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JP7429560B2 - 防食塗料組成物 - Google Patents

防食塗料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、防食塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材およびその製造方法に関する。
従来、例えば、橋梁、タンク、プラント、(輸送用)コンテナなどの陸上や海洋構造物等の基材には、腐食防止等を目的として、防食塗膜が設けられている。この防食塗膜を形成する塗料の一例として、亜鉛末を高含量で含有するジンクリッチ塗料が使用されている。このようなジンクリッチ塗料としては、防食性、塗装作業性等の点から、有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料が用いられている。
近年、環境保全や作業環境の安全性などの観点から、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の含有量に関する規制が厳しくなっており、前記のような塗料においても、溶剤型塗料から水性塗料への切り替えが望まれている。
このような水性のジンクリッチ塗料として、特許文献1には、エポキシ樹脂エマルジョンを含む主剤、亜鉛末を含む顔料分(粉成分)およびアミン硬化剤からなる2液1粉型の水性ジンクリッチ塗料が記載されている。
また、特許文献2には、水性ウレタン樹脂を含有するジンクリッチ塗料が記載されている。
特開2008-272666号公報 特開平7-133442号公報
前記特許文献1および2などに記載されている従来の水性ジンクリッチ塗料は、乾燥性および/または硬化性が十分ではなく、さらに、得られる塗膜の防食性の点でも改良の余地があった。
また、前記特許文献1に記載されているような、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されてきた公知のアミン系硬化剤を使用した従来の水性ジンクリッチ塗料は、乾燥性、硬化性および/またはポットライフが十分ではなく、この点で改良の余地があった。
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、防食性に優れる塗膜を形成でき、乾燥性および硬化性に優れる防食塗料組成物を提供することを課題とする。
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、特定の塗料組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
<1> 1分子中に1個以上のカルボキシ基を有し、不揮発分の酸価が1~20mgKOH/gである水性エポキシ樹脂(A)を含む第1剤と、
亜鉛末(B)を含む第2剤と、
を含有する防食塗料組成物であって、
前記亜鉛末(B)を、前記防食塗料組成物の不揮発分100質量%に対し、43~85質量%含有する、防食塗料組成物。
<2> 前記水性エポキシ樹脂(A)が、水性アミン変性エポキシ樹脂(A1)である、<1>に記載の防食塗料組成物。
<3> 前記水性エポキシ樹脂(A)の不揮発分のアミン価が1~150mgKOH/gである、<1>または<2>に記載の防食塗料組成物。
<4> 前記第2剤が、グリコールエーテル系溶剤または炭素数1~3のアルコール系溶剤を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の防食塗料組成物。
<5> 前記第2剤が、前記水性エポキシ樹脂(A)以外のバインダーを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の防食塗料組成物。
<6> 前記防食塗料組成物100質量%中の揮発性有機化合物(VOC)の含有量が10質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の防食塗料組成物。
<7> <1>~<6>のいずれかに記載の防食塗料組成物から形成された塗膜。
<8> 基材と<7>に記載の塗膜とを含有する塗膜付き基材。
<9> 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<6>のいずれかに記載の防食塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
本発明によれば、乾燥性および硬化性、亜鉛末の分散性、貯蔵安定性、ならびに水希釈性に優れ、ポットライフの長い水性防食塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されてきた公知のアミン系硬化剤を使用しなくても、乾燥性および硬化性に優れる水性防食塗料組成物を提供することができる。
さらに本発明によれば、防食性および基材への付着性に優れる塗膜を形成できる。
≪防食塗料組成物≫
本発明に係る防食塗料組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、
1分子中に1個以上のカルボキシ基を有し、不揮発分の酸価が1~20mgKOH/gである水性エポキシ樹脂(A)を含む第1剤と、
亜鉛末(B)を含む第2剤と、を含有し、
前記亜鉛末(B)を、本組成物の不揮発分100質量%に対し、43~85質量%含有する組成物である。
本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含む多成分型の組成物であれば特に制限されず、用いる成分によっては、前記第1剤および第2剤以外の第3剤を含む3成分型以上の組成物としてもよいが、本組成物によれば、このような3成分型以上にしなくても、乾燥性および硬化性、亜鉛末の分散性、並びに水希釈性に優れ、ポットライフの長い2成分型の組成物とすることができる。
このため、本組成物は、第1剤および第2剤を含む多成分型の組成物であるが、貯蔵時の省スペース化、製造容易性および塗装作業性に優れる等の点から、前記第1剤と第2剤(のみ)とからなる2成分型の組成物であることが好ましい。
このような本組成物は、第1剤が液状であり、第2剤が粉状である、1液1粉末型の組成物であってもよく、第1剤および第2剤が液状(ペースト状を含む)である、2液型の組成物であってもよいが、塗装現場でのハンドリング性(亜鉛末の混和性)、および、第2剤の保管容易性に優れる等の点から、2液型の組成物であることが好ましい。
