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JP2007065232A - 紫外線熱線反射多層膜 - Google Patents

紫外線熱線反射多層膜 Download PDF

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JP2007065232A JP2005250572A JP2005250572A JP2007065232A JP 2007065232 A JP2007065232 A JP 2007065232A JP 2005250572 A JP2005250572 A JP 2005250572A JP 2005250572 A JP2005250572 A JP 2005250572A JP 2007065232 A JP2007065232 A JP 2007065232A
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Kazuhiko Sotooka
和彦 外岡
Naoto Kikuchi
直人 菊地
Hiroyasu Hiramatsu
裕康 平松
Toshihisa Shimo
俊久 下
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Abstract

【課題】ビル、車、家屋の窓ガラスなどに貼って使用され、太陽光による採光を確保しつつ、人体に有害な紫外線と熱作用の強い赤外線の透過を反射して遮断し、健康と省エネに有効な紫外線熱線反射多層膜を実現する。
【解決手段】屈折率2.0〜2.6の10〜400nm厚の高屈折率材料の層と屈折率1.8以下の10〜400nm厚の低屈折率材料の層が交互に積層され、この積層構造体に抵抗率0.1ミリオーム・メートル以下の導電性材料の層が組み合わされてなり、波長350〜400nmの紫外線に対して平均30%以上の反射率、波長2ミクロンの熱線に対して20%以上の反射率、および波長400〜800nmの可視光に対して平均40%以上の透過率を有する紫外線熱線反射多層膜。
【選択図】図5

Description

本発明は、ビル、車、家屋の窓ガラスなどに貼って使用され、太陽光による採光を確保しつつ、人体に有害な紫外線と熱作用の強い赤外線の透過を遮断でき健康と省エネに有効な紫外線熱線反射多層膜に関する。
近年、省エネや健康への関心の高まりとともに、太陽光輻射に含まれる紫外線と赤外線による悪影響を避けつつ日照を確保する技術へのニーズが増している。即ち、ビル、車、家屋などの窓において、太陽光による採光(日照)を確保しつつ、太陽光輻射に含まれる人体に有害な紫外線と熱作用の強い赤外線の透過を遮断し健康と省エネに有効な窓ガラスが求められている。
そして、紫外線に弱い樹脂などを屋外などで使用した場合に劣化しやすいので、このような樹脂を保護するものとして、反射により紫外線だけでなく熱線も遮断できる保護膜の開発も求められている。
従来、例えば、ミラーにおいて、必要な波長の光の減衰を防止して透過させ、かつ、不要な波長の光を吸収したり反射したりする手段として誘電体多層膜が知られている(特許文献1〜5参照)。
例えば、特許文献1には紫外線を吸収する性質の膜と熱線を反射する性質の金属または金属窒化物の膜を積層した構造の紫外線熱線遮断ウィンドウが記載されている。特許文献2には、紫外線と赤外線ともに吸収するような被膜形成による紫外線赤外線遮断ガラスの作製方法が記載されている。
特許文献3には、紫外線吸収膜と熱線反射膜をガラス基板に形成することにより紫外線赤外線遮断ガラスの作製方法が記載されている。特許文献4には、3層構造による紫外線熱線反射ガラスを開示しているが、光の干渉効果を原理としているために得られる特性は不十分である。さらに、特許文献5には、熱線遮断材料とこれを用いた塗布液、熱線遮断膜が記載されている。
これらの誘電体多層膜の原理は透明な薄膜による光の干渉であり、ミラーおよび光学フィルターとして幅広く利用されている。薄膜の層数、厚さ、屈折率などを制御することによる設計の自由度が高いので、様々の特性の光学フィルターや光学ミラーの主要な技術となっている。
特開平07−138049 特開平09−278492 特開平10−236847 特開平10−291839 特開2000−72484
本発明は、可視光を透過しつつ、不要な紫外線と赤外線の両方を選択的に反射する膜を得ることを目的とするものであるが、光の干渉効果を原理とする従来の誘電体多層膜により実現することは、光の波長と干渉の性質のために困難である。
