JP2004331757A - ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融加工時の溶融強度に劣るポリヒドロキシアルカノエート溶融物の溶融強度をあげ、また結晶化速度も向上させることで、溶融押出成形、溶融フィルム成形、溶融紡糸などの成形方法利用の際に、融着防止、ラインスピード向上など、成形性を改善すること。
【解決手段】融解温度Tmaを有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(a)と、融解温度Tmb(ここで、Tmb≧Tma+5℃)を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(b)を、混合して得られるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)であり、組成物(ab)の任意のTe(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)。
【選択図】 なし
【解決手段】融解温度Tmaを有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(a)と、融解温度Tmb(ここで、Tmb≧Tma+5℃)を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(b)を、混合して得られるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)であり、組成物(ab)の任意のTe(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有するポリエステル系樹脂組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、廃棄時に好気性、嫌気性環境下での生分解性に優れ、焼却処理したとしても発熱量が少なく、微生物が生産した天然のポリヒドロキシアルカノエートを使用し、地球環境に優しい、溶融粘度特性および結晶化速度の改善された組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチックは加工や使用しやすさや、再利用の困難さ、衛生上問題などから使い捨てされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされており、ゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックスが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている。近年、プラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。一般的に生分解性プラスチックは、▲1▼ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)等のポリヒドロキシアルカノエートといった微生物生産系脂肪族ポリエステル、▲2▼ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、▲3▼澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルのなかでもポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題があり、また、天然高分子物は非熱可塑性であることや耐水性に劣るといった問題がある。
【0003】
一方、ポリヒドロキシアルカノエートは好気性、嫌気性下での分解性に優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、植物原料を使用した微生物に由来するプラスチックで高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素を増大させない、カーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。特に嫌気性下で分解する性質や、高分子量化が可能で有る点は特筆すべき性能である。該ヒドロキシアルカノエートは脂肪族ポリエステルに分類されるが、先に述べた化学合成系の脂肪族ポリエステルとは、ポリマーの性質が大きく異なる。
【0004】
この様にポリヒドロキシアルカノエートは、天然成分からなり、廃棄物の問題が解決され、環境適合性に優れるため、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、吸着・担体・濾過材等に応用可能な成形体が望まれている。
【0005】
しかしながら、ポリヒドロキシアルカノエートの加工上の問題として、加熱時の分解がある。ポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、その融解温度以上の温度に十分加熱した場合、熱分解を生じ、特に融解温度より5℃以上の高温で加工する場合、加熱時間と共に大きく分子量が低下する。分子量が低くなるとその弊害として、押出加工時のドローダウン性に劣り、加工性が悪化する。その一例としては、微生物体内から抽出して得られた粉体状のポリヒドロキシアルカノエートをペレット化する場合に、融解温度以上の温度で溶融すると、溶融ストランドの溶融強度が乏しく、ストランドが切れ易く連続的に生産するのが困難である。また、一般的な中空容器の製造法、押出しブロー成形時にも溶融強度が乏しいと押出しブロー成形中に垂れ落ちやすいといったことが予測され、押出しブロー成形も困難であることが予想される。このような融解温度よりも十分高温な温度での押出成形には高い溶融強度を有する樹脂が必要とされている。
【0006】
一般的に樹脂の溶融強度を改善するためには、樹脂を高粘度化することが有効であり、そのための方法として、化学的架橋性を有する物質の添加や、無機物の添加等は良く知られている。脂肪族ポリエステルに化学的架橋性を有する物質を適用する例としては、イソシアネート化合物等(特許文献1〜3)の添加が代表的である。但し、この様な例は、化学合成系の脂肪族ポリエステルでよく実施されているものの、ポリヒドロキシアルカノエートに適用する場合、本来の天然物由来という意義が薄れるため好ましくないと考えられる。また、無機物添加の例としては、例えば脂肪族ポリエステルとポリカプロラクトンの混合物に無機充填剤(タルク)等を混合し、溶融強度を増大させ、溶融成形時の加工性を向上させる(特許文献4、5)といったものや、分散しにくいフィラーを分散させるために脂肪族ポリエステル中にスルホン酸金属塩を共重合させる方法等(特許文献6)が知られている。しかしながら、特許文献4、5記載の方法では、場合によって樹脂同士に相溶性が無く、相溶化剤の必要性や、透明性に問題があり、無機物の添加量も樹脂100部に対して約100〜900部と多量のため、生分解後の残存物が多量になることや、焼却処理をした場合にも炉内に多量の無機残存物が発生するという問題がある。また、特許文献6に記載の方法では確かに微量の添加剤の分散性が向上し、種々の特性が期待できるが、工程が増加することや、もしポリヒドロキシアルカノエートに何らかのセグメントを化学的に共重合させると、本来の天然物由来という利点を喪失し好ましくない。
【0007】
また、ポリヒドロキシアルカノエートの溶融加工時の溶融強度に関する別の問題として、融解温度より十分高い温度で溶融した場合の結晶化速度の遅さがある。結晶化速度が遅いとやはり溶融押出後の溶融強度、ドローダウン性に劣り溶融押出加工が困難となる。結晶化速度改善に関しては、種々検討がなされている。ある溶融加工法としては、高融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA−X)と低融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA−Y)を混合し、各々の融解温度の間の温度で加工する方法が提案されている(特許文献7)。しかしながら本発明者らが、高融解温度成分としてポリ(3−ヒドロキシブチレート)(融解温度:176℃)、低融解温度成分としてヘキサノエート成分が11%のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(融解温度:115℃)を120℃で溶融混合してこの加工法を追試した結果、必ずしもこの方法で得られる組成物結晶化速度は改善された物ではなかった。例えばこの方法で得られた組成物を押出機で溶融し、溶融ストランドからペレット化を実施する際、やや結晶化速度の早い押出溶融物は得られるが、結晶化にムラがあり、溶融強度もないため非常に切れやすく引取速度が非常に限定され、実用的でないという問題がある。また、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)を用いた他の例として、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)など、より高い融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエートを添加して微分散させた組成物を得ることで、結晶化速度が速くなることが提案されている(特許文献8)。この組成物は高融解温度成分が微分散することが特徴であり、微分散している場合は、DSCで組成物の昇温曲線を得た場合に、本来のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)の吸熱ピークの幅が高温側に伸びることで証明されるとしている。しかし、その後、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)のDSC曲線が高温側に伸びることと、組成物の結晶化が早くなることとは必ずしも相関しない場合があることが本発明者らの検討に依って明らかになり、また該文献には、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)組成物の溶融物の溶融強度を向上させる方法については開示されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−295098号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平7−149862号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−46013号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2001−172487号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平11−349795号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2001−323052号公報
