[第1の実施形態]
本発明は、種々の方式のプリント装置、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に適用できる。本発明を適用可能な画像形成装置としてインクジェットプリント装置(以下、単にプリント装置ともいう)を用いて、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
(プリント装置)
図1に示されるプリント装置は、上下2段に配された2つの搬送ユニット70と、シート搬送部300と、プリント部400と、シート排出部500とを有する。プリント媒体にはシート1が用いられ、長尺の連続シートがロール状に巻かれた形態で搬送ユニット70に取付けられる。以下、本明細書において、連続シートがロール状に巻かれた形態を、ロールシート1ともいう。
搬送ユニット70は、取付けたロールシート1のロール状部分からシート1を引き出して供給する供給ユニットとしての機能と、プリント部400でプリントされたシート1をロール状に巻き取っていく巻取ユニットとしての機能と、を切り替え可能に有する。
以下、本明細書において、上段および下段の搬送ユニット70をいずれも供給ユニットとして使用する場合の使用形態を、第1の使用形態というものとする。また、上段および下段の搬送ユニット70のうち、一方を供給ユニットとして使用し、他方を巻取ユニットとして使用する場合の使用形態を、第2の使用形態というものとする。
(第1の使用形態)
まず、上段および下段の搬送ユニット70をいずれも供給ユニットとして使用する場合の使用形態(第1の使用形態)について説明する。
図1において、スプール部材(ロール部材)2は、ロールシート1の紙管に挿入され、搬送ユニット70の保持部に軸支される。搬送ユニット70の保持部に軸支されたスプール部材2は、ロール駆動モータ(駆動部)により回転力を付与されて、正逆両方向に回転可能である。補助機構200は、シート幅方向に複数設けられており、それぞれシート供給方向に並ぶコロ6および7を有しており、搬送ユニット70を供給ユニットとして利用する場合に、シート供給補助機構として機能する。搬送ガイド8は、搬送ユニット70から供給されてきたシート1をその表裏をガイドしつつプリント部400へ導く。
搬送ローラ10は、搬送ローラ駆動モータにより正逆両方向に回転可能である。搬送ピンチローラ11は、搬送ローラ10の回転に対して従動回転可能であり、不図示の搬送ピンチローラ離間モータにより、搬送ローラ10に対する離間状態と当接状態との間の状態の切り替え、および当接状態におけるニップ圧(押圧力)の変更が可能である。
シート先端検知センサ12および301は、搬送ユニット70から供給されてきたシート1の先端を検知する。シート1の先端の検知は、上述のロール駆動モータ、搬送ローラ駆動モータ、および搬送ピンチローラ離間モータの回転制御のトリガーとなったり、紙詰まり(ジャム)の検知に利用されたりする。プラテン13は、プリントヘッド15によって精度良くプリントすることが可能なように、吸引ファン14により発生させた負圧によりシート1の裏面を吸着する。
シート排出部500は、プリント終了時にシート1をカッター16でカットし、カットされたプリントされたシート1をバスケット62へ収納する。
排紙ガイド61は、プリント後のシート1の裏面側を支えてガイドする。排紙ガイド61は、回動中心61aを中心に回動可能である。上段の搬送ユニット70にロールシート1を取付ける際には、排紙ガイド61を、図1中、図1に示す状態から回動中心61aを中心に時計回転方向に回動させ、プリント装置の前面に空間をあけて、そこからロールシート1を取付けることを可能にする。
ガイド部材68は、排紙ガイド61の先端部から鉛直方向下方へと伸び、排紙ガイド61に対して支点68aを中心に回動可能に取付けられた可動ガイド部材である。なお、この可動ガイド部材68は、図1中、図1に示す状態から支点68aを中心に反時計方向に回動して、排紙ガイド61に収納されることができる。可動ガイド部材68が排紙ガイド61に収納されたことを検知するポジション検知センサ69が、排紙ガイド61に備えられている。
バスケットユニット62は、構造体(骨組み)としてのロッド63a〜63dと、排出されたシート1を納める袋状の布64と、で構成される。また、バスケットユニット62は、回転中心65を中心に回動可能である。下段の搬送ユニット70にロールシート1を取付ける際には、バスケットユニット62を、図1中、図1に示す状態から回転中心65を中心に反時計回転方向に回動させ、プリント装置の前面に空間をあけ、そこからロールシート1を取付けることを可能にする。