光の干渉効果のみで400nm以下の紫外線と800nm以上の熱線の両方を反射するように、代表的な光学薄膜材料である酸化チタン(TiO)とシリカ(SiO)を用いて16層からなる多層膜を設計すると、典型的には図1(a)に示すような層、材料および層の厚さの構造となる。
その特性を図1(b)に示し、これは、光の干渉の理論に基づきコンピュータソフトウェア「Essential Macleod」による計算結果で得られたものである。図1(b)中、実線は図1(a)に示す16層構造膜であり、破線(点線)は30層に増した場合(その層構造については図示せず)の特性を示す。図1(b)の実線に示す特性からすると、波長1100nm以上で熱線の透過が顕著になることがわかる。
特性改善を期待して酸化チタン(TiO)とシリカ(SiO)の層の数を16から30に増しても、図1(b)の破線に示すように、波長400nm、800nmおよび1100nmあたりにある反射端の特性が急峻にはなるが、熱線の反射特性は、あまり向上しない。誘電体膜の層をさらに増しても、従来技術では特性はほとんど改善されず、波長1200nm以上では熱線を反射させることが困難である。
その上、このような特性は0.01nmの膜厚精度を仮定して計算上得られるものであり、実際に製作できるものは特性が劣る。光学フィルターを実際に製作するにあたっては膜形成精度、作業効率などにより制約されるので、可視光を透過しつつ光の干渉効果の利用により紫外線と熱線を反射する実用的な膜を製作することはほとんど不可能である。
これらの問題と制約のため、従来技術ではどちらかを反射させ他方を吸収することにより紫外線と赤外線(熱線)の遮断を実現していた。しかしながら、吸収による遮断では、比較的高エネルギーの紫外線による材料の劣化や赤外線の熱作用による悪影響が避けられない。
本発明は、上記従来の問題点を解決することを課題とするものであり、可視光を透過させるが、不要な紫外線と赤外線の両方を選択的に反射することにより従来の問題を解決しようとするものである。
本発明は上記課題を解決するために、屈折率2.0〜2.6の10〜400nm厚の高屈折率材料の層、屈折率1.8以下の10〜400nm厚の低屈折率材料の層、および抵抗率0.1ミリオーム・メートル以下の導電性材料の層をそれぞれ1層以上含む紫外線熱線反射多層膜であって、波長350〜400nmの紫外線に対して平均30%以上の反射率、波長2ミクロンの熱線に対して20%以上の反射率、および波長400〜800nmの可視光に対して平均40%以上の透過率を有することを特徴とする紫外線熱線反射多層膜を提供する。
前記高屈折率材料の層と前記低屈折率材料の層は、交互に積層されて積層構造とされており、該積層構造の最表面又は積層構造内の前記高屈折率材料の層と前記低屈折率材料との間の層に前記導電性材料の層が設けられている構成とすることが好ましい。
前記の高屈折率材料層は、チタン、インジウム、スズ、亜鉛、セリウム、ビスマス、ジルコニウム、ニオブおよびタンタルからなる群から選ばれた1種または2種以上からなる金属の酸化物を主成分とする材料からなることが好ましい。
前記低屈折率材料は、カルシウム、バリウム、リチウム、マグネシウムのフッ化物またはシリカを主成分とする材料からなることが好ましい。
前記導電性材料は、酸化インジウム、酸化スズおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる材料を主成分とすることが好ましい。
前記導電性材料は、銅、アルミおよび金からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる材料を主成分とすることが好ましい。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層がガラス基板上に形成され、紫外線熱線反射ガラスとして利用可能である。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層が樹脂シート上に形成され、紫外線熱線反射シートとして利用可能である。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層が樹脂性の部材上に形成され、紫外線熱線反射用保護膜として利用可能である。
上記本発明に係る紫外線熱線反射多層膜によると、次のような顕著な効果が生じる。
(1)本発明では、光の干渉だけでなく高導電性層中のキャリアによるプラズマ反射を利用して光の紫外線反射と熱線反射を実現するので、光の吸収ならびにそれに伴う発熱を極めて少なくできる。
(2)本発明による機能薄膜を透明なガラス板やプラスチック板上に形成したものは可視光を透過するので窓ガラスのように利用でき、熱線反射により冷房の節減に寄与する。統計によると、温暖な地方では夏の冷房のために電力需要のピークが生じる。省エネ基準(1992年基準)による試算では、夏の昼間の冷房時には、建物内に侵入する熱量の71%が窓から入りこむとされる。その約半分が日射に含まれる熱線として入ることから、本発明により生じる熱線反射が冷房負荷を低減し省エネに有効であることが分かる。
