JPH0972342A - ころがり軸受部材 - Google Patents
ころがり軸受部材Info
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- JPH0972342A JPH0972342A JP22827795A JP22827795A JPH0972342A JP H0972342 A JPH0972342 A JP H0972342A JP 22827795 A JP22827795 A JP 22827795A JP 22827795 A JP22827795 A JP 22827795A JP H0972342 A JPH0972342 A JP H0972342A
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- Japan
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- rolling
- carbide
- cementation
- environment
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 従来の高炭素クロム鋼材により製造された軸
受よりも異物が混入した使用環境下でも優れた転動疲労
性を発揮し、かつ低合金鋼より浸炭または浸炭窒化時間
の短縮を図ることができるころがり軸受部材を提供す
る。 【解決手段】 ころがり軸受部材における軌道輪および
転動体の少なくとも1つは、高炭素クロム軸受鋼を浸炭
または浸炭窒化した後、焼入れ・焼もどしを施したもの
であり、該軌道輪及び/又は転動体の最表層における残
留オーステナイト量が10〜50vol%、上記軌道輪
及び/又は転動体の最表層に含有される平均粒径0.5
μm以下の炭化物または炭窒化物の面積率/平均粒径が
4%/μm以上の範囲にあることを特徴とする。尚、浸
炭または浸炭窒化と、焼入れ・焼もどしの間で、Ac1
点以下の温度まで冷却後再度加熱することが推奨され
る。
受よりも異物が混入した使用環境下でも優れた転動疲労
性を発揮し、かつ低合金鋼より浸炭または浸炭窒化時間
の短縮を図ることができるころがり軸受部材を提供す
る。 【解決手段】 ころがり軸受部材における軌道輪および
転動体の少なくとも1つは、高炭素クロム軸受鋼を浸炭
または浸炭窒化した後、焼入れ・焼もどしを施したもの
であり、該軌道輪及び/又は転動体の最表層における残
留オーステナイト量が10〜50vol%、上記軌道輪
及び/又は転動体の最表層に含有される平均粒径0.5
μm以下の炭化物または炭窒化物の面積率/平均粒径が
4%/μm以上の範囲にあることを特徴とする。尚、浸
炭または浸炭窒化と、焼入れ・焼もどしの間で、Ac1
点以下の温度まで冷却後再度加熱することが推奨され
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は優れた転動疲労性を
有するころがり軸受部材に関するものである。
有するころがり軸受部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、各種産業機械に用いられる軸受
は、JIS G 4805に規定される高炭素クロム軸
受鋼材に球状化焼鈍を施した後、球状炭化物を残したま
ま基地組織をオーステナイト温度域まで加熱し焼入れ・
焼もどしを施すことによって、マルテンサイト組織に数
%の残留オーステナイトと残存炭化物が分散する組織に
処理されていた。
は、JIS G 4805に規定される高炭素クロム軸
受鋼材に球状化焼鈍を施した後、球状炭化物を残したま
ま基地組織をオーステナイト温度域まで加熱し焼入れ・
焼もどしを施すことによって、マルテンサイト組織に数
%の残留オーステナイトと残存炭化物が分散する組織に
処理されていた。
【0003】しかしながら、上記の処理方法で製造され
た軸受では、使用時に周辺部品の金属磨耗粉、バリ、外
来系の硬質な異物などが混入する環境下においては、そ
れらを含まない環境下での寿命に比べて転動疲労寿命が
大きく低下するという問題があった。
た軸受では、使用時に周辺部品の金属磨耗粉、バリ、外
来系の硬質な異物などが混入する環境下においては、そ
れらを含まない環境下での寿命に比べて転動疲労寿命が
大きく低下するという問題があった。
【0004】そこで、特開平4−26752号の公報に
は、低合金鋼に浸炭または浸炭窒化処理を施すことによ
り、軸受部材の最表層に残留オースナイトを多量に生成
させ、かつ平均粒径0.5〜1.5μmの炭化物または
炭窒化物を析出させることにより表面硬度を高くし、異
物が混入した使用環境下での転動疲労寿命を向上させる
技術が開示されている。しかしながら、低合金鋼は素材
の炭素含有量が少ないために、所望する残留オーステナ
イト量および微細炭化物あるいは炭窒化物を析出させる
