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JP7345141B2 - 蛍光体およびそれを使用した発光装置 - Google Patents

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JP7345141B2 JP2020074306A JP2020074306A JP7345141B2 JP 7345141 B2 JP7345141 B2 JP 7345141B2 JP 2020074306 A JP2020074306 A JP 2020074306A JP 2020074306 A JP2020074306 A JP 2020074306A JP 7345141 B2 JP7345141 B2 JP 7345141B2
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Description

本発明は、青色系の励起光を吸収し、赤色の蛍光を発する蛍光体、およびこの蛍光体を用いた発光装置に関する。
発光ダイオード(以下、LED)等の半導体発光素子は、小型で消費電力が少なく、高輝度の発光を安定に行うことができるという利点を有しており、白熱灯等の照明器具に替わって、白色光を発するLEDからなる発光装置を用いた照明器具が多く使用されている。白色光を発するLEDとしては、例えば、青色LEDとYAl12:Ceの組成式で示されるCe賦活YAG系の黄色蛍光体とを組み合わせたものが知られている。
上記構成の発光装置では、青色LEDの素子にCe賦活YAG蛍光体を塗布することで、LEDの青色光とCe賦活YAG蛍光体とから発せられる黄色光との混色により白色光を実現している。しかしながら、この構成では、Ce賦活YAG蛍光体の発光特性に起因して青白く発色する。店頭のディスプレイ用照明や、医療現場用照明等においては、やや赤みを帯びた暖色系の白色が求められており、温かみのある白色光を発することには不向きである。このため、青色光を吸収し、赤色に蛍光する赤色蛍光体が求められている。これは、LEDのみならず、プロジェクター等に用いられるレーザーダイオード(LD)を用いた光源でも同様の要求がある。
一般的な赤色蛍光体として、例えば特許文献1に、青色LEDとCe賦活YAG系蛍光体とに加えて、CaSi:Euの組成式で示されるEu賦活窒化物蛍光体を更に組み合わせることにより、赤みを帯びた暖色系の白色を発することが実現可能な発光装置が開示されている。
特許文献1に示される蛍光体は、600nm以上のピーク波長を有するため、このような構成により、3,250K以下の電球色領域の色温度において高い演色性評価指数(Ra)を示し、特に赤色の見え方を示す特殊演色評価数(R9)が優れた値を示す白色光を発する発光装置が可能となる。
特開2003-321675号公報
しかしながら特許文献1の蛍光体には、以下の課題がある。例えば、励起光源として青色LD等の高出力励起光源を適用し、高輝度、高演色光源を実現しようとする場合、上記特許文献1に記載の蛍光体では発光中心として発光寿命の短いEuを賦活しているため、高出力光源下では輝度飽和により発光輝度を大きくすることができず、高出力化が困難である。輝度飽和とは、光源の出力に対して蛍光体からの発光輝度が比例しない現象であり、発光する元素の発光寿命が長いほど輝度飽和が起こりやすいことが知られている。前述のCe賦活YAG系蛍光体であれば、EuよりCeの発光寿命が長いため、輝度飽和が起こりにくい。また、特許文献1のEuが賦活される母相は窒化物蛍光体であり、その製造プロセス、特に合成反応を行う焼成工程の管理が複雑でありコストが高くなりやすい。例えば、原料にSiを用いた場合、高温で熱分解するため、焼成時には高圧環境を伴う炉が必要となる。また焼成中はアンモニア等の雰囲気下で行う場合もあり、危険を伴うプロセスとなる場合がある。一方、酸化物蛍光体であれば高圧環境などは不要で、使用する材料に依存するが大気中での合成も可能である。しかしながら通常のCe賦活YAG蛍光体では発光ピーク波長が約550nm付近に存在するためそのままでは使用できない。
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、高出力光源下での輝度飽和による発光輝度の低下が少なく、高演色性を示すことができると共に、発光ピーク波長600nm以上700nm以下を示す、Ceを賦活した酸化物蛍光体を提供することを目的とする。
本開示に係る蛍光体は、
下記組成式(1)
3-x-zCeAl5-yLi12・・・(1)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
Aは、Yb、Eu、Laのいずれか一つであり、
式(1)中のx、yおよびzはそれぞれAの組成比率、Liの組成比率、Ceの組成比率であり、
xおよびyは、x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、
