以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る位相調整装置1の構成を示すブロック図である。位相調整装置1は、互いに位相差を有し、互いに同じ周期で周期的かつ連続的に変化する複数の周期信号として、モータM1に設けられた複数のセンサS1〜S3からU相、V相、及びW相のセンサ信号をそれぞれ取得する。センサS1〜S3は、例えばホール素子などの磁気センサであり、所定個数の磁極を有する回転子を備えたモータM1において回転軸の周りに所定角度差を互いに有して設けられる。各センサ信号は、回転子の回転に起因する磁束の変化をそれぞれ表す。各センサ信号は、例えば正弦波又は余弦波である。
センサ信号は、後に実施形態2〜4で述べるように、モータM1の回転子の回転角度を検出するために使用可能である。
前述のように、実際のセンサ信号の位相及び波形は、設計値に対する誤差を有する可能性がある。
ホール素子は通常、モータに後付けされる。モータにセンサを後付けする場合、あるセンサの位置が設計上の位置からずれると、対応するセンサ信号の位相は、その周期全体にわたって一様に設計値からずれる。これにより、このセンサ信号と他のセンサ信号との交点の位相も設計値からずれる。
センサ信号の位相とその設計値との誤差は、センサの実装の精度に依存する。例えば、機械角60度にわたる6個の磁極を有する直径20mmの回転子に、複数のセンサを配置する場合を考える。モータの機械角120度は、センサ信号の電気角360度に相当する。この場合、回転子の周上において、電気角360度の長さは20mm×π/3=20.9mmであり、電気角1度の長さは58.2μmである。58.2μm以下の精度でセンサをモータに設けることができれば、センサ信号の位相とその設計値との誤差を電気角1度以内にすることができる。しかしながら、この精度は達成することが困難であり、必然的に、センサ信号の位相は数度の誤差を含むことになる。
また、製造時における着磁のバラツキなどに起因して、回転子の複数の磁石の強さにバラツキが生じることがある。回転子の複数の磁石の強さにバラツキがあると、各センサ信号の波形は、磁石の強さの増減に応じて、その周期内の対応する角度範囲において設計上の波形からずれる。各センサ信号の波形が設計上の波形からずれた角度範囲では、各センサ信号の位相、特に各センサ信号間の交点の位相も設計値からずれる。
交点の位相が設計値に対して誤差を有すると、正確な位相情報を生成できなくなる。この問題を解決するために、図1の位相調整装置1は、入力されたU相、V相、及びW相のセンサ信号の位相又は波形が設計値に対する誤差を有していても、設計値との誤差を低減するようにセンサ信号間の交点の位相を調整する。
位相調整装置1は、信号レベル調整回路10、交点検出回路20、信号レベル検出回路30、及び制御回路40を備える。
信号レベル調整回路10は、入力されたU相、V相、及びW相のセンサ信号のうちの少なくとも1つのセンサ信号の信号レベルを調整する信号レベル調整手段である。図2は、図1の信号レベル調整回路10の構成を示す回路図である。信号レベル調整回路10は、U相信号レベル調整回路11、V相信号レベル調整回路12、及びW相信号レベル調整回路13を備える。U相信号レベル調整回路11は、演算増幅器11a、可変電圧源11b、及び抵抗R11〜R14を備える。U相信号レベル調整回路11には、U相のセンサS1からU相のセンサ信号が入力される。可変電圧源11bは、制御回路40の制御下で、可変な電圧を演算増幅器11aに印加する。U相信号レベル調整回路11は、可変電圧源11bの電圧に応じて、U相のセンサ信号の信号レベルを調整し、調整された信号U1を出力する。ただし、可変電圧源11bの電圧によっては、U相のセンサ信号の信号レベルの調整量はゼロになり、入力されたU相のセンサ信号がそのまま、調整された信号U1として出力される。V相信号レベル調整回路12及びW相信号レベル調整回路13も、U相信号レベル調整回路11と同様に構成され、調整された信号V1,W1をそれぞれ出力する。
交点検出回路20は、信号レベル調整回路10から出力されたU相、V相、及びW相のセンサ信号(すなわち、信号U1,V1,W1)間の交点の位相を検出する第1の交点検出手段である。交点検出回路20は、比較器21〜23を備える。比較器21は、信号U1,V1の大小を比較することにより信号U1,V1間の交点の位相を検出し、検出した交点の位相を示す信号UVを出力する。比較器22は、信号V1,W1の大小を比較することにより信号V1,W1間の交点の位相を検出し、検出した交点の位相を示す信号VWを出力する。比較器23は、信号W1,U1の大小を比較することにより信号W1,U1間の交点の位相を検出し、検出した交点の位相を示す信号WUを出力する。
図3は、図1の交点検出回路20の入力信号及び出力信号の関係を示す表である。交点検出回路20から出力される信号UVは、交点検出回路20に入力される信号U1,V1の大小に応じて、高値又は低値を有する。信号UVの立ち上がり及び立ち下がりが、信号U1,V1の交点の位相を示す。信号UVと同様に、信号VWは信号V1,W1の交点の位相を示し、信号WUは信号W1,U1の交点の位相を示す。
信号レベル検出回路30は、信号U1,V1,W1間の交点の信号レベルを検出する信号レベル検出手段である。信号レベル検出回路30は、交点の信号レベルを検出するために、信号UV,VW,WU(すなわち、交点検出回路20によって検出された信号U1,V1,W1間の交点の位相)を参照する。
制御回路40は、信号U1,V1,W1間の交点の信号レベルに基づいて信号レベル調整回路10を制御する制御手段である。まず、制御回路40は、U相のセンサ信号の各周期を、U相のセンサ信号と他のV相及びW相のセンサ信号との交点の位相とは異なる位相に境界を有する複数の調整区間に分割する。次に、制御回路40は、U相のセンサ信号と他のV相及びW相のセンサ信号との交点の信号レベルの目標となる目標レベルを決定する。次に、制御回路40は、複数の調整区間のそれぞれにおいて、交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるように信号レベル調整回路10によりU相のセンサ信号の信号レベルを調整する。これにより、制御回路40は、U相のセンサ信号と他のV相及びW相のセンサ信号との交点の位相を調整する。制御回路40は、U相のセンサ信号と同様に、V相及びW相のセンサ信号の信号レベルを調整する。
制御回路40は、U相、V相、及びW相のセンサ信号のそれぞれについて、当該センサ信号の各周期を、他の2つのセンサ信号間の交点の位相において境界を有するように複数の調整区間に分割する。
制御回路40は、モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置と、U相、V相、及びW相のセンサ信号の最大値及び最小値とに基づいて、目標レベルを決定する。モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置とは、例えば入力装置2を介して制御回路40に入力される。U相、V相、及びW相のセンサ信号の波形が既知であるとき、制御回路40は、上述の情報に基づいて、U相、V相、及びW相のセンサ信号間の交点が有するはずの信号レベルを推定することができる。例えば、U相、V相、及びW相のセンサ信号の波形が正弦波であり、互いに電気角120度の位相差を有する場合、それらの交点の信号レベルは、センサ信号の最大値及び最小値の中央値にセンサ信号の振幅の1/2を加算及び減算した値を有すると推定される。このように推定された信号レベルが目標レベルになる。
制御回路40は、U相、V相、及びW相のセンサ信号のそれぞれについて、かつ、複数の調整区間のそれぞれについて、センサ信号の信号レベルの調整量を決定して内部に保存し、また、決定した各調整量を各調整区間において各センサ信号に適用する。これにより、信号レベル調整回路10は、各調整区間において、2つのセンサ信号の交点の信号レベルが目標レベルに対して差を有するとき、差を減少させるように、2つのセンサ信号のうちの一方の信号レベルを調整する。
位相調整装置1は、信号U1,V1,W1を出力する。
