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JP6724471B2 - 電池用包装材料、その製造方法及び電池 - Google Patents

電池用包装材料、その製造方法及び電池 Download PDF

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Description

本発明は、電池用包装材料、その製造方法及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/接着層/金属層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム状の電池用包装材料では、熱融着性樹脂層同士を対向させて周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより電池素子を封止できるように形成されている。
上記のような積層体により形成された種々の包装材料において、基材層の表面にインキを印刷して、バーコード、柄、文字などを形成し、印刷した側の基材層の上に接着剤、金属箔を積層する方法により、包装材料に印字する方法(一般に中刷りと称される)が広く採用されている。しかしながら、基材層と金属層との間にこのような印刷面が存在すると、基材層と金属層との密着性が低下して、層間においてデラミネーションが生じやすくなる。特に、電池用包装材料が適用される電池には、高い安全性が要求されるため、このような中刷りによって印字する方法は、電池用包装材料においては敬遠されている。したがって、従来、電池用包装材料にバーコードなどの印字を形成する場合には、一般に、印字が形成されたシールを基材層の表面に貼り付ける方法が採用されている。
特開2008−287971号公報
しかしながら、印字が形成されたシールを基材層の表面に貼り付けると、電池用包装材料の厚みや重さが増大する。そこで、本発明者らは、電池用包装材料に対する近年の更なる薄型化や軽量化の傾向を考慮して、電池用包装材料の基材層の表面に直接インキの印刷により印字する方法を検討した。
電池用包装材料の基材層の表面に直接インキの印刷により印字する方法としては、例えば、パッド印刷(タンポ印刷とも称される)が知られている。パッド印刷とは、次のような印刷方法である。まず、印字したいパターンがエッチングされた平板の凹部にインキを流し込む。次に、当該凹部の上からシリコンパッドを押し当てて、シリコンパッドにインキを転移させる。次に、シリコンパッド表面に転移されたインキを印刷対象物に転写して、印刷対象物に印字を形成する。このようなパッド印刷は、弾性のあるシリコンパッドなどを用いてインキが印刷対象物に転写されるため、成形後の電池用包装材料の表面にも印刷しやすく、電池素子を電池用包装材料で封止した後に、電池に印字することができるという利点を有する。
ところが、本発明者らが検討したところ、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などにより形成されている従来汎用されている基材層の表面にインキを印刷すると、当該基材層表面においてインキが弾かれて、インキが定着しにくく、インキが形成されない抜け部分が生じることがあることが明らかとなった。特に、パッド印刷によって印刷した場合の印刷適性が不十分になる傾向があることが明らかとなった。
このような状況下、本発明は、電池用包装材料の外側表面におけるインキの印刷特性に優れた電池用包装材料を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該電池用包装材料の製造方法、及び当該電池用包装材料用いた電池を提供することも目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなる電池用包装材料において、基材層の外側表面の少なくとも一部に印字受容層を設けることにより、電池用包装材料の外側表面におけるインキの印刷特性に優れた電池用包装材料となることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなり、
前記基材層の外側表面の少なくとも一部に印字受容層を備える、電池用包装材料。
項2. 前記印字受容層が、前記基材層の外側表面の一部に形成されている、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記印字受容層の表面にインキが印刷されている、項1または2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記印字受容層が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または電離放射線硬化性樹脂により形成されている、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 前記基材層の前記印字受容層側の表面に表面活性化処理が施されている、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
項6. 前記印字受容層の厚みが、0.001μm以上50μm以下の範囲にある、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
項7. 前記基材層が、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂の少なくとも一方により形成されている、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
項8. 前記基材層が、撥水剤を含んでいる、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包袋体内に収容されている、電池。
項10. 少なくとも、印字受容層と、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなる電池用包装材料の製造方法であって、
前記印字受容層と、前記基材層と、前記金属層と、前記熱融着性樹脂層とを積層して積層体を得る積層工程を備えており、
前記積層工程において、前記基材層の外側表面の少なくとも一部に前記印字受容層を積層する、電池用包装材料の製造方法。
項11. 前記印字受容層の表面にインキを印刷する工程をさらに備える、項10に記載の電池用包装材料の製造方法。
本発明によれば、少なくとも、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなる電池用包装材料において、電池用包装材料の外側表面におけるインキの印刷特性に優れた電池用包装材料を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該電池用包装材料を用いた電池、及び当該電池用包装材料の製造方法を提供することもできる。
