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JP6904289B2 - 水性眼科用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ワックスエステル又はステロールエステルを含有する水性眼科用組成物に関するものである。
涙液油層は、涙の水分の蒸発を防ぎ、異物を除去するため眼の機能維持にはなくてはならないものであり、その役割を十分に果たすためには眼表面で安定であることが必要である。この涙液油層はマイボーム腺から分泌される脂質(マイバム)から構成されており、主な成分はワックスエステル、ステロールエステル、リン脂質等である。一方、これら成分は加齢やホルモン変化によって飽和脂質の割合が増加し、涙液油層の安定化に影響して、涙液水層の蒸発が亢進されドライアイ症状が誘発される原因ともなる。さらに眼疲労とも深い関係があると言われている。特に、マイボーム腺機能不全では、脂質の飽和化が過度に進行し、上記症状が悪化することが知られている。
ワックスエステルやステロールエステルを含有するものとしてラノリンが知られている。ラノリンは、従来から眼軟膏の基剤として使用されているが、眼軟膏は水性点眼剤に比べ、べたつく等の使用感が悪いという課題があった。また、ラノリンを水溶性点眼剤に配合した技術も提案されているが(特許文献1:特開2016−216509号公報)、これらは涙液油層にワックスエステルやステロールエステルを十分供給することはできなかった。一方、供給量を高めるために、配合量を多くすると、懸濁して使用後にぼやけが生じたりする等の問題があり、また、懸濁した製剤では、製造の際には異物混入の有無の判断が困難となる等の問題があった。
特開2016−216509号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ワックスエステル及びステロールエステルから選ばれる1種以上(以下、(A)成分と記載する場合がある。)を含有する水性眼科用組成物において、組成物の透過率が高く、かつ点眼した後に涙液に希釈されることで、(A)成分が組成物から放出され、涙液油層に十分供給できる水性眼科用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)成分を特定のエチレンオキサイド鎖平均付加モル数を有するポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、特定の比率で配合することによって、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記水性眼科用組成物を提供する。
[1].(A)ワックスエステル及びステロールエステルから選ばれる1種以上、及び(B)エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が30〜40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する水性眼科用組成物。
[2].(A)成分と(B)成分の配合質量比が、(B)成分の平均付加モル数をNとしたとき、(7.5−0.15×N)≦(B)/(A)≦(17.5−0.25×N)を満たす[1]記載の水性眼科用組成物。
[3].(B)成分が、エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、(A)成分と(B)成分の配合質量比が、3≦(B)/(A)≦10である[2]記載の水性眼科用組成物。
[4].(B)成分が、エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、(A)成分と(B)成分の配合質量比が、1.5≦(B)/(A)≦7.5である[2]記載の水性眼科用組成物。
[5].(A)成分がラノリンである[1]〜[4]のいずれかに記載の水性眼科用組成物。
[6].さらに、(C)ビタミンA及びビタミンEから選ばれる1種以上を含有する[1]〜[5]のいずれかに記載の水性眼科用組成物。
本発明によれば、組成物の透過率が高く、かつ点眼した後に涙液に希釈されることで、(A)成分が組成物から放出され、涙液油層に十分供給できる、(A)成分を含有する水性眼科用組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。以下、水性眼科用組成物を単に組成物と記載する場合がある。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はワックスエステル及びステロールエステルから選ばれる1種以上の成分であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ワックスエステルとは、高級脂肪酸と高級アルコールがエステル結合して生成した長鎖化合物をいう。高級脂肪酸とは、長鎖脂肪酸ともいい、一般式RCOOHで表される化合物のうち、Rが炭素鎖長12以上、好適には12〜35の一価炭化水素基である化合物が挙げられる。高級アルコールとは、一般式R’OHで表されるアルコールのうち、R’が炭素鎖長6以上、好適には6〜35の一価炭化水素基である化合物であるものが挙げられる。R,R’炭素鎖は直鎖であっても分岐していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
ステロールエステルとは、高級脂肪酸とコレステロール又はトリテルペンアルコールとがエステル結合して生成した化合物をいう。高級脂肪酸は上記と同じであり、コレステロールとは、動物生体内で最も代表的なステロールであり、ステロイド骨格をもつ化合物である。トリテルペンアルコールは、トリメチルステロールともいい、ラノステロール及びその類縁化合物をいう。
(A)成分としては、ワックスエステル、コレステロールエステル、ラノリンが好ましく、中でもラノリンが好ましい。ラノリンは、動物の毛、特に羊の毛に付着する分泌物由来のものであり、涙液油層の組成に近い脂質である。ラノリンは、コレステロール、トリテルペンアルコール、高級脂肪酸、高級アルコール及びそのエステル、すなわちワックスエステル及びステロールエステルで構成される。
ラノリンとしては、液状ラノリン、吸着精製ラノリン、還元ラノリン、酢酸ラノリン(アセチル化ラノリン)、水素添加ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸コレステリル、酢酸液状ラノリン、ヒドロキシラノリン、ポリオキシエチレンラノリン、ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン、ラノリンアルコール、酢酸ラノリンアルコール等のラノリン類が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、精製ラノリンが好ましく、日本薬局方の精製ラノリンがより好ましい。
