JPH078300Y2 - 車両用シートトラック - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はシートの位置を前後方向に調節可能な車両用シ
ートトラックに関する。

（従来技術） 車両用シートトラックの一形式として、フロアに固定し
たロアレールと同レールに長手方向に摺動可能に組付け
られてシートを支持するアッパレールのいずれか一方に
設けられ長手方向に複数の係合部を有する係合部材と、
前記両レールのいずれか他方に設けられ前記係合部材に
係脱可能に係合する被係合部材からなり、これら両レー
ルを解除可能にロックするロック機構を備え、シートの
位置を前後方向に調節可能なシートトラックがある。

ところで、かかる形式のシートトラックを採用した車両
用シートを２ドアタイプの車両のごとくドアの大きな車
両に装備した場合、シートを比較的前方の位置で使用す
る人（小柄な人）にとっては乗降時シートとドアの間が
狭いためシートを一旦後方へ移動させて降車し、かつ乗
車後シートを元の前方の位置へ調節することが多い。ま
た、ウォークイン機構付のシートにおいては、リアシー
トに対する乗員の乗降を容易にするため降車時シートを
前方へ移動し、かつ乗車後シートを元の後方の位置へ調
節する。

このため、これらのシートにおいては乗車後その都度元
位置に調節する煩わしさを解消することが好ましく、実
開平１−74932号公報に示されているように、シートが
前方または後方への移動時常に所定の復帰位置にてロッ
クされる所謂定位置メモリ機構を備えたものが知られて
いる。

しかして、上記公報に示されたシートにおいては、定位
置メモリ機構が前記両レールのいずれか一方に設けられ
長手方向に複数の係合部を有する第３のレールと、この
レールに長手方向に摺動可能に組付けられ同レールの係
合部に係脱可能に係合する被係合部を有する摺動部材
と、前記両レールのいずれか他方に設けられて前記摺動
部材の後方または前方に位置し同摺動部材が摺動時当接
してそれ以上の同方向への摺動を規制する規制部材を具
備する構成となっていて、下記のごとく機能する。

かかる構成においては、摺動部材が第３のレールに係合
していてその摺動を規制されているとともに、これら両
者の係合を解除することにより摺動可能であり、この摺
動部材は規制部材に当接するまで摺動する。摺動部材が
規制部材に当接している状態においては、アッパレール
の一方への摺動も規制され同レールは同方向へはロック
状態にある。また、アッパレールはロック機構の作用に
てロアレールに対してロックされていて、前後方向の移
動を規制されている。

この状態でロック機構を操作してアッパレールのロアレ
ールに対するロックを解除すると、アッパレールはロッ
ク機構による前後方向の移動規制を解除される。このた
め、規制部材の摺動部材に対する配設位置の関係により
アッパレールは前方または後方へ移動可能となり、これ
によりシートは前方または後方へ位置調節可能となる。
位置調節後、摺動部材を係合解除し前方または後方へ摺
動して規制部材に当接させ、この状態にて摺動部材を第
３のレールに係合させる。

しかして、乗員が降車動作を容易にすべくロック機構を
操作してアッパレールのロックを解除しシートを前方ま
たは後方へ移動させると、摺動部材はこの移動量に応じ
て規制部材から前方または後方へ離間する。このため、
乗員が乗車後シートを後方または前方へ移動させると、
摺動部材は降車前の調節位置に摺動復帰した時点で規制
部材に当接して、シートのそれ以上の移動を阻止する。
従って、シートは元の位置に的確に復帰する。

（考案が解決しようとする課題） ところで、当該シートトラックの位置設定に当たって
は、先づロック機構の操作レバーの操作により同機構の
被係合部材の係合を解除してシートを所望の位置に移動
して、次いで定位置メモリ機構の操作レバーの操作によ
り同機構の摺動部材の係合を解除して同摺動部材を規制
部材に当接するまで摺動させる作業が必要である。すな
わち、シートの位置設定に当たっては２種類の操作レバ
ーをそれぞれ操作しかつシートおよび摺動部材をそれぞ
れ移動させなければならず、かならずしも使い勝手がよ
いとはいえない。

また、一旦シートの位置設定後その変更をしたい場合、
特にシートを摺動部材の現在位置に対向する向い側の位
置に位置設定したい場合には、先ず定位置メモリ機構の
操作レバーの操作により摺動部材の係合を解除して、同
摺動部材をシートの所望の設定位置方向へ最大限摺動さ
せ、その後上記したシートの位置設定作業を行う必要が
ある。すなわち、この場合には上記した位置設定作業に
摺動部材の解除および摺動作業が加わることになり、こ
の場合にも使い勝手がよいとはいえない。

