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JP2004075562A - 皮膚外用剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】
優れた細胞賦活効果、美白効果、肌荒れ改善効果、育毛効果を有し、健康上の不安なく使用することができる皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
植物の胎座抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた細胞賦活効果、美白効果、肌荒れ改善効果、育毛効果を有し、健康上の不安なく使用することができる皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
脊椎動物の胎盤の抽出物であるプラセンタエキスには、顕著な薬効があることが知られており、肌荒れ改善美容剤、美白化粧料、毛髪化粧料、妊娠線形成抑制剤などの皮膚外用剤の成分として用いられるほか、健康飲料、栄養補助食品などの成分としても広く知られている。ウシ由来のプラセンタエキスは、例えば、妊娠3〜4か月の雌牛の胎盤を粉砕し、水で抽出した抽出液を遠心分離し、無菌ろ過することにより、製造することができ、市販品としても販売されている。プラセンタエキスには、アミノ酸、ペプチド、核酸、ビタミンなどが含まれる。
しかしながら、牛海綿状脳症(BSE)いわゆる狂牛病が日本でも発生したことから、動物の胎盤を原料とするプラセンタエキスの使用に対する消費者の不安が高まっている。ウシ以外の動物、例えば、ブタ由来のプラセンタエキスも入手可能ではあるが、できれば動物由来の原料は避けたいというのが消費者の偽らぬ心情である。このために、動物由来のプラセンタエキスと同様な薬効を有し、健康上の不安なく使用することができる植物由来の薬剤が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた細胞賦活効果、美白効果、肌荒れ改善効果、育毛効果を有し、健康上の不安なく使用することができる皮膚外用剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、植物の胎座の抽出物が動物由来のプラセンタエキスと類似した組成を有し、動物由来のプラセンタエキスと同様な薬効があり、イネ科植物の胎座、特にライ麦の胎座の抽出物が良好であることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(1)植物の胎座抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤、
(2)植物が、イネ科植物である第1項記載の皮膚外用剤、及び、
(3)イネ科植物が、ライ麦である第2項記載の皮膚外用剤、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の皮膚外用剤は、植物の胎座抽出物を含有する。本発明に用いる植物の胎座抽出物は、イネ科植物の胎座抽出物であることが好ましく、ライ麦の胎座抽出物であることが特に好ましい。
植物の胎座とは、子房内で胚珠が心皮に付着している部分である。子房は、種子植物の雌蕊の一部で、花柱の下に接して肥大した部分であり、中に胚珠が含まれる。胚珠は、種子植物の雌性生殖器官である。心皮は、種子植物の雌蕊を構成する分化をした葉である。
本発明に用いる植物の胎座抽出物の製造方法に特に制限はなく、例えば、植物の種子から胎座を分離収集し、水溶媒を用いて抽出することができる。種子から分離収集した胎座は、あらかじめ粉砕することが好ましい。胎座を粉砕して微粒化することにより、抽出効率を高めることができる。粉砕された胎座は、1〜15℃の水又は水−エタノール混合液で数時間にわたって数回洗浄することが好ましい。水−エタノール混合液で洗浄することにより、殺菌及び不純物を除去することができる。胎座を洗浄したのち、水を溶媒として抽出を行うことが好ましい。溶媒として用いる水には、0.01〜0.5重量%のパラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどの防腐剤を添加して、抽出物の変質を防ぐことが好ましい。使用する水溶媒の量に特に制限はないが、抽出液の蒸発残留物が0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。
抽出に用いる装置に特に制限はなく、例えば、バッテリー抽出機、ボールマン抽出機、ロトセル抽出機、ルルギ抽出機、ケネディー抽出機などの浸透貫流型固液抽出装置、パチューカタンク、ボノトー抽出機、ヒルデブランド抽出機などの固体分散型固液抽出装置、千代田式L型抽出機、ミアグ抽出機などの貫流浸漬併用型抽出装置などを挙げることができる。抽出に際しては、抽出混合物に超音波を伝達することにより、抽出速度を速めることができる。抽出液は、酸性にして蛋白質を分離することが好ましい。蛋白質を分離した抽出液に、防腐剤、ソルビトール、尿素、クエン酸などを添加して液を調整し、アルカリを添加してpH6〜7とし、孔径0.05〜0.3μmのフィルターで滅菌ろ過することにより、本発明の皮膚外用剤の原料となる植物の胎座抽出物を得ることができる。
【0006】
本発明において、胎座抽出物を取得する植物に特に制限はなく、例えば、イネ科、マメ科、アブラナ科、バラ科、ナデシコ科、サボテン科、アカザ科、コショウ科、ミカン科、キク科、アカネ科、シソ科、ツツジ科などの植物を挙げることができる。これらの中で、イネ科の植物は、大量に栽培されているので入手が容易であり、胎座からの抽出効率が良好なので好適に用いることができる。イネ科の植物としては、例えば、稲、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、粟、稗、黍、トウモロコシなどを挙げることができる。イネ科の植物の中で、ライ麦は、胎座の分離収集が容易であり、抽出により多量の胎座抽出物を得ることができるので、特に好適に用いることができる。
