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JP6979165B2 - 水性インクジェットインク組成物及びインクジェット記録装置 - Google Patents

水性インクジェットインク組成物及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、水性インクジェットインク組成物及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、色材に顔料を用いるインクジェットインクにおいて、発色性を確保するために顔料濃度を向上させることについて種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、高い画像濃度と優れた耐擦過性、耐水性及び耐マーカー性を備えた画像を与え、且つ、インクジェット記録に用いたときの記録ヘッドからの間欠吐出安定性にも優れ、更に、インクジェットヘッドにおける吐出口面へのインクの増粘物の付着による印字よれ、吐出不良の発生を抑えることのできるインクジェット記録用に好適な水性インク組成物を提供することを目的として、着色剤を内包している樹脂微粒子と顔料微粒子と多価アルコールとを含有している水性インク組成物であって、更に下記イミダゾリジノン化合物又はプロピレン尿素を含むものが開示されている。
特開2001−164158号公報
一般的に、発色性を向上させるために顔料濃度を高くすると、十分な間欠印字性が得られないという問題が生じ得る。間欠印字性の低下を解消するためには頻繁なフラッシングが必要になるが、頻繁にフラッシングを行うとその分印刷速度が低下したり、フラッシングで消費される分だけインクの消費量が増加したりするなどの問題が生じる。このような問題は、特に、任意のタイミングでのフラッシングが行えないラインヘッドを用いる場合に顕著となる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、発色性と、十分な間欠印字性とを両立することのできる水性インクジェットインク組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、顔料に対して所定量のプロピレングリコールを用いることにより上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の水性インクジェットインク組成物は、顔料と、プロピレングリコールと、水と、を含有し、20℃における粘度が3.0mm2/s以上7.5mm2/s以下であり、pHが7以上であり、前記顔料の含有量が、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、5.5質量%以上9質量%以下であり、前記プロピレングリコールの含有量が、前記顔料100質量部に対して、8質量部以上100質量部以下である。本発明の好ましい態様において、顔料のパルスNMRにより測定される比表面積は、20m2/g以上55m2/g以下であり、顔料はカーボンブラックであり、顔料は自己分散型顔料である。

本実施形態のインクジェット記録装置を示す概略図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔水性インクジェットインク組成物〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物は、顔料と、プロピレングリコールと、水と、を含有し、20℃における粘度が3.0mm2/s以上10.0mm2/s以下であり、pHが7以上であり、前記顔料の含有量が、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、5.5質量%以上9質量%以下であり、前記プロピレングリコールの含有量が、前記顔料100質量部に対して、8質量部以上100質量部以下である。
一般的に、インク組成物中で分散した状態で存在する顔料の量が多くなるほど吐出不良が生じやすくなる。特に、ノズルから溶媒が蒸発することでノズル近傍のインク組成物組成のバランスが崩れる場合には、この吐出不良が助長されやすく、結果として間欠印字性が損なわれることとなる。顔料を分散させる手法は種々知られているが、それでもなお、顔料の含有量を上げて発色性を向上させようとした場合には十分とはいえなかった。プロピレングリコールによる顔料分散性の向上、ひいては間欠印字性が向上する原因は、特に限定されないがプロピル鎖の部分(疎水部)と、2つの水酸基の部分(親水部)とを比較的に小さな分子量で有するプロピレングリコールが、水性溶媒と顔料の間の相溶性(安定性)向上に寄与するように働き、いわば分散助剤のように作用するためと考えられる。また、本発明者らの検討によれば、間欠印字性を向上可能なプロピレングリコールの使用量には一定の範囲があることが分かってきた。そこで、本実施形態においては、プロピレングリコールを顔料の含有量に対して所定量用いることにより、顔料の分散性を向上させる。
〔顔料〕
顔料としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。なお、顔料は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。下記の中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。
ブラックインクに使用されるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:2、48:5、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、上記以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