zは、0<z≦0.15の範囲であることを特徴とする。
また、本発明に係る発光装置は、
上記蛍光体と、400nm以上500nm以下に発光ピーク波長を有する光源と、
を備えていることを特徴とする。
本発明に係る蛍光体によれば、その発光ピーク波長は600nm以上700nm以下であるため、可視光領域内の長波長領域において高い演色性を示す。また、Ceを用いているため、高出力光源を照射下での輝度飽和による発光輝度の低下が少ない。従って、例えば450nmを発光ピーク波長とする青色発光の光源との組み合わせにおいて、高輝度および高演色な発光装置を得ることができる。また、Ceを賦活する母相に酸化物を使用しているため、複雑なプロセスを採ることなく製造コストを低減した蛍光体を提供することができる。
実施の形態1に係る蛍光体母結晶の結晶構造の模式図である。 実施の形態1における発光ピーク波長600nm以上となる組成範囲を表す図である。 実施の形態1に係るLED発光装置の模式図である。 実施の形態1に係るLD発光装置の模式図である。 実施の形態2における発光ピーク波長600nm以上となる組成範囲を表す図である。 実施の形態3における発光ピーク波長600nm以上となる組成範囲を表す図である。 実施例1-1~実施例1-11及び比較例1-1~比較例1-4の組成式(2)におけるx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を示す表1である。 実施例2-1~実施例2-11および比較例2-1~比較例2-4の組成式(3)のx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を示す表2である。 実施例3-1~実施例3-12および比較例3-1~比較例3-3の組成式(4)のx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を示す表3である。
第1の態様に係る蛍光体は、下記組成式(1)
3-x-zCeAl5-yLi12・・・(1)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
Aは、Yb、Eu、Laのいずれか一つであり、
式(1)中のx、yおよびzはそれぞれAの組成比率、Znの組成比率、Ceの組成比率であり、
x、y、およびzは、x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8かつ、
0<z≦0.15の範囲である。
第2の態様に係る蛍光体は、上記第1の態様において、前記AはYbであり、
前記xおよびyは、1.2≦x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8であってもよい。
第3の態様に係る蛍光体は、上記第1の態様において、前記AはEuであり、
前記xおよびyは、1.2≦x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8であってもよい。
第4の態様に係る蛍光体は、上記第1の態様において、前記AはLaであり、
前記xおよびyは、x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8であってもよい。
第5の態様に係る発光装置は、上記第1から第4のいずれかの態様に係る前記蛍光体と、
400nm以上500nm以下に発光ピーク波長を有する光源と、
を備えている。
以下、本開示の各実施の形態に係る蛍光体及び発光装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
まず始めに各実施の形態に共通する本発明の蛍光体の特徴について説明する。
蛍光体の光学特性は、母結晶と発光中心の種類で決定される。例えば、一般的に黄色蛍光体として知られているYAl12:Ceは、母結晶として立方晶系に属するガーネット構造の結晶であり、発光中心はCeである。図1にこのガーネット型結晶1の模式図を示す。ガーネット型結晶1を構成するサイトのうち、Yサイト2とAlサイト3に入る陽イオンに対してOサイト4の酸素イオンが配位しており、Yサイト2では12面体配位、Alサイト3に対しては、8面体配位と4面体配位の2種類がある。本実施の形態においても、母結晶はガーネット構造を有するYAl12型の結晶であり、図1におけるYサイト2の一部がCeで置換され、またYサイト2、Alサイト3の一部がさらに別の元素で置換した蛍光体となっている。尚、発光中心となるCeについては、全体としての添加量が微量であり、全ての結晶格子に存在しているわけではないため図示していない。Yサイト2、およびAlサイト3の一部を置換することにより、発光中心であるCeまわりの結晶場が変わる。すると、Ceの5d軌道が分裂し、Ceのバンドギャップが小さくなり、発光波長が長波長側にシフトする。
このような各実施の形態における共通要素は下記組成式(1)で表すことができる。
つまり、本開示の蛍光体は、
3-x-zCeAl5-yLi12・・・(1)