次に、図4〜図6を参照して、センサの位置が設計上の位置からずれている場合における、センサ信号の信号レベルの調整について説明する。
図4は、図1のセンサS2の位置が設計上の位置からずれた状態を示す図である。図1のモータM1は、機械角60度にわたる6個の磁極P1〜P6を有する回転子M1aを備える。図4のような磁極P1〜P6の配置によれば、回転子M1aが1回転するとき、センサS1〜S3のそれぞれで検出される磁束は6回反転する。モータM1の機械角120度は、センサ信号の電気角360度に相当する。設計上では、センサS1〜S3は互いに機械角40度を有して配置され、対応するセンサ信号は互いに電気角120度を有するはずである。しかしながら、図4の例では、センサS2の位置は、設計上の位置から機械角Err1にわたってずれている。従って、センサS1及びS2は互いに機械角40度+Err1を有して配置され、対応するセンサ信号は互いに電気角120度+Err1’を有する。
図5は、図1の位相調整装置1において、センサS1〜S3が図4の状態にあるときにセンサS1〜S3から入力されるU相、V相、及びW相のセンサ信号を示す波形図である。以下、センサ信号の最大値及び最小値の中央値を「コモンレベル」と呼ぶ。図4のようなセンサS1〜S3の配置によれば、V相のセンサ信号の位相(太実線)は、設計上の位相(破線)から電気角Err1’にわたってずれている。U相及びW相のセンサ信号の位相は、設計上の位相に一致する。
図5によれば、V相のセンサ信号の位相がずれたことにより、コモンレベルよりも高いU相及びV相のセンサ信号間の交点uv_t(1),uv_t(2),uv_t(3)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。同様に、コモンレベルよりも高いV相及びW相のセンサ信号間の交点vw_t(1),vw_t(2),vw_t(3)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。同様に、コモンレベルよりも低いU相及びV相のセンサ信号間の交点uv_b(1),uv_b(2),uv_b(3)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。同様に、コモンレベルよりも低いV相及びW相のセンサ信号間の交点vw_b(1),vw_b(2),vw_b(3)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。一方、w相及びU相のセンサ信号間の交点wu_t(1),wu_t(2),wu_t(3),wu_b(1),wu_b(2),wu_b(3)の位相及び信号レベルは設計値に一致する。
図5において、uv_t_avgは、コモンレベルよりも高いU相及びV相のセンサ信号間の交点uv_t(1),uv_t(2),uv_t(3)の信号レベルの平均値を示す。vw_t_avgは、コモンレベルよりも高いV相及びW相のセンサ信号間の交点vw_t(1),vw_t(2),vw_t(3)の信号レベルの平均値を示す。wu_t_avgは、コモンレベルよりも高いW相及びU相のセンサ信号間の交点wu_t(1),wu_t(2),wu_t(3)の信号レベルの平均値を示す。uv_b_avgは、コモンレベルよりも低いU相及びV相のセンサ信号間の交点uv_b(1),uv_b(2),uv_b(3)の信号レベルの平均値を示す。vw_b_avgは、コモンレベルよりも低いV相及びW相のセンサ信号間の交点vw_b(1),vw_b(2),vw_b(3)の信号レベルの平均値を示す。wu_b_avgは、コモンレベルよりも低いW相及びU相のセンサ信号間の交点wu_b(1),wu_b(2),wu_b(3)の信号レベルの平均値を示す。t_avgは、コモンレベルよりも高いセンサ信号間のすべての交点の信号レベルの平均値を示す。b_avgは、コモンレベルよりも低いセンサ信号間のすべての交点の信号レベルの平均値を示す。
図5によれば、V相のセンサ信号の位相が設計値からずれたことにより、U相及びV相のセンサ信号間の交点の位相及び信号レベルが設計値からずれ、V相及びW相のセンサ信号間の交点の位相及び信号レベルが設計値からずれている。図5によれば、交点の位相のずれと交点の信号レベルのずれとが連動しているので、交点の信号レベルのずれを補正すれば交点の位相のずれも低減すると考えられる。
図6は、図1の位相調整装置1に図5のセンサ信号が入力されたとき、信号レベル調整回路10から出力される信号U1,V1,W1を示す波形図である。信号レベル調整回路10は、V相のセンサ信号の各周期を分割した複数の調整区間のそれぞれにおいて、入力されたV相のセンサ信号(破線)の信号レベルを調整し、調整された信号V1(太実線)を出力する。まず、制御回路40は、V相のセンサ信号の各周期を、他のU相及びW相のセンサ信号間の交点の位相に境界を有する複数の調整区間B1〜B6に分割する。次に、制御回路40は、V相のセンサ信号と他のU相及びW相のセンサ信号との交点の信号レベルの目標となる目標レベルを決定する。次に、制御回路40は、複数の調整区間B1〜B6のそれぞれにおいて、交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるように信号レベル調整回路10によりV相のセンサ信号の信号レベルを調整する。これにより、制御回路40は、V相のセンサ信号と他のU相及びW相のセンサ信号との交点の位相を調整する。
V相のセンサ信号と同様に、U相及びW相のセンサ信号の信号レベルを調整する。U相のセンサ信号の各周期は複数の調整区間A1〜A6に分割され、W相のセンサ信号の各周期は複数の調整区間C1〜C6に分割される。ただし、図6の例では、V相のセンサ信号の信号レベルを調整したことにより、U相及びW相のセンサ信号の信号レベルを調整することは不要になる。
2つのセンサ信号間の交点の信号レベルが目標レベルからずれているとき、制御回路40は、これら2つのセンサ信号のうち、どちらのセンサ信号の信号レベルを調整するのかを以下のように決定する。制御回路40は、まず、モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置とを参照して、U相、V相、及びW相のセンサ信号を識別する。モータM1の回転子の磁極の個数が変化すると、センサ信号間の位相差が変化する。例えば、センサが互いに機械角40度を有して配置されている場合、回転子が6個の磁極を有していればセンサ信号間の位相差は電気角120度になり、回転子が12個の磁極を有していればセンサ信号間の位相差は電気角240度になる。また、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置が変化すると、対応するセンサ信号の各相の順序が、例えば「W相→U相→V相」から「U相→V相→W相」に変化する。制御回路40は、モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置とに基づいて、センサ信号間の位相差及びセンサ信号の各相の順序を決定し、これらに基づいて、U相、V相、及びW相のセンサ信号を識別する。U相、V相、及びW相のセンサ信号を識別すると、制御回路40は、次に、ある調整区間において交点を有する2つのセンサ信号のうち、信号レベルを調整すべきセンサ信号を任意に決定する。例えば、制御回路40は、モータM1の回転子が回転し始めてから最初にコモンレベルを通過するセンサ信号を特定する。次いで、制御回路40は、各調整区間において、この特定されたセンサ信号と他のセンサ信号との交点の信号レベルが目標レベルに対して差を有するとき、差を減少させるように、特定されたセンサ信号の信号レベルを調整する。
目標レベルは、前述のように、モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置と、U相、V相、及びW相のセンサ信号の最大値及び最小値とに基づいて決定されてもよい。例えば、U相、V相、及びW相のセンサ信号の波形が正弦波であり、互いに電気角120度の位相差を有する場合、目標レベルは、コモンレベルにセンサ信号の振幅の1/2を加算及び減算した信号レベルである。