これら第1~3剤等の剤(以下これらをまとめて「第n剤」ともいう。)は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、塗装の際(例:塗装直前)に混合して本組成物とした後用いられる。つまり、これら第n剤は、本組成物を調製するためのキットの構成要素であるともいえ、さらに換言すれば、前記本組成物は、前記第1剤と第2剤とを含む防食塗料組成物用キットであるといえる。
本発明において、第n剤は、これらの剤を調製した後、本組成物を調製するまでの間貯蔵され得る剤であり、例えば、下記実施例に記載のミルベースなどは、通常、該ミルベースを調製した後ほどなくして他の成分と混合して使用されるため、本発明における第n剤には該当しない。
本組成物は、前記第n剤を混合して調製されるが、この調製の後またはこの調製の際に、塗装方法等に応じて、希釈して用いられることがある。
本明細書における各説明は、前記希釈に関する内容以外は、希釈される前についての説明である。
本組成物は、前記水性エポキシ樹脂(A)を含むため、通常、水性塗料組成物となる。水性塗料組成物とは、水または水を主成分とする媒体(水性媒体)に、樹脂(A)や亜鉛末(B)等の成分を分散および/または溶解させた組成物のことをいう。
前記水性塗料組成物における水の含有量は、組成物中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、好ましくは60~100質量%、より好ましくは65~100質量%である。
コンテナなどの基材に塗料を塗装する環境は、乾燥設備が十分でない場合がある。このような環境において、従来の水性ジンクリッチ塗料を塗装する際には、乾燥性が重視され、該塗料に有機溶剤が配合されてきた。
一方で、本発明によれば、乾燥性および硬化性に優れる塗料組成物が得られるため、このように有機溶剤を配合しなくても、乾燥設備が十分でない場所において、所望の塗膜を容易に形成することができる。
従って、環境保全や作業環境の安全性等の点から、本組成物100質量%中の揮発性有機化合物(VOC)の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下であり、本組成物中のVOC含有量は、好ましくは200g/L以下、より好ましくは180g/L以下である。
本組成物中のVOC含有量は、組成物比重、加熱残分率(不揮発分の質量比率)および水分率の値を用い、下記式(1)および(2)から算出することができる。なお、組成物比重、加熱残分率および水分率は、以下のような測定値でも、用いる原材料から算出した値でも構わない。
VOC含有量(質量%)=(100-加熱残分率-水分率)/100・・・(1)
VOC含有量(g/L)=組成物比重×1000×(100-加熱残分率-水分率)/100・・・(2)
組成物比重(g/ml):23℃の温度条件下で、本組成物(第n剤を混合した直後の組成物)を内容積100mlの比重カップに充満し、該組成物の質量を計算することで算出される値。
加熱残分率(質量%):本組成物(第n剤を混合した直後の組成物)や各成分1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、加熱温度125℃で1時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分(不揮発分)および該針金の質量を測定することで算出される質量百分率の値。
水分率(質量%):カールフィッシャー法により測定される、本組成物100質量%に含まれる水の質量百分率の値。
本組成物は、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)などの基材に好適に用いられ、特に鉄鋼製の基材に好適に用いられる。
また、本組成物は、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、タンク、コンテナ等の(大型)鉄鋼構造物に好適に用いられる。
<第1剤>
本組成物の第1剤は、前記水性エポキシ樹脂(A)を含有すれば特に制限されないが、該樹脂(A)を含むことから、通常、水を含む液状の剤である。
第1剤中の水の含有量は、所望の水性塗料組成物を容易に得ることができる等の点から、第1剤中の分散媒および溶媒の合計量100質量%に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70~100質量%、特に好ましくは80~100質量%である。
第1剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分、例えば、樹脂(A)以外のバインダー、水、顔料(例:体質顔料、着色顔料)、防錆剤、フラッシュラスト防止剤、分散剤、消泡剤、搖変剤(タレ止め・沈降防止剤)、レベリング剤、湿潤剤、増粘剤、造膜助剤、ドライヤー、繊維状物質、界面活性剤、有機溶剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、pH調整剤等の従来公知の成分を必要に応じて適宜配合してもよい。
これらはそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
[水性エポキシ樹脂(A)]
前記樹脂(A)は、1分子中に1個以上のカルボキシ基を有し、不揮発分の酸価が1~20mgKOH/gである水性エポキシ樹脂であれば、特に制限されない。
樹脂(A)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
このような樹脂(A)を用いるため、VOC含有量が前記範囲にあっても、また、2成分型の組成物であっても、乾燥性、硬化性、貯蔵安定性およびポットライフに優れる組成物が得られ、防食性、耐水性、基材に対する付着性および耐衝撃性によりバランスよく優れる塗膜を容易に形成できる。
また、このような樹脂(A)を用いることで、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されてきた従来のアミン系硬化剤を使用しなくても塗膜を形成できる。このため、乾燥性、硬化性およびポットライフにより優れる組成物を得ることができる等の点から、本組成物は該アミン系硬化剤を用いないことが好ましい。
さらに、前記第1剤が顔料を含有する場合、カルボキシ基を有する前記樹脂(A)は、顔料に対し親和性を有する傾向にあるため、顔料の分散性の向上が期待される。このため、顔料の分散性の向上に起因した生産効率の向上が期待できる。
