JP7369553B2 - 飲料、及び、飲料の香味向上方法 - Google Patents

Description

本発明は、飲料、及び、飲料の香味向上方法に関する。

いわゆる基本味と呼ばれる５つの要素の中でも、酸味は消費者に清涼感や爽快感などの好ましい感覚を与えることができるため、飲料に関しても酸味に焦点をあてた研究開発が数多く実施されてきた。

例えば、特許文献１では、スクラロース及び/又はステビア抽出物、並びにフルーツフレーバーを添加することを特徴とする、酸味成分を含有する飲料の酸味の増強方法が提案されている。

特開２０１３－２７３６３号公報

特許文献１では、酸味の増強という観点に基づいて発明が提案されているが、飲料の酸味については、様々な観点から研究開発が進められている。

本発明者は、酸味を呈する飲料の中でも、梅特有の甘酸っぱい香味を呈する梅風味の飲料（梅干風味の飲料も含む）に焦点をあてて、香味特性について詳細に検討した。
その結果、飲料を飲んだ後に強い雑味（後味の雑味）を感じることを確認した。

飲料の香味において、後味は、消費者の飲料に対する印象に大きな影響を与えることから、本発明者は、この後味の雑味を低減することができれば、飲料の香味を向上させ、商品価値を高めることができるのではないかと考えた。

そこで、本発明は、後味の雑味が低減した飲料、及び、飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。

まず、本発明者は、飲料の成分分析及び香味の検討を実施した結果、梅風味を呈する飲料の後味の雑味を誘因する主成分が、ペリルアルデヒドであると判断した。
さらに、本発明者は、このペリルアルデヒドが由来となる後味の雑味を低減する成分として、極めて多種の成分の中から、メチルヘプテノンとノナナールとに着目し、本発明を創出した。

前記課題は、以下の手段により解決することができる。
（１）ペリルアルデヒドとアルコールを含有する飲料（グレープフルーツ果汁を含むカクテルを除く）であって、前記ペリルアルデヒドの含有量が０．５０ｍｇ／Ｌ以上であり、メチルヘプテノンの含有量が０．００１～３．００ｍｇ／Ｌ、及び、ノナナールの含有量が０．００１～０．０８０ｍｇ／Ｌのうちの少なくとも一方を満たす飲料。
（２）梅風味である前記１に記載の飲料。
（３）柑橘風味である前記１又は前記２に記載の飲料。
（４）ペリルアルデヒドとアルコールを含有する飲料（グレープフルーツ果汁を含むカクテルを除く）の後味の雑味を低減する香味向上方法であって、前記飲料の前記ペリルアルデヒドの含有量を０．５０ｍｇ／Ｌ以上とし、前記飲料について、メチルヘプテノンの含有量が０．００１～３．００ｍｇ／Ｌ、及び、ノナナールの含有量が０．００１～０．０８０ｍｇ／Ｌのうちの少なくとも一方を満たすように調製する香味向上方法。

本発明に係る飲料は、後味の雑味が低減している。
本発明に係る飲料の香味向上方法は、飲料の後味の雑味を低減させることができる。

以下、本発明に係る飲料、及び、飲料の香味向上方法を実施するための形態（本実施形態）について説明する。

［本実施形態に係る飲料］
本実施形態に係る飲料は、ペリルアルデヒドを含有し、メチルヘプテノン、及び、ノナナールのうちの少なくとも一方を含有する飲料である。
なお、本実施形態に係る飲料は、特定の風味の飲料に限定されないものの、ペリルアルデヒドのシソ様の香味の特徴を生かすことのできる飲料、例えば、梅の風味や梅干の風味を呈する梅風味飲料（梅干風味飲料も含む）に適用するのが好ましい。そして、梅風味飲料とは、梅風味や梅干風味を呈するように設計された飲料であって、例えば、梅果汁、梅フレーバー、梅干フレーバー、梅エキス、梅干エキスのうちの少なくとも一つを含有する飲料である。