本発明の皮膚外用剤は、その用途や剤型によって、適宜必要な成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、ラノリン、ミンク油、馬油、アーモンド油、ヒマシ油、ホホバ油、メドフォード油、オリーブ油などの動植物油脂類、コレステリン、ラノリンアルコール、フィトステロールなどの動植物由来のステロール類及びこれらの誘導体、固形パラフィン、セレシン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウなどの鉱物、動植物由来のワックス類、流動パラフィン、スクアランなどの炭化水素油、ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セトステアリル、イソステアリン酸アルキルエステルなどの合成油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸塩などの界面活性洗浄剤類、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤類、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール類、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール類、ヒアルロン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、加水分解コラーゲン液などの保湿剤、カチオン化デキストランなどのカチオンリンス剤類、カラギーナン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどの増粘剤類、アルニカエキス、アロエエキス、海藻エキス、カモミラエキス、カンゾウエキス、キナエキス、ニンニクエキス、メリッサエキス、アルブチンなどの植物抽出エキス類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、コウジ酸、エラグ酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤、香料、色素、抗菌剤などを挙げることができる。
本発明の皮膚外用剤の剤型に特に制限はなく、例えば、ローション、クリーム、ジェル、乳液、パック、軟膏などを挙げることができる。
本発明の皮膚外用剤は、優れた細胞賦活機能と美白機能を有する植物の胎座抽出物を含有するので、外傷、火傷、潰瘍などの治療や、皮膚老化防止、美白、育毛などに優れた効果を発揮する。
【0007】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、評価は下記の方法により行った。
(1)蒸発残留物
試料1mLを白金るつぼにとり、水浴上で蒸発乾固させたのち、105℃で4時間乾燥し、蒸発残留物を求める。
(2)アミノ酸確認試験1
試料1mLにニンヒドリン試液1mLを加え、3分間煮沸する。
(3)ペプチド確認試験
試料1mLに水酸化ナトリウム試液2mLと硫酸銅溶液(1→100)3滴を加え、振り混ぜる。
(4)アミノ酸確認試験2
試料2mLに硝酸2mLを加えて1分間煮沸し、冷却後アルカリ性になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加える。
(5)ワールブルグ法による代謝活性の測定
ラットの肝片にセーレンセン緩衝液(pH7.4)を加えてホモジナイザーで処理したホモジネートを調製し、その酸素消費量をワールブルグ検圧計を用いて測定する。胎座抽出物含有液と対照試料の酸素消費量を算出し、対照試料の呼吸促進係数を1として、胎座抽出物含有液の呼吸促進係数を求める。
(6)メラノーマ細胞試験
試料に牛胎児血清が10重量%になるように加え、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH7.6に調整した培地を用い、B−16メラノーマ細胞浮遊液を加えて3日間培養し、さらに培地を交換して3日間培養したのち、遠心分離して細胞を集め、目視により白色度を判定する。
【0008】
実施例1
ライ麦(Secale cereale)の穀粒から、ヤスリを用いて胎座100gを削り取った。削り取った胎座をさらに乳鉢を用いて細かく粉砕し、10重量%エタノール水溶液10,000gにより10℃で10時間回転洗浄した。次に、胎座をろ別し、フェノキシエタノール0.1重量%を溶解した水200gに20℃で10時間浸漬したのち、超音波発振機を用いて周波数40kHz、出力600Wの超音波を60分間伝達した。懸濁液を加圧ろ過し、ろ液に硝酸を加えてpHを2.0に調整し、凝固析出した蛋白質をろ別して、ろ液250gを得た。
得られたろ液にパラオキシ安息香酸メチル0.25gを加えて溶解し、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを6.7に調整し、孔径0.2μmのフィルターを用いて滅菌ろ過し、ライ麦の胎座抽出物含有液を得た。
このライ麦の胎座抽出物含有液の蒸発残留物は2.33重量%であり、窒素含量は0.245重量%であった。ライ麦の胎座抽出物含有液に、ニンヒドリン試液を加えて煮沸すると、液は青紫色を呈し、アミノ酸の存在が確認された。水酸化ナトリウム試液と硫酸銅溶液を加えて振り混ぜると、液は赤紫色を呈し、ペプチドの存在が確認された。硝酸を加えて煮沸したのち冷却し、水酸化ナトリウム試液を加えると、液は黄色を呈し、アミノ酸の存在が確認された。ワールブルグ法による呼吸促進作用の測定において、呼吸促進係数は1.8であった。メラノーマ細胞試験の結果は、陽性であった。