バスケットユニット62のポジション検知センサ67は、バスケットユニット62が図1に示すセット状態にあるときをON(オン)、回動して図1の状態にないとき、例えば、図2(b)や図2(c)に示す状態にあるときをOFF(オフ)として検知する。
オペレーションパネル20には、ユーザーがロールシート1の種類等を入力する。
(ロールシートをセットするための構成)
図3を参照して、ロールシート1をプリント装置にセットする構成および手順について説明する。図3(a)は分解状態のスプール部材2の正面図であり、図3(b)は組立状態のスプール部材2の正面図である。また、図3(c)は、プリント装置本体側のロールシート1の取付け部の概略的な断面図である。
図3(a)において、スプール部材2は、スプールシャフト21、摩擦部材22、基準側スプールフランジ23、非基準側スプールフランジ24、スプールギア25、供給用フランジアタッチメント26で構成される。
供給用フランジアタッチメント26は、基準側スプールフランジ23および非基準側スプールフランジ24に対して、バネ性を持ったフックなどによって脱着自在に取付けられる。搬送ユニット70を供給ユニットとして使用し続ける第1の使用形態では、供給用フランジアタッチメント26を基準側スプールフランジ23および非基準側スプールフランジ24から取り外す必要はなく、これらを一体的に取り扱うことができる。なお、後述するが、第2の使用形態において搬送ユニット70を巻取ユニットとして利用する際には、供給用フランジアタッチメント26を取り外す必要がある。
スプールシャフト21にはめ込まれた非基準側スプールフランジ24と供給用フランジアタッチメント26とを一体的に取り外し、ロールシート1の紙管内にスプールシャフト21を差し込む。このとき、ロールシート1の紙管の内径とスプールシャフト21の外径との間には十分な隙間があるため、ユーザーは軽微な力でロールシート1をはめ込むことができる。ロールシート1の端部が基準側スプールフランジ23側の供給用フランジアタッチメント26に接触したところで、基準側スプールフランジ23の使用姿勢における内側面側に設けられた摩擦部材22がロールシート1の紙管の内面に接触する。
取り外していた非基準側スプールフランジ24と供給用フランジアタッチメント26とを一体的にスプールシャフト21に通し、非基準側スプールフランジ24の使用姿勢における内側面側に設けられた摩擦部材22をロールシート1の紙管の内面に接触させる。これによりロックをかけて、ロールシート1の紙管のスプール部材に対する相対的な移動を防止する。その結果、図3(b)の状態となり、ロールシート1を搭載したスプール部材2は、プリント装置本体にセットされる。反射型センサ28は、プリント装置本体に設けられており、供給用フランジアタッチメント26が取付けられた状態か取付けられていない状態かを判別する。
図3(c)において、スプールホルダ31は、プリント装置本体の基準側と非基準側とに設けられており、U字形の断面形状を有する。スプールホルダ31のU字形の開口側からスプール部材2をはめ込みおよび取り出すことができ、U字形の湾曲部分はスプールシャフト21と嵌合する径を有している。スプール部材2を回転させるために設けられたスプールギア25に、プリント装置本体側のスプール駆動部30が連結され、駆動が伝達される。スプール部材2の回転動作により、ロールシート1の供給動作もしくは巻取動作が可能となる。スプール有無検知センサ32により、プリント装置はスプール部材2の有無を検知できる。
(補助機構)
図4に示す概略図を参照して、本実施形態に係る補助機構200の詳細な構成について説明する。図4(a)はプリント装置のシート供給方向に沿って取った補助機構200の断面を示し、図4(b)はシート供給方向の下流側から見た補助機構200の側面を示す。
回転軸3は、プリント装置本体に回転可能に係合され、補助機構200全体の回転軸である。補助機構200は回転軸3を中心に回動する。回転軸3はアーム部4の部分4aに対して回転可能に係合されており、回転軸3の両端は不図示の環部材でスラスト方向に拘束されている。アーム部4は、部分4bにおいて、軸部材41に対して摺動可能に係合されており、補助機構200全体の自重によって回転カム42を付勢して位置決めされる。回転カム42は、軸部材43に回転可能に係合し、アーム部材4の面に接し、駆動機構(加圧駆動モータ)からの駆動により回転することでアーム部材4の位置を変化させる。