【0014】
【特許文献7】
特表平8−510498号公報
【0015】
【特許文献8】
WO 02/50156 A2
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、特に、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)樹脂の溶融粘度を増大させ、溶融物の溶融強度を向上させ、さらに結晶化速度も向上させることのできる効率的な方法は未だ確立されていない。本発明は、これら問題を解決し、溶融押出成形、溶融フィルム成形、溶融紡糸などの成形方法利用の際に、融着防止、ラインスピード向上など、成形性が改善され、また、廃棄処分手段としての生分解も可能で、焼却した場合には炉内残存物がないなど、廃棄処分がしやすい環境適合性に優れたポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、低融解温度を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(以下、組成物(a)という)と高融解温度を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(以下、組成物(b)という)を混合した組成物(ab)の溶融粘度が、特定の溶融温度範囲での組成物(a)の溶融粘度よりも高粘度で有る場合、溶融加工時の成形性が向上し、また結晶化速度も向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明の第一は、式(1)で示されるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物であって、
組成物(a):重量平均分子量Mwa(1×104≦Mwa≦3×106)、融解温度Tmaを有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物と、
組成物(b):重量平均分子量Mwb(1×104≦Mwb≦1×107)、融解温度Tmb(ここで、Tmb≧Tma+5℃)を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物を、
混合して得られるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)であり、
組成物(ab)の任意のTe(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)に関する。
【0019】
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15である。
【0020】
その好ましい実施態様としては、組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)である上記組成物、さらには、組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)で、その共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート):ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=99〜80:1〜20(mol%)であり、かつ、組成物(b)がポリ(3−ヒドロキシブチレート)である上記組成物、あるいは、組成物(a)及び組成物(b)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)であり、組成物(a)の共重合成分の組成比が、3−ヒドロキシブチレート:3−ヒドロキシヘキサノエート=99〜80:1〜20(mol%)で、かつ、組成物(b)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比が組成物(a)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比よりも小さいことを特徴とする上記組成物に関する。また別の好ましい実施態様としては、組成物(ab)における組成物(a)と組成物(b)の混合比が(a):(b)=70:30〜99.9:0.1である上記組成物に関する。
【0021】
本発明の第2は、組成物(a)と組成物(b)を加熱溶融して混合する方法、可溶溶媒を用いて溶媒中で混合する方法、組成物(a)培養後の精製段階で得られるスラリー中で組成物(b)を混合する方法、及び組成物(a)の培養中に組成を変化させ組成物(b)を作成し混合する方法からなる群より選択される少なくとも1種以上の上記組成物(ab)の製造方法に関する。
【0022】
【発明の実施形態】
本発明のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物は、式(1)で示される3−ヒドロキシアルカノエートよりなる繰り返し構造を有する脂肪族ポリエステルである、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)からなる組成物である。
【0023】
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15である。
【0024】
本発明におけるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(a)及び(b)としては、上記3−ヒドロキシアルカノエートのホモポリマーまたは2種以上の組み合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられ、なかでもn=1の3−ヒドロキシブチレート、n=2の3−ヒドロキシバリレート、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエート、n=5の3−ヒドロキシオクタノエート、n=15の3−ヒドロキシオクタデカノエートなどのホモポリマー、またはこれら3−ヒドロキシアルカノエート単位2種以上の組合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、またはこれらのブレンド物が、好ましく使用できる。これらポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)は、化学合成して得られるものであっても良いが、天然物由来の生分解性プラスチック組成物という観点からは、微生物によって生産されるものが好ましい。
【0025】
本発明において、組成物(a)と組成物(b)のそれぞれに対応する融解温度Tma、Tmbの関係はTmb≧Tma+5℃を満たすものである。
【0026】
なかでも組成物(a)としては、n=1の3−ヒドロキシブチレートとn=3の3−ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)が好ましく、さらにその組成比としては、3−ヒドロキシブチレート:3−ヒドロキシヘキサノエート=99〜80:1〜20(mol%)であるのが好ましい。
【0027】
組成物(b)としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、あるいは、3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比が、組成物(a)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比よりも小さいポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。
【0028】
本発明における組成物(ab)は、上記組成物(a)と組成物(b)よりなる混合物である。組成物(ab)における組成物(a)と組成物(b)の混合比は、70:30〜99.9:0.1の範囲であるのが好ましい。
【0029】
本発明において、組成物(a)、組成物(b)の融解温度は、示差走査熱量計(以下、DSCと記す)を用いて、樹脂1〜10mgを10℃/分の昇温速度で、30℃から樹脂が十分に融解する想定融解温度以上まで昇温し、ついで10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、再度10℃/分の昇温速度で、樹脂が十分に融解する樹脂の想定融解温度+50〜60℃まで昇温した時の吸熱曲線のピークトップ温度である。本発明に使用される組成物(a)、組成物(b)は、再度昇温した時の吸熱曲線ピークが、単一又は複数のピークを示す。ピークが複数の場合、高温側のピークトップ温度を融解温度とする。前述したように組成物(a)、組成物(b)のそれぞれに対応する融解温度Tma、Tmbの関係はTmb≧Tma+5℃を満たすもの、つまり融解温度差が5℃以上あるものである。この融解温度差は好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。ポリヒドロキシアルカノエートの熱分解は、加熱温度が高温であるほど、加熱時間が長時間になるほど激しくなるため、TmaとTmbの温度差が大きいほど、組成物(ab)の溶融加工時に低融解温度であるTma側に近い温度での加工が可能となり、加工時の分子量低下の影響を回避できる。
【0030】
