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JP6977692B2 - 前部車体構造 - Google Patents

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Description

本発明は、前部車体構造に関する。
前部車体構造として、上下方向に延びるヒンジピラーと、ヒンジピラーの上部から前方に延びるエプロンレインと、該エプロンレインに支持されたサスハウジングと、エプロンレインとヒンジピラーとの間を筋交い状に連結する筋交い状レインとを備えたものが知られている。
サスハウジングには、前輪支持用のサスペンションに備えたダンパの上端部が支持されるようになっている。車両前面視で、ダンパは、軸線が、上方に向かって車幅方向内側に傾斜した姿勢で、サスハウジングに対して取り付けられる場合があり、この場合、ダンパからの上下方向への入力荷重のうち車幅方向内側に向く成分によって、サスハウジングが車幅方向の内側に向かって下方に傾斜した方向に倒れるように変形しやすい(以下、内倒れと称する)。
特に、エンジンが縦置きされるような例えば後輪駆動車においては、サスハウジングが、ヒンジピラーに対して前方に離間して配置されている場合があり、この場合、エプロンレインが前後方向に長く構成されるため、エプロンレインによるサスハウジングの支持剛性を増大させにくいため、サスハウジングがより内倒れしやすい。
サスハウジングの内倒れを抑制するため、例えば、特許文献1には、閉断面に構成されたエプロンレインの内側に該断面を前後方向に隔てる節状の補強部材が設けられた、前部車体構造が開示されている。閉断面の内側に補強部材を設けることによって、エプロンレインの断面潰れが抑制され、これによって、エプロンレインによるサスハウジングの支持剛性を高め、サスハウジングの内倒れが抑制される。
特開2017−128228号公報
しかしながら、上記車体前部構造では、エプロンレイン自体の剛性を補強部材によって向上させ、これによってサスハウジングの内倒れを抑制するものであるが、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性をさらに向上させる観点で、サスハウジングの内倒れをさらに抑制する余地がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エプロンレインにサスハウジングが支持されており、エプロンレインをヒンジピラーに対して筋交い状に連結する筋交い状レインを備えた前部車体構造において、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性を向上させることによってサスハウジングの内倒れ変形を抑制することを課題とする。
前記課題を解決するため、本願発明は次のように構成したことを特徴とする。
本願の請求項1に記載の発明は、前部車体構造であって、
上下方向に延びるヒンジピラーと、
前記ヒンジピラーから前方に離間しているサスハウジングと、
前記ヒンジピラーの上部から前方に延びて、前後方向に直交する断面形状が閉断面に構成されており、前記サスハウジングを支持する、エプロンレインと、
前記エプロンレインの下方において、当該エプロンレインと前記ヒンジピラーとの間を筋交い状に連結するように後方に向かって下方に傾斜した方向に延びており、この延在方向に直交する断面が閉断面に構成された、筋交い状レインと、
前記前記エプロンレインの前記閉断面の内側に設けられて当該閉断面を前後方向に隔てる補強部材と
を備え、
前記筋交い状レインは、底部に、後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる筋交い状レイン底壁部を有し、前記筋交い状レイン底壁部に前記補強部材が接続されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の前部車体構造において、
前記エプロンレインは、前記サスハウジングを支持する前部エプロンレインと、この後端部と前記ヒンジピラーとを連結する後部エプロンレインとを含んでおり、
前記補強部材は、前記前部エプロンレインの後端部に設けられており、車両側面視で、前記後部エプロンレインの前部と前後方向にオーバーラップしていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の前部車体構造において、
前記エプロンレインは、上部において略水平に延びるエプロンレイン上壁部を有しており、
前記補強部材は、
上端部から後方へ延び、前記エプロンレイン上壁部に接続されている上側フランジ部と、
下端部から後方へ延び、前記筋交い状レイン底壁部に接続されている下側フランジ部と