本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。 本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなり、基材層の外側表面の少なくとも一部に印字受容層を備えることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料、当該電池用包装材料の製造方法、当該電池用包装材料を用いた電池について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、印字受容層6、基材層1、金属層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、印字受容層6が最外層になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
本発明の電池用包装材料は、図2に示すように、基材層1と金属層3との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着剤層2が設けられていてもよい。また、図3に示すように、金属層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。
後述の通り、印字受容層6は、基材層1の外側表面(金属層3とは反対側の表面)の少なくとも一部に形成されていればよい。すなわち、印字受容層6は、基材層1の外側表面の全面に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は、金属層3の外側に位置しており、電池用包装材料の支持体として機能する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材を金属層3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂が挙げられる。
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
電池用包装材料の基材層には、撥水剤が含まれていてもよい。例えば、ナイロンなどのポリアミド樹脂フィルムが汎用されており、ポリアミド樹脂フィルムには、一般に、撥水剤としてエチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが含まれている。撥水剤を含むことにより、フィルムの製造の際に、溶融樹脂の水に対する濡れ性が調整され、原反フィルムの表面に適度な凹凸(表面粗さ)を形成することができ、原反フィルムの延伸後にもこの凹凸形状が残り、表面の滑り性が調整されたポリアミド樹脂フィルムとすることができる。ただし、基材層に撥水剤が含まれると、電池用包装材料に電解液などの電池素子を封入した後のベーキング工程等で熱が加えられることにより、撥水剤が基材層表面にブリードアウトし、パッド印刷等によって基材層表面にインキを印刷した場合、基材層表面においてインキが弾かれて、インキが定着しにくくなり、インキが形成されない抜け部分が生じ得る問題が生じやすい。
これに対して、本発明の電池用包装材料においては、基材層1の外側表面の少なくとも一部に印字受容層6が設けられているめ、基材層1が撥水剤を含む場合にも、電池用包装材料の外側表面は、優れたインキの印刷特性を発揮することができる。
基材層1に含まれる撥水剤の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは200ppm以上、1500ppm以下程度、より好ましくは300ppm以上1200ppm以下程度が挙げられる。なお、本発明において、基材層1に含まれる撥水剤含有量は、基材層の内部及び表面に存在する撥水剤(例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド)の合計量である。電池用包装材料の基材層1に含まれる撥水剤の含有量は、電池用包装材料から基材層1を剥がし、基材層1をヘキサフルオロイソプロピルアルコールに溶解させた後、ジメチルエタンを加えて溶媒沈殿させ、樹脂成分を分離させて撥水剤の抽出溶液を作製し、当該抽出溶液をGC−MS分析することにより定量することができる。
また、本発明の電池用包装材料においては、電池用包装材料を100℃の恒温槽中に24時間静置した後、210mm×297mmの範囲(A4サイズ)の印字受容層6表面に存在する撥水剤の量が、30μg以下であることが好ましい。電池用包装材料を100℃の恒温槽中に24時間静置するのは、電池セルの製造時におけるベーキング工程を模した処理であり、当該処理によって表面にブリードアウトするエチレンビスステアリン酸アミドの量を30μg/A4サイズ以下にすることにより、印字受容層6の表面においてインキが弾かれにくく、印刷適性がより一層優れた電池用包装材料とすることができる。
基材層1の厚さとしては、例えば、10μm以上50μm以下程度、好ましくは12μm以上30μm以下程度が挙げられる。
[印字受容層6]
印字受容層6は、基材層1の外側表面(金属層3とは反対側の表面)の少なくとも一部に設けられている。すなわち、印字受容層6は、基材層1の外側表面の全面に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。電池用包装材料の外側表面に印字する箇所が予め定められている場合には、印字受容層6は、基材層1の外側表面の一部に形成されていることが好ましい。
前述の通り、従来のように電池用包装材料の外側にシールを貼り付けるのではなく、基材層1の表面に直接印字することを本発明者らが検討したところ、基材層表面にインキを印刷すると、基材層表面においてインキが弾かれて、インキが定着しにくく、インキが形成されない抜け部分が生じることがあることが明らかとなった。特に、パッド印刷によって印刷した場合の印刷適性が不十分になる傾向があった。
これに対して、本発明の電池用包装材料においては、印字受容層6が基材層1の外側表面の少なくとも一部に設けられているため、電池用包装材料の外側表面(印字受容層6の表面)においてインキが弾かれにくく、電池用包装材料の外側に好適にインキを印刷することができる。特に、パッド印刷によってインキを印刷すると、基材層1の表面でインキが弾かれ、印刷不良が生じる場合があるが、本発明の電池用包装材料は、このような場合においても、印字受容層6が形成されているため、インキが弾かれにくく、パッド印刷によって外側表面に印字などが形成される電池用包装材料として、特に好適である。
印字受容層6を構成する素材としては、インキが弾かれにくい表面となるものであれば、特に制限されない。印字受容層6を構成する素材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂、硝化綿樹脂などが挙げられる。これらの中でも、電池用包装材料の外側表面におけるインキの印刷特性を向上させる観点から、アクリル樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、電池用包装材料の外側表面におけるインキの印刷特性を向上させる観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
また、電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂としては、公知のものを使用することができる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールやポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