上記の顔料は、分散性顔料であってもよい。顔料の分散方法としては、たとえば、水溶性樹脂を用いて分散させる方法(樹脂分散型)、界面活性剤を用いて分散させる方法(界面活性剤分散型)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散および/または溶解可能とする方法(自己分散型)等が挙げられる。本実施形態に用いる顔料には、前記のいずれの方法も用いることができ、必要に応じて各方法を組み合わせた形態で用いることもできる。このなかでも、自己分散型顔料を用いることが好ましく、自己分散型カーボンブラックがより好ましい。このような顔料を用いることにより、自己分散型顔料、特に自己分散型カーボンブラックは被記録媒体上で凝集し発色性を向上させようとする観点から親水性基を減らすことが好ましいが、間欠印字性が相対的に低下する傾向にあるため、本実施形態のプロピレングリコールを用いる方法がより適するものとなる。
顔料のパルスNMRにより測定される比表面積は、好ましくは20m2/g以上55m2/g以下であり、より好ましくは22m2/g以上45m2/g以下であり、さらに好ましくは24m2/g以上35m2/g以下である。顔料のパルスNMRにより測定される比表面積が20m2/g以上であることにより、顔料粒子が凝集等により嵩高くなりすぎ、分散安定性が低下し、結果として間欠印字性が低下することを抑制できる傾向にある。また、顔料のパルスNMRにより測定される比表面積が55m2/g以下であることにより、顔料粒子が一定の大きさを有し、紙繊維に潜り込んでしまうことによる発色性低下を抑制できる傾向にある。顔料のパルスNMRにより測定される比表面積は、実施例に記載の方法により測定することができる。顔料のパルスNMRにより測定される比表面積は、顔料粒子量に関係し、比表面積が大きいことは顔料粒子が多く、比表面積が小さいことは顔料粒子が少ないということを示す。また、顔料の量を同じとした場合に比表面積が異なるということは、比表面積が大きいほうが顔料粒子が多く1つの顔料粒子径が大きいことを示し、比表面積が小さいほうが顔料粒子が少なく1つの顔料粒子径が小さいことを示すと解釈できる。顔料のパルスNMRにより測定される比表面積は、顔料粒径及び分散方法により調整することができる。
顔料の含有量は、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、5.5質量%以上9質量%以下であり、好ましくは5.5質量%以上8質量%以下である。顔料の含有量が5.5質量%以上であることにより、得られる記録物の発色がより向上する傾向にある。また、顔料の含有量が9質量%以下であることにより、間欠印字性がより向上する傾向にある。
〔プロピレングリコール〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物において、顔料に対して所定量のプロピレングリコールを用いることで、顔料含有量が多い場合においても間欠印字性が確保でき、発色性と間欠印字性の両立を図ることができる。この理由は、特に限定されないが、所定量のプロピレングリコールが顔料に対して、分散助剤のように作用するためと推察される。
プロピレングリコールの含有量は、顔料100質量部に対して、8質量部以上100質量部以下であり、好ましくは10質量部以上34質量部以下であり、好ましくは12質量部以上25質量部以下である。プロピレングリコールの含有量が8質量部以上であることにより、間欠印字性がより向上する。また、プロピレングリコールの含有量が100質量部以下であることにより、得られる記録物の発色がより向上する。
また、プロピレングリコールの含有量は、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上9質量%以下であり、より好ましくは0.6質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上7質量%以下である。プロピレングリコールの含有量が0.5質量%以上であることにより間欠印字性がより向上する傾向にある。また、プロピレングリコールの含有量が9質量%以下であることにより得られる記録物の発色がより向上する傾向にある。
〔水〕
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。
水の含有量は、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは45〜85質量%であり、より好ましくは50〜80質量%であり、さらに好ましくは55〜75質量%である。
〔樹脂〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物は、樹脂をさらに含んでもよい。樹脂は、例えば、溶媒中にポリマー成分をエマルションの形態で分散もしくは溶解させたものを用いることができる。このなかでも、エマルションの形態で分散もしくは溶解させたものが好ましい。
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン樹脂、フッ素樹脂、及び水溶性樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する単量体を組み合わせた共重合体が挙げられる。共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレン−アクリル系樹脂が挙げられる。このなかでも、スチレン−アクリル系樹脂が好ましい。