本発明において、「水性樹脂」とは、水または水を主な溶媒もしくは分散媒とする樹脂、または、水と混合可能(水で希釈可能)な樹脂であり、より具体的には、水分散型樹脂、水溶性樹脂および自己乳化性樹脂等が挙げられる。このような水性樹脂は、従来公知の方法、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、ミニエマルジョン重合法、マイクロエマルジョン重合法、無乳化剤(ソープフリー)乳化重合法等で合成することができる。また、これらの他に、樹脂を既知の方法、例えば、転相乳化、D相乳化、強制乳化、ゲル乳化、反転乳化、高圧乳化等で乳化させる方法でも、水性樹脂を得ることができる。
なお、エポキシ基を有さない樹脂も、エポキシ基を有する化合物を原料とする樹脂であれば、「エポキシ」を含む通称が使用されているため、本発明における「エポキシ樹脂」も同様に、エポキシ基を有さない樹脂を含む。
前記樹脂(A)の不揮発分のエポキシ当量は、乾燥性および/または硬化性により優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上であり、樹脂(A)は、エポキシ基を有さないことが特に好ましい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準拠して測定できる。
前記樹脂(A)の不揮発分の酸価は、20mgKOH/g以下、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは9mgKOH/g以下、特に好ましくは8mgKOH/g以下、さらに好ましくは7mgKOH/g以下であり、1mgKOH/g以上、好ましくは1.5mgKOH/g以上、特に好ましくは2mgKOH/g以上である。
酸価が前記範囲にある樹脂(A)を用いることで、乾燥性および/または硬化性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性に優れる塗膜を容易に形成できる。
前記酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定できる。
前記樹脂(A)の不揮発分のアミン価は、好ましくは150mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、特に好ましくは75mgKOH/g以下であり、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上、特に好ましくは50mgKOH/g以上である。
アミン価が前記範囲にある樹脂(A)を用いることで、乾燥性および/または硬化性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性に優れる塗膜を容易に形成できる。
前記アミン価は、JIS K 7273:1995に準拠して測定できる。
前述のようなエポキシ当量(エポキシ基を有さない)、酸価および/またはアミン価を満たす樹脂(A)としては、エポキシ樹脂(a1)と、エポキシ基と反応性を有する従来公知の化合物(a2)との反応生成物(但し、該反応生成物は、分子中に1個以上のカルボキシ基を有する)が挙げられる。
前記エポキシ基と反応性を有する化合物(a2)としては、エポキシ基との反応容易性等の点からアミン類が好ましい。
前記化合物(a2)は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
前記アミン類としては特に制限されず、脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、芳香脂肪族アミン類、複素環アミン類等のモノアミン、ポリアミンが挙げられる。アミン類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記アミン類としては特に制限されず、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の一級アルキルアミン類、モノエタノールアミン、2-エトキシエタノールアミン、2-ヒドロキシプロパノールアミン等の一級アルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類、o-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン等の芳香脂肪族アミン類、ポリアミン類とアルデヒド化合物と1価または多価フェノール類との重縮合物からなるマンニッヒ塩基、ポリアミン類とポリカルボン酸やダイマー酸と反応により得られるポリアミドポリアミン類、ポリオキシエチレンアミン、ポリオキシプロピレンアミン等のポリオキシアルキレンアミン類が挙げられる。水性媒体への分散性およびその貯蔵安定性に優れる点から、一級アルキルアミン類、一級アルカノールアミン類、ポリオキシアルキレンアミン類が好ましく、一級アルカノールアミン類、ポリオキシアルキレンポリアミン類がより好ましい。
前記ポリオキシアルキレンアミン類としては、例えば、下記構造式(a2-1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007429560000001
(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、またはt-ブチル基であり、R2は独立に、エチレン基、1,2-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,3-プロピレン基であり、R3はメチレン基、エチレン基、1,2-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,3-プロピレン基であり、nは繰り返し単位の平均値を意味し、2~100である。)
前記ポリオキシアルキレンアミン類の分子量は、貯蔵安定性および防食性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは300~5,000、より好ましくは400~1,500である。
前記ポリオキシアルキレンアミン類としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、「ジェファーミン M-600」(重量平均分子量:600)、「ジェファーミン M-1000」(重量平均分子量:1,000)、「ジェファーミン M-2005」(重量平均分子量:2,000)、「ジェファーミン M-2070」(重量平均分子量:2,000)(以上、いずれもハンツマン社製)が挙げられる。これらの中でも、「ジェファーミン M-600」、「ジェファーミン M-1000」が好ましい。