印字受容層6は、無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、特に制限されないが、例えば、シリカ粒子(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、硫酸バリウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子が好ましく挙げられ、シリカ粒子が好ましい。無機粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
印字受容層6は、例えば上述の印字受容層6を構成する樹脂を含む樹脂組成物を、公知の印刷法などによって基材層1の上に塗布する方法などによって形成することができる。
印字受容層6の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上が挙げられる。また、当該厚みとしては、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは5μm以下が挙げられる。さらに、0.1μm以下、0.05μm以下であってもよい。なお、印字受容層6の厚みは、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察することによって測定することができる。
本発明の電池用包装材料においては、印字受容層6の表面にインキを好適に印刷することができる。すなわち、本発明において、電池用包装材料の外側表面(印字受容層6の表面)にインキが印刷された電池用包装材料は、印字受容層6の表面に印刷されたインキ(インキの硬化物、乾燥物など)が露出している。印刷されたインキは、例えば、バーコード、柄、文字などの印字を形成することができる。印刷に用いるインキとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができ、例えば、紫外線などを照射することにより硬化する光硬化性インキなどを用いることができる。
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層2は、基材層1と金属層3とを接着させるために、必要に応じて設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1と金属層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1と金属層3との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着剤層2は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層2を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層1と金属層3とのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着剤成分を基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、金属層3側に配される接着剤成分を金属層3との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層2は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属層3側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着剤層2の厚さについては、例えば、2μm以上50μm以下程度、好ましくは3μm以上25μm以下程度が挙げられる。
[金属層3]
本発明の電池用包装材料において、金属層3は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を形成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明において金属層3として、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
金属層3の厚さについては、例えば、10μm以上200μm以下程度、好ましくは20μm以上100μm以下程度が挙げられる。
また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくとも熱融着性樹脂層4側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層3の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)から(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)から(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1から4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1から4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)から(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500以上約100万以下、好ましくは約1000以上約2万以下が挙げられる。
また、金属層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において金属層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、リン化合物がリン換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg以上約200mg以下、好ましくは約5.0mg以上150mg以下の割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属層3の表面に塗布した後に、金属層3の温度が70℃以上200℃以下程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層3に化成処理を施す前に、予め金属層3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層3の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は滑剤を含んでいてもよい。滑剤の種類としては、特に制限されず、例えば、上記の[基材層1]の項目で例示したものが挙げられる。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、その含有量は、適宜選択すればよいが、好ましくは700ppm以上1200ppm以下程度、より好ましくは800ppm以上1100ppm以下程度が挙げられる。なお、本発明において、熱融着性樹脂層4における滑剤の含有量は、熱融着性樹脂層4の内部に存在する滑剤と、熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤との合計量である。