樹脂の含有量は、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上7.5質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以上5質量%以下である。
〔界面活性剤〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、水性インクジェットインク組成物の総質量に対し、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。
〔粘度〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物の20℃における粘度は、3.0mm2/s以上10.0mm2/s以下であり、好ましくは3.5mm2/s以上7.5mm2/s以下であり、より好ましくは3.5mm2/s以上5.0mm2/s以下である。水性インクジェットインク組成物の粘度が3.0mm2/s以上であることにより、ノズルからインク組成物の溶媒が揮発しにくくなり、間欠安定性がより向上する。また、水性インクジェットインク組成物の粘度が10.0mm2/s以下であることにより、ノズルから吐出されるインク滴量が増えるため、得られる画像の発色性がより向上する。なお、粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔pH〕
本実施形態の水性インクジェットインク組成物のpHは、7以上であり、7以上11以下がより好ましく、7.5以上10以下がさらに好ましく、8以上9.5以下がよりいっそう好ましい。pHが上記範囲であることにより、間欠印字性がより向上する傾向にある。pHの調整方法は特に制限されず、公知のpH調整剤等を用いて調整することができる。
〔インクジェット記録装置〕
本実施形態のインクジェット記録装置は、上記水性インクジェットインク組成物を被記録媒体上に吐出するシリアルヘッドもしくはラインヘッドを有する。水性インクジェットインク組成物を吐出する場合は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。吐出方法としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができる。このなかでもピエゾ方式が好ましい。ピエゾ方式を用いることで熱によるコゲ発生や材料に対するダメージがなく、顔料の高濃度化や多様な材料の利用が可能となる。
ここで「ラインヘッド」とは、印刷範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドをいう。ラインヘッドを担持するキャリッジの下を、被記録媒体が通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべきすべての画素にインク滴などの液滴が打たれるインクジェット記録方式である。ラインヘッドとしては、ひとつのヘッドで印刷範囲の幅以上であってもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印刷範囲の幅を超えるよう構成してもよい。色材を含有するインク組成物の付与に用いるときのラインヘッドは、一つの色について複数用いることもできる。ラインヘッドは、シリアルヘッドと比較すると任意のタイミングでのフラッシングが行いにくい。そのため、ラインヘッド用の水性インクジェットインク組成物には、より一層の間欠印字性が求められる。本実施形態の水性インクジェットインク組成物はこのようなラインヘッド用のインクとしてより好適に用いることができる。
(被記録媒体)
上記インクジェット記録方法を利用して、インク組成物が被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。上記インクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムやプレート;鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート;又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート;紙製の基材にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン等のプラスチック類のフィルムを接着(コーティング)した被記録媒体等が挙げられる。
図1は、ラインヘッドを有するインクジェット記録装置の一部を示す概略図である。図1で示すインクジェット記録装置は、送紙手段(不図示)と、インク組成物を吐出するヘッド1とを有し、ヘッド1に対して、被記録媒体Pの背面側には加熱手段2が設けられていてもよい。図1に向かって右方向より搬送された被記録媒体Pに対し、ヘッド1からインク組成物が吐出される。
液滴の吐出は、例えば、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張及び収縮させることで行われる。圧力発生室の膨張及び収縮は、例えば、圧電振動子の変形を利用して行われる。このようなヘッドでは、供給される駆動パルスに応じて圧電振動子が変形し、これにより圧力室の容積が変化し、この容積変化によって圧力室内の前処理液及びインク組成物に圧力変動が生じて、ノズル開口から液滴が吐出される。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[インク組成物用の材料]
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔色材〕
<自己分散型カーボンブラック分散液>
