以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、電位および電圧の単位は、特に単位を記さない限り、V(ボルト)であるものとする。
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。有機EL表示ディスプレイ装置(以下、表示パネルと記す。)1は、複数の走査電極(図示略。)と複数の信号電極(図示略。)とを備える。各走査電極と各信号電極とは、有機薄膜を挟んで直交するように配置される。各走査電極と各信号電極との交差部分がそれぞれ画素となる。各画素において、信号電極側から走査電極側に電流が流れることにより、その画素の有機薄膜が発光する。
この表示パネル1は、駆動装置(コントローラ2等を含む駆動装置)に従って、通常表示とディミング表示の双方を行う。また、通常表示時とディミング表示時それぞれにおいて、PWMによる中間調表示を行う。
以下の説明において、通常表示時に発光画素に流れる定電流を第1の定電流と記す。また、ディミング表示時において発光画素に流れる定電流を第2の定電流と記す。
また、以下の説明において、選択時電位は、選択期間中に選択した走査電極に対して設定する電位である。非選択時電位は、ある走査電極の選択期間中、選択されていない各走査電極に対して設定する電位である。
駆動装置は、コントローラ2と、走査電極ドライバ3と、信号電極ドライバ4と、電源回路5とを備える。コントローラ(制御手段)2は、表示される画像のデータを記憶するメモリ2aを含んでいる。コントローラ2は、走査電極ドライバ3と、信号電極ドライバ4と、電源回路5とを制御することにより、表示パネル1に画像を表示させる。
また、コントローラ2には、外部MPU(Micro Processing Unit)6が接続される。外部MPU6は、コントローラ2に対して、通常表示とディミング表示のうちのどちらの表示を実行するのかを指示する。また、外部MPU6は、メモリ2aに記憶される表示データを書き換える処理を行う。
表示データは、個々の画素に対応させて、最高輝度から最低輝度までの各階調のうちのいずれかを示すデータを含んでいる。このように、表示データは、中間調を示す画素のデータを含んでいる。なお、通常表示とディミング表示とを切り替える場合であっても、表示内容を変化させないのであれば、外部MPU6は表示データを変化させない。ただし、この場合、表示内容は変化しないが、表示される画像の輝度は変化する。
走査電極ドライバ3は、コントローラ2に従って、個々の走査電極を一本ずつ選択し、選択行および非選択行の走査電極の電位をそれぞれ設定する。そして、各走査電極を選択しながら走査電極を走査していく。各走査電極の電位を設定するための電圧は、電源回路5から供給される。走査電極ドライバ3は、選択行の走査電極を選択時電位(VSSとする。)に設定する。また、ある走査電極の選択期間中、他の各走査電極の電位を非選択時電位に設定する。ただし、非選択時電位は、通常表示時とディミング表示時とで異なる。通常表示時における非選択時電位をVCH1とし、ディミング表示時における非選択時電位をVCH2とする。
信号電極ドライバ4は、コントローラ2および選択行の表示データに従って、選択期間中、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択行走査電極に定電流を流す。すなわち、信号電極ドライバ4は、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択されている走査電極上の有機薄膜に定電流を流す。ただし、信号電極ドライバ4は、コントローラ2に従って定電流値を切り替える。コントローラ2が通常表示を指示している場合、信号電極ドライバ4は第1の定電流を流す。また、コントローラ2がディミング表示を指示している場合、信号電極ドライバ4は第2の定電流を流す。第2の定電流量は、第1の定電流量よりも少ない。
また、信号電極ドライバ4は、表示データに基づいて画素に定電流を流す時間を調整することにより、中間調を表示する。図2は、信号電極ドライバ4がPWMによって中間調表示を行う状況を示す説明図である。図2(a)は、通常表示時において中間調表示を行う状況を示している。図2(a)に示すパルスの高さは、第1の定電流を流したときの信号電極の電位を表す。信号電極ドライバ4は、最大階調で表示させる画素に対しては、選択期間の間、第1の定電流を流し続ける。中間調を表示させる画素に対しては、階調に応じた時間だけ第1の定電流を流す。第1の定電流を流す時間を変えることで、各階調を表示することができる。図2(b)は、ディミング表示時において中間調表示を行う状況を示している。第2の定電流量は、第1の定電流量よりも少ないので、図2(b)に示すパルスの高さは図2(a)に示すパルスよりも低い。信号電極ドライバ4は、最大階調で表示させる画素に対しては、選択期間の間、第2の定電流を流し続ける。中間調を表示させる画素に対しては、階調に応じた時間だけ第2の定電流を流す。第2の定電流を流す時間を変えることで、ディミング表示時においても各階調を表示することができる。通常、PWMでは、定電流を流す時間(所望の中間調に応じた時間)が経過した直後に、定電流を流していた信号電極の電位をVSS(走査電極の選択時電位と等電位)に設定する。
また、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4は、各走査電極の選択期間終了時から、次の走査電極の選択期間開始時までの間、全ての走査電極および全ての信号電極の電位をリセット電位に設定する。ここでは、リセット電位が選択時電位VSSと等電位であるものとする。選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、全ての走査電極および全ての信号電極の電位をリセット電位VSSに設定することにより、画素に蓄積される電荷は放電される。その結果、次の選択期間開始時において、選択期間開始時から画素が発光するまでの立ち上がり時間が短縮化される。
各走査電極をリセット電位に設定する走査電極ドライバ3および各信号電極をリセット電位に設定する信号電極ドライバ4の構成は、公知の構成であってよい。例えば、特許文献1に記載された構成であってもよい。
電源回路5は、走査電極ドライバ3に電圧VSSを供給し、さらに電圧VCH1と電圧VCH2との切り替えを行って電圧VCH1または電圧VCH2供給する。また、信号電極ドライバ4に、電圧VSSと、信号電極ドライバ用電源電圧VSHとを供給する。なお、電圧VSHは、信号電極ドライバ4が備える定電流回路を駆動するための電圧である。従って、各信号電極の電位はVSHとして設定されるわけではない。
電源回路5は、通常表示時には走査電極ドライバ3に電圧VCH1を出力し、ディミング表示時には走査電極ドライバ3に電圧VCH2を出力する。走査電極ドライバ3は、電源回路5からの電圧出力に応じて、選択されていない走査電極の電位を非選択時電位VCH1またはVCH2に設定する。電源回路5は、出力電圧VCH1およびVCH2の切り替えをコントローラ2に従って行う。
