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JP7467911B2 - 眼科用組成物及び外観安定化方法 - Google Patents

眼科用組成物及び外観安定化方法 Download PDF

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JP7467911B2 JP2019234240A JP2019234240A JP7467911B2 JP 7467911 B2 JP7467911 B2 JP 7467911B2 JP 2019234240 A JP2019234240 A JP 2019234240A JP 2019234240 A JP2019234240 A JP 2019234240A JP 7467911 B2 JP7467911 B2 JP 7467911B2
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Description

本発明は、流動パラフィンを含有する眼科用組成物及び外観安定化方法に関するものである。
涙液油層は、マイボーム腺から分泌される脂質から構成される。加齢やホルモンバランス変化により、前記油層中の脂質の飽和化が進行することが知られている。それはコンタクトレンズ装用により助長されることが、さらに知られている。脂質の飽和化が進行することにより、涙液油層が不安定化し、ドライアイを発症し、さらには眼精疲労を引き起こす一因となる。本発明者らは、この涙液油層の安定化に流動パラフィンを含む水性組成物が有効であることを見出した(特許文献1)。
特開2017-186266号公報
一方、流動パラフィンを非イオン界面活性剤で可溶化した眼科用組成物において、製造過程や輸送時の振動等により、エマルション同士の合一が促進され、外観が悪化(透過率が低下)することが判明した。本発明は、前記課題に鑑みなされたもので、製造過程や輸送中の振動等を受けても外観安定性を維持できる、流動パラフィンを含有する眼科用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、流動パラフィンを含有する眼科用組成物に、非イオン界面活性剤と、特定の高分子化合物とを配合することで、上記課題が解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記眼科用組成物及び外観安定化方法を提供する。
1.(A)流動パラフィンと、
(B)非イオン性界面活性剤と、
(C)セルロース系高分子化合物及びビニル系高分子化合物から選ばれる1種以上と
を含む眼科用組成物。
2.(B)成分が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中から選ばれる1種以上を含む1記載の眼科用組成物。
3.(C)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルピロリドンの中から選ばれる1種以上を含む1又は2記載の眼科用組成物。
4.(C)成分の配合量が、0.0001~10w/v%である1~3のいずれかに記載の眼科用組成物。
5.(B)/(A)で表される配合質量比が3~20である1~4のいずれかに記載の眼科用組成物。
6.透過率が70%以上である1~5のいずれかに記載の眼科用組成物。
7.(A)流動パラフィン及び(B)非イオン性界面活性剤を含有する眼科用組成物に、(C)セルロース系高分子化合物及びビニル系高分子化合物から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の外観安定化方法。
本発明によれば、製造過程や輸送中の振動等を受けても外観安定性を維持できる、流動パラフィンを含有する眼科用組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
流動パラフィンは、飽和脂質が増加した不安定な涙液油層に対して、涙液油層安定化効果が高い成分である。流動パラフィンは常温液体の炭化水素からなり、トリグリセリドからなる植物油や炭化水素の中でも炭素鎖長の短いスクワラン等と比較して極性が低い油分である。また、流動パラフィンは原油から得られる炭化水素類の混合物であり、比重が0.860~0.890(日本薬局方20/20℃)、常温で液体である。原油の常圧蒸留残油を原料に減圧蒸留,溶剤脱歴処理を行い、その後、溶剤精製法又は水素化分解法処理を行う方法等により製造される。本発明に用いられる流動パラフィンに特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。炭化水素の炭素鎖長に特に制限はないが、15~45、好ましくは22~39のものが好適に用いられる。また、炭化水素における二重結合の有無について特に制限はないが、飽和炭化水素を多く含むものが好適に用いられる。さらに、炭化水素の構造としては、直鎖、分岐鎖及び環状構造のいずれを含んでいてもよく、いずれの比重の流動パラフィンであっても用いることができる。特に、日本薬局方に収載された流動パラフィン及び軽質流動パラフィン等が好適である。なお、安定剤として適当な型のトコフェロールを含んでいてもよい。
流動パラフィンの粘度はその分子量と相関しており、第十七改正日本薬局方第1法(37.8℃)の測定方法において、動粘度30~100mm2/sのものが好ましく、37~88mm2/sのものがより好ましく、74~88mm2/sのものがさらに好ましい。上記粘度範囲内の2種以上を混合してもよい。上記30mm2/s以上とすることで、涙液油層安定化効果をより得ることができる。涙液油層安定化効果をより高める点からは、74~88mm2/sのものが好ましい。また、100mm2/s以下とすることで、外観の透過率が高められると同時に、流動パラフィン特有の眼刺激をより軽減することができる。なお、外観の透過率と眼刺激軽減の点からは、37~88mm2/sのものが好ましい。
(A)成分の配合量は、涙液油層安定化の観点から、眼科用組成物(以下、組成物と記載する場合がある)中、0.001~1w/v%(質量/体積%、g/100mL)が好ましく、0.005~0.5w/v%がより好ましく、0.01~0.2w/v%がさらに好ましい。この範囲とすることで、涙液油層安定化効果が期待でき、眼刺激性がなく、組成物もより透過率を高めることができる。