のに必要な炭素量を得るには、浸炭または浸炭窒化処理
を長時間(約4〜10時間)施す必要があり、省エネル
ギーや製造コスト低減の観点から、浸炭または浸炭窒化
を短時間で行うことができ、しかも異物が混入した使用
環境下でも優れた転動疲労性を有するころがり軸受部材
の開発が要望されている。
は、低合金鋼に浸炭または浸炭窒化処理を施すことによ
り、軸受部材の最表層に残留オースナイトを多量に生成
させ、かつ平均粒径0.5〜1.5μmの炭化物または
炭窒化物を析出させることにより表面硬度を高くし、異
物が混入した使用環境下での転動疲労寿命を向上させる
技術が開示されている。しかしながら、低合金鋼は素材
の炭素含有量が少ないために、所望する残留オーステナ
イト量および微細炭化物あるいは炭窒化物を析出させる
のに必要な炭素量を得るには、浸炭または浸炭窒化処理
を長時間(約4〜10時間)施す必要があり、省エネル
ギーや製造コスト低減の観点から、浸炭または浸炭窒化
を短時間で行うことができ、しかも異物が混入した使用
環境下でも優れた転動疲労性を有するころがり軸受部材
の開発が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、その目的は、従来の高炭
素クロム鋼材により製造された軸受よりも異物が混入し
た使用環境下でも優れた転動疲労性を発揮し、かつ低合
金鋼より浸炭または浸炭窒化時間の短縮を図ることがで
きるころがり軸受部材を提供することにある。
目してなされたものであって、その目的は、従来の高炭
素クロム鋼材により製造された軸受よりも異物が混入し
た使用環境下でも優れた転動疲労性を発揮し、かつ低合
金鋼より浸炭または浸炭窒化時間の短縮を図ることがで
きるころがり軸受部材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明に係るころがり軸受部材とは、ころがり軸受部材にお
ける軌道輪および転動体の少なくとも1つは、高炭素ク
ロム軸受鋼を浸炭または浸炭窒化した後、焼入れ・焼も
どしを施したものであり、該軌道輪及び/又は転動体の
最表層における残留オーステナイト量が10〜50vo
l%、上記軌道輪及び/又は転動体の最表層に含有され
る平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒化物の面
積率/平均粒径が4%/μm以上の範囲にあることを要
旨とするものである。尚、浸炭または浸炭窒化と、焼入
れ・焼もどしの間で、Ac1 点以下の温度まで冷却後再
度加熱することが推奨される。
明に係るころがり軸受部材とは、ころがり軸受部材にお
ける軌道輪および転動体の少なくとも1つは、高炭素ク
ロム軸受鋼を浸炭または浸炭窒化した後、焼入れ・焼も
どしを施したものであり、該軌道輪及び/又は転動体の
最表層における残留オーステナイト量が10〜50vo
l%、上記軌道輪及び/又は転動体の最表層に含有され
る平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒化物の面
積率/平均粒径が4%/μm以上の範囲にあることを要
旨とするものである。尚、浸炭または浸炭窒化と、焼入
れ・焼もどしの間で、Ac1 点以下の温度まで冷却後再
度加熱することが推奨される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、従来の高炭素クロ
ム軸受鋼材で多量の残留オーステナイトを析出させ、か
つ軟質な残留オーステナイトが増えても高い表面硬度が
得られるころがり軸受部材について検討してきた。
ム軸受鋼材で多量の残留オーステナイトを析出させ、か
つ軟質な残留オーステナイトが増えても高い表面硬度が
得られるころがり軸受部材について検討してきた。
【0008】その結果、高炭素クロム鋼材に浸炭または
浸炭窒化を施して、当該表層部にCを侵入させて基地中
の炭素濃度を従来より高めることにより焼入れ・焼きも
どし後の残留オーステナイトを増加させ、その生成量を
10〜50vol%にすると共に、平均粒径0.5μm
以下の炭化物または炭窒化物を析出させ、該炭化物また
は炭窒化物の面積率と平均粒径の比(面積率/平均粒
径)を4%/μm以上に制御すれば、軟質な残留オース
テナイトが多数生成しても、微細析出物の分散強化作用
により高い表面硬度が得られ、異物が混入した使用環境
下での転動疲労寿命が飛躍的に向上することを見出し
た。
浸炭窒化を施して、当該表層部にCを侵入させて基地中
の炭素濃度を従来より高めることにより焼入れ・焼きも
どし後の残留オーステナイトを増加させ、その生成量を
10〜50vol%にすると共に、平均粒径0.5μm
以下の炭化物または炭窒化物を析出させ、該炭化物また
は炭窒化物の面積率と平均粒径の比(面積率/平均粒
径)を4%/μm以上に制御すれば、軟質な残留オース