また、熱融着性樹脂層4の厚さとしては、適宜選定することができるが、10μm以上100μm以下程度、好ましくは15μm以上50μm以下程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、金属層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、金属層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層5の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着剤層2の場合と同様である。接着層5に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
接着層5の厚さについては、例えば、2μm以上50μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法としては、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、印字受容層6と、基材層1と、金属層3と、熱融着性樹脂層4とを積層して積層体を得る積層工程を備えており、当該積層工程において、基材層1の外側表面の少なくとも一部に印字受容層6を積層する方法が挙げられる。
本発明の電池用包装材料の製造方法の具体例としては、次の方法が挙げられる。まず、基材層1、接着剤層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3上に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。印字受容層6は、基材層1と金属層3とを積層する前に基材層1の表面に積層してもよいし、基材層1と金属層3とを積層した後に基材層1の表面に積層してもよい。また、印字受容層6は、熱融着性樹脂層4を形成した後に、基材層1の表面に積層してもよい。
次いで、積層体Aの金属層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。金属層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネーション法)等が挙げられる。なお、接着剤層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃以上200℃以下で1分間以上5分間以下が挙げられる。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、電離放射線照射処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理、UVオゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
さらに、本発明の電池用包装材料の製造方法においては、基材層1の表面にコロナ処理を施して、基材層1の表面の表面張力を向上させてもよい。
また、電池用包装材料の表面にインキを印刷する場合には、印字受容層6の表面にインキを印刷する工程を行う。印刷方法としては、特に制限されず、パッド印刷、インクジェット印刷、熱転写式印刷、レーザー印刷、インク転写式印刷、ホットスタンプ印刷などが挙げられる。これらの中でも、成型後の電池用包装材料に印刷を行う場合には、パッド印刷が好ましい。本発明の製造方法によって得られる電池用包装材料は、基材層1の外側表面の少なくとも一部に印字受容層6が形成されているため、インキが弾かれやすいパッド印刷によっても、電池用包装材料の外側表面に好適にインキの印刷を行うことができる。従って、基材層1の表面の少なくも一部に、例えば、バーコード、柄、文字などの印字を好適に形成することができる。印刷に用いられるインキとしては、上記の通りである。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。すなわち、本発明の電池は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、本発明の電池用包装材料により形成された包袋体に収容されている。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池には、上記本発明の電池用包装材料が用いられているため、電池用包装材料が成型され、電池素子が封止された後の電池の表面に好適にインキを印刷することができる。すなわち、本発明の電池は、基材層1の外側表面に印字受容層6が設けられているため、インキが弾かれやすいパッド印刷によっても、電池用包装材料の外側表面に好適にインキの印刷を行うことができ、電池の表面の少なくとも一部に、例えば、バーコード、柄、文字などの印字を好適に形成することができる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1及び比較例1
<電池用包装材料の製造>
ナイロン樹脂からなる基材層(厚さ15μm)の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ35μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着層(厚さ3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着層と基材層をドライラミネーションして、基材層/接着層/金属層の積層体を作成した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の金属層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(金属層側に配置)20μmとランダムポリプロピレン(最内層)20μmを共押し出しすることにより、金属層上に接着層/熱接着性樹脂層を積層させた。なお、ランダムポリプロピレンには、700ppmのエルカ酸アミドを滑剤として添加した。
実施例1においては、さらに得られた各積層体の基材層側の表面の一部に、アクリル樹脂を含む塗料を用いて厚さ3μmの印字受容層6(面積1925mm2)を形成して、電池用包装材料を得た。また、比較例1においては、印字受容層6を形成しなかった。
[インキの印刷特性の評価方法]
実施例1の電池用包装材料の印字受容層表面、及び比較例1の電池用包装材料の基材層表面に、それぞれ、パッド印刷を施して、インキの印刷特性を評価した。パッド印刷機は、ミシマ株式会社製SPACE PAD 6GXを使用した。また、インキは、Marabu製のTPT980ブラック/H2硬化剤/TPV溶剤を使用した。印刷したインキは、80℃×10分間硬化させた。硬化後の印刷面を光学顕微鏡で観察し、以下の基準に従ってインキの印刷特性を評価した。なお、インキの印刷は、24℃で相対湿度50%の環境下に行った。結果を表1に示す。
○:印刷の抜けが印刷柄全体の5%以内
×:印刷の抜けが印刷柄全体の5%よりも多い
実施例2,3及び比較例2,3
<電池用包装材料の製造>