前記アミン類を用いて得られる樹脂(A)は、水性アミン変性エポキシ樹脂(A1)であるといえる。樹脂(A1)を用いることで、乾燥性および硬化性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、防食性および基材に対する付着性により優れる塗膜を容易に形成できる。
なお、本発明における変性エポキシ樹脂は、該樹脂を構成する全てのモノマー成分100質量%に対し、エポキシ樹脂を構成するモノマー成分が50質量%を超える樹脂をいう。
前記エポキシ樹脂(a1)としては、得られる塗膜の強靭性および基材に対する付着性等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
前記エポキシ樹脂(a1)は、単独でまたは2種以上を使用することができる。
前記反応生成物が、分子中に1個以上のカルボキシ基を有する樹脂となるには、エポキシ樹脂(a1)として、カルボキシ基を有する化合物を用いてもよく、前記化合物(a2)として、カルボキシ基を有する化合物を用いてもよく、これらを反応させる際にカルボキシ基を生じさせてもよく、また、これらを反応させた後、最終的に得られる樹脂がカルボキシ基を有するように変性などを行ってもよいが、前記反応の際に、前記エポキシ樹脂(a1)および化合物(a2)以外の、不飽和カルボン酸(a3)を用いることが好ましい。
前記不飽和カルボン酸(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
前記エポキシ樹脂(a1)、化合物(a2)および不飽和カルボン酸(a3)を反応させる順番は特に制限されないが、前述のような酸価およびアミン価を満たす樹脂を容易に得ることができる等の点から、エポキシ樹脂(a1)と化合物(a2)とを反応(以下「反応1」ともいう。)させ、次いで、反応1で得られた化合物と、不飽和カルボン酸(a3)とを反応(以下「反応2」ともいう。)させることが好ましい。
これらの反応1および2は、従来公知の方法で行うことができる。
前記反応1における、エポキシ樹脂(a1)と化合物(a2)との混合比は、得られる樹脂(A)にエポキシ基が残存すると、本組成物の貯蔵安定性が低下する場合があるため、得られる樹脂(A)にエポキシ基ができるだけ残存しないような比であることが好ましく、例えば、エポキシ基1モルに対し、アミノ基が、好ましくは1.1~1.5モル程度となる量、より好ましくは1.1~1.3モル程度となる量である。
前記反応2における、前記反応1で得られた化合物と、前記不飽和カルボン酸(a3)との混合比は、得られる樹脂(A)に前記アミノ基が残存すると、得られる塗膜の防食性が低下する場合があるため、アミノ基1モルに対し、カルボキシ基が1.1~1.5モル程度となる量が好ましく、1.1~1.3モル程度となるように混合することがより好ましい。
前記樹脂(A)としては、市販品を用いてもよく、例えば、ビスフェノールA構造および1分子中に1個以上のカルボキシ基を有する水性アミン変性エポキシ樹脂である、EPICLON C-250EP(DIC(株)製、エポキシ基不含、酸価:5.7mgKOH/g、アミン価:60mgKOH/g)が挙げられる。
本組成物の不揮発分100質量%に対する樹脂(A)の不揮発分の含有量は、乾燥性および硬化性に優れる組成物を容易に得ることができ、防食性および基材に対する付着性によりバランスよく優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、好ましくは5~30質量%、より好ましくは6~20質量%である。
前記樹脂(A)100質量%中の不揮発分(樹脂)の含有量は、調製容易性、保存安定性等により優れる組成物を得ることができる等の点から、好ましくは30~75質量%、より好ましくは35~60質量%である。
前記樹脂(A)の残分には、水が含まれていればよく、必要により、界面活性剤等の従来公知の成分が含まれていてもよい。
[水]
前記樹脂(A)には水が含まれている場合があるが、本組成物の調製をより容易にし、塗装作業性に優れる組成物を得られる等の点から、第1剤にはさらに水を配合することが好ましい。
前記水としては特に制限されず、水道水等を用いてもよいが、イオン交換水等を用いることが好ましい。
第1剤中の水の含有量(樹脂(A)等に含まれ得る水を含む)は、特に制限されないが、好ましくは20~70質量%である。
[搖変剤(タレ止め・沈降防止剤)]
本組成物は、塗装時の厚塗り性、タレ止め性の向上、亜鉛末(B)や顔料等の水や有機溶剤に対する不溶分の沈降防止のため、搖変剤を含有することが好ましい。特に、本組成物は、乾燥性に優れるため、厚膜(例:80μm以上)の塗膜を形成する場合、クラックが生じやすいが、搖変剤を用いることで、クラックの発生を抑制することができる。
搖変剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
搖変剤としては、例えば、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系塩類、酸化ポリエチレン系ワックス、エチレン・酢酸ビニル系ワックス、ポリアマイド系ワックス、水添ヒマシ油系ワックス、合成微粉シリカが挙げられる。これらの中でも、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、酸化ポリエチレン系ワックス、エチレン・酢酸ビニル系ワックス、ポリアマイド系ワックスなどの有機系搖変剤が好ましい。
本組成物の不揮発分100質量%に対する搖変剤の不揮発分の含有量は、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、好ましくは0.01~3.5質量%、より好ましくは0.05~3質量%である。
[分散剤]
本組成物は、該組成物における亜鉛末(B)や顔料等の分散性を向上し、外観が良好な硬化膜を容易に形成でき、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、分散剤を含有することが好ましい。
