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議論の極意! 人文学のプロフェッショナルに学ぶ 効果的コミュニケーション術・アーギュメントの作り方(全5記事)

SNSで炎上している研究者は「研究者として正しい」 人文学のプロ・阿部幸大氏が説く“強い意見を出せない時代”に対する考え方

話題の書籍『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』の著者である、筑波大学人文社会系助教の阿部幸大氏がイベントに登壇。本書のキーワードとなっている「アーギュメント」とは何か、そしてアーギュメントをビジネスシーンで活用するためのポイントについて解説しました。本記事では、強い意見を持つこと自体が難しくなっている、SNS時代の考え方について語ります。

筑波大学助教・阿部幸大氏がイベントに登壇

森脇匡紀氏(以下、森脇):みなさま、こんばんは。始めます。お願いします。

(会場拍手)

森脇:ありがとうございます。

小倉一葉氏(以下、小倉):よろしくお願いします。

森脇:ありがとうございます。盛り上がっていきましょう。もう寒くなってきちゃいまして、窓際は本当に涼しい風がどんどん入ってくる。

小倉:そうですね。

森脇:会場におられる方、大丈夫ですか? 今はインフルとか、またコロナとか(が流行ってきています)。僕は不治の病みたいな感じで、最近ちょっと元気がないんですが。

小倉:大丈夫ですか(笑)?

森脇:最近も、ちょっと寒い地域に出張で行ってきて。

小倉:そうですよね。

森脇:「MIJS」という、経営者の方を中心に業界を盛り上げていこう、ソフトウェアで日本を強くしようという思いを込めたコンソーシアムなんですが、経営者の方々の出身地に行ってイベントをやらせていただいております。11月に釧路に行かせていただいたんですが、行ったことはあります?

小倉:いや、行ったことはないです。

森脇:本当ですか。ハッカソンで1度行かせていただいたので僕は2回目でしたが、すごく素敵なところだなと。釧路湿原という日本一広大な湿地帯に行かせていただいたりしました。

釧路の課題は、今、人口がどんどん減ってきているんですよね。ご老人の方も多くなってきていますから、町を便利にしなければいけないということで、デジタルの力で改善していこうということで行かせていただいて。

小倉:日帰りで釧路に行かれたとか。

森脇:そう(笑)。もったくもって日帰りで。

小倉:なかなか日帰りで……(笑)。

森脇:今回はイベント登壇もあったというのはあるんですが、翌日もいろいろあったんです。そんな話もありながら、今日はゲストに阿部幸大先生をお呼びしているんですが、釧路出身なんですよね。

そんなところで釧路(に縁)があるんですが、じゃあ私が釧路つながりで関係を持って、今日ご登壇いただくことになったのかというと、そんなことはまったくなくて。私じゃないんですよ。一葉っちのほうなんですよね。

小倉:そうなんです。大学時代、私はバンドサークルに所属しておりまして、そこでドラムをやっていたんですが、その尊敬するドラマーの大先輩です。

森脇:阿部さんもドラマーだったんですね?

小倉:めちゃくちゃお上手なドラマーなんですよ。

森脇:すごいですね。コピーバンド? オリジナルで曲をやったりしていたんですか?

小倉:コピーも……どうですかね? ちょっと後で教えていただきたいです(笑)。

森脇:後でね。もう呼んだほうがいいですね? じゃあ、さっそくお呼びしましょうか。

小倉:そうですね。じゃあ阿部先生、よろしくお願いします。

森脇:お願いします。

(会場拍手)

森脇:どうもどうも。こんにちは、こんばんは。

小倉:よろしくお願いいたします。

阿部幸大氏(以下、阿部):よろしくお願いします。

森脇:なんか、3人とも(服装が)クリスマスチックな感じでね。

阿部:赤で。

森脇:色合いというか、このへんもデコレーションされて。「メリークリスマス、パッコーン」みたいな感じで、沈んじゃっていますが(メリークリスマスと書かれた小物が倒れている)。

小倉:(笑)。本当ですね。

森脇:こちらの担当はゲストの阿部さんの持ち分になっておりますので、ゲストに直していただくということで、すみません。

話題の書籍『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』

森脇:阿部さんのご紹介をしていただきましょうか。

小倉:そうですね。会場のみなさん、ぜひ「#meetALIVE」で(投稿を)よろしくお願いいたします。本日お越しいただいております阿部先生は、筑波大学人文社会学の助教でいらっしゃいます。

2023年に博士号を取得されまして、専門は日米の文化史でございます。研究コンサルティング事業を展開する筑波大学発のベンチャーであります、株式会社アルス・アカデミカを創業され、(同社の)代表でございます。

