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JPWO2008018474A1 - ポリ乳酸およびその製造方法 - Google Patents

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JPWO2008018474A1 JP2008528840A JP2008528840A JPWO2008018474A1 JP WO2008018474 A1 JPWO2008018474 A1 JP WO2008018474A1 JP 2008528840 A JP2008528840 A JP 2008528840A JP 2008528840 A JP2008528840 A JP 2008528840A JP WO2008018474 A1 JPWO2008018474 A1 JP WO2008018474A1
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啓高 鈴木
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Abstract

本発明の目的は、高い融点および分子量を有し、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長するステレオコンプレックスポリ乳酸の製造方法を提供することにある。本発明は、(i)同じキラリティの乳酸単位からなる第一ラクチドを開環重合して第一ポリ乳酸を得る工程(1)、(ii)溶融状態の第一ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第一ポリ乳酸を得る工程(2)、(iii)精製第一ポリ乳酸の存在下で、第一ラクチドとキラリティの相違する第二ラクチドを開環重合して第二ポリ乳酸を得る工程(3)、(iv)溶融状態の第二ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第二ポリ乳酸を得る工程(4)を含むポリ乳酸の製造方法である。

Description

本発明は、ポリ乳酸およびその製造方法に関する。
石油由来のプラスチックの多くは軽く強靭であり耐久性に優れ、容易かつ任意に成形することが可能であり、量産されて我々の生活を多岐にわたって支えてきた。しかし、これらプラスチックは、環境中に廃棄された場合、容易に分解されずに蓄積する。また、焼却の際には大量の二酸化炭素を放出し、地球温暖化に拍車を掛けている。
かかる現状に鑑み、脱石油原料から成る樹脂、或いは微生物によって分解される生分解性プラスチックが盛んに研究されるようになってきた。現在、検討されているほとんどの生分解プラスチックは、脂肪族カルボン酸エステル単位を有し、微生物により分解され易い。その反面、熱安定性に乏しく、溶融紡糸、射出成形、溶融製膜などの高温に晒される成形工程における分子量低下、或いは色相悪化が深刻である。
その中でもポリ乳酸は、耐熱性に優れ、色相、機械強度のバランスが取れたプラスチックであるが、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表される石油化学系ポリエステルと比較すると耐熱性が低く、例えば、織物にした場合、アイロンが掛けられないといった課題を抱えている。
このような現状を打開すべく、ポリ乳酸の耐熱性向上について検討がなされてきた。そのひとつにステレオコンプレックスポリ乳酸が挙げられる。ステレオコンプレックスポリ乳酸とはステレオコンプレックス結晶を含むポリ乳酸であり、一般的なホモ結晶からなるポリ乳酸よりも30℃乃至50℃高い融点を示す。
しかしながら、ステレオコンプレックス結晶は常に現れるわけではなく、特に高分子量領域ではむしろホモ結晶が現れることが多い。また、ステレオコンプレックス結晶のみから成るステレオコンプレックスポリ乳酸であっても、再溶融の後、結晶化を行った場合、ホモ結晶が混在する場合がある。このような現象を改善すべく、ステレオコンプレックス結晶のみを成長させる結晶核剤について研究が行われている。
例えば特許文献1には、重量平均分子量(Mw)が約12万のポリL乳酸とポリD乳酸とのクロロホルム/ヘキサフルオロ−2−プロパノール溶液を、オキサミド誘導体の存在下で混合して得られた混合物は、DSC測定の結果、ステレオコンプレックス結晶のみから成るステレオコンプレックスポリ乳酸であることが示されている。
また特許文献2には、特許文献1と同様の方法で芳香族尿素系化合物を使用すると、ステレオコンプレックス結晶のみから成るステレオコンプレックスポリ乳酸が得られることを教示されている。
しかしながら、これらの方法でステレオコンプレックスポリ乳酸を製造する場合、大量の含ハロゲン系有機溶媒を使用するため、回収のためのプロセスが必要であり、環境負荷も著しくなる。また、オキサミド誘導体や芳香族尿素系化合物は、含窒素化合物であるため分子量低下が問題となり、実質Mwが15万以上のステレオコンプレックスポリ乳酸を得ることは不可能である。
さらに特許文献3には、Mwが10万未満の鎖長の比較的に短いポリL−乳酸とポリD−乳酸から成るマルチブロックコポリマーの製造方法が教示されており、該コポリマーはステレオコンプレックス結晶のみを含むステレオコンプレックスポリ乳酸であるとされる。然しながら該コポリマーのブロック数を増やす度に再沈殿を実施しなくてはならず、工業生産には不向きである。