分散剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、リン酸基、アミノ基、これらの塩の基、アンモニウム塩基等の顔料吸着基を有し、脂肪酸、ポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等の相溶性鎖を有する共重合体等の各種分散剤が挙げられる。
本組成物の不揮発分100質量%に対する分散剤の不揮発分の含有量は、耐クラック性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%である。
[フラッシュラスト防止剤]
水性塗料を活性な鋼材表面などに塗装する場合、塗装直後から乾燥過程において、該鋼材表面から鉄イオンが溶出することなどに起因する、発錆およびその錆などが塗膜表面に浮き出てくるフラッシュラストが起こる場合がある。特に、高温多湿条件下においてフラッシュラストの発生が顕著な場合がある。
このようなフラッシュラストを抑制する目的で、本組成物にはフラッシュラスト防止剤を用いることが好ましい。
フラッシュラスト防止剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
フラッシュラスト防止剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩;安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アンモニウムなどの安息香酸塩;フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどのフィチン酸塩;セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪酸塩;アルキルリン酸、ポリリン酸などのリン酸誘導体;タンニン酸塩;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、これらのアルカリ金属塩などのアミン系キレート剤;4-メチル-γ-オキソ-ベンゼンブタン酸とN-エチルモルホリンの付加反応物;モノアルキルアミンやポリアミン、第四級アンモニウムイオンなどをトリポリリン酸二水素アルミニウムなどの層状リン酸塩にインターカレートしてなる層間化合物;ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物、ヒドラゾン化合物などのヒドラジン誘導体が挙げられる。
これらの中でも、耐フラッシュラスト性に優れ、安価である等の点から、亜硝酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)、安息香酸塩(例:ナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩)が好ましく、使用量が少なくても、高い耐フラッシュラスト性を示す組成物を容易に得ることができる等の点から、亜硝酸塩がより好ましく、亜硝酸ナトリウムが特に好ましい。
本組成物の不揮発分100質量%に対するフラッシュラスト防止剤の含有量は、耐フラッシュラスト性に優れる組成物を容易に形成できる等の点から、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.05~1.0質量%である。
[有機溶剤]
第1剤が水を含有する場合、冬季における凍結を抑制するため、また、塗装作業性により優れる組成物を得るため、任意の量で水と混和可能な有機溶剤を用いてもよい。
有機溶剤としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
このような有機溶剤としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等の炭素数1~3のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
<第2剤>
本組成物の第2剤は、亜鉛末(B)を含有すれば特に制限されず、実質的に該亜鉛末(B)のみからなってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲において、該亜鉛末(B)以外の成分を含んでいてもよい。
該他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
[亜鉛末(B)]
亜鉛末(B)としては、金属亜鉛の粉末、または、亜鉛を主体(亜鉛の含有量が全体の90質量%以上)とする合金(例:亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金、好ましくは亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-錫合金)の粉末が挙げられる。
亜鉛末(B)としては、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
亜鉛末(B)の形状は特に制限されないが、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、メディアン径(D50)が、好ましくは2~15μm、より好ましくは2~7μmである粒子状亜鉛末が望ましい。
該D50は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
本組成物の不揮発分100質量%に対する亜鉛末(B)の含有量は、43~85質量%であり、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは45~85質量%、より好ましくは50~85質量%、特に好ましくは65~82質量%である。
亜鉛末(B)の前記含有量が43質量%未満であると、亜鉛の犠牲陽極作用が不十分となり防食性の低下を引き起こしやすくなり、85質量%を超えると、乾燥塗膜中の顔料分が過多となり、耐透水性の低下を引き起こしやすくなる。
前記亜鉛末(B)以外の成分としては、前記第1剤の欄に記載した他の成分と同様の成分が挙げられる。
前述の通り、第2剤は、液状(ペースト状)であることが好ましく、この場合、該第2剤は、亜鉛末(B)の分散性に優れ、前記第1剤との混和性に優れ、亜鉛末(B)が均一に分散した本組成物を容易に得ることができる等の点から、有機溶剤を含むことが好ましい。
このような有機溶剤の具体例としては、第1剤の欄で挙げた有機溶剤と同様の有機溶剤が好ましい。
なお、亜鉛末(B)と水とが反応することにより、亜鉛末(B)の酸化による防食性の低下、水素の発生による火災の危険性が高まる等の点から、第2剤は、水を含まないことが好ましい。
