚、この前処理に用いる溶液は、非アニオン系洗剤に限定されるものではなく、ガラス基板と銀溶液との濡れ性を向上させるものであれば何ら問題はない。
次いで、貫通孔2の壁面のみに、選択的に第1の金属3として銀が形成された感光性ガラス9に第2の金属4を形成した。第2の金属4としては、第1の金属3である銀と密着性の高いニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においてはニッケルとした。第2の金属4であるニッケルを、第1の金属3の析出被膜の上に析出させて貫通孔2を充填するには、貫通孔2の壁面にのみ銀が析出されている感光性ガラス9を、例えば、上記の「組成1」で構成される無電解ニッケルめっき液に5〜6時間浸漬させ、85℃〜90℃でニッケルを感光性ガラス9の表面に突出するまで析出させる。特に、組成1からなるめっき液では、還元剤として作用する次亜リン酸ナトリウムのため、リンが5wt%〜10wt%含有された、均一性、耐蝕性および耐摩耗性に優れたニッケル被膜を貫通孔2に対し充填することができる。
また、無電解ニッケルめっき液として、上記「組成2」で構成される溶液を準備し、該溶液に感光性ガラス9を5〜6時間浸漬させ、60℃〜70℃にてニッケルめっきを行うことも可能である。組成2から構成されるめっき液では、還元剤として作用するジメチルアミノボランからボロンが1wt%程度含有されたニッケル被膜が析出するため、導電性の高いニッケルを貫通孔2に充填することができる。
ここで、無電解めっき法を実行する回路基板の製造装置は、以下のように構成されている。すなわち、図10および図11に示したように、該回路基板の製造装置は、めっき液25を保持するめっき液槽26、めっき液25を流通させるための流路配管27、めっき液を循環させるポンプ28、めっき液を循環させる循環装置29および流路制御装置30を備えている。さらに、めっき液槽26には、第1の溶液領域31および第2の溶液領域32における圧力を計測をする圧力センサ33と圧力計34および感光性ガラス9を保持するための保持機構35を備えている。保持機構35は、めっき液槽26内の一定位置で感光性ガラス9を保持することにより、第1の溶液領域31と第2の溶液領域32にめっき液25を分離するためのもので、第1の溶液領域31におけるめっき液と第2の溶液領域32におけるめっき液とが相互に入り込まない様にシールされている。シーリングする機構は特に限定されるものではないが、本実施例ではバイトンOリング、またはシリコンOリング等のOリングを用いて隙間が発生しないようにした。さらに、めっき液槽26、流路配管27およびポンプ28の内部等の、めっき液25が接触する部分はフッ素樹脂類、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリエーテル類および塩化ビニル類等から構成されている。また、ポンプ28本体は、耐食性に優れたマグネットポンプを用いており、回転数をインバータで制御している。
また、感光性ガラス9は、めっき液槽26の内部に水平配置されており、感光性ガラス9を設置した後、ポンプ28を稼動させて、めっき液槽26内部のめっき液25の水面を上昇させる。感光性ガラス9に接触しためっき液25は、第1の溶液領域31から、感光性ガラス9の貫通孔2の内部を通過して第2の溶液領域32に移動する。さらに、めっき液25は、第2の溶液領域32からオーバーフローして外部に流出するようになっており、流出しためっき液25は装置内部で循環する構成となっている。また、第1の溶液領域31と第2の溶液領域32の圧力差を計測する圧力計34では、得られた信号がデジタル信号化されるようになっている。この変換された圧力信号を流路制御装置30が検出して、循環装置29を制御することで無電解めっきを完了させる。
上記回路基板の製造装置では、アスペクト比の高い貫通孔2の内部をめっき液25が常時移動するため、金属イオン濃度は、無電解めっき膜を析出させるに適した濃度に制御されている。したがって、図12に示したに、これまでアスペクト比の高い貫通孔の内部で発生していた、めっき液の循環が不充分なことによる金属イオンの濃度低下を防止することができ、欠陥のない均一なスルホールを形成することができる。