テナイトが多数生成しても、微細析出物の分散強化作用
により高い表面硬度が得られ、異物が混入した使用環境
下での転動疲労寿命が飛躍的に向上することを見出し
た。
【0009】また、浸炭または浸炭窒化と、焼入れ・焼
もどしの間でを施した後、Ac1 点以下の温度まで冷却
後再度加熱することにより、平均粒径0.5μm以下の
微細な炭化物または炭窒化物の析出量がさらに多くなる
ので、上記面積率/平均粒径を高くでき、異物が混入し
た使用環境下での転動疲労寿命を向上させることができ
る。
もどしの間でを施した後、Ac1 点以下の温度まで冷却
後再度加熱することにより、平均粒径0.5μm以下の
微細な炭化物または炭窒化物の析出量がさらに多くなる
ので、上記面積率/平均粒径を高くでき、異物が混入し
た使用環境下での転動疲労寿命を向上させることができ
る。
【0010】本発明に係るころがり軸受部材において、
数値限定を行った理由について以下に述べる。 ・最表層の残留オーステナイト量:10〜50vol% 異物が混入した使用環境下においては、転動中に異物と
繰り返し接触することにより内外輪の転動面に圧痕が発
生するが、残留オーステナイトはその圧痕から亀裂が発
生したり亀裂が進展することを抑制する効果がある。残
留オーステナイト量が10vol%未満ではこのような
効果は少なく、また、50vol%を超えると逆に硬さ
が低下し圧痕が発生しやすくなり、しかも寸法安定性が
劣化する。従って、本発明に係るころがり軸受部材では
残留オーステナイト量を10〜50vol%に設定し
た。尚、20〜40vol%が好ましい範囲である。
数値限定を行った理由について以下に述べる。 ・最表層の残留オーステナイト量:10〜50vol% 異物が混入した使用環境下においては、転動中に異物と
繰り返し接触することにより内外輪の転動面に圧痕が発
生するが、残留オーステナイトはその圧痕から亀裂が発
生したり亀裂が進展することを抑制する効果がある。残
留オーステナイト量が10vol%未満ではこのような
効果は少なく、また、50vol%を超えると逆に硬さ
が低下し圧痕が発生しやすくなり、しかも寸法安定性が
劣化する。従って、本発明に係るころがり軸受部材では
残留オーステナイト量を10〜50vol%に設定し
た。尚、20〜40vol%が好ましい範囲である。
【0011】・最表層での平均粒径0.5μm以下の炭
化物または炭窒化物の面積率/平均粒径:4%/μm以
上 炭化物または炭窒化物は、基地への析出による分散強化
で硬さを向上させ、軟質な残留オーステナイトを増量さ
せたことによる硬さの低下分を補うことができ、ころが
り軸受部材として高い表面硬度を得ることができる。こ
のことにより異物が混入した使用環境下において使用中
に異物と繰り返し接触することにより内外輪の転動面に
発生する圧痕を抑制することができる。即ち、異物が混
入した使用環境下での転動疲労寿命を向上させる。その
ためには、平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒
化物の面積率/平均粒径を4%/μm以上にする必要が
あり、5%/μm以上あると好ましい。
化物または炭窒化物の面積率/平均粒径:4%/μm以
上 炭化物または炭窒化物は、基地への析出による分散強化
で硬さを向上させ、軟質な残留オーステナイトを増量さ
せたことによる硬さの低下分を補うことができ、ころが
り軸受部材として高い表面硬度を得ることができる。こ
のことにより異物が混入した使用環境下において使用中
に異物と繰り返し接触することにより内外輪の転動面に
発生する圧痕を抑制することができる。即ち、異物が混
入した使用環境下での転動疲労寿命を向上させる。その
ためには、平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒
化物の面積率/平均粒径を4%/μm以上にする必要が
あり、5%/μm以上あると好ましい。
【0012】尚、本発明に係るころがり軸受部材は、J
IS G 4805に規定される高炭素クロム軸受鋼材
を用いて製造すればよいが、CrやMoを増量して添加
することにより異物が混入した使用環境下において転動
疲労寿命がさらに向上することが期待できる。
IS G 4805に規定される高炭素クロム軸受鋼材
を用いて製造すればよいが、CrやMoを増量して添加
することにより異物が混入した使用環境下において転動
疲労寿命がさらに向上することが期待できる。
【0013】即ち、Cr及びMoは、浸炭または浸炭窒
化処理による炭化物または炭窒化物の析出量を増加させ
る元素であり、高炭素クロム軸受鋼材に増量添加するこ
とで炭化物の析出量が増加し、最表層の硬さを高め、異
物が混入した使用環境下での転動疲労寿命がさらに向上
する。但し、多過ぎると加工性が低下する。したがっ
て、Cr含有量は3.50wt%以下、Mo含有量は