図3は、電源回路5における電圧VCH1およびVCH2の出力部の構成例を示すブロック図である。電源回路5は、電源電圧を分圧する抵抗11〜13と、演算増幅器(以下、オペアンプと記す。)14,15と、スイッチ16とを備える。抵抗11は、電源電圧に接続され、抵抗13は接地される。抵抗12は、抵抗11と抵抗13との間に配置される。分圧によって抵抗11,12間に生じた電圧VCH1inは、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ14の非反転入力端子に入力される。同様に、分圧によって抵抗12,13間に生じた電圧VCH2inは、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ15の非反転入力端子に入力される。オペアンプ14,15は、それぞれ電圧VCH1,VCH2を出力する。分圧で得られた電圧VCH1in,VCH2inは、それぞれ電圧VCH1,VCH2と等しい。
スイッチ16は、コントローラ2(図3において図示せず。)が出力する切替制御信号に応じて、走査電極ドライバ3に接続される配線17を、オペアンプ14の出力端またはオペアンプ15の出力端に接続させる。切替制御信号は、通常表示かディミング表示かを指示する制御信号である。切替制御信号が通常表示時であることを示している場合、スイッチ16は、配線17をオペアンプ14の出力端に接続させる。この結果、電源回路5から走査電極ドライバ3に電圧VCH1が出力される。一方、切替制御信号がディミング表示時であることを示している場合、スイッチ16は、配線17をオペアンプ15の出力端に接続させる。この結果、電源回路5から走査電極ドライバ3に電圧VCH2が出力される。
次に、非選択時電位VCH1,VCH2のとり得る値の範囲について説明する。まず、電位VCH2の範囲から説明する。発光開始電圧をVpとする。また、信号電極ドライバ4によって信号電極から選択行の走査電極に第2の定電流が流されたときの信号電極電位をVs2とする。図4は、VCH2の下限値の説明図である。図4において、実線は走査電極の駆動波形を表し、破線は信号電極の駆動波形を表している。図4(a)に示すように、信号電極電位Vs2より非選択時電位VCH2が低いとする。そして、その電位差が発光開始電圧Vpよりも大きいとすると、選択されていない行の画素も発光してしまうことになる。従って、VCH2は、Vs2−VCH2<Vpを満足する値でなければならない。すなわち、Vs2−Vp<VCH2が成立している必要がある。また、図4(b)に示すように、VCH2−VSS≦Vpとなっていると、たとえVs2−Vp<VCH2が成立していても、選択行が発光しない場合が生じ得る。例えば、Vs2=VCH2が成立しているときは、選択行の画素は発光しない。従って、VCH2−VSS>Vpが成立している必要がある。よって、Vs2−Vp<VCH2およびVSS+Vp<VCH2の双方を満足する必要がある。
続いて、VCH2の上限について説明する。図15に示すように、選択期間開始時に信号電極電位が非選択時電位に近づいてしまう場合、選択期間内における輝度は、所望の最高輝度より上昇してしまう。しかし、1選択期間における輝度の上昇量が、所望の最高輝度の0.5倍以内に収まっていれば、PWMで中間調を表示するときのリニアリティは良好に維持できる。そこで、VCH2の上限は以下のように算出することができる。第2の定電流の電流値をI2[μA]とする。また、選択期間の長さをt[μs(マイクロ秒)]とする。このとき、選択期間内における供給電荷は、I2・t・10−3[nC]となる。また、各画素は容量を有するが、1本の信号電極に存在する画素の容量の和をC[nF]とする。1選択期間における輝度の上昇量が、所望の最高輝度の0.5倍以内であればよいので、供給される電荷は所望の輝度を得るための電荷よりもI2・t・0.5・10−3[nC]だけ多くてよい。ここで、「電荷量=容量・電圧」という関係があるので、Vs2を基準としたとき、信号電極電位は、((I2・t・0.5・10−3)[nC]/C[nF])=(I2・t・0.5/C)・10−3[V]まで上昇してよい。すなわち、この電位上昇が生じ得るような非選択時電位がVCH2の上限である。
以上をまとめると、VCH2の取り得る範囲は、以下の式1から式3を同時に満足する範囲である。
Vs2−Vp<VCH2 式1
VSS+Vp<VCH2 式2
VCH2≦Vs2+(I2・t・0.5/C)・10−3 式3
例えば、VCH2=Vs2、かつVSS+Vp<VCH2となるように、非選択時電位VCH2を定めてもよい。
非選択時電位VCH1の範囲も同様に求められる。すなわち、VCH1の下限は、Vs1−Vp<VCH1と表される。ここで、Vs1は、信号電極ドライバ4によって信号電極から選択行の走査電極に第1の定電流が流されたときの信号電極電位である。なお、VCH2<VCH1であるので、VSS+Vp<VCH2が成立していれば、VSS+Vp<VCH1も成立する。また、VCH1の上限は、Vs1+(I1・t・0.5/C)・10−3と表される。ただし、I1[μA]は、第1の定電流の電流値である。非選択時電位VCH1は、上記のような範囲に収まるように定めればよい。以上をまとめると、VCH1の取り得る範囲は、以下の式4および式5を同時に満足する範囲である。
Vs1−Vp<VCH1 式4
VCH1≦Vs1+(I1・t・0.5/C)・10−3 式5
例えば、VCH1=Vs1になるように、非選択時電位VCH1を定めてもよい。
図5は、コントローラ2が信号電極ドライバ4に出力する制御信号の出力タイミングを示す説明図である。コントローラ2は、1行分の表示データの中から各列のデータを順次取得するタイミングを規定するCP(データ転送用クロックパルス)と、選択する走査電極の切り換えを示すLP(ラッチパルス)とを信号電極ドライバ4に出力する。また、コントローラ2は、信号電極ドライバ4に1行分の表示データ(Data)を取り込ませる。LPの立ち下がり(ローレベルになるタイミング)からLPの立ち上がり(ハイレベルになるタイミング)までが選択期間となる。コントローラ2は、これから選択される行を指定して、メモリにその行の表示データをデータ出力領域にコピーさせる。また、コントローラ2は、選択期間中、信号電極の数と同数のパルス信号としてCPを信号電極ドライバ4に出力する。信号電極ドライバ4は、CPの立ち下がりタイミング毎に、データ出力領域にコピーされた1行分の表示データ(Data)から各画素のデータを1つずつ取得する。この表示データは、次の選択期間に選択される行の表示データである。