なお、貫通孔内部におけるめっき液交換を完全に行うため、めっき液槽26全体または感光性ガラス9のみに選択的に2.0Pa程度の超音波を印加することも可能である。さらに、第1の溶液領域31および第2の溶液領域32に圧力センサ33を配置して、相互の溶液領域に圧力差が発生した時点をめっき完了点として流路制御する流路制御装置30を備えているため、貫通孔2の全体が金属で完全充填されて第1の溶液領域31から第2の溶液領域32にめっき液25が移動しなくなることにより、圧力差が発生する点をめっきの完了点とすることができる。これにより、無電解めっきの完了点を検出することができないため発生していたスルホールの欠陥を容易に防止することができ、接続信頼性の高いスルホールを形成することが可能となった。
以上のように、無電解めっきを行うことにより、感光性ガラス9に形成された貫通孔2中に、完全にニッケルを充填することができた。なお、貫通孔2中に、完全にニッケルを充填させるため、浸漬時間をめっき圧力差の発生した時点から約10分程度延長させ、析出したニッケルが感光性ガラス9の面から少なくとも1μmは突出するまでめっきを行うことが好ましい。
次いで、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように機械的に研磨した(図9(g))。研磨は、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように、マクロ研磨により感光性ガラス9の面から突出する量が±5μm程度になるまで均一化した後、ミクロ研磨により研磨した。なお、ミクロ研磨を行ったときの凹凸の公差は、回路基板面に形成する回路配線の接触抵抗上、± 3μm以下の精度に保つことが好ましい。
ここで、マクロ研磨は、例えば、5μm〜10μm程度の粒径を有する酸化セリウム、または#1000程度の耐水研磨紙を用い、ミクロ研磨は、0.3μm程度の粒径を有する酸化セリウム、酸化アルミナまたはダイヤモンドを用いて行うことが好ましい。このとき、液体状の研磨ペーストを研磨剤とする湿式研磨法を用いると、感光性ガラス9、第1の金属3および第2の金属4の間に、研磨速度差が発生するため、ミクロ研磨には、ダイヤモンド等が埋め込まれたデイスク盤を用いて研磨する乾式研磨を適用することが好ましい。
以上のように、貫通孔2に第1の金属3および第2の金属4が完全充填された感光性ガラス9を得ることができた。
次いで、回路回路5を感光性ガラス9上に形成した(図9(h))。回路配線を構成する金属は特に限定されるものではないが、ここでは、実施の形態1と同様にして実施した。このとき、貫通孔2は金属により完全に充填されているため、従来品のように、スルホールの部分でランドを設ける必要がなく、従来品と比較して約1.5倍の密度で回路配線をレイアウトすることができた。なお、本実施の形態では、ITO膜を回路配線を構成する金属として適用したが、回路配線を構成する金属として、例えば、ニッケル、クロム、銅および錫から選択される金属も用いることができ、その材質は特に限定されるものではない。
次いで、回路基板1の接続信頼性を評価したところ以下の結果を得た。なお、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔を480ポイント×320ポイント形成し、銀およびニッケルを、図13および図14に示した従来のめっき装置を用いて該貫通孔に対し充填した試料を比較のために準備した。なお、図13に示しためっき装置では電気めっき方式を採用しており、一方、図14に示しためっき装置では無電解めっきを採用してはいるものの、めっき液を、感光性ガラス9を用いて異なる領域に分割していない構成をとっている。また、評価は、上記実施の形態1と同様の基準で行った。
図15に示したように、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみにニッケル皮膜を形成した上記試料(従来品)では、点線で示したように、1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルにおいては接続不良が100%に達した。また、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみに銅皮膜を形成した場合でも、上記ニッケル皮膜を形成したときと同様に1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルで100%の不良率に達して、金属による相異はみられなかった。