の組成式(1)で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
Aは、Yb、Eu、Laのいずれか一つであり、
x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8かつ、
0<z≦0.15であることを特徴とする。
上記において、x≦2.7であるのは、ガーネット構造としてYサイト2の取りうる組成比率が最大3であるために、Yサイト2を置換するAの組成比率が2.7を超えると、結晶が不安定になると考えられるためである。
また、y≧2.5であるのは、Alサイト3を置換するSiの組成比率が2.5未満であると、上記でしめした発光元素であるCeに対する結晶場の影響が小さくなり発光ピーク波長に与える影響も小さくなるためである。
さらに、0<z≦0.15であるのは、発光を得るためにはCeを含む必要があるため、zの値は0より大きい。zの値は、発光強度増大の観点から、望ましくは0.0001以上、より望ましくは0.003以上である。蛍光体が発光し得る限り、zの値の最大値に特に制限はない。しかし、zの値が大きくなりすぎる場合には、濃度消光により発光強度が低下する。そのため、zの値を0.15以下とすることにより、発光強度の低下を抑制できる。また、zの値は発光強度増大の観点から、望ましくは0.1以下である。
(実施の形態1)
<蛍光体>
実施の形態1に係る蛍光体は、下記組成式(2)
3-x-zYbCeAl5-yLi12・・・(2)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
式(2)中のx、yおよびzはそれぞれYbの組成比率、Liの組成比率、Ceの組成比率であり、
xおよびyは、1.2≦x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、
zは、0<z≦0.15の範囲である。
組成式(2)において、発光を得るためにはCeを含む必要があるため、zの値は0より大きい。zの値は、発光強度増大の観点から、望ましくは0.0001以上、より望ましくは0.003以上である。蛍光体が発光し得る限り、zの値の最大値に特に制限はない。しかし、zの値が大きくなりすぎる場合には、濃度消光により発光強度が低下する。そのため、zの値を0.15以下とすることにより、発光強度の低下を抑制できる。また、zの値は発光強度増大の観点から、望ましくは0.1以下である。
実施の形態1に係る蛍光体によれば、上記組成式(2)で表されるガーネット型の結晶構造を有し、その発光ピーク波長は600nm以上700nm以下であるため、可視光領域内の長波長領域において高い演色性を示す。また、Ceを用いているため、高出力光源を照射下での輝度飽和による発光輝度の低下が少ない。
<蛍光体の製造方法>
以下、実施の形態1に係る蛍光体材料の製造方法について説明する。
(1)原料としては、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、セリウム(Ce)、アルミニウム(Al)およびリチウム(Li)の原材料として、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、および酸化リチウムを準備する。原材料はこれら酸化物でなくとも、炭酸塩などを始めとする金属塩化合物とすることも可能である。
(2)上記原料の粉末の所定量を計量し、十分に混合する。混合方法は、溶液中での湿式混合でも、乾燥粉末の乾式混合でもよい。工業的に用いられるボールミル、媒体攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ジェットミル、攪拌機等を用いることができる。前記混合粉末の0.1重量%から10重量%相当、フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)やフッ化ストロンチウム(SrF)を混合することもできる。フラックスの効果としては、焼成中に融解し、各原料の拡散を促進して反応性を高めるために用いる。
(3)次に、上記のようにして準備した混合粉末を焼成する。焼成には電気炉を使用することができ、例えばアルミナ製の坩堝中に混合粉末を入れて、アルミナ坩堝ごと1200℃以上1700℃以下で2時間以上12時間以下の時間で加熱し焼成する。
(4)焼成後は冷却し、解砕、酸によるフラックス洗浄などの工程を経て、蛍光体材料の粉末を得ることができる。
以上によって、蛍光体を得ることができる。
<発光特性の評価>
実施例1-1~実施例1-11および比較例1-1~比較例1-4の発光スペクトルを、積分球を使用した分光蛍光光度計を用いて測定する。合成した蛍光体を積分球内の所定の位置に設置し、測定装置に付属の青色LED光源から発せられる青色光を粉末に照射し、発光スペクトルを測定することで、発光ピーク波長を得る。
(判定基準)