を有していることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の前部車体構造において、
前記補強部材は、前記サスハウジングの後端部を支持していることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1〜4のいずれか1つに記載の前部車体構造において、
前記補強部材は、第1補強部材であって、
前記エプロンレインの前記閉断面の内側には、前記第1補強部材の後方に当該閉断面を前後方向に隔てる第2補強部材がさらに設けられており、
前記筋交い状レインは、頂部に、前記筋交い状レイン底壁部に対して後方上方から対向する筋交い状レイン頂壁部を有しており、
前記エプロンレインは、底部に、略水平に延びるエプロンレイン底壁部を有しており、
前記筋交い状レイン頂壁部は、前記エプロンレイン底壁部を介して前記第2補強部材の下端部と上下方向に連続していることを特徴とする。
前記の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
まず、請求項1に記載の発明によれば、補強部材が、エプロンレインの閉断面の内側から筋交い状レイン底壁部にかけて設けられている。すなわち、筋交い状レインによる剛体部分が、エプロンレインの下面において途切れることなく、エプロンレインの閉断面の内側に延びている。
補強部材によれば、エプロンレインの断面潰れが抑制されるのでエプロンレイン自体の剛性が向上すると共に、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性が向上する。よって、当該剛性が向上したエプロンレインによってサスハウジングの支持剛性が向上するので、サスハウジングの内倒れが効果的に抑制される。
また、請求項2に記載の発明によれば、補強部材によって前部エプロンレインの後端部の剛性が向上する。さらに、上記剛性が向上した前部エプロンレインの後端部と後部エプロンレインとが、補強部材を介して前後方向にオーバーラップしている。
これによって、筋交い状レインからエプロンレインにわたって上下方向に補強部材を設けることによって、エプロンレインを前部エプロンレインと後部エプロンレインとに前後に二分割して構成した場合においても、サスハウジングからヒンジピラーの間におけるエプロンレインの剛性低下が抑制される。
したがって、補強部材による筋交い状レインの剛性増大効果を発揮させつつ、エプロンレインの剛性低下が抑制されるので、サスハウジングの内倒れがより効果的に抑制される。
また、請求項3に記載の発明によれば、ヒンジピラーの前側に、エプロンレインのうちヒンジピラーから前方に延び補強部材に至る部分と、補強部材と、筋交い状レインとによって、側面視7の字状に形成された高剛性部分が構成される。これによって、エプロンレインによるサスハウジングの支持剛性がさらに向上する。
また、請求項4に記載の発明によれば、7の字状に形成された高剛性部分のうち、補強部材によって、サスハウジングの後端部が支持されているので、サスハウジングの支持剛性がさらに一層向上する。
また、請求項5に記載の発明によれば、筋交い状レインによる閉断面が、第1補強部材に加えて、第2補強部材によっても、エプロンレインによる閉断面の内側を上下方向に延びている。この結果、筋交い状レインの閉断面による高剛性部分が、エプロンレインの閉断面の内側に食い込むように構成されるので、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性がさらに増大する。これによって、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性がさらに向上すると共に、当該支持剛性が向上したエプロンレインによってサスハウジングの支持剛性がさらに向上するので、サスハウジングの内倒れがさらに効果的に抑制される。
すなわち、本発明による前部車体構造によれば、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性を向上させることによってサスハウジングの内倒れ変形を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る前部車体構造を示す右側面図。 図1の前部車体構造の斜視図。 図2のA矢視による斜視図。 図1のIV−IV線における断面図。 図2のB矢視による斜視図。 第1補強部材の正面図。 変形例に係る前部車体構造を示す、前部車体構造の要部側面図。
以下、本発明の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明では、自動車の前部車体構造を車幅方向の一方側(右側)について説明するが、他方側(左側)についても同様である。また、各図において示す、前/後、内/外、及び上/下の各方向はそれぞれ、特段の説明がある場合を除いて、車両の前後方向、車幅方向、及び上下方向の各方向を示している。