（ペリルアルデヒド）
ペリルアルデヒド（perillaldehyde）とは、化学式Ｃ_１０Ｈ_１４Ｏで示されるモノテルペンアルデヒドの一つである。
そして、ペリルアルデヒドは、梅干感やシソ感を飲料に付与することによって飲料を梅風味（梅干風味）にできるものの、後味の雑味を生じさせてしまう。

ペリルアルデヒドは、飲料に僅かでも含まれていると解決すべき課題（後味の雑味）が現れるため、ペリルアルデヒドの含有量は特に限定されないものの、０．４０ｍｇ／Ｌ以上が好ましく、０．５０ｍｇ／Ｌ以上、０．８０ｍｇ／Ｌ以上、１．００ｍｇ／Ｌ以上、３．００ｍｇ／Ｌ以上、４．００ｍｇ／Ｌ以上、５．００ｍｇ／Ｌ以上、７．００ｍｇ／Ｌ以上、８．００ｍｇ／Ｌ以上、１０．００ｍｇ／Ｌ以上がより好ましい。ペリルアルデヒドの含有量が所定値以上であることによって、解決すべき課題（後味の雑味）がより明確に現れることとなる。
ペリルアルデヒドの含有量は、２００．００ｍｇ／Ｌ以下が好ましく、１５０．００ｍｇ／Ｌ以下、１２０．００ｍｇ／Ｌ以下、１００．００ｍｇ／Ｌ以下、８０．００ｍｇ／Ｌ以下、５０．００ｍｇ／Ｌ以下がより好ましい。ペリルアルデヒドの含有量が所定値以下であることによって、後記するメチルヘプテノンやノナナールによる後味の雑味の低減効果をしっかりと発揮させることができる。

（メチルヘプテノン）
メチルヘプテノン（methyl heptenone）とは、化学式Ｃ_８Ｈ_１４Ｏで示される脂肪族ケトンの一つである。
そして、メチルヘプテノンは、ペリルアルデヒドに基づく飲料の後味の雑味を低減させることができる。また、メチルヘプテノンは、ペリルアルデヒドを含有する飲料の飲みやすさ（ドリンカビリティ）を増強させることができる。

メチルヘプテノンの含有量は、０．００１ｍｇ／Ｌ以上が好ましく、０．００５ｍｇ／Ｌ以上、０．００８ｍｇ／Ｌ以上、０．０１０ｍｇ／Ｌ以上、０．０２０ｍｇ／Ｌ以上、０．０８０ｍｇ／Ｌ以上、０．１００ｍｇ／Ｌ以上がより好ましい。メチルヘプテノンの含有量が所定値以上であることによって、本発明の所望の効果（後味の雑味の低減、飲みやすさの増強）を発揮させることができる。
メチルヘプテノンの含有量は、１０．００ｍｇ／Ｌ以下が好ましく、７．００ｍｇ／Ｌ以下、５．５０ｍｇ／Ｌ以下、４．００ｍｇ／Ｌ以下、３．００ｍｇ／Ｌ以下、２．００ｍｇ／Ｌ以下、１．５０ｍｇ／Ｌ以下、１．００ｍｇ／Ｌ以下がより好ましい。メチルヘプテノンの含有量が所定値以下であることによって、本発明の所望の効果（後味の雑味の低減、飲みやすさの増強）をしっかりと発揮させることができる。

（ノナナール）
ノナナール（nonanal）とは、化学式Ｃ_９Ｈ_１８Ｏで示されるアルデヒドの一つである。
そして、ノナナールは、メチルヘプテノンと同様、ペリルアルデヒドに基づく飲料の後味の雑味を低減させることができる。また、ノナナールは、ペリルアルデヒドを含有する飲料の飲みやすさ（ドリンカビリティ）を増強させることができる。