従って、本考案の目的は、かかる問題に対処して使い勝
手の極めて良好なシートトラックを提供することにあ
る。

（課題を解決するための手段） 本考案は上記したロック機構と定位置メモリ機構を具備
する車両用シートトラックにおいて、前記定位置メモリ
機構の摺動部材を規制部材側へ付勢する付勢手段と、前
記ロック機構の被係合部材の係合を解除する第１の操作
レバーと、同被係合部材の係合と前記定位置メモリ機構
の摺動部材の係合とを連動して解除する第２の操作レバ
ーを設けたことを特徴とするものである。

（考案の作用・効果） かかる構成のシートトラックにおいては、ロック機構お
よび定位置メモリ機構の作用により前後方向の所望位置
に位置設定し得て、降車時移動させたシートを乗車時元
位置へ的確に復帰させることができるとともに、下記の
ごとき作用効果を奏すものである。

すなわち、第１の操作レバーを操作すればロック機構の
被係合部材の係合のみを解除してシートの前後方向の移
動が可能となるため、降車時には同操作レバーを操作し
てシートを後方または前方へ移動させればよい。また、
第２の操作レバーを操作すればロック機構の被係合部材
の係合と定位置メモリ機構の摺動部材の係合とを同時に
解除することができる。これにより、シートの前後方向
の移動が可能となるが、同時に摺動部材が付勢手段によ
って規制部材に弾撥的に当接しかつ当接した状態でシー
トと一体的に摺動可能となる。このため、シートを所望
の位置に移動させれば摺動部材をこれに対応した位置に
摺動させ、その後第２の操作レバーの操作を解除すれば
摺動部材は第３のレールに係合して位置設定が完了す
る。

従って、当該シートトラックにおいては、特にシートの
位置設定およびその変更の際にも第２の操作レバーの操
作とシートの所望位置への移動作業のみでよく、極めて
使い勝手がよい。

（実施例） 以下本考案の一実施例を図面に基づいて説明するに、第
１図および第２図には本考案に係る車両用シートトラッ
クが示されている。当該車両用シートトラックは、運転
者用シートの一対のシートトラック10、20にて構成され
ている。

右側シートトラック10はロアレール11aおよびアッパレ
ール11b、第１ロック機構10a、定位置メモリ機構10aか
らなり、アッパレール11bは車体フロアに固定したロア
レール11aに対して平行に固定されたロアレール11aに前
後方向へ摺動可能に組付けられている。このアッパレー
ル11b上にはロアアーム31が立設されており、ロアアー
ム31の後端部には図示しない公知のリクライニングアジ
ャスタを介してアッパアームが前後方向に回動可能に組
付けられている。また、左側シートトラック20はロアレ
ール21aおよびアッパレール21b、第２ロック機構20aか
らなり、アッパレール21bは車体フロアに固定したロア
レール11aに対して平行に固定されたロアレール21aに前
後方向へ摺動可能に組付けられている。このアッパレー
ル21b上には図示しない前側ブラケット、ヒンジプレー
トが立設されている。第３図に示すように、シートを構
成するシートクッションS1は各アッパレール11b、21b上
のロアアーム31、前側ブラケット、ヒンジプレートに組
付けられ、またシートバックS2はアッパアーム、ヒンジ
プレートに組付けられている。

第１ロック機構10aおよび第２ロック機構20aは互いに連
動するもので、第１ロック機構10aは右側シートトラッ
ク10のアッパレール11bをロアレール11aに対して解除可
能にロックし、また第２ロック機構20aは左側シートト
ラック20のアッパレール21bをロアレール21aに対して解
除可能にロックする。右側シートトラック10においては
アッパレール11bの内側にシートトラックハンドル12が
回動可能に組付けられており、同トラックハンドル12の
外周に第１ロック機構10aのロックレバー13が回動可能
に組付けられている。一方、ロアレール11aの下面には
第１ロック機構10aのロックプレート14が固着されてお
り、同ロックプレート14はその内側傾斜面に多数の係合
穴14aを備えている。各係合穴14aはロックプレート14の
長手方向に等間隔に設けられていて、第５図に示すよう
に各係合穴14aの１つにロックレバー13が図示しないス
プリングの付勢力にて係合し、アッパレール11bのロア
レール11aに対する摺動が規制されている。また、左側
シートトラック20においてはアッパレール21bの内側に
作動ロッド22が回動可能に組付けられて、同作動ロッド
22および第２ロック機構20aのロックレバー23と第１連
結アーム24、第２連結アーム25、第３連結アーム26が固
着されている。一方、ロアレール21aの下面には第１ロ
ック機構10aのロックプレート14と同様のロックプレー
ト27が固着されていて、ロックレバー23がロックプレー
ト27の各係合穴27aの１つに係合し、アッパレール21bの
ロアレール21aに対する摺動が規制されている。これら
両ロック機構10a、20aにおいては、第１ロック機構10a
のロックレバー13と第２ロック機構20aの第１連結アー
ム24とが第１プッシュプルケーブル32にて互に連結され
ている。