特許文献4には、ポリL−乳酸の存在下で、D−ラクチドを重合してステレオコンプレックスポリ乳酸を製造する方法が記載されている。この方法は、ラクチドの蒸発を抑制するため加圧下で反応を行う方法であり、反応系には未反応のラクチドが残存し易く、得られるステレオコンプレックスポリ乳酸の融点を低下させる恐れがある。
上記のように、分子量が大きく、結晶融点が高く、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長するステレオコンプレックスポリ乳酸の製造方法は提案されていない。
特開2005−255806号公報 特開2005−269588号公報 特開2002−356543号公報 米国特許第5317064号明細書
本発明の目的は、高い融点を有し、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶の成長が促進されるポリ乳酸およびその製造方法を提供することにある。
本発明者は、L−ラクチドおよびD−ラクチドを原料として、ステレオコンプレックスポリ乳酸を製造する方法において、一方のラクチドを開環重合してポリ乳酸を製造した後、得られたポリ乳酸中のラクチドを低減させたのち、該ポリ乳酸の存在下で他方のラクチドを開環重合すると、高い融点を有し、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶の成長が促進されるポリ乳酸が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、(i)同じキラリティの乳酸単位からなる第一ラクチドを開環重合して第一ポリ乳酸を得る工程(1)、
(ii)溶融状態の第一ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第一ポリ乳酸を得る工程(2)、
(iii)精製第一ポリ乳酸の存在下で、第一ラクチドとキラリティの相違する第二ラクチドを開環重合して第二ポリ乳酸を得る工程(3)、
(iv)溶融状態の第二ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第二ポリ乳酸を得る工程(4)を含むポリ乳酸の製造方法である。
また本発明は、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントより構成され、重量平均分子量が15万〜30万であり、DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にあるポリ乳酸である。さらに本発明は該ポリ乳酸からなる成形品を包含する。
<ポリ乳酸の製造方法>
(工程(1))
工程(1)は、同じキラリティの乳酸単位からなる第一ラクチドを開環重合して第一ポリ乳酸を得る工程である。
ラクチドは、2分子の乳酸において、互いのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合してできたエステル結合を分子内に2つもつ環状化合物である。従って同じキラリティの乳酸単位からなるとは、2個のL−乳酸同士が脱水縮合してできたL−ラクチドまたは2個のD−乳酸同士が脱水縮合してできたD−ラクチドのことを言う。従って、第一ラクチドは、L−ラクチドまたはD−ラクチドである。第一ラクチドがL−ラクチドのとき、後述する第二ラクチドはD−ラクチドである。また第一ラクチドがD−ラクチドのとき、後述する第二ラクチドはL−ラクチドである。
第一ラクチドの純度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。他の成分は、キラリティの相違するラクチドまたは乳酸以外の成分である。他の成分は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。他の成分として、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。第一ラクチドの光学純度は98モル%以上であることが好ましい。
第一ラクチドの開環重合は、第一ラクチドを反応容器内で金属触媒の存在下、加熱することにより行うことができる。
金属触媒としては、アルカリ土類金属、希土類金属、第三周期の遷移金属、アルミニウム、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む化合物である。アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。希土類元素として、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウムなどが挙げられる。第三周期の遷移金属として、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、チタンが挙げられる。
金属触媒は、これらの金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アリールオキシド、或いはβ−ジケトンのエノラート等として添加することができる。重合活性や色相を考慮した場合、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。