本発明の最も重要な点は、組成物(a)、組成物(b)を混合した組成物(ab)の任意の温度Te(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有することである。ここでいうηa及びηabは、同条件の加工・熱履歴を経た状態で比較される。すなわち、組成物(ab)を得るにあたって、組成物(a)と組成物(b)を溶融混練した場合には、同条件で別途組成物(a)を溶融混練した後に組成物(a)のηaを測定し、組成物(ab)のηabと比較する。本発明において、ηa<ηabの関係式を持たすということは、組成物(a)をある温度で溶融させた場合の溶融粘度に対して、組成物(ab)の同温度での溶融粘度が増大していることを示す。これは組成物(a)に対して、組成物(b)が作用を及ぼすかどうかの指標であり、組成物(b)の組成物(a)中での分散性が向上することや、組成物(a)と組成物(b)の界面融着性、組成物(a)と組成物(b)を加熱混合、冷却した後の結晶成長機構等により変化すると考えられ、増粘した場合は溶融強度の増大や結晶化速度の向上が認められるようになる。
【0031】
組成物(a)と組成物(b)の重量平均分子量は、それぞれ、1×104≦Mwa≦3×106、1×104≦Mwb≦1×107である。それぞれの分子量が1×104より小さい場合は、組成物(ab)の溶融強度に劣り、押出加工時のラインスピード改善効果などが得られない。また、Mwa>3×106あるいはMwb>1×107の場合は溶融粘度が高すぎて押出機に負荷がかかる場合があり、またその様な樹脂を培養生産すること自体生産性が悪く、得られる樹脂が高価格となるため好ましくない。ただし、組成物の分子量が高すぎる場合でも、加熱温度と時間を適宜調整することによって、適当な分子量に調整することが可能である。例えば、加熱温度、時間、剪断速度が一定の場合、ポリヒドロキシアルカノエートの分子量低下率は再現できるので、組成物(a)あるいは組成物(b)の分子量が高すぎる場合には、溶融混練時に温度条件などを適宜設定することによって、その分子量を適切な範囲まで低下させたのちに(あるいは低下させつつ)混合、溶融することもできる。
【0032】
本発明における組成物(ab)中の組成物(a)と組成物(b)の混合比は重量%で、(a):(b)=70:30〜99.9:0.1の範囲であるのが好ましく、より好ましくは80:20〜99.5:0.5、さらに好ましくは90:10〜99:1である。組成物(ab)中の組成物(b)の割合が0.1重量%よりも少ない場合には、溶融粘度増大や結晶化速度の向上効果が不十分となる傾向があり、30重量%よりも多い場合には、溶融加工温度が組成物(b)の影響を受け高温となるため、組成物(a)成分が熱分解し易くなる。
【0033】
また、本発明の組成物(a)、組成物(b)、組成物(ab)には、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)以外の、公知の添加剤として、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン樹脂やポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂等汎用プラスチックやポリ乳酸系樹脂、その他、脂肪族ポリエステル系樹脂等他の生分解性樹脂において、増粘剤や結晶核剤として効果を示すものを本発明と併用しても良い。例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、架橋高分子ポリスチレン、ロジン系金属塩や、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛、ケナフ繊維、竹繊維、パルプ繊維等の有機繊維が挙げられる。上記添加剤は、1種あるいは2種以上用いても構わない。
【0034】
本発明の組成物(a)と組成物(b)の混合方式は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて用いればよい。例えば、加熱溶融して混合する方法としては単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ギアポンプ、混練ロール、撹拌機を持つタンクなどの機械的撹拌により混合してもよく、流れの案内装置により分流と合流を繰り返す静止混合器を応用してもよい。加熱溶融の場合、熱分解による分子量低下に注意して混合する必要がある。また、可溶溶媒中に組成物(a)と組成物(b)を溶解して、混合してもよく、その場合、室温に放置するなどして、溶媒を除去し、本発明の樹脂組成物を得る。この場合の可溶溶媒とは、主に組成物(a)及び組成物(b)に対する可溶な溶媒であり、例えば、クロロホルムや酢酸エチルなどが挙げられる。また、組成物(a)の精製段階において得られるスラリーに組成物(b)を添加してもよく、例えば、組成物(a)の精製段階の内、メタノール洗浄を行う工程中に組成物(b)を添加する例などが挙げられる。また、組成物(a)の培養中に培養条件を変化させ、組成物(b)を作成しそのまま組成物(ab)を得る方法もある。培養、精製終了後は、遠心分離工程などを経て、液体分と樹脂固形分とを分離し、減圧乾燥後、本発明の樹脂組成物を得る。
【0035】
本発明において加熱溶融して混合物を得る方法として、場合によっては、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤を使用することで、組成物(ab)を得るための組成物(a)と組成物(b)の溶融混合時の溶融温度を低下、分子量の低下を抑制することが可能であり、場合によっては結晶化速度の向上も期待できる。ここで、本発明の要件である溶融粘度の関係は可塑剤が混合されたために変化するが、基本的性質は変化しない。つまり、溶融温度Teでの可塑剤を使用した場合の組成物(a)の溶融粘度ηap、可塑剤を使用した場合の組成物(ab)の溶融粘度ηabpがηap<ηabpであればよい。
【0036】
可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤などが好ましく、ポリエステルとの相溶性に優れる点からエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。エーテル系可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。また、エステル系可塑剤としては脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、1 、2−プロピレングリコール、1 、3−プロピレングリコール、1 、3−ブタンジオール、1 、5−ペンタンジオール、1 、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール、また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。また、上記ポリエーテルとポリエステルの2種以上の組み合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらのホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられる。更にエステル化されたヒドロキシカルボン酸等も考えられる。上記可塑剤は、1種あるいは2種以上用いても構わないし、これに限定される物でもない。
【0037】
可塑剤を用いる他の効果としては、組成物(ab)の最大結晶化温度を、より低温側にシフトさせることが可能である。組成物(ab)の加熱溶融加工時の最大結晶化温度が室温よりも高温な場合等に、可塑剤を添加することで、最大結晶化温度を室温付近に調整するなどすれば、加熱結晶化養生など他の工程を簡略化できる効果もある。また、組成物(ab)による成形品に関して、適度な剛性を維持したまま脆さを改善する可能性がある。
【0038】
また、可塑剤の添加量は、組成物(a)100重量部に対し、0.1〜50重量部であるのが好ましい。添加量が0.1重量部よりも少ない場合には、可塑化効果が得られにくくなり、50重量部よりも多い場合には、溶融粘度の著しい低下が見られ、溶融強度が大きく低下するので、本発明の増粘効果を相殺する可能性がある。
【0039】
また、押出機を使用して組成物(a)と組成物(b)を溶融混合し、組成物(ab)としてペレット化する場合には、冷却側に水槽を用い、結晶化速度を向上させるために、組成物(ab)の最大結晶化温度近辺の温度を調整することが好ましい。カッティングは、アンダーウオーターカットや、空中ストランドカッティング方式など、公知の方法を用いることができる。混合温度は、特に限定されないが、通常Tma以上の温度で実施される。ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)の融解温度以上の温度に加熱した場合、熱分解により分子量が低下するが、溶融温度、滞留時間等の条件を適切に選択して、分子量低下を最小限に抑えたり、
分子量が高すぎる場合などは加熱により分子量を適当な範囲まで調整をすることが可能である。
【0040】
また、本発明の組成物(ab)には、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、無機系または有機系粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明の組成物(ab)は、各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体などの成形性を改善できる。この様にして得られた成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、その他の分野に好適に用いることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明の組成物(ab)およびその製造方法について実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。実施例で使用した樹脂とその略称は以下の通りである。
【0043】
PHBH:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)
PHB:ポリ(3−ヒドロキシブチレート)
実施例で実施した評価方法は以下の通りである。
【0044】
(1)融解温度(Tm)