ノナナールの含有量は、０．００１ｍｇ／Ｌ以上が好ましく、０．００２ｍｇ／Ｌ以上、０．０１８ｍｇ／Ｌ以上、０．０２０ｍｇ／Ｌ以上、０．０３０ｍｇ／Ｌ以上、０．０４０ｍｇ／Ｌ以上がより好ましい。ノナナールの含有量が所定値以上であることによって、本発明の所望の効果（後味の雑味の低減、飲みやすさの増強）を発揮させることができる。
ノナナールの含有量は、１．５０ｍｇ／Ｌ以下が好ましく、１．３０ｍｇ／Ｌ以下、１．００ｍｇ／Ｌ以下、０．３００ｍｇ／Ｌ以下、０．２００ｍｇ／Ｌ以下、０．１５０ｍｇ／Ｌ以下、０．１００ｍｇ／Ｌ以下、０．０８０ｍｇ／Ｌ以下、０．０５０ｍｇ／Ｌ以下がより好ましい。ノナナールの含有量が所定値以下であることによって、本発明の所望の効果（後味の雑味の低減、飲みやすさの増強）をしっかりと発揮させることができる。

なお、飲料中のペリルアルデヒド、メチルヘプテノン、ノナナールの含有量は、溶媒抽出－ガスクロマトグラフ－質量分析法（溶媒抽出－ＧＣ－ＭＳ法）により測定する。

（メチルヘプテノンの含有量／ペリルアルデヒドの含有量）
メチルヘプテノンは、前記した含有量で含有させるのが好ましいが、ペリルアルデヒドの含有量を基準として次のような範囲としてもよい。
例えば、飲料のペリルアルデヒドの含有量をＸｍｇ／Ｌとし、飲料のメチルヘプテノンの含有量をＡｍｇ／Ｌとした場合、Ａ／Ｘは、０．０００１以上が好ましく、０．０００８以上、０．００１以上、０．００２以上、０．００４以上、０．０１以上がより好ましい。Ａ／Ｘが所定値以上であることによって、本発明の所望の効果をより確実に発揮させることができる。また、Ａ／Ｘは、０．８以下が好ましく、０．６以下、０．２以下、０．０６以下、０．０５以下、０．０２以下がより好ましい。Ａ／Ｘが所定値以下であることによって、本発明の所望の効果をよりしっかりと発揮させることができる。

（ノナナールの含有量／ペリルアルデヒドの含有量）
ノナナールは、前記した含有量で含有させるのが好ましいが、ペリルアルデヒドの含有量を基準として次のような範囲としてもよい。
例えば、飲料のペリルアルデヒドの含有量をＸｍｇ／Ｌとし、飲料のノナナールの含有量をＢｍｇ／Ｌとした場合、Ｂ／Ｘは、０．０００８以上が好ましく、０．００１以上、０．００３以上、０．００４以上がより好ましい。Ｂ／Ｘが所定値以上であることによって、本発明の所望の効果をより確実に発揮させることができる。Ｂ／Ｘは、０．１８以下が好ましく、０．０５以下、０．０１以下、０．００８以下、０．００５以下がより好ましい。Ｂ／Ｘが所定値以下であることによって、本発明の所望の効果をよりしっかりと発揮させることができる。

（アルコール）
本実施形態に係る飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの１種又は２種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを１種又は２種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。

アルコール度数は、本発明の課題（ペリルアルデヒドに基づく後味の雑味）にはほとんど影響を与えないと考えることから、特に限定されないものの、例えば、１．０％（ｖ／ｖ％）以上、３．０％以上、５％以上、７％以上、８％以上、８．５％以上、９％以上であり、２３％以下、２０％以下、１５％以下、１２％以下、１０％以下である。
なお、アルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）３清酒３－４アルコール分（振動式密度計法）に基づいて測定することができる。

（発泡性）
本実施形態に係るアルコール飲料は、非発泡性のものでも、発泡性のものでもよい。ここで、本実施形態における発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．５ｋｇ／ｃｍ^２以上であることをいい、非発泡性とは、２０℃におけるガス圧が０．５ｋｇ／ｃｍ^２未満であることをいう。

（その他）
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、塩類、食物繊維など（以下、適宜「添加剤」という）を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ＤＬ－酒石酸、Ｌ－酒石酸、ＤＬ－酒石酸ナトリウム、Ｌ－酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、ＤＬ－リンゴ酸、ＤＬ－リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。