(3)紫外線反射機能は人体に有害な紫外線により発生する皮膚がんの予防に貢献する。
(4)本発明による機能膜は紫外線と熱線に対する保護膜としての機能を有するので、太陽光にさらされる機会の多いプラスチック製品の表面に形成することにより、可視光の透過を確保しつつ耐光性を向上させる効果を有する。
(5)さらに、本発明による機能薄膜をプラスチックシート上に形成した物をフィルムとして窓ガラスなどに貼付けることにより、採光や視界を遮らずに紫外線や熱線を反射させる機能を容易に付加することができる。且つ効果的に、分離できる。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜の加工処理方法を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、誘電体多層膜と導電性材料層を組み合わせることにより、光学的な干渉だけでなく高導電性層中のキャリアによるプラズマ反射を利用して紫外線反射と熱線反射を実現し、可視光は透過させる構成を特徴とするものである。
このように、本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、誘電体多層膜と導電性材料層を組み合わせることものであるが、紫外線の反射には誘電体多層膜の光の干渉効果を利用する。誘電体多層膜は、屈折率差が大きい2種類の誘電体材料の高屈折率材料の層と低屈折率材料の層をそれぞれ1層以上、交互に積層する構造が好ましい。
高屈折率材料の層は、高屈折率材料として屈折率2.0〜2.6の10〜400nm厚の誘電体材料を用い、低屈折率材料の層は、低屈折率材料として低屈折率側には屈折率1.8以下の10〜400nm厚の誘電体材料を用いる。そして、要求される紫外線遮断特性を考慮して光干渉の理論をもとに材料の組み合わせや各層の厚さなどを調整する。さらにプラズマ反射の効果を加え紫外線および熱線反射のための最適化設計を行う。
ここで、本発明において光学材料である高屈折率材料及び低屈折材料として用いる誘電体材料のそれぞれの屈折率と厚さの数値範囲は次のようにして設定した。まず、屈折率についは次のとおりである。本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、基材の表面に形成されて利用されるが、このような膜形成の基材として代表的なものは、ケイ酸塩やホウ酸塩系のガラス、およびポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックである。これらのガラス基材の屈折率は約1.5、プラスチック基材では約1.6である。
ところで、本発明では誘電体材料の反射率を設定するには次の2点を考慮した。第1は、本発明のように光学反射を利用して紫外線と熱線を反射させるためには、屈折率差が大きい光学材料を組み合わせることが好ましい。第2は、組み合わせる光学材料の一方の材料としては、基材と同程度の屈折率を有する材料を選ぶことが多層構造の光学的な周期性を高め、優れた特性を得るために有利である。
そこで、低屈折率側の材料についてみると、低屈折率の最小値は真空によってのみ実現される1.0であり、実際の光学用固体材料で1.4より小さな屈折率を得ることは困難である。そして、前記基材と同程度の屈折率を考慮すると、低屈折率側の材料は1.5前後の屈折率であることが好ましい。
高屈折率側の材料についてみると、屈折率2.0以上の誘電体材料として代表的な酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等の利用が有利である。特殊な材料ではガリウムヒ素などのように屈折率が3.0を越えるものもあるが、非実用的である。上述のような基材と、実用的な薄膜材料の組み合わせを考慮すると、低屈折率側は屈折率1.8以下、高屈折率側は屈折率2.0〜2.6程度となる。
次に誘電体多層膜を形成している各層の厚さについては、光の干渉効果を利用するために有効な厚さとすることが必要である。特定の波長を例にすれば、位相が1/2波長ずれた光波の合成により光が弱められることが知られている。このように光の位相差を生じさせ、かつ干渉の特性を制御するために光波長のおよそ1/40〜1/2程度の値が各層の厚さとして必要である。本発明では紫外線から熱線までの範囲を400nmおよび800nmを境界として制御しているので、各層の厚さは10〜400nmとするのが適当である。