セイコー電子工業DSC200を用いて、組成物(a)、組成物(b)について各々1〜10mg、10℃/分の昇温速度で、30℃から樹脂が十分に融解する想定融解温度+約20℃(今回、PHBHの場合は140℃、PHBの場合は200℃)まで昇温し、ついで10℃/分の降温速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で、樹脂が十分に融解する樹脂の想定融解温度+約50℃(PHBHの場合は170℃、PHBの場合は230℃)まで昇温し、この時の樹脂の融解に伴う吸熱曲線ピークを融解温度Tma、Tmbとした。尚、本実施例に使用する組成物(a)及び組成物(b)の場合、再度昇温した時の吸熱曲線ピークは、単一又は複数のピークを示し、複数の場合、各々の樹脂について高温側のピークトップ温度を融解温度Tma、Tmbとした。
【0045】
(2)DSC吸熱ピークの高温側への伸び
組成物(ab)について(1)と同様の方法にて昇温時の吸熱ピークを測定し、組成物(a)に由来するTma吸熱ピークの幅が高温側に伸びているかどうかを調べた。
【0046】
Y:伸びている
N:伸びていない
(3)溶融粘度
組成物(a)、及び組成物(ab)について、キャピログラフ(東洋精機製作所製)を用い、1mmφ×10mmのダイスを使用して、上記(1)で測定したTmaを元に、Tma以上の温度Teで溶融させ、剪断速度122sec−1にて、組成物を溶融押出し、各々の溶融粘度ηa、ηabを測定した。
【0047】
粘度判定
○:ηa<ηab
×:ηa≧ηab
(4)溶融強度
組成物(ab)について、上記(2)の測定時に得られた押出ストランドを、ダイス出口からの位置が60cmの位置に設置された引取装置により引き取った。その際、ダイス口での見掛け線速は0.9m/minであり、溶融強度を引取速度によって評価した。
【0048】
◎:2.0m/minでストランドが切れず、引き取ることが可能
○:1.0m/minでストランドが切れず、引き取ることが可能
×:1.0m/minでストランドが切れる
(5)結晶化時間
組成物(ab)について、上記(2)の測定時に得られた押出ストランドをダイスを出て直ぐに60℃の湯浴を通し、表面の粘着性が、ダイスを出てから喪失するまでの時間を結晶固化時間とし、結晶固化性の評価をした。
【0049】
◎:固化時間が10sec以下
○:固化時間が10〜60sec
×:固化時間が60sec以上
(6)押出成形性
組成物(ab)について、ラボ万能押出機(φ35ニーダールーダー(KR−35):株式会社笠松化工研究所製)を使用し、φ3mmのダイス3孔を取り付け、所定の温度で溶融、ストランドを作成し、60℃に温調した3m長の水槽を通し、ペレタイザーを通してペレット化を実施した。
【0050】
○:ストランドは切れず、ペレット同士の粘着もない
×:ストランドが切れる、若しくはペレット同士が粘着して加工できない。
(実施例1)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度160℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab1)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表1に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a1)と比較して、ηa1<ηab1であった。また、組成物(ab1)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びていなかったが、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab1)を得ることができた。
【0051】
【表1】
(実施例2)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab2)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表2に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a2)と比較して、ηa2<ηab2であった。また、組成物(ab2)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びており、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab2)を得ることができた。
【0052】
【表2】
(実施例3)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)0.5重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab3)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表3に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a3)と比較して、ηa3<ηab3であった。また、組成物(ab3)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びていなかったが、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab3)を得ることができた。
【0053】
【表3】
(実施例4)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で30分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab4)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表4に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a4)と比較して、ηa4<ηab4であった。また、組成物(ab4)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びており、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab4)を得ることができた。
【0054】
【表4】
(比較例1)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度120℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab5)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表5に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a5)と比較して、ηa5≧ηab5であった。また、組成物(ab5)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びておらず、実施例と比較して溶融強度、結晶化時間に劣った組成物(ab5)となった。
【0055】
【表5】
(比較例2)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度120℃の条件下で30分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab6)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表6に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a6)と比較して、ηa6≧ηab6であった。また、組成物(ab6)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びておらず、実施例と比較して溶融強度、結晶化時間に劣った組成物(ab6)となった。
【0056】
【表6】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(組成物(a))の溶融粘度を、高融解温度のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(組成物(b))を添加することにより増大させることで、溶融物の溶融強度をあげ、また結晶化速度も向上させることで、溶融押出成形、溶融フィルム成形、溶融紡糸などの成形方法利用の際に、融着防止、ラインスピード向上など、成形性が改善され、また、廃棄処分手段としての生分解も可能で、焼却した場合には炉内残存物がないなど、廃棄処分がしやすい環境適合性に優れたポリヒドロキシアルカノエート組成物が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有するポリエステル系樹脂組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、廃棄時に好気性、嫌気性環境下での生分解性に優れ、焼却処理したとしても発熱量が少なく、微生物が生産した天然のポリヒドロキシアルカノエートを使用し、地球環境に優しい、溶融粘度特性および結晶化速度の改善された組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチックは加工や使用しやすさや、再利用の困難さ、衛生上問題などから使い捨てされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされており、ゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックスが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている。近年、プラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。一般的に生分解性プラスチックは、▲1▼ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)等のポリヒドロキシアルカノエートといった微生物生産系脂肪族ポリエステル、▲2▼ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、▲3▼澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルのなかでもポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題があり、また、天然高分子物は非熱可塑性であることや耐水性に劣るといった問題がある。