また、本実施形態に係る飲料は、梅果汁、梅フレーバー、梅干フレーバー、梅エキス、梅干エキス以外にも、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で果汁、果実フレーバー、果実エキスを含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ（火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの）、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。また、果実エキスとは、果実（又は果汁）から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物である。
そして、果汁に使用する果実（および、果実フレーバーや果実エキスの果実種）は特に限定されず、従来公知の果実、例えば、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ等の柑橘類、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等を挙げることができる。

なお、本実施形態に係る飲料は、例えば、柑橘風味飲料（柑橘類の果実の風味を呈するように設計された飲料、例えば、柑橘類の果汁、柑橘フレーバー、柑橘類の果実エキスの少なくとも一つを含有する飲料であり、中でもレモン風味飲料、グレープフルーツ風味飲料、シークワーサー風味飲料が好ましく、特にレモン風味飲料が好ましい）としてもよく、更には、前記した梅風味と柑橘風味の両方を呈するように設計されていてもよい。
また、本実施形態に係る飲料は、前記した添加剤などを適宜含有させた様々な態様が挙げられる一方、例えば、レモンエキス、色素（具体的には、カラメル色素、果実色素）、ビタミンＣのうちの少なくとも一つを含有しない態様も挙げられる。

（容器詰め飲料）
本実施形態に係る飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製（アルミニウム製又はスチール製など）のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。

以上説明したように、本実施形態に係る飲料は、ペリルアルデヒドを含有する飲料であって、メチルヘプテノン、及び、ノナナールのうち少なくとも一方を含有することから、後味の雑味が低減しているとともに、飲みやすさが増強している。

［本実施形態に係る飲料の製造方法］
次に、本実施形態に係る飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。

混合工程では、混合タンクに、水、ペリルアルデヒド、メチルヘプテノン、ノナナール、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、各成分の含有量等が前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。

そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。

なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、ＲＴＤ飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。

以上説明したように、本実施形態に係る飲料の製造方法は、ペリルアルデヒドだけでなく、メチルヘプテノン、及び、ノナナールのうち少なくとも一方を含有させる工程を含むことから、後味の雑味が低減しているとともに、飲みやすさが増強した飲料を製造することができる。

［本実施形態に係る飲料の香味向上方法］
次に、本実施形態に係る飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の香味向上方法は、飲料の後味の雑味を低減させる香味向上方法であって、飲料にペリルアルデヒドだけでなく、メチルヘプテノン、及び、ノナナールのうち少なくとも一方を含有させる方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「本実施形態に係る飲料」において説明した値と同じである。

以上説明したように、本実施形態に係る飲料の香味向上方法は、飲料にペリルアルデヒドだけでなく、メチルヘプテノン、及び、ノナナールのうち少なくとも一方を含有させることから、飲料の後味の雑味を低減させるとともに、飲みやすさを増強させることもできる。

次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。

［サンプルの準備］
表１～６に示す値となるように、ペリルアルデヒド、メチルヘプテノン、ノナナール、ウォッカ、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、果実色素、カラメル色素、水、炭酸水を適宜配合してサンプルを準備した。
なお、各サンプルのウォッカ、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、果実色素、カラメル色素、の含有量は、各サンプル間において一定量に揃えた。
そして、各サンプルの２０℃におけるガス圧は約２．１ｋｇ／ｃｍ^２であり、アルコール度数は５ｖ／ｖ％であった。

［試験内容］
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル７名が下記評価基準に則って「後味の雑味」、「飲みやすさ」、「梅干感」、「シソ感」、「レモン感」、「梅干感とレモン感のバランス」、「総合評価」について、１点～５点の５段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、これらの評価は、サンプルを飲んで評価した。また、「後味の雑味」の評価について、表１のサンプル以外（表２～６のサンプル）は、相対評価で実施した。

