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JPWO2015141555A6 - ダイシングシートおよび当該ダイシングシートを用いるチップの製造方法 - Google Patents

ダイシングシートおよび当該ダイシングシートを用いるチップの製造方法 Download PDF

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Abstract

基材(2)と、基材(2)の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層(3)とを備えたダイシングシート(1)であって、粘着剤層(3)は、エネルギー重合性化合物(B)を含む粘着剤組成物から形成されたものであり、粘着剤層(3)はエネルギー線照射前の23℃における貯蔵弾性率が135,000Pa以下であり、粘着剤層(3)にエネルギー線を照射する前のダイシングシート(1)について、JIS Z0237:2009に準拠して、ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験を行ったときに測定される粘着力が、10N/25mm以上であり、ダイシングシート(1)の粘着剤層(3)にエネルギー線を照射したのち、当該ダイシングシート(1)について、ガードナー式マンドレル屈曲試験機を用いて、ASTM−D522に基づいて、マンドレルの直径を2mmとして折り曲げ試験を行っても、エネルギー線照射後の粘着剤層(3)に割れが生じない。

Description

本発明は、保護膜付シリコンウエハ、半導体パッケージなどの半導体関連部材を分割加工することにより形成された部材であるチップを製造する際に使用されるダイシングシートおよびそのダイシングシートを用いるチップの製造方法に関する。
保護膜付シリコンウエハ、半導体パッケージなどの半導体関連部材からチップを製造する方法の一例として、次の様な方法が挙げられる。まず、半導体関連部材の一方の面(半導体関連部材がシリコンウエハを備える部材の場合には、シリコンウエハの回路形成面と反対側の面が当該面となる。)に、基材と粘着剤層とを備えた粘着シート(本明細書において「ダイシングシート」という。)を貼付することによって半導体関連部材をダイシングシートに対して固定する。
次に、このダイシングシートに対して固定された半導体関連部材を、回転刃などを用いて切断分離(ダイシング)して個片化し、ダイシングシート上に複数のチップが近接配置された部材を作製する(ダイシング工程)。
続いて、この部材におけるダイシングシートをエキスパンド(主面内方向に伸長)して、ダイシングシート上に配置されたチップの間隔を広げる(エキスパンド工程)。こうしてダイシングシート上で互いに離間した状態とされたチップを、個別にピックアップしてダイシングシートから分離させ(ピックアップ工程)、次の工程に移送する。
ダイシング工程完了後、ピックアップ工程を実施するまでに、上記の粘着剤層の粘着性を低下させる工程を実施することにより、ピックアップ工程の作業性が向上する。この粘着性を低下させる工程のために、通常ダイシングシートの粘着剤層は特定の刺激によりその粘着性が低下するように設計されており、特定の刺激として、たとえば紫外線や電子線などのエネルギー線照射が採用される。
ダイシング工程やエキスパンド工程では、半導体関連部材が分割されてなるチップとダイシングシートの粘着剤層との間に、外力が付与される。この外力によってチップが粘着剤層から剥離してしまう現象(本明細書において、この現象を「チップ飛散」ともいう。)が生じにくいことが望ましい。
ところで、ダイシング工程に供される半導体関連部材が保護膜を備える場合や、半導体チップが樹脂封止されてなる半導体パッケージである場合には、保護膜や封止樹脂は、情報表示のための部材としても使用される場合がある。すなわち、レーザーマーキング処理などを保護膜や封止樹脂の面に対して行って、その表面に凹凸を形成することにより、半導体関連部材やチップに関する情報(たとえば文字や記号等からなるもの)を視認可能に表示させる場合がある。
このように凹凸を有する面からなる被着面にダイシングシートの粘着剤層が貼着していると、被着面の凹部(本明細書において、「凹陥部」ともいう。)に、粘着剤層が入り込み、ピックアップ工程においてダイシングシートからチップをピックアップした際に、チップの凹陥部内に粘着剤層を構成する材料が残留する現象(本明細書において、この現象を「凹陥部への物質残留」ともいう。)が生じるという問題が起こる場合があった。
この凹陥部への物質残留に関連し、特許文献1には、少なくとも一方の面に、情報の記録による凹凸樹脂面をもつ硬化樹脂層が設けられた半導体デバイスをダイシングするに際し、前記硬化樹脂層の凹凸樹脂面に貼着され、該半導体デバイスを固定するために用いられるダイシング用粘着テープにおいて、基材フィルムと、その上に設けられたエネルギー線硬化型の粘着剤層を有し、かつ該粘着剤層のエネルギー線硬化前の温度25℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上であることを特徴とするダイシング用粘着テープが開示されている。
特開2005−277297号公報
特許文献1に開示されるダイシング用粘着テープ(ダイシングシート)は、エネルギー線が照射される前の状態にある粘着剤層の貯蔵弾性率を高めることにより、粘着剤層を構成する材料の凹陥部への入り込みを抑制して、凹陥部内への物質残留を生じにくくしている。
本発明は、特許文献1とは異なる観点から、ダイシング工程中のチップ飛散を生じにくくすることおよび凹陥部内への物質残留を生じにくくすることを両立しうるダイシングシートを提供すること、およびそのダイシングシートを用いるチップの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らが検討したところ、次の知見を得た。
(I)エネルギー線が照射される前の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(単位:Pa、本明細書において、「照射前貯蔵弾性率」ともいう。)に上限を設けるとともに、エネルギー線が照射される前のダイシングシートについての、JIS Z0237:2009に規定されるステンレス試験板に対する180°引きはがし試験により測定された粘着力(単位:N/25mm、本明細書において、「照射前粘着力」ともいう。)に下限を設けることによって、チップ飛散を生じにくくすることができる。
(II)エネルギー線照射後の粘着剤層の耐屈曲性を高めることによって凹陥部内への物質残留を生じにくくすることができる。かかる耐屈曲性は、ダイシングシートの折り曲げ試験や、粘着剤層の破断伸度により評価することが可能である。
かかる知見に基づき完成された本発明は、次のとおりである。
(1)基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備えたダイシングシートであって、前記粘着剤層は、エネルギー線重合性官能基を有する化合物であるエネルギー重合性化合物(B)を含む粘着剤組成物から形成されたものであり、前記粘着剤層はエネルギー線照射前の23℃における貯蔵弾性率が135,000Pa以下であり、前記粘着剤層にエネルギー線を照射する前の前記ダイシングシートについて、JIS Z0237:2009に準拠して、ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験を行ったときに測定される粘着力が、10N/25mm以上であり、前記ダイシングシートの前記粘着剤層にエネルギー線を照射したのち、当該ダイシングシートについて、ガードナー式マンドレル屈曲試験機を用いて、ASTM−D522に基づいて、マンドレルの直径を2mmとして折り曲げ試験を行っても、前記エネルギー線照射後の粘着剤層に割れが生じないことを特徴とするダイシングシート。