【0003】
一方、ポリヒドロキシアルカノエートは好気性、嫌気性下での分解性に優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、植物原料を使用した微生物に由来するプラスチックで高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素を増大させない、カーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。特に嫌気性下で分解する性質や、高分子量化が可能で有る点は特筆すべき性能である。該ヒドロキシアルカノエートは脂肪族ポリエステルに分類されるが、先に述べた化学合成系の脂肪族ポリエステルとは、ポリマーの性質が大きく異なる。
【0004】
この様にポリヒドロキシアルカノエートは、天然成分からなり、廃棄物の問題が解決され、環境適合性に優れるため、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、吸着・担体・濾過材等に応用可能な成形体が望まれている。
【0005】
しかしながら、ポリヒドロキシアルカノエートの加工上の問題として、加熱時の分解がある。ポリヒドロキシアルカノエートは、例えば、その融解温度以上の温度に十分加熱した場合、熱分解を生じ、特に融解温度より5℃以上の高温で加工する場合、加熱時間と共に大きく分子量が低下する。分子量が低くなるとその弊害として、押出加工時のドローダウン性に劣り、加工性が悪化する。その一例としては、微生物体内から抽出して得られた粉体状のポリヒドロキシアルカノエートをペレット化する場合に、融解温度以上の温度で溶融すると、溶融ストランドの溶融強度が乏しく、ストランドが切れ易く連続的に生産するのが困難である。また、一般的な中空容器の製造法、押出しブロー成形時にも溶融強度が乏しいと押出しブロー成形中に垂れ落ちやすいといったことが予測され、押出しブロー成形も困難であることが予想される。このような融解温度よりも十分高温な温度での押出成形には高い溶融強度を有する樹脂が必要とされている。
【0006】
一般的に樹脂の溶融強度を改善するためには、樹脂を高粘度化することが有効であり、そのための方法として、化学的架橋性を有する物質の添加や、無機物の添加等は良く知られている。脂肪族ポリエステルに化学的架橋性を有する物質を適用する例としては、イソシアネート化合物等(特許文献1〜3)の添加が代表的である。但し、この様な例は、化学合成系の脂肪族ポリエステルでよく実施されているものの、ポリヒドロキシアルカノエートに適用する場合、本来の天然物由来という意義が薄れるため好ましくないと考えられる。また、無機物添加の例としては、例えば脂肪族ポリエステルとポリカプロラクトンの混合物に無機充填剤(タルク)等を混合し、溶融強度を増大させ、溶融成形時の加工性を向上させる(特許文献4、5)といったものや、分散しにくいフィラーを分散させるために脂肪族ポリエステル中にスルホン酸金属塩を共重合させる方法等(特許文献6)が知られている。しかしながら、特許文献4、5記載の方法では、場合によって樹脂同士に相溶性が無く、相溶化剤の必要性や、透明性に問題があり、無機物の添加量も樹脂100部に対して約100〜900部と多量のため、生分解後の残存物が多量になることや、焼却処理をした場合にも炉内に多量の無機残存物が発生するという問題がある。また、特許文献6に記載の方法では確かに微量の添加剤の分散性が向上し、種々の特性が期待できるが、工程が増加することや、もしポリヒドロキシアルカノエートに何らかのセグメントを化学的に共重合させると、本来の天然物由来という利点を喪失し好ましくない。
【0007】
また、ポリヒドロキシアルカノエートの溶融加工時の溶融強度に関する別の問題として、融解温度より十分高い温度で溶融した場合の結晶化速度の遅さがある。結晶化速度が遅いとやはり溶融押出後の溶融強度、ドローダウン性に劣り溶融押出加工が困難となる。結晶化速度改善に関しては、種々検討がなされている。ある溶融加工法としては、高融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA−X)と低融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエート(PHA−Y)を混合し、各々の融解温度の間の温度で加工する方法が提案されている(特許文献7)。しかしながら本発明者らが、高融解温度成分としてポリ(3−ヒドロキシブチレート)(融解温度:176℃)、低融解温度成分としてヘキサノエート成分が11%のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(融解温度:115℃)を120℃で溶融混合してこの加工法を追試した結果、必ずしもこの方法で得られる組成物結晶化速度は改善された物ではなかった。例えばこの方法で得られた組成物を押出機で溶融し、溶融ストランドからペレット化を実施する際、やや結晶化速度の早い押出溶融物は得られるが、結晶化にムラがあり、溶融強度もないため非常に切れやすく引取速度が非常に限定され、実用的でないという問題がある。また、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)を用いた他の例として、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)など、より高い融解温度を有するポリヒドロキシアルカノエートを添加して微分散させた組成物を得ることで、結晶化速度が速くなることが提案されている(特許文献8)。この組成物は高融解温度成分が微分散することが特徴であり、微分散している場合は、DSCで組成物の昇温曲線を得た場合に、本来のポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)の吸熱ピークの幅が高温側に伸びることで証明されるとしている。しかし、その後、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)のDSC曲線が高温側に伸びることと、組成物の結晶化が早くなることとは必ずしも相関しない場合があることが本発明者らの検討に依って明らかになり、また該文献には、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)組成物の溶融物の溶融強度を向上させる方法については開示されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−295098号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平7−149862号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平10−46013号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2001−172487号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平11−349795号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2001−323052号公報
【0014】
【特許文献7】
特表平8−510498号公報
【0015】
【特許文献8】
WO 02/50156 A2
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、特に、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)樹脂の溶融粘度を増大させ、溶融物の溶融強度を向上させ、さらに結晶化速度も向上させることのできる効率的な方法は未だ確立されていない。本発明は、これら問題を解決し、溶融押出成形、溶融フィルム成形、溶融紡糸などの成形方法利用の際に、融着防止、ラインスピード向上など、成形性が改善され、また、廃棄処分手段としての生分解も可能で、焼却した場合には炉内残存物がないなど、廃棄処分がしやすい環境適合性に優れたポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、低融解温度を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(以下、組成物(a)という)と高融解温度を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(以下、組成物(b)という)を混合した組成物(ab)の溶融粘度が、特定の溶融温度範囲での組成物(a)の溶融粘度よりも高粘度で有る場合、溶融加工時の成形性が向上し、また結晶化速度も向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明の第一は、式(1)で示されるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物であって、
組成物(a):重量平均分子量Mwa(1×104≦Mwa≦3×106)、融解温度Tmaを有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物と、
組成物(b):重量平均分子量Mwb(1×104≦Mwb≦1×107)、融解温度Tmb(ここで、Tmb≧Tma+5℃)を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物を、
混合して得られるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)であり、
