JP7075368B2 - 固体酸化物形燃料電池用アノード - Google Patents
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Description
しかし、SOFC普及に向けて、作動温度(現状の作動温度:750℃)の低温化が鍵となっている。低温化(例えば、600℃)によって、(1)セルの耐久性向上(化学安定性)、(2)安価な筐体(安価なステンレス鋼)の使用、(3)起動停止時間の短縮、が可能となる。
さらに、非特許文献3には、SOFCのアノードではないが、メタンを二酸化炭素と共に改質するための触媒として、Ni(15wt%)-MgO(10wt%)-Ce0~1Zr1~0O2-δが開示されている。同文献には、Ni-MgO-Ce0.8Zr0.2O2-δが最も好ましい点が記載されている。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記集電層は、
Ni粒子(B)と、
Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
(4)前記活性層は、
Ni粒子(C)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(C)と
を含むサーメット(C)からなる。
[1. 固体酸化物形燃料電池用アノード]
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
本発明において、拡散層は、Ni粒子(A)と、イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)とを含むサーメット(A)からなる。拡散層は、活性層を支持するためのものである。拡散層と活性層との積層体を含むアノードにおいて、電極反応は、主として活性層内で生じる。そのため、拡散層は、必ずしも高いイオン伝導性を有している必要はない。
(a)その電解質側表面に形成される活性層を支持するための機能、
(b)燃料ガスを活性層まで拡散させる機能、
(c)電極反応により活性層で放出された電子を集電体まで輸送する機能、及び、
(d)電極反応により活性層で生成した水蒸気をアノード外に排出する機能
を備えている必要がある。
拡散層の組成は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
Ni粒子(A)の含有量は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。一般に、Ni粒子(A)の含有量が少なすぎると、拡散層の導電性が低下する。従って、Ni粒子(A)の含有量は、30wt%以上が好ましい。含有量は、好ましくは、40wt%以上である。
一方、Ni粒子(A)の含有量が過剰になると、電解質粒子(A)の含有量が少なくなり、機械的強度が低下する。従って、Ni粒子(A)の含有量は、70wt%以下が好ましい。含有量は、好ましくは、60wt%以下である。
本発明において、電解質粒子(A)は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる。電解質粒子(A)の組成は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。すなわち、電解質粒子(A)は、活性層に含まれる電解質粒子(C)と同一の組成を有するものでも良く、あるいは、異なる組成を有するものでも良い。
拡散層の気孔率は、アノードのガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、拡散層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、拡散層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
集電層は、拡散層の集電体側表面に形成される。本発明において、集電層は、Ni粒子(B)と、Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)とを含むサーメット(B)からなる。集電層は、CeO2-ZrO2固溶体(CZ)からなるCZ粒子をさらに含んでいても良い。
集電層は、拡散層から集電体に電子を輸送するためのものである。そのため、集電層は、必ずしも高いイオン伝導度を有している必要はない。しかし、Ni粒子(B)が酸化することに起因する接触抵抗の増大を抑制するためには、集電層の材料は、耐酸化性に優れている材料である必要がある。
Ni粒子(B)の含有量は、集電層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。一般に、Ni粒子(B)の含有量が少なすぎると、集電層の導電性が低下する。従って、Ni粒子(B)の含有量は、30wt%以上が好ましい。含有量は、好ましくは、40wt%以上である。
一方、Ni粒子(B)の含有量が過剰になると、電解質粒子(B)の含有量が少なくなり、機械的強度が低下する。従って、Ni粒子(B)の含有量は、70wt%以下が好ましい。含有量は、好ましくは、60wt%以下である。
[A. 酸素吸蔵・放出能]
電解質粒子(B)は、Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる。CeO2は、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。一方、Y2O3は、ZrO2内、又は、CeO2-ZrO2固溶体(以下、「CZ」ともいう)内に酸素イオン空孔を導入し、ZrO2又はCZのイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、適量のY2O3及びCeO2を含むYCZを電解質粒子(B)として用いると、高い発電性能と高い耐久性とを兼ね備えた集電層が得られる。
CeO2-x-ZrO2+(x/2)O2 ⇔ CeO2-ZrO2 …(1)
ZrO2中に固溶しているCeイオンは、周囲の雰囲気中の酸素分圧に応じて、可逆的に3価の状態(還元状態)と、4価の状態(酸化状態)とを取ることができる。そのため、CZが酸化雰囲気に曝される時には、CZは雰囲気中にある酸素イオンを結晶格子内に取り込む(図3参照)。一方、CZが還元雰囲気に曝される時には、CZは結晶格子内にある酸素イオンを雰囲気中に放出する。この点は、YCZも同様である。
電解質粒子(B)は、特に、次の式(2)で表される組成を有するものが好ましい。
YxCeyZr1-x-yO2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。