揺動部材5は、係合部5aにおいて軸部材41に回転可能に係合し、軸部材41の両端は不図示の環部材でスラスト方向に拘束されている。揺動部材5の上部には従動回転コロ6とシート押さえコロ7とがある。コロ6および7は、ロールシート1に対して押圧される。ロール外径検知センサ5cは、揺動部材5上において、従動回転コロ6とシート押さえコロ7との間の中央部に配され、ロールシート1との距離を検知する。従動回転コロ6およびシート押さえコロ7は、軸部材47に回転可能に係合されており、両端は不図示の環部材でスラスト方向に拘束されている。
軸部材47は揺動部材5の上穴部にはめ込まれており、突起部47aを持つ。圧縮バネ46は、軸部材47の突起部47aと揺動部材5の突起部5bとにはめ込まれて拘束され、回転軸47を上方向に付勢する。2つのコロ6および7は、揺動部材5の中心位置に対して等距離に配置され、軸部材41を中心に揺動回転することで、ロールシート1に対する各々の押圧力を均等化する。コロをロールシート1の外周方向に複数設けることで、ロールシート1のロール状部分の径の膨らみおよび巻きの緩み(巻きほぐれ)を効果的に押さることができる。コロ6および7をロールシート1の外周面に押圧した状態で、スプール部材2を介してロールシート1を回転させることで、ロールシート1自身の摩擦力によってシート1の搬送が行われる。補助機構200は、ロールシート1の中心を通る水平面よりも下方から、すなわち、鉛直方向においてロールシート1の下方からシートを加圧する。
上述の補助機構200の構成によれば、スプール部材2により両端支持されたロールシート1の撓みを矯正し、シート供給時におけるより高い搬送精度を得ることができる。
ロールシート1に対する加圧機構となる補助機構200の動作領域は、ロールシート1に関して鉛直方向において下方となる。そのため、重いロールシートをセットする際のシートセット用の空間を確保することができ、補助機構200はセット動作の妨げとならない。
また、シート搬送部300の搬送経路が下方からのUターン形状を有するのに対し、搬送ユニット70においてロールシート1を下から加圧する方式を採用することで、ロールシート1の巻癖に抗うことなくシート1を供給することができる。これにより、供給時の搬送抵抗を最小にすることができ、シート表面の傷を防止することができる。
(シート排出部)
図2(a)〜図2(c)に示すプリント装置の概略断面図、および図8に示すプリント装置の斜視図を参照して、シート排出部500の詳細な構成について説明する。
図2(a)および図8は、シート排出部500においてバスケットユニット62が使用可能にセットされている状態を示す。図2(b)は、可動ガイド部材68が排紙ガイド61に収納され、バスケットユニット62のバスケット部分が閉じられた状態を示す。図2(c)は、バスケットユニット62が下段の搬送ユニット70の下部に収納された状態を示す。
本例では、排紙ガイド61は、シート幅方向全域にガイドを形成したモールド部品である。可動ガイド部材68は、針金をフォーミング曲げして形成され、自重で鉛直方向に垂れ下がった状態の位置と、排紙ガイド61に収納された状態の位置と、2つの位置を持つ。また、排紙ガイド61には、可動ガイド部材68が収納されたことを検知するポジション検知センサ69が備えられている。ポジション検知センサ69は、可動ガイド部材68が、図2(a)に示すように自重で垂れ下がっている状態であるときはOFF、図2(b)および図2(c)に示すように収納された状態であるときはONとして検知する。
バスケットユニット62は、構造体(骨組み)としてのロッド63a〜63dと、排出されたシートを溜める袋状の布64と、で構成される。
ロッド63aおよび63bのスラスト方向(軸方向)はシート幅方向と同一に配される。ロッド63aの両端には、2本のロッド63cの一端がそれぞれ配される。また、ロッド63bの両端には、2本のロッド63dの一端がそれぞれ配される。ロッド63dの他端は、ロッド63cに連結される。ロッド63cの他端は、スタンドに備えられた回転中心65に関して回動可能に取付けられ、ロッド63cは、図2(b)に示すように略水平となる位置まで回動できる。ロッド63cは、さらに、その状態からスラスト方向に移動可能になっていて、図2(c)に示すように下段の搬送ユニット70の下部に収納できる。
バスケットユニット62の状態を検知するポジション検知センサ67は、バスケットユニット62が、図2(a)に示すようにセットされた状態であるときはON、図2(b)や図2(c)に示すようにセットされていない状態にあるときはOFFとして検知する。