組成物(ab)の任意のTe(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)に関する。
【0019】
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15である。
【0020】
その好ましい実施態様としては、組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)である上記組成物、さらには、組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)で、その共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート):ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=99〜80:1〜20(mol%)であり、かつ、組成物(b)がポリ(3−ヒドロキシブチレート)である上記組成物、あるいは、組成物(a)及び組成物(b)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)であり、組成物(a)の共重合成分の組成比が、3−ヒドロキシブチレート:3−ヒドロキシヘキサノエート=99〜80:1〜20(mol%)で、かつ、組成物(b)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比が組成物(a)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比よりも小さいことを特徴とする上記組成物に関する。また別の好ましい実施態様としては、組成物(ab)における組成物(a)と組成物(b)の混合比が(a):(b)=70:30〜99.9:0.1である上記組成物に関する。
【0021】
本発明の第2は、組成物(a)と組成物(b)を加熱溶融して混合する方法、可溶溶媒を用いて溶媒中で混合する方法、組成物(a)培養後の精製段階で得られるスラリー中で組成物(b)を混合する方法、及び組成物(a)の培養中に組成を変化させ組成物(b)を作成し混合する方法からなる群より選択される少なくとも1種以上の上記組成物(ab)の製造方法に関する。
【0022】
【発明の実施形態】
本発明のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物は、式(1)で示される3−ヒドロキシアルカノエートよりなる繰り返し構造を有する脂肪族ポリエステルである、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)からなる組成物である。
【0023】
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15である。
【0024】
本発明におけるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(a)及び(b)としては、上記3−ヒドロキシアルカノエートのホモポリマーまたは2種以上の組み合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられ、なかでもn=1の3−ヒドロキシブチレート、n=2の3−ヒドロキシバリレート、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエート、n=5の3−ヒドロキシオクタノエート、n=15の3−ヒドロキシオクタデカノエートなどのホモポリマー、またはこれら3−ヒドロキシアルカノエート単位2種以上の組合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、またはこれらのブレンド物が、好ましく使用できる。これらポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)は、化学合成して得られるものであっても良いが、天然物由来の生分解性プラスチック組成物という観点からは、微生物によって生産されるものが好ましい。
【0025】
本発明において、組成物(a)と組成物(b)のそれぞれに対応する融解温度Tma、Tmbの関係はTmb≧Tma+5℃を満たすものである。
【0026】
なかでも組成物(a)としては、n=1の3−ヒドロキシブチレートとn=3の3−ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)が好ましく、さらにその組成比としては、3−ヒドロキシブチレート:3−ヒドロキシヘキサノエート=99〜80:1〜20(mol%)であるのが好ましい。
【0027】
組成物(b)としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、あるいは、3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比が、組成物(a)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比よりも小さいポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。
【0028】
本発明における組成物(ab)は、上記組成物(a)と組成物(b)よりなる混合物である。組成物(ab)における組成物(a)と組成物(b)の混合比は、70:30〜99.9:0.1の範囲であるのが好ましい。
【0029】
本発明において、組成物(a)、組成物(b)の融解温度は、示差走査熱量計(以下、DSCと記す)を用いて、樹脂1〜10mgを10℃/分の昇温速度で、30℃から樹脂が十分に融解する想定融解温度以上まで昇温し、ついで10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、再度10℃/分の昇温速度で、樹脂が十分に融解する樹脂の想定融解温度+50〜60℃まで昇温した時の吸熱曲線のピークトップ温度である。本発明に使用される組成物(a)、組成物(b)は、再度昇温した時の吸熱曲線ピークが、単一又は複数のピークを示す。ピークが複数の場合、高温側のピークトップ温度を融解温度とする。前述したように組成物(a)、組成物(b)のそれぞれに対応する融解温度Tma、Tmbの関係はTmb≧Tma+5℃を満たすもの、つまり融解温度差が5℃以上あるものである。この融解温度差は好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。ポリヒドロキシアルカノエートの熱分解は、加熱温度が高温であるほど、加熱時間が長時間になるほど激しくなるため、TmaとTmbの温度差が大きいほど、組成物(ab)の溶融加工時に低融解温度であるTma側に近い温度での加工が可能となり、加工時の分子量低下の影響を回避できる。
【0030】
本発明の最も重要な点は、組成物(a)、組成物(b)を混合した組成物(ab)の任意の温度Te(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有することである。ここでいうηa及びηabは、同条件の加工・熱履歴を経た状態で比較される。すなわち、組成物(ab)を得るにあたって、組成物(a)と組成物(b)を溶融混練した場合には、同条件で別途組成物(a)を溶融混練した後に組成物(a)のηaを測定し、組成物(ab)のηabと比較する。本発明において、ηa<ηabの関係式を持たすということは、組成物(a)をある温度で溶融させた場合の溶融粘度に対して、組成物(ab)の同温度での溶融粘度が増大していることを示す。これは組成物(a)に対して、組成物(b)が作用を及ぼすかどうかの指標であり、組成物(b)の組成物(a)中での分散性が向上することや、組成物(a)と組成物(b)の界面融着性、組成物(a)と組成物(b)を加熱混合、冷却した後の結晶成長機構等により変化すると考えられ、増粘した場合は溶融強度の増大や結晶化速度の向上が認められるようになる。
【0031】
組成物(a)と組成物(b)の重量平均分子量は、それぞれ、1×104≦Mwa≦3×106、1×104≦Mwb≦1×107である。それぞれの分子量が1×104より小さい場合は、組成物(ab)の溶融強度に劣り、押出加工時のラインスピード改善効果などが得られない。また、Mwa>3×106あるいはMwb>1×107の場合は溶融粘度が高すぎて押出機に負荷がかかる場合があり、またその様な樹脂を培養生産すること自体生産性が悪く、得られる樹脂が高価格となるため好ましくない。ただし、組成物の分子量が高すぎる場合でも、加熱温度と時間を適宜調整することによって、適当な分子量に調整することが可能である。例えば、加熱温度、時間、剪断速度が一定の場合、ポリヒドロキシアルカノエートの分子量低下率は再現できるので、組成物(a)あるいは組成物(b)の分子量が高すぎる場合には、溶融混練時に温度条件などを適宜設定することによって、その分子量を適切な範囲まで低下させたのちに(あるいは低下させつつ)混合、溶融することもできる。
【0032】
本発明における組成物(ab)中の組成物(a)と組成物(b)の混合比は重量%で、(a):(b)=70:30〜99.9:0.1の範囲であるのが好ましく、より好ましくは80:20〜99.5:0.5、さらに好ましくは90:10〜99:1である。組成物(ab)中の組成物(b)の割合が0.1重量%よりも少ない場合には、溶融粘度増大や結晶化速度の向上効果が不十分となる傾向があり、30重量%よりも多い場合には、溶融加工温度が組成物(b)の影響を受け高温となるため、組成物(a)成分が熱分解し易くなる。
【0033】
また、本発明の組成物(a)、組成物(b)、組成物(ab)には、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)以外の、公知の添加剤として、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン樹脂やポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂等汎用プラスチックやポリ乳酸系樹脂、その他、脂肪族ポリエステル系樹脂等他の生分解性樹脂において、増粘剤や結晶核剤として効果を示すものを本発明と併用しても良い。例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化ケイ素及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素、架橋高分子ポリスチレン、ロジン系金属塩や、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維等の無機繊維や、人毛、羊毛、ケナフ繊維、竹繊維、パルプ繊維等の有機繊維が挙げられる。上記添加剤は、1種あるいは2種以上用いても構わない。