ところが、本実施の形態により得られた回路基板1においては、3500サイクルまで接続不良は発生せず、接続信頼性が極めて向上することが確認された。なお、この接続信頼性は、第1の金属にガラス材料と親和性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの金属合金、第1の金属上に配置する第2の金属として、ニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの金属合金を用いた場合においても、金属または金属の組合わせに関わらず3500サイクルまで接続不良は確認されなかった。
また、回路基板1におけるスルホールの接続不良は、上記従来品において確認されたスルホールの金属の剥離破壊とは全く異なるモードであり、接続不良の解析からも接続信頼性が極めて向上していることが確認された。これは、回路基板1においては、スルホールの構造が従来品とは異なり、金属で完全に充填されている構造をとっているため、応力による歪を充填された金属全体で緩和して貫通孔の壁面における金属に生じるクラックを防止し、また、スルホールの形状が鼓型を有して応力による歪を回路基板の面に向かって段階的に緩和しているためと考えられる。
また、回路基板1では、スルホールは金属により完全に充填されているため、接続抵抗は0.05mΩであり、一方、上記従来品におけるスルホールでは同一組成のニッケル合金を用いた場合でも接続抵抗が0.5mΩであったことと比較すると、スルホールにおける接続抵抗は約10倍低くなっていることが確認された。これは、スルホールの断面が従来品とは異なり、約2倍以上の面積をもって回路配線と接続されているためと考えられる。
さらに、回路基板1を用いて、KGD検査ボードを作製した。その結果、従来までの不透明なガラスエポキシ材料から構成される検査ボードを用いた場合と比較して、位置合せがガラス基板を通して行えたため、該位置合せを極めて容易に実施することができた。
具体的には、1000個の半導体チップを検査するのに、従来は3時間要していた検査時間を1時間にまで短縮することができ、約1/3の検査時間でKGDを完了することができた。
さらに、従来品では、貫通孔のスルホールを避けて検査パッドを配置するレイアウトをとらなければならず、回路配線および検査ボードの高密度化は限界に達していたが、回路基板1においては、スルホールの貫通孔の部分も検査パッドとすることが可能になったため、従来品と比較して約1.5倍の高密度化が可能になり、検査ボードの面積も2/3まで縮小することができた。
また、回路基板1においては、スルホールが金属により完全に充填されているため、図7に示すように、回路基板1の裏面を液体窒素などの冷媒に接触させることが可能となり、半導体チップ12からの発熱を効果的に放熱する構成をとることが可能になった。これは、高速動作を行うCPUを所定の動作クロック以上の環境で検査するとき発生する熱を効果的に低減することができることから、その効果は極めて高いものと考えられる。このとき、冷媒は液体窒素に限定されるものではなく、冷却用純水などを用いることも可能であり、いずれにしても冷却効果は著しく向上した。また、回路基板1においては、スルホールの形状が鼓型となっているため、貫通孔に充填した金属が圧力に対して耐性を有しているためである。なお、このとき、気密性は−76mmHgまで可能であった。
以上から明らかなように、回路基板1は、熱サイクルに対してもスルーホールにクラック等の損傷を生じず、優れた耐性を有する信頼性の高い構造であり、回路基板上の回路配線の密度を従来品と比較して著しく向上できるものであることが確認された。
(実施の形態3)はじめに、ウエハ径で5インチφ、厚み0.5mmの感光性ガラス9を用意した(図16(a))。 次いで、感光性ガラス9に対して、紫外線照射および熱処理を行った。紫外線照射は、水銀ランプによる露光装置を用い、CeO2 を含有した感光性ガラス9は320μm付近に最大感度を有しているため、この吸収波長領域で露光を行った。マスク6の材質としては石英ガラスを用いた。マスク6には150μmピッチで40μmφのスルホールが形成できる長方形パターンが480ポイント×320ポイントで形成してある。この様に露光することで、感光性ガラス9の内部に潜像を形成した(図16(b))。さらに、熱処理により、感光した潜像部分を結晶化させ、酸に溶けやすくした。なお、熱処理は、炉内温度分布の良好な熱処理炉を使用して600℃にて行った。このとき、結晶化させるときの前処理として、未露光部にも再度紫外線7を照射した(図16(c))。