信号電極ドライバ4は、選択期間が終了すると、その選択期間内に取得した1行分の表示データに基づいて、次の選択期間中に発光させるべき画素が存在する信号電極を判定するとともに、どの階調で表示するのかを判定する。また、信号電極ドライバ4は、LPがハイレベルになっている間(すなわち、選択期間終了時から次の選択期間の開始までの間)、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
信号電極ドライバ4は、次の選択期間が開始されると、発光させるべき画素が存在する信号電極に定電流を流す。また、各信号電極において、階調に応じた時間が経過したときに、定電流を停止する。そして、信号電極ドライバ4は、定電流を流していた信号電極の電位をVSSに設定する。
また、図1に示すように、コントローラ2は信号電極ドライバ4に切替制御信号(通常表示かディミング表示かを指示する制御信号)も出力する。コントローラ2は、切替制御信号を出力して、信号電極ドライバ4が流す定電流の切り替えを制御する。信号電極ドライバ4は、切替制御信号によって通常表示を指示されている場合、定電流として第1の定電流を流す。一方、切替制御信号によってディミング表示を指示されている場合、定電流として第2の定電流を流す。
図6は、コントローラ2が走査電極ドライバ3に出力する制御信号の出力タイミングを示す説明図である。コントローラ2は、LPと、1フレームの開始を示すFLM(ファーストラインマーカ)とを走査電極ドライバ3に出力する。走査電極ドライバ3は、FLMがハイレベルになると、LPに応じて第1行から各走査電極を順次選択していく。また、信号電極ドライバ4は、LPがハイレベルになっている間(すなわち、選択期間終了時から次の選択期間の開始までの間)、各走査電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
図7および図8は、本発明の駆動装置で表示パネル1を駆動した場合の駆動波形の例を示す説明図である。ただし、図7は、通常表示を維持したままディミング表示に切り替えないときの駆動波形の例を示している。図8は、通常表示からディミング表示に切り替えるときの駆動波形の例を示している。なお、図7および図8は、選択期間中、発光させる画素に定電流を流し続ける場合を例示している。
まず、図7を用いて、通常表示時におけるコントローラ2、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4の動作について説明する。コントローラ2は、切替制御信号として通常表示を指示する信号(本例ではローレベルとする。)を出力し続けるものとする。この場合、電源回路5は電圧VCH1を出力し、非選択時電位としてVCH1が設定される。
コントローラ2は、第1行からの走査を指示する場合、FLMをローレベルからハイレベルにする。そして、FLMがハイレベルになっている間にLPをハイレベルに立ち上げ、続いてLPをローレベルに戻す。FLMがハイレベルになっているときにLPがローレベルからハイレベルに変化すると、走査電極ドライバ3は、そのタイミングで最終行の選択期間を終了する。また、FLMがハイレベルになっているときにLPがハイレベルからローレベルに変化すると、走査電極ドライバ3は、そのタイミングから第1行の選択期間を開始する。コントローラ2は、第1行の選択期間中にFLMをハイレベルからローレベルにする。
走査電極ドライバ3は、FLMがハイレベルになっている間にLPがハイレベルからローレベルに変化すると、そのタイミングで、第1行走査電極の電位をVSSに設定し、他の各走査電極の電位をVCH1に設定する。また、信号電極ドライバ4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第1行走査電極に定電流を流す。このとき、通常表示が指示されているので、信号電極ドライバは第1の定電流を流す。このときの信号電極電位はVs1である。また、他の各信号電極の電位をVSSに設定することにより、他の各信号電極から第1行走査電極に電流が流れないようにする。この結果、第1の定電流が流された信号電極と第1行走査電極との交差部分の有機薄膜が発光する。なお、Vs1−Vp<VCH1を満足するようにVCH1は定められているので、信号電極から非選択行の走査電極に電流は流れない。
また、第1行の選択期間の間、信号電極ドライバ4は、次に選択される第2行の表示データをメモリ2aから取得する。
コントローラ2がLPをハイレベルに立ち上げると、第1行の選択期間が終了する。LPがハイレベルになっている間、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4は、それぞれ各走査電極、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
コントローラ2がLPをハイレベルからローレベルに変化させると、走査電極ドライバ3は、そのタイミングで、第2行走査電極の電位をVSSに設定し、他の各走査電極の電位をVCH1に設定する。また、信号電極ドライバ4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第2行走査電極に定電流を流す。このとき、通常表示が指示されているので、信号電極ドライバは第1の定電流を流す。以降、コントローラ2、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4は、同様の動作を繰り返す。
図7では、通常表示を維持する場合の例を示した。ディミング表示を維持する場合、コントローラ2は、切替制御信号としてディミング表示を指示する信号(本例ではハイレベルとする。)を出力し続ける。この場合、電源回路5は電圧VCH2を出力し、非選択時電位としてVCH2が設定される。また、信号電極ドライバ4は、定電流として第2の定電流を流す。この結果、第2の定電流が流れる信号電極の電位はVs2になる。非選択時電位および第2の定電流が流れる信号電極の電位以外の点に関しては、図7に示す駆動波形と同様の波形となる。
次に、表示の切替を行う場合の動作を図8を用いて説明する。図8に示す例では、コントローラ2が、1フレームの途中で、切替制御信号をローレベル(通常表示)からハイレベル(ディミング表示)に切り替える。なお、コントローラ2は、外部MPU6からの指示に応じて切替制御信号を切り替える。
切替制御信号がローレベルのときの駆動波形は、図7に示す駆動波形と同様の波形となる。
コントローラ2は、例えば、LPの立ち上がりのタイミング(選択期間の終了タイミング)にあわせて、切替制御信号を切り替える。
LPの立ち上がりタイミングの後、LPがハイレベルになっている間、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4は、それぞれ各走査電極、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。この点は、図7に示す駆動波形と同様である。