袋状の布64は、図2(a)に示すセット状態において、プリント装置の前面側の部分64aと、床面側の部分64bと、排出されるシートの裏面側となる部分64cと、を含む。排出されたシートを、主に部分64aと部分64bとによって受け止め、プリントされた面が床に接地して汚れることを防ぐ。部分64cは、プリント中または排出中のシートの裏面側をガイドする機能を有し、排紙ガイド61および可動ガイド部材68から連続性を持ってシートをガイドすることで、排出されたシートが搬送ユニット70側に入り込まないようにしている。もし、排出されたシートが搬送ユニット70側に入り込んでしまうと、ジャム(紙詰まり)が発生する可能性がある。そのため、バスケットユニット62の状態を検知するポジション検知センサ67や可動ガイド部材68の状態を検知するポジション検知センサ69によっていずれかが収納状態にあるOFFの場合は、オペレーションパネル20によりユーザーに対して警告を促す。なお、これは搬送ユニット70を供給ユニットとして利用してシートをバスケットヘ排出する第1の使用形態の場合である。搬送ユニット70を巻取ユニットとして利用する第2の使用形態の場合については後述する。
(制御系)
図16を参照して、本実施形態に係る制御系を説明する。図16は、本実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。CPU201は、ROM204に記憶された制御プログラムに従って搬送ユニット70やプリント部400の制御を行う。CPU201には、オペレーションパネル20から入カインターフェイス202を介して搬送ユニット70が供給用途であるか巻取り用途であるかの用途選択情報が入力される。入力された用途選択情報は、RAM203に書き込まれ、RAM203から読み出されるようになっている。
CPU201は、スプール有無検知センサ32およびシート先端検知センサ12、301の検知結果、ならびにバスケットユニット62および可動ガイド部材68のポジション検知センサ67および69からのON/OFFの信号を受け取る。また、CPU201は、オペレーションパネル20からのユーザー操作を伴ったトリガー信号などを受け取る。CPU201は、受け取った検知結果および信号に基づいて、ROM204に記憶された所定の制御プログラムに従って、後述する各動作シーケンスに関する処理を実行する。
具体的には、CPU201は、上段および下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33に対して回転制御信号を送って、加圧駆動モータ33を駆動させる。加圧駆動モータ33の動作に伴って補助機構200が回動する。ロール外径検知センサ5cからの信号を受け取って、加圧駆動モータ33の駆動および停止の制御を実施する。
CPU201は、さらに、上段および下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34および搬送ローラ駆動モータ35に対しても回転制御信号を出す。CPU201は、ロール駆動モータ34および搬送ローラ駆動モータ35の動作に伴って、各モータの駆動量検出エンコーダ36および37からの信号を受け取って、各モータ34および35の回転制御を実施する。なお、上段、下段の搬送ユニット70に配される各モータの制御については、供給用途で利用する場合と後述する巻取用途で利用する場合とで制御プログラムが変わるので、RAM203に保管された用途選択情報を逐次参照して、いずれかの制御を行う。
(シート供給時の動作シーケンス)
図5を参照して、第1の実施形態に係るシート供給時の動作シーケンスのフローを説明する。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。以下、シート供給方向の回転を正回転、正回転と反対の方向への回転を逆回転と定義して説明する。
ロールシート1の紙管にスプール部材2を挿入し、搬送ユニット70にセットする(S1)。スプールホルダ31に設置されたスプール有無検知センサ32は、スプール部材2が有ることを検知する(S2)。スプール部材2が有ることの検知に伴い、オペレーションパネルでその旨のアナウンスがなされる。ユーザーがシート1の先端9を搬送ガイド8へ差し込むと、シート先端検知センサ301は、シート1の先端9を検知する(S3)。次いで加圧駆動モータ33により補助機構200が回動して、ロールシート1を押圧する(S4)。
