JP7201397B2 - 粘着付与樹脂、アクリル粘着剤及び粘着テープ - Google Patents
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Description
本発明は、アクリル粘着剤においてアクリル共重合体とともに好適に用いられ、アクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)及び皮脂への耐性を高めることができる粘着付与樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着付与樹脂を含有するアクリル粘着剤及び粘着テープを提供することを目的とする。
以下、本発明を詳述する。
本発明者らは、フッ素含有ビニル重合体からなり、該フッ素含有ビニル重合体がフルオロアルキル基又はフルオロアリール基を有するビニル化合物に由来する構成単位を特定範囲の配合量で含有する粘着付与樹脂を作製した。そして、本発明者らは、このような粘着付与樹脂であれば、アクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)及び皮脂への耐性を高めることができることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
このような粘着付与樹脂であれば、アクリル粘着剤においてアクリル共重合体、特にフッ素含有モノマーに由来する構成単位を特定範囲の配合量で含有するアクリル共重合体とともに好適に用いられ、アクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)及び皮脂への耐性を高めることができる。
上記フッ素含有ビニル重合体における、上記フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を有するビニル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は70重量%である。上記含有量が70重量%以下であれば、粘着テープを製造する際の溶媒又はアクリル共重合体、特にフッ素含有モノマーに由来する構成単位を特定範囲の配合量で含有するアクリル共重合体に対して粘着付与樹脂が充分に相溶する。上記含有量のより好ましい上限は60重量%である。
上記フッ素含有ビニル重合体にカルボキシル基を有するビニル化合物に由来する構成単位を含有させることにより、粘着付与樹脂を含有するアクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)が更に向上する。
なお、上記フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を有するビニル化合物と、上記カルボキシル基を有するビニル化合物とは、同一化合物であってもよい。即ち、上記フルオロアルキル基又はフルオロアリール基と、カルボキシル基とが、同一分子内に存在していてもよい。
上記フッ素含有ビニル重合体が、側鎖に環状構造を有するビニル化合物に由来する構成単位を含有することで、ガラス転移点を比較的高く設定することができ、被着体への粘着性を向上させることができる。即ち、粘着付与樹脂を含有するアクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)を更に向上させることができる。
上記他の化合物は特に限定されず、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシル基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、マレイミド系化合物、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記アミノ基含有不飽和化合物として、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アミド基含有不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記アルコキシル基含有不飽和化合物として、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ニトリル基含有不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
このようなアクリル共重合体と、粘着付与樹脂とを用いることにより、アクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)を損なうことなく、皮脂の主成分であるオレイン酸に対するアクリル粘着剤の耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に用いても粘着力を維持することができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。上記アクリル共重合体のガラス転移点を下げて粘着力を調整しやすいという観点からは、アクリレートが好ましい。
上記アクリル共重合体における上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は70重量%である。上記含有量が70重量%以下であれば、アクリル粘着剤が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は60重量%である。
上記炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、好適な粘着力を発揮できることから、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はオクチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記アクリル共重合体に炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、ポリマー間の絡み合いが増加して、オレイン酸への浸漬前後のアクリル粘着剤の粘着力及び凝集力が向上する。これにより、アクリル粘着剤が剥離しにくくなり、皮脂への耐性が向上する。
上記アクリル共重合体に極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有させることにより、アクリル粘着剤の凝集力を高め、粘着力を高めることができる。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの極性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
本発明のアクリル粘着剤における本発明の粘着付与樹脂の含有量は、上記アクリル共重合体100重量部に対する下限が1重量部、上限が50重量部である。上記含有量が上記範囲であれば、アクリル粘着剤の粘着力(初期粘着力)を損なうことなく、皮脂の主成分であるオレイン酸に対するアクリル粘着剤の耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に用いても粘着力を維持することができる。上記含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は45重量部であり、より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
本発明のアクリル粘着剤に架橋剤を添加することにより、上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の極性官能基を架橋し、架橋構造を構築することができる。これにより、アクリル粘着剤のゲル分率及び膨潤率を調整しやすくなる。
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が20重量部であり、より好ましい下限が0.05重量部、より好ましい上限が10重量部である。
本発明のアクリル粘着剤にシランカップリング剤を添加することにより、アクリル粘着剤と被着体との界面の接着強度を高めることができる。