また、目標レベルは、信号レベル検出回路30によって検出された信号レベルの平均値に基づいて決定されてもよい。制御回路40は、回転子M1aの磁極の個数とモータM1におけるセンサS1〜S3の位置とに基づいて、U相、V相、及びW相のセンサ信号間の交点のうち、互いに同じ信号レベルを有するように予め決められた複数の交点を含む1つ又は複数の交点群を決定する。図5の例では、コモンレベルよりも高いセンサ信号間の交点からなる交点群の信号レベルは互いに一致するはずであり、コモンレベルよりも低いセンサ信号間の交点からなる交点群の信号レベルは互いに一致するはずである。制御回路40は、コモンレベルよりも高い交点群に含まれる交点の信号レベルであって、信号レベル検出回路30によって検出された信号レベルの平均値t_avgを、コモンレベルよりも高い交点群の目標レベルとして決定する。同様に、制御回路40は、コモンレベルよりも低い交点群に含まれる交点の信号レベルであって、信号レベル検出回路30によって検出された信号レベルの平均値b_avgを、コモンレベルよりも低い交点群の目標レベルとして決定する。
制御回路40は、同じ2つのセンサ信号間の複数の交点(例えば、vw_t(1),vw_t(2),vw_t(3))に係る調整量を、各交点を含む調整区間ごとに個別に計算してもよい。また、制御回路40は、同じ2つのセンサ信号間の複数の交点の信号レベルの平均値(例えば、vw_t_avg)を用いて、複数の調整区間にわたる共通の調整量(例えば、vw_t_avg−t_avg)を計算してもよい。
あるセンサの位置が設計上の位置からずれ、対応するセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれている場合、センサ信号の勾配が正である区間と負である区間とでは、センサ信号の信号レベルは逆向き(増大及び減少)に調整される。
図4〜図6によれば、あるセンサの位置が設計上の位置からずれ、対応するセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれている場合であっても、設計値との誤差を低減するようにセンサ信号間の交点の位相を調整することができる。
次に、図7〜図9を参照して、回転子の複数の磁石の強さにバラツキがある場合における、センサ信号の信号レベルの調整について説明する。
図7は、図1のモータM1の回転子M1aの複数の磁石の強さにバラツキがある状態を示す図である。図7の回転子M1aは、設計上では、機械角60度にわたる6個の磁極P1〜P6を有する回転子M1aを備える。しかしながら、図7の例では、右側の磁極P2の近傍の磁束密度が設計値よりも弱い。これにより、等価的に、この磁極P2の機械角が60度−Err2−Err3に減少し、その両側に隣接する磁極P1,P3の機械角が60度+Err2及び60度Err3に増大している。図7のセンサS1〜S3は互いに機械角40度を有して配置され、対応するセンサ信号は互いに電気角120度を有する。
図8は、図1の位相調整装置1において、モータM1の回転子M1aが図7の状態にあるときにセンサS1〜S3から入力されるU相、V相、及びW相のセンサ信号を示す波形図である。図7の構成によれば、センサS1〜S3の近傍を磁極P1〜P3が通過するときに対応する角度範囲において、U相、V相、W相のセンサ信号の波形(太実線)は、設計上の波形(破線)からずれている。センサS1〜S3の近傍を磁極P2が通過するときに対応する角度範囲では、U相、V相、W相のセンサ信号の振幅は減少する。センサS1〜S3の近傍を磁極P1,P3が通過するときに対応する角度範囲では、U相、V相、W相のセンサ信号の振幅は増大する。残りの角度範囲では、U相及びW相のセンサ信号の波形は、設計上の波形に一致する。U相、V相、W相のセンサ信号の波形の変形は、回転子M1aの回転に応じて周期的に現れる。
図8によれば、U相、V相、W相のセンサ信号の波形が設計上の波形からずれたことにより、コモンレベルよりも高いU相及びV相のセンサ信号間の交点のうち、交点uv_t(1),uv_t(2)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。交点uv_t(3)の位相及び信号レベルは設計値に一致する。同様に、コモンレベルよりも低いU相及びV相のセンサ信号間の交点のうち、交点uv_b(1)の位相及び信号レベルは設計値からずれる。交点uv_b(2),uv_b(3)の位相及び信号レベルは設計値に一致する。U相及びV相のセンサ信号間の交点と同様に、V相及びW相のセンサ信号間の交点、及び、W相及びU相のセンサ信号間の交点もまた設計値からずれる。
図9は、図1の位相調整装置1に図8のセンサ信号が入力されたとき、信号レベル調整回路10から出力される信号U1,V1,W1を示す波形図である。図9(a)は第1の時間区間における信号U1,V1,W1を示す図であり、図9(b)はその後の第2の時間区間における信号U1,V1,W1を示す図である。信号レベル調整回路10は、U相、V相、及びW相のセンサ信号の各周期を分割した複数の調整区間のそれぞれにおいて、入力されたセンサ信号(破線)の信号レベルを調整し、調整された信号U1,V1,W1(太実線)を出力する。制御回路40は、図4〜図6を参照して説明した場合と同様に動作する。まず、制御回路40は、V相のセンサ信号の各周期を、他のU相及びW相のセンサ信号間の交点の位相に境界を有する複数の調整区間に分割する。次に、制御回路40は、V相のセンサ信号と他のU相及びW相のセンサ信号との交点の信号レベルの目標となる目標レベルを決定する。次に、制御回路40は、複数の調整区間のそれぞれにおいて、交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるように信号レベル調整回路10によりV相のセンサ信号の信号レベルを調整する。これにより、制御回路40は、V相のセンサ信号と他のU相及びW相のセンサ信号との交点の位相を調整する。制御回路40は、V相のセンサ信号と同様に、U相及びW相のセンサ信号の信号レベルを調整する。
図7〜図9の例において、目標レベルは、図4〜図6の場合と同様に決定される。
制御回路40は、同じ2つのセンサ信号間の複数の交点(例えば、uv_t(1),uv_t(2),uv_t(3))に係る調整量を、各交点を含む調整区間ごとに個別に計算してもよい。また、制御回路40は、同じ2つのセンサ信号間の複数の交点の信号レベルの平均値(例えば、uv_t_avg)を用いて、複数の調整区間にわたる共通の調整量(例えば、uv_t_avg−t_avg)を計算してもよい。
制御回路40は、センサS1〜S3の近傍を同じ磁極が通過するときに生じるセンサ信号間の交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるための調整量を、各センサ信号について個別に計算してもよい。
ただし、センサS1〜S3の近傍を同じ磁極が通過するときに生じるU相、V相、W相のセンサ信号の波形の変形は互いに同じであり、従って、これらの変形によって生じる交点の位相及び信号レベルの設計値からのずれも互いに同じである。従って、制御回路40は、センサS1〜S3の近傍を同じ磁極が通過するときに生じるセンサ信号間の交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるために、各センサ信号の共通の調整量を計算してもよい。
図9(a)の例では、センサS2の近傍を磁極P1〜P2が通過するときに対応するV相のセンサ信号の調整区間において、交点uv_t(1)の信号レベルが目標レベルに近づくように調整量が計算される。この場合、目標レベルはuv_t_avgであり、調整量はuv_t(1)−uv_t_avgである。この調整量は、センサS1及びS3の近傍を磁極P1〜P2が通過するときに対応するU相及びW相のセンサ信号の各調整区間にも適用される。図9(a)に示すように、U相、V相、W相のセンサ信号の各調整区間に共通の調整量uv_t(1)−uv_t_avgを適用したとき、交点vw_t(2)の信号レベルには目標レベルuv_t_avgとのずれが残っている。従って、図9(b)に示すように、センサS2の近傍を磁極P2〜P3が通過するときに対応するV相のセンサ信号の調整区間において、交点vw_t(2)の信号レベルが目標レベルに近づくように調整量が計算される。この場合、目標レベルはvw_t_avgであり、調整量はvw_t(1)−vw_t_avgである。この調整量は、センサS1及びS3の近傍を磁極P1〜P2が通過するときに対応するU相及びW相のセンサ信号の各調整区間にも適用される。以後、同様の調整を繰り返す。