LPの立ち上がりのタイミングにあわせて切替制御信号が切り替えられた後、コントローラ2がLPをローレベルに変化させると、次の選択期間が開始される。このとき、電源回路5のスイッチ16は、切替制御信号の変化に応じて出力電圧を切り替えている。従って、次の選択期間開始時において、走査電極ドライバ3は、スイッチ16によって切り替えられた電圧に応じて、非選択時電位を設定する。図8に示す例では、非選択行の走査電極の電位をVCH2に設定する。また、走査電極ドライバ3は、選択行の走査電極の電位をVSSに設定する。
信号電極ドライバ4は、ディミング表示を指示するように切替制御信号が切り替えられたので、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択行の走査電極に第2の定電流を流す。このときの信号電極電位はVs2である。また、他の各信号電極の電位をVSSに設定することにより、他の各信号電極から選択行の走査電極に電流が流れないようにする。この結果、第2の定電流が流された信号電極と第3行走査電極との交差部分の有機薄膜が発光する。なお、Vs2−Vp<VCH2を満足するようにVCH2は定められているので、信号電極から非選択行の走査電極に電流は流れない。
以降、コントローラ2、走査電極ドライバ3および信号電極ドライバ4は、切替制御信号が再び切り替えられるまで、ディミング表示を維持するように動作する。
図8では、通常表示からディミング表示に切り替える場合を例示したが、ディミング表示から通常表示に切り替える場合の動作も同様である。ただし、この場合、非選択時電位はVCH2からVCH1に切り替えられる。また、信号電極から選択行の走査電極に流れる定電流は、第2の定電流から第1の定電流に切り替えられる。
本実施の形態によれば、ディミング表示への切り替え時に信号電極から選択行走査電極に流す定電流量を少なくする(第1の定電流から第2の定電流に切り替える)場合、非選択時電位をVCH1からVCH2に下げる。この結果、第2の定電流が流れる信号電極電位と非選択時電位との電位差が少なくなる。従って、選択期間開始時に信号電極の電位が本来設定されるべき電位より高くなってしまい、その後本来の電位に下がるという現象を発生しにくくさせることができる。よって、PWMで中間調表示を行う際のリニアリティを良好に保つことができる。
特に、VCH2≧Vs2+(I2・t・0.5/C)・10−3となるようにVCH2を定めることにより、リニアリティを良好に保つことができる。また、Vs2−Vp<VCH2となるようにVCH2を定めることにより、非選択行の画素の発光を防止することができる。さらに、VSS+Vp<VCH2も満足するようにVCH2を定めることにより、選択行の画素をより確実に発光させることができる。
[実施の形態2]図9は、本発明の第2の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。表示パネル(有機ELディスプレイ装置)21は、第1の実施の形態における表示パネル1と同様に、有機薄膜を挟んで直交するように配置される複数の走査電極(図示略。)と複数の信号電極(図示略。)とを備える。ただし、本実施の形態における表示パネル21は、ダミー画素21aを備える。既に説明したように、定電流を流すときの信号電極電位と非選択時電位との電位差が大きいと、信号電極電位が選択期間開始時に本来設定されるべき電位より高くなり、その後本来の電位に下がる。ダミー画素21aは、選択期間開始後に定電流を流すときの本来の電位になった信号電極電位をサンプルホールドするために設けられる画素である。
ダミー画素21aの表示データは、常に一定である。通常表示時、ディミング表示時それぞれにおいてダミー画素21aの輝度は一定になるので、ダミー画素21aは表示される画像の構成には寄与しない。そのため、ダミー画素21aが存在する箇所は、観察者に視認されないように筐体等に覆われるようにしておくことが好ましい。ただし、通常表示時とディミング表示時とでは、信号電極ドライバ24から信号電極に流される定電流が異なる。通常表示時にはダミー画素21aが存在する信号電極に第1の定電流が流され、ディミング表示時にはダミー画素21aが存在する信号電極に第2の定電流が流される。なお、第1の実施の形態と同様、第2の定電流量は、第1の定電流量よりも少ない。
コントローラ22は、表示データを記憶するメモリ22aを備える。そして、第1の実施の形態におけるコントローラ2と同様に、走査電極ドライバ23にFLMおよびLPを出力し、信号電極ドライバ24にCP,LPおよびDataを出力して走査電極ドライバ23および信号電極ドライバ24を制御する。また、コントローラ22は、切替制御信号を出力して、信号電極ドライバ4が流す定電流の切り替えを制御する。また、コントローラ22は、後述するタイミングコントローラ27に対し、CPおよびLPを出力する。
なお、コントローラ22は、通常表示とディミング表示とを切り替える場合、第1の実施の形態と同様に、例えば、LPの立ち上がりのタイミング(選択期間の終了タイミング)にあわせて切替制御信号を切り替えればよい。
外部MPU26は、第1の実施の形態で示した外部MPU6と同様に、コントローラ22に対して、通常表示とディミング表示のうちのどちらの表示を実行するのかを指示する。コントローラ22は、外部MPU26からの指示に応じて切替制御信号を切り替える。また、外部MPU26は、メモリ22aに記憶される表示データを書き換える処理を行う。ただし、外部MPU26は、ダミー画素21aのデータを含む表示データをメモリ22aに書き込む。以下の説明では、ダミー画素21aのデータとして最大輝度を指示するデータをメモリ22aに書き込む場合を例に説明する。
走査電極ドライバ23は、第1の実施の形態の走査電極ドライバ3と同様の動作を行う。すなわち、選択した走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、非選択行の走査電極の電位をVCH1(通常表示時)またはVCH2(ディミング表示時)に設定する。また、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各走査電極の電位をリセット電位(本実施の形態では、選択時電位VSSと等電位とする。)に設定する。ただし、走査電極ドライバ23は、電圧VSSを電源回路25から供給され、電圧VCH1,VCH2を後述のオペアンプ30から供給される。