第2剤中の有機溶剤の含有量は、本組成物中のVOC量が前記範囲となる量であることが好ましいが、亜鉛末(B)の分散性に優れる等の点から、第2剤100質量%に対し、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。
また、第2剤は、前記と同様の理由、および、第2剤の輸送性や貯蔵安定性等の点から、搖変剤を含有することが好ましく、該搖変剤としては、第1剤の欄で挙げた搖変剤と同様の搖変剤等が挙げられる。
[樹脂(A)以外のバインダー]
第2剤は、樹脂(A)以外のバインダーを含有することが好ましく、樹脂(A)と反応性を有する化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、エポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられ、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有していることが好ましく、該樹脂の分子量、エポキシ当量等の樹脂物性値は特に制限されないが、本組成物のVOC含有量の増加を抑制できる等の点から、常温(23℃)において液状であることが好ましい。
なお、前記エポキシ樹脂を用いる場合、亜鉛末(B)との混合性等の点から、前記有機溶剤と併用することが好ましい。
該エポキシ樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる点、粘度が低く、第2剤の製造作業性に優れる点などから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、カルボキシ基を有さないエポキシ樹脂である、jER828(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、酸価:<1mgKOH/g)、jER807(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、酸価:<1mgKOH/g)が挙げられる。
このようなエポキシ樹脂を含有する場合、該樹脂の含有量は、より防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。
<防食塗料組成物の調製方法>
前記第1剤および第2剤は、これらの剤に配合する各成分を混合(混練)することで、調製することができ、この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。
本組成物は、これら第1剤、第2剤および必要に応じて用いられる他の剤(例:第3剤)を混合(混練)することで、調製することができる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
また、前記各剤を混合して本組成物を調製する際には、得られる組成物中の亜鉛末(B)の含有量が前記範囲となるように調整して混合すればよい。
≪塗膜、塗膜付き基材≫
本発明に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、本発明に係る塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)は、本塗膜と基材とを有する積層体である。
前記基材の材質としては特に制限されず、例えば、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)が挙げられる。
また、前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で基材表面を研磨するなど、素地調整(例:算術平均粗さ(Ra)が30~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
前記基材としては、さらに、基材に付着した錆、汚れ、塗料(旧塗膜)等を落とす洗浄処理やブラスト処理等の前処理を行った基材であってもよい。
前記基材としては特に制限されず、防食性が求められる基材に対し、制限なく使用することができるが、本組成物を用いる効果がより発揮される等の点から、好ましくは、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、タンク、コンテナなどの(鉄鋼)構造物等が挙げられる。
本塗膜の乾燥膜厚は特に限定されないが、十分な防食性を有する塗膜が得られる等の点から、通常は10~100μm、好ましくは15~80μm、より好ましくは20~60μmである。
本塗膜付き基材は、本塗膜と基材とを含む積層体であって、本塗膜上に、さらに防食性の向上を目的とした中塗り塗膜や、耐候性や美観等に優れる上塗り塗膜を形成してもよい。前記中塗り塗膜としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系等の各種中塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。また、前記上塗り塗膜としては、アクリル樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系等の各種上塗り塗料組成物より形成される塗膜等が挙げられる。
≪塗膜付き基材の製造方法≫
本発明に係る塗膜付き基材の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、下記工程[1]および[2]を含む。
工程[1]:本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:基材上に塗装された本組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
<工程[1]>
前記工程[1]における塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装等のスプレー塗装、はけ塗り、ローラー塗りなどの従来公知の方法が挙げられる。これらの中でも、前記構造物などの大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
このような塗装の際には、得られる塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。