ここで、加圧駆動モータ33を正方向に駆動すると補助機構200はロールシート1に近づく方向に動作し、加圧駆動モータ33を逆方向に駆動すると補助機構200はロールシート1から離間する方向に動作する。ロール外径検知センサ5cがロールシート1の表面と加圧機構としての補助機構200との間の距離を検知して、加圧駆動モータ33は適切な押圧位置にて停止する。加圧駆動モータ33の駆動の方向および量を制御することにより、補助機構200のロールシート1に対する押圧力を変化させることができる。すなわち、補助機構200はトールシート1に対して当接または離間可能となっており、また、当接している際の押圧力は種々の大きさに設定されることができる。これらの押圧の状態は、場面に応じてシーケンスの途中で任意に変更することができる。
その後、プリント装置はシート搬送動作を行う。詳細には、ロール駆動モータ34および搬送ローラ駆動モータ35の正回転方向の駆動を開始して、シート搬送を開始する(S5)。シート先端検知センサ12は、ロールシート1のロール状部分から引き出されたシート1の先端9を検知する(S6)。シート1はそこから所定量フィードされて、搬送ローラ10の先まで通紙される(S7)。次いで、補助機構200をロールシート1から離間させ、それと同時に、搬送ピンチローラ11の搬送ローラ10に対するニップ圧を、プリント時に用いるニップ圧である通常ニップ圧よりも弱い弱ニップ圧にする(S8)。その後、シート1のバックフィードとフィードとを繰り返すことで、シート1の斜行を補正する(S9)。
なお、本明細書において、フィードとは、シートへのプリント実行中のシート搬送方向(供給方向に相当)への搬送をいい、バックフィードとは、シートへのプリント実行中のシート搬送方向とは逆の方向(巻き戻し方向に相当)への搬送をいうものとする。
次いで、シート1をバックフィードしながら不図示のセンサによりシート1の先端9の位置を読み取って斜行量を検知し(S10)、シート1の先端9がプリント開始前の待機位置に来るようにシート1を停止させる(S11)。次いで、搬送ピンチローラ11の搬送ローラ10に対するニップ圧を通常ニップ圧に戻して(S12)、供給動作を終了する(S13)。
(第1の使用形態におけるプリント時の動作シーケンス)
次に、図6を参照して、第1の実施形態に係る第1の使用形態におけるプリント時の動作シーケンスのフローを説明する。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。なお、上述したシート供給時の動作終了状態(図5のS13)からシーケンスを開始するので、補助機構200はロールシート1から離間された状態にあり、搬送ピンチローラ11の搬送ローラ10に対するニップ圧は、通常ニップ圧である。
パソコンなどからのプリントデータを受信すると(S14)、搬送ローラ駆動モータ35の正回転方向の駆動を開始して、シート搬送を開始する(S15)。待機位置にあったシートの先端9をプリントヘッド15の直下までフィードする(S16)。その後、プリントヘッド15がシートの幅方向にスキャンしながらインクを吐出して、プリントが行われる(S17)。
詳細には、プリントヘッド15が往方向にスキャンして1ライン分のプリントを行った後、搬送ローラ10がシート1を所定量フィードし、次いで、プリントヘッド15が復方向にスキャンして1ライン分のプリントを行う。このようにプリントヘッド15の往復動作および搬送ローラ10のフィード動作を繰り返して、シート1を下流側に搬送しながらプリントが行われる。このとき、搬送ローラ10によるフィード動作に伴って、ロール駆動モータ34(駆動部)に対しては逆回転方向に駆動しようとする制御が行われる。このロール駆動モータ34に対する制御では、電流制限を伴って駆動力を抑えるため、シート1は搬送ローラ10によってその駆動力以上の力で引っ張られることになる。このような制御をするのは、ロールシート1に対して適正なバックテンションを働かせ、弛みの発生しない安定した搬送を実現するためである。
プリントが終了すると(S18)、搬送ローラ10はプリントされた部分の後端がカッター16のカット位置に来るまでシート1をフィードし(S19)、不図示のカッター駆動モータがカッター16を作動させてカッティングを実施する(S20)。カッティングされたプリント物はバスケットユニット62に収納される。プリント装置側に残されたシート1は搬送ローラ10にて所定量バックフィードされ(S21)、カットによって生じた新たなシート1の先端9がプリント開始待機位置まで戻されて、待機状態となる(S22)。