撥水剤としてエチレンビスステアリン酸アミドを580ppm含むナイロン樹脂フィルムからなる基材層(厚さ15μm)の上(後述の印字受容層6またはコロナ処理面を有する場合には、これらとは反対側)に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ35μm)からなる金属層をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着層(厚さ3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着層と基材層をドライラミネーションして、基材層/接着層/金属層の積層体を作成した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の金属層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(金属層側に配置)20μmとランダムポリプロピレン(最内層)20μmを共押し出しすることにより、金属層上に接着層/熱接着性樹脂層を積層させた。なお、ランダムポリプロピレンには、700ppmのエルカ酸アミドを滑剤として添加した。
実施例2,3で使用したナイロン樹脂フィルムは、次のようにして製造したものである。まず、大日本インキ製造社製のウレタンエマルジョン「KU−400SF」100質量部に、大日本インキ製造社製のメラミン樹脂「ベッカミンAPN」6質量部を配合した後に水で希釈し濃度10質量%に調整した易接着コート液を準備した。この易接着コート液を撥水剤としてエチレンビスステアリン酸アミドを580ppm含む未延伸ナイロンフィルムの片面にオフセットグラビアコート法で塗布して乾燥した。上記の未延伸ナイロンフィルムを同時二軸延伸機に導き、MD3.3倍、TD3.0倍の倍率で同時二軸延伸を施した。続いて、温度210℃で熱処理し、TDに5%の弛緩処理を行い、厚み15μmのナイロンフィルムと印字受容層0.01μmとが積層されたナイロン樹脂フィルムを得た。一方、比較例2,3においては、印字受容層6を形成しなかったこと以外は、実施例2,3と同じナイロン樹脂フィルムを得た。
実施例2及び比較例2のナイロン樹脂フィルムの最表面側(実施例2では、印字受容層6側)には、コロナ処理を施した。コロナ処理は、高圧電源、放電電極、及び3対極ロールからなるコロナ放電装置を使用し、コロナ放電の印加電圧/放電電極間距離で表される平均電界強度を15kV/cmとし、フィルム走行速度を50m/minとして行った。
<表面ブリード物の分析>
一般的な電池セルの製造における100℃でのベーキング工程を模倣し、100℃の恒温槽中に、実施例2,3及び比較例2,3の電池用包装材料を24時間静置した。次に、電池用外装材の基材層側の表面(A4サイズ、1枚)を30mlのメタノールで洗浄し、溶液を窒素ブローにて揮発・乾燥させた。得られた乾固分にメタノールを1.5ml加えて再溶解し、GC−MS(島津製作所製 QP2010、イオン化法 :電子衝突イオン化法(EI法)、検出器 :四重極型検出器、カラム :Inert Cap 5MS)で撥水剤(エチレンビスステアリン酸アミド)の量を測定した。結果を表2に示す。なお、撥水剤の検出限界は、30μg/A4サイズである。
<濡れ性評価>
印字適正の比較検証を目的とし、JIS規格に準拠したぬれ試薬による電池用包装材料の基材層側表面のぬれ張力(mN/m)の判定を実施した。試験方法は、「JIS K6768 プラスチック-フィルム及びシート−ぬれ張力試験法」に準拠した。ナカライテスク社製のぬれ張力試験用混合液を使用し、球状の脱脂綿に含ませた試薬を、実施例2,3及び比較例2,3の電池用包装材料の基材層側の表面に5cmほど線状に塗布し、2秒後に液膜が破れるか否かで判定し、破れなかったぬれ張力(mN/m)をその基材の濡れ性とした。なお、ぬれ張力(mN/m)の測定は、24℃で相対湿度50%の環境下にて行った。結果を表2に示す。
<印字性評価>
実施例2,3及び比較例2,3の電池用包装材料の基材層側の表面にパッド印刷を行い、印字性を評価した。パッド印刷機は、ミシマ株式会社製SPACE PAD 6GXを使用し、インキはナビタス株式会社製のUVインキPJU−A黒色を使用した。また、アズワン製のハンディーUVランプ SUV−4で紫外線波長:254nmにて10cmの距離からUVを30秒間照射してインキを硬化させた。硬化後の印刷面を光学顕微鏡で観察し、以下の基準により評価した。なお、印字適性測定は24℃で相対湿度50%の環境下にて行った。結果を表2に示す。
5:印字の抜けが全く無い
4:印字の抜けが2.5%以下である
3:印字の抜けが2.5%超、5.0%以下である
2:印字の抜けが5.0%超、10%以下である
1:印字の抜けが10%超である
1 基材層
2 接着剤層
3 金属層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 印字受容層

Claims (11)

  1. 少なくとも、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなり、
    前記基材層の外側表面の少なくとも一部に印字受容層を備え
    前記印字受容層の厚みが0.1μm以下であり、
    前記印字受容層を形成する樹脂が、ウレタン樹脂又はアクリル樹脂である、電池用包装材料。
  2. 前記印字受容層が、前記基材層の外側表面の一部に形成されている、請求項1に記載の電池用包装材料。
  3. 前記印字受容層の表面にインキが印刷されている、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
  4. 前記印字受容層が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または電離放射線硬化性樹脂により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
  5. 前記基材層の前記印字受容層側の表面に表面活性化処理が施されている、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
  6. 前記印字受容層の厚みが、0.001μm以上0.05μm以下の範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
  7. 前記基材層が、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂の少なくとも一方により形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
  8. 前記基材層が、撥水剤を含んでいる、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
  9. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包袋体内に収容されている、電池。
  10. 少なくとも、印字受容層と、基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなる電池用包装材料の製造方法であって、
    前記印字受容層の厚みが0.1μm以下であり、
    前記印字受容層を形成する樹脂が、ウレタン樹脂又はアクリル樹脂であり、
    前記印字受容層と、前記基材層と、前記金属層と、前記熱融着性樹脂層とを積層して積層体を得る積層工程を備えており、
    前記積層工程において、前記基材層の外側表面の少なくとも一部に前記印字受容層を積層する、電池用包装材料の製造方法。
  11. 前記印字受容層の表面にインキを印刷する工程をさらに備える、請求項10に記載の電池用包装材料の製造方法。
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