(B)非イオン界面活性剤としては特に限定されず、眼科用組成物に用いられる非イオン界面活性剤を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油、(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(B-3)(B-1)及び(B-2)以外の非イオン界面活性剤等が挙げられる。(B)成分としては、(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油及び(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレンヒマシ油35を用いることが好ましい。
(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。点眼時の刺激感を低減する観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を用いることが好ましい。
(B-3)(B-1)及び(B-2)以外の非イオン界面活性剤
ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)に代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポロクサマーに代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40)に代表されるモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。この中でも、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)が好ましい。
(B)界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(B)成分の配合量は特に限定されないが、組成物中0.01~10w/v%が好ましく、0.05~5w/v%がより好ましく、0.1~2w/v%がさらに好ましい。
(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油を配合する場合は、組成物中0.01~10w/v%が好ましく、0.05~5w/v%がより好ましく、0.1~2がさらに好ましい。
(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合は、組成物中0.01~10w/v%が好ましく、0.05~5w/v%がより好ましく、0.1~2w/v%がさらに好ましい。
(B-3)(B-1)及び(B-2)以外の非イオン界面活性剤を配合する場合は、組成物中0.005~10w/v%が好ましく、0.01~5w/v%がより好ましく、0.05~1w/v%がさらに好ましい。
[(C)成分]
(C)成分は、セルロース系高分子化合物及びビニル系高分子化合物から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。セルロース系高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンが好ましい。さらには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースがより好ましい。
本発明に用いられるヒドロキシプロピルメチルセルロースに制限はないが、第十七改正日本薬局方に収載されたヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)を用いることが好ましい。置換度タイプは、2910、2906、2208、1828のいずれでもよく、2910、2906、2208が好ましい。
2910としては、2w/v%水溶液の粘度が40.0~60.0mPa・s(例えば、METLOSE 60SH50(信越化学工業社製))、粘度が3,000~5,600mPa・s(例えば、METLOSE 60SH4000(信越化学工業社製))、粘度が7,500~14,000mPa・s(例えば、METLOSE 60SH10000(信越化学工業社製))等が挙げられる。
2906としては、2w/v%水溶液の粘度が40.0~60.0mPa・s(例えば、METLOSE 65SH50(信越化学工業社製))、粘度が320~480mPa・s(例えば、METLOSE 65SH400(信越化学工業社製))、粘度が3,000~5,600mPa・s(例えば、METLOSE 65SH4000(信越化学工業社製))のものが挙げられる。
2208としては、2w/v%水溶液の粘度が80~120mPa・s(例えば、METLOSE 90SH-SR100(信越化学工業社製))、粘度が3,000~5,600mPa・s(例えば、METLOSE 90SH-SR4000(信越化学工業社製))が挙げられる。なお、(C)成分の粘度測定方法は、600mPa・s未満の場合は、第十七改正日本薬局方第1法(20℃)、600mPa・s以上の場合は第2法で測定する。
本発明に用いられるメチルセルロースに制限はないが、第十七改正日本薬局方に収載されたメチルセルロース(メトキシ基26.0~33.0%)を用いることが好ましい。
メチルセルロースとしては、2w/v%水溶液の粘度が3.2~4.8mPa・s(例えば、METLOSE SM4(信越化学工業社製))、粘度が12.0~18.0mPa・s (例えば、METLOSE SM15(信越化学工業社製))、粘度が20.0~30.0mPa・s(例えば、METLOSE SM25(信越化学工業社製))、粘度が80~120mPa・s(例えば、METLOSE SM100(信越化学工業社製))、粘度が320~480mPa・s (例えば、METLOSE SM400(信越化学工業社製))、粘度が1,125~2,100mPa・s(例えば、METLOSE SM1500(信越化学工業社製))、粘度が3,000~5,600mPa・s (例えば、METLOSE SM4000(信越化学工業社製))等が挙げられる。
本発明に用いられるヒドロキシエチルセルロースに制限はないが、医薬品添加物規格2018に収載されたヒドロキシエチルセルロース(ヒドロキシエトキシル基30.0~70.0%)を用いることが好ましい。
ヒドロキシエチルセルロースとしては、2w/v%水溶液の粘度が300~600mPa・s(例えば、HEC CF-G(住友精化社製))、2w/v%水溶液の粘度が5,000~10,000mPa・s(例えば、HEC CF-V(住友精化社製))、2w/v%水溶液の粘度が10,000~16,000mPa・s(例えば、HEC CF-W(住友精化社製))、1w/v%水溶液の粘度が1,250~1,750mPa・s(例えば、HEC CF-X(住友精化社製))、1w/v%水溶液の粘度が2,000~3,000mPa・s(例えば、HEC CF-Y(住友精化社製))等が挙げられる。