式(2)中、xは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するYのモル数の比を表す。xは、特に限定されるものではなく、0超であれば良い。
但し、xが大きくなりすぎると、拡散層に含まれる電解質粒子(A)との熱膨張係数差が大きくなり、機械的強度が低下する場合がある。従って、xは、0.30以下が好ましい。xは、好ましくは、0.20以下である。
式(2)中、yは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比を表す。Ceは、上述したように、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。そのため、yが小さくなりすぎると、集電層の耐酸化性が低下する。従って、yは、0超が好ましい。yは、好ましくは、0.001以上、さらに好ましくは、0.02以上である。
[参考文献1]J. Phys. Chem. B 1997, 101, 1750-1753
δは、電気的中性が保たれる値を表す。Zrは4価であるのに対し、Yは3価である。また、Ceは、ZrO2中において、4価又は3価を取る。そのため、ZrO2にY及びCeを固溶させると、電気的中性が保たれるように、所定量の酸素空孔が導入される。
「Ce/Zr比」とは、電解質粒子(B)に含まれるZrの平均モル濃度に対するCeの平均モル濃度の比をいう。
Ce/Zr比が大きくなるほど、集電層の耐久性が向上する。このような効果を得るためには、Ce/Zr比は、0.001以上が好ましい。
集電層の気孔率は、アノードのガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、集電層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、集電層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、集電層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する。従って、集電層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
CZ粒子とは、CeO2-ZrO2固溶体からなる粒子をいう。YCZを含む集電層の製造方法には、種々の方法がある。例えば、Ni-YSZサーメットからなる拡散層の表面に、CZ粒子を含むスラリーを含浸させ、所定の温度で焼成すると、表面近傍のYSZとCZとが反応し、YCZが生成する。この時、未反応のCZ粒子が残留する場合がある。集電層は、このような未反応のCZ粒子を含んでいても良い。
活性層は、拡散層の電解質側表面に形成される。本発明において、活性層は、Ni粒子(C)と、固体酸化物からなる電解質粒子(C)とを含むサーメット(C)からなる。活性層は、電極反応の反応場となる部分である。そのため、活性層は、電子伝導性及びイオン伝導性に優れている必要がある。また、高い耐久性を得るためには、活性層は、耐酸化性に優れているのが好ましい。
Ni粒子(C)は、活性層中において、電極触媒及び電子伝導体として機能する。そのため、Ni粒子(C)の含有量が少なくなりすぎると、セル全抵抗が高くなり、発電出力も低下する。従って、Ni粒子(C)の含有量は、30wt%以上が好ましい。
電解質粒子(C)の組成は、活性層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。電解質粒子(C)は、電解質粒子(A)及び/又は電解質粒子(B)と同一の組成を有するものでも良く、あるいは、異なる組成を有するものでも良い。
(a)3mol%以上15mol%以下のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア、
(b)次の式(3)を満たすYCZ、
などがある。
Yx’Cey'Zr1-x'-y'O2-δ' …(3)
但し、
0<x'≦0.30、
0<y'≦0.20、
δ'は、電気的中性が保たれる値。
式(3)中、x'は、電解質粒子(C)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するYのモル数の比を表す。Yは、上述したように、ZrO2のイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、x'が小さくなりすぎると、活性層のイオン伝導度が低下する。従って、x'は、0超が好ましい。x'は、好ましくは、0.03以上、好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.07以上である。
式(3)中、y'は、電解質粒子(C)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比を表す。Ceは、上述したように、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。そのため、y'が小さくなりすぎると、活性層の耐酸化性が低下する。従って、y'は、0超が好ましい。y'は、好ましくは、0.001以上である。
δ'は、電気的中性が保たれる値を表す。Zrは4価であるのに対し、Yは3価である。また、Ceは、ZrO2中において、4価又は3価を取る。そのため、ZrO2にY及びCeを固溶させると、電気的中性が保たれるように、所定量の酸素空孔が導入される。
「Ce/Zr比」とは、電解質粒子(C)に含まれるZrの平均モル濃度に対するCeの平均モル濃度の比をいう。
Ce/Zr比が大きくなるほど、活性層の耐久性が向上する。このような効果を得るためには、Ce/Zr比は、0.001以上が好ましい。Ce/Zr比は、好ましくは、0.002以上である。
活性層の気孔率は、発電特性に影響を与える。活性層の気孔率が小さすぎると、反応生成物である水蒸気の排出特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、20%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、22%以上、さらに好ましくは、25%以上である。
一方、活性層の気孔率が大きくなりすぎると、三相界面が相対的に少なくなり、かえって発電特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、40%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、35%以下、さらに好ましくは、30%以下である。
[1.4.1. オーミック抵抗]
「オーミック抵抗」とは、燃料電池の内部抵抗の内、構成素材の抵抗成分をいう。YCZを集電層に用いることによって、酸素吸蔵作用を示し、かつ、酸素拡散性も向上する。酸素吸蔵作用により、Ni酸化に対する抵抗が向上し、集電層の電子伝導性の低下が抑制される。その結果、オーミック抵抗が低下する。