(2)前記折り曲げ試験において、マンドレルの直径を1mmとしても、前記エネルギー線照射後の粘着剤層に割れが生じない、上記(1)に記載のダイシングシート。
(3)前記粘着剤層の厚さが25μm以下である、上記(1)または(2)に記載のダイシングシート。
(4)前記粘着剤組成物は、主剤(A)をさらに含むこと、および前記エネルギー重合性化合物(B)が前記主剤(A)としての機能を有する化合物(B)を含むことの少なくとも一方を満たす、上記(1)から(3)のいずれかに記載のダイシングシート。
(5)前記エネルギー重合性化合物(B)は、重量平均分子量4,000以下であって、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびに単官能および多官能のオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる、貯蔵弾性率調整機能を有する化合物(B)を含み、前記粘着剤組成物における前記化合物(B)の含有量は、前記粘着剤組成物における前記主剤(A)としての機能を有する物質の含有量100質量部に対して35質量部以上200質量部以下である、上記(4)に記載のダイシングシート。
(6)前記粘着剤組成物は、重量平均分子量4,000以下の貯蔵弾性率調整剤(D)(重量平均分子量4,000以下であって、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびに単官能および多官能のオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる化合物を除く。)を含有する、上記(1)から(4)のいずれかに記載のダイシングシート。
(7)上記(1)から(6)のいずれかに係るダイシングシートの前記粘着剤層側の面を、半導体関連部材の面に貼付し、前記ダイシングシート上の前記半導体関連部材を切断して個片化し、複数のチップを得る、デバイスチップの製造方法であって、前記ダイシングシートの前記粘着剤層側の面が貼付される前記半導体関連部材の面は凹部を有する、チップの製造方法。
本発明に係るダイシングシートは、粘着剤層の照射前貯蔵弾性率が135,000Pa以下であるとともに、照射前粘着力が10N/25mm以上であるため、ダイシング工程においてチップ飛散が生じにくい。また、本発明に係るダイシングシートはエネルギー線照射後の粘着剤層が耐屈曲性に優れるため、凹陥部内に入り込んだ粘着剤層を構成する材料がピックアップ時に粘着剤層との間で破断しにくい。それゆえ、本発明に係るダイシングシートは凹陥部内への物質残留が生じにくい。
したがって、本発明に係るダイシングシートを用いることにより、ダイシング工程やピックアップ工程において不具合が生じにくくなって、品質に優れるチップを生産性高く製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るダイシングシートの概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、基材2と、基材2の一方の面に積層された粘着剤層3とを備える。
1.基材
本実施形態に係るダイシングシート1の基材2は、ダイシング工程の後に行われるエキスパンド工程などにおいて破断しない限り、その構成材料は特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルムから構成される。そのフィルムの具体例として、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材2はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
基材2を構成するフィルムは、エチレン系共重合フィルムおよびポリオレフィン系フィルムの少なくとも一種を備えることが好ましい。
エチレン系共重合フィルムは共重合比を変えることなどによりその機械特性を広範な範囲で制御することが容易である。このため、エチレン系共重合フィルムを備える基材2は本実施形態に係るダイシングシート1の基材として求められる機械特性を満たしやすい。また、エチレン系共重合フィルムは粘着剤層3に対する密着性が比較的高いため、ダイシングシートとして使用した際に基材2と粘着剤層3との界面での剥離が生じにくい。
エチレン系共重合フィルムおよびポリオレフィン系フィルムは、ダイシングシートとしての特性に悪影響を及ぼす成分(例えば、ポリ塩化ビニル系フィルムなどでは、当該フィルムに含有される可塑剤が基材2から粘着剤層3へと移行し、さらに粘着剤層3の基材2に対向する側と反対側の面に分布して、粘着剤層3の被着体に対する粘着性を低下させる場合がある。)の含有量が少ないため、粘着剤層3の被着体に対する粘着性が低下するなどの問題が生じにくい。すなわち、エチレン系共重合フィルムおよびポリオレフィン系フィルムは化学的な安定性に優れる。
基材2は、上記の樹脂系材料を主材とするフィルム内に、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとして、メラミン樹脂のような有機系材料、シリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。こうした添加剤の含有量は特に限定されないが、基材2が所望の機能を発揮し、平滑性や柔軟性を失わない範囲に留めるべきである。
粘着剤層3を硬化するために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合には、基材2は紫外線に対して透過性を有することが好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には基材2は電子線の透過性を有していることが好ましい。
また、基材2の粘着剤層3側の面(以下、「基材第一面」ともいう。)には、カルボキシル基、ならびにそのイオンおよび塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を有する成分が存在することが好ましい。基材2における上記の成分と粘着剤層3に係る成分(粘着剤層3を構成する成分および架橋剤(C)などの粘着剤層3を形成するにあたり使用される成分が例示される。)とが化学的に相互作用することにより、これらの間で剥離が生じる可能性を低減させることができる。基材第一面にそのような成分を存在させるための具体的な手法は特に限定されない。基材2自体を例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム等として、基材2を構成する材料となる樹脂がカルボキシル基、ならびにそのイオンおよび塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を有するものとするのであってもよい。基材第一面に上記成分を存在させる他の手法として、基材2は例えばポリオレフィン系フィルムであって、基材第一面側にコロナ処理が施されていたり、プライマー層が設けられていたりしてもよい。また、基材2の基材第一面と反対側の面には各種の塗膜が設けられていてもよい。
基材2の厚さはダイシングシート1が前述の各工程において適切に機能できる限り、限定されない。好ましくは20μm以上450μm以下、より好ましくは25μm以上400μm以下、特に好ましくは50μm以上350μm以下の範囲にある。
本実施形態における基材2の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、特に200%以上1000%以下であることが好ましい。ここで、本明細書において、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材2は、エキスパンド工程の際に破断しにくく、半導体関連部材を切断して形成したデバイスチップを離間し易いものとなる。
