JP4550597B2 - 成形用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
図1に、本発明アルミニウム合金板の板厚方向の、100倍の光学顕微鏡による組織写真を示す。図1の通り、視覚的にも板厚中心部の平均結晶粒径が小さく、板表層部の平均結晶粒径がより大きいことが分かる。このアルミニウム合金板は、具体的には、後述する実施例における発明例1であり、板厚中心部の平均結晶粒径が16μm、板表層部から1/4t部までの平均結晶粒径が42μmである。
本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、基本的には、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。
MgはAl合金板の強度、延性、そして強度延性バランスを高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する、自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの、製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。
以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。
本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、前記した通り、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。したがって、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、双ロール式などの連続鋳造と、熱間圧延を省略した、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造する。
Al合金薄板の連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがあるが、後述する鋳造の際の冷却速度を高くするためには、双ロール式とする。
この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いる。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。
例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の板表層部から1/4t部までの平均結晶粒径を、板厚中心部から1/4t部までの平均結晶粒よりも大きくできず、また、板厚中心部の平均結晶粒も20μm以下に微細化できず、強度延性バランスや深絞り性が低下する。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。
Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する可能性がある。
回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。
このように鋳造されたAl合金板は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、自動車パネル用の製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。この加工組織化の程度は冷間圧延の圧下量にもより、鋳造組織が残留する場合もあるが、プレス成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。なお、冷間圧延に先立つ、あるいは冷間圧延の途中に、通常の条件で、中間焼鈍を施しても良い。
Al合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍することが好ましい。焼鈍温度が400 ℃未満では、溶体化効果が得られない可能性が高い。また、この最終焼鈍後には、500 〜300 ℃の温度範囲を5 ℃/s以上の、できるだけ速い平均冷却速度で冷却する必要がある。最終焼鈍後の平均冷却速度が遅く、5 ℃/s未満であれば、冷却過程で、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が多量に析出する。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性が高い。
比較例20は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるQ の合金を用いている。
比較例21は、Mn含有量が上限を上回って多過ぎるR の合金を用いている。
比較例22は、Cr含有量が上限を上回って多過ぎるS の合金を用いている。
比較例23は、Zr含有量が上限を上回って多過ぎるT の合金を用いている。
比較例24は、V 含有量が上限を上回って多過ぎるU の合金を用いている。
比較例25は、Ti含有量が上限を上回って多過ぎるV の合金を用いている。
比較例26は、Cu含有量が上限を上回って多過ぎるW の合金を用いている。
比較例27は、Zn含有量が上限を上回って多過ぎるX の合金を用いている。
この結果、これら比較例は、強度延性バランスが低く、LDRも低いため深絞り性も劣る。したがって、実際の曲げ加工性やプレス成形性に劣っている。これらから、各元素の強度、延性、強度延性バランス、成形性に対する臨界的な意義が分かる。
Claims (2)
- 双ロール式連続鋳造法により、双ロール表面に潤滑剤を用いることなく、前記双ロールの冷却速度を850 ℃/s以上として、連続的に板厚1 〜13mmの範囲に鋳造および冷間圧延された板厚0.5 〜3mm のAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなり、板厚中心部の平均結晶粒径が20μm以下であり、板表層部から1/4t部までの平均結晶粒径が、板厚中心部から1/4t部までの平均結晶粒よりも2倍以上大きいことを特徴とする成形用アルミニウム合金板。
- 前記アルミニウム合金板が、更に、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板。
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