発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長が600nm以上700nm以下であるものを、長波長領域における発光特性が優れたものとして○、その内、発光ピーク波長が620nm以上700nm以下であるものを、特に発光特性が優れたものとして◎、さらに、発光ピーク波長が600nm未満であるものを、長波長領域における発光特性が不十分なものとして×とする。
実施例1-1~実施例1-11および比較例1-1~比較例1-4の組成式(2)のx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を図7の表1に示す。
図7の表1に示すように、YbとLiの組成比率を調整することによって、実施例1-1~実施例1-11の発光ピーク波長は、600nm以上となり、判定は全て◎または〇となる。これは、YサイトをYb、AlサイトをLiで置換することによって、母結晶であるYAl12結晶と比較して発光イオンであるCeに与えうる結晶場としての影響が変化したためであると考えられる。
比較例1-1~比較例1-4の発光ピーク波長は、600nm未満となり、判定は×となる。
図2は、実施の形態1における発光ピーク波長600nm以上となるYb組成比率とLi組成比率の関係を表す図である。横軸はYb組成比率であり、組成式(2)のxにあたる。縦軸はLi組成比率であり、組成式(2)のyにあたる。●部は実施例1-1~実施例1-11における発光ピーク波長が600nm以上である箇所を表している。×部は比較例1-1~比較例1-4における発光ピーク波長が600nm未満である箇所を表している。
図2に示されるように、Yb組成比率xとLi組成比率yとの関係において発光ピーク波長が600nm以上となる境界が存在する。この境界に沿った近似線を求めると、それぞれ、x≦2.7、y≧2.5、y≦x+1.8、x≧1.2であることが分かる。つまり、Yb組成比率xとLi組成比率yが、図2において近似線で囲まれる実線部の領域内部に存在すれば、発光ピーク波長が600nm以上となる.即ち、組成式(2)
3-x-zYbCeAl5-yLi12・・・(2)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、式(2)中のx、yおよびzはそれぞれYbの組成比率、Ceの組成比率、Liの組成比率であり、xおよびyは、1.2≦x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、zは、0<z≦0.15の範囲であれば、発光ピーク波長が600nm以上となる。
ここで図7の表1および図2のzの値は全て0.09で固定している。Ceは発光中心となる元素であるため、発光輝度への影響は大きいものの、発光ピーク波長への影響は小さいため、0<z≦0.15の範囲であれば、z=0.09でなくとも同様の結果が得らえる。
<発光装置>
<LED発光装置>
図3は、本開示の実施の形態1に係るLED発光装置10の一例の模式図である。以下に、組成式(2)で示す蛍光体18と、光源としてLEDチップ11と、を備えたLED発光装置10について説明する。図3は、LED発光装置10の一実施形態を示す概略模式図である。図3に示すように、LED発光装置10は、LEDチップ11が支持体12上に、出射面が支持体12と接する面とならないよう、はんだ13を介して固定されている。さらにLEDチップ11はボンディングワイヤ14によって、支持体12に配置された電極15と電気的に接続されている。またLEDチップ11は、LED波長変換部材16によって覆われており、LED波長変換部材16は、LED封止体17と赤色蛍光体18、黄色蛍光体19、及び、緑色蛍光体20を含む。
LEDチップ11には、例えば、紫外から黄色領域で発光するものが用いられ、波長400nm以上500nm以下に発光スペクトルのピークを有するものが用いられる。LEDチップ11として、具体的には、青色LEDチップ等が用いられる。
本実施の形態1では、LED発光装置10は、面実装が可能な構造を備えているため、支持体12は基板である。例えば、LEDチップ11で発生した熱を効率的に外部へ放熱することができるよう、支持体12は高い熱伝導率を有する基板を用いることができる。例えば、アルミナや窒化アルミニウムなどからなるセラミック基板を支持体12として用いることができる。
LED波長変換部材16中のLED封止体17には、シリコーン樹脂が使用されている。シリコーン樹脂は、例えば、耐変色性が高いジメチルシリコーンを含んでいてもよい。また、耐熱性の高いメチルフェニルシリコーン等もシリコーン樹脂として用いることができる。シリコーン樹脂は、1種類の化学式で規定されるシロキサン結合による主骨格を持つ単独重合体であってもよい。また、2種類以上の化学式で規定されるシロキサン結合を有する構造単位を含む共重合体や、2種類以上のシリコーンポリマーのアロイであってもよい。