なお、ゲル分率は、例えば、上記架橋剤の含有量の調整、上記アクリル共重合体における架橋反応性官能基の含有量の調整等によって調整できる。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(1)のように酢酸エチルに浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、酢酸エチルに浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W2:酢酸エチル浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
なお、本明細書における「膨潤率」とは、下記式(2)により表される値である。即ち、「膨潤率」とは、オレイン酸に浸漬する前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量に対する、オレイン酸に浸漬し、乾燥した後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量の割合を百分率で表した値である。オレイン酸への粘着剤成分の溶出がある場合、膨潤率は100重量%を下回る。
膨潤率(重量%)=100×(W5-W3)/(W4-W3) (2)
(W3:基材の重量、W4:オレイン酸浸漬前のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量、W5:オレイン酸浸漬、乾燥後のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープの重量)
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力が向上する。上記粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
まず、アクリル共重合体、粘着付与樹脂及び必要に応じて添加剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製して、このアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
(アクリル共重合体の合成)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。続いて、下記式で表される2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(PFHA)50重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)28.5重量部、メチルアクリレート(MA)18.5重量部、アクリル酸(AAc)3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
(アクリル共重合体の合成)
使用するモノマーの量を表1に記載のように変更したこと以外は合成例1と同様にして、アクリル共重合体を得た。
(粘着付与樹脂の合成)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。続いて、下記式で表される2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)50重量部、イソボルニルアクリレート(IBOA)47重量部、アクリル酸(AAc)3重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、フッ素含有ビニル重合体含有溶液を得た。
(粘着付与樹脂の合成)
重合条件並びに使用するモノマーの種類及び量を表2に記載のように変更したこと以外は合成例4と同様にして、フッ素含有ビニル重合体を得た。
表2中のPFHAとは下記式で表される2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートである。
合成例1のアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して、合成例4の粘着付与樹脂を15重量部、架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業社製)を1.00重量部(固体成分比率)加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルム上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが35μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させて粘着剤層を形成させた。この粘着剤層を、基材となる厚み50μmのコロナ処理したPETフィルムに転着させ、40℃で48時間養生し、両面粘着テープを得た。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前の試験片の重量、W2:酢酸エチル浸漬、乾燥後の試験片の重量)
使用するアクリル共重合体及び粘着付与樹脂の種類及び量を表3に記載のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着テープを得た。
表3中の粘着付与樹脂「P-100」は、脂肪族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製)である。
実施例、比較例及び参考例で得られた両面粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表3に示した。
得られた両面粘着テープを5mm幅の短冊状に裁断して試験片を作製し、片面の離型フィルムを剥離除去して粘着剤層を露出させた。この試験片をステンレス板に、その粘着剤層がステンレス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより、試験片とステンレス板とを貼り合わせ、その後、23℃で24時間静置して試験サンプルを作製した。
この試験サンプルをオレイン酸のバスに60℃、湿度90%の条件で24時間浸漬し、取り出した後、付着した液体を軽くふき取り、24時間静置した。その後、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、オレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力(N/5mm)を測定した。オレイン酸浸漬後の180°引きはがし粘着力(N/5mm)が0.6以上であった場合を◎、0.6未満かつ0.25以上であった場合を〇、0.25未満であった場合を×とした。
上記(1)と同様にして作製した試験サンプルについて、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、ポリイミド粘着力(N/25mm)を測定した。ポリイミド粘着力(N/25mm)が14以上であった場合を〇、14未満であった場合を×とした。
Claims (6)
- アクリル共重合体と、フッ素含有ビニル重合体からなる粘着付与樹脂とを含有し、
前記フッ素含有ビニル重合体は、フルオロアルキル基又はフルオロアリール基を有するビニル化合物に由来する構成単位を40~70重量%、側鎖に環状構造を有するビニル化合物に由来する構成単位を10~57重量%、及び、カルボキシル基を有するビニル化合物に由来する構成単位を0.5~13重量%含有する
ことを特徴とするアクリル粘着剤。 - フッ素含有ビニル重合体は、カルボキシル基を有するビニル化合物に由来する構成単位を1~5重量%含有することを特徴とする請求項1記載のアクリル粘着剤。
- フッ素含有ビニル重合体は、重量平均分子量が500~30000であることを特徴とする請求項1又は2記載のアクリル粘着剤。
- 前記アクリル共重合体100重量部に対して1~50重量部の前記粘着付与樹脂を含有し、
前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のアクリル粘着剤。 - 少なくとも一方の面に請求項1、2、3又は4記載のアクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着テープ。
- 電子機器の部品を固定するために用いられることを特徴とする請求項5記載の粘着テープ。
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