また、本実施形態における基材2の25%ひずみ時引張応力は5N/10mm以上15N/10mm以下であることが好ましく、最大引張応力は15MPa以上50MPa以下であることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力および最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm未満であったり、最大引張応力が15MPa未満であったりすると、ダイシングシート1に半導体関連部材を貼着した後、リングフレームなどの枠体に固定した際、基材2が柔らかいために弛みが発生することが懸念され、この弛みは搬送エラーの原因となることがある。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mmを超えたり、最大引張応力が50MPaを超えたりすると、エキスパンド工程時にリングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりするなどの問題が生じやすくなることが懸念される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材2における原反の長尺方向について測定した値を指す。
2.粘着剤層
本実施形態に係る半導体関連部材加工用シート1が備える粘着剤層3はエネルギー線重合性官能基を有する化合物であるエネルギー重合性化合物(B)を含む粘着剤組成物から形成される。これにより、粘着剤層3がかかる化合物を含有することになり、後述するように、粘着剤層3の物性をエネルギー線を照射する前後で変化させることができる。
この粘着剤組成物は、主剤(A)をさらに含むこと、およびエネルギー重合性化合物(B)が主剤(A)としての機能を有する化合物(B)を含むことの少なくとも一方を満たすことが好ましい。エネルギー線重合性化合物(B)が化合物(B)を含有する場合には、粘着剤組成物は、化合物(B)以外に別途主剤(A)となる成分を含有しないこともある。粘着剤組成物は、必要に応じ、さらに架橋剤(C)などを含有してもよい。以下、粘着剤組成物を構成する成分について説明する。
(1)主剤(A)
主剤(A)の種類は、特に限定されないが、粘着剤層、特にエネルギー線を照射する前の粘着剤層に適切な粘着性を容易に付与できるものが好ましい。かかる主剤(A)として、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等の樹脂材料が例示される。以下、アクリル系の材料の一種であるアクリル系重合体(A1)についてやや詳しく説明する。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物はアクリル系重合体(A1)を含有してもよい。この粘着剤組成物から形成された粘着剤層3において、アクリル系重合体(A1)は少なくともその一部が後述する架橋剤(C)と架橋反応を行って架橋物として含有される場合もある。
アクリル系重合体(A1)としては、従来公知のアクリル系の重合体を用いることができる。アクリル系重合体(A1)のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、塗工時の造膜性の観点から1万以上200万以下であることが好ましく、10万以上150万以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、粘着剤組成物が含有する成分の重量平均分子量(Mw)とは、その成分が重合体であり不可避的にある程度の分子量分布を有する場合には、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量を意味し、その成分がある特定の構造を有する化合物と他の成分(当該化合物を製造する際に生じる副生成物などが例示される。)とからなる場合には、その化合物の分子量(式量)を意味する。ポリスチレン換算重量平均分子量の測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8121GPC/HT」に、東ソー社製カラム、TSKguardcolumn HXL−H、TSKgel GMHXL−L(2本)、TSKgel G2000HXLをこの順序で連結したものを用い、溶離液:テトラヒドロフラン、オーブン温度:40℃、試料濃度:0.2%(w/v)、流速1.0ml/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
また、アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度Tgは、好ましくは−70℃以上30℃以下、さらに好ましくは−60℃以上20℃以下の範囲にある。ガラス転移温度は、Fox式より計算することができる。
上記アクリル系重合体(A1)は、1種類のアクリル系モノマーから形成された単独重合体であってもよいし、複数種類のアクリル系モノマーから形成された共重合体であってもよいし、1種類または複数種類のアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとから形成された共重合体であってもよい。アクリル系モノマーとなる化合物の具体的な種類は特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、その誘導体(アクリロニトリルなど)が具体例として挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルについてさらに具体例を示せば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の鎖状骨格を有する(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の水酸基以外の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。また、アクリル系モノマー以外のモノマーとして、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン、酢酸ビニル、スチレンなどが例示される。なお、アクリル系モノマーがアルキル(メタ)アクリレートである場合には、そのアルキル基の炭素数は1から18の範囲であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が、後述するようにアクリル系重合体(A1)を架橋しうる架橋剤(C)を含有している場合には、アクリル系重合体(A1)が有する反応性官能基の種類は特に限定されず、架橋剤(C)の種類などに基づいて適宜決定すればよい。例えば、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合には、アクリル系重合体(A1)が有する反応性官能基として、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが例示される。これらのうちでも、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合には、イソシアネート基との反応性の高い水酸基を反応性官能基として採用することが好ましい。アクリル系重合体(A1)に反応性官能基として水酸基を導入する方法は特に限定されない。一例として、アクリル系重合体(A1)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するアクリレートに基づく構成単位を骨格に含有する場合が挙げられる。
(2)エネルギー線重合性化合物(B)