本発明に用いられるポリビニルピロリドンに制限はないが、第十七改正日本薬局方に収載されたポリビニルピロリドン(ポビドン)を用いることが好ましい。K値は10~120のものが好ましく、K値は第十七改正日本薬局方に記載された方法で求めることができる。ポリビニルピロリドンとしては、K値が、11~14(例えば、Kollidon 12PF(BASFジャパン社製))、K値が、16~18(例えば、Kollidon 17PF(BASFジャパン社製))、K値が、28~32(例えば、Kollidon 30(BASFジャパン社製))、K値が、85~95(例えば、Kollidon 90F(BASFジャパン社製)等が挙げられる。
(C)成分の配合量は特に限定されないが、組成物中0.0001~10w/v%が好ましく、0.0005~2w/v%がより好ましく、0.001~0.5w/v%がさらに好ましい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合は、組成物中0.0001~5w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.01~0.5w/v%がさらに好ましい。
ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースを用いる場合は、組成物中0.0001~5w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.01~00.5w/v%がさらに好ましく、0.06~0.5w/v%が特に好ましい。
(C)成分が、ポリオキシエチレンヒマシ油の場合、メチルセルロースの好ましい範囲は以下の通りである。
2w/v%水溶液の粘度が3,000~5,600mPa・s(例えば、METLOSE SM4000(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.0005~2w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましく、0.001~0.005w/v%が特に好ましい。
2w/v%水溶液の粘度が20.0~30.0mPa・s(例えば、METLOSE SM25(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.01~2w/v%がより好ましく、0.05~0.1w/v%がさらに好ましい。
2w/v%水溶液の粘度が12.0~18.0mPa・s(例えば、METLOSE SM15(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.005~2w/v%がより好ましく、0.01~0.25w/v%がさらに好ましい。
(C)成分が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の場合、メチルセルロースの好ましい範囲は以下の通りである。
2w/v%水溶液の粘度が3,000~5,600mPa・s(例えば、METLOSE SM4000(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.0005~2w/v%がより好ましく、0.0025~0.1w/v%がさらに好ましい。
2w/v%水溶液の粘度が20.0~30.0mPa・s(例えば、METLOSE SM25(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.005~0.1w/v%がさらに好ましい。
2w/v%水溶液の粘度が12.0~18.0mPa・s(例えば、METLOSE SM15(信越化学工業社製))の場合、0.0001~5w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.005~0.1w/v%がさらに好ましい。
(B)/(A)で表される配合質量比は3~20が好ましく、3.8~18がより好ましく、4.4~17.3がさらに好ましく、5.1~17.3が特に好ましく、5.8~17.3が最も好ましい。
(B)成分が、(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油の場合は、3~15が好ましく、3.8~14がより好ましく、4.4~13.9がさらに好ましく、5.1~13.9が特に好ましく、5.8~13.9が最も好ましい。
(B)成分が、(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の場合は、3.9~20が好ましく、4.7~18がより好ましく、5.6~17.3がさらに好ましく、6.4~17.3が特に好ましく、7.2~17.3が最も好ましい。
(C)/(B)で表される配合質量比は0.0004~2が好ましく、0.001~2がより好ましく、0.002~2がさらに好ましい。
(C)成分がヒドロキシプロピルメチルセルロースの場合は、0.002~2が好ましく、0.008~2がより好ましく、0.05~1.5がさらに好ましい。
(C)成分がポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースの場合は、0.001~1が好ましく、0.07~0.7がより好ましく、0.01~0.4がさらに好ましい。
(B)成分が、(B-1)ポリオキシエチレンヒマシ油であって、(C)成分がメチルセルロースの場合は、0.0004~0.8が好ましく、0.001~0.5がより好ましく、0.002~0.2がさらに好ましい。
(B)成分が、(B-2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であって、(C)成分がメチルセルロースの場合は、0.0007~0.7が好ましく、0.001~0.3がより好ましく、0.003~0.1がさらに好ましい。なお、上記比率はw/v%比であるが、質量比と同じである。
[その他の成分]
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、多価アルコール、清涼化剤、粘稠剤、水、油成分、薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲であり、組成物中の量である。
防腐剤の中でもアルキル鎖やベンゼン環等の疎水部を有する防腐剤として、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられるが、流動パラフィンが涙液油層へ移行されにくくなるため、組成物中に0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がさらに好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。防腐剤としては、流動パラフィンが涙液油層へ移行することを妨げない点から、ソルビン酸又はその塩や亜硫酸塩等が好ましい。組成物中に1w/v%以下が好ましく、0.1W/v%以下がさらに好ましい。
