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JP2006298824A - 口腔内のスカトール産生抑制剤 - Google Patents

口腔内のスカトール産生抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】口腔内で安全に使用でき、口腔内の細菌によるスカトールの産生を抑制することができるスカトール産生抑制剤を提供すること。
【解決手段】ベイ、フェンネル、セーボリー、タイム、ピメントベリー、マジョラム、エストラゴン、ペパーミント、ブラックペッパー、ローレル、オレンジ、シナモン、ターメリック、ホワイトペッパー、ジンジャー、ナツメグ、ゼラニウム、スペアミント及びイランイランから選ばれる一種以上の植物抽出物からなる口腔内のスカトール産生抑制剤、並びにこれを口腔内に適用する、口腔内のスカトール産生抑制方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、口臭の主原因物質の一つであるスカトールの口腔内における産生を抑制する剤に関する。
口臭の悪臭成分には、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルスルフィドなどの揮発性含硫化合物(Volatile Sulfur Compounds:以下VSC)、アンモニア、トリメチルアミンなどのアミン類、吉草酸、酪酸などの脂肪酸類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、インドール、スカトールなどの含窒素芳香族化合物などがあるといわれている。
これらの悪臭成分の中でも、VSCやアミン類は、揮発しやすく、かつガスクロマトグラフィーやセンサーなどで容易に検出できることから、悪臭抑制研究の対象物質とされることが多い。このため、VSCやアミン類については、口臭の主原因成分として、消臭剤による消臭、産生菌の生育抑制などについて多くの検討がなされている。特にVSCは、歯周病や虫歯などの歯周疾患とも関連性が高いと考えられており、VSCを対象とする消臭剤や産生菌の生育抑制に関する技術が数多く報告されている。
例えば、特許文献1には、鉄クロロフィリンナトリウムがトリメチルアミンやメチルメルカプタンの消臭に有効であること、特許文献2には、ポリフェノール類とポリフェノールオキシダーゼの組合せがVSCやトリメチルアミン、アンモニアの消臭に有効であること、特許文献3には、シソ科植物抽出物とラクトフェリンの組合せにより、VSCが低減されることが、それぞれ開示されている。
しかしながら、本発明者らは、口臭にはVSCとは明らかに異なる匂いがあることに着目し、口臭の全成分分析を行った結果、トリメチルアミン、ジメチルスルフィド、p-クレゾール及びスカトールが口臭の主原因物質であり、特にスカトールが口臭の強度と質に大きく関与していることを見出した(特許文献4)。
すなわち、前述のように、口臭の悪臭成分には種々の物質があることから、VSCやアミン類などの高揮発性成分のみを消臭しても、口腔内には低揮発性のフェノール類や含窒素芳香族化合物が残留する。このため、上記高揮発性成分の消臭のみでは、口腔内の不快感を低減することはできず、特にスカトールの消臭あるいは低減を実現しなければ、口臭や口腔内の不快感を根本的に改善することはできない。
本発明者らは、口腔内で安全に使用でき、VSCやトリメチルアミンなどの消臭に有効とされているが、口腔内のスカトールの消臭効果については不明であった、鉄クロロフィリンナトリウム(特許文献1)やポリフェノール類(特許文献2)のスカトール消臭効果について検討したが、無臭化は困難であることを知見している。
スカトールは低揮発性であるため、通常用いられているガスクロマトグラフィーなどの機器分析方法では1回あたりの分析に時間がかかることや、ガス検知管などでの検出が困難であること、また、口腔内に残留するスカトールの量は20ppb以下という低濃度であることから、口腔内疾患や口腔内細菌と匂い成分の関連性を調べることが困難であり、これまで口臭の原因成分として着目されていなかった。
そして、上記事情に加え、口腔内細菌によるスカトールの産生メカニズムが解明されていないこと、また口腔内での使用に対して安全で、かつスカトールを効果的に消臭できる素材が見出されていないことなどから、これまでにスカトールの効果的な消臭方法、あるいはスカトールの産生菌に対する有効な制御技術は見出されていない。
特開平8-266604号公報 特開平10-212221号公報 特開2004-67530号公報 特開2004-205496号公報
以上のように、スカトールは口臭の匂いの質に関与する成分であり、口臭を低減して不快感を改善するためには、スカトールの産生メカニズムを解明し、更に、口腔内で安全に使用できるものでスカトールの産生を抑制できる素材を見出すことが求められている。