触媒量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.003〜0.01重量部である。
また重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
反応は、窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気で実施することが好ましい。反応時間は、好ましくは15分〜3時間、好ましくは30分〜2時間である。反応温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜210℃である。開環重合は、従来公知の製造装置、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応容器を用いて行うことができる。
(工程(2))
工程(2)は、溶融状態の第一ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第一ポリ乳酸を得る工程である。
開環重合して得られる第一ポリ乳酸は、未反応の第一ラクチドを含有する。本発明者は、第一ラクチドを所定量含有する第一ポリ乳酸の存在下で、第二ラクチドを開環重合すると、得られる第二ポリ乳酸の結晶融点が低下する傾向があることを見出した。第一ラクチドを除去することによって、ブロックコポリマーがランダムコポリマーになることを回避することができ、得られるステレオコンプレックスポリ乳酸の融点が190℃以上となる。
ラクチドの除去は、反応系内の減圧を減圧にすることにより行うことができる。反応系内の圧力は、好ましくは0.133〜66.5kPa、より好ましくは0.133〜33.25kPaである。反応系内の温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃である。ラクチドの除去を、温度150〜250℃で、圧力0.133〜66.5kPaで行なうことが好ましい。
工程(2)は、工程(1)で得られた第一ポリ乳酸を固化した後、再び溶融して行なっても良い。また工程(2)は、工程(1)で得られた第一ポリ乳酸を溶融状態のまま行なってもよい。
精製第一ポリ乳酸のラクチド含有率は少ない方が好ましい。精製第一ポリ乳酸のラクチド含有率は、好ましくは0重量%以上、1重量%未満、より好ましくは0重量%以上、0.5%重量未満である。
精製第一ポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは10万〜30万、より好ましくは10万〜20万、さらに好ましくは10万〜18万である。
(工程(3))
工程(3)は、精製第一ポリ乳酸の存在下で、第一ラクチドとキラリティの相違する第二ラクチドを開環重合して第二ポリ乳酸を得る工程である。第二ラクチドの光学純度は98モル%以上であることが好ましい。
第二ラクチドの量は、精製第一ポリ乳酸100重量部に対して、好ましくは30〜200重量部、より好ましくは50〜150重量部である。ラクチドの量が少なすぎたり、多すぎる場合は、ブロックコポリマーが生成されず、ポリL−乳酸やポリD−乳酸のみが生成される。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下であることが好ましい。このような方法を採ることによって、本発明の目的とする、高い分子量および高い融点を有し、且つ、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶のみが成長する精製第二ポリ乳酸を得ることができる。
(工程(4))
工程(4)は、溶融状態の第二ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第二ポリ乳酸を得る工程である。
第二ポリ乳酸は、未反応の第二ラクチドを含有するので除去することが好ましい。ラクチドの除去は、反応系内を減圧にすることにより行うことができる。反応系内の圧力は、好ましくは0.133〜66.5kPa、より好ましくは0.133〜33.25kPaである。反応系内の温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃である。ラクチドの除去を、温度150〜250℃で、圧力0.133〜66.5kPaで行なうことが好ましい。
精製第二ポリ乳酸のラクチド含有率は少ない方が好ましい。ラクチド含有率は、好ましくは0重量%以上、1.5重量%未満、より好ましくは0重量%以上、1重量%未満である。
精製第二ポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは15万〜30万、より好ましくは15万〜25万である。
精製第二ポリ乳酸のステレオコンプレックス結晶含有率は、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%である。
精製第二ポリ乳酸は、DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜240℃、さらに好ましくは210〜230℃の範囲にある。