次いで、結晶化した部分を酸で溶解して除去した。エッチングには、フッ酸の薄い溶液を使用した。なお、エッチング方法については種々の方法が考えられるが、エッチング速度および加工精度から、シャワー式のエッチング方法が最も良好な結果を示した。また、フッ酸濃度としては、4%〜5%の範囲が最もエッチングに適していた。以上のように操作することで、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔2を形成した(図16(d))。ここで、感光性ガラス9の表面には、図19(a)に示したように、フッ酸によるミクロな腐食による凹凸47が発生しており、すりガラス状態になっていた。
次いで、貫通孔2の内部に絶縁材48を充填した(図17(e))。絶縁材48は、透過性を有していれば特に限定されるものではないが、研磨精度を向上させるため、熱硬化性とともに溶解性を向上させる光反応性を有するものであることが好ましい。このため、本実施の形態では、絶縁材48として、ポジ型レジストであるOFPR−800(東京応化社製)を用いた。
また、絶縁材48の貫通孔2への充填は、貫通孔2のアスペクト比が高いため毛細管現象により実施した。具体的には、図20に示したように、ポジ型レジストOFPR−800の溶液49中に感光性ガラス9の裏面を接触させる様に配置して感光性ガラス9の表面まで溶液49を上昇させる。したがって、溶液49の粘度は低粘度であることがより好ましい。本実施例では、20cp〜50cpの粘度を有する溶液49を用いたが、いずれの場合でも貫通孔2への絶縁材48の充填は良好に行われた。このとき、感光性ガラス9の表面に付着する溶液49は、特に除去しないでそのまま研磨工程において除去するようにした。また、貫通孔2に充填されている溶液49を硬化させるため、オーブンにて、90℃で30minにわたりベークした。
次いで、図19(a)に示したように、不透明となっている感光性ガラス9を研磨して透明にした。感光性ガラス9の研磨は、液体研磨剤を使用する湿式研磨法または液体研磨剤を使用しない乾式研磨法のうち少なくとも1つの研磨法を適用して実施することが好ましい。本実施の形態では、例えば、湿式研磨法および乾式研磨法の2つの方法を用いて研磨した。なお、液体研磨剤としては、1μm〜3μm以上の粒径を有する酸化セリウム、酸化アルミニウムおよびダイヤモンド等を含有した研磨剤を用いることができ、これらの研磨剤を、例えば、ナイロンで編んであるバフクロス上に塗布して、図21に示したように研磨した。こうして、感光性ガラス9の表面の凹凸は2μm〜3μm程度にまで平坦化できた。
さらに、液体研磨剤が塗布してある研磨盤51を、例えば1μm〜2μmのダイヤモンドが一様に配置してある研磨盤に交換して乾式研磨した。これにより、感光性ガラス9の表面の凹凸は1μm〜2μm程度にまで平坦化でき、極めて透過性の高い感光性ガラスを得ることができた。
次いで、スルホールとなる部分に貫通孔2が形成されているか否かを光学的に検査した(図17(f))。このときの検査は、感光性ガラス9と絶縁材48との検査光に対する吸収率差を検出する方法で行った。
ここで、感光性ガラス9および絶縁材48の光学特性を、各々図22および図23に示す。図22および図23から明らかなように、感光性ガラス9は、波長250nm付近では透過率0%に対して、波長350nm付近では約100%の透過率を示す。一方、絶縁材48では、波長250nm付近で、透過率が上昇する小さなピークを示すが、概ね透過率は0%に近く、波長270nm以上で透過率が大きく上昇する傾向を示す。ところが、図23から明らかなように、絶縁材48の透過率は350nm付近で50%程度であり、500nm以上でも最大の90%を示すのみである。
したがって、波長350nm以上の検査光を、波長を段階的に変化させながら感光性ガラス9に全面にわたり照射することにより、貫通孔2において、絶縁材48が充填されている部分のみ透過率が減少するので、貫通孔2が形成されているか否かを確実に検出できるものである。そして、感光性ガラス9に対して、400nmの波長を有する検査光を照射した結果、感光性ガラス9の部分では100%の透過率を示したのに対して、絶縁材48の部分では50%程度の透過率を示した。さらに、これらの透過率を吸収率に変換した後、これらの吸収率の差を第2データとし、該第2のデータと、予め貫通孔2の形成されるべき位置として取得していた第1データとを比較したところ、第1データおよび第2データは完全な一致を示し、貫通孔2が高精度に形成されていることが確認された。