前記スプレー塗装の条件は、形成したい乾燥膜厚に応じて適宜調整すればよいが、例えば、エアレススプレー塗装の場合、1次(空気)圧:0.3~0.6MPa程度、2次(塗料)圧:10~15MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度が好ましい。
なお、本組成物を塗装する際に、所望に応じて、適正な塗料組成物の粘度に調整してもよい。このような粘度調整に用いる希釈剤としては、水を用いることが好ましい。
この場合、各塗装方法に適した塗料粘度となるように希釈剤を用いることが好ましく、例えば、エアレススプレー塗装する場合、本組成物100質量部に対する希釈剤の使用量は、好ましくは1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
前記スプレー塗装に適した本組成物(必要により希釈された組成物)の粘度は、測定器としてB型粘度計(リオン(株)製、型式VT-06)を用いた、23℃の測定条件下での粘度が、好ましくは3,000~15,000mPa・s、より好ましくは5,000~12,000mPa・sである。
<工程[2]>
前記工程[2]における乾燥条件としては、特に制限されず、塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥温度は、常温乾燥の場合、通常5~35℃、より好ましくは10~30℃であり、熱風乾燥機等で強制乾燥する場合、通常30~90℃、より好ましくは40~80℃である。本組成物によれば、このような常温乾燥でも組成物を硬化させることができる。
乾燥時間は、塗膜の乾燥方法によって異なり、常温乾燥の場合、従来の塗料と同様に1日~7日程度であってもよいが、本組成物によれば、好ましくは3時間~12時間、より好ましくは5時間~10時間で乾燥させることができる。また、強制乾燥する場合、従来の塗料と同様に5分~60分程度であってもよいが、本組成物によれば、好ましくは5分~30分、より好ましくは10分~20分で乾燥させることができる。
本発明について実施例を挙げ、更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
容器に、イオン交換水を18.1質量部、分散剤1を2質量部、消泡剤を0.5質量部、フラッシュラスト防止剤を0.3質量部、体質顔料を8質量部、および、揺変剤1を1.5質量部添加し、ハイスピードディスパーで粒ゲージ40μm以下まで分散し、ミルベースを作製した。得られたミルベースに、水分散型エポキシ樹脂Aを63質量部、造膜助剤を2.5質量部、レベリング剤を0.1質量部、増粘剤を4質量部添加した後、ハイスピードディスパーで混合し、実施例1の第1剤を調製した。
次に、前述のようにして得られた第1剤40質量部と、第2剤である亜鉛末60質量部とを、均一になるまでハイスピードディスパーで混合し、実施例1の塗料組成物を調製した。
[実施例2]
実施例1と同様にして、第1剤を調製した。
次に、容器に、有機溶剤を7質量部、分散剤2を2質量部、揺変剤2を3質量部、湿潤剤を1質量部、および、亜鉛末を87質量部添加し、ハイスピードディスパーで混合し、実施例2の第2剤を調製した。
その後、第1剤30質量部と、第2剤70質量部とを、均一になるまでハイスピードディスパーで混合し、実施例2の塗料組成物を調製した。
[実施例3]
実施例1と同様にして、第1剤を調製した。
次に、容器に、有機溶剤を5質量部、分散剤2を2質量部、揺変剤2を3質量部、湿潤剤を1質量部、樹脂(A)以外のバインダー2質量部、および、亜鉛末を87質量部添加し、ハイスピードディスパーで混合し、実施例3の第2剤を調製した。
その後、第1剤30質量部と、第2剤70質量部とを、均一になるまでハイスピードディスパーで混合し、実施例3の塗料組成物を調製した。
[実施例4~7および比較例5~7]
表2に記載の各原材料を、該表に記載の量で用いた以外は実施例2と同様にして、塗料組成物を調製した。
[比較例1]
表1に記載の各原材料を、該表に記載の量で用いた以外は実施例1と同様にして、第1剤を調製した。
次に、容器に、水溶性アミンを45質量部、消泡剤を0.2質量部、および、イオン交換水を54.8質量部添加した後、ハイスピードディスパーで混合し、比較例1の硬化剤を調製した。
その後、第1剤30質量部と、硬化剤5質量部と、第2剤である亜鉛末65質量部とを、均一になるまでハイスピードディスパーで混合し、比較例1の塗料組成物を調製した。
[比較例2~4]
表1に記載の各原材料を、該表に記載の量で用いた以外は実施例1と同様にして、各塗料組成物を調製した。
表1および2中の各剤(第1剤、第2剤または硬化剤)の欄の数値は、「質量部」を表す。
表1および2中の原材料の詳細を表3に示す。
<1.亜鉛末混和性試験>
(1)手撹拌による亜鉛末混和性試験
容器に、各実施例および比較例で用いた第2剤160質量部を入れ、そこに、水と各試験例の第1剤で使用した樹脂との合計が40質量部となるように添加し(但し、硬化剤を用いない場合は、各試験例で用いた樹脂の不揮発分が15質量部となる量を使用[例えば、実施例1の場合は、水分散型エポキシ樹脂A(不揮発分42%)35.7質量部と水4.3質量部とを使用]。なお、比較例1の場合は、水分散エポキシ樹脂B(不揮発分52%)24.6質量部と水溶性アミン(不揮発分75%)3.0質量部との混合物に水12.4質量部を加えて使用)、スパチュラを用いて5分間撹拌(手撹拌)した。続いて、JIS K 5600-2-5;1999に準拠し、粒ゲージ(0~100μm)を用いて亜鉛末の分散度を測定した。
(2)ディスパー撹拌による亜鉛末混和性試験
前記(1)において、手攪拌の代わりに、ハイスピードディスパー(回転数1000rpm)で5分間撹拌(ディスパー撹拌)した以外は同様にして亜鉛末の分散度を測定した。
前記(1)および(2)の試験において測定した亜鉛末の分散度を基に、亜鉛末混和性を下記基準により評価した。
・評価基準
○:前記(1)の試験における分散度が30μm未満
△:前記(1)の試験における分散度が30μm以上であり、かつ、前記(2)の試験における分散度が30μm未満
×:前記(2)の試験における分散度が30μm以上
<2.乾燥性試験>
23℃下で、ガラス板上に、実施例および比較例の各塗料組成物を、すき間0.075mmのアプリケータを用いて塗装し、経時での乾燥状態を測定した。乾燥性は、JIS K 5600-1-1:1999に基づき、塗膜面の乾燥状態が、半硬化乾燥状態に達するまでの時間により評価した。なお、「半硬化乾燥」状態とは、塗膜面の中央付近を指先で静かに軽くこすり、塗膜にすり跡が付かない状態のことをいう。