導電性材料の層としては、導電性金属酸化物である酸化インジウム、酸化スズ若しくは酸化亜鉛などを利用してもよいし、またはこれらの導電性金属酸化物材料に導電性を高めるために酸化アルミ、酸化アンチモン若しくはフッ素などを添加した透明導電性材料を利用してもよいし、または銅など金属の薄膜を利用してもよい。
このような導電性材料層におけるキャリアの濃度、移動度および層の厚さを変えることにより、熱線反射の特性を制御することができる。誘電体多層膜による光学反射の性質と導電性膜が有するプラズマ反射の性質を融合することにより可視光透過、紫外線反射ならびに熱線反射を実現するものである。
プラズマ反射については、本発明者の発明による特開2005−82472号公報中などに記載されているが、半導体や金属の中の電荷を運ぶ電子やホールと光との相互作用により比較的長波長の光が反射される現象である。
物質中のこれらキャリアは外部からの電波や光によって揺り動かされて振動し、これがプラズマ振動と呼ばれる。プラズマ振動には外部から入射した電波や光を反射する性質があり、反射の程度は物質の電気特性により制御できる。
自由電子モデルを用いた理論によれば、透過から反射に変わるプラズマ反射の臨界波長 λは、次の数式1で与えられる。
Figure 2007065232
ここで、π=3.14、c=3.00x10m/s、εは媒質の誘電率、mはキャリアの有効質量、qはキャリアの電荷量、nはキャリアの密度である。
数式1からキャリアの密度が低い(小さい)場合にはλが大きく(長波長に)なり、一方、キャリアの密度が高い場合(大きい)場合にはλが小さく(短波長に)なることがわかる。波長の短い光は空間的により短い距離で位相変化を生ずるので、その変化を打ち消して反射させるためにはキャリアの空間分布がより高密度になっている必要がある。このようにプラズマ反射では臨界波長λから波長側の光や電磁波が反射されることになる。
計算によれば、ITO(In−SnO)により実現できる1x1027/mのキャリア濃度を有する透明電導膜により、波長1ミクロン以上の熱線(赤外線)を反射することができる。このように熱線を反射するために必要な膜の電気的性質としては抵抗率が0.1ミリオーム・メートル以下で厚さが100nm以上であることが概算される。
導電性材料の層は、2層以上でもよいが、1層あればよく、その位置も制約されない。しかし、紫外線熱線反射多層膜の内部に熱をためこまないように、導電性材料の層は、比較的、表面近くに設けることが好ましい。
以上のような構成からなる本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、波長350〜400nmの紫外線に対して平均30%以上の反射率、好ましくは平均50%〜95%の反射率、波長2ミクロンの熱線に対して20%以上の反射率、好ましくは40%〜95%の反射率、および波長400〜800nmの可視光に対して平均40%以上の透過率、好ましくは平均50%〜95%の透過率を有する紫外線熱線反射多層膜を特徴とするものである。なお、ここで、「平均」とは、紫外線、可視光等のそれぞれの波長域における平均をいう。
即ち、紫外線については、その遮断の効果を得るためには少なくとも平均30%以上の反射率が必要であるが、より明確な効果を得るためには50%以上の反射率が好ましく、上限は理論的には100%まで可能であるが実際的には平均値としては95%程度が製作できる限度である。熱線反射については、その遮断の効果を得るためには少なくとも20%以上の反射率が必要であるが、40%以上の反射率があれば効果がより明確に得られ、上限は理論的には100%まで可能であるが実際的には平均値としては95%程度が製作できる限度である。
可視光透過特性については、用途によりスモークガラスが使われるなど必要とされる透過率は大きく異なるが、少なくとも平均40%以上の透過率が必要であり、透明なガラスのように利用するためには平均透過率の下限値は50%程度が適当であり、上限は理論的には100%まで可能であるが実際的には95%程度が製作できる限度である。
なお、本発明に係る紫外線熱線反射多層膜における多層膜の製造には、周知のスパッタ法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザ蒸着法を始めとしてCVD法、塗布法、スプレー法などの膜形成技術が利用する。
以上説明した本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例を以下に説明する。本発明に係る紫外線熱線反射多層膜の実施例1を図2に示す。図2(a)は実施例1の紫外線熱線反射多層膜の層構造を示し、図2(b)は紫外線熱線反射多層膜を構成する各層の材料および厚さを示している。