具体的には、アノードの組成を最適化すると、オーミック抵抗は、0.12Ω・cm以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、オーミック抵抗は、0.11Ω・cm以下となる。
「反応抵抗」とは、燃料電池の内部抵抗の内、化学反応(電極反応)の速度限界による抵抗成分をいう。YCZを集電層に用いると、オーミック抵抗だけでなく、反応抵抗も低下する。
具体的には、アノードの組成を最適化すると、反応抵抗は、0.12Ω・cm以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、反応抵抗は、0.1Ω・cm以下となる。
本発明の第1の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法は、
(a)Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する拡散層成形体作製工程と、
(b)拡散層成形体の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する活性層成形体形作製工程と、
(c)得られた積層体を焼結させる焼結工程と、
(d)拡散層/活性層からなる焼結体の活性層が形成されていない面にCZ粒子を含むスラリーを含浸させ、拡散層に含まれるYSZとCZとを固相反応させることにより、YCZを生成させる集電層形成工程と、
(e)得られた焼結体を還元処理する還元工程と、
を備えている。
まず、Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する(拡散層成形体作製工程)。
例えば、電解質粒子(A)の原料としては、
(a)目的とする組成を有するYSZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末と、Y2O3粉末との混合物
などがある。
Ni粒子(A)の原料としては、例えば、NiO粉末などがある。
(a)原料混合物(A)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを複数枚積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(A)を金型でプレス成形する方法、
などがある。
次に、拡散層成形体の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する(活性層成形体作製工程)。
(a)目的とする組成を有するYSZ粉末若しくはYCZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたYSZ粉末と、CeO2粉末及び/又はCZ粉末との混合物
(c)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末とY2O3粉末との混合物、若しくは、ZrO2粉末とY2O3粉末とCeO2粉末との混合物
などがある。
Ni粒子(C)の原料の詳細については、Ni粒子(A)の原料と同様であるので、説明を省略する。
(a)原料混合物(C)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを拡散層成形体の上に積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(C)を含むスラリーを作製し、拡散層成形体の表面にスラリーをスクリーン印刷する方法、
などがある。
次に、得られた積層体を焼結させる(焼結工程)。焼結条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。焼結は、通常、大気雰囲気下において、1000℃~1500℃で1時間~5時間行うのが好ましい。
原料混合物中に2種以上の酸化物が含まれている場合、焼結中に固相反応が進行し、所定の組成を有する固溶体が生成する。また、原料混合物中に造孔材が含まれている場合、焼結時に造孔材が消失し、焼結体内に気孔が形成される。
次に、拡散層/活性層からなる焼結体の活性層が形成されていない面にCZ粒子を含むスラリーを含浸させる。次いで、これを所定温度に加熱する。これにより、拡散層に含まれるYSZとCZとが固相反応し、YCZが生成する。固相反応の条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。固相反応は、通常、大気雰囲気下において、500℃~1000℃で1時間~10時間行うのが好ましい。
次に、得られた焼結体を還元処理する(還元工程)。これにより、本発明に係るアノードが得られる。還元処理は、焼結体中に含まれるNiO粒子をNi粒子に還元するために行われる。還元条件は、特に限定されるものではなく、アノード、電解質、及びカソードの組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。
なお、固体酸化物形燃料電池は、後述するように、アノード/電解質/反応防止層/カソードの接合体からなる。アノードの還元は、通常、各層を接合した後に行われる。
本発明の第2の実施の形態に係る固体酸化物形燃料電池用アノードの製造方法は、
(a)Ni粒子(A)、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する拡散層成形体作製工程と、
(b)拡散層成形体の一方の表面に、Ni粒子(C)、及び、電解質粒子(C)の原料を含む原料混合物(C)を用いて活性層成形体を形成する活性層成形体形作製工程と、
(c)拡散層成形体の他方の表面に、Ni粒子(B)、及び、電解質粒子(B)の原料を含む原料混合物(B)を用いて集電層成形体を形成する集電層成形体形作製工程と、
(d)得られた積層体を焼結させる焼結工程と、
(e)得られた焼結体を還元処理する還元工程と、
を備えている。
図1に、YCZをアノードの集電層に用いた固体酸化物形燃料電池の模式図を示す。
図1において、固体酸化物形燃料電池(SOFC)10は、
電解質12と、
電解質12の一方の面に接合されたアノード14と、
電解質12の他方の面に接合されたカソード16と、
電解質12とカソード16との間に挿入された反応防止層18と
を備えている。
例えば、電解質12には、YSZなどを用いることができる。また、カソード16には、(La,Sr)CoO3(LSC)、(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)などを用いることができる。