工程(4)は、工程(3)で得られた第一ポリ乳酸を固化したのち、溶融して行なっても良い。また工程(4)は、工程(3)で得られた第一ポリ乳酸を溶融状態のまま行なってもよい。
<ポリ乳酸>
本発明のポリ乳酸は、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントより構成され、重量平均分子量が15万〜30万であり、DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にあるポリ乳酸である。本発明のポリ乳酸は、ステレオコンプレックス結晶を形成する所謂ステレオコンプレックスポリ乳酸である。
L−乳酸単位またはD−乳酸単位は、下記式で表される。
Figure 2008018474
本発明のポリ乳酸の重量平均分子量は、15万〜30万、好ましくは15万〜25万である。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
本発明のポリ乳酸は、DSC(示差走査熱量計)において、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にある。結晶融点は、より好ましくは200〜240℃、さらに好ましくは210〜230℃の範囲にある。即ち、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶が成長することを意味する。
本発明のポリ乳酸は、ラクチド含有率が0重量%以上、1重量%未満であることが好ましい。
本発明のポリ乳酸のステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%である。ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、下記式で表される。
S={ΔHb/(ΔHa+ΔHb)}×100(%)
式中、ΔHaとΔHbは、それぞれ示差走査熱量計(DSC)の昇温過程において150〜190℃に現れる結晶融点の融解エンタルピー(ΔHa)と190〜250℃に現れる結晶融点の融解エンタルピー(ΔHb)を示す。
本発明において、ポリ乳酸の結晶融点は、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜220℃である。150℃〜190℃に現れる結晶融点の融解エンタルピー(ΔHa)は、好ましくは4J/g未満、より好ましくは2J/g未満である。また、190〜250℃に現れる結晶融点の融解エンタルピー(ΔHb)は、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上、さらに好ましくは40J/g以上である。
ポリ乳酸が優れた耐熱性を示す為には、ステレオコンプレックス結晶含有率、結晶融点、融解エンタルピーが上記数値範囲にあることが好ましい。
第一ポリ乳酸と第二ポリ乳酸の比(L/D)は、好ましくは30/70〜70/30、より好ましくは40/60〜60/40である。L/Dが上記範囲を外れるとステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶化度が低下する。
本発明により得られるポリ乳酸は、(i−1)ポリL−乳酸と、(i−2)L−乳酸セグメントおよびD−乳酸セグメントからなるブロックコポリマーとの混合物、または、(ii−1) ポリD−乳酸と、(ii−2)L−乳酸セグメントおよびD−乳酸セグメントからなるブロックコポリマーとの混合物である。
ポリL−乳酸(i−1)とブロックコポリマー(i−2)との重量比は、前者/後者が、好ましくは100/30〜100/200、より好ましくは100/50〜100/150である。同様に、ポリD−乳酸(ii−1)とブロックコポリマー(ii−2)との重量比は、前者/後者が、好ましくは100/30〜100/200、より好ましくは100/50〜100/150である。
本発明のポリ乳酸は、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を含有してもよい。
<成形品>
さらに本発明は、本発明のポリ乳酸からなる成形品を包含する。本発明のポリ乳酸を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品を得ることができ、成形は常法により行うことができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。実施例において組成物の物性は以下の方法で測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、ショーデックス製GPC−11を使用し、試料50mgを5mlのクロロホルムに溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(2)ポリ乳酸中のラクチド含有率
第一ポリ乳酸のラクチド含有量は、重クロロホルム中、日本電子製核磁気共鳴装置JNM−EX270スペクトルメーターを使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積(5.10〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積(4.98〜5.05ppm)の割合によって決定した。また、第二ポリ乳酸のラクチド含有率は、前述の重クロロホルムを重クロロホルム/ヘキサフルオロ−2−プロパノールの95/5(v/v)溶液に変えた以外は第一ポリ乳酸と同様の方法で決定した。