信号電極ドライバ24は、第1の実施の形態の信号電極ドライバ4と同様の動作を行う。すなわち、信号電極ドライバ24は、選択期間中、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択されている走査電極上の有機薄膜に定電流を流す。信号電極ドライバ24は、コントローラ22から出力される切替制御信号によって通常表示を指示されている場合、第1の定電流を流す。一方、切替制御信号によってディミング表示を指示されている場合、第2の定電流を流す。また、信号電極ドライバ24は、表示データに基づいて画素に定電流を流す時間を調整することにより、中間調を表示する。ただし、本例では、ダミー画素21aの表示データとして、最大輝度を指示するデータが外部MPU26によって指定される。従って、信号電極ドライバ24は、選択期間全体に渡って、ダミー画素21aが存在する信号電極から電流を流し続ける。また、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各走査電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
電源回路25は、第1の実施の形態と同様、信号電極ドライバ24に電圧VSSと信号電極ドライバ用電源電圧VSHとを供給する。また、走査電極ドライバ23に電圧VSSを供給する。ただし、電圧VCH1,VCH2は出力しない。従って、本実施の形態では、コントローラ22は、電源回路25に切替制御信号を出力する必要はない。
タイミングコントローラ27は、コントローラ22が出力するLPおよびCPに基づいて、通常表示時とディミング表示時それぞれにおいて、ダミー画素21aが設けられる信号電極をコンデンサ29に接続させる期間を判定する。そして、その期間中、ダミー画素21aが設けられる信号電極とコンデンサ29との接続を指示する信号SHをスイッチ28に出力する。また、ダミー画素21aが設けられる信号電極をコンデンサ29に接続させる期間は、各走査電極の選択期間内であって、その信号電極の電位の変動が収まっている期間のうちの一部または全部である。なお、コンデンサ29の一方の電極は一定電圧に接続されていて、電位が一定に保たれている。本例では、コンデンサ29の一方の電極が接地され、その電極が電位0Vに保たれている場合を例に説明する。
スイッチ28は、SHが入力されている間、ダミー画素21aが設けられる信号電極と、コンデンサ29の接地していない方の電極29aとを接続させる。この結果、コンデンサ29には電荷が蓄積され、接地していない方の電極29aの電位は、ダミー画素21aが設けられる信号電極と等電位になる。また、スイッチ28は、SHが入力されていない間、信号電極とコンデンサ29の電極29aとの接続を断とする。
コンデンサ29に電荷が蓄積されることによってコンデンサの電極間に生じた電圧は、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ30の非反転入力端子に入力される。オペアンプ30は、非反転入力端子に入力された電圧と等しい電圧を走査電極ドライバ23に出力する。このように、コンデンサ29は、蓄積された電荷に応じた電圧を、オペアンプ30を介して走査電極ドライバ23に出力する。走査電極ドライバ23は、オペアンプ30が出力した電圧によって、非選択時電位を設定する。
本実施の形態において、接続手段は、タイミングコントローラ27およびスイッチ28によって実現される。
図10は、ダミー画素21aが設けられる信号電極をコンデンサ29(接地されていない方の電極29a)に接続させる期間を示す説明図である。図10では、通常表示からディミング表示に切り替える場合を例に説明する。通常表示からディミング表示に切り替える場合、コントローラ22は、ディミング表示を指示する切替制御信号を信号電極ドライバ24に出力する。信号電極ドライバ24は、この切替制御信号に基づいて、選択期間中、発光すべき画素が存在する信号電極に第2の定電流を流す。また、表示データには、ダミー画素21aの表示データ(最大輝度を指示するデータ)が含まれている。従って、信号電極ドライバ24は、選択期間中、ダミー画素21aが存在する信号電極に、第2の定電流を流し続ける。
このとき、ダミー画素21aが存在する信号電極の電位はVs2(信号電極から選択行の走査電極に第2の定電流を流したときの信号電極電位)になるはずである。しかし、本実施の形態では、電源回路25による非選択時電位の切り替えは行わない。そのため、通常表示からディミング表示に切り替えられた直後の選択期間開始タイミングでは、非選択時電位は、通常表示時の高い電位になっている。そのため、第2の定電流を流すときの信号電極電位と非選択時電位との差が大きくなり、図10に示すように、信号電極の電位はVs2よりも高い電位となり、その後Vs2まで下がる。
タイミングコントローラ27は、信号電極電位がVs2まで下がった状態の期間(電位の変化が収まった状態の期間)において、SHを出力する。図10に示す例では、選択期間開始後(LPがローレベルになった後)、64番目のCPの立ち下がりタイミングから、128番目のCPの立ち下がりタイミングまでをSHの出力期間としている。スイッチ28は、この期間中、ダミー画素21aが設けられる信号電極と電極29aとを接続させるので、電極29aの電位はVs2になる。
この結果、コンデンサ29の電極間の電圧はVs2になり、オペアンプ30には電圧Vs2が入力される。そして、オペアンプ30は電圧Vs2を出力する。走査電極ドライバ23は、この出力電圧によって、ディミング表示時における非選択時電位VCH2を設定する。
このように、コントローラ22が切替制御信号を切り替えると、信号電極ドライバ24がその切替制御信号に従い、発光させるべき画素が存在する信号電極およびダミー画素21aが存在する信号電極から選択行に第2の定電流を流す。そして、タイミングコントローラ27、スイッチ28およびコンデンサ29がサンプルホールド回路としての役割を果たし、ダミー画素21aが存在する信号電極の電位が電位Vs2になるタイミングで、電圧Vs2をオペアンプ30に入力する。コンデンサ29にボルテージフォロワ接続されたオペアンプ30は、電圧Vs2を走査電極ドライバ23に出力する。走査電極ドライバ23は、電圧Vs2によって非選択時電位VCH2を設定するので、VCH2=Vs2となる。すなわち、コントローラ22が切替制御信号を切り替えることによって、非選択時電位VCH2は、第2の定電流が流れるときの信号電極電位Vs2と等電位に設定される。
非選択時電位VCH2と、第2の定電流を流すときの信号電極電位Vs2とが等電位になれば、選択期間開始時に第2の定電流を流す信号電極の電位がVs2より高くなることが防止される。そして、第2の定電流を流している間の信号電極電位は一定に保たれる。従って、PWMによって中間調を表示するときに、良好なリニアリティが得られる。
図10では、通常表示からディミング表示に切り替えた場合を例に説明した。次に、ディミング表示から通常表示に切り替える場合について説明する。ディミング表示から通常表示に切り替える場合、コントローラ22は、通常表示を指示する切替制御信号を信号電極ドライバ24に出力する。信号電極ドライバ24は、この切替制御信号に基づいて、選択期間中、発光すべき画素が存在する信号電極に第1の定電流を流す。また、表示データには、ダミー画素21aの表示データ(最大輝度を指示するデータ)が含まれている。従って、信号電極ドライバ24は、選択期間中、ダミー画素21aが存在する信号電極に、第1の定電流を流し続ける。