比較例1
ブタ胎盤由来のプラセンタエキス[山川貿易(株)]について、実施例1で得られたライ麦の胎座抽出物含有液と同じ試験を行った。
蒸発残留物は0.51重量%であり、窒素含量は0.052重量%であった。ニンヒドリン試液を加えて煮沸すると、液は青紫色を呈し、アミノ酸の存在が確認された。水酸化ナトリウム試液と硫酸銅溶液を加えて振り混ぜると、液は赤紫色を呈し、ペプチドの存在が確認された。硝酸を加えて煮沸したのち冷却し、水酸化ナトリウム試液を加えると、液は黄色を呈し、アミノ酸の存在が確認された。ワールブルグ法による呼吸促進作用の測定において、呼吸促進係数は1.6であった。メラノーマ細胞試験の結果は、陽性であった。
実施例1及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0009】
【表1】
Figure 2004075562
【0010】
第1表に見られるように、実施例1のライ麦胎座抽出物含有液は、すでに商品化されている比較例1のブタ胎盤由来プラセンタエキスに比べて約4.5重量倍の蒸発残留物を含有している。しかし、窒素含料/蒸発残留物の比は、実施例1が0.105、比較例1が0.102で、ほぼ同じ大きさであり、この事実は、実施例1のライ麦胎座抽出物含有液と、比較例1のブタ胎盤由来プラセンタエキスに、ほぼ同種の物質が含有されることを示唆している。2種のアミノ酸確認試験とペプチド確認試験において、実施例1と比較例1で同じ結果が得られている。ワールブルグ法による代謝活性の測定では、実施例1のライ麦胎座抽出物含有液の呼吸促進係数が、比較例1のブタ胎盤由来プラセンタエキスの呼吸促進係数よりやや大きい。B−16メラノーマ細胞試験においては、実施例1、比較例1ともに陽性を示し、両者ともに美白効果を有することが分かる。
実施例2
スクワラン15.0重量部、2−エチルヘキサン酸セチル5.0重量部、オリーブ油5.0重量部、ステアリン酸3.0重量部、ステアリルアルコール3.0重量部、ミツロウ3.0重量部、ポリオキシエチレン(20モル)オキシプロピレン(4モル)セチルエーテル1.0重量部、ポリオキシエチレン(50モル)硬化ヒマシ油1.0重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル1.0重量部、メチルポリシロキサン(300cSt)0.2重量部及びパラオキシ安息香酸メチル0.2重量部を配合して、第一成分を調製した。
グリセリン10.0重量部、1,3−ブチレングリコール5.0重量部、実施例1で得られたライ麦胎座抽出物含有液5.0重量部及び精製水42.6重量部を配合して、第二成分を調製した。
第一成分と第二成分をそれぞれ70℃まで加温し、第二成分に第一成分を撹拌しつつ徐々に加えたのち、ゆっくり撹拌しつつ30℃まで冷却して、ライ麦胎座抽出物を含有する皮膚外用剤クリームを得た。
上記と同様にして、第一成分を調製した。また、グリセリン10.0重量部、1,3−ブチレングリコール5.0重量部、比較例1で用いたブタ胎盤由来のプラセンタエキス22.5重量部及び精製水25.1重量部を配合して、第二成分を調製した。
第一成分と第二成分をそれぞれ70℃まで加温し、第二成分に第一成分を撹拌しつつ徐々に加えたのち、ゆっくり撹拌しつつ30℃まで冷却して、ブタ胎盤由来のプラセンタエキスを含有する皮膚外用剤クリームを得た。
年齢20〜64才の女性20名をパネラーとして、ライ麦胎座抽出物を含有するクリームと、ブタ胎盤由来のプラセンタエキスを含有するクリームの官能評価を行った。10名のパネラーには、右前腕部にライ麦胎座抽出物を含有するクリームを、左前腕部にブタ胎盤由来のプラセンタエキスを含有するクリームを、残りの10名のパネラーには、逆に右前腕部にブタ胎盤由来のプラセンタエキスを含有するクリームを、左前腕部にライ麦胎座抽出物を含有するクリームを、3ケ月間にわたって1日2回ずつ塗布した。
3ケ月後、肌のハリの改善、美白効果及び肌への使用感の3項目について、下記の評価基準により5段階の評価を行った。
++:ライ麦胎座抽出物を含有するクリームの方が非常によい。
+:ライ麦胎座抽出物を含有するクリーム方がややよい。
±:両方のクリームの間に差がない。
−:ブタ胎盤由来プラセンタエキスを含有するクリームの方がややよい。
−−:ブタ胎盤由来プラセンタエキスを含有するクリームの方が非常によい。
評価結果をまとめて、第2表に示す。
【0011】
【表2】
Figure 2004075562
【0012】
第2表に見られるように、ライ麦胎座抽出物を含有するクリームとブタ胎盤由来のプラセンタエキスを含有するクリームの間に差がないとするパネラーが最も多かったが、評価の別れたところでは、ライ麦胎座抽出物を含有するクリームの方がよいとするパネラーがやや多く、ライ麦胎座抽出物含有液が、皮膚外用剤の有効成分として、従来より用いられてきたブタ胎盤由来のプラセンタエキスに比べて、勝るとも劣らぬ効果を有することが分かる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の皮膚外用剤の有効成分として用いる植物の胎座抽出物は、従来より皮膚外用剤の有効成分として用いられてきた動物の胎盤に由来するプラセンタエキスに比べて同等又はそれ以上の効果を有し、植物に由来する成分であるために、健康上の不安を感じることなく使用することができる。

Claims (3)

  1. 植物の胎座抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
  2. 植物が、イネ科植物である請求項1記載の皮膚外用剤。
  3. イネ科植物が、ライ麦である請求項2記載の皮膚外用剤。
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