従って本発明は、口腔内で安全に使用でき、口腔内の細菌によるスカトールの産生を抑制することができるスカトール産生抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、スカトールの産生メカニズムを解明するために、口腔内細菌であるプレボテラ属、ポルフィロモナス属、フゾバクテリウム属、ヘモフィラス属、ナイセリア属、カプノサイトファーガ属、ベイヨネラ属、アクチノバチルス属、アクチノマイセス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属の細菌のスカトール産生能を調べた。その結果、フゾバクテリウム ヌクレアタムとプレボテラ インターメディアにわずかなスカトール産生能が見出されたに過ぎなかった。しかし、フゾバクテリウム ヌクレアタムに健康な人から採取した舌苔を加えると、フゾバクテリウム ヌクレアタム単独の場合に比較して40〜50倍(菌数換算で400〜500倍)のスカトールが産生することが判明した。
一般的に、人の舌にはフゾバクテリウム属(0.7%)のほかに、プレボテラ属などの偏性嫌気性グラム陰性桿菌(8.2%)、ヘモフィラス属などの通性嫌気性グラム陰性桿菌(3.2%)、ナイセリア属などの通性嫌気性グラム陰性球菌(3.4%)、ストレプトコッカス属などのレンサ球菌(38.3%)、ベイヨネラ属などの偏性嫌気性グラム陰性球菌(16.0%)が存在し、菌叢を形成していることが知られている(口腔細菌学談話会編,第5版歯学微生物学,医歯薬出版,1998,p.219-220)。
以上のことから、本発明者らは、フゾバクテリウム ヌクレアタムと舌上に存在する上記細菌同士が共凝集することでスカトールを産生することを知見した。そして、上記混合細菌によるスカトール産生を抑制する素材について種々探索した結果、特定の植物の溶剤抽出物(以下、植物抽出物という)が口腔内のスカトールの産生を抑制できることを見出した。
本発明は、ベイ、フェンネル、セーボリー、タイム、ピメントベリー、マジョラム、エストラゴン、ペパーミント、ブラックペッパー、ローレル、オレンジ、シナモン、ターメリック、ホワイトペッパー、ジンジャー、ナツメグ、ゼラニウム、スペアミント及びイランイランから選ばれる一種以上の植物抽出物からなる口腔内のスカトール産生抑制剤を提供するものである。
更に、本発明は、上記スカトール産生抑制剤を口腔内に適用する、口腔内のスカトール産生抑制方法を提供するものである。
本発明のスカトール産生抑制剤は、口腔内で安全に使用でき、舌苔に存在する混合細菌により産生するスカトールを抑制して、口臭を根本的に低減することができる。
本発明のスカトール産生抑制剤は、ベイ(フトモモ科)、フェンネル(セリ科)、セーボリー(シソ科)、タイム(シソ科)、ピメントベリー(フトモモ科)、マジョラム(シソ科)、エストラゴン(キク科)、ペパーミント(シソ科)、ブラックペッパー(コショウ科)、ローレル(クスノキ科)、オレンジ(ミカン科)、シナモン(クスノキ科)、ターメリック(ショウガ科)、ホワイトペッパー(コショウ科)、ジンジャー(ショウガ科)、ナツメグ(ニクズク科)、ゼラニウム(フウロソウ科)、スペアミント(シソ科)、イランイラン(バンレイシ科)から選ばれる一種以上の植物の抽出物が使用されるが、口腔用組成物や食品等に使用する際に、辛味などの刺激や強い匂いが少ないという点から、ペパーミント、オレンジ、ジンジャー、スペアミント、ピメントベリーが特に好ましい。
前記植物から抽出物を得る際に使用する溶剤は、水、エタノール、ヘキサン、アセトン、プロピレングリコール、グリセリンなど、食品や口腔製品への使用が可能な溶剤が好ましい。そのうち、水、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる溶剤又はこれらの二種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。更には、水とエタノールの混合溶剤を用いることが好ましく、その質量比は、水:エタノール=90:10〜10:90が好ましく、水:エタノール=60:40〜40:60が特に好ましい。
上記各種溶剤又は混合溶剤による抽出物は、一般にオレオレジンやエキスといわれるものである。得られた植物抽出物は、溶剤を留去することなく、そのまま使用してもよいが、より有効性を高めるために溶剤を留去したものを使用することが好ましい。
得られた植物抽出物は、用途に応じて粉末化、あるいは水溶性成分、油溶性成分などと混合して乳化物として用いることができる。粉末化は通常の粉末化方法を用いることができる。すなわち、デキストリンやシリカなどの賦形剤に含浸させる方法や、デキストリンとアラビアガム、水に混合後、噴霧乾燥する方法などを用いることができる。
植物抽出物と水溶性及び/又は油溶性成分と混合して乳化物を調製する場合、ポリグリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステルなどの乳化剤を用いることができる。
本発明のスカトール産生抑制剤は、口腔内でも安心して使用できることができ、しかも口腔用製品へ配合した場合に経時安定性に優れることから、口腔用組成物(洗口剤、噴霧液、歯磨剤、錠剤等)、チューインガム、口中清涼菓子、飲料、口腔衛生器具(デンタルフロス、布等)等に配合して用いることができる。
本発明のスカトール産生抑制剤を口腔用製品に配合する場合、その含有量は、製品中に0.0000001〜5質量%が好ましく、製品の味や香りなどの使用感を損なわないために、0.0000002〜1質量%がより好ましい。
試験例1〔口腔内細菌のスカトール産生能の測定〕