反応防止層18は、電解質12とカソード16とが直接、接触することにより生じる反応を防止するための層であり、必要に応じて挿入される。例えば、電解質12がYSZであり、カソード16がLSCである場合、反応防止層18には、Gd添加CeO2(GDC)を用いるのが好ましい。
図2に、Ni-YSZサーメットを用いた従来のアノードの模式図を示す。アノードがNi-YSZサーメットからなるSOFCにおいて、アノードにH2ガスを供給し、カソードに空気を供給すると、カソード側からアノード側に向かってO2-が拡散する。その結果、アノード表面において次の式(4)の反応が進行する。
H2+O2- → H2O+2e- …(4)
[1. セルの作製]
[1.1. 実施例1~4]
[1.1.1. SOFCセルの作製]
公知の方法を用いて、アノードの拡散層がNi-YSZサーメットからなるSOFCセルを作製した。
エタノール中に濃度10wt%のCZ粒子が分散しているCZスラリーを調製した。次いで、SOFCセルのアノードの拡散層表面にCZスラリーを含浸させた。さらに、SOFCセルを100℃で乾燥させた後、大気中、800℃で焼成した。
(a)5mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ0595)(実施例1)、
(b)9mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ0991)(実施例2)、
(c)25mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ2575)(実施例3)、又は、
(d)50mol%CeO2-ZrO2粒子(CZ5050)(実施例4)、
を用いた。
実施例1で得られたSOFCセル(CZスラリー未添加)をそのまま試験に供した。
[2.1. EPMA分析]
アノードの断面のEPMA分析を行った。
[2.2. オーミック抵抗及び反応抵抗]
インピーダンス振幅:100mV、周波数範囲:0.3MHz~0.1Hzの条件下で、SOFCセルのインピーダンスを測定した。得られたインピーダンスから、セル全抵抗(Ω・cm)を算出した。さらに、セル全抵抗(Ω・cm)から、オーミック抵抗(Ω・cm)と反応抵抗(Ω・cm)とを算出した。
SOFCセルのアノード及びカソードに、それぞれ、燃料及び酸化剤を供給し、発電を行った。燃料には、100%水素を用い、水素流量は200cc/minとした。酸化剤には、空気を用い、空気流量は500cc/minとした。セル温度は、700℃とした。セル電圧:0.8Vの時の電流値から、発電出力を算出した。
[3.1. EPMA分析]
図4(A)に、アノード(実施例3)のSEM像を示す。図4(B)に、アノード(実施例3)のCeマッピング結果(EPMA分析)を示す。図4より、上記方法によって、拡散層内に最大10μmの集電層が形成されていることが分かった。
表1に、発電出力、反応抵抗、及びオーミック抵抗を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例1~4の発電出力は、比較例1に比べて1.2倍以上向上した。
(2)発電時の反応抵抗及びオーミック抵抗は、いずれも、CZ添加により低減した。
Claims (9)
- 以下の構成を備えた固体酸化物形燃料電池用アノード。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の集電体側表面に形成された集電層と、
前記拡散層の電解質側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
イットリア安定化ジルコニアからなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記集電層は、
Ni粒子(B)と、
Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
(4)前記活性層は、
Ni粒子(C)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(C)と
を含むサーメット(C)からなる。 - 前記電解質粒子(B)は、次の式(2)で表される組成を有する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
YxCeyZr1-x-yO2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。 - 前記電解質粒子(B)は、粒子内部におけるZrに対するCeの平均モル濃度比(Ce/Zr比)が0.001以上0.2以下である請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 前記集電層は、CeO2-ZrO2固溶体(CZ)からなるCZ粒子をさらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 前記集電層は、前記Ni粒子(B)の含有量が30wt%以上70wt%以下である請求項1から4までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- オーミック抵抗が0.12Ω・cm未満である請求項1から5までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 反応抵抗が0.12Ω・cm未満である請求項1から6までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 前記電解質粒子(A)は、3mol%以上15mol%以下のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニアからなり、
前記拡散層に含まれる前記Ni粒子(A)の含有量は、30wt%以上70wt%以下である
請求項1から7までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。 - 前記電解質粒子(C)は、
(a)3mol%以上15mol%以下のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア、又は、
(b)次の式(3)を満たすYCZからなり、
前記活性層に含まれる前記Ni粒子(C)の含有量は、30wt%以上70wt%以下である
請求項1から8までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
Yx’Cey'Zr1-x'-y'O2-δ' …(3)
但し、
0<x'≦0.30、
0<y'≦0.20、
δ'は、電気的中性が保たれる値。
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