(前部車体構造の全体構成)
図1及び図2に示されるように、前部車体構造1は、車室の前方側部において上下に延びるヒンジピラー2と、ヒンジピラー2の上部に連結されて前方に延びるエプロンレイン3と、ヒンジピラー2の下部に連結されて後方に延びるサイドシル4と、エプロンレイン3をヒンジピラー2に筋交い状に連結すると共にサイドシル4の前部にも連結する筋交い状レイン5を備えている。
ヒンジピラー2は、上下方向に延びる閉断面に構成されており、フロントドア(不図示)が開閉可能に枢支されるようになっている。サイドシル4は、前後方向に延びる閉断面に構成されており、この前端部がヒンジピラー2の下端部より前方に突出している。
また、前部車体構造1は、エプロンレイン3の車幅方向の内側の下方を前後方向に延びるサイドフレーム7と、エプロンレイン3とサイドフレーム7とにわたって車幅方向に架け渡されて支持されているサスハウジング6とを備えている。サスハウジング6は、ヒンジピラー2よりも前方に離間しており、内側(下方)にフロントサスペンション(不図示)が収容されるようになっている。
サスハウジング6の後部とヒンジピラー2との間にはサイドパネル8が設けられている。サイドパネル8は、上下方向及び前後方向に延びており、エンジンルームEの車幅方向の外側端部を区画している。
筋交い状レイン5及びサスハウジング6の下方には、前輪が収容されるホイルハウス9が構成されている。ホイルハウス9の前後方向の略中間部は、サスハウジング6によって構成されている。ホイルハウス9の後部は、サイドパネル8を挟んで、車幅方向内側に位置するホイルハウスインナ後部91と、車幅方向外側に位置するホイルハウスアウタ後部92とを含み、これらがサイドパネル8の前下部に車幅方向両側からスポット溶接により接合されて構成されている。ホイルハウスアウタ後部92は、後方に向かって下方に湾曲して延びている。
(サスハウジング)
サスハウジング6は、ハウジング本体部61と、フロントサスペンションに備えたダンパ(不図示)が下方から取り付けられるサストップ部62と、上部における車幅方向の外側端部において一段低く形成されたハウジング肩部63とが、例えばアルミダイカスト法により一体的に形成されたアルミニウム合金製部材である。なお、不図示のダンパは、車両前面視で、軸線が上方に向かって車幅方向内側に傾斜した姿勢で、サストップ部に取り付けられている。
ハウジング肩部63は、サストップ部62の車幅方向外側において、前後方向に略水平に延びる内側フランジ部63aと、この車幅方向の外側端部から下方に延びる縦壁部63bと、この下端部から車幅方向外側に延びる外側フランジ部63cとを有している。外側フランジ部63cは、前方に向かって上方に傾斜した方向に湾曲して延びており、ホイルハウス9の車幅方向外側の端部を構成している。
図3は、図2のA矢視であって、サスハウジング6の後端上部を下方から見た拡大図である。図3に示されるように、ハウジング本体部61の上端後部には、上方へ台座状に膨出する台座部64が形成されている。台座部64の頂面は、車幅方向内側に向かって上方に傾斜すると共に、前方に向かって車幅方向外側に傾斜した、平面状に形成されている。
(エプロンレイン)
図1及び図2に示されるように、エプロンレイン3は、前方に位置する前部エプロンレイン30と、後方に位置する後部エプロンレイン40とに前後方向に二分割されている。なお、前部エプロンレイン30は、図1において透過状態で二点鎖線により示されており、図2において前部車体構造1から上方に取り外された状態で且つ一部透過した状態で示されている。
前部エプロンレイン30は、サスハウジング6のハウジング肩部63に沿って前後方向に延びている。後部エプロンレイン40は、前後方向に延びており、前部エプロンレイン30とヒンジピラー2とを前後方向に連結している。
図2に示されるように、前部エプロンレイン30は、前後方向に直交する基本断面形状が、下方に開口したハット形断面に形成されている。前部エプロンレイン30は、頂部において前後方向に略水平に延びる上面部31と、上面部31の車幅方向の外側端部から下方に延びる外側面部32と、上面部の車幅方向の内側端部から下方に延びる内側面部33とを有している。なお、上面部31は本発明におけるエプロンレイン上壁部を構成している。
外側面部32には、下端部において車幅方向外側に延びる外側フランジ部34が形成されている。内側面部33は、後方下側部分に逆L字状に切り欠かれた切り欠き部36が形成されており、この前側の下端部において車幅方向内側に延びる内側フランジ部35が形成されている。