図9の例では、交点の信号レベルの平均値uv_t_avg,vw_t_avg,wu_t_avgを目標レベルとして用いているので、コモンレベルよりも高いセンサ信号間の交点の信号レベルは平均値t_avgに収束する。
図7〜図9の例では、各センサ信号の調整量は、互いに隣接する2つのセンサの近傍を同じ磁極が通過するときに生じるセンサ信号間の交点の信号レベルと目標レベルとの差を減少させるように計算されてもよい。従って、図7のようなセンサS1〜S3の配置では、各センサ信号の調整量は、V相及びW相のセンサ信号間の交点ではなく、U相及びV相のセンサ信号間の交点又はW相及びU相のセンサ信号間の交点の信号レベルに基づいて計算されてもよい。
回転子の複数の磁石の強さにバラツキがあり、各センサ信号の位相がその周期内の特定の角度範囲において設計値からずれている場合、センサ信号の勾配が正である区間と負である区間とでは、センサ信号の信号レベルは同じ向き(増大又は減少)に調整される。
図7〜図9によれば、回転子の複数の磁石の強さにバラツキがあり、各センサ信号の位相がその周期内の特定の角度範囲において設計値からずれている場合であっても、設計値との誤差を低減するようにセンサ信号間の交点の位相を調整することができる。
図4〜図6を参照して、あるセンサの位置が設計上の位置からずれ、対応するセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれている場合について、位相調整装置1の動作を説明した。また、図7〜図9を参照して、回転子の複数の磁石の強さにバラツキがあり、各センサ信号の位相がその周期内の特定の角度範囲において設計値からずれている場合について、位相調整装置1の動作を説明した。位相調整装置1は、各センサ信号の位相がこれらの両方の原因により設計値からずれている場合であっても同様に、設計値との誤差を低減するようにセンサ信号間の交点の位相を調整することができる。
センサ信号間の交点の位相が設計値に対する誤差を有するとき、各センサ信号とコモンレベルとの交点の位相も設計値に対する誤差を有する。図1の位相調整装置1によれば、設計値との誤差を低減するようにセンサ信号間の交点の位相を調整することにより、図7及び図9からわかるように、各センサ信号とコモンレベルとの交点の位相についても設計値との誤差を低減することができる。
図10は、本発明の実施形態1の変形例に係る位相調整装置1Aの構成を示すブロック図である。位相調整装置1Aは、信号レベル調整回路10、交点検出回路20、信号レベル検出回路30、制御回路40A、及び交点検出回路50を備える。図10の信号レベル調整回路10、交点検出回路20、及び信号レベル検出回路30は、図1の対応する構成要素と同様である。
交点検出回路50は、比較器51〜53を備える第2の交点検出手段である。比較器51〜53は、信号U1,V1,W1と所定の基準信号レベルRefとの交点の位相をそれぞれ検出し、検出した交点の位相を示す信号U2,V2,W2を出力する。基準信号レベルRefは、例えばコモンレベルである。
図11は、図10の交点検出回路50の入力信号及び出力信号の関係を示す表である。交点検出回路50から出力される信号U2は、交点検出回路50に入力される信号U1が基準信号レベルRef以上であるか否かに応じて、高値又は低値を有する。信号U2の立ち上がり及び立ち下がりが、信号U1と基準信号レベルRefの交点の位相を示す。信号U2と同様に、信号V2は信号V1と基準信号レベルRefの交点の位相を示し、信号W2は信号W1と基準信号レベルRefの交点の位相を示す。
制御回路40Aは、U相、V相、及びW相のセンサ信号のそれぞれについて、当該センサ信号の各周期を、他のセンサ信号と所定の基準信号レベルRefとの交点の位相において境界を有するように複数の調整区間に分割する。他の点では、制御回路40Aは、図1の制御回路40と同様に動作する。
センサ信号の各周期を複数の調整区間に分割することは、ある調整区間においてセンサ信号の信号レベルを調整したことにより当該調整区間に含まれる交点の位相が変化しても、その交点が同じ調整区間内に留まっているならば、任意の方法で実施可能である。
実施形態2.
図12は、本発明の実施形態2に係る位相検出装置の構成を示すブロック図である。図12の位相検出装置は、位相調整装置1、交点検出回路110、選択回路120、交点検出回路130、合成回路140、及びスイッチSWを備える。図12の位相検出装置は、モータM1に設けられたセンサS1〜S3から取得されたU相、V相、及びW相のセンサ信号の位相を検出することにより、モータM1の回転子の回転角度を検出する。
図12の位相調整装置1は、図1の位相調整装置1と同様に構成される。位相調整装置1は、信号U1,V1,W1を出力し、さらに、信号UV,VW,WUを出力する。図12では、図示の簡単化のために、図1の入力装置2を省略する。
交点検出回路110は、比較器111〜113を備える第2の交点検出手段である。交点検出回路110は、図10の交点検出回路50と同様に構成され、同様に動作する。交点検出回路110は、信号U2,V2,W2を出力する。
選択回路120及びスイッチSWは、信号U1,V1,W1間の交点の位相に境界を有する複数の検出区間のそれぞれにおいて、信号U1,V1,W1のうちで最も線形性が高いセンサ信号を選択する選択手段である。選択回路120は、交点検出回路20から出力された信号UV,VW,WUに基づいて複数の検出区間を決定し、各検出区間においてスイッチSWにより信号U1,V1,W1のうちの1つを選択し、選択された信号Xを交点検出回路130に送る。図14は、図12の選択回路120により信号U1,V1,W1を選択する条件を示す表である。
交点検出回路130は、複数の検出区間のそれぞれにおいて、選択回路120により選択されたセンサ信号と、当該検出区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する複数のしきい値信号レベルとの交点の位相を検出する第3の交点検出手段である。
図13は、図12の交点検出回路130の構成を示す回路図である。交点検出回路130は、3つの電圧源133,134,135と、互いに直列に接続された複数2N+1個の抵抗137−1〜137−N,138,138−1〜138−Nと、複数2N個の比較器131−1〜131−N,132−1〜132−Nとを備える。例えば、電圧源134の電圧VR1はコモンレベルに設定され、電圧源133の電圧VR0は信号U1,V1,W1の信号レベルの最小値に設定され、電圧源135の電圧VR2は信号U1,V1,W1の信号レベルの最大値に設定される。電圧源133,134,135及び抵抗137−1〜137−N,138,138−1〜138−Nにより、複数のしきい値信号レベルが生成される。比較器131−1〜131−N,132−1〜132−Nは、選択された信号Xの信号レベルを対応するしきい値信号レベルと比較し、比較結果を示す信号ph(N)−〜ph(1)−,ph(1)+〜ph(N)+を出力する。
複数のしきい値信号レベルは、例えば、複数の検出区間のそれぞれにおいて、理想的な波形を有する理想周期信号の1周期のうちの当該検出区間に対応する区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する理想周期信号の複数の値を有する。ここで、「理想周期信号」は、設計上の波形に対する誤差をもたない理想的な波形(例えば正弦波又は余弦波)のセンサ信号を表す。複数のしきい値信号レベルは、予め決められた理想周期信号に基づいて決められた固定値であってもよい。例えば、U相、V相、及びW相のセンサ信号の理想的な波形が正弦波であり、互いに電気角120度の位相差を有する場合、あるセンサ信号の検出区間のうちの1つは、電気角θ0〜θNの範囲を有する。この場合、複数のしきい値信号レベルは、電気角θ0〜θNの範囲に含まれる複数の異なる位相θ=θ0,θ1,θ2,…,θNにそれぞれ対応する正弦波の複数の値を有する。他の検出区間についても同様である。