しかして、定位置メモリ機構10bは第１図〜第４図およ
び第６図に示すようにスライドレール15、スライドブロ
ック16、ロックレバー17およびストッパ18にて構成され
ている。スライドレール15はロアレール11aの下面側に
前後一対のブラケット11cを介して固着されており、同
ロアレール11aの内側に多数の係合穴15aを備えている。
スライドブロック16はスライドレール15にその長手方向
に摺動可能に組付けられており、同スライドブロック16
の下面には貫通穴16aを備え、かつその側面の頂部には
突起部16bを備えている。ロックレバー17は被係合アー
ム部17aと作動アーム部17bとを一体的に備えたもので、
スライドブロック16の取付ブラケット16cにスプリング1
6dを介して支持ピン16eにて摺動可能に組付けられ、か
つ同スプリング16dの付勢力にて被係合アーム部17aがス
ライドブロック16の貫通穴16aを通してスライドレール1
5の各係合穴15aの１つに弾撥的に係合している。

かかる定位置メモリ機構10bにおけるロックレバー17に
は、シートトラックハンドル12に固着した枠状の操作ア
ーム33の一端部が被係合アーム部17aと作動アーム部17b
間に臨んでいる。また、シートトラックハンドル12には
第４連結アーム34が固着されていて、同連結アーム34と
作動ロッド22側の第３連結アーム26とがワイヤ35にて互
に連結されている。ストッパ18はシートトラック10のア
ッパレール11bの外側に固着されて、スライドブロック1
6の突起部16bに対向し、ストッパ本体18aのスライドブ
ロック16側に弾性部材18bを備えている。ストッパ18は
アッパレール11bの摺動時スライドブロック16の突起部1
6bに当接し、またスライドブロック16はテンションスプ
リング16fにてストッパ18側に常に付勢されている。ワ
イヤ35はその緊張方向には両アーム34、26を互に連動さ
せ、かつ弛緩方向には両アーム34、26を互に非連動とす
る。一方、ロアアーム31にはサイドレバー36が前後方向
に回動可能に組付けられていて、同サイドレバー36と作
動ロッド22側の第２連結アーム25とが第２プッシュプル
ケーブル37にて互に連結されている。当該車両用シート
トラックにおいては、サイドレバー36が本考案の第１の
操作レバーに該当し、かつシートトラックハンドル12が
本考案の第２の操作レバーに該当する。

かかる構成の当該車両用シートトラックにおいては、シ
ートを位置設定した状態においては第１ロック機構10a
および第２ロック機構20aの各ロックレバー13、23が各
ロックプレート14、27の係合穴14a、27aに係合して各ア
ッパレール11b、21bの摺動を規制し、かつ定位置メモリ
機構10bのロックレバー17がスライドレール15の係合穴1
5aの１つに係合してスライドブロック16の摺動を規制し
ている。また、スライドブロック16はアッパレール11b
側のストッパ18に当接している。

しかして、当該シートに着座している乗員が降車を容易
にすべくシートを後方へ移動するにはサイドレバー36を
回動操作する。これにより、第２プッシュプルケーブル
37が引張され第５図および第６図に示す第２連結アーム
25、作動ロッド22および第１連結アーム24が図示時計方
向へ回動し第２ロック機構20aのロックレバー23の係合
を解除させ、かつ第１プッシュプルケーブル32を引張さ
せて第１ロック機構10aのロックレバー13の係合を解除
させる。この場合、ロックレバー13はシートトラックハ
ンドル12に回動可能に組付けられているため同トラック
ハンドル12は回動せず、定位置メモリ機構10bのロック
レバー17の係合は維持される。この結果、両アッパレー
ル11b、21bの摺動が可能となり、シートを後方へ移動さ
せて降車することができる。また、その後乗車してサイ
ドレバー36を回動操作して両アッパレール11b、21bを摺
動可能にすれば、シートはヘルパスプリング28の作用に
てストッパ18がスライドブロック16に当接するまで移動
し、これら両者16、18の作用にて設定位置に復帰する。

