JP2006249480A - 成形用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さhが50.0μW 以上であることとして、強度延性バランスを高くし、プレス成形性を向上させる。
【選択図】 図1
Description
図1に、後述する実施例の各発明例、比較例の高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析(DSC) により測定した場合の、固相からの加熱曲線を示す。図1の加熱曲線1 には、50〜100 ℃の間の吸熱ピークは、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の再固溶量を表している。この吸熱ピーク高さh が高いほど、室温における高MgのAl-Mg 系合金板組織中に準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が多いことを表している。
Al合金板表面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが成形性を向上させる前提条件として好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、プレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、5000系Al合金板に特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生するので、この観点からは、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。
本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、基本的には、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。
MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法でも良いが、この通常の製造方法では、前記した通り、高MgのAl-Mg 系Al合金板を効率良く鋳造し工業的に製造することが難しい。
連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、高MgのAl-Mg 系Al合金板鋳造の際の冷却速度を後述する通り速くするためには、双ロール式連続鋳造が好ましい。
この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が遅くなって、必要な冷却速度が得られない。このため、結晶粒が粗大となって、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の成形性が低下する。
例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化するためには、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化できず、プレス成形性が著しく低下する。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。
Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する可能性がある。
回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。
このように鋳造されたAl合金板は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、自動車パネル用などの製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。
Al合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍することが好ましい。焼鈍温度が400 ℃未満では、溶体化効果が得られない可能性が高く、更に、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に、室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す可能性が高い。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が50.0μW 未満となりやすく、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する可能性が高い。このため、最終焼鈍温度は好ましくは450℃以上が良い。
試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G
標準物質: アルミ
試料容器: アルミ
昇温条件:15 ℃/min
雰囲気: アルゴン(50ml/min)
試料重量:24.5 〜26.5mg
λ:(ds−d0)/d0×100
破断後の孔内径については、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向でそれぞれ測定し、バーリング率を各々求めた後に平均を取って、各サンプルのバーリング率とした。さらに、各サンプルについて3回のバーリング試験を行い、その平均値を最終的にバーリング率(λ%)とした。これらの結果も表2 、3 に示す。
比較例23は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるO の合金を用いている。
比較例24は、Fe含有量が上限を上回って多過ぎるP の合金を用いている。
比較例25は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるQ の合金を用いている。
比較例26は、Mn含有量が上限を上回って多過ぎるR の合金を用いている。
比較例27は、Cr含有量が上限を上回って多過ぎるS の合金を用いている。
比較例28は、Zr含有量が上限を上回って多過ぎるT の合金を用いている。
比較例29は、V 含有量が上限を上回って多過ぎるU の合金を用いている。
比較例30は、Ti含有量が上限を上回って多過ぎるV の合金を用いている。
比較例31は、Cu含有量が上限を上回って多過ぎるW の合金を用いている。
比較例32は、Zn含有量が上限を上回って多過ぎるX の合金を用いている。
したがって、これらから、各元素の強度、延性、強度延性バランス、成形性に対する臨界的な意義が分かる。
比較例44、45は最終焼鈍における冷却速度が遅過ぎる。
比較例46は付加焼鈍における焼鈍温度が低過ぎる。
比較例47は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。
比較例48は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。
比較例49は付加焼鈍における冷却速度が低過ぎる。
Claims (2)
- 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さが50.0μW 以上であることを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む、請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板。
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