(A)成分の配合量は、組成物の透過率と、希釈による組成物からの(A)成分放出性(以下、単に(A)成分放出性と記載する場合がある)の観点から、組成物中0.001〜1W/V%(質量/体積%、g/100mL)が好ましく、0.01〜0.5W/V%がより好ましく、0.01〜0.2W/V%がさらに好ましい。
[(B)成分]
エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が30〜40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
この特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることで、組成物の透過率及び(A)成分放出性が向上する。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。本発明においては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数が30〜40のものであり、具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(数値は酸化エチレンの平均付加モル数、以下同様)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40が挙げられる。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、(A)成分放出性の点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40が好ましい。
(B)の配合量は、組成物の透過率、(A)成分放出性の観点から、組成物中0.01〜5W/V%が好ましく、0.02〜2W/V%がより好ましく、0.05〜1W/V%がさらに好ましい。
(A)成分と(B)成分の配合質量比は、組成物の透過率及び(A)成分放出性の両立の観点から、(B)成分の平均付加モル数をNとしたとき、(7.5−0.15×N)≦(B)/(A)≦(17.5−0.25×N)を満たすことが好ましい。配合質量比を決定する上記式は、(A)成分に対する(B)成分の質量比を規定したもので、(B)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド鎖の平均付加モル数によって、組成物の透過率及び(A)成分放出性をより両立できる(B)/(A)の配合質量比を調整したものである。例えば、N=30の場合は3≦(B)/(A)≦10であり、N=40の場合は1.5≦(B)/(A)≦7.5となる。各係数の意味は、Y軸を(B)/(A),X軸をNとしたときに、(30,3)及び(40,1.5)を通るような直線「Y=−0.15X+7.5」、(30,10)及び(40,7.5)を通るような直線「Y=−0.25X+17.5」の2直線の係数である。なお、比率はW/V%比であるが質量比と同じ値となる。
組成物の透過率の観点から、N=30の場合、4≦(B)/(A)がより好ましく、5≦(B)/(A)がさらに好ましい。N=40の場合、2≦(B)/(A)がより好ましい。
(A)成分放出性の観点から、N=30の場合、(B)/(A)≦8がより好ましく、(B)/(A)≦5がさらに好ましい。N=40の場合、(B)/(A)≦6がより好ましい。
従って、組成物の透過率及び(A)成分放出性の両立の観点から、
N=30の場合、5≦(B)/(A)≦7がより好ましく、4≦(B)/(A)≦6がさらに好ましい。
N=40の場合、2≦(B)/(A)≦6がより好ましい。
[(C)成分]
本発明の組成物には、(C)ビタミンA及びビタミンEから選ばれる1種以上をさらに配合してもよい。(C)成分の配合により、組成物の透過率がより向上する。
ビタミンAとしては、例えば、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステルが好ましい。
ビタミンEとしては、例えば、トコフェロール、トコトリエノール、これらの塩、誘導体(エステル)を総称する意味で使用される。具体的には、例えば、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等があり、これらの誘導体としては、例えば、ビタミンE酢酸エステル(酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステル等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、酢酸トコフェロール(酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール等)が好ましい。(C)成分としては、ビタミンEが好ましい。
(C)の配合量は、組成物中0.0001〜1W/V%が好ましく、0.001〜0.5W/V%がより好ましく、0.01〜0.1W/V%がさらに好ましい。
[その他の成分]
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、(A)成分以外の油成分、(B)成分以外の界面活性剤、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、多価アルコール、粘稠剤、薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲である。
(A)成分以外の油成分として、例えば、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、白色ワセリン、ミックストコフェロール、流動パラフィン等が挙げられる。油成分を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜1.0W/V%が好ましく、0.001〜0.5W/V%がより好ましく、0.001〜0.25W/V%が最も好ましい。
(B)成分以外の界面活性剤としては、例えば、下記非イオン界面活性剤が挙げられる。
(B)成分以外のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100等が挙げられる。
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3〜60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(数値は酸化エチレンの平均付加モル数、以下同様)、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油20、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60等が挙げられる。
ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)(()内数値は酸化エチレンの平均付加モル数、以下同様)に代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(POEPOPグリコール)に代表されるポロクサマー、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10)に代表されるモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。ただし、界面から脱着しにくいレシチンや水添レシチン、ホスファチジルコリンやホスファチジルグリセロール等のリン脂質類は、(A)成分放出性に影響を与えるため、涙液希釈によって(A)成分が分離せず、涙液油層へ移行されにくくなるため、実質的に含まれないことが好ましい。
(B)成分以外の界面活性剤を配合する場合、その配合量は(A)成分放出性に影響を与えるため、組成物中に1.0W/V%以下が好ましく、0.1W/V%以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
防腐剤の中でもアルキル鎖やベンゼン環等の疎水部を有する防腐剤として、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。防腐剤を配合する場合、その配合量は0.0001〜0.5W/V%が好ましい。ただし、(A)成分放出性に影響を与えるため、配合する場合は、組成物中に0.1W/V%以下が好ましく、0.01W/V%以下がさらに好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.001〜0.1W/V%がさらに好ましい。
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、氷酢酸、トロメタモール、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001〜5.0W/V%が好ましく、0.001〜2W/V%がより好ましく、0.001〜1W/V%がさらに好ましい。
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは3.5〜8.0が好ましく、5.5〜8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM−25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60〜2.00が好ましく、0.60〜1.55がより好ましく、0.83〜1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。安定化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.001〜0.1W/V%がさらに好ましい。ジブチルヒドロキシトルエンは涙液希釈による(A)成分と界面活性剤との分離を阻害し、(A)成分が涙液油層へ供給されにくくなるため、実質的に含まないことがより好ましい。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。清涼化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.0001〜0.2W/V%が好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.001〜0.1W/V%がさらに好ましい。
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.001〜0.1W/V%がさらに好ましい。
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001〜5W/V%が好ましく、0.001〜1W/V%がより好ましく、0.001〜0.1W/V%がさらに好ましい。
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(A)成分等の油性成分と(B)成分等の界面活性剤成分との混合溶液を、水性成分を含む水溶液と混合して乳化し、pH調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40〜95℃の範囲から適宜選定される。
また、得られた組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよく、組成物を樹脂製容器に充填後、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
[眼科用組成物]
本発明の組成物は、「水性眼科用組成物」である。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。なお、水の配合量は、涙液との混合を容易にし(A)成分の涙液への移行を容易にする点から、組成物中90.0〜99.5W/V%が好ましく、95.0〜98.0W/V%がより好ましい。
本発明の組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、25℃における粘度は、涙液との混合を容易にし、(A)成分放出性を向上させる点から20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましく、2mPa・s以下が特に好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
本発明の組成物は異物混入時の発見を容易にする点から、より澄明であることが好ましい。組成物の透過率、具体的には分光光度計(UV−1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率が60%以上であり、70〜100%が好ましく、75〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。なお、測定温度は室温である。
本発明の組成物中に含有されるエマルション粒子((A)成分と(B)成分の会合体)の粒子径は、800nm以下とすることもできるが、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、1nmとすることもできる。なお、本発明において粒子径とは散乱光強度から算出した、体積基準粒度分布の平均径(メディアン径nm)を指す。粒子径は光散乱等の原理を応用した各種測定装置により、恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと行う。このような装置としては例えば、粒子径測定装置(ELSZ−200ZS、大塚電子(株)製)にて測定することができる。