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が含有するエネルギー線重合性化合物(B)は、エネルギー線重合性基を有し、紫外線、電子線、X線等のエネルギー線の照射を受けて重合反応することができる限り、具体的な構成は特に限定されない。エネルギー線重合性化合物(B)が重合することによって粘着剤層3の粘着性が低下して、ピックアップ工程の作業性が向上する。エネルギー線が照射されるまでは、エネルギー線重合性基の重合反応は実質的に生じないため、本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3は、エネルギー線が照射される前の状態において、エネルギー線重合性化合物(B)を含有する。
エネルギー線重合性基の種類は特に限定されない。その具体例として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基などが挙げられる。エネルギー線重合性基はエチレン性不飽和結合を有する官能基であることが好ましく、その中でもエネルギー線が照射されたときの反応性の高さの観点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エネルギー線重合性化合物(B)の分子量は特に限定されない。その分子量が過度に小さい場合には、製造過程においてその化合物が揮発することが懸念され、このとき粘着剤層3の組成の安定性が低下する。したがって、エネルギー線重合性化合物(B)の分子量は、重量平均分子量(Mw)として100以上とすることが好ましく、200以上とすることがより好ましく、300以上とすることが特に好ましい。
エネルギー線重合性化合物(B)は、エネルギー線が照射される前の粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させる機能を有する化合物、すなわち、貯蔵弾性率調整機能を有する化合物(B)を含んでいてもよい。このような化合物(B)として、重量平均分子量(Mw)が4,000以下であって、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびに単官能および多官能のオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる化合物が例示される。化合物(B)は、後述する貯蔵弾性率調整剤(D)の一種とも位置付けられうる。
上記の化合物(B)の具体的な組成は特に限定されない。化合物(B)の具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。粘着剤組成物が主剤(A)としてアクリル系重合体(A1)を含む場合には、アクリル系重合体(A1)への相溶性の高さの観点から、化合物(B)は(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
エネルギー線重合性化合物(B)が1分子中に有するエネルギー線重合性基の数は限定されないが、複数であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。エネルギー線重合性化合物(B)が1分子中に有するエネルギー線重合性基の数の上限としては、16以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。エネルギー線重合性化合物(B)の重量平均分子量(Mw)が小さい場合には、エネルギー線重合性化合物(B)が1分子中に有するエネルギー線重合性基の数も少なくして均衡を図ることにより、後述する粘着剤層3の耐屈曲性を維持することが容易となる傾向がある。
粘着剤組成物における化合物(B)の含有量は、粘着剤組成物における主剤(A)としての機能を有する物質の含有量(当該物質が、主剤(A)のみからなる場合には主剤(A)の含有量、後述する化合物(B)のみからなる場合には化合物(B)の含有量、主剤(A)と化合物(B)とからなる場合にはこれらの含有量の総和)100質量部に対して35質量部以上200質量部以下とすることが好ましく、45質量部以上120質量部以下とすることがより好ましい。なお、本明細書において、各成分の含有量を示す「質量部」は固形分としての量を意味する。化合物(B)の含有量をこのような範囲とすることで、エネルギー線照射前の状態において粘着剤層3の23℃における貯蔵弾性率を後述する範囲とすることと、エネルギー線照射によって粘着剤層3の粘着性を適切に低下させることとを両立することが容易となる。また、後述する粘着剤層3の耐屈曲性を向上させることが容易となる。
エネルギー線重合性化合物(B)は主剤(A)としての機能を有する化合物(B)を含んでいてもよい。化合物(B)の具体例として、エネルギー線重合性基を有する構成単位を主鎖または側鎖に有する重合体が挙げられる。この場合には、化合物(B)は主剤(A)としての性質を有するため、粘着剤層3を形成するための組成物の組成が簡素化されるなどの利点を有する。
上記のような主剤(A)の性質を有する化合物(B)は、例えば次のような方法で調製することができる。水酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有する(メタ)アクリレートに基づく構成単位およびアルキル(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含んでなる共重合体であるアクリル系重合体と、上記の官能基と反応しうる官能基およびエネルギー線重合性基(例えばエチレン性二重結合を有する基)を1分子内に有する化合物とを反応させることにより、エネルギー線重合性基が付加したアクリル系重合体を得ることができる。
エネルギー線重合性化合物(B)を硬化させるためのエネルギー線としては、電離放射線、すなわち、X線、紫外線、電子線などが挙げられる。これらのうちでも、比較的照射設備の導入の容易な紫外線が好ましい。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、取り扱いのしやすさから波長200〜380nm程度の紫外線を含む近紫外線を用いればよい。紫外線の光量としては、エネルギー線重合性化合物(B)の種類や粘着剤層3の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常50〜500mJ/cm程度であり、100〜450mJ/cmが好ましく、150〜400mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照度は、通常50〜500mW/cm程度であり、100〜450mW/cmが好ましく、200〜400mW/cmがより好ましい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどが用いられる。
電離放射線として電子線を用いる場合には、その加速電圧については、エネルギー線重合性化合物(B)の種類や粘着剤層3の厚さに応じて適宜選定すればよく、通常加速電圧10〜1000kV程度であることが好ましい。また、照射線量は、エネルギー線重合性化合物(B)が適切に硬化する範囲に設定すればよく、通常10〜1000kradの範囲で選定される。電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
(3)架橋剤(C)
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は、前述のように、アクリル系重合体(A1)などの主剤(A)と反応しうる架橋剤(C)を含有してもよい。この場合には、本実施形態に係る粘着剤層3は、主剤(A)と架橋剤(C)との架橋反応により得られた架橋物を含有する。