LED波長変換部材16中の蛍光体は、LEDチップ11からの出射光を、より長波長の光に波長変換する。LED波長変換部材16に含まれる蛍光体は、赤色蛍光体18と、黄色蛍光体19または緑色蛍光体20から少なくとも1種とが混合され構成される。赤色蛍光体18としては、実施の形態1に係る蛍光体を用いることができる。黄色蛍光体19としては、例えば、YAl12:Ce、α-SiAlON:Eu等を用いることができる。また、緑色蛍光体20としては、CaSiOl2:Eu、β-SiAlON:Eu等を用いることができる。図3では、特に、LED波長変換部材16が、赤色蛍光体18、黄色蛍光体19、および緑色蛍光体20の3種を混合して構成された場合を説明する。3種の蛍光体の混合比率は、所望の白色光の色調や、各蛍光体の発光強度などに応じて、適宜調整することが可能である。赤色蛍光体18、黄色蛍光体19、および緑色蛍光体20の3種の蛍光体は、例えば、封止体100重量部に対して、3重量部以上70重量部以下の割合でLED封止体17に含まれている。含有量が3重量部よりも少ない場合、十分な強度の蛍光が得られないため、所望の波長の光を発光するLED発光装置10を実現できなくなる場合がある。3種の蛍光体の重量比は、所望する白色光の色調と、それぞれの蛍光体の発光強度に応じて適宜決定することができる。
尚、赤色蛍光体18と他の色の蛍光体とを組み合わせることによって、LED発光装置10を、白色以外の色を発するLED発光装置10として構成することもできる。
実施の形態1に係る赤色蛍光体18以外の黄色蛍光体19、および緑色蛍光体20は、公知方法に従って製造することができる。
<LD発光装置>
図4は、本開示の実施の形態1に係る発光装置30の一例の模式図である。以下に、組成式(2)の蛍光体18と、光源としてLD素子31と、を備えたLD発光装置30について説明する。図4は、LD発光装置30の一実施形態を示す概略模式図である。図4に示すように、LD発光装置30は、LD素子31と、入射光学系32と、LD波長変換部材33とを備える。また、LD波長変換部材33は、バインダー34と、図3と同様の赤色蛍光体18、黄色蛍光体19、及び、緑色蛍光体20を含む。
LD素子31は、LEDよりも高い光パワー密度の光を出射することができる。よって、LD素子31の使用により高出力な発光装置を構成することができる。LD素子31の光パワー密度は、LD発光装置30の高出力化の観点から、例えば、0.5W/mm以上である。また、光パワー密度は、2W/mm以上であってもよく、3W/mm以上であってもよく、10W/mm以上であってもよい。一方で、光パワー密度が高すぎると、光が照射された蛍光体からの発熱量が増大して、LD発光装置30に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、光パワー密度は、150W/mm以下であってもよく、100W/mm以下であってもよく、50W/mm以下であってもよく、20W/mm以下であってもよい。
LD素子31には、例えば、紫外から黄色領域で発光するものが用いられ、波長400nm以上500nm以下に発光スペクトルのピークを有するものが用いられる。例えば、青紫光を出射するLD素子、青色光を出射するLD素子を使用することができる。本実施の形態1では、LD素子31が、青色光を射出する場合について説明する。
LD波長変換部材33中のバインダー34は、例えば、樹脂、ガラス、または透明結晶などの媒体である。バインダー34は、単一の材質であってもよく、場所により異なる材質であってもよい。
LD波長変換部材33中の蛍光体は、LD素子31からの出射光を、より長波長の光に波長変換する。LD波長変換部材33の蛍光体は、赤色蛍光体18と、黄色蛍光体19または緑色蛍光体20から少なくとも1種とが混合され構成される。赤色蛍光体18としては、実施の形態1の蛍光体が用いられる。黄色蛍光体19および緑色蛍光体20としては、図3で例示したものを使用することができる。図4では、特に、LD波長変換部材33が、赤色蛍光体18、黄色蛍光体19、および緑色蛍光体20の3種を混合して構成された場合を説明する。3種の蛍光体の混合比率は、所望の白色光の色調や、各蛍光体の発光強度などに応じて、適宜調整することが可能である。
LD素子31から射出された青色光は、入射光学系32を通り、LD波長変換部材33中の赤色蛍光体18、黄色蛍光体19および緑色蛍光体20により、それぞれ赤色光、黄色光、緑色光に変換される。上記3種の蛍光体で吸収されなかったLD素子31から射出された青色光と、赤色蛍光体18、黄色蛍光体19および緑色蛍光体20によりそれぞれ変換された赤色光、黄色光、緑色光とを混合して、白色光となる。
上述のように、図3、図4の発光装置によれば、実施の形態1に係る蛍光体を用いるため、白色発光装置として構成した場合には、高い演色性および色再現性を実現できる。
(実施の形態2)
<蛍光体>
実施の形態2に係る蛍光体は、下記組成式(3)
3-x-zEuCeAl5-yLi12・・・(3)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
式(3)中のx、yおよびzはそれぞれEuの組成比率、Liの組成比率、Ceの組成比率であり、