図15は、図12の交点検出回路130において使用される、正規化されたしきい値信号レベルと、対応する位相との関係を示す表である。選択された信号Xが、例えば図14に示すように電気角60度(−30度〜+30度)の複数の検出区間T1〜T6に分割される場合、各検出区間には、例えば図15に示すように、電気角7.5度ごとに所定の信号レベルが割り当てられる。図15の信号レベルは、信号Xの振幅で正規化されている。図15の信号レベルをしきい値信号レベルとして用いることにより、検出区間T1〜T6をさらに細分化した位相で信号U1,V1,W1の位相を検出することができる。
交点検出回路110から出力される信号U2,V2,W2は、第1の位相情報信号phAとして合成回路140に送られる。交点検出回路20から出力される信号UV,VW,WUは、第2の位相情報信号phBとして合成回路140に送られる。交点検出回路130から出力される信号ph(N)−〜ph(1)−,ph(1)+〜ph(N)+は、第3の位相情報信号phCとして合成回路140に送られる。
合成回路140は、交点検出回路20,110,130によってそれぞれ検出された複数の交点の位相を示す位相情報信号Phsynを生成する合成手段である。合成回路140は、第1〜第3の位相情報信号phA,phB,phCを合成して位相情報信号Phsynを生成する。
図16は、図12の位相検出装置の第1の動作例を示すタイミングチャートである。信号U1,V1,W1は、信号レベル調整回路10によって調整されたU相、V相、及びW相のセンサ信号である。信号U2,V2,W2は、その立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジにおいて、信号U1,V1,W1とコモンレベルとの交点の位相を示す。信号UV,VW,WUは、その立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジにおいて、信号U1,V1,W1間の交点の位相を示す。信号UV,VW,WUは、信号U1,V1,W1間の交点の位相に境界を有する複数の検出区間T1〜T6を決定するために使用される。
図16において、太実線は、選択回路120及びスイッチSWによって選択された信号Xを示す。信号Xは、各検出区間T1〜T6において、信号U1,V1,W1のうちで最も線形性が高い信号である。検出区間T1に示す右向きの矢印は、この検出区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応するしきい値信号レベルである。信号Xにおけるほぼ直線状の区間をしきい値信号レベルと比較することで、しきい値信号レベルに対応する位相を正確に検出することができる。
図16において、選択された信号Xは、各検出区間において、sin(α),−30≦α≦30、又は、sin(α),150≦α≦210で表される波形を有する。検出区間が切り換わり、選択されたセンサ信号が変化しても、信号Xは連続している。図13の交点検出回路130から出力される信号ph(N)−〜ph(1)−,ph(1)+〜ph(N)+は、隣り合う信号が順番に切り換わるので、最終的な位相情報信号Phsynをグレイコードとみなすことできる。
図17は、図12の位相検出装置の第2の動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、合成回路140が第1〜第3の位相情報信号phA,phB,phCを合成して2相のエンコーダ信号を生成する場合について説明する。
例えばブラシレスDCモータの停止を制御する場合、回転子の回転角度を検出する必要がある。従来技術によれば、モータの回転軸にロータリーエンコーダを接続して、回転角度に応じて変化する1/4周期の位相差を有する2相パルス信号を出力し、各パルス信号のエッジ及びハイ/ロー状態に基づいて相対的な回転角度を検出することができる。しかし、従来技術のロータリーエンコーダを用いた方式は、一般的に、外周部に光学窓となるスリットを等間隔に設けた円盤と、円盤のスリットピッチの1/4間隔で配置された2個のフォトインタラプタとが使用されるので、追加部品の費用が高額になる。
図17の例では、各検出区間は電気角30度を有する。交点検出回路130は、複数の検出区間のそれぞれにおいて、選択された信号Xと、当該検出区間に含まれる4つの異なる位相にそれぞれ対応する4つのしきい値信号レベルLV(1)〜LV(4)との交点の位相を検出する。交点検出回路130は、しきい値信号レベルLV(1)〜LV(4)にそれぞれ対応する信号ph(1)〜ph(4)を第3の位相情報信号phCとして出力する。合成回路140は、第1〜第3の位相情報信号phA,phB,phCを合成して一対の信号OUT1,OUT2を出力する。ここで、合成回路140は、信号ph(1),ph(3)及び信号UV,VW,WUを合成して信号OUT1を生成し、信号ph(2),ph(4)及び信号U2,V2,W2を合成して信号OUT2を生成する。これにより、光学エンコーダを備えなくとも、互いに1/4周期の位相差を有する2相のエンコーダ信号を簡単に得ることができる。
図12の位相検出装置によれば、第1〜第3の位相情報信号phA,phB,phCを合成することにより、例えば第1の位相情報信号phAのみを用いる場合よりもさらに高い分解能で、U相、V相、及びW相のセンサ信号の位相を検出することができる。
図12の位相検出装置によれば、位相調整装置1により、設計値との誤差を低減するように、センサ信号間の交点の位相を調整して信号U1,V1,W1を出力し、各センサ信号とコモンレベルとの交点の位相を調整して信号UV,VW,WUを出力している。従って、交点検出回路130は、選択された信号Xを信号U1,V1,W1及び信号UV,VW,WUに基づいて処理することで、U相、V相、及びW相のセンサ信号の細分化された位相を高精度で検出することができる。
図13の電圧VR0,VR2は、予め設定された値であってもよく、信号U1,V1,W1の信号レベルに基づいて決められた値であってもよい。後者は、例えば、交点の信号レベル間の値であってもよく、信号U1,V1,W1のうちの選択された信号の信号レベルとそれ以外の信号の信号レベルとの平均値であってもよい。位相調整装置1が各センサ信号の信号レベルを調整区間ごとに調整しているので、信号U1,V1,W1間の交点の信号レベルもまた調整区間ごとに変化し、従って、選択された信号Xの最大値及び最小値の信号レベルは検出区間ごとに変化する。信号Xの最大値及び最小値の信号レベルに基づいて交点検出回路130に適切な電圧VR0,VR2を設定することにより、交点検出回路130は交点の位相を正確に検出することができる。
調整区間は、好ましくは、交点検出回路130による交点の位相の検出に影響を与えにくいように決定される。例えば、調整区間は、検出区間T1〜T6のそれぞれにおいて、選択された信号Xに段差が生じないように決定される。言い換えると、U相、V相、及びW相のセンサ信号のそれぞれについて、調整区間は、センサ信号間の交点から交点までの線形性が高い区間(すなわち、検出区間T1〜T6のうちの1つになる区間)の全体を含むように決定される。これにより、1つの検出区間では信号Xに一定の調整量が付加されているので、センサ信号の信号レベルを調整しても信号Xに段差が生じることなく、交点検出回路130は交点の位相を正確に検出することができる。また、このように調整区間を決定することにより、図13の電圧VR0,VR2を信号U1,V1,W1の信号レベルに基づいて決める場合、電圧VR0,VR2の望ましくない変動を低減し、交点検出回路130は交点の位相を正確に検出することができる。
図15の例は、交点検出回路130が電気角7.5度ごとの位相にそれぞれ対応する複数のしきい値信号レベルを用いる場合を示す。さらに高い分解能で位相情報信号を得るために、交点検出回路130は、例えば、電気角6度又は電気角3度ごとの位相にそれぞれ対応する複数のしきい値信号レベルを用いてもよい。
図15の例では、電気角0度の交点の位相は信号U1,V1,W1において既知であり、電気角−30度及び30度の交点の位相は信号UV,VW,WUにおいて既知である。従って、交点検出回路130の回路規模を削減するために、交点検出回路130における電気角−30度、0度、及び30度の検出を省略してもよい。
実施形態3.