1.0wt%以下とすることが好ましく、より好ましい
Cr含有量は2.00〜3.50wt%、より好ましい
Mo含有量は0.30〜0.90wt%である。さら
に、上記高炭素クロム軸受鋼材にW,V,Nbを添加し
ても、異物が混入した使用環境下における転動疲労寿命
は向上する。
化処理による炭化物または炭窒化物の析出量を増加させ
る元素であり、高炭素クロム軸受鋼材に増量添加するこ
とで炭化物の析出量が増加し、最表層の硬さを高め、異
物が混入した使用環境下での転動疲労寿命がさらに向上
する。但し、多過ぎると加工性が低下する。したがっ
て、Cr含有量は3.50wt%以下、Mo含有量は
1.0wt%以下とすることが好ましく、より好ましい
Cr含有量は2.00〜3.50wt%、より好ましい
Mo含有量は0.30〜0.90wt%である。さら
に、上記高炭素クロム軸受鋼材にW,V,Nbを添加し
ても、異物が混入した使用環境下における転動疲労寿命
は向上する。
【0014】WはCr及びMoと同様に浸炭または浸炭
窒化処理により炭化物または炭窒化物の析出量を増加さ
せる元素であり、高炭素クロム軸受鋼材に添加すること
で炭化物の析出量が増加し、当該最表層の硬さをより高
め、異物が混入した使用環境下での転動疲労寿命がさら
に向上する。但し、W含有量が0.05wt%未満では
効果が十分発揮されず、また1.0wt%を超えると加
工性に悪影響を及ぼす。従って、W含有量は0.05〜
1.0wt%とすることが好ましい。
窒化処理により炭化物または炭窒化物の析出量を増加さ
せる元素であり、高炭素クロム軸受鋼材に添加すること
で炭化物の析出量が増加し、当該最表層の硬さをより高
め、異物が混入した使用環境下での転動疲労寿命がさら
に向上する。但し、W含有量が0.05wt%未満では
効果が十分発揮されず、また1.0wt%を超えると加
工性に悪影響を及ぼす。従って、W含有量は0.05〜
1.0wt%とすることが好ましい。
【0015】V,Nbは、鋼中のC,Nと結合して炭化
物または炭窒化物を生成し結晶粒を微細化させ、また炭
化物あるいは炭窒化物を微細化させる元素である。高炭
素クロム軸受鋼材に添加することで異物が混入した使用
環境下での転動疲労寿命がさらに向上する。V含有量が
0.03wt%未満、Nb含有量が0.005wt%未
満ではこの様な効果は小さく、多過ぎても効果は飽和す
るので、V含有量は0.03〜1.00wt%、Nb含
有量は0.005〜0.50wt%とすることが望まし
い。
物または炭窒化物を生成し結晶粒を微細化させ、また炭
化物あるいは炭窒化物を微細化させる元素である。高炭
素クロム軸受鋼材に添加することで異物が混入した使用
環境下での転動疲労寿命がさらに向上する。V含有量が
0.03wt%未満、Nb含有量が0.005wt%未
満ではこの様な効果は小さく、多過ぎても効果は飽和す
るので、V含有量は0.03〜1.00wt%、Nb含
有量は0.005〜0.50wt%とすることが望まし
い。
【0016】
【実施例】表1に成分組成を示す各種の鋼を小型真空炉
において溶製した。
において溶製した。
【0017】
【表1】
【0018】鋼No.1〜5はJIS G 4805に
規定される高炭素クロム軸受鋼材であり、鋼No.6〜
15はJIS G 4805のSUJ2の成分組成にC
rまたはMoが増量して添加されているか、或いはW,
V,Nbが添加された鋼である。これらの鋼にソーキン
グ処理を施し巨大炭化物の拡散消失処理を施した後、熱
間鍛造によりφ65mmの丸棒に鍛伸し、球状化焼鈍を
施した。続いてφ60mm×5t の試験片に加工し、表
2に示す硬化熱処理を施した後、ラッピング加工し、面
圧4900MPaの条件で異物が混入した環境下で転動
疲労寿命試験を行った。
規定される高炭素クロム軸受鋼材であり、鋼No.6〜
15はJIS G 4805のSUJ2の成分組成にC
rまたはMoが増量して添加されているか、或いはW,
V,Nbが添加された鋼である。これらの鋼にソーキン
グ処理を施し巨大炭化物の拡散消失処理を施した後、熱
間鍛造によりφ65mmの丸棒に鍛伸し、球状化焼鈍を
施した。続いてφ60mm×5t の試験片に加工し、表
2に示す硬化熱処理を施した後、ラッピング加工し、面
圧4900MPaの条件で異物が混入した環境下で転動
疲労寿命試験を行った。
【0019】また、ラッピング加工終了後、最表層の残
留オーステナイト量および炭化物または炭窒化物の性状
を調査した。残留オーステナイト量についてはX線回折
法で測定した。炭化物および炭窒化物の性状は、樹脂に
埋め込み鏡面仕上げした後、電子顕微鏡で写真撮影を行
い、その写真をもとにトレーシングを行った後、画像解
析装置により、面積率(%)および平均粒径(μm)を
測定し、0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物につ