架橋剤(C)の含有量は特に限定されない。上記の架橋物の形成しやすさの観点から、架橋剤(C)の含有量は主剤(A)100質量部に対して0.02質量部以上とすることが好ましい。養生期間が過度に長くなることを回避すること等の観点から、架橋剤(C)の含有量は主剤(A)100質量部に対して15質量部以下とすることが好ましい。架橋剤(C)の種類としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられる。これらの中でも、架橋反応を制御しやすいことなどの理由により、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物および/またはポリエポキシ化合物であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物は1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物であって、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの鎖状骨格を有するイソシアネートが挙げられる。
また、これらの化合物の、ビウレット体、イソシアヌレート体や、これらの化合物と、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の非芳香族性低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などの変性体も用いることができる。上記のポリイソシアネート化合物は1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
ポリエポキシ化合物は1分子当たりエポキシ基を2個以上有する化合物であって、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,6−ジグリシジルn−ヘキサン、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等が挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が架橋剤(C)を含有する場合には、その架橋剤(C)の種類などに応じて、適切な架橋促進剤を含有することが好ましい。例えば、架橋剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合には、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は有機スズ化合物などの有機金属化合物系の架橋促進剤を含有することが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は、重量平均分子量(Mw)が4,000以下であって、エネルギー線が照射される前の粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させる機能を有する化合物である貯蔵弾性率調整剤(D)を含有することが好ましい。前述の化合物(B)は、貯蔵弾性率調整剤(D)であってエネルギー線重合性基を有する化合物と位置付けられうる。化合物(B)以外の貯蔵弾性率調整剤(D)として、粘着付与樹脂や可塑剤が例示される。粘着付与樹脂の具体例としては、ロジンおよびその誘導体(具体例として重合化ロジン、エステル化ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジン、およびこれらの水素添加樹脂が挙げられる。)等のロジン系粘着付与樹脂;αピネン樹脂、βピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンとスチレンとの共重合体等のテルペン系粘着付与樹脂;C系石油樹脂、C系石油樹脂、C/C系石油樹脂およびこれらの水素添加樹脂等の石油系樹脂;クマロン樹脂;アルキルフェノール樹脂;キシレン樹脂などが挙げられる。化合物(B)以外の貯蔵弾性率調整剤(D)は、粘着剤組成物が化合物(B)を含む場合に粘着剤層3の貯蔵弾性率を調整する目的や、後述するように、化合物(B)の主剤(A)に対する含有量を低減した場合にこれを補う目的で用いることができる。
粘着剤組成物が化合物(B)以外の貯蔵弾性率調整剤(D)を含む場合には、粘着剤組成物における貯蔵弾性率調整剤(D)の含有量(当該物質が、化合物(B)を含む場合には、これも含めた総和)は、粘着剤組成物における主剤(A)としての機能を有する物質の含有量(当該物質が、主剤(A)のみからなる場合には主剤(A)の含有量、後述する化合物(B)のみからなる場合には化合物(B)の含有量、主剤(A)と化合物(B)とからなる場合にはこれらの含有量の総和)100質量部に対して35質量部以上200質量部以下とすることが好ましく、45質量部以上120質量部以下とすることがより好ましい。
(4)その他の成分
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は、上記の成分に加えて、光重合開始剤、粘着付与剤、染料や顔料などの着色材料、難燃剤、フィラー、帯電防止剤等の各種添加剤を含有してもよい。
ここで、光重合開始剤についてやや詳しく説明する。光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
(5)物性、形状等
(5−1)照射前貯蔵弾性率
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3は、エネルギー線を照射する前の23℃における貯蔵弾性率(本明細書において「照射前貯蔵弾性率」ともいう。)が135,000Pa以下である。照射前貯蔵弾性率がこの範囲を満たすことによって、粘着剤層3を構成する材料は被着面である半導体関連部材の面に容易に濡れ広がり、優れた粘着性を有するダイシングシート1が得られる。被着面が凹陥部を有している場合には、粘着剤層3を構成する材料は凹陥部内にも濡れ広がることができ、ダイシングシート1の半導体関連部材に対する粘着性が特に高まる。ダイシングシート1の半導体関連部材に対する粘着性をより安定的に高める観点から、照射前貯蔵弾性率は120,000Pa以下であることが好ましく、100,000Pa以下であることがより好ましい。
照射前貯蔵弾性率の下限は特に限定されない。粘着剤層3の形状を安定的に維持する観点から、照射前貯蔵弾性率は10,000Pa以上とすることが好ましく、20,000Pa以上とすることがより好ましい。
照射前貯蔵弾性率は、アクリル系重合体(A1)などの主剤(A)の分子量および含有量、架橋剤(C)を用いて主剤(A)の架橋が行われる場合にはその架橋の程度の種類および含有量、貯蔵弾性率調整剤(D)(その一種と位置付けられうる化合物(B)であってもよい。)を含有する場合にはその種類および含有量などを変えることによって制御することができる。
なお、上記の照射前貯蔵弾性率は、公知の粘弾性測定装置(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製「ARES」)を用いて測定することができる。また、その測定にあたっては、実施例において後述するように、粘着剤層3を構成する材料からなる厚さ1mm程度の層状体を被測定物とすることが、測定結果のばらつきを少なくする観点から好ましい。
(5−2)照射前粘着力
エネルギー線を照射する前の状態における本発明の一実施形態に係るダイシングシート1について、JIS Z0237:2009に準拠して、ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験を行ったときに測定される粘着力(照射前粘着力)は、10N/25mm以上である。照射前粘着力が10N/25mm以上であることにより、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、被着面が保護膜の面からなる場合のみならず、被着面が半導体パッケージの封止樹脂の面からなる場合であっても、ダイシング工程においてチップ飛散などの問題が生じにくい。ダイシング工程において問題が生じる可能性をより安定的に低減させる観点から、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1の照射前粘着力は15N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることがさらに好ましく、25N/25mm以上であることが特に好ましい。本発明の一実施形態に係るダイシングシート1の照射前粘着力の上限は限定されない。