このとき、ダミー画素21aが存在する信号電極の電位はVs1(信号電極から選択行の走査電極に第1の定電流を流したときの信号電極電位)になるはずである。しかし、本実施の形態では、電源回路25による非選択時電位の切り替えは行わない。そのため、通常表示からディミング表示に切り替えられた直後の選択期間開始タイミングでは、非選択時電位は、ディミング表示時の低い電位(VCH2)になっている。そのため、第1の定電流を流すときの信号電極電位Vs1と非選択時電位VCH2との差が大きくなる。また、このとき、非選択時電位VCH2は、信号電極電位Vs1よりも低い値になっている。この結果、選択期間開始時に、信号電極の電位はVs1よりも低い電位となり、その後Vs1まで上がる。
タイミングコントローラ27は、信号電極電位がVs1まで上がった状態の期間(電位の変化が収まった状態の期間)において、SHを出力する。例えば、図10に示す場合と同様に、選択期間開始後(LPがローレベルになった後)、64番目のCPの立ち下がりタイミングから、128番目のCPの立ち下がりタイミングまでをSHの出力期間とすればよい。スイッチ28は、SHが出力されている間、ダミー画素21aが設けられる信号電極と電極29aとを接続させるので、電極29aの電位はVs1になる。
この結果、コンデンサ29の電極間の電圧はVs1になり、オペアンプ30には電圧Vs1が入力される。そして、オペアンプ30は電圧Vs1を出力する。走査電極ドライバ23は、この出力電圧によって、通常表示時における非選択時電位VCH1を設定する。
このように、コントローラ22が切替制御信号を切り替えると、信号電極ドライバ24がその切替制御信号に従い、発光させるべき画素が存在する信号電極およびダミー画素21aが存在する信号電極から選択行に第1の定電流を流す。そして、タイミングコントローラ27、スイッチ28およびコンデンサ29がサンプルホールド回路としての役割を果たし、ダミー画素21aが存在する信号電極の電位が電位Vs1になるタイミングで、電圧Vs1をオペアンプ30に入力する。コンデンサ29にボルテージフォロワ接続されたオペアンプ30は、電圧Vs1を走査電極ドライバ23に出力する。走査電極ドライバ23は、電圧Vs1によって非選択時電位VCH1を設定するので、VCH1=Vs1となる。すなわち、コントローラ22が切替制御信号を切り替えることによって、非選択時電位VCH1は、第1の定電流が流れるときの信号電極電位Vs1と等電位に設定される。
非選択時電位VCH1と、第1の定電流を流すときの信号電極電位Vs1とが等電位になれば、選択期間開始時に第1の定電流を流す信号電極の電位がVs1より低くなることが防止される。そして、第1の定電流を流している間の信号電極電位は一定に保たれる。従って、PWMによって中間調を表示するときに、良好なリニアリティが得られる。
以上の説明では、ダミー画素21aの表示データとして、最大輝度を指示するデータを用いる場合を示した。しかし、タイミングコントローラ27は、信号電極電位の変化が収まってから選択期間終了時までSHを出力し続ける必要はない。従って、ダミー画素21aの表示データは、信号電極の電位の変化が収まっている期間が得られるデータであればよく、必ずしも最大輝度を指示するデータでなくてもよい。
また、図9では、コンデンサ29にオペアンプ30をボルテージフォロワ接続させ、Vs1=VCH1、Vs2=VCH2とする場合を示した。オペアンプ30の代わりに増幅器を設けてもよい。増幅器には、コンデンサ29から電圧Vs1またはVs2が入力される。そして、増幅器は、入力された電圧を上昇または下降させて出力する。信号電極ドライバ23は、増幅器の出力電圧によって非選択時電位を設定する。従って、増幅器の出力電圧の値が、非選択時電位の値となる。
増幅器に電圧Vs2が入力された場合、増幅器が出力する電圧をVCH2とする。このVCH2の取り得る範囲は、第1の実施の形態で説明したVCH2の取り得る範囲と同様である。すなわち、電圧Vs2が入力されることによって増幅器が出力し得る電圧VCH2の範囲は、式1から式3の条件を同時に満足する範囲である。また、増幅器に電圧Vs1が入力された場合、増幅器が出力する電圧をVCH1とする。このVCH1の取り得る範囲は、第1の実施の形態で説明したVCH1の取り得る範囲と同様である。すなわち、電圧Vs1が入力されることによって増幅器が出力し得る電圧VCH1の範囲は、式4および式5を同時に満足する範囲である。
ここで、増幅器の出力電圧VCH2(ディミング時における非選択時電位VCH2)が、増幅器の入力電圧Vs2(ダミー画素21aが設けられた信号電極の電位Vs2)に対してどれだけ高い値まで許容されるかについて、具体例を示す。
表示パネル1が備える走査電極、信号電極の本数がそれぞれ64本、256本であり、画素数が256×64画素であるとする。また、個々の画素の縦、横の幅がそれぞれ0.3[mm]であるとする。さらに、画素が有する容量の単位面積当たりの大きさが0.25[nF/mm2]であるとする。また、表示パネル1を駆動する際のフレーム周波数は100Hzであり、デューティ比(1フレームに対する1本の走査電極が選択される時間の比率)を1/64とする。さらに、発光効率が3[cd/A]であり、ディミング表示時において要求される最高輝度が5[cd/m2]であるものとする。1選択期間における輝度の上昇量が、最高輝度(ここでは5[cd/m2])の0.5倍以内に収まっていれば、PWMで中間調を表示するときのリニアリティは良好に維持できる。
この場合、1画素が有する容量の大きさは、0.25[nF/mm2]×0.3[mm]×0.3[mm]=22.5[pF]となる。1本の信号電極には64個の画素が存在するので、信号電極1本分の容量は、22.5[pF]×64=1440[pF]=1.44[nF]となる。
また、第2の定電流の電流値は、(5[cd/m2]×64×0.3[mm]×0.3[mm])/3[cd/A]=9.6[μA]である。1つの選択期間は、(1[s]/100[Hz])×(1/64)=156[μs]である。
1つの選択期間内に供給される電荷は、電流と時間(選択期間)との積によって求められる。従って、1つの選択期間内に供給される電荷は、9.6[μA]×156[μs]=1.498[nC]である。1選択期間における輝度の上昇量が、最高輝度の0.5倍以内に収まっていればよいので、供給される電荷は所望の輝度を得るための電荷1.498[nC]の0.5倍だけ多く供給されてもよい。所望の輝度を得るための電荷よりも多く供給されてよい電荷量は、1.498[nC]×0.5=0.749[nC]である。また、「電荷量=容量・電圧」という関係がある。従って、この分だけ多く電荷を供給したとき、信号電極電位は、0.749[nC]/1.44[nF]=520[mV]=0.5[V]だけ上昇する。すなわち、信号電極電位の上昇は0.5[V]まで許容される。従って、本例の場合、ディミング時における非選択時電位VCH2は、ダミー画素21aが設けられた信号電極の電位Vs2よりも0.5[V]だけ高い値まで許容される。