また、貫通孔2が形成された位置を予めメタルマスクで覆い、貫通孔が形成されていない感光性ガラス9を比較サンプルとして、上記と同様の方法で検査した結果、図24に示すように、貫通孔の欠陥部分54が100%の精度で検出され、検査方法の妥当性が確認された。
次いで、感光性ガラス9を絶縁材48(OFPR-800)の現像液であるNMD−3(東京応化社製)に浸漬して貫通孔2より除去した(図17(g))。このとき、絶縁材48には紫外線が照射されているため、通常の露光部分と同様に、現像液に対して容易に溶解するものである。なお、キシレンやエチルセロソルブアセテート等の残留溶媒に起因して貫通孔2の壁面に多少残る絶縁材は、はくり−10(東京応化社製)やアセトン等を用いて完全に除去することが可能である。
なお、貫通孔2は、感光性ガラス9の両面からエッチングにより形成されるため、感光性ガラス9の中央部では、感光性ガラス9の表面の40μmφよりも狭い30μmφとなっていた。このとき、感光性ガラス9の加工精度は孔公差±0.01%、平面度0.003%であった。
次いで、貫通孔2が形成された感光性ガラス9に第1の金属3を形成した(図17(h))。ここで、第1の金属3としては、ガラス材料と密着性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては銀とした。
銀を感光性ガラス9上に析出させるためには、表面の濡れ性を向上させる、例えば、非アニオン系の洗剤に予め浸漬された感光性ガラス9を、硝酸銀溶液の中に浸漬した後、ホルムアルデヒドを添加することにより、貫通孔2の壁面を含めた感光性ガラス9の全体に銀を析出させた。この現象は、銀鏡反応として公知のものであり、溶解度の低い塩化銀の析出を防止するため塩素は含有されてはならない。この方法により、貫通孔2を含めた感光性ガラス9の表面全体に、銀を2μm〜3μm析出させた。次いで、ガラス基板の主面および裏面を、1μm〜2μmの研磨剤による乾式研磨法または1μm〜2μmの布で編んである乾布によるラビング法により研磨して、貫通孔2の壁面を除いて銀を機械的に除去した(図17(i))。このとき、銀が貫通孔2の内部に入り込んだとしても、後工程の無電解めっきの核として機能するため何ら問題はない。以上のようにして、感光性ガラス9の貫通孔2の壁面のみ選択的に銀を形成することができたが、銀の密着強度を向上させるため、銀鏡反応/ラビング法による銀析出を少なくとも3回繰り返して行い、銀の密着強度を向上させると共に銀の析出膜厚を厚くすることも可能である。なお、この銀析出反応を繰り返した場合には、各ステップごとに、銀鏡反応/ラビング処理を行う前工程において、例えば、感光性ガラス9を非アニオン系溶液に浸漬することも可能である。非アニオン系溶液による処理を行うことで、感光性ガラス9への銀の析出は著しく向上する。また、尚、この前処理に用いる溶液は、非アニオン系洗剤に限定されるものではなく、ガラス基板と銀溶液との濡れ性を向上させるものであれば何ら問題はない。
次いで、貫通孔2の壁面のみに、選択的に第1の金属3として銀が形成された感光性ガラス9に第2の金属4を形成した。第2の金属4としては、第1の金属3である銀と密着性の高いニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの合金であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においてはニッケルとした。
第2の金属4であるニッケルを、第1の金属3の析出被膜の上に析出させて貫通孔2を充填するには、貫通孔2の壁面にのみ銀が析出されている感光性ガラス9を、例えば、上記の「組成1」で構成される無電解ニッケルめっき液に5〜6時間浸漬させ、85℃〜90℃でニッケルを感光性ガラス9の表面に3〜5μm程度突出するまで析出させる。特に、組成1からなるめっき液では、還元剤として作用する次亜リン酸ナトリウムのため、リンが5wt%〜10wt%含有された、均一性、耐蝕性および耐摩耗性に優れたニッケル被膜を貫通孔2に対し充填することができる。また、無電解ニッケルめっき液として、上記「組成2」で構成される溶液を準備し、該溶液に感光性ガラス9を5〜6時間浸漬させ、60℃〜70℃にてニッケルめっきを行うことも可能である。組成2から構成されるめっき液では、還元剤として作用するジメチルアミノボランからボロンが1wt%程度含有されたニッケル被膜が析出するため、導電性の高いニッケルを貫通孔2に充填することができる。なお、ニッケルを貫通孔2に関前に充填するため、該ニッケルを感光性ガラス9の表面に1μm程度突出するまで析出させるとよい。