通常、被着面が半導体パッケージの封止樹脂の面である場合には、被着面が保護膜の面からなる場合に比べて、ダイシングシートの被着面に対する粘着性が低下しやすいが、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1はこの場合においても優れた粘着性を有する。すなわち、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、上記の照射前粘着力を測定するための試験と同様の試験を、半導体パッケージの封止樹脂の面を被着面として行ったときに、測定される粘着力が1N/25mm以上となりやすい。
なお、エネルギー線を照射した後の状態における本発明の一実施形態に係るダイシングシート1について、被着面を半導体パッケージの封止樹脂の面として上記の方法により引きはがし粘着力試験を行った時に測定される粘着力は、限定されない。この粘着力は低ければ低いほど好ましい。通常、1N/25mm未満であり、700mN/25mm以下であることが好ましく、500mN/25mm以下であることがより好ましい。
(5−3)耐屈曲性
本発明の一実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3は優れた耐屈曲性を有する。耐屈曲性は次の折り曲げ試験により評価することが可能である。
本発明の一実施形態に係るダイシングシート1に対してエネルギー線を照射した後に、ガードナー式マンドレル屈曲試験機を用いて、ASTM−D522に基づいて、マンドレルの直径を2mmとしてダイシングシート1の折り曲げ試験を行った場合に、粘着剤層3には割れが生じない。本発明の一実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3はこのような優れた耐屈曲性を有するため、ダイシングシート1を被着面に貼付したことにより、その粘着剤層3を構成する材料が被着面の凹陥部に入り込んでも、ダイシングシート1を被着面から剥離した時に、その材料は粘着剤層3とともに被着面から分離しやすい。したがって、凹陥部内への物質残留が生じにくく、凹陥部により形成された表示の視認性が良好な状態を維持しやすい。
本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、上記の折り曲げ試験において、マンドレルの直径を1mmとしても、エネルギー線照射後の粘着剤層3に割れが生じないことが好ましい。この場合には、レーザーマーキングが施されている被着面に長期間(具体例として1週間が挙げられる。)粘着剤層3が貼着して粘着剤層3を構成する材料が十分に被着面の凹陥部に濡れ広がった状態となった場合であっても、エネルギー線を照射して粘着剤層3の粘着性を低下させた後、ダイシングシート1を剥離した際に、凹陥部により形成された表示の視認性が良好な状態を維持しやすい。
粘着剤層3が、エネルギー線の照射により過度に硬化しないようにすることによって、粘着剤層3の耐屈曲性を向上させることが容易となる。このような粘着剤層3の過度の硬化の抑制は、たとえば、エネルギー線重合性化合物(B)が1分子中に有するエネルギー線重合性基の数を、エネルギー線重合性化合物(B)の重量平均分子量(Mw)に対して多くなりすぎないように調整することにより可能となる。また、エネルギー線重合性化合物(B)が前述の化合物(B)を含有する場合には、化合物(B)の主剤(A)に対する含有量を低減することで、粘着剤層3の過度の硬化の抑制が容易となる。化合物(B )の主剤(A)に対する含有量を低減することにより、粘着剤層3の貯蔵弾性率が十分に低くならない場合には、化合物(B)以外の貯蔵弾性率調整剤(D)を併用してもよい。
(5−4)粘着剤層の厚さ
本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3の厚さは限定されない。粘着剤層3が厚い方がチップ飛散の問題は生じにくくなり、粘着剤層3が薄い方がダイシング工程において粘着剤が被着体に凝着することに起因する問題(粗大な凝着物が生成する、凝着物量が多いなど)が生じにくい。また、粘着剤層3が過度に厚い場合には、凹陥部への物質残留が生じやすくなるおそれがある。凹陥部への物質残留量が増大することは、レーザーマーキング処理などにより形成された印字の視認性を低下させる要因となる。チップ飛散および凹陥部への物質残留を生じにくくさせる観点から、本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3の厚さは、2μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましく、7μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
(5−5)剥離シート
本実施形態に係るダイシングシート1は、被着体である半導体関連部材に粘着剤層3を貼付するまでの間粘着剤層3を保護する目的で、粘着剤層3の基材第一面に対向する側と反対側の面に、剥離シートの剥離面が貼合されていてもよい。剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さについて特に制限はないが、通常20μm以上250μm以下程度である。
3.ダイシングシートの製造方法
ダイシングシート1の製造方法は、前述の粘着剤組成物から形成される粘着剤層3を基材2の一の面に積層できれば、詳細な方法は特に限定されない。一例を挙げれば、前述の粘着剤組成物および所望によりさらに溶媒を含有する塗工用組成物を調製し、基材2の一の面上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその塗工用組成物を塗布して塗膜を形成し、当該一の面上の塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層3を形成することができる。塗工用組成物は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層3を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。
塗工用組成物が架橋剤(C)を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のアクリル系重合体(A1)と架橋剤(C)との架橋反応を進行させ、粘着剤層3内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材2に粘着剤層3を積層させた後、得られたダイシングシート1を、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を通常行う。
ダイシングシート1の製造方法の別の一例として、前述の剥離シートの剥離面上に塗工用組成物を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させて粘着剤層3と剥離シートとからなる積層体を形成し、この積層体の粘着剤層3における剥離シートに対向する側と反対側の面を基材2の基材第一面に貼付して、ダイシングシート1と剥離シートとの積層体を得てもよい。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、半導体パッケージに貼付するまでの間粘着剤層3を保護していてもよい。
4.チップの製造方法
本実施形態に係るダイシングシート1を用いて半導体パッケージからモールドチップを製造する場合を具体例として、半導体関連部材からチップを製造する方法を以下に説明する。本明細書において、「半導体関連部材」とは半導体製造で使用される材料を意味し、例えば、シリコン、SiC、GaN等の半導体ウエハ、アルミナ、サファイア等のセラミック基板、半導体パッケージ、ガラス部材などが挙げられる。「半導体パッケージ」は、基台の集合体の各基台上に半導体チップを搭載し、これらの半導体チップを一括して樹脂封止した電子部品集合体をいう。「モールドチップ」は、半導体チップが樹脂封止された半導体部品をいう。
