NFC(Near Field Communication)は、13.56MHz帯の周波数を使った無線通信規格のこと。NFC対応の機器同士を10cm程度まで近づけると、双方向に通信ができる。データ伝送速度は106k、212k、424kビット/秒。近距離、低速でデータをやりとりするため、通信を傍受されにくいといった特徴がある。
NFCの規格自体は何年も前に策定されたものだ。最近になって注目を集めているのは、2010年に米グーグルが携帯端末向けのOS「Android」でNFCの標準サポートを表明したため。これに伴ってスマートフォンなどNFC対応機器が増えたり、NFCを利用するアプリケーション開発が盛んになったりすると予測される。また、NFCの決済プラットフォームが国際的にも広く普及するのではないかと期待されている。
NFCの規格で定義されている機能は主に三つある。第1に、ICカードやICタグとして利用できる「カードエミュレーション機能」だ。これは交通機関の乗車カードや、企業の入退出管理カードとして使える。第2に、ICカードやICタグの読み書きができる「リーダー/ライターエミュレーション機能」。デジタルサイネージなどにICタグを組み込んでおき、携帯端末をかざすとURLなどの関連情報を読み込むといった使い方ができる。第3が、NFC対応の機器同士でP2Pのように通信できる「端末間通信機能」である。NFCに対応した機器同士を近づければ、データを交換できる。
NFCの規格はISO/IECで標準化されている。2003年には「ISO/IEC 18092」、2005年にはその拡張仕様「ISO/IEC 21481」として、無線通信に使うプロトコル部分が規格化された。例えば日本で広く使われているFeliCaは、プロトコル部分にISO/IEC 18092を採用し、ICチップ、ファイルシステム、データの暗号化処理などはソニーが独自に実装したものだ。
プロトコル部分には標準規格があるものの、他の部分の実装はベンダーごとに異なるため、互換性がない。そこで「NFCフォーラム」という業界団体が、プロトコル以外の実装も含めて標準化を目指している。