前部エプロンレイン30は、外側フランジ部34及び内側フランジ部35においてサスハウジング6のハウジング肩部63に上方から接合されており、後側の切り欠き部36においてサイドパネル8に車幅方向外側から接合されている。
具体的には、前部エプロンレイン30は、外側フランジ部34においてハウジング肩部63の外側フランジ部63cに上方から接合されており、内側フランジ部35においてハウジング肩部63の内側フランジ部63aに上方から接合されており、切り欠き部36においてサイドパネル8の前側部分に車幅方向内側から接合されている。したがって、前部エプロンレイン30は、サスハウジング6及びサイドパネル8と共に前後方向に延びる矩形状の閉断面部S1(図1参照)を構成している。
なお、前部エプロンレイン30の外側面部32には、後縁部の下側よりの部分であって下端部を除く部分にコ字状に後方に切り欠かれた切り欠き部32aが形成されている。換言すれば、前部エプロンレイン30の外側面部32は、後縁部の下端部は切り欠かれておらず、切り欠き部32aよりも後方に突出した突出部32bが形成されている。
なお、前部エプロンレイン30の後端部には第1補強部材70が設けられている。閉断面部S1は、第1補強部材70によって、前後方向に隔てられており、上下方向及び車幅方向における断面潰れが抑制されるようになっている。
ここで、サスハウジング6は、アルミニウム合金製部材である一方で、これに接合される他部材は鋼板製部材であるので、これらの間の接合にはリベットによる接合(例えばSPR:セルフピアスリベット)が用いられている。また、サスハウジング6以外の部材は、鋼板をプレス成形して構成されており、これらの鋼板製部材間の接合にはスポット溶接が用いられている。
図4に示されるように、後部エプロンレイン40は、前後方向に直交する断面形状が、車幅方向内側に開口したハット形断面に形成されている。後部エプロンレイン40は、前後方向に略水平に延びる上下一対の上面部41及び下面部42と、これらの車幅方向外側の端部を上下方向に接続する外側面部43とを有している。上面部41には、車幅方向の内側端部から上方に延びる上側フランジ部44が形成されている。下面部42には、車幅方向の内側端部から下方に延びる下側フランジ部45が形成されている。なお、下面部42は、本発明におけるエプロンレイン底壁部を構成している。
図3に示されるように、後部エプロンレイン40は、前部エプロンレイン30の後端部に前後方向にオーバーラップするように外側から接合されている。具体的には、後部エプロンレイン40は、上面部41の前端部において前部エプロンレイン30の上面部31の後端部に上方からスポット溶接により接合されており、外側面部43の前端部において前部エプロンレイン30の外側面部32の後端部に車幅方向外側からスポット溶接により接合されている。
前部エプロンレイン30の外側面部32は、後部エプロンレイン40の外側面部43よりも上下方向に長く、切り欠き部32aに後部エプロンレイン40の下面部42が位置している。これによって、後部エプロンレイン40の外側面部43を、前部エプロンレイン30の外側面部32の車幅方向外側に配置しつつ、前部エプロンレイン30の外側面部32と後部エプロンレイン40の下面部42との干渉が回避されている。
図4に示されるように、後部エプロンレイン40は、上下一対の上側フランジ部45及び下側フランジ部46においてサイドパネル8に車幅方向外側からスポット溶接により接合されている。したがって、後部エプロンレイン40は、サイドパネル8と共に前後方向に延びる矩形状の閉断面部S2を構成しており、該閉断面部S2は、前部エプロンレイン30による閉断面部S1に対して前後方向にオーバーラップしつつ連続している。
図1に示されるように、後部エプロンレイン40の前後方向の途中部分には第2補強部材80が設けられている。閉断面部S2は、第2補強部材80によって前後方向に隔てられており、上下方向及び車幅方向における断面潰れが抑制されるようになっている。
(筋交い状レイン)
図1及び図2に示されるように、筋交い状レイン5は、ホイルハウスアウタ後部92と筋交い状部材50とを含んでいる。筋交い状部材50は、後方に向かって下方に傾斜した方向に延びている。図4に示されるように、筋交い状部材50は、ホイルハウスアウタ後部92に対して後方上方から対向しており、車幅方向に幅を有して後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる後面部51と、後面部51の車幅方向の外側端部から前方に向かって下方に傾斜した方向に延びる外側面部52と、を有するL字状断面に形成されている。後面部51は、本発明における筋交い状レイン頂壁部を構成している。