まず、TABテープのような複数の基台が連接してなる集合体の各基台上に半導体チップを搭載し、これらの半導体チップを一括して樹脂封止して半導体パッケージを得る。次に、半導体パッケージの封止樹脂側の面に、本実施形態に係るダイシングシート1を貼付することによって半導体パッケージをダイシングシート1に対して固定する。具体的には、ダイシングシート1の粘着剤層3側の面(すなわち、粘着剤層3の基材2と反対側の面)を、半導体パッケージの封止樹脂の面に貼付する。ダイシグシート1の周縁部は、通常その部分に設けられた粘着剤層3により、リングフレームと呼ばれる搬送や装置への固定のための環状の治具に貼付される。
本実施形態に係るダイシングシート1は、粘着剤層3の照射前貯蔵弾性率および照射前粘着力が適切な範囲に制御されているため、封止樹脂の面からなる被着面に対しても濡れ広がりやすい。したがって、ダイシング工程、具体的には、ダイシングシート1に対して固定された半導体パッケージを切断分離(ダイシング)して個片化し、ダイシングシート上に複数のモールドチップが近接配置された部材を作製する工程において、チップ飛散が生じにくい。
続いて、この部材におけるダイシングシートをエキスパンド(主面内方向に伸長)して、ダイシングシート上に配置されたモールドチップの間隔を広げる(エキスパンド工程)。こうしてダイシングシート上で互いに離間した状態とされたモールドチップを、個別にピックアップしてダイシングシートから分離させ(ピックアップ工程)、次の工程に移送する。
このピックアップ工程が開始されるまでに、ダイシングシート1の粘着剤層3に対してエネルギー線を照射して、その粘着性を低下させることが行われる。本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3は、エネルギー線照射後の耐屈曲性に優れるため、レーザーマーキングなどにより形成された凹陥部を封止樹脂の面が有していて、粘着剤層3を構成する材料が凹陥部内に入り込んだ場合であっても、ダイシングシート1を剥離した際に、その材料が凹陥部から抜け出しやすく、凹陥部内への物質残留が生じにくい。したがって、本実施形態に係るチップの製造方法により製造されたチップ(上記の説明ではデバイスチップ)は、凹陥部により形成された表示の視認性が良好な状態を維持しやすく、品質に優れる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
主剤としてのアクリル重合体(2−エチルヘキシルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸=50/40/10の組成比、重量平均分子量:80万)100質量部に対し、下記のエネルギー線重合性化合物(B1)を75質量部、およびトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(TDI−TMP)を含む架橋剤(トーヨーケム社製「BHS 8515」)を10質量部(配合量はいずれも固形分量)添加し、有機溶媒の溶液としての粘着剤塗工用組成物を得た。これを剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET381031」)上に塗布し、100℃、1分の乾燥を行った。次いで、電子線を照射した厚さ140μmのエチレン−メタクリル酸共重合体フィルムの電子線照射側の面に粘着剤層を転写し、ダイシングシートを得た。粘着剤層の乾燥後の厚さは、10μmであった。
エネルギー線重合性化合物(B1):10官能ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−1700B」、分子量:1700)
エネルギー線重合性化合物(B2):6官能アクリレート(日本化薬DPCA−120」、分子量:1946)
エネルギー線重合性化合物(B3):3官能アクリレート(新中村化学工業社製「A−9300」、分子量:423)
エネルギー線重合性化合物(B4):4官能アクリレート(新中村化学工業社製「AD−TMP」、分子量:466)
エネルギー線重合性化合物(B5):3〜4官能ウレタンアクリレート(大日精化社製「EXL810TL」、重量平均分子量:5000)
〔実施例1−1〕
実施例1において、粘着剤層の厚さ(乾燥後の厚さ)が30μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
〔実施例2から6および比較例1から5〕
実施例1において、塗工用組成物を得るために用いたエネルギー線重合性化合物の種類およびその配合量(主剤100質量部に対する配合量)を、表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
〔試験例1〕<照射前貯蔵弾性率の測定>
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材フィルムの一方の主面上に厚さ0.1μmのシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製「SP−PET382120」)を用意した。実施例および比較例において調製した塗工用組成物のそれぞれを、上記の剥離シートの剥離面上に、ナイフコーターにて塗布した。得られた塗膜を剥離シートごと100℃の環境下に1分間経過させることにより塗膜を乾燥させて、各塗工用組成物から形成された粘着剤層(最終的に得られた粘着剤層の厚さは40μmであった。)と剥離シートとからなる積層体を複数準備した。これらの積層体を用いて、各塗工用組成物から形成された粘着剤層を厚さ800μmとなるまで貼り合せ、得られた粘着剤層の積層体を直径10mmの円形に打ち抜いて、各塗工用組成物から形成された粘着剤層の粘弾性を測定するための試料を得た。粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製「ARES」)により、上記の試料に周波数1Hzのひずみを与え、−50〜150℃の貯蔵弾性率を測定し、23℃における貯蔵弾性率の値を照射前貯蔵弾性率として得た。その結果を表1に示す。
〔試験例2〕<エネルギー線照射前後の粘着力>
実施例および比較例において得られたダイシングシートの粘着力を、JIS Z0237:2009(ISO 29862〜29864:2007)に準拠して、以下のようにして測定した。
ステンレス試験板の面に、幅25mm×長さ200mmのダイシングシートを貼付し23℃、相対湿度50%の環境下に保管して20分経過後、万能型引張試験機(オリエンテック社製「TENSILON/UTM−4−100」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°にてダイシングシートの粘着力を測定し、得られた粘着力を照射前粘着力(単位:N/25mm)とした。
上記の試験の被着面を、ステンレス試験板の面から、封止樹脂組成物(京セラケミカル社製「KE−G1250」)を成形してなる半導体パッケージ(150mm×50mm、厚さ600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の封止樹脂の面に変更したこと以外は上記と同様の方法にて粘着力を測定し、得られた粘着力をPKG粘着力(照射前)(単位:mN/25mm)とした。
実施例および比較例において得られたダイシングシートを上記の半導体パッケージの封止樹脂の面に貼付してから、23℃、相対湿度50%の雰囲気下に20分間放置した後、ダイシングシートの基材側より、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD−2000m/12」)を用い、窒素雰囲気下にてダイシングシート側から紫外線照射(照度:230mW/cm、光量:190mJ/cm)を行った。紫外線照射後のダイシングシートについて、上記のPKG粘着力(照射前)の測定と同様にして粘着力を測定し、得られた粘着力をPKG粘着力(照射後)(単位:mN/25mm)とした。