【0034】
本発明の組成物(a)と組成物(b)の混合方式は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて用いればよい。例えば、加熱溶融して混合する方法としては単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ギアポンプ、混練ロール、撹拌機を持つタンクなどの機械的撹拌により混合してもよく、流れの案内装置により分流と合流を繰り返す静止混合器を応用してもよい。加熱溶融の場合、熱分解による分子量低下に注意して混合する必要がある。また、可溶溶媒中に組成物(a)と組成物(b)を溶解して、混合してもよく、その場合、室温に放置するなどして、溶媒を除去し、本発明の樹脂組成物を得る。この場合の可溶溶媒とは、主に組成物(a)及び組成物(b)に対する可溶な溶媒であり、例えば、クロロホルムや酢酸エチルなどが挙げられる。また、組成物(a)の精製段階において得られるスラリーに組成物(b)を添加してもよく、例えば、組成物(a)の精製段階の内、メタノール洗浄を行う工程中に組成物(b)を添加する例などが挙げられる。また、組成物(a)の培養中に培養条件を変化させ、組成物(b)を作成しそのまま組成物(ab)を得る方法もある。培養、精製終了後は、遠心分離工程などを経て、液体分と樹脂固形分とを分離し、減圧乾燥後、本発明の樹脂組成物を得る。
【0035】
本発明において加熱溶融して混合物を得る方法として、場合によっては、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤を使用することで、組成物(ab)を得るための組成物(a)と組成物(b)の溶融混合時の溶融温度を低下、分子量の低下を抑制することが可能であり、場合によっては結晶化速度の向上も期待できる。ここで、本発明の要件である溶融粘度の関係は可塑剤が混合されたために変化するが、基本的性質は変化しない。つまり、溶融温度Teでの可塑剤を使用した場合の組成物(a)の溶融粘度ηap、可塑剤を使用した場合の組成物(ab)の溶融粘度ηabpがηap<ηabpであればよい。
【0036】
可塑剤としては、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン系可塑剤などが好ましく、ポリエステルとの相溶性に優れる点からエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤がより好ましい。エーテル系可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。また、エステル系可塑剤としては脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル類等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸として、例えばシュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等を挙げることができ、脂肪族アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ドデカノール、ステアリルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、1 、2−プロピレングリコール、1 、3−プロピレングリコール、1 、3−ブタンジオール、1 、5−ペンタンジオール、1 、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール、また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多価アルコールを挙げることができる。また、上記ポリエーテルとポリエステルの2種以上の組み合わせからなる共重合体、ジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらのホモポリマー、コポリマー等から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられる。更にエステル化されたヒドロキシカルボン酸等も考えられる。上記可塑剤は、1種あるいは2種以上用いても構わないし、これに限定される物でもない。
【0037】
可塑剤を用いる他の効果としては、組成物(ab)の最大結晶化温度を、より低温側にシフトさせることが可能である。組成物(ab)の加熱溶融加工時の最大結晶化温度が室温よりも高温な場合等に、可塑剤を添加することで、最大結晶化温度を室温付近に調整するなどすれば、加熱結晶化養生など他の工程を簡略化できる効果もある。また、組成物(ab)による成形品に関して、適度な剛性を維持したまま脆さを改善する可能性がある。
【0038】
また、可塑剤の添加量は、組成物(a)100重量部に対し、0.1〜50重量部であるのが好ましい。添加量が0.1重量部よりも少ない場合には、可塑化効果が得られにくくなり、50重量部よりも多い場合には、溶融粘度の著しい低下が見られ、溶融強度が大きく低下するので、本発明の増粘効果を相殺する可能性がある。
【0039】
また、押出機を使用して組成物(a)と組成物(b)を溶融混合し、組成物(ab)としてペレット化する場合には、冷却側に水槽を用い、結晶化速度を向上させるために、組成物(ab)の最大結晶化温度近辺の温度を調整することが好ましい。カッティングは、アンダーウオーターカットや、空中ストランドカッティング方式など、公知の方法を用いることができる。混合温度は、特に限定されないが、通常Tma以上の温度で実施される。ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)の融解温度以上の温度に加熱した場合、熱分解により分子量が低下するが、溶融温度、滞留時間等の条件を適切に選択して、分子量低下を最小限に抑えたり、
分子量が高すぎる場合などは加熱により分子量を適当な範囲まで調整をすることが可能である。
【0040】
また、本発明の組成物(ab)には、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、無機系または有機系粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を配合することができる。
【0041】
本発明の組成物(ab)は、各種繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体などの成形性を改善できる。この様にして得られた成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、その他の分野に好適に用いることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明の組成物(ab)およびその製造方法について実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。実施例で使用した樹脂とその略称は以下の通りである。
【0043】
PHBH:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)
PHB:ポリ(3−ヒドロキシブチレート)
実施例で実施した評価方法は以下の通りである。
【0044】
(1)融解温度(Tm)
セイコー電子工業DSC200を用いて、組成物(a)、組成物(b)について各々1〜10mg、10℃/分の昇温速度で、30℃から樹脂が十分に融解する想定融解温度+約20℃(今回、PHBHの場合は140℃、PHBの場合は200℃)まで昇温し、ついで10℃/分の降温速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で、樹脂が十分に融解する樹脂の想定融解温度+約50℃(PHBHの場合は170℃、PHBの場合は230℃)まで昇温し、この時の樹脂の融解に伴う吸熱曲線ピークを融解温度Tma、Tmbとした。尚、本実施例に使用する組成物(a)及び組成物(b)の場合、再度昇温した時の吸熱曲線ピークは、単一又は複数のピークを示し、複数の場合、各々の樹脂について高温側のピークトップ温度を融解温度Tma、Tmbとした。
【0045】
(2)DSC吸熱ピークの高温側への伸び
組成物(ab)について(1)と同様の方法にて昇温時の吸熱ピークを測定し、組成物(a)に由来するTma吸熱ピークの幅が高温側に伸びているかどうかを調べた。
【0046】
Y:伸びている
N:伸びていない
(3)溶融粘度
組成物(a)、及び組成物(ab)について、キャピログラフ(東洋精機製作所製)を用い、1mmφ×10mmのダイスを使用して、上記(1)で測定したTmaを元に、Tma以上の温度Teで溶融させ、剪断速度122sec−1にて、組成物を溶融押出し、各々の溶融粘度ηa、ηabを測定した。
【0047】
粘度判定
○:ηa<ηab
×:ηa≧ηab
(4)溶融強度
組成物(ab)について、上記(2)の測定時に得られた押出ストランドを、ダイス出口からの位置が60cmの位置に設置された引取装置により引き取った。その際、ダイス口での見掛け線速は0.9m/minであり、溶融強度を引取速度によって評価した。
【0048】
◎:2.0m/minでストランドが切れず、引き取ることが可能
○:1.0m/minでストランドが切れず、引き取ることが可能
×:1.0m/minでストランドが切れる
(5)結晶化時間
組成物(ab)について、上記(2)の測定時に得られた押出ストランドをダイスを出て直ぐに60℃の湯浴を通し、表面の粘着性が、ダイスを出てから喪失するまでの時間を結晶固化時間とし、結晶固化性の評価をした。