後面部51には、車幅方向の内側端部から後方に向かって上方に傾斜した方向に延びる後側フランジ部53と、上端部から前方へ延びる上側フランジ部54と、が形成されている。外側面部52には、前方上方に傾斜した方向に延びる前縁部から車幅方向外側に延びており、ホイルハウスアウタ後部92に沿う前側フランジ部55が形成されている。
筋交い状部材50は、後側フランジ部53においてサイドパネル8に車幅方向内側から接合されており、前側フランジ部55においてホイルハウスアウタ後部92の車幅方向の外側端部に後方から接合されている。
なお、筋交い状部材50の上側フランジ部54は、後部エプロンレイン40の下面部42に下方からスポット溶接により接合されている。また、筋交い状部材50の外側面部52は、上端部において後部エプロンレイン40の外側面部43の前側下部に車幅方向外側からスポット溶接により接合されており、後端下部においてヒンジピラー2の前端下部とサイドシル4の前端上部とに車幅方向外側からスポット溶接により接合されている。
図1及び図4に示されるように、ホイルハウスアウタ後部92は、サスハウジング6に対して後方に離間しており、サスハウジング6の外側フランジ部63cの延在方向に沿って、後方に向かって下方に湾曲した方向に延びており、本発明における筋交い状レイン底壁部を構成している。ホイルハウスアウタ後部92の車幅方向の内側端部には、前方若しくは前方下方に延びるフランジ部92aが形成されている。ホイルハウスアウタ後部92は、フランジ部92aにおいてサイドパネル8に車幅方向外側からスポット溶接により接合されている。
したがって、筋交い状レイン5は、筋交い状部材50、ホイルハウスアウタ後部92、及びサイドパネル8によって、後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる閉断面部S3に構成されている。
(第1補強部材)
図5は、図2のB矢視における、第1補強部材70の周辺を車幅方向の内側から見た拡大図であって、サイドパネル8及び前部エプロンレイン30が省略されている。図5に示されるように、第1補強部材70は、車両側面視で後方に開口したコ字状に形成されており、前後方向に対向する前面部71と、この上端部から後方に延びる上面部72と、前面部71の下端部から後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる下面部73とを有している。
また、第1補強部材70は、車幅方向の内側端部からコ字状断面の内側に向かって後方若しくは上下方向に延びる内側フランジ部74と、車幅方向の外側端部からコ字状断面の内側に向かって後方若しくは上下方向に延びる外側フランジ部75とを、さらに有している。
図6に示されるように、第1補強部材70は、前面部71と下面部73との間の屈曲部のうち車幅方向の内側より部分に、後方に向かって面取り状に凹設されてなる凹設部76が、さらに形成されている。凹設部76は、車幅方向内側に向かって上方に傾斜すると共に、前方に向かって車幅方向外側に傾斜した、平面状に形成されている。
前面部71には、前後方向に貫通する開口部71aが形成されている。開口部71aは上下方向に細長い楕円状に形成されており、この孔縁部は、後方に向かってバーリング状に切り起こされている。これにより前面部71の剛性が高められている。
図1及び図2に示されるように、第1補強部材70は、上面部72において前部エプロンレイン30の上面部31の後端部に下方からスポット溶接により接合されており、外側フランジ部75において前部エプロンレイン30の外側面部32の後端部に車幅方向内側からスポット溶接により接合されており、内側フランジ部74においてサイドパネル8に車幅方向外側からスポット溶接により接合されている。
なお、第1補強部材70の外側フランジ部75の下端部は、前部エプロンレイン30の外側面部32の後縁部における下端部に形成された突出部32bにスポット溶接によって接合されている。
図5に示されるように、車両側面視で、第1補強部材70の上面部72及び下面部73は、後部エプロンレイン40の前部に対して前後方向にオーバーラップしている。
図3に示されるように、第1補強部材70は、下面部73の後端部においてホイルハウスアウタ後部92の上端部に上方からスポット溶接により接合されている。すなわち、第1補強部材70の下面部73は、サスハウジング6とホイルハウスアウタ後部92との間において、ホイルハウス9の外側端部を構成している。
図1に示されるように、第1補強部材70を介して、前部エプロンレイン30の上面部31とホイルハウスアウタ後部92とが上下方向に連結されている。これによって、前部エプロンレイン30の後部と、後部エプロンレイン40と、第1補強部材70と、筋交い状レイン5とによって、車両側面視で7の字状に構成された高剛性部分が構成されている。