みなさんのお手元にもあるかもしれないんですけれども、『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』という著書を、2024年に光文社さまから出されていらっしゃいまして、そちらの本がかなり話題になっていらっしゃるということですね。

阿部:ありがとうございます。

森脇:売れに売れていると。

阿部:はい。昨日ちょうど8刷が決まりまして、4万部。

森脇:すごいですね。

小倉:おめでとうございます。

阿部:おかげさまで。ありがとうございます。

森脇:千葉大学で講演された動画がYouTubeに上がっているかと思うんですが、その時も「初日で1万2,000部、増刷が決まった」ということを言われていましたけども。

阿部:そうでしたっけ? あそこからたくさん売れたということで、ありがとうございます。

森脇:相当ですよね。すばらしい。みなさんもすでに持っていますか? 持っている? そうですか。サインをもらっていた方もおられましたが、今日は書籍を持っている方でもし望むのであれば、おサインとかも大丈夫ですか?

阿部:はい、もちろん。

森脇:ありがとうございます。

阿部:10冊買っていただくと、サインするということになっております(笑)。

小倉:(笑)。

森脇:10冊買わないといけない? ダメじゃないですか。思いっきり突っぱねているじゃないですか。ありがとうございます。meetALIVEでね……。

小倉:アカデミアのね。

森脇:かなりアカデミックなテーマじゃないですか。今日、Webで参加されている方がかなり多くて100人を超えているんですが、やはり20代の方々が多いですね。

小倉:そうですね。大学に所属されていらっしゃったり、研究されている方からご参加のお申し込みをいただいていますし、あとはビジネス(パーソン)。meetALIVEにご参加されている方々も来ていただいているという。

森脇:だから、どちらの切り口もやらせていただきます。研究者や学生の方からの切り口もやりますし、ビジネスでも使える手法をぜひ身につけて帰っていただければなということで、私自身も非常に楽しみにしておりますので、よろしくお願いします。

阿部:よろしくお願いします。

小倉:よろしくお願いいたします。

2024年12月には株式会社アルス・アカデミカを設立

小倉:それではmeetALIVE特別講義開始ということで、まずは阿部先生から、そもそも「アーギュメントとは何か」からスタートさせてもらえたらなと思います。

森脇:「アーギュメント」って、イベントのタイトルでは出ていないじゃないですか。

阿部:いや、入っていますよ。

森脇:ちょこっと入っていましたっけ? そうでしたっけ? 失礼しました。

阿部:最初はメインタイトルにアーギュメントが入っていて、ちょっとわかりにくいということでサブタイトルに追いやられた……。

森脇:そうそう、そうなんですよ。

小倉:失礼しました。

阿部:という経緯だったような気がします。

森脇:そうかそうか、じゃあ大丈夫か。アーギュメントとは何かって気になりますよね。

阿部:アーギュメントとは何かという話の前に、ちょっと10分ぐらいしゃべってもいいですか?

こんにちは、阿部幸大と申します。ご紹介いただきありがとうございました。ふだんは「阿部幸大です」と言うだけなんですが、紹介がありましたとおり、筑波大学で先生をやっています。実は筑波大学に文学部はないんですが、ざっくり言うと文学部みたいなところにいて、文学部っぽいことをやっております。

あるいは、ちまたで書籍の分類に「人文書」というものがありますが、ああいう時の「人文」を研究している感じの人間です。実は今日は間に合っている予定だったんですが、法人の登記が間に合わなくて。

小倉:そうなんですね。

阿部:今週末か来週の頭には終わると思うんですが、株式会社アルス・アカデミカという会社をやることになっております。

小倉:おめでとうございます。

阿部:これまで10年ぐらい個人事業主としてやってきたものを、ただ法人化するだけなんですけれども。

アカデミズムとビジネスの架橋に

阿部:内容としては、研究コンサルティングやアカデミックコンサルと自分で呼んでいるんですが、その核にあるのは学術論文の添削みたいなことですね。あるいは申請書とか何でも見るんですが、今紹介してくれた一葉さんもKEENという会社をやっていらっしゃって。

小倉:そうですね。

阿部:本当に一緒にいろいろやりましたよね。

小倉:そうですね。京都に2万人ぐらいが集った「IVS(Infinity Ventures Summit)」というものがあって。

阿部:2023年にやったやつですよね。

小倉:そうです。やりましたね。スタートアップの登竜門と呼ばれるピッチイベントにファイナリストで選ばれまして、「こんなにたくさんの人の前でどうしよう?」と。そこで最初にピッチをしたら、VCの方々から「これじゃあ何を言っているかまったくわからないから、もうちょっとブラッシュアップしてきてくれ」というふうに言われまして。