実施形態2では、複数のしきい値信号レベルが、予め決められた理想周期信号に基づいて決められた固定値である場合について説明した。しかしながら、実施形態2では、あるセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれているとき(図4〜図6)、以下のような問題が生じることがある。信号レベル調整回路10によって調整された信号U1,V1,W1のうち、設計値からずれた位相を有するセンサ信号に対応する信号が選択される検出区間は、このセンサ信号の1周期のうちのこの検出区間に含まれるべき本来の区間とは異なる区間を含んでいる。このとき、センサ信号の信号レベルを調整したことにより信号U1,V1,W1の交点の信号レベルが目標レベルに一致していても、交点間の信号の波形は、この検出区間に含まれるべきセンサ信号の本来の区間の波形に対して誤差を有する。この検出区間に係る複数のしきい値信号レベルは、この検出区間に含まれるべきセンサ信号の本来の区間とは異なる区間に対して比較されるので、これらのしきい値信号レベルを用いて検出しようとしている目標の位相を検出できなくなる。従って、交点検出回路130によって検出される交点の位相に誤差が生じることになる。
実施形態3では、可変なしきい値信号レベルを用いることにより、あるセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれている場合でも、センサ信号の位相を高精度で検出することができる位相検出装置について説明する。
図18は、本発明の実施形態3に係る位相検出装置の構成を示すブロック図である。図18の位相検出装置は、図12の位相検出装置の交点検出回路130に代えて、交点検出回路130A及びしきい値調整回路150を備える。
図19は、図18の交点検出回路130Aの構成を示す回路図である。交点検出回路130Aは、電圧源133,135と、複数2N個の比較器131−1〜131−N,132−1〜132−Nと、互いに直列に接続された複数M個の抵抗139−1〜139−Mと、セレクタ回路SEL1,SEL2とを備える。セレクタ回路SEL1は、しきい値調整回路150の制御下で、抵抗139−1〜139−Mの間のあるノードに電圧源133の電圧VR0を印加し、抵抗139−1〜139−Mの間の他のノードに電圧源135の電圧VR2を印加する。これにより、しきい値信号レベルの可変な上限及び下限を設定する。電圧源133,135及び抵抗139−1〜139−Mにより、可変な値を有する複数のしきい値信号レベルが生成される。セレクタ回路SEL2は、しきい値調整回路150の制御下で、複数のしきい値信号レベルを、各比較器131−1〜131−N,132−1〜132−Nの反転入力端子に選択的に印加する。
しきい値調整回路150は、可変な値をそれぞれ有する複数のしきい値信号レベルを交点検出回路130に設定するしきい値調整手段である。制御回路40は、信号レベル調整回路10による信号レベルの調整量をしきい値調整回路150に通知する。しきい値調整回路150は、複数の検出区間のそれぞれにおいて、選択回路120により選択された信号に係る信号レベル調整回路10による信号レベルの調整量に基づいて、理想周期信号の1周期のうちの当該検出区間に対応する区間を特定する。センサ信号の波形が設計値に対する誤差をもたず、センサ信号の位相のみが設計値からずれている場合、信号レベル調整回路10による信号レベルの調整量がわかれば、センサ信号の位相の設計値に対する誤差を特定することができる。しきい値調整回路150は、検出区間に対応する理想周期信号の区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する理想周期信号の複数の値に調整量を加算した値を、複数のしきい値信号レベルとして交点検出回路130に設定する。
図20は、図18の交点検出回路130Aに設定されるしきい値信号レベルを示す波形図である。理想的なV相のセンサ信号と、U相及びW相のセンサ信号との交点により、30度〜90度の検出区間が決定され、この検出区間における30度、35度、40度、…、90度の位相を検出しようとする場合について考える。
しきい値信号レベルTh1〜Th13は、理想的な位相及び波形を有する理想的なV相のセンサ信号のθ=30度、35度、40度、…、90度にそれぞれ対応する値sin(θ+120)を表す。実際のV相のセンサ信号は、その周期全体にわたって一様に、未知の誤差aだけ設計値(理想的なV相)からずれている(sin(θ+120+a))。実際のV相のセンサ信号の信号レベルを、信号U1,V1,W1の交点の信号レベルがしきい値信号レベルTh1,Th13(すなわち、目標レベル)にそれぞれ一致するように調整することにより、調整されたV相の信号が得られる。ただし、調整されたV相の信号は、交点以外では、理想的なV相のセンサ信号に対して誤差を有する。このため、調整されたV相の信号としきい値信号レベルTh1〜Th13との交点の位相を検出しても、これらの位相は、検出しようとしている30度、35度、40度、…、90度の位相には一致しない。
実施形態3では、しきい値信号レベルTh1〜Th13に代えて、調整されたV相の信号と比較するための可変なしきい値信号レベルTh1’〜Th13’を設定する。調整されたV相の信号に係る信号レベルの調整量に基づいて、理想的なV相のセンサ信号に対する実際のV相のセンサ信号の誤差aを特定することができる。しきい値信号レベルTh1’〜Th13’は、検出しようとしている30度、35度、40度、…、90度の位相にそれぞれ対応する実際のV相のセンサ信号sin(θ+120+a)の複数の値に、信号レベルの調整量を加算した値を表す。
センサ信号の位相の設計値に対する誤差aを考慮した可変なしきい値信号レベルは、例えばテーブルとして、しきい値調整回路150に格納されていてもよい。しきい値調整回路150は、信号レベルの調整量に基づいて誤差aを特定し、誤差aに基づいてテーブルを参照することにより、可変なしきい値信号レベルを交点検出回路130に設定してもよい。また、しきい値調整回路150は、誤差a自体を計算することなく、信号レベル調整回路10による信号レベルの調整量に基づいてテーブルを参照することにより、可変なしきい値信号レベルを交点検出回路130に設定してもよい。
しきい値調整回路150に格納された可変なしきい値信号レベルは、位相検出装置の外部から書き換えられてもよい。例えば、センサ信号に高調波が重畳したときなど、センサ信号が取得される環境が変化したときに、しきい値信号レベルは書きかえられてもよい。これにより、位相検出装置の精度を向上することができる。
実施形態3に係る位相検出装置によれば、センサ信号間の交点の位相を正確に検出できるだけでなく、各検出区間における交点以外の部分の位相を正確に検出することができる。これにより、実施形態3では、あるセンサ信号の位相がその周期全体にわたって一様に設計値からずれている場合でも、センサ信号の位相を高精度で検出することができる。
実施形態4.