（後味の雑味：評価基準）
後味の雑味の評価（表１のサンプル）については、「飲んだ後に感じる雑味が強い」場合を５点、「飲んだ後に感じる雑味が弱い」場合を１点として、５段階で評価した。そして、後味の雑味の評価は点数が低いほど好ましいと判断できる。
なお、「雑味」とは、飲料の香味の調和を損なわせる味であり、特に、ペリルアルデヒドに基づく舌の奥に残る苦味である。

（後味の雑味（相対評価）：評価基準）
後味の雑味の評価（表２～６のサンプル）については、サンプルＡ－５の３点を基準とし、「飲んだ後に感じる雑味がサンプルＡ－５と比較してとても強い」場合を５点、「飲んだ後に感じる雑味がサンプルＡ－５と比較して強い」場合を４点、「飲んだ後に感じる雑味がサンプルＡ－５と同等である」場合を３点、「飲んだ後に感じる雑味がサンプルＡ－５と比較して弱い」場合を２点、「飲んだ後に感じる雑味がサンプルＡ－５と比較してとても弱い」場合を１点として、５段階で評価した。そして、後味の雑味の評価（相対評価）は点数が低いほど好ましいと判断できる。

（飲みやすさ：評価基準）
飲みやすさの評価については、「飲みやすい」場合を５点、「飲み難い」場合を１点として、５段階で評価した。そして、飲みやすさの評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。
なお、「飲みやすい」とは、例えば、グラス一杯の飲料を飲んだ後に、もう一杯飲みたくなると感じる様子を示す。

（梅干感：評価基準）
梅干感の評価については、「梅干感が強い」場合を５点、「梅干感が弱い」場合を１点として、５段階で評価した。

（シソ感：評価基準）
シソ感の評価については、「シソ感が強い」場合を５点、「シソ感が弱い」場合を１点として、５段階で評価した。

（レモン感：評価基準）
レモン感の評価については、「レモン感が強い」場合を５点、「レモン感が弱い」場合を１点として、５段階で評価した。

（梅干感とレモン感のバランス：評価基準）
梅干感とレモン感のバランスの評価については、「梅干感とレモン感のバランスが良い」場合を５点、「梅干感とレモン感のバランスが悪い」場合を１点として、５段階で評価した。そして、梅干感とレモン感のバランスの評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。

（総合評価：評価基準）
総合評価については、「飲料の香味として好適である」場合を５点、「飲料の香味として不適である」場合を１点として、５段階で評価した。そして、総合評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。

以下の表に示す各成分の含有量や指標は、最終製品における含有量や指標である。
なお、表１のサンプルは、メチルヘプテノン及びノナナールを含有しておらず、表２、３のサンプルは、ノナナールを含有しておらず、表４、５のサンプルは、メチルヘプテノンを含有していない。

（結果の検討）
表１の結果は、ペリルアルデヒドの含有量を変化させたサンプルの結果である。
表１の結果から、飲料にペリルアルデヒドを含有させることによって、後味の雑味が発生することが確認できた。そして、サンプルＡ－３は、後味の雑味が２点以上、サンプルＡ－４は、後味の雑味が３点以上となり、課題がより明確化することも確認できた。

なお、表１の結果から、ペリルアルデヒドの含有量が増加する程、梅干感とシソ感とが強くなることも確認できた。

表２の結果は、ペリルアルデヒドの含有量を固定しつつ、メチルヘプテノンの含有量を変化させたサンプルの結果である。
表２の結果から、ペリルアルデヒドを含有する飲料にメチルヘプテノンを含有させることによって、後味の雑味が低減されることが確認できた。また、ペリルアルデヒドを含有する飲料にメチルヘプテノンを含有させることによって、飲みやすさも増強されることも確認できた。
そして、サンプルＢ－２～Ｂ－６（特に、サンプルＢ－３～Ｂ－５）について好ましい結果が得られた。