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、D体、L体又はDL体のいずれでもよい。糖類を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、氷酢酸、トロメタモール、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは、3.5~13.0とすることもでき、涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から3.5~8.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウムと塩化カリウムを少なくとも1種以上配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスインスツルメンツ社)を用いて行う。
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合、多価アルコールの配合量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤の配合量は、組成物中0.0001~0.2w/v%が好ましい。
(C)成分以外の粘稠剤としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
水は精製水等、特に限定されるものでないが、組成物中90.0~99.5w/v%が好ましく、95.0~97.6w/v%がより好ましい。
油成分としては、大豆油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、酢酸-d-α-トコフェロール等のビタミンE、レチノールパルミチン酸エステル等のビタミンA、白色ワセリン、精製ラノリン、コレステロール、ミックストコフェロール等が挙げられる。流動パラフィン以外の油成分を配合する場合、その配合量は0.001~1.0w/v%が好ましく、0.001~0.5w/v%がより好ましく、0.001~0.25w/v%が最も好ましい。
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は、必須成分及び任意成分を混合すればよいが、高圧乳化機を用いて高圧乳化する方法が好ましい。高圧乳化物とすることで、透過率を高めることができる。より具体的には下記方法が挙げられる。
上記(A)及び(B)成分を混合して、懸濁水溶液を得て、この懸濁液を高圧乳化機に投入して、高圧乳化させる。混合方法は、一般的な混合方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。
高圧乳化前の懸濁水溶液はすみやかに高圧乳化機へ投入する。高圧乳化機の噴射圧は組成物の透過率を高める点から、100~250MPaが好ましく、150~250MPaがより好ましく、200~250MPaがさらに好ましい。これ以上の圧力をかけることで、流動パラフィンがより均一となる。背圧は組成物の透過率を高める点より、1~10MPaが好ましく、3~10MPaがより好ましい。パス回数は組成物の透過率を高める点より、3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。高圧乳化直後の組成物の温度は。処理効率を高める点から30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。高圧乳化時間は、高圧乳化機への懸濁投入開始から終了まで10~30分が好ましく、10~15分がより好ましい。この時間以上とすることで、投入した懸濁水溶液をより均一に乳化できる。なお、乳化終了後は常温のままでよい。
[眼科用組成物]
組成物中に含有されるエマルション粒子((A)成分と(B)成分の会合体)の粒子径は、1,000nm以下とすることができ、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、1nmとすることもできる。なお、本発明において粒子径とは散乱光強度から算出した体積基準粒度分布の平均径(メディアン径)を指す。粒子径は光散乱等の原理を応用した各種測定装置により、恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと行う。このような装置としては例えば、粒子径測定装置(ELSZ-200ZS、大塚電子(株)製)で動的散乱法にて測定することができる。
本発明の組成物の透過率は、具体的には、分光光度計(例えば、UV-1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率が、80~100%が好ましく、90~100%が好ましく、95~100%がより好ましい。
本発明の組成物は眼への適応を容易にする点から液体が好ましく、25℃における粘度は、涙液との混合を容易にし、涙液油層安定化効果をより得る点から、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
本発明の眼科用組成物は、特に、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤、洗眼剤等として好適に使用できるが、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤(コンタクトレンズ装着者用点眼剤)として好適に使用できる。コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ等が挙げられ、特に限定されない。
点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、目からあふれ出すことにより涙液油層安定化効果が減ずるおそれがあるため、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回がより好ましい。1回につき10~30μLを1~3滴、1日につき1~6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3~6mL、1日につき3~6回洗眼することが好ましい。
得られた組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよく、組成物を樹脂製容器に充填後、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
[外観安定化方法]