いての面積率/平均粒径(%/μm)を算出した。尚、
電子顕微鏡による観察条件は、倍率:8000倍,視野
面積:100μm2 ,視野数:3視野で行った。
留オーステナイト量および炭化物または炭窒化物の性状
を調査した。残留オーステナイト量についてはX線回折
法で測定した。炭化物および炭窒化物の性状は、樹脂に
埋め込み鏡面仕上げした後、電子顕微鏡で写真撮影を行
い、その写真をもとにトレーシングを行った後、画像解
析装置により、面積率(%)および平均粒径(μm)を
測定し、0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物につ
いての面積率/平均粒径(%/μm)を算出した。尚、
電子顕微鏡による観察条件は、倍率:8000倍,視野
面積:100μm2 ,視野数:3視野で行った。
【0020】
【表2】
【0021】 〈浸炭・(焼入れ)条件〉 *1A:930℃×2hr/油冷(60〜80℃) C.P.:0.8% *1B:930℃×2hr C.P.:0.8% *2A:930℃×2hr/油冷(60〜80℃) C.P.:1.2% *2B:930℃×2hr C.P.:1.2%
【0022】 〈浸炭窒化・(焼入れ)条件〉 *3A:930℃×2hr→850℃×1hr/油冷 C.P.:1.0% RXガス+アンモニアガス(5vol%) *3B:930℃×2hr→850℃×1hr/油冷 C.P.:1.0% RXガス+アンモニアガス(5vol%)
【0023】〈再加熱焼入れ条件〉 *4 :850℃×1hr/油冷(60〜80℃) 〈焼入れ条件〉 *5 :840℃×1hr/油冷 〈焼もどし条件〉 *6 :170℃×1hr/空冷
【0024】
【0025】これら試験片の異物が混入した環境下での
転動疲労試験結果、残留オーステナイト量測定結果、
0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物の性状測定結
果を表3〜6に、異物が混入した環境下での転動疲労寿
命と0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物について
の面積率/平均粒径および残留オーステナイト量の相関
図1〜5に示す。なお転動疲労寿命についてはL10(1
0%累積破損率)を示した。
転動疲労試験結果、残留オーステナイト量測定結果、
0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物の性状測定結
果を表3〜6に、異物が混入した環境下での転動疲労寿
命と0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物について
の面積率/平均粒径および残留オーステナイト量の相関
図1〜5に示す。なお転動疲労寿命についてはL10(1
0%累積破損率)を示した。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】図1は、鋼No.1〜5を浸炭・焼入れ→
焼もどしおよび浸炭窒化・焼入れ→焼きもどしを施した
時の0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物について
の面積率/平均粒径と異物が混入した環境下での転動疲
労寿命の関係を示したものである。
焼もどしおよび浸炭窒化・焼入れ→焼きもどしを施した
時の0.5μm以下の炭化物あるいは炭窒化物について
の面積率/平均粒径と異物が混入した環境下での転動疲
労寿命の関係を示したものである。
【0031】図2は、鋼No.1〜5を浸炭・焼入れ→
焼もどしおよび浸炭窒化・焼入れ→焼きもどしを施した
時の残留オーステナイト量と異物が混入した環境下での
転動疲労寿命の関係を示したものである。
焼もどしおよび浸炭窒化・焼入れ→焼きもどしを施した
時の残留オーステナイト量と異物が混入した環境下での
転動疲労寿命の関係を示したものである。
【0032】図3は、鋼No.1〜5を浸炭→Ac1 点
以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→焼もどしおよび浸
炭窒化→Ac1 点以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→
焼きもどしを施した時の0.5μm以下の炭化物あるい
は炭窒化物についての面積率/平均粒径と異物が混入し
た環境下での転動疲労寿命の関係を示したものである。
以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→焼もどしおよび浸
炭窒化→Ac1 点以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→
焼きもどしを施した時の0.5μm以下の炭化物あるい
は炭窒化物についての面積率/平均粒径と異物が混入し