xおよびyは、1.2≦x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、
zは、0<z≦0.15の範囲である。
本実施の形態2においても、母結晶はガーネット構造を有するYAl12型の結晶であり、図1におけるYサイト2、Alサイト3の一部を置換した蛍光体となっている。つまり、YサイトはEuとCe、AlサイトはLiで置換される。
組成式(3)において、発光を得るためにはCeを含む必要があるため、zの値は0より大きい。zの値は、発光強度増大の観点から、望ましくは0.0001以上、より望ましくは0.003以上である。蛍光体が発光し得る限り、zの値の最大値に特に制限はない。しかし、zの値が大きくなりすぎる場合には、濃度消光により発光強度が低下する。そのため、zの値を0.15以下とすることにより、発光強度の低下を抑制できる。また、zの値は発光強度増大の観点から、望ましくは0.1以下である。
<蛍光体の製造方法>
以下、実施の形態2に係る蛍光体材料の製造方法について説明する。
(1)原料としては、イットリウム(Y)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、アルミニウム(Al)およびリチウム(Li)の原材料として、酸化イットリウム、酸化ユーロピウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、および酸化リチウムを準備する。原材料はこれら酸化物でなくとも、炭酸塩などを始めとする金属塩化合物とすることも可能である。
(2)上記原料の粉末の所定量を計量し、十分に混合する。混合方法は、溶液中での湿式混合でも、乾燥粉末の乾式混合でもよい。工業的に用いられるボールミル、媒体攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ジェットミル、攪拌機等を用いることができる。前記混合粉末の0.1重量%から10重量%相当、フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)やフッ化ストロンチウム(SrF)を混合することもできる。フラックスの効果としては、焼成中に融解し、各原料の拡散を促進して反応性を高めるために用いる。
(3)次に、上記のようにして準備した混合粉末を焼成する。焼成には電気炉を使用することができ、例えばアルミナ製の坩堝中に混合粉末を入れて、アルミナ坩堝ごと1200℃以上1700℃以下で2時間以上12時間以下の時間で加熱し焼成する。
(4)焼成後は冷却し、解砕、酸によるフラックス洗浄などの工程を経て、蛍光体材料の粉末を得ることができる。
以上によって、蛍光体を得ることができる。
<発光特性の評価>
実施例2-1~実施例2-11および比較例2-1~比較例2-4の発光スペクトルを、積分球を使用した分光蛍光光度計を用いて測定する。合成した蛍光体を積分球内の所定の位置に設置し、測定装置に付属の青色LED光源から発せられる青色光を粉末に照射し、発光スペクトルを測定することで、発光ピーク波長を得る。
(判定基準)
発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長が600nm以上700nm以下であるものを、長波長領域における発光特性が優れたものとして○、その内、発光ピーク波長が620nm以上700nm以下であるものを、特に発光特性が優れたものとして◎、さらに、発光ピーク波長が600nm未満であるものを、長波長領域における発光特性が不十分なものとして×とする。
実施例2-1~実施例2-11および比較例2-1~比較例2-4の組成式(3)のx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を図8の表2に示す。
図8の表2に示すように、EuとLiの組成比率を調整することによって、実施例2-1~実施例2-11の発光ピーク波長は、600nm以上となり、判定は全て◎または〇となる。これは、YサイトをEu、AlサイトをLiで置換することによって、母結晶であるYAl12結晶と比較して発光イオンであるCeに与えうる結晶場としての影響が変化したためであると考えられる。
比較例2-1~比較例2-4の発光ピーク波長は、600nm未満となり、判定は×となる。
図5は、実施の形態2における発光ピーク波長600nm以上となるEu組成比率とLi組成比率の関係を表す図である。横軸はEu組成比率であり、組成式(3)のxにあたる。縦軸はLi組成比率であり、組成式(3)のyにあたる。●部は実施例2-1~実施例2-11における発光ピーク波長が600nm以上である箇所を表している。×部は比較例2-1~比較例2-4における発光ピーク波長が600nm未満である箇所を表している。
図5に示されるように、Eu組成比率xとLi組成比率yとの関係において発光ピーク波長が600nm以上となる境界が存在する。この境界に沿った近似線を求めると、それぞれ、x≦2.7、y≧2.5、y≦x+1.8、x≧1.2であることが分かる。つまり、Eu組成比率xとLi組成比率yが、図5において近似線で囲まれる実線部の領域内部に存在すれば、発光ピーク波長が600nm以上となる.即ち、組成式(3)