図21は、本発明の実施形態4に係るモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。図21のモータ駆動システムは、モータM1、センサS1〜S3、モータ制御回路160、モータ駆動回路170、及び図12の位相検出装置の各構成要素を備える。
モータ制御回路160及びモータ駆動システムは、位相検出装置によって生成された位相情報信号Phsynに基づいてモータM1を駆動する駆動手段である。モータ制御回路160は、位相情報信号Phsynに基づいてモータM1の回転位置及び速度などを検出し、検出した回転位置及び速度に応じてモータM1を制御するようにPWM信号を発生してモータ駆動回路170に送る。モータ駆動回路170は、位相情報信号phA及びPWM信号に基づいて、モータM1の回転子を回転駆動させる駆動電流を発生し、駆動電流を複数のモータコイルに選択的に流す。
モータ制御回路160、モータ駆動回路170、及び図12の位相検出装置の各構成要素は、モータM1のためのモータ駆動装置を構成する。
図22は、図21のモータ駆動回路170の構成を示す回路図である。モータ駆動回路170は、プリドライバ80及びメインドライバ90を備える。モータM1は例えばブラシレスDCモータである。モータM1は、U相、V相、及びW相のコイルを備え、これらのコイルはモータM1内でY結線されている。これらのコイルの他端は、メインドライバ90内のスイッチ素子91〜96に接続されている。スイッチ素子91〜96は、電源側に接続されたハイサイドのスイッチ素子91,93,95と、接地側に接続されたローサイドのスイッチ素子92,94,96とを含む。プリドライバ80は、制御回路81と3個の駆動増幅器82,83,84とを備える。プリドライバ80は、各相のスイッチ素子91〜96を駆動するためのスイッチ制御信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成してメインドライバ90に送る。前記スイッチ制御信号UH,UL,VH,VL,WH,WLは3つのペアをなす。制御回路81は、モータ制御回路160によって決定されたPWM信号のデューティサイクルで同期整流するモード、ローサイドのみをオンするモード、ハイサイド及びローサイドの両方をオフするモードのいずれかにモータ駆動回路170を切り換える。制御回路81は、3つのモードのいずれかにモータ駆動回路170を切り換えるために、位相情報信号phAの信号論理を参照する。
図23は、図22のモータ駆動回路170の動作を示すタイミングチャートである。図23は、各相のセンサ信号の信号論理に応じた各状態の切り換えの例を示す。これは、ブラシレスDCモータを駆動する方法として一般的な駆動方法である。
モータ制御回路160は、回転しているモータM1のできるだけ正確な位相及び位置情報に基づいて、前述のPWM信号の然るべきデューティサイクルを制御し、PWM信号をモータ駆動回路170に送る。なお、モータ制御回路160を設けず、PWM信号の代わりに駆動電圧をモータ駆動回路170に入力し、モータ駆動回路170内においては、入力された駆動電圧を一定のフレーム周期を有する三角波と比較してPWM信号を生成してもよい。
図21のモータ駆動システムでは、センサS1,S2,S3を、ブラシレスDCモータを駆動するために必要な相切り換え用のセンサと共用することができる。図21のモータ駆動システムでは、追加センサなしで、従来よりも高い分解能の位相情報信号を使用することができる。
図24は、本発明の実施形態4の変形例に係るモータ駆動システムの構成を示すブロック図である。図24のモータ駆動システムは、図21のモータ駆動システムにおけるモータM1、センサS1〜S3、モータ制御回路160以外の構成要素を、半導体集積回路180として集積化している。一般に、モータ駆動回路170は元々、半導体集積回路として集積化されている。そこに、位相調整装置1、交点検出回路110,130、選択回路120、合成回路140を組み込むことで、寸法をほとんど増大させることなく、さらなる集積化を実現することができる。さらに、光学エンコーダがなくなる分、モータ駆動システムの小型化が可能となる。
なお、半導体集積回路として集積する例としては、図24の構成に限られず、例えば、位相調整装置1、交点検出回路110,130、選択回路120、合成回路140のみを集積化してもよいし、図24の構成に加えてモータ制御回路160を集積してもよい。駆動相コイルを駆動するモータ駆動回路170は発熱源となるので、場合によってはモータ駆動回路170のみを半導体集積回路から切り離してもよい。
図21及び図24のモータ駆動システムは、図12の位相検出装置に代えて、図18の位相検出装置の各構成要素を備えてもよい。
実施形態5.
図25は、本発明の実施形態5に係る画像形成装置の構成を示す図である。前述した各実施形態に係る位相調整装置、位相検出装置、及びモータ駆動装置は、モータを備える任意の電子機器、例えば、画像形成装置に組み込まれてもよい。図25の画像形成装置は複数のモータを備え、さらに、これらのモータを駆動するために、前述した各実施形態に係る位相調整装置、位相検出装置、及びモータ駆動装置を備える。
図25に示す画像形成装置は、電子写真方式を利用したタンデム型中間転写方式の画像形成装置200である。画像形成装置200は、画像読取部250と、画像形成部260と、給紙部270と、排紙部280とを備えている。
画像形成部260は、画像形成ユニット201Y,201M,201C,201Bk、光書込ユニット206A、転写ユニット207A、ベルトクリーニング装置209、及びトナー補給容器212Bk,212C,212M,212Yを備える。画像形成ユニット201Y,201M,201C,201Bkは、感光体ドラム202Y,202M,202C,202Bk、帯電ローラ203Y,203M,203C,203Bk、現像装置204Y,204M,204C,204Bk、及びクリーニング装置205Y,205M,205C,205Bkをそれぞれ備える。クリーニング装置205Y,205M,205C,205Bkは、クリーニングブレード205a及び収納容器205b等をそれぞれ備える。転写ユニット207Aは、中間転写ベルト207、支持ローラ211a,211b、及び1次転写ローラ208Y,208M,208C,208Bkを備える。ベルトクリーニング装置209は、クリーニングブレード209a、搬送コイル209b、及びクリーニング対向ローラ209cを備える。
給紙部270は、給紙カセット217a,217b、給紙ローラ218、分離ローラ219、及び手差トレイ222を備える。給紙カセット217a,217bは用紙Pを収容する。
画像形成装置200の装置本体245は、通常搬送路229又は両面搬送路230に沿って用紙Pを搬送するための構成要素を含む。用紙Pを搬送するための構成要素は、2次転写ユニット210A、定着ユニット213、搬送ローラ対220,228a,228b,228c、レジストローラ221、給紙ローラ223、及び切替爪226a,226bを備える。2次転写ユニット210Aは、2次転写ローラ210及び2次転写部210aを備える。定着ユニット213は、定着ローラ214及び加圧ローラ215を備える。
排紙部280は、排紙ローラ対224a,224b,225、及び第2排紙トレイ241を備える。
画像形成装置200の装置本体245はさらに、制御部235、画像濃度センサ216、及び温湿度センサ242を備える。
画像形成装置200の内部には、感光体ドラム202Y,202M,202C,202Bkを駆動するためのモータ、及び給紙ローラ218を駆動するためのモータなど、さまざまなモータが設けられる。制御部235の内部には、これらのモータを駆動するために、前述した各実施形態に係る位相調整装置、位相検出装置、及びモータ駆動装置が設けられる。
図25の画像形成装置は、上述した電子写真方式の画像形成装置に限らず、例えば、プリンタ、プロッタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、複写機等、またはこれら2つ以上の機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用可能である。
前述した各実施形態に係る位相調整装置、位相検出装置、及びモータ駆動装置は、シート状のプリプレグ又は紙幣等を搬送するための搬送ローラ及びそれを駆動するモータ等を備える搬送装置に組み込まれてもよい。前述した各実施形態に係る位相調整装置、位相検出装置、及びモータ駆動装置は、画像形成装置及び搬送装置だけでなく、自動車、ロボット、アミューズメント機器など、モータを備えた他の分野の装置に適用されてもよい。
変形例.