(3)第一ポリ乳酸と第二ポリ乳酸の比(L/D)
L/Dは、25℃、クロロホルム/ヘキサフルオロ−2−プロパノールの95/5(v/v)溶液中で測定した比旋光度[α]を使用し、下記式に従い求めた。
L/D=([α]/320+0.5)/(0.5+[α]/(−320))
[式中320は純粋なL乳酸の比旋光度、−320は純粋なD乳酸の比旋光度である]
(4)ステレオコンプレックス結晶含有率(S)
ステレオコンプレックス結晶含有率(S)は、DSCにおいて150〜190℃に現れる結晶融解エンタルピーΔHaと、190〜250℃に現れる結晶融解エンタルピーΔHbから下記式にて算出した。
S(%)={ΔHb/(ΔHa+ΔHb)}×100
(5)DSCの三回繰り返し測定
試料片5mgを専用アルミニウムパンに入れ、TAインスツルメンツ社製示差走査熱量計(DSC2920)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りとした。結晶融解エンタルピーは、DSCチャートに現れる結晶融解ピークとベースラインで囲まれる領域の面積によって算出し、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)を求めた。また結晶融点も測定した。
(a)20〜250℃を20℃/分で昇温。
(b)250℃到達後ドライアイスを用い、45℃毎秒で20℃まで急冷。
(c)上記(a)および(b)の繰り返しを計3回実施。
実施例1
(工程(1):第一ポリ乳酸の製造)
冷却留出管を具えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でLラクチド((株)武蔵野化学製Lラクチド、光学純度99%以上)100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、Lラクチドを190℃にて融解させた。Lラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合し、第一ポリ乳酸を得た。
(工程(2):ラクチドの除去)
次に、反応容器内を1.33kPaに減圧し、余剰のラクチドを除去し精製第一ポリ乳酸を得た。得られた精製第一ポリ乳酸のMwとラクチド含有率を表1に示す。
(工程(3):第二ポリ乳酸の製造)
工程(2)で得られた溶融状態の精製第一ポリ乳酸(PLLA)に、原料仕込み口から窒素気流下でD−ラクチド((株)武蔵野化学製D−ラクチド、光学純度99%以上)100重量部を仕込んだ。反応容器を190℃に維持し、開環重合を2時間続け第二ポリ乳酸を得た。
(工程(4):ラクチドの除去)
重合終了後、反応容器を230℃に昇温し、1.33kPaに減圧しつつ余剰のラクチドを除去した。最後に反応容器の吐出口からポリマーを非晶ストランドとして吐出し、水冷しながらペレット状に裁断した。次にペレットを180℃に加熱した熱風循環型乾燥機中で1時間静置し、精製第二ポリ乳酸のペレットを得た。精製第二ポリ乳酸のMw、ラクチド含有率およびL/Dを表1に示す。また、結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
実施例2
(工程(1)および(2))
ステアリルアルコール0.15重量部を0.2重量部に変更した以外は実施例1の工程(1)と同じ操作を行い、精製第一ポリ乳酸を得た。精製第一ポリ乳酸のMwとラクチド含有率を表1に示す。
(工程(3)および(4))
実施例1と同じ操作を行い、精製第二ポリ乳酸を得た。精製第二ポリ乳酸のMw、ラクチド含有率およびL/Dを表1に示す。また、結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
合成例1
(PDLAの合成)
冷却留出管を備えた重合反応容器の原料仕込み口から、窒素気流下でD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製)100重量部およびステアリルアルコール0.15重量部を仕込んだ。続いて反応容器内を5回窒素置換し、D−ラクチドを190℃にて融解させた。D−ラクチドが完全に融解した時点で、原料仕込み口から2−エチルヘキサン酸スズ0.05重量部をトルエン500μLと共に添加し、190℃で1時間重合した。次に、反応容器内を1.33kPaに減圧し、余剰のラクチドを除去した。得られたPDLAのMwは、198,422であった。
比較例1
実施例1の工程(2)で得られた精製第一ポリ乳酸(PLLA)と、合成例1で得られたPDLAとを東洋製機(株)製ラボプラストミル50C150を使用し、240℃で10分間混練し、ペレットを得た。得られたペレットのMw、ラクチド含有率およびL/Dを表1に示す。また、結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
比較例2
(工程(1)および(2))
ラクチドの除去を実施しなかった以外は実施例1の工程(1)および工程(2)と同じ操作を行い、非精製第一ポリ乳酸を得た。
(工程(3))