なお、第2の実施の形態では、ダミー画素21aを設け、ダミー画素21aが設けられた信号電極の電位変化が収まったときに、その信号電極とコンデンサ29(接地されていない方の電極29a)とを接続させる構成とした。ダミー画素21aを設けずに、観察者に表示される画像を構成する画素が存在する信号電極の電位変化が収まったときに、その信号電極とコンデンサ29とを接続させる構成としてもよい。ただし、この場合、コンデンサ29と接続される信号電極は、表示データによって変化する。従って、コントローラ22は、スイッチ28に、どの信号電極とコンデンサ29とを接続すればよいのかを通知する。スイッチ28は、SHが入力されている間、コントローラ22から通知された信号電極をコンデンサ29に接続させればよい。コントローラ22は、信号電極電位が収まる期間が存在する画素(例えば、選択期間開始後、少なくとも、64番目のCPの立ち下がりタイミングから128番目のCPの立ち下がりタイミングまで電流が流され続ける画素)を表示データに基づいて判定する。そして、その画素が存在する信号電極をスイッチ28に通知する。
なお、第1の定電流または第2の定電流が流される信号電極の電位変化が収まっているときにコンデンサ29(接地されていない方の電極29a)に接続される信号電極は、少なくとも1本あればよい。従って、ダミー画素21aを設ける場合には、ダミー画素21aが存在する信号電極が少なくとも1本あればよい。また、ダミー画素21aを設けない場合、コントローラ22は、少なくとも1本の信号電極のコンデンサ29に接続する旨を、スイッチ28に通知すればよい。
[実施の形態3]図11は、本発明の第3の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。表示パネル(有機ELディスプレイ装置)41の構成は、第1の実施の形態における表示パネル1と同様の構成である。
コントローラ42は、表示データを記憶するメモリ42aを備える。そして、第1の実施の形態におけるコントローラ2と同様に、走査電極ドライバ43にFLMおよびLPを出力し、信号電極ドライバ44にCP,LPおよびDataを出力して走査電極ドライバ43および信号電極ドライバ44を制御する。また、コントローラ42は、切替制御信号を出力して、信号電極ドライバ44が流す定電流の切り替えを制御する。なお、コントローラ42は、通常表示とディミング表示とを切り替える場合、第1の実施の形態と同様に、例えば、LPの立ち上がりのタイミング(選択期間の終了タイミング)にあわせて切替制御信号を切り替えればよい。
外部MPU46は、第1の実施の形態で示した外部MPU6と同様に、コントローラ42に対して、通常表示とディミング表示のうちのどちらの表示を実行するのかを指示する。コントローラ42は、外部MPU46からの指示に応じて切替制御信号を切り替える。また、外部MPU46は、メモリ42aに記憶される表示データを書き換える処理を行う。
走査電極ドライバ43は、第1の実施の形態の走査電極ドライバ3と同様の動作を行う。すなわち、選択した走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、非選択行の走査電極の電位をVCH1(通常表示時)またはVCH2(ディミング表示時)に設定する。また、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各走査電極の電位をリセット電位(本実施の形態では、選択時電位VSSと等電位とする。)に設定する。ただし、走査電極ドライバ43は、電圧VSSを電源回路45から供給され、電圧VCH1,VCH2を信号電極ドライバ44から供給される。
信号電極ドライバ44は、第1の実施の形態の信号電極ドライバ4と同様の動作を行う。すなわち、信号電極ドライバ44は、選択期間中、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択されている走査電極上の有機薄膜に定電流を流す。信号電極ドライバ44は、コントローラ42から出力される切替制御信号によって通常表示を指示されている場合、第1の定電流を流す。一方、切替制御信号によってディミング表示を指示されている場合、第2の定電流を流す。なお、第1の実施の形態と同様、第2の定電流量は、第1の定電流量よりも少ない。また、信号電極ドライバ44は、表示データに基づいて画素に定電流を流す時間を調整することにより、中間調を表示する。また、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各走査電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
ただし、本実施の形態において、信号電極ドライバ44は、信号電極に出力する定電流に応じて線形に変化する電圧(すなわち、定電流の電流値を変数とする1次関数として表される電圧)を走査電極ドライバ43に出力する。ディミング表示時には比較的小さな定電流(第2の定電流)を出力するので、信号電極ドライバ44は、第2の定電流に応じた電圧VCH2を走査電極ドライバ43に出力する。また、通常表示時には第2の定電流より多い第1の定電流を出力するので、信号電極ドライバ44は、第1の定電流に応じた電圧VCH1を走査電極ドライバ43に出力する。
電源回路45は、第1の実施の形態と同様、信号電極ドライバ44に、電圧VSSと、信号電極ドライバ用電源電圧VSHとを供給する。また、走査電極ドライバ43に電圧VSSを供給する。ただし、電圧VCH1,VCH2は出力しない。従って、本実施の形態では、コントローラ42は、電源回路45に切替制御信号を出力する必要はない。
図12は、定電流に応じて線形に変化する電圧を出力する信号電極ドライバ44の構成例を示す説明図である。図12に示すように、信号電極ドライバ44は、D−A変換回路61を備える。D−A変換回路61は、コントローラ42が出力する切替制御信号に対してD−A変換を行う。D−A変換回路61は、第1オペアンプ62の+端子に接続される。第一オペアンプ62の出力は、第1トランジスタ63のベースに接続される。第1トランジスタ63のエミッタは、第1オペアンプ62の−端子および第1の抵抗64に接続される。第1の抵抗64の他端(第1トランジスタ63の反対側)は一定電位に保たれる。本例では、第1の抵抗64の他端が接地され、電位0Vに保たれる場合を例に示す。なお、第1の抵抗64は、信号電極ドライバ44の外部に設けられる場合が多い。