この実施例1では、図2(a)に示すように、ガラス基板上に、スパッタ法を利用して下から順次、第2材料の層と第1材料の層を15回繰り返し交互に重ねて形成し、層31〜層2からなる誘電体多層膜を形成し、さらに、層2の上に最上層として層1を第3材料で形成する。
ここで、第1材料は高屈折率材料であり酸化チタン(TiO)を利用し、第2材料は低屈折率材料でありシリカ(SiO)を利用し、第3材料は導電性材料でありITO(In−SnO)を利用している。よって、実施例1の紫外線熱線反射多層膜は、下から「SiO/TiO」を15回繰り返してなる誘電体多層膜と、その上に設けられたITOから構成され、ガラス基板上に設けられている。
このよう構造の実施例1の紫外線熱線反射多層膜の紫外線熱線反射特性の実際の測定結果を図3に示す。この図3に示すように、この紫外線熱線反射多層膜によれば、紫外線と熱線の選択的な反射を実現できた。従来の光学反射の手法では実現困難であった波長1.5ミクロン前後から長波長側の熱線の遮断には、特に効果的であることがこの図3に示す測定結果からも示されている。
この実施例1では波長約1.8ミクロンにて約20%の熱線反射率であるが、第3材料の伝導度を増すことにより熱線反射率を増すとともに、反射の立ち上がり波長を1ミクロン程度にシフトさせることができる。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜を実現するためには、第1材料(高屈折率材料)の層および第2材料(低屈折率材料)の層は複数必要であるが、第3材料(導電性材料)からなる層は1層あればよく、その位置も制約されない。但し、第3材料は、紫外線熱線反射多層膜の内部に熱をためこまないように、比較的、表面近くに設けることが好ましい。
このようなことから、第3材料(導電性材料)からなる層が実施例1では最表面に設けているが、実施例2では表面から3番目の層とした。即ち、実施例2では、図4に示す実施例2は、下から「SiO/TiO」を14回繰り返してなる誘電体多層膜と、その上に順次ITO膜、SiO、TiOを積層してなる多層膜構造とし、ガラス基板上に設けている。
実施例1では、紫外線の速やかな遮断特性を実現するために31層からなる膜としたが、製作が容易となるように、より少ない層の数についても設計し、光学薄膜による光の干渉およびプラズマ反射の理論から光学特性を推定した。このようなより少ない層の例として、実施例3を図5に示す。
この実施例3は、図5(a)に示すように、下から高屈折率材料である酸化チタン(TiO)と低屈折率材料であるシリカ(SiO)が交互に積層された5層と、TiOの上に最上層として設けた1層の導電性材料であるITO(In−SnO)との6層からなる紫外線熱線反射多層膜である。
実施例3の特性は、図5(b)に示すとおりである。この図5(b)によれば、実施例3の紫外線熱線反射多層膜は、紫外線を反射するとともに、反射により熱線の透過を抑制することができる。
同様に、実施例4として図6(a)に、下から低屈折率材料であるシリカ(SiO)と高屈折率材料である酸化チタン(TiO)が交互に積層された7層と、SiOの上に最上層として設けた1層の導電性材料であるITO(In−SnO)との8層からなる紫外線熱線反射多層膜の構造を示している。導電性材料であるITOのキャリア濃度は、1x1027/mである。
実施例4の特性を図6(b)に示す。この図6(b)によれば、紫外線を反射するとともに、反射により熱線の透過を抑制することができる。
同様に、実施例5として図7(a)に、下から高屈折率材料である酸化チタン(TiO)と低屈折率材料であるシリカ(SiO)とが繰り返され交互に積層された12層と、その上に1層の導電性材料であるITO(In−SnO)と、最上層にSiOを設けた14層からなる紫外線熱線反射多層膜の構造を示している。
実施例5の特性を図7(b)に示す。この図7(b)によれば、紫外線を反射するとともに、反射により熱線の透過を抑制することができる。
本発明に係る紫外線熱線反射多層膜は、透明なガラス板や樹脂シート(樹脂基板や樹脂製可撓性性シートを含むシート状材料)の表面上に形成することで、紫外線熱線反射ガラスや紫外線熱線反射樹脂シートとして利用可能である。これらの紫外線熱線反射ガラスや紫外線熱線反射樹脂シートは、ビル、車、家屋などの窓に適用すると、採光を確保しつつ人体に有害な紫外線と熱作用の強い赤外線の透過を遮断できるので、健康と省エネルギー用の材料としてきわめて有用である。
そして、紫外線に弱い樹脂からなる部材の保護膜として適用すると、反射により紫外線だけでなく熱線も遮断できるので樹脂からなる部材を屋外などで使用した場合の劣化を防ぎ寿命を延ばすことができる。ここで、樹脂からなる部材としては、例えば壁や管等建築資材、車の車体や部品等である。