本発明は、(A)流動パラフィン及び(B)非イオン性界面活性剤を含有する眼科用組成物に、(C)セルロース系高分子化合物及びビニル系高分子化合物から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の外観安定化方法を提供する。
また、本発明は、(A)流動パラフィン及び(B)非イオン性界面活性剤を含有する眼科用組成物に、(C)セルロース系高分子化合物及びビニル系高分子化合物から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の乳化安定化方法を提供する。
これらの方法において、好適な成分、量は上記と同じである。なお、この外観安定化方法とは、眼科用組成物に振動を与えた場合、外観が悪化(透過率が低下)することを抑制することをいう。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は「w/v%(g/100mL)」、比率は質量比を示す。
[実施例、比較例]
(C)成分を含む各水溶性成分を90mLの水に加え、90℃・15分間加温混合して、水溶性成分の水溶液を得た。別に(A)流動パラフィンと(B)非イオン界面活性剤を90℃・15分間加熱混合し、予備混合物を作製した。次に、その予備混合物を水溶性成分の水溶液に所定量加え、さらに90℃・15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、100mLになるように水を加えた。上記を実施例ごとに作製し、さらに、高圧乳化機(スターバーストミニ、(株)スギノマシン)を用い、噴射圧200Pa、背圧3Mpa、処理回数5回にて処理を行なった。得られた組成物の組成を表中に示す。上記例で得られた組成物について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。なお、組成物のpHは6.9~7.9の範囲であった。
(1)白濁抑制(振とう試験)評価
眼科用組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)製の目薬容器に充填し(15mL容器に4mL充填)、40℃で6時間振とうした。分光光度計UV1800((株)島津製作所)により、波長600nmにおける透過率(%)を25℃で測定した。コントロール(製造直後の同組成製剤)の透過率(%)を同様の手法により測定し、下記式により白濁抑制率を比較した。
白濁抑制率=振とう試験後の透過率(%)/製造直後の透過率(%)
得られた白濁抑制率に基づき下記評価基準に基づき、白濁抑制効果(外観安定化)を評価した。
<評価基準>
◎:0.90以上
○:0.80~0.90未満
△:0.70~0.80未満
×:0.70未満
Figure 0007467911000001
Figure 0007467911000002
Figure 0007467911000003
Figure 0007467911000004
Figure 0007467911000005
Figure 0007467911000006
Figure 0007467911000007
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
流動パラフィン:第十七改正日本薬局方(37.8℃)粘度76.6mm2/s(KAYDOL、島貿易社製)
ポリオキシエチレンヒマシ油:ポリオキシエチレンヒマシ油35(ユニオックスC35、日油社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO60、日本サーファクタント工業社製)
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:ポリソルベート80(レオドールTW-O120V、花王社製)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(METLOSE、日本薬局方ヒプロメロース、信越化学工業社製)
品種・粘度グレード:90SH4000、90SH100、65SH4000、65SH50、60SH4000、60SH50
ヒドロキシエチルセルロース(HEC、住友精化社製)
品種・グレード:CF-V(2%水溶液:5,000-10,000mPa・s)、CF-X(1%水溶液:1,250~1,750mPa・s)、CF-Y(1%水溶液:2,000~3,000mPa・s)
メチルセルロース(METLOSE、日本薬局方メチルセルロース、信越化学工業社製)
品種・粘度グレード:SM4000、SM25、SM4
ポリビニルピロリドン(Kollidon 90F、BASFジャパン社製)

Claims (6)

  1. (A)流動パラフィンと、
    (B)ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上と、
    (C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上と、
    を含み、
    (C)成分の配合量が、0.0001~0.5w/v%であり、
    (B)/(A)で表される配合質量比が3~20であり、
    透過率が70%以上である、眼科用組成物。
  2. (A)成分の配合量が、0.001~1w/v%である請求項1記載の眼科用組成物。
  3. (C)/(B)で表される配合質量比が0.0004~2である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
  4. さらに、緩衝剤、等張化剤及び安定化剤から選ばれる1種以上の成分を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の眼科用組成物。
  5. 上記(A)成分及び上記(B)成分を混合した予備混合物を、上記(C)成分を含む水溶性成分の水溶液に加え、得られた混合物を高圧乳化する工程を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の眼科用組成物の製造方法。
  6. (A)流動パラフィン及び(B)ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上を含眼科用組成物に、
    ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上を、
    (C)成分の配合量が、0.0001~0.5w/v%
    となる量を配合し、かつ
    上記(B)/(A)で表される配合質量比を3~20
    にする、透過率が70%以上である上記眼科用組成物の外観安定化方法。
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