ファーネス法で調製したカーボンブラック原末500g(一次粒子径=18nm、BET比表面積=180m2/g、DBP吸収量=186mL/100g)を、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液5300gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に、水酸化カリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。電気透析装置を用いて液の電導度が1.0mS/cmになるまでさらに脱塩及び精製を行った。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラック分散液を得た。
<樹脂分散ピグメントレッド122分散液>
顔料としてのピグメントレッド122 15質量部に対して、分散剤としてのスチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩(重量平均分子量10000、ポリマー成分15%)30質量部及びイオン交換水55質量部を加えて十分に混合した後、この混合物をサンドミル(株式会社安川製作所製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量)とともに2時間分散した。分散後、ガラスビーズを取り除き、樹脂分散ピグメントレッド122分散液を得た。
〔溶剤〕
グリセリン
1,2−ヘキサンジオール
2−ピロリドン
トリエチレングリコール
トリメチロールプロパン
オレイン酸
プロピレングリコール
〔pH調整剤〕
水酸化カリウム
トリエタノールアミン
〔界面活性剤〕
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製)
[インク組成物の調製]
各材料を下記の表1〜2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各インク組成物を得た。なお、下記の表1〜2中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。なお、以下、便宜的に、自己分散型カーボンブラック分散液を用いたインクをブラックインク、樹脂分散ピグメントレッド122分散液を用いたインクをマゼンタインクともいう。
〔パルスNMRにより測定される比表面積の算出方法〕
作製したブラックインクを超遠心分離装置(日立工機製、製品名CS150GXII)を用いて超遠心分離を行った上澄み液(ブランク)と、超遠心分離を行わないブラックインクと、を用意して、パルスNMR装置(Xigo社製、製品名Acron Drop)を用いて、CPMGパルスシーケンス法に基づいて横緩和時間T2を測定し、顔料の比表面積を算出した。その結果を以下に示す。
自己分散型カーボンブラック:比表面積 25m2/g
〔粘度の測定方法〕
各実施例及び各比較例のインクの粘度を、20℃で、離合社製の自動粘度測定装置VMC−252を用いて、キャノン・フェンスケ逆流型粘度計で測定した。
Figure 0006979165
Figure 0006979165
〔発色性〕
上記のようにして得られた水性インクジェットインク組成物を、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、型番PX−G930)に充填し、日本製紙社製フルカラーインクジェット対応フォーム用紙「Next−IJ」紙にベタパターンを印刷した。得られたベタパターンのOD値をSpectrolino(XRite社製)を用いて測定した。OD値の測定結果に基づいて発色性を以下の評価基準で評価した。
(ブラックインクの評価基準)
A:最大OD値1.30以上
B:最大OD値1.25以上1.30未満
C:最大OD値1.20以上1.25未満
D:最大OD値1.20未満
(マゼンタインクの評価基準)
A:最大OD値1.2以上
B:最大OD値1.1以上1.2未満
C:最大OD値1.0以上1.1未満
D:最大OD値1.0未満
〔間欠印字性〕
上記のようにして得られた水性インクジェットインク組成物を、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、型番PX−G930)に充填し、0.7秒ごとに吐出回数を固定したフラッシングを17分連続で行った後の印字着弾ズレがない吐出回数を評価した。
(評価基準)
A:3回吐出のフラッシングで着弾ズレなし
B:5回吐出のフラッシングで着弾ズレなし
C:6回吐出のフラッシングで着弾ズレなし
D:6回吐出のフラッシングでも着弾ズレあり
1…ヘッド、2…加熱手段、P…被記録媒体

Claims (4)

  1. 顔料と、プロピレングリコールと、水と、を含有し、
    20℃における粘度が3.0mm2/s以上7.5mm2/s以下であり、
    pHが7以上であり、
    前記顔料の含有量が、水性インクジェットインク組成物の総量に対して、5.5質量%以上9質量%以下であり、
    前記プロピレングリコールの含有量が、前記顔料100質量部に対して、8質量部以上100質量部以下である、
    水性インクジェットインク組成物。
  2. 前記顔料のパルスNMRにより測定される比表面積が、20m2/g以上55m2/g以下である、
    請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
  3. 前記顔料が、カーボンブラックである、
    請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク組成物。
  4. 前記顔料が、自己分散型顔料である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性インクジェットインク組成物。
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