さらに、図5に示されるように、第1補強部材70は、凹設部76においてサスハウジング6の台座部64にリベットにより接合されている。上述したように凹設部76及び台座部64は、車幅方向内側に向かって上方に傾斜した方向に傾斜しているので、これに直交する方向、すなわち車幅方向内側に向かって下方に傾斜した接合方向に、サスハウジング6が凹設部76に接合されている。
したがって、サスハウジングは、7の字状に構成された剛性の高い部分のうちより剛性の高い第1補強部材70に接合されて支持されている。さらに、凹設部76は、第1補強部材70の屈曲部に面取り状に形成されているのでより剛性が高く、ここにサスハウジング6は、サスハウジングの内倒れ方向(すなわち車幅方向内側に向かって下方に傾斜した方向)に略沿う方向に接合されている。これによって、サスハウジング6の内倒れが効果的に抑制されるようになっている。
(第2補強部材)
図5に示されるように、第2補強部材80は、第1補強部材70よりも後方に位置しており、後部エプロンレイン40による閉断面部S2の内側を前後方向に隔てる隔壁部81と、この上端部及び下端部からそれぞれ前方に延びる上側フランジ部82及び下側フランジ部83と、隔壁部81の車幅方向の内側端部から後方に延びる内側フランジ部84と、隔壁部81の車幅方向の外側端部から前方に延びる外側フランジ部85とを有する、節状部材として構成されている。
第2補強部材80は、上側フランジ部82において後部エプロンレイン40の上面部41に下方からスポット溶接により接合されており、下側フランジ部83において後部エプロンレイン40の下面部42に上方からスポット溶接により接合されており、内側フランジ部84においてサイドパネル8に車幅方向外側からスポット溶接により接合されており、外側フランジ部85において後部エプロンレイン40の外側面部43に車幅方向内側からスポット溶接により接合されている。
なお、第2補強部材80は、後部エプロンレイン40の下面部42を挟んで、筋交い状部材50の上端部に概ね対応して位置している。具体的には、第2補強部材80は、下側フランジ部83が筋交い部材50の上側フランジ部54に後部エプロンレイン40の下面部42を間に挟んで上下方向に連続しており、これら3枚合わせで接合されている。
したがって、図1に示されるように、筋交い状レイン5による閉断面部S3が、第1補強部材70及び第2補強部材80を介して、前部エプロンレイン30による閉断面部S1と後部エプロンレインによる閉断面部S2に対して下方から食い込むように構成されている。
上記実施形態に係る前部車体構造1によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1補強部材70が、前部エプロンレイン30による閉断面部S1の内側から筋交い状レイン5の底部に位置するホイルハウスアウタ後部92にかけて設けられている。すなわち、筋交い状レイン5による剛体部分が、後部エプロンレイン40の下面部42において途切れることなく、前部エプロンレイン30による閉断面部S1の内側に延びている。
第1補強部材70によれば、エプロンレイン3の断面潰れが抑制されるのでエプロンレイン3自体の剛性が向上すると共に、筋交い状レイン5によるエプロンレイン3の支持剛性が向上する。よって、当該支持剛性が向上したエプロンレイン3によってサスハウジング6の支持剛性が向上するので、サスハウジング6の内倒れが効果的に抑制される。
(2)第1補強部材70によって前部エプロンレイン30の後端部の剛性が向上する。さらに、上記剛性が向上した前部エプロンレイン30の後端部と後部エプロンレイン40とが、第1補強部材70を介して前後方向にオーバーラップしている。
これによって、筋交い状レイン5からエプロンレイン3にわたって上下方向に第1補強部材70を設けることによって、エプロンレイン3を前部エプロンレイン30と後部エプロンレイン40とに前後に二分割して構成した場合においても、サスハウジング6からヒンジピラー2の間におけるエプロンレイン3の剛性低下が抑制される。
したがって、第1補強部材70による筋交い状レイン5の剛性増大効果を発揮させつつ、エプロンレイン3の剛性低下が抑制されるので、サスハウジング6の内倒れがより効果的に抑制される。
(3)ヒンジピラー2の前側に、エプロンレイン3のうちヒンジピラー2から前方に延び補強部材に至る後部エプロンレイン40と、第1補強部材70と、筋交い状レイン5とによって、側面視7の字状に形成された高剛性部分が構成される。これによって、エプロンレイン3によるサスハウジング6の支持剛性がさらに向上する。
(4)7の字状に形成された高剛性部分のうち、第1補強部材70によって、サスハウジング6の後端部が支持されているので、サスハウジング6の支持剛性がさらに一層向上する。