当該シートにおいてシートの設定位置を変更したい場合
にはシートトラックハンドル12を回動操作する。これに
より、操作アーム33および第４連結アーム34が第６図図
示反時計方向へ回動し、操作アーム33においてはロック
レバー17の作動アーム17bを下方へ押動してロックレバ
ー17を図示時計方向へ回動させ、被係合アーム部17aの
係合を解除させ、かつ第４連結アーム34においてはワイ
ヤ35を引張させて第３連結アーム26および作動ロッド22
を時計方向へ回動させ、作動ロッド22を時計方向への回
動によりロックレバー23の係合を解除させるとともに、
第１連結アーム24および第１プッシュプルケーブル32を
介してロックレバー13の係合を解除させる。この結果、
シートは前後方向へ移動可能となり、かつスライドブロ
ック16およびロックレバー17はテンションスプリング16
fの付勢力にてストッパ18に当接した状態でアッパレー
ル11b、換言すればシートと一体に前後方向へ移動す
る。シートを所望の位置へ移動させた後シートトラック
ハンドル12の回動操作を解除すれば、両ロック機構10
a、20aの各ロックレバー13、23は係合しかつ定位置メモ
リ機構10bのロックレバー17が係合し、シートは所望の
位置に位置設定される。

このように、当該車両用シートトラックによれば、乗車
時のシートの移動の際にもシートの設定位置の変更の際
にもサイドレバー36、シートトラックハンドル12のいず
れか一方の回動操作でよく、従って極めて使い勝手がよ
い。

なお、リヤシートに着座する乗員の乗降動作を容易にす
べく降車時シートを前方へ移動させるものにおいては、
スライドブロック16とストッパ18の前後の位置関係を上
記実施例とは逆にすればよい。また、スライドレール1
5、スライドブロック16およびロックレバー17をアッパ
レール11b側にかつストッパ18をロアレール11a側に設け
ることも可能であり、両ロック機構10a、20aのいずれか
一方を省略することも可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る車両用シートトラック
の一部分解斜視図、第２図は方向を異にする同シートト
ラックの一部省略斜視図、第３図は同シートトラックを
備えたシートの斜視図、第４図は定位置メモリ機構を構
成するスライドブロックおよびロックレバーの分解斜視
図、第５図および第６図は各機構の作動説明図である。 符号の説明 10、20……シートトラック、10a、20a……ロック機構、
10b……定位置メモリ機構、11a、21a……ロアレール、1
1b、21b……アッパレール、12……シートトラックハン
ドル（第２の操作レバー）、13、17、23……ロックレバ
ー、14、27……ロックプレート、15……スライドレー
ル、16……スライドブロック、18……ストッパ、22……
作動ロッド、32、37……プッシュプルケーブル、35……
ワイヤ、36……サイドレバー（第１の操作レバー）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】フロアに固定したロアレールと同レールに
   長手方向へ摺動可能に組付けられてシートを支持するア
   ッパレールのいずれか一方に設けられ長手方向に複数の
   係合部を有する係合部材と、前記両レールのいずれか他
   方に設けられ前記係合部材に係脱可能に係合する被係合
   部材を備えたロック機構を具備するとともに、前記両レ
   ールのいずれか一方に設けられ長手方向に複数の係合部
   を有する第３のレールと、このレールに長手方向に摺動
   可能に組付けられ同レールの係合部に係脱可能に係合す
   る被係合部を有する摺動部材と、前記両レールのいずれ
   か他方に設けられて前記摺動部材の後方または前方に位
   置し同摺動部材が摺動時当接してそれ以上の同方向への
   摺動を規制する規制部材を備えた定位置メモリ機構を具
   備してなる車両用シートトラックにおいて、前記定位置
   メモリ機構の摺動部材を規制部材側へ付勢する付勢手段
   と、前記ロック機構の被係合部材の係合を解除する第１
   の操作レバーと、同被係合部材の係合と前記定位置メモ
   リ機構の摺動部材の係合とを連動して解除する第２の操
   作レバーを設けたことを特徴とする車両用シートトラッ
   ク。