無電解めっきを行うためのめっき装置は特に限定されるものではないが、アスペクト比の高い貫通孔2の内部におけるめっき液の交換を容易にするため、めっき液の攪拌、感光性ガラス9の揺動、2.0Pa程度の超音波印加を行いながら無電解めっきする機構を備えためっき装置を用いることが望ましい。また、実施の形態2において示した回路基板の製造装置を適用することも可能である。このようなめっき装置を適用することで、貫通孔2の内部に対するニッケルの充填効果が向上する。さらに、感光性ガラス9とめっき装置との位置関係も特に限定されるものではないが、めっき装置に対して感光性ガラス9を縦置きにすると、1回当たりの処理枚数を増加させることができる。なお、この場合、実施の形態2に示した回路基板の製造装置を適用した場合には、第1、第2、……第n領域というようにめっき液が分割されるように感光性ガラスを配置する。
次いで、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように機械的に研磨した(図18(j))。研磨は、貫通孔2より突出した第2の金属(ニッケル膜)を、感光性ガラス9の面と同一平面を構成するように、マクロ研磨により感光性ガラス9の面から突出する量が±2μm程度になるまで均一化した後、ミクロ研磨により研磨した。なお、ミクロ研磨を行ったときの凹凸の公差は、回路基板面に形成する回路配線の接触抵抗上、±0.5μm以下の精度に保つことが好ましい。
ここで、マクロ研磨は、例えば、2μm〜3μm程度の粒径を有する酸化セリウム、または#2000程度の耐水研磨紙を用い、ミクロ研磨は、0.3μm程度の粒径を有する酸化セリウム、酸化アルミナまたはダイヤモンドを用いて行うことが好ましい。このとき、液体状の研磨ペーストを研磨剤とする湿式研磨法を用いると、感光性ガラス9、第1の金属3および第2の金属4の間に、研磨速度差が発生するため、ミクロ研磨には、ダイヤモンド等が埋め込まれたデイスク盤を用いて研磨する乾式研磨を適用することが好ましい。
以上のように、貫通孔2に第1の金属3および第2の金属4が完全充填された感光性ガラス9を得ることができた。
次いで、貫通孔2に金属が充填されていることを光学的に検査した(図18(k))。このときの検査方法は、感光性ガラス9と貫通孔2に充填した金属における、検査光の吸収率差を検出するものである。なお、感光性ガラス9の光学特性は上述した通りである。ここで、感光性ガラス9に400nmの波長を有する検査光を照射した結果、感光性ガラスにおいては約100%の透過率を示したのに対し、充填された金属部においては検査光は遮断され0%の透過率であった。
これらの結果をもとに、貫通孔2を充填した金属および感光性ガラス9の検査光に対する吸収率差とその位置とを第3データとし、上記第1および第2データと比較したところ、第3データは第1データおよび第2データと完全な一致を示し、金属充填されたスルホールが高精度に形成されていることが確認された。
また、比較のために、スルホールとなるべき貫通孔のうち、任意の10個を予め絶縁材で覆い、一部に金属が充填されていない感光性ガラスをサンプルとして、上記方法により検査した結果、図25に示すように、貫通孔の欠陥57が100%の精度で検出され検査方法の妥当性が確認された。
以上のように、貫通孔2に第1の金属3および第2の金属4が完全充填された透過性の高い感光性ガラス9を得ることができた。
次いで、回路配線5を感光性ガラス9上に形成した(図18(l))。回路配線を構成する金属は特に限定されるものではないが、ここでは、実施の形態1と同様にして実施した。このとき、貫通孔2は金属により完全に充填されているため、従来品のように、スルホールの部分でランドを設ける必要がなく、従来品と比較して約1.5倍の密度で回路配線をレイアウトすることができた。なお、本実施の形態では、ITO膜を回路配線を構成する金属として適用したが、回路配線を構成する金属として、例えば、ニッケル、クロム、銅および錫から選択される金属も用いることができ、その材質は特に限定されるものではない。
さらに、回路基板1を用いて、KGD検査ボードを作製した。その結果、従来までの不透明なガラスエポキシ材料から構成される検査ボードを用いた場合と比較して、位置合せがガラス基板を通して行えたため、該位置合せを極めて容易に実施することができた。
具体的には、1000個の半導体チップを検査するのに、従来は3時間要していた検査時間を1時間にまで短縮することができ、約1/3の検査時間でKGDを完了することができた。