(a)は従来のシリカと酸化チタンからなる誘電体多層膜の構成を説明する表であり、(b)はこの誘電体多層膜の特性を示す図である。 本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例1の構成を示す図であり、(a)は紫外線熱線反射多層膜の断面構成を示し、(b)は各層の材料および厚さを示す図である。 本発明の実施例1の紫外線熱線反射特性の実際の測定結果を示すグラフである。 本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例2の構成を示す図である。 本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例3の構成を示す図であり、(a)は紫外線熱線反射多層膜の断面構成を示し、(b)はこの紫外線熱線反射多層膜の透過率特性を示すグラフである。 本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例4の構成を示す図であり、(a)は紫外線熱線反射多層膜の断面構成を示し、(b)はこの紫外線熱線反射多層膜の透過率特性を示すグラフである。 本発明係る紫外線熱線反射多層膜の実施例5の構成を示す図であり、(a)は紫外線熱線反射多層膜の断面構成を示し、(b)はこの紫外線熱線反射多層膜の透過率特性を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 屈折率2.0〜2.6の10〜400nm厚の高屈折率材料の層、屈折率1.8以下の10〜400nm厚の低屈折率材料の層、および抵抗率0.1ミリオーム・メートル以下の導電性材料の層をそれぞれ1層以上含む紫外線熱線反射多層膜であって、
    波長350〜400nmの紫外線に対して平均30%以上の反射率、波長2ミクロンの熱線に対して20%以上の反射率、および波長400〜800nmの可視光に対して平均40%以上の透過率を有することを特徴とする紫外線熱線反射多層膜。
  2. 前記高屈折率材料の層と前記低屈折率材料の層は、交互に積層されて積層構造とされており、該積層構造の最表面又は積層構造内の前記高屈折率材料の層と前記低屈折率材料との間に層に前記導電性材料の層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線熱線反射多層膜。
  3. 前記の高屈折率材料層は、チタン、インジウム、スズ、亜鉛、セリウム、ビスマス、ジルコニウム、ニオブおよびタンタルからなる群から選ばれた1種または2種以上からなる金属の酸化物を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線熱線反射多層膜。
  4. 前記低屈折率材料は、カルシウム、バリウム、リチウム、マグネシウムのフッ化物またはシリカを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の紫外線熱線反射多層膜。
  5. 前記導電性材料は、酸化インジウム、酸化スズおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる材料を主成分とすることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の紫外線熱線反射多層膜。
  6. 前記導電性材料が、銅、アルミおよび金からなる群から選ばれた1種または2種以上からなる材料を主成分とすることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の紫外線熱線反射多層膜。
  7. 前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層がガラス基板上に形成され、紫外線熱線反射ガラスとして利用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線熱線反射多層膜。
  8. 前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層が樹脂シート上に形成され、紫外線熱線反射シートとして利用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線熱線反射多層膜。
  9. 前記高屈折率材料の層または前記低屈折率材料の層のうち、一面側に配置される層が樹脂性の部材上に形成され、紫外線熱線反射用保護膜として利用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線熱線反射多層膜。
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