【0049】
◎:固化時間が10sec以下
○:固化時間が10〜60sec
×:固化時間が60sec以上
(6)押出成形性
組成物(ab)について、ラボ万能押出機(φ35ニーダールーダー(KR−35):株式会社笠松化工研究所製)を使用し、φ3mmのダイス3孔を取り付け、所定の温度で溶融、ストランドを作成し、60℃に温調した3m長の水槽を通し、ペレタイザーを通してペレット化を実施した。
【0050】
○:ストランドは切れず、ペレット同士の粘着もない
×:ストランドが切れる、若しくはペレット同士が粘着して加工できない。
(実施例1)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度160℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab1)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表1に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a1)と比較して、ηa1<ηab1であった。また、組成物(ab1)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びていなかったが、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab1)を得ることができた。
【0051】
【表1】
(実施例2)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab2)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表2に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a2)と比較して、ηa2<ηab2であった。また、組成物(ab2)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びており、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab2)を得ることができた。
【0052】
【表2】
(実施例3)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)0.5重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab3)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表3に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a3)と比較して、ηa3<ηab3であった。また、組成物(ab3)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びていなかったが、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab3)を得ることができた。
【0053】
【表3】
(実施例4)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度190℃の条件下で30分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab4)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表4に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a4)と比較して、ηa4<ηab4であった。また、組成物(ab4)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びており、溶融強度、結晶化時間に優れた組成物(ab4)を得ることができた。
【0054】
【表4】
(比較例1)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度120℃の条件下で3分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab5)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表5に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a5)と比較して、ηa5≧ηab5であった。また、組成物(ab5)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びておらず、実施例と比較して溶融強度、結晶化時間に劣った組成物(ab5)となった。
【0055】
【表5】
(比較例2)
組成物(a):PHBH樹脂(3HB/3HH=88.3 /11.7(mol%)、Mwa=112万、Tma=115℃)100重量部に対して、組成物(b):PHB粉末(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Mwb=60万、Tmb=175℃)3重量部をドライブレンドした後、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて、15rpm、ヒーター温度120℃の条件下で30分間溶融混練し、餅状の組成物を得た。得られた組成物(ab6)を裁断し、チップ化し、その融解温度を測定した後、キャピログラフにてTeでの溶融粘度、溶融強度、結晶化時間を測定した。結果を表6に示す。組成物(b)無しに、同温度、同回転数、同時間、プラストミルで混練した組成物(a6)と比較して、ηa6≧ηab6であった。また、組成物(ab6)のDSC測定においてTmaは高温側に伸びておらず、実施例と比較して溶融強度、結晶化時間に劣った組成物(ab6)となった。
【0056】
【表6】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(組成物(a))の溶融粘度を、高融解温度のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(組成物(b))を添加することにより増大させることで、溶融物の溶融強度をあげ、また結晶化速度も向上させることで、溶融押出成形、溶融フィルム成形、溶融紡糸などの成形方法利用の際に、融着防止、ラインスピード向上など、成形性が改善され、また、廃棄処分手段としての生分解も可能で、焼却した場合には炉内残存物がないなど、廃棄処分がしやすい環境適合性に優れたポリヒドロキシアルカノエート組成物が得られる。
Claims (6)
- 式(1)で示されるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物であって、
組成物(a):重量平均分子量Mwa(1×104≦Mwa≦3×106)、融解温度Tmaを有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物と、
組成物(b):重量平均分子量Mwb(1×104≦Mwb≦1×107)、融解温度Tmb(ここで、Tmb≧Tma+5℃)を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物を、
混合して得られるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)であり、
組成物(ab)の任意のTe(但しTma≦Te≦Tmb)での溶融粘度ηabが、組成物(a)のTeにおける溶融粘度ηaに対して、ηa<ηabの関係を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)組成物(ab)。
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15である。 - 組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)である、請求項1記載の組成物。
- 組成物(a)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)で、その共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート):ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=99〜80:1〜20(mol%)であり、かつ、組成物(b)がポリ(3−ヒドロキシブチレート)である請求項2記載の組成物。
- 組成物(a)及び組成物(b)が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)であり、組成物(a)の共重合成分の組成比が、3−ヒドロキシブチレート:3−ヒドロキシヘキサノエート=99〜80:1〜20(mol%)で、かつ、組成物(b)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比が組成物(a)の3−ヒドロキシヘキサノエート成分の組成比よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の組成物。
- 組成物(ab)における組成物(a)と組成物(b)の混合比が(a):(b)=70:30〜99.9:0.1である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 組成物(a)と組成物(b)を加熱溶融して混合する方法、可溶溶媒を用いて溶媒中で混合する方法、組成物(a)培養後の精製段階で得られるスラリー中で組成物(b)を混合する方法、及び組成物(a)の培養中に組成を変化させ組成物(b)を作成し混合する方法からなる群より選択される少なくとも1種以上の請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物(ab)の製造方法。
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