また、信号電極ドライバ用電源電圧VSHが入力される配線60には、第2の抵抗65と、複数の第3の抵抗66が並列に接続される。各第3の抵抗66の他端(配線60の反対側)は、それぞれ第2トランジスタ67のエミッタに入力される。各第3の抵抗66と各第2トランジスタ67は、一対一に対応する。第3の抵抗66の抵抗値はいずれも等しい。また、第2の抵抗65の他端(配線60の反対側)は、第1トランジスタのコレクタおよび各第2トランジスタのベースに接続される。
1つの第2トランジスタを除き、各第2トランジスタのコレクタはそれぞれ信号電極ドライバ44の出力端から信号電極に定電流を流す。
信号電極に接続されない第2トランジスタ66のコレクタは、第4の抵抗68に接続される。第4の抵抗68は第5の抵抗69に直列に接続される。第5の抵抗の他端(第4の抵抗68の反対側)は、接地された定電圧電源70に接続される。また、第4の抵抗68と第5の抵抗69との接続部分には、ボルテージフォロワ接続された第2オペアンプ71が接続される。定電圧電源70の電圧値VLは、発光開始電圧と同程度の電圧である。
第2トランジスタ67から第4の抵抗68に対しても、信号電極に流れる定電流と等しい定電流が流れる。そして、第2オペアンプ71には、第4の抵抗68と第5の抵抗69との接続部分の電圧が入力され、その電圧と等しい電圧を出力する。第2オペアンプ71が出力する電圧値は、第4の抵抗68に流される定電流値に対して線形に変化する。また、第2オペアンプ71が出力する電圧は、走査電極ドライバ43に供給される。走査電極ドライバ43は、この電圧によって非選択時電位を設定する。従って、第2オペアンプ71が出力する電圧の電圧値と非選択時電位の値は等しい。
図12に示す構成では、D−A変換回路61の出力と、第1の抵抗64の抵抗値によって、第1トランジスタを流れる定電流値Irefが決定される。そして、第2の抵抗65と電流値Irefとによって、第2の抵抗65の他端a(配線60の反対側)における電位が決定される。さらに、第2の抵抗65の他端aにおける電位と、第3の抵抗66の抵抗値とによって、信号電極ドライバ44が信号電極に出力する定電流の電流値が決定される。
通常表示時とディミング表示時とでは、D−A変換回路61に入力される切替制御信号が異なる。従って、D−A変換回路61の出力も異なることになる。その結果、通常表示時とディミング表示時とでは、信号電極に出力する定電流の電流値が異なり、通常表示時には第1の定電流が出力され、ディミング表示時には第2の定電流が出力される。
第4の抵抗68に第2の定電流が流れるときに第2オペアンプ71が出力する電圧をVCH2とする。このVCH2の取り得る範囲は、第1の実施の形態で説明したVCH2の取り得る範囲と同様である。すなわち、VCH2の取り得る範囲は、第2の定電流の電流値をI2、第2の定電流を流すときの信号電極の電位をVs2としたときに、式1から式3を同時に満足する範囲である。
第4の抵抗68に第1の定電流が流れるときに第2オペアンプ71が出力する電圧をVCH1とする。このVCH1の取り得る範囲は、第1の実施の形態で説明したVCH1の取り得る範囲と同様である。すなわち、VCH1の取り得る範囲は、第1の定電流の電流値をI1、第1の定電流を流すときの信号電極の電位をVs1としたときに、式4および式5を同時に満足する範囲である。
第4の抵抗68の抵抗値、第5の抵抗69の抵抗値および定電圧電源70の電圧値VLは、電圧VCH2が式1から式3を同時に満足する範囲に収まり、電圧VCH1が式4および式5を同時に満足する範囲に収まるように定めればよい。
本実施の形態において、電圧出力手段は、第4の抵抗68、第5の抵抗69、定電圧電源70およびオペアンプ71によって実現される。
図13に示す実線は、信号電極から選択行の走査電極に流す電流(第4の抵抗68に流す電流と等しい)と、第2オペアンプ71の出力電圧との関係を示している。図13に示すように、電流値に対して第2オペアンプ71の出力電圧は線形に変化する。換言すると、第2オペアンプ71の出力電圧は、信号電極に流される定電流の電流値の1次関数として表される。第2の定電流(電流値I2)が流されるとき、第2オペアンプ71の出力電圧はVCH2となる。また、第1の定電流(電流値I1)が流されるとき、第2オペアンプ71の出力電圧はVCH1となる。
また、図13において破線で表される曲線は、信号電極から選択行の走査電極に流す電流と、その信号電極の電位との関係を示している。図13に示すように、第2の定電流(電流値I2)が信号電極から走査電極に流されるとき、その信号電極の電位はVs2となる。また、第1の定電流(電流値I1)が信号電極から走査電極に流されるとき、その信号電極の電位はVs1となる。
なお、信号電極から走査電極に電流を流さない場合(電流値を0[A]とする場合)、第2オペアンプ71の出力電圧はVLとなる。
ディミング表示時に第2の定電流を流すとき、信号電極の電位Vs2と、非選択時電位VCH2との電位差は、図13に示すように比較的小さい。従って、選択期間開始時に第2の定電流を流す信号電極の電位がVs2より高くなることが防止される。そして、第2の定電流を流している間の信号電極電位はほぼ一定に保たれる。従って、PWMによって中間調を表示するときに、良好なリニアリティが得られる。
同様に、通常表示時に第1の定電流を流すとき、信号電極の電位Vs1と、非選択時電位VCH1との電位差は、図13に示すように比較的小さい。従って、選択期間開始時に第1の定電流を流す信号電極の電位がVs1より高くなることが防止される。そして、第1の定電流を流している間の信号電極電位はほぼ一定に保たれる。従って、PWMによって中間調を表示するときに、良好なリニアリティが得られる。
なお、電流値I1とI2の中間値程度の電流を流す場合には、信号電極電位と非選択時電位(第2オペアンプ71の出力電圧)との差が大きくなる。しかし、通常表示時、ディミング表示時それぞれにおいて、そのような電流を流すことはないので、良好なリニアリティが得られなくなるおそれはない。
上記の各実施の形態では、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各信号電極電位および各走査電極電位をリセット電位に設定する場合を例に説明した。特許文献2に記載されている駆動方法のように、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、それまで選択していた走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。あるいは、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、次に選択する走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。また、あるいは、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、それまで選択していた走査電極および次に選択する走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。