(5)筋交い状レイン5による閉断面部S3が、第1補強部材70に加えて、第2補強部材80によっても、エプロンレイン3による閉断面部S1,S2の内側を上下方向に延びている。この結果、筋交い状レイン5の閉断面部S3による高剛性部分が、エプロンレイン3の閉断面部S1,S2の内側に食い込むように構成されるので、筋交い状レイン5によるエプロンレイン3の支持剛性がさらに増大する。これによって、筋交い状レイン5によるエプロンレイン3の支持剛性がさらに向上すると共に、当該支持剛性が向上したエプロンレイン3によってサスハウジング6の支持剛性がさらに向上するので、サスハウジング6の内倒れがさらに効果的に抑制される。
上記実施形態では、第1補強部材70は、上面部72において前部エプロンレイン30の上面部31に下方から接合されているが、これに加えて後部エプロンレイン40の上面部41の前部を、前部エプロンレイン30の上面部31に対して上方から当接させて3枚合わせで接合するようにしてもよい。これによって、エプロンレイン3の剛性がさらに向上する。
さらに、図7に示されるように、筋交い状部材50の外側面部52の上部を前方に延長することによって、前部エプロンレイン30の外側面部32に形成された突出部32bに車幅方向外側から接合してもよい。この場合に、図7においてハッチングを付して示すように、さらに第1補強部材70の外側フランジ部75と3枚合わせで接合してもよい。これによって、筋交い状レイン5によるエプロンレイン3の支持剛性がさらに向上する。
以上説明したように、本発明に係る前部車体構造によれば、筋交い状レインによるエプロンレインの支持剛性を向上させることによってサスハウジングの内倒れ変形を抑制することができるので、この種の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
1 前部車体構造
2 ヒンジピラー
3 エプロンレイン
5 筋交い状レイン
6 サスハウジング
8 サイドパネル
9 ホイルハウス
30 前部エプロンレイン
40 後部エプロンレイン
50 筋交い状部材
70 第1補強部材
80 第2補強部材
92 ホイルハウスアウタ後部

Claims (5)

  1. 上下方向に延びるヒンジピラーと、
    前記ヒンジピラーから前方に離間しているサスハウジングと、
    前記ヒンジピラーの上部から前方に延びて、前後方向に直交する断面形状が閉断面に構成されており、前記サスハウジングを支持する、エプロンレインと、
    前記エプロンレインの下方において、当該エプロンレインと前記ヒンジピラーとの間を筋交い状に連結するように後方に向かって下方に傾斜した方向に延びており、この延在方向に直交する断面が閉断面に構成された、筋交い状レインと、
    前記前記エプロンレインの前記閉断面の内側に設けられて当該閉断面を前後方向に隔てる補強部材と
    を備え、
    前記筋交い状レインは、底部に、後方に向かって下方に傾斜した方向に延びる筋交い状レイン底壁部を有し、前記筋交い状レイン底壁部に前記補強部材が接続されている前部車体構造。
  2. 前記エプロンレインは、前記サスハウジングを支持する前部エプロンレインと、この後端部と前記ヒンジピラーとを連結する後部エプロンレインとを含んでおり、
    前記補強部材は、前記前部エプロンレインの後端部に設けられており、車両側面視で、前記後部エプロンレインの前部と前後方向にオーバーラップしている、
    請求項1に記載の前部車体構造。
  3. 前記エプロンレインは、上部において略水平に延びるエプロンレイン上壁部を有しており、
    前記補強部材は、
    上端部から後方へ延び、前記エプロンレイン上壁部に接続されている上側フランジ部と、
    下端部から後方へ延び、前記筋交い状レイン底壁部に接続されている下側フランジ部と
    を有している、
    請求項2に記載の前部車体構造。
  4. 前記補強部材は、前記サスハウジングの後端部を支持している、
    請求項3に記載の前部車体構造。
  5. 前記補強部材は、第1補強部材であって、
    前記エプロンレインの前記閉断面の内側には、前記第1補強部材の後方に当該閉断面を前後方向に隔てる第2補強部材がさらに設けられており、
    前記筋交い状レインは、頂部に、前記筋交い状レイン底壁部に対して後方上方から対向する筋交い状レイン頂壁部を有しており、
    前記エプロンレインは、底部に、略水平に延びるエプロンレイン底壁部を有しており、
    前記筋交い状レイン頂壁部は、前記エプロンレイン底壁部を介して前記第2補強部材の下端部と上下方向に連続している、
    請求項1〜4のいずれか1つに記載の前部車体構造。
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