・評価基準
○:30分以下で半硬化乾燥状態に達した
×:30分経過しても半硬化乾燥状態に達しなかった
<3.硬化性試験>
23℃下で、ガラス板(200mm×180mm×厚み3mm)上に、実施例および比較例の各塗料組成物を、すき間75μmのアプリケータを用いて塗装し、10分間静置した後、50℃で10分間強制乾燥し、次いで、室温で1日静置することで、硬化性試験用試験体を作成した。該試験体の塗膜について、JIS K 5600-5-4:1999に基づいて、ひっかき硬度(鉛筆法)を測定した。塗膜表面にきず跡が生じなかった最も硬い鉛筆硬度を塗膜硬度とし、下記評価基準に従って評価した。
・評価基準
○:鉛筆硬度が2B以上(例:2B、B、HB・・・)
×:鉛筆硬度が2B未満(例:3B、4B、5B・・・)
<4.ポットライフ試験>
実施例および比較例の各塗料組成物を調製した直後の組成物(以下「塗料組成物(直後)」ともいう。)と、実施例および比較例の各塗料組成物を容器に1000g量り採り、35℃の恒温槽中で5時間保持した後の塗料組成物(以下「塗料組成物(5時間後)」ともいう。)とを用い、塗料状態と塗膜硬度を観察または測定した。
塗料状態は、塗料組成物(5時間後)の状態(沈殿や凝集の有無)を目視により観察した。
また、塗膜硬度は、前記塗料組成物(直後)または塗料組成物(5時間後)を用い、前記硬化性試験と同様の方法で測定した鉛筆硬度の差を基に、下記評価基準に従って評価した。
・評価基準
○:塗料組成物(5時間後)に沈殿および凝集がなく、かつ、塗料組成物(直後)から得られた塗膜の塗膜硬度と、塗料組成物(5時間後)から得られた塗膜の塗膜硬度とに差がない
×:塗料組成物(5時間後)に沈殿および凝集が発生、または、塗料組成物(直後)から得られた塗膜の塗膜硬度と、塗料組成物(5時間後)から得られた塗膜の塗膜硬度とに差が生じた
<5.水希釈性試験>
実施例および比較例の各塗料組成物100質量部に対して、水を15質量部添加、混合した後、23℃下で、水平な台の上に置いたガラス板(200mm×150mm×厚み2mm)に、得られた混合物を、ASTM D 4400に記載のサグテスター(elcometer社製、型式:4270、隙間100~600μm)を用いて塗布した後、直ちに該ガラス板をサグテスターの軌道線が水平になるように垂直に立て、タレ止め性を測定した。サグテスターの各隙間によって形成された塗料層と塗料層との間の間隙(3mm)に流れ出た組成物が、該間隙距離の1/2に達しない場合(サグテスターによって形成された塗料層から垂れた長さが1.5mmに達しない場合)をタレが発生していないとし、また、前記間隙距離の1/2に達した場合をタレが発生していると判断した。
なお、タレ止め性は、前記流れ出た組成物が、前記間隙距離の1/2に達しない場合の最大の膜厚(ガラス板に塗装したウェット塗膜の膜厚(サグテスターの隙間))を指し、15%希釈時のタレ止め性と、塗料組成物混合時(無希釈時)のタレ止め性との差を基に、水希釈性を評価した。
・評価基準
○:無希釈時と15%希釈時のタレ止め性の差が250μm以内
×:無希釈時と15%希釈時のタレ止め性の差が250μmを越える
<6.防食性試験>
前記水希釈性試験と同様に測定したタレ止め性が50μmとなるように、イオン交換水を用いて、実施例および比較例の各塗料組成物を調整した。
このように調整後の各塗料組成物を、ブラスト処理鋼板(SS400、寸法:150mm×70mm×1.6mm(厚))上に、平均乾燥膜厚が30μmとなるようにエアースプレーで塗布し、常温下で10分間乾燥した後、50℃で10分間熱風乾燥することで塗膜を形成した。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間乾燥することで、試験体(塗膜付き基材)を作成した。
JIS K 5600-7-1:1999に基づいて、塩水濃度5wt%、温度35℃、相対湿度98%の塩水噴霧条件の塩水噴霧試験機中に、前記各試験体を24時間保持することで塩水噴霧試験を行った。この塩水噴霧試験後の各試験体を下記評価基準に従って評価した。
・評価基準
○:試験体の塗膜面の全面積に対して、錆の発生面積が0.03%以下であり、かつ、塗膜に膨れが発生していない。
×:試験体の塗膜面の全面積に対して、錆の発生面積が0.03%を超えた、または、塗膜に膨れが発生した。
Figure 0007429560000002
Figure 0007429560000003
Figure 0007429560000004

Claims (8)

  1. 防食塗料組成物であって、
    1分子中に1個以上のカルボキシ基を有し、不揮発分の酸価が1~20mgKOH/gである水性エポキシ樹脂(A)を含む第1剤と、
    亜鉛末(B)を含む第2剤と、
    を含有し、
    前記亜鉛末(B)を、前記防食塗料組成物の不揮発分100質量%に対し、43~85質量%含有
    前記水性エポキシ樹脂(A)の不揮発分のアミン価が1~150mgKOH/gである、
    防食塗料組成物。
  2. 前記水性エポキシ樹脂(A)が、水性アミン変性エポキシ樹脂(A1)である、請求項1に記載の防食塗料組成物。
  3. 前記第2剤が、グリコールエーテル系溶剤または炭素数1~3のアルコール系溶剤を含む、請求項1または2に記載の防食塗料組成物。
  4. 前記第2剤が、前記水性エポキシ樹脂(A)以外のバインダーを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の防食塗料組成物。
  5. 前記防食塗料組成物100質量%中の揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の防食塗料組成物。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の防食塗料組成物から形成された塗膜。
  7. 基材と請求項に記載の塗膜とを含有する塗膜付き基材。
  8. 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
    [1]基材に、請求項1~のいずれか1項に記載の防食塗料組成物を塗装する工程
    [2]基材上に塗装された組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
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