本発明の組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤、洗眼剤等として好適に使用できるが、涙液希釈倍率が高く、(A)成分からの界面活性剤の離脱がより促進され、(A)成分の組成物からの放出性が向上し、(A)成分の涙液油層への供給が効率的に行われる点から、特に点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤(コンタクトレンズ装着者用点眼剤)等の点眼剤として好適に使用できる。コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等特に限定されない。
点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10〜100μLを1〜3滴1日につき1〜6回点眼することが好ましく、目からあふれ出すことにより(A)成分の放出性が減ずるおそれがあるため、1回につき10〜50μLを1〜3滴1日につき1〜6回がより好ましく、1回につき10〜30μLを1〜3滴1日につき1〜6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3〜6mL、1日につき3〜6回洗眼することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、g/100mLはW/V%であり、比率は質量比(W/V%比と同じ値)を示す。
[実施例、比較例]
下記表の各水溶性成分を90mLの精製水に溶解し、90℃・15分間加温混合した。別途、(A)成分と(B)成分、また必要に応じて(C)成分との予備混合物を作製し、90℃・15分間加熱混合した。次に、予備混合物を水溶液に所定量加え、さらに90℃・15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、水酸化ナトリウムを用いてpH調整を行い、100mLになるように精製水を加えた。なお、各実施例の粘度は0.5〜2.0mPa・sの範囲であった。得られた組成物について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
[組成物の透過率(%)測定]
製造直後の組成物を、紫外可視近赤外分光光度計UV−1800(株式会社島津製作所)を用いて、プラスチック製のセルを用いて、波長600nmの透過率(%)を測定した。結果を下記評価基準で示す。●、○及び◎を合格とする。
◎:90%以上
○:70%以上90%未満
●:60%以上70%未満
×:60%未満
[希釈による(A)成分放出性]
ヒトの涙液は平均7μLと言われており点眼剤30〜60μLを点眼した場合、約1.12〜1.23倍希釈されることになる。本試験では組成物の涙液希釈によって可溶化していた(A)成分が、気液界面に浮遊してくること(放出性)を評価するため、モデル涙液として生理食塩水を使用し、希釈倍率約1.2倍で組成物を希釈した時の水面上への(A)成分遊離を観察した。観察を容易にするため開口部の狭いメスフラスコを使用した。具体的には、50mLメスフラスコに生理食塩水10mLを加え、さらに点眼剤を開口部まで注いだ。なお、開口部まで注いだときの希釈率が1.2倍となるメスフラスコを使用し、開口部の面積は152mm2であった。水面上の(A)成分の観察は、蛍光灯を光源として光を液面にあて、液面に浮かんでいる油の干渉光を観察し、水面に占める油の干渉光の面積の割合を算出し、以下の基準で評価した。なお、いずれの実施例と比較例において非希釈の場合は油の干渉光は観察されなかった。●、○及び◎を合格とする。
[評価基準]
◎:油の干渉光が観察され、メスフラスコ開口部の全面を占めている
○:油の干渉光が観察され、メスフラスコ開口部の全面を覆ってはいないが、5割以上である
●:油の干渉光が観察され、メスフラスコ開口部を占める割合が5割未満である
×:油の干渉光は観察されない
Figure 0006904289
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上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
精製ラノリン(日本薬局方 精製ラノリン、健栄製薬(株)製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日本サーファクタント工業(株)製)
・NIKKOL HCO−20(医薬用)
・NIKKOL HCO−30(医薬用)
・NIKKOL HCO−40(医薬用)
・NIKKOL HCO−50(医薬用)
・NIKKOL HCO−60(医薬用)
ポリオキシエチレンヒマシ油35:酸化エチレンの平均付加モル数35(ユニオックスC35、日油(株)製)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール:酸化エチレンの平均付加モル数10(MYS10V、日本サーファクタント工業(株)製)
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル:ポリソルベート80(ポリソルベート80、花王(株)製)
ホウ酸(関東化学(株)製)
トロメタモール(関東化学(株)製)
エデト酸ナトリウム2水和物:クレワットN、ナガセケムテックス(株)製)
塩化ナトリウム(富田製薬(株)製)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)
レチノールパルミチン酸エステル(レチノールパルミチン酸エステル、174単位/g、DSM(株)製)
d−α−酢酸トコフェロール(理研Eアセテートα、理研ビタミン(株)製)

Claims (6)

  1. (A)ワックスエステル及びステロールエステルから選ばれる1種以上、及び(B)エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が30〜40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する水性眼科用組成物。
  2. (A)成分と(B)成分の配合質量比が、(B)成分の平均付加モル数をNとしたとき、(7.5−0.15×N)≦(B)/(A)≦(17.5−0.25×N)を満たす請求項1記載の水性眼科用組成物。
  3. (B)成分が、エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、(A)成分と(B)成分の配合質量比が、3≦(B)/(A)≦10である請求項2記載の水性眼科用組成物。
  4. (B)成分が、エチレンオキサイド鎖の平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、(A)成分と(B)成分の配合質量比が、1.5≦(B)/(A)≦7.5である請求項2記載の水性眼科用組成物。
  5. (A)成分がラノリンである請求項1〜4のいずれか1項記載の水性眼科用組成物。
  6. さらに、(C)ビタミンA及びビタミンEから選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の水性眼科用組成物。
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