3-x-zEuCeAl5-yLi12・・・(3)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、式(3)中のx、yおよびzはそれぞれEuの組成比率、Ceの組成比率、Liの組成比率であり、xおよびyは、1.2≦x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、zは、0<z≦0.15の範囲であれば、発光ピーク波長が600nm以上となる。
ここで図8の表2および図5のzの値は全て0.09で固定している。Ceは発光中心となる元素であるため、発光輝度への影響は大きいものの、発光ピーク波長への影響は小さいため、0<z≦0.15の範囲であれば、z=0.09でなくとも同様の結果が得られる。
<発光装置>
本実施の形態2に係る発光装置は、図3、図4に示した実施の形態1に係る発光装置10、30と赤色蛍光体以外は同一の構成であるため、説明は省略する。ただし、赤色蛍光体18には実施の形態2で示した蛍光体を用いる。
(実施の形態3)
<蛍光体>
実施の形態3に係る蛍光体は、
下記組成式(4)
3-x-zLaCeAl5-yLi12・・・(4)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
式(4)中のx、yおよびzはそれぞれLaの組成比率、Liの組成比率、Ceの組成比率であり、
xおよびyは、x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、
zは、0<z≦0.15の範囲である。
本実施の形態3においても、母結晶はガーネット構造を有するYAl12型の結晶であり、図1におけるYサイト2、Alサイト3の一部を置換した蛍光体となっている。つまり、YサイトはLaとCe、AlサイトはLiで置換される。
組成式(4)において、発光を得るためにはCeを含む必要があるため、zの値は0より大きい。zの値は、発光強度増大の観点から、望ましくは0.0001以上、より望ましくは0.003以上である。蛍光体が発光し得る限り、zの値の最大値に特に制限はない。しかし、zの値が大きくなりすぎる場合には、濃度消光により発光強度が低下する。そのため、zの値を0.15以下とすることにより、発光強度の低下を抑制できる。また、zの値は発光強度増大の観点から、望ましくは0.1以下である。
<蛍光体の製造方法>
以下、実施の形態3に係る蛍光体材料の製造方法について説明する。
(1)原料としては、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、アルミニウム(Al)およびリチウム(Li)の原材料として、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、および酸化リチウムを準備する。原材料はこれら酸化物でなくとも、炭酸塩などを始めとする金属塩化合物とすることも可能である。
(2)上記原料の粉末の所定量を計量し、十分に混合する。混合方法は、溶液中での湿式混合でも、乾燥粉末の乾式混合でもよい。工業的に用いられるボールミル、媒体攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ジェットミル、攪拌機等を用いることができる。前記混合粉末の0.1重量%から10重量%相当、フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)やフッ化ストロンチウム(SrF)を混合することもできる。フラックスの効果としては、焼成中に融解し、各原料の拡散を促進して反応性を高めるために用いる。
(3)次に、上記のようにして準備した混合粉末を焼成する。焼成には電気炉を使用することができ、例えばアルミナ製の坩堝中に混合粉末を入れて、アルミナ坩堝ごと1200℃以上1700℃以下で2時間以上12時間以下の時間で加熱し焼成する。
(4)焼成後は冷却し、解砕、酸によるフラックス洗浄などの工程を経て、蛍光体材料の粉末を得ることができる。
以上によって、蛍光体を得ることができる。
<発光特性の評価>
実施例3-1~実施例3-12および比較例3-1~比較例3-3の発光スペクトルを、積分球を使用した分光蛍光光度計を用いて測定する。合成した蛍光体を積分球内の所定の位置に設置し、測定装置に付属の青色LED光源から発せられる青色光を粉末に照射し、発光スペクトルを測定することで、発光ピーク波長を得る。
(判定基準)
発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長が600nm以上700nm以下であるものを、長波長領域における発光特性が優れたものとして○、その内、発光ピーク波長が620nm以上700nm以下であるものを、特に発光特性が優れたものとして◎、さらに、発光ピーク波長が600nm未満であるものを、長波長領域における発光特性が不十分なものとして×とする。