森脇:けちょんけちょんに言われたんだ。

小倉:「阿部先生、助けてください」ということで、まさにアーギュメントといいますか、議論の核となる部分は何なのかを一緒に構築していただきましたね。

阿部:そうそう。本当にプレゼンから文章指導から、会議に謎に出席しているおじさんみたいな(笑)。

小倉:いやいや、ありがたいです。あとは弊社も今、コミュニティやSNS上に広がる界隈の分析をやっているんですが、集団力学というかたちで研究されている京都大学の博士課程の研究者が弊社に所属しております。その方の論文を添削してもらったり、共同で論文を書いてすごくフィードバックしてもらったりしております。

阿部:月契約でやらせていただいたり、俺の能力の許す限り、別に何でもいいという感じのことをやっている会社です。

この自己紹介をしたのはどういうことかといいますと、今日のイベントの趣旨に関わると思っておりまして。要は研究者としてふだんやっていることと、研究、あるいは教育をビジネスにすること。そのブリッジを目指してがんばっているというよりは、自分がやりたいことをやっていたらこうなったというだけなんです。

その1つの成果として、今日ご紹介いただいた『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』というものがあると自分では思っています。アカデミズムとビジネスの架橋というかブリッジというか、まさしく今日はそのような場なので、そういう話をできたらなと思っています。

そもそも「アーギュメント」とは何か?

阿部:あとは、この本の中身の話ですね。アーギュメントというキーワードを核にして書いている本で、一番重要なキーワードなんですが、アーギュメントとは何かを一番最初に定義しているんです。話すと長くなるんですけれども、シンプルに言うと「論証を要求するテーゼである」というふうに定義しています。

「論証を要求する」とはどういうことかというと、アーギュメントを翻訳すると「主張」という意味になってしまうんですが、主張というのはいろんな意味があって。アーギュメントも主張なんですが、狭義の強いアカデミックな意味において、つまり論文の主張に足る主張、狭義の主張を定義するために、アーギュメントという英単語を使っているわけなんです。

この論証を要求するテーゼとはどういうことかというと、誰かがその主張をした時に、相手が「えっ、それってどういうことなの? 説明してみてよ」「いや。お前、それは違うだろ」「そんなわけないだろ」というリアクションを引き出すようなものが、論証を要求するテーゼであるということなんですね。

主張した時に、相手が「なるほど」って思っちゃいけない。つまり自明なものはアーギュメントではなくて、相手が「いや。それ、違うんじゃない?」、あるいは「説明してみてくださいよ」と思うような何かがアーギュメントである。これが主張です。

つまりアーギュメントを提出すると何が起こるかというと、「説明してみてよ」と言っていますが、説明責任が発生するわけですね。

森脇:そうですね。

阿部:これは論文だと「論証」というふうに言うわけです。なので論文というのは、アーギュメントを出して、それを論証することが1セットになっているわけです。強いアーギュメントを出せば出すほど論証が難しくなる。アーギュメントの価値が低いと論証は簡単になるけど、論証された時のインパクトが小さいというトレードオフの関係にあるんです。

SNSで炎上している研究者は「研究者として正しい」

阿部:つまりアーギュメントというのは、昨今SNSではみんなが「誰もが納得するようなことを言わなきゃいけない」というふうに思っている。誰かの気分を害してはいけないというような、つまり反論があると炎上してしまう世の中になってしまったんです。

そのような世の中で、学者、研究者、大学の先生はしょっちゅうX(旧Twitter)とかで炎上しているわけですが、それは当たり前です。そのように人が納得しないことを言うのが我々の仕事なので、つまり炎上している研究者は研究者として正しいわけです。

(一同笑)

阿部:そのことから思うに、たぶんビジネスの世界においても、経営者とかは特に炎上する人がたくさんいると思うんです。

小倉:確かに。

森脇:何人か顔が浮かびますが、言わないですよ(笑)。

(一同笑)

阿部:なので、経営者に限らずビジネスパーソンは誰でもそうだと思うんですが、強い意見を出す、強い意見を持つこと自体が難しくなっている世の中において、研究者もビジネスパーソンもそういうことをやっている。今日は、「アーギュメントというのはこうですよ」というアカデミックな議論をこっちから教えるつもりは、実はあんまりなくて。

俺はどっちもやっているわけですが、アカデミシャンとして論文、主張する、議論することと、ビジネスの世界においてもそういうことがあるはずです。今日はまさしくその2つを対話させるような場になればいいなと思って、やってまいりました。

森脇:いいですね。

阿部:というわけで、よろしくお願いします。

森脇:ありがとうございます。

小倉:よろしくお願いします。ありがとうございます。

森脇:先生。ちなみに今まで「先生」と言っていましたが、「阿部さんって言おう」と言っていたので、今日は「阿部さん」でいかせていただきます。

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