工程(2)で得られた溶融状態の非精製第一ポリ乳酸に、原料仕込み口から窒素気流下でD−ラクチド(光学純度99%以上、(株)武蔵野化学製)100重量部を仕込み、反応容器を190℃に維持し、開環重合を2時間続け、第二ポリ乳酸を得た。
(工程(4))
重合終了後、反応容器を230℃に昇温し、1.33kPaに減圧しつつ余剰のラクチドを除去し、精製第二ポリ乳酸を得た。最後に反応容器の吐出口からポリマーを非晶ストランドとして吐出し、水冷しながらペレット状に裁断した。次にペレットを180℃に加熱した熱風循環型乾燥機中で1時間静置した。得られた精製第二ポリ乳酸のペレットのMw、ラクチド含有率およびL/Dを表1に示す。また、結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
実施例3
実施例1で得た精製第二ポリ乳酸ペレットを110℃で5時間乾燥後、2軸ルーダー付設溶融紡糸機を用い245℃で溶融し、直径0.25mmの吐出孔を1つ有する口金から吐出させ、500m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この未延伸糸を予熱70℃で3.5倍に延伸し、引き続き190℃で熱セットを行い、1.33dtexのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸の結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
実施例4
実施例1で得た精製第二ポリ乳酸ペレットを110℃で5時間乾燥後、2軸ルーダー付設溶融製膜装置を用い溶融製膜を実施した。製膜装置のダイ温度を260℃とし、巻取り速度40m/分で210μmのフィルム状に溶融押し出しした。得られたフィルムの結晶融解エンタルピー、ステレオコンプレックス結晶含有率(S)および結晶融点を表2に示す。
Figure 2008018474
Figure 2008018474
発明の効果
本発明の製造方法によれば、融点、重量平均分子量が高く、且つ、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶が成長するポリ乳酸を提供することができる。
本発明のポリ乳酸は、高い融点および分子量を有し、溶融と結晶化を繰り返してもステレオコンプレックス結晶が成長する、従来のステレオコンプレックスポリ乳酸には無い優れた特性を有する。
本発明の組成物は、高い融点を有し耐熱性に優れるので、溶融成形して、糸、フィルム、各種成形体にすることができる。

Claims (15)

  1. (i) 同じキラリティの乳酸単位からなる第一ラクチドを開環重合して第一ポリ乳酸を得る工程(1)、
    (ii) 溶融状態の第一ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第一ポリ乳酸を得る工程(2)、
    (iii) 精製第一ポリ乳酸の存在下で、第一ラクチドとキラリティの相違する第二ラクチドを開環重合して第二ポリ乳酸を得る工程(3)、
    (iv) 溶融状態の第二ポリ乳酸から減圧下でラクチドを除去し、精製第二ポリ乳酸を得る工程(4)を含むポリ乳酸の製造方法。
  2. (i) 第一ラクチドがL−ラクチドであり、第二ラクチドがD−ラクチドであるか、(ii) 第一ラクチドがD−ラクチドであり、第二ラクチドがL−ラクチドである請求項1記載の方法。
  3. 精製第一ポリ乳酸のラクチド含有率が0重量%以上、1重量%未満である請求項1記載の方法。
  4. 第一ラクチドおよび第二ラクチドの光学純度が98モル%以上である請求項1記載の方法。
  5. 精製第二ポリ乳酸のラクチド含有率が0重量%以上、1.5重量%未満である請求項1記載の方法。
  6. 工程(2)において、ラクチドの除去を、温度150〜250℃で、圧力0.133〜66.5kPaで行なう請求項1記載の方法。
  7. 工程(4)において、ラクチドの除去を、温度150〜250℃で、圧力0.133〜66.5kPaで行なう請求項1記載の方法。
  8. 精製第一ポリ乳酸の重量平均分子量が10万〜30万である請求項1記載の方法。
  9. 精製第二ポリ乳酸の重量平均分子量が15万〜30万である請求項1記載の方法。
  10. 精製第二ポリ乳酸のステレオコンプレックス結晶含有率が80%以上である請求項1記載の方法。
  11. 精製第二ポリ乳酸は、DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にある請求項1記載の方法。
  12. L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントより構成され、重量平均分子量が15万〜30万であり、DSCにおいて、20〜250℃の昇温過程と250〜20℃の冷却過程とからなるプログラムを三回繰り返しても、昇温過程で観測される結晶融点が190〜250℃の範囲にあるポリ乳酸。
  13. ラクチド含有率が0重量%以上、1重量%未満である請求項12記載のポリ乳酸。
  14. ステレオコンプレックス結晶含有率が80%以上である請求項12記載のポリ乳酸。
  15. 請求項12記載のポリ乳酸からなる成形品。
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