た環境下での転動疲労寿命の関係を示したものである。
【0033】図4は、鋼No.1〜5を浸炭→Ac1 点
以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→焼もどしおよび浸
炭窒化→Ac1 点以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→
焼きもどしを施した時の残留オーステナイト量と異物が
混入した環境下での転動疲労寿命の関係を示したもので
ある。
以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→焼もどしおよび浸
炭窒化→Ac1 点以下の温度まで冷却→再加熱焼入れ→
焼きもどしを施した時の残留オーステナイト量と異物が
混入した環境下での転動疲労寿命の関係を示したもので
ある。
【0034】図5は、鋼No.1および鋼No.6〜1
5を浸炭・焼入れ(C.P.:1.2%)→焼もどしを
施した時の平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒
化物についての面積率/平均粒径と異物が混入した環境
下での転動疲労寿命の関係を示したものである。
5を浸炭・焼入れ(C.P.:1.2%)→焼もどしを
施した時の平均粒径0.5μm以下の炭化物または炭窒
化物についての面積率/平均粒径と異物が混入した環境
下での転動疲労寿命の関係を示したものである。
【0035】図1〜4の結果から以下のことが分かる。
即ち、表3および図1,2より高炭素クロム軸受鋼に浸
炭または浸炭窒化した後、焼入れ・焼きもどしを施した
後の軸受部材の最表層部において、残留オーステナイト
量を10〜50vol%、平均粒径0.5μm以下の炭
化物または炭窒化物の面積率/平均粒径を4%/μm以
上の範囲に制御することにより、異物が混入した環境下
での転動疲労寿命が向上し、従来のころがり軸受部材に
比べて優れた転動疲労寿命が得られる。
即ち、表3および図1,2より高炭素クロム軸受鋼に浸
炭または浸炭窒化した後、焼入れ・焼きもどしを施した
後の軸受部材の最表層部において、残留オーステナイト
量を10〜50vol%、平均粒径0.5μm以下の炭
化物または炭窒化物の面積率/平均粒径を4%/μm以
上の範囲に制御することにより、異物が混入した環境下
での転動疲労寿命が向上し、従来のころがり軸受部材に
比べて優れた転動疲労寿命が得られる。
【0036】また、表4および図3,4より高炭素クロ
ム軸受鋼を浸炭または浸炭窒化を施した後、Ac1 点以
下の温度まで冷却して再度加熱して焼入れ・焼きもどし
を施した場合には、浸炭または浸炭窒化後、再加熱せず
に焼入れ・焼きもどしを施した場合に比べ、平均粒径
0.5μm以下の微細な炭化物あるいは炭窒化物の析出
量が増加し、さらに転動疲労寿命が向上していることが
わかる。
ム軸受鋼を浸炭または浸炭窒化を施した後、Ac1 点以
下の温度まで冷却して再度加熱して焼入れ・焼きもどし
を施した場合には、浸炭または浸炭窒化後、再加熱せず
に焼入れ・焼きもどしを施した場合に比べ、平均粒径
0.5μm以下の微細な炭化物あるいは炭窒化物の析出
量が増加し、さらに転動疲労寿命が向上していることが
わかる。
【0037】尚、本発明における浸炭または浸炭窒化処
理時間は2〜3時間であり、従来技術の低合金鋼を浸炭
または浸炭窒化処理するのに必要な4〜10時間に対し
て処理時間の短縮を図ることができた。
理時間は2〜3時間であり、従来技術の低合金鋼を浸炭
または浸炭窒化処理するのに必要な4〜10時間に対し
て処理時間の短縮を図ることができた。
【0038】さらに、表5および図5より、高炭素クロ
ム軸受鋼にCr,Mo,V,Nb,Wを添加あるいは増
量添加した場合、いずれの場合も異物が混入した環境下
での転動疲労寿命がより向上していることは明らかであ
る。
ム軸受鋼にCr,Mo,V,Nb,Wを添加あるいは増
量添加した場合、いずれの場合も異物が混入した環境下
での転動疲労寿命がより向上していることは明らかであ
る。
【0039】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、異物が混入した環境下での転動疲労寿命が飛躍的に
向上し、従来のころがり軸受部材に比べて優れた転動疲
労寿命を有し、かつ、低合金鋼を浸炭または浸炭窒化処
理するのに比べて処理時間の短縮を図ることのできるこ
ろがり軸受部材を提供できることとなった。
で、異物が混入した環境下での転動疲労寿命が飛躍的に
向上し、従来のころがり軸受部材に比べて優れた転動疲
労寿命を有し、かつ、低合金鋼を浸炭または浸炭窒化処
理するのに比べて処理時間の短縮を図ることのできるこ
ろがり軸受部材を提供できることとなった。
【図1】面積率/平均粒径と転動疲労寿命の関係を示す
グラフである。
グラフである。