これらの結果を表1に示す。
〔試験例3〕<折り曲げ試験>
実施例および比較例のダイシングシートに対して、窒素雰囲気下にてダイシングシート側から試験例2に記載される条件で紫外線照射を行った。紫外線照射後のダイシングシートについて、ガードナー式マンドレル屈曲試験機を用いて、ASTM−D522に基づいて、マンドレルの直径を2mmとしてダイシングシートの折り曲げ試験を行った。折り曲げ試験後のダイシングシートの粘着剤層を観察して、割れが生じたか否かを確認した。
同様の試験を、マンドレルの直径を1mmとして行った。折り曲げ試験後のダイシングシートの粘着剤層を観察して、割れが生じたか否かを確認した。
これらの結果を表1に示す。
〔試験例4〕<チップ飛散および粘着剤凝集物の発生しやすさの評価>
封止樹脂組成物(京セラケミカル社製「KE−G1250」)を成形してなる半導体パッケージ(50mm×50mm、厚さ600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の封止樹脂の面に、実施例および比較例のダイシングシートをテープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD2500」)を用いて貼付し、ダイシング用リングフレーム(ディスコ社製「2−6−1」)に固定した。次いで、半導体パッケージを、下記のダイシング条件で1mm角の半導体部品にダイシングした。ダイシング後、ダイシングシートから飛散した半導体部品の個数を目視にて数えた。ダイシングされた半導体部品の個数に対する飛散した半導体部品の個数の割合(%)を算出し、10%未満を「良好」、10%以上を「不良」と判定した。
また、ダイシングによる粘着剤凝集物の発生を顕微鏡により確認し、チップ側面における粘着剤凝集物の大きさを測定した。10μm以上の粘着剤凝集物の有無により、粘着剤凝集物の発生しやすさを評価した。
これらの結果を表1に示す。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置 :DISCO社製「DFD−651」
・ブレード :DISCO社製「ZBT−5074(Z111OLS3)」
・刃の厚み :0.17mm
・刃先出し量 :3.3mm
・ブレード回転数 :30000rpm
・切削速度 :100mm/分
・基材切り込み深さ:50μm
・切削水量 :1.0L/分
・切削水温度 :20℃
〔試験例5〕<レーザーマーキングの視認性>
封止樹脂組成物(京セラケミカル社製「KE−G1250」)を成形してなる半導体パッケージ(50mm×50mm、厚さ600μm、ダイシングシート貼付面の算術平均粗さRa:2μm)の封止樹脂の面に、下記の条件でレーザーマーキングを行った。その封止樹脂の面に、実施例および比較例のダイシングシートを貼付し、貼付直後に試験例2に記載される条件で紫外線照射を行ってから剥離した場合(条件1)、および貼付から23℃相対湿度50%の環境下に保管して1週間経過後に試験例2に記載される条件で紫外線照射を行ってから剥離した場合(条件2)について、半導体パッケージの封止樹脂の面のマーキングが施された部分を目視にて観察し、マーキング部分の視認性が良好であるか不良であるかを判定した。その結果を表1に示す。
<レーザーマーキング条件>
・装置Panasonic社製「LP−V10U−w20」
・使用レーザー:FAYb Laser(波長:1064nm)
・スキャンスピード:400mm/秒
・印字パルス周期:1000μs
Figure 2015141555
表1から分かるように、本発明の条件を満たす実施例のダイシングシートは、チップ飛散が生じにくかった。また、実施例のダイシングシートは耐屈曲性に優れ、それゆえ、実施例のダイシングシートを用いた場合には、ダイシングシートを剥離した後の半導体パッケージのレーザーマーキングの視認性が良好であった。
本発明に係るダイシングシートは、保護膜付シリコンウエハや半導体パッケージなど半導体関連部材、特に被着面にレーザーマーキングなどにより形成された凹陥部を有する面を備える半導体関連部材のダイシングシートとして好適に用いられる。
1…ダイシングシート
2…基材
3…粘着剤層

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備えたダイシングシートであって、
    前記粘着剤層は、エネルギー線重合性官能基を有する化合物であるエネルギー重合性化合物(B)を含む粘着剤組成物から形成されたものであり、
    前記粘着剤層はエネルギー線照射前の23℃における貯蔵弾性率が135,000Pa以下であり、
    前記粘着剤層にエネルギー線を照射する前の前記ダイシングシートについて、JIS Z0237:2009に準拠して、ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験を行ったときに測定される粘着力が、10N/25mm以上であり、
    前記ダイシングシートの前記粘着剤層にエネルギー線を照射したのち、当該ダイシングシートについて、ガードナー式マンドレル屈曲試験機を用いて、ASTM−D522に基づいて、マンドレルの直径を2mmとして折り曲げ試験を行っても、前記エネルギー線照射後の粘着剤層に割れが生じないこと
    を特徴とするダイシングシート。
  2. 前記折り曲げ試験において、マンドレルの直径を1mmとしても、前記エネルギー線照射後の粘着剤層に割れが生じない、請求項1に記載のダイシングシート。
  3. 前記粘着剤層の厚さが25μm以下である、請求項1または2に記載のダイシングシート。
  4. 前記粘着剤組成物は、主剤(A)をさらに含むこと、および前記エネルギー重合性化合物(B)が前記主剤(A)としての機能を有する化合物(B)を含むことの少なくとも一方を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  5. 前記エネルギー重合性化合物(B)は、重量平均分子量4,000以下であって、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびに単官能および多官能のオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる、貯蔵弾性率調整機能を有する化合物(B)を含み、
    前記粘着剤組成物における前記化合物(B)の含有量は、前記粘着剤組成物における前記主剤(A)としての機能を有する物質の含有量100質量部に対して35質量部以上200質量部以下である、請求項4に記載のダイシングシート。
  6. 前記粘着剤組成物は、重量平均分子量4,000以下の貯蔵弾性率調整剤(D)(重量平均分子量4,000以下であって、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびに単官能および多官能のオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる化合物を除く。)を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載されるダイシングシートの前記粘着剤層側の面を、半導体関連部材の面に貼付し、前記ダイシングシート上の前記半導体関連部材を切断して個片化し、複数のチップを得る、デバイスチップの製造方法であって、
    前記ダイシングシートの前記粘着剤層側の面が貼付される前記半導体関連部材の面は凹部を有する、チップの製造方法。
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