以上の説明では、モータM1の回転子M1aは6個の磁極を有し、センサS1〜S3は、回転子M1aの回転に応じてW相、U相、V相のセンサ信号が順に発生するように配置され、各センサ信号は電気角120度の位相差を互いに有していた。しかしながら、本発明の構成はこれに限定されない。例えば、回転子M1aは10個の磁極を有し、センサS1〜S3はU相、V相、W相のセンサ信号が順に発生するように配置され、各センサ信号は電気角60度の位相差を互いに有していてもよい。本明細書で説明した原理は、各センサ信号が電気角90度以上の位相差を互いに有していれば、一般的な3相ブラシレスモータに適用可能である。
各センサ信号の波形は、正弦波に限らず、正弦波に準じた波形又は台形波に準じた波形などであってもよい。回転子M1aが回転することで発生する磁束密度は正弦波状に変化する場合が多く、従って、各センサ信号も正弦波である場合が多い。ただし、回転子M1aが回転することで発生する磁束密度及びセンサ信号は、必ずしも正確な正弦波ではなく、歪んだ正弦波であることがある。また、センサS1〜S3により検出する磁束密度がその許容値を超えるために起こる磁気飽和により、センサ信号が飽和して台形波に近い波形を有することもある。本明細書で説明した原理は、センサ信号間の交点の位相が設計値からずれたことに応じて、交点の信号レベルが設計値からずれるのであれば、任意の波形を有するセンサ信号に適用可能である。正弦波に近い信号であるほど、信号レベルの調整量を容易に計算することができる。図16の例では、電気角−60度〜+60度の区間において正弦波又はそれに近い波形の信号であれば、センサ信号間の正確な位相を検出することができる。正弦波ではなく台形波に近くても同様に、信号レベルの調整量を容易に計算することができる。
以上の説明では、各センサ信号が単一周波数の正弦波であることを前提としていたが、実際には、各センサ信号は様々な高調波成分が加算されている可能性がある。本明細書で説明した原理をそのようなセンサ信号にも適用するため、高調波成分を観測し、高調波成分を考慮した演算係数を制御回路40に通知して調整量を計算させてもよい。これにより、センサ信号間の交点の位相を調整する精度を高めることができる。
センサS1〜S3は、モータM1の複数相のコイルの転流電流を切り換えるために使用されるセンサと共用されてもよい。これにより、センサS1〜S3を新たに追加しなくてもよいので、追加部品のコストを削減することができる。
位相調整装置1は、信号レベル調整回路10の前段に、U相、V相、及びW相のセンサ信号の信号レベルを互いに均一化する増幅回路をさらに備えてもよい。センサS1,S2,S3からのU相、V相、及びW相のセンサ信号は、それらのコモンレベル又は振幅が互いに均一ではないことがある。また、各センサ信号は、電気的に非常に小さい振幅を有することがある。各センサ信号の信号レベルが互いに均一にして、かつ振幅を大きくすることにより、各センサ信号の位相をより正確に検出することができる。
位相調整装置1は、モータM1に設けられたセンサS1〜S3から取得されたセンサ信号に限らず、互いに位相差を有し、互いに同じ周期で周期的かつ連続的に変化する複数の周期信号であれば、任意の周期信号間の交点の位相を調整することができる。
モータM1の回転子の磁極の個数と、モータM1におけるセンサS1〜S3の位置とは、入力装置2を介して制御回路40に予め設定されてもよく、それに代わって、交点の信号レベルの周期性に基づいて制御回路40自体により決定されてもよい。後者の場合、入力装置2を介した設定が不要になるので、位相調整装置1の利便性が向上する。
本発明の態様に係る位相調整装置、位相検出装置、モータ駆動装置、モータ駆動システム、画像形成装置、及び搬送装置によれば、以下の構成を備えたことを特徴とする。
本発明の第1の態様に係る位相調整装置によれば、
互いに位相差を有し、互いに同じ周期で周期的かつ連続的に変化する複数の周期信号間の交点の位相を調整する位相調整装置であって、
前記交点の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
前記複数の周期信号のうちの少なくとも1つの周期信号の信号レベルを調整する信号レベル調整手段とを備え、
前記信号レベル調整手段は、前記複数の周期信号の位相に基づく複数の調整区間のそれぞれにおいて、前記複数の周期信号のうちの2つの周期信号の交点の信号レベルが目標レベルに対して差を有するとき、前記差を減少させるように、前記2つの周期信号のうちの一方の信号レベルを調整することを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る位相調整装置によれば、第1の態様に係る位相調整装置において、
前記複数の周期信号のそれぞれについて複数の調整区間が決定され、
前記複数の周期信号のうちの任意の1つの周期信号について決定された前記複数の調整区間は、前記複数の周期信号のうちの他の2つの周期信号間の交点の位相において境界を有することを特徴とする。
本発明の第3の態様に係る位相調整装置によれば、第1の態様に係る位相調整装置において、
前記複数の周期信号のそれぞれについて複数の調整区間が決定され、
前記複数の周期信号のうちの任意の1つの周期信号について決定された前記複数の調整区間は、前記複数の周期信号のうちの他の周期信号と所定の基準信号レベルとの交点の位相において境界を有することを特徴とする。
本発明の第4の態様に係る位相調整装置によれば、第1〜第3のうちの1つの態様に係る位相調整装置において、
前記複数の周期信号は、所定個数の磁極を有する回転子を備えたモータにおいて回転軸の周りに所定角度差を互いに有して設けられた複数の磁気センサからそれぞれ取得され、前記回転子の回転に起因する磁束の変化をそれぞれ表すことを特徴とする。
本発明の第5の態様に係る位相調整装置によれば、第4の態様に係る位相調整装置において、
前記目標レベルは、前記回転子の磁極の個数と、前記モータにおける前記複数の磁気センサの位置と、前記複数の周期信号の最大値及び最小値とに基づいて決定されることを特徴とする。
本発明の第6の態様に係る位相調整装置によれば、第4の態様に係る位相調整装置において、
前記複数の周期信号は、前記複数の周期信号間の交点のうち、互いに同じ信号レベルを有するように予め決められた複数の交点を含む1つ又は複数の交点群を有し、
前記目標レベルは、前記交点群に含まれる交点の信号レベルであって、前記信号レベル検出手段によって検出された信号レベルの平均値であることを特徴とする。
本発明の第7の態様に係る位相検出装置によれば、
第1〜第6の態様のうちの1つに係る位相調整装置と、
前記信号レベル調整手段から出力された前記複数の周期信号間の交点の位相を検出する第1の交点検出手段と、
前記信号レベル調整手段から出力された前記複数の周期信号と所定の基準信号レベルとの交点の位相を検出する第2の交点検出手段と、
前記信号レベル調整手段から出力された前記複数の周期信号間の交点の位相に境界を有する複数の検出区間のそれぞれにおいて、前記信号レベル調整手段から出力された前記複数の周期信号のうちで最も線形性が高い周期信号を選択する選択手段と、
前記複数の検出区間のそれぞれにおいて、前記選択手段により選択された周期信号と、当該検出区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する複数のしきい値信号レベルとの交点の位相を検出する第3の交点検出手段と、
前記第1〜第3の交点検出手段によってそれぞれ検出された複数の交点の位相を示す位相情報信号を生成する合成手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第8の態様に係る位相検出装置によれば、第7の態様に係る位相検出装置において、
前記複数のしきい値信号レベルは、前記複数の検出区間のそれぞれにおいて、理想的な波形を有する理想周期信号の1周期のうちの当該検出区間に対応する区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する前記理想周期信号の複数の値を有することを特徴とする。
本発明の第9の態様に係る位相検出装置によれば、第7の態様に係る位相検出装置において、
前記位相検出装置は、可変な値をそれぞれ有する前記複数のしきい値信号レベルを前記第3の交点検出手段に設定するしきい値調整手段をさらに備え、
前記しきい値調整手段は、
前記複数の検出区間のそれぞれにおいて、前記選択手段により選択された周期信号に係る前記信号レベル調整手段による信号レベルの調整量に基づいて、理想的な波形を有する理想周期信号の1周期のうちの当該検出区間に対応する区間を特定し、
前記検出区間に対応する前記理想周期信号の区間に含まれる複数の異なる位相にそれぞれ対応する前記理想周期信号の複数の値に前記調整量を加算した値を、前記複数のしきい値信号レベルとして前記第3の交点検出手段に設定することを特徴とする。
本発明の第10の態様に係るモータ駆動装置によれば、
所定個数の磁極を有する回転子を備えたモータを駆動するモータ駆動装置であって、
前記モータの回転軸の周りに所定角度差を互いに有して設けられた複数の磁気センサであって、前記回転子の回転に起因する磁束の変化をそれぞれ表す前記複数の周期信号を発生する複数の磁気センサと、
第7〜第9のうちの1つの態様に係る位相検出装置と、
前記位相情報信号に基づいて前記モータを駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第11の態様に係るモータ駆動システムによれば、
第10の態様に係るモータ駆動装置と、
モータとを備えることを特徴とする。
本発明の第12の態様に係る画像形成装置によれば、
第11の態様に係るモータ駆動システムを備えることを特徴とする。
本発明の第13の態様に係る搬送装置によれば、
第11の態様に係るモータ駆動システムを備えることを特徴とする。