実施例3-1~実施例3-12および比較例3-1~比較例3-3の組成式(4)のx、y、zの値と発光ピーク波長の一覧を図9の表3に示す。
図9の表3に示すように、LaとLiの組成比率を調整することによって、実施例3-1~実施例3-11の発光ピーク波長は、600nm以上となり、判定は全て◎または〇となる。これは、YサイトをEu、AlサイトをLiで置換することによって、母結晶であるYAl12結晶と比較して発光イオンであるCeに与えうる結晶場としての影響が変化したためであると考えられる。
比較例3-1~比較例3-4の発光ピーク波長は、600nm未満となり、判定は×となる。
図6は、実施の形態2における発光ピーク波長600nm以上となるLa組成比率とLi組成比率の関係を表す図である。横軸はLa組成比率であり、組成式(4)のxにあたる。縦軸はLi組成比率であり、組成式(4)のyにあたる。●部は実施例3-1~実施例3-12における発光ピーク波長が600nm以上である箇所を表している。×部は比較例3-1~比較例3-3における発光ピーク波長が600nm未満である箇所を表している。
図6に示されるように、La組成比率xとLi組成比率yとの関係において発光ピーク波長が600nm以上となる境界が存在する。この境界に沿った近似線を求めると、それぞれ、x≦2.7、y≧2.5、y≦x+1.8であることが分かる。つまり、La組成比率xとLi組成比率yが、図6において近似線で囲まれる実線部の領域内部に存在すれば、発光ピーク波長が600nm以上となる.即ち、組成式(4)
3-x-zLaCeAl5-yLi12・・・(4)
で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、式(4)中のx、yおよびzはそれぞれLaの組成比率、Ceの組成比率、Liの組成比率であり、xおよびyは、x≦2.7かつ2.5≦y≦x+1.8を同時に満たし、zは、0<z≦0.15の範囲であれば、発光ピーク波長が600nm以上となる。
ここで図9の表3および図6のzの値は全て0.09で固定している。Ceは発光中心となる元素であるため、発光輝度への影響は大きいものの、発光ピーク波長への影響は小さいため、0<z≦0.15の範囲であれば、z=0.09でなくとも同様の結果が得られる。
<発光装置>
本実施の形態3に係る発光装置は、図3、図4に示す実施の形態1に係る発光装置10、30と赤色蛍光体以外は同一の構成であるため説明は省略する。ただし、赤色蛍光体18には実施の形態3で示した蛍光体を用いる。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本発明に係る蛍光体は、発光ピーク波長が600nm以上700nm以下の範囲であり、長波長領域の発光量が多く、かつ高出力光源照射下での発光率低下を抑制できる赤色蛍光体である。この蛍光体を青色発光の光源に適用した場合、演色性に優れた発光装置を構成することができ、照明用光源等として好適に使用することができる。
1 ガーネット型結晶
2 Yサイト
3 Alサイト
4 Oサイト
10 LED発光装置
11 LEDチップ
12 支持体
13 はんだ
14 ボンディングワイヤ
15 電極
16 LED波長変換部材
17 LED封止体
18 赤色蛍光体
19 黄色蛍光体
20 緑色蛍光体
30 LD発光装置
31 LD素子
32 入射光学系
33 LD波長変換部材
34 バインダー

Claims (5)

  1. 下記組成式(1)
    3-x-zCeAl5-yLi12・・・(1)
    で表されるガーネット型の結晶構造を有する材料を含み、
    Aは、Yb、Eu、Laのいずれか一つであり、
    式(1)中のx、yおよびzはそれぞれAの組成比率、Znの組成比率、Ceの組成比率であり、
    x、y、およびzは、x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8かつ、
    0<z≦0.15の範囲である、
    蛍光体。
  2. 前記AはYbであり、
    前記xおよびyは、1.2≦x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8である、請求項1に記載の蛍光体。
  3. 前記AはEuであり、
    前記xおよびyは、1.2≦x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8である、請求項1に記載の蛍光体。
  4. 前記AはLaであり、
    前記xおよびyは、x≦2.7、2.5≦y≦x+1.8である、請求項1に記載の蛍光体。
  5. 請求項1から4の何れか1項に記載の蛍光体と、
    400nm以上500nm以下に発光ピーク波長を有する光源と、
    を備えている、発光装置。
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