下記の方法に従い、口腔内細菌のスカトール産生能について調べた。
ヒト滅菌唾液(健康な人から採取した唾液を滅菌したもの)2mLに、プレボテラ属、ポルフィロモナス属、フゾバクテリウム属、ヘモフィラス属、ナイセリア属、カプノサイトファーガ属、ベイヨネラ属、アクチノバチルス属、アクチノマイセス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属の各菌液0.1mLを加え、嫌気条件下、37℃で24時間培養した。10mLの蓋付き試験管に食塩0.5gを入れ、これに培養液を1mL分取した後、ヘキサン/エーテル溶液を2mL加えて15秒間振とうして混合した。これを遠心分離機にて3500rpm、10分間で水層と有機溶媒層に分離し、有機溶媒層を分取し、GC-MS分析に供した。
表1に各種口内細菌のスカトール産生能を示した。口内細菌のうち、プレボテラ インターメディア、フゾバクテリウム ヌクレアタム、フゾバクテリウム ペリオドンティカムが0.5ppb以上のスカトールを産生した。なお、ヘモフィラス属及びナイセリア属細菌は、前述の培養条件下では繁殖しなかった。
試験例2〔混合細菌によるスカトール産生能の測定〕
健常な人から採取した唾液を滅菌し(滅菌唾液)、これにスカトール産生主要菌であるフゾバクテリウム ヌクレアタム(OD値1.0に調整)を添加したものと、フゾバクテリウム ヌクレアタム及び健常な人から採取した舌苔(OD値0.1に調整)を添加したものとをそれぞれ嫌気条件下、37℃で24時間培養した。培養液を500μL分取し、これにクロロホルムを500μL添加し、攪拌、遠心分離後、蛍光液体クロマトグラフ(蛍光HPLC)分析に供した。
表2に、フゾバクテリウム ヌクレアタム単独で培養した場合のスカトール産生量と、これに舌苔を添加して培養した場合のスカトール産生量を示した。スカトール産生主要菌であるフゾバクテリウム ヌクレアタムは1ppb程度しかスカトールを産生しないのに対して、舌苔を添加した場合は40〜50ppbと高いスカトール産生量を示した。また、舌苔を添加した場合のOD値が0.1とフゾバクテリウム ヌクレアタムのOD値(1.0)の10分の1であるにもかかわらず、スカトールを産生していることから、菌数換算した場合、舌苔を添加した場合のスカトール産生能は、フゾバクテリウム ヌクレアタムの400〜500倍になることがわかった。
実施例1〜19、比較例1〜4〔植物抽出物のスカトール産生抑制能の測定〕
ヒト滅菌唾液に舌苔を加えたもの500μLに、各種植物抽出物の1%エタノール溶液5μLを添加した後、嫌気条件下、37℃で24時間培養した。培養液にクロロホルム500μLを加え、攪拌、遠心分離後、蛍光HPLC分析に供した。植物抽出物を含まないエタノールを5μL添加・培養したものを対照として比較した。
植物抽出物として、ベイオレオレジン(カルセック社製)、フェンネルオレオレジン(カルセック社製)、セーボリーオレオレジン(ブッシュボークアレン社製)、タイムオレオレジン(ドラゴコ社製)、ピメントベリーオレオレジン(ジボダン社製)、マジョラムオレオレジン(カルセック社製)、エストラゴンオレオレジン(ドラゴコ社製)、ペパーミントオレオレジン(ビオランデ社)、ブラックペッパーオレオレジン(カルセック社製)、ローレルオレオレジン(ドラゴコ社製)、シナモンオレオレジン(ビオランデ社製)、オレンジアブソリュート(SBI社製)、ターメリックオレオレジン(ブッシュボークアレン社製)、ホワイトペッパーオレオレジン(カルセック社製)、ジンジャーオレオレジン(カルセック社製)、ナツメグオレオレジン(カルセック社製)、ゼラニウムアブソリュート(SBI社製)、スペアミントオレオレジン(ビオランデ社製)、イランイランアブソリュート(SBI社製)を用いた。
各植物抽出物のスカトール産生抑制能を表3に示した。実施例1〜19のいずれの植物抽出物も、植物抽出物を添加していないコントロール(比較例1)に比べてスカトールの産生を抑制した。また、口臭の抑制に効果があるといわれているセロリ(比較例2)、クローブ(比較例3)及びバジル(比較例4)と比較してもスカトールの産生抑制能は高かった。

Claims (4)

  1. ベイ、フェンネル、セーボリー、タイム、ピメントベリー、マジョラム、エストラゴン、ペパーミント、ブラックペッパー、ローレル、オレンジ、シナモン、ターメリック、ホワイトペッパー、ジンジャー、ナツメグ、ゼラニウム、スペアミント及びイランイランから選ばれる一種以上の植物抽出物からなる口腔内のスカトール産生抑制剤。
  2. 植物抽出物が、水、エタノール、アセトン、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる一種以上の溶剤を用いて抽出されたものである請求項1記載のスカトール産生抑制剤。
  3. 舌苔に存在する混合細菌によるスカトールの産生を抑制するものである請求項1又は2記載のスカトール産生抑制剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のスカトール産生抑制剤を口腔内に適用する、口腔内のスカトール産生抑制方法。
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