【図2】残留オーステナイトと転動疲労寿命の関係を示
すグラフである。
すグラフである。
【図3】面積率/平均粒径と転動疲労寿命の関係を示す
グラフである。
グラフである。
【図4】残留オーステナイトと転動疲労寿命の関係を示
すグラフである。
すグラフである。
【図5】面積率/平均粒径と転動疲労寿命の関係を示す
グラフである。
グラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 ころがり軸受部材における軌道輪および
転動体の少なくとも1つは、高炭素クロム軸受鋼を浸炭
または浸炭窒化した後、焼入れ・焼もどしを施したもの
であり、該軌道輪及び/又は転動体の最表層における残
留オーステナイト量が10〜50vol%、上記軌道輪
及び/又は転動体の最表層に含有される平均粒径0.5
μm以下の炭化物または炭窒化物の面積率/平均粒径が
4%/μm以上の範囲にあることを特徴とするころがり
軸受部材。 - 【請求項2】 浸炭または浸炭窒化と、焼入れ・焼もど
しの間で、Ac1 点以下の温度まで冷却後再度加熱した
ものである請求項1に記載のころがり軸受部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22827795A JPH0972342A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | ころがり軸受部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22827795A JPH0972342A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | ころがり軸受部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0972342A true JPH0972342A (ja) | 1997-03-18 |
Family
ID=16873965
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22827795A Withdrawn JPH0972342A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | ころがり軸受部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0972342A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000212721A (ja) * | 1998-11-19 | 2000-08-02 | Nsk Ltd | 耐摩耗性に優れた転動部材 |
JP2001323939A (ja) * | 2000-05-18 | 2001-11-22 | Nsk Ltd | 転がり軸受 |
JP2003065226A (ja) * | 2001-08-30 | 2003-03-05 | Ntn Corp | 斜板式コンプレッサ用スラストニードル軸受 |
WO2006068205A1 (ja) * | 2004-12-24 | 2006-06-29 | Jtekt Corporation | 転がり、摺動部品およびその製造方法 |
-
1995
- 1995-09-05 JP JP22827795A patent/JPH0972342A/ja not_active Withdrawn
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2000212721A (ja) * | 1998-11-19 | 2000-08-02 | Nsk Ltd | 耐摩耗性に優れた転動部材 |
JP2001323939A (ja) * | 2000-05-18 | 2001-11-22 | Nsk Ltd | 転がり軸受 |
JP2003065226A (ja) * | 2001-08-30 | 2003-03-05 | Ntn Corp | 斜板式コンプレッサ用スラストニードル軸受 |
WO2006068205A1 (ja) * | 2004-12-24 | 2006-06-29 | Jtekt Corporation | 転がり、摺動部品およびその製造方法 |
JPWO2006068205A1 (ja) * | 2004-12-24 | 2008-06-12 | 株式会社ジェイテクト | 転がり、摺動部品およびその製造方法 |
JP5094126B2 (ja) * | 2004-12-24 | 2012-12-12 | 株式会社ジェイテクト | 転がり、摺動部品およびその製造方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20021105 |