なお、表２の結果から、メチルヘプテノンの含有量が増加する程、梅干感とシソ感とが低減する一方、レモン感が増強することが確認できた。

表３の結果は、メチルヘプテノンの含有量を固定しつつ、ペリルアルデヒドの含有量を変化させたサンプルの結果である。
表３の結果から、メチルヘプテノンの含有量／ペリルアルデヒドの含有量（Ａ／Ｘ）が所定の範囲内となっていれば、後味の雑味の低減と飲みやすさの増強という効果が得られることが確認できた。
そして、サンプルＣ－２～Ｃ－６（特に、サンプルＣ－２～Ｃ－４）について好ましい結果が得られた。

なお、サンプルＣ－５、Ｃ－６の「後味の雑味」の点数は、サンプルＣ－１（Ａ－５）の３点よりも高くなった。しかしながら、サンプルＣ－５のペリルアルデヒドの含有量がサンプルＣ－１の５倍量であり、サンプルＣ－６のペリルアルデヒドの含有量がサンプルＣ－１の１０倍量であったことを考慮すると、後味の雑味の抑制効果は十分に発揮されていると考える。

表４の結果は、ペリルアルデヒドの含有量を固定しつつ、ノナナールの含有量を変化させたサンプルの結果である。
表４の結果から、ペリルアルデヒドを含有する飲料にノナナールを含有させることによって、後味の雑味が低減されることが確認できた。また、ペリルアルデヒドを含有する飲料にノナナールを含有させることによって、飲みやすさも増強されることも確認できた。
そして、サンプルＤ－２～Ｄ－４（特に、サンプルＤ－３～Ｄ－４）について好ましい結果が得られた。

なお、表４の結果から、ノナナールの含有量が増加する程、梅干感とシソ感とが低減することが確認できた。

表５の結果は、ノナナールの含有量を固定しつつ、ペリルアルデヒドの含有量を変化させたサンプルの結果である。
表５の結果から、ノナナールの含有量／ペリルアルデヒドの含有量（Ｂ／Ｘ）が所定の範囲内となっていれば、後味の雑味の低減と飲みやすさの増強という効果が得られることが確認できた。
そして、サンプルＥ－２～Ｅ－６（特に、サンプルＥ－２～Ｅ－４）について好ましい結果が得られた。

なお、サンプルＥ－５、Ｅ－６の「後味の雑味」の点数は、サンプルＥ－１（Ａ－５）の３点よりも高くなった。しかしながら、サンプルＥ－５のペリルアルデヒドの含有量がサンプルＥ－１の５倍量であり、サンプルＥ－６のペリルアルデヒドの含有量がサンプルＥ－１の１０倍量であったことを考慮すると、後味の雑味の抑制効果は十分に発揮されていると考える。

表６の結果は、メチルヘプテノンとノナナールの両方を含有させたサンプルの結果である。
表６の結果から、メチルヘプテノンとノナナールのいずれか一方だけでなく、両方を含有させた場合であっても、後味の雑味の低減と飲みやすさの増強という効果が得られることが確認できた。

Claims (4)

1. ペリルアルデヒドとアルコールを含有する飲料（グレープフルーツ果汁を含むカクテルを除く）であって、
   前記ペリルアルデヒドの含有量が０．５０ｍｇ／Ｌ以上であり、
   メチルヘプテノンの含有量が０．００１～３．００ｍｇ／Ｌ、及び、ノナナールの含有量が０．００１～０．０８０ｍｇ／Ｌのうちの少なくとも一方を満たす飲料。
2. 梅風味である請求項１に記載の飲料。
3. 柑橘風味である請求項１又は請求項２に記載の飲料。
4. ペリルアルデヒドとアルコールを含有する飲料（グレープフルーツ果汁を含むカクテルを除く）の後味の雑味を低減する香味向上方法であって、
   前記飲料の前記ペリルアルデヒドの含有量を０．５０ｍｇ／Ｌ以上とし、
   前記飲料について、メチルヘプテノンの含有量が０．００１～３．００ｍｇ／Ｌ、及び、ノナナールの含有量が０．００１～０．０８０ｍｇ／Ｌのうちの少なくとも一方を満たすように調製する香味向上方法。