さらに、従来品では、貫通孔のスルホールを避けて検査パッドを配置するレイアウトをとらなければならず、回路配線および検査ボードの高密度化に限界があるとともに、スルーホールおよび回路配線が透過率の向上を妨げていたが、回路基板1においては、スルホールの貫通孔の部分も検査パッドとすることが可能になったため、従来品と比較して約1.5倍の高密度化が可能になり、検査ボードの面積も2/3まで縮小することができた。また、透過率も向上したため、検査効率も大幅に向上した。
次いで、回路基板1の接続信頼性を評価したところ以下の結果を得た。なお、感光性ガラス9に40μmφの貫通孔を480ポイント×320ポイント形成し、銀およびニッケルを用いて該貫通孔を充填した試料を比較のために準備した。また、評価は、上記実施の形態1と同様の基準で行った。
この結果、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみにニッケル皮膜を形成した上記試料(従来品)では、1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルにおいては接続不良が100%に達した。また、スルホールとなる貫通孔に金属を完全に充填せず、貫通孔の壁面のみに銅皮膜を形成した場合でも、上記ニッケル皮膜を形成したときと同様に1500サイクルで接続不良が発生し、3000サイクルで100%の不良率に達して、金属による相異はみられなかった。
ところが、本実施の形態により得られた回路基板1においては、3500サイクルまで接続不良は発生せず、接続信頼性が極めて向上することが確認された。なお、この接続信頼性は、第1の金属にガラス材料と親和性の高いパラジウム、銀、金および白金から選択される金属またはこれらの金属合金、第1の金属上に配置する第2の金属として、ニッケル、銅、クロム、鉄、錫および鉛から選択される金属またはこれらの金属合金を用いた場合においても、金属または金属の組合わせに関わらず3500サイクルまで接続不良は確認されなかった。
また、回路基板1におけるスルホールの接続不良は、上記従来品において確認されたスルホールの金属の剥離破壊とは全く異なるモードであり、接続不良の解析からも接続信頼性が極めて向上していることが確認された。これは、回路基板1においては、スルホールの構造が従来品とは異なり、金属で完全に充填されている構造をとっているため、応力による歪を充填された金属全体で緩和して貫通孔の壁面における金属に生じるクラックを防止し、また、スルホールの形状が鼓型を有して応力による歪を回路基板の面に向かって段階的に緩和しているためと考えられる。
また、回路基板1では、スルホールは金属により完全に充填されているため、接続抵抗は0.05mΩであり、一方、上記従来品におけるスルホールでは同一組成のニッケル合金を用いた場合でも接続抵抗が0.5mΩであったことと比較すると、スルホールにおける接続抵抗は約10倍低くなっていることが確認された。これは、スルホールの断面が従来品とは異なり、約2倍以上の面積をもって回路配線と接続されているためと考えられる。
また、回路基板1においては、スルホールが金属により完全に充填されているため、図7に示すように、回路基板1の裏面を液体窒素などの冷媒に接触させることが可能となり、半導体チップ12からの発熱を効果的に放熱する構成をとることが可能になった。これは、高速動作を行うCPUを所定の動作クロック以上の環境で検査するとき発生する熱を効果的に低減することができることから、その効果は極めて高いものと考えられる。このとき、冷媒は液体窒素に限定されるものではなく、冷却用純水などを用いることも可能であり、いずれにしても冷却効果は著しく向上した。
以上から明らかなように、回路基板1は、熱サイクルに対してもスルーホールにクラック等の損傷を生じず、優れた耐性を有する信頼性の高い構造であり、回路基板に構成された回路配線の密度および光の透過率を従来品と比較して著しく向上できるものであることが確認された。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更可能である。例えば、回路配線を構成する金属は、ITOに限定されるものではなく、NiやCu等を用いてもよく、更に、貫通孔の数や寸法も限定されるものではない。また、上記実施の形態では、感光性ガラスを用いているが、図19(b)に示したように、レーザ加工による穴開けで、ばり59が発生する基板についても適応可能なもので、基板の材質や穴開け方法などは限定されるものではない。