(シート巻き戻し時の動作シーケンス)
図7を参照して、シート1を巻き戻しする動作シーケンスのフローの例を説明する。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。なお、本明細書において巻き戻しとは、シート1の先端9が搬送ローラ10付近にある状態(例えば、図5のS13や図6のS22で説明した待機状態)から、シート1の先端9が搬送ユニット70の供給口付近に来るまでバックフィードする動作をいうものとする。
まず、補助機構200をロールシート1に押圧する(S23)。供給ユニットとしての搬送ユニット70におけるロールシート1の巻きほぐれを防止するためである。その状態でロール駆動モータ34および搬送ローラ駆動モータ35を同時に逆回転方向に駆動して(S24)、シート1をバックフィードしていく。暫くすると、シート1の先端9がシート先端検知センサ12の検知位置を通過するので(S25)、搬送ローラ駆動モータ35の駆動を停止する(S26)。ロール駆動モータ34はそのまま駆動を続けて、シート1をさらにバックフィードしていくと、今度はシート1の先端9がシート検知センサ301の検知位置を通過する(S27)。その後、ロール駆動モータ34を停止して、巻き戻し動作を終了する(S28)。
なお、ロールシートを交換する目的などでシート1を最後まで巻き取る場合は、シート検知センサ301の検知位置を通過した後も暫くロール駆動モータを動かし続けて、シート1の先端9が搬送ガイド8から抜け出るところまでシート1をバックフィードする。
一方、プリントに供するロールシートを上段と下段とで切り替える場合などは、シート1を最後まで巻き取らなくてもよい。例えば、シート1の先端9がシート検知センサ301の検知位置を通過した後、すぐにロール駆動モータ34を停上して、シート1の先端9をシート検知センサ301近傍で待機させる。その際は、補助機構200はロールシート1に対して押圧状態を維持して、シート1が自重で搬送ガイド8から抜け落ちてしまうことを防ぐ。
ロールシート1の巻きほぐれを防止するため、搬送ガイド8からのシート1の抜け落ち防止のため、およびシート供給時の補助機構200の押圧力は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。例えば、巻くほぐれおよび抜け落ち防止のための押圧力をシート供給時の押圧力よりも大きく設定することで、供給時のシート搬送の精度およびロールシート表面に対するダメージに関して影響を与えることなく、抜け落ち等の防止効果を高めることができる。
以上までが、上段および下段の搬送ユニット70をいずれも供給ユニットとして用いた第1の使用形態の場合についての説明であった。続いて、搬送ユニット70のいずれかを巻取ユニットとして利用する第2の使用形態の場合について、説明していく。
(第2の使用形態)
図面を参照して、上段の搬送ユニット70を供給ユニット、下段の搬送ユニット70を巻取ユニットとして利用する場合(第2の使用形態)を説明する。なお、上述した第1の使用形態と同じ構成および動作については、説明を省略する。
図9において、下段の搬送ユニット70を巻取ユニットとして用いる場合は、スプール部材2に対してシート巻取り用の紙管17を取付け、その紙管17にシート1の先端9をテープなどで固定して、搬送されてきたシート1を巻き取っていく。そのため、可動ガイド部材68やバスケットユニット62が図2(a)のような状態であると邪魔になるため、それぞれを収納されたポジションにして利用する。すなわち、第2の使用形態において、可動ガイド部材68のポジション検知センサ69はON、バスケットユニット62のポジション検知センサ67はOFFの状態となる。
ここで、搬送ユニット70を供給ユニットとして用いる場合、補助機構200は、シートの供給を助けるシート供給補助機構としての機能を果たす。一方、搬送ユニット70を巻取ユニットとして用いる場合は、シートの紙管へのセット時、プリント時、終端処理時において、巻き取られるシート1の表面に押圧されたり離間されたりして、シートの巻取りを助けるシート巻取り補助機構としての機能を果たす。本明細書では、搬送ユニット70の用途に応じて、すなわち使用形態に応じて、補助機構200を、供給補助機構200または巻取補助機構200とも呼ぶものとする。
(紙管をセットするための構成)
図10および図11を参照して、シート巻取り用の紙管17をプリント装置にセットする構成について説明する。
図10(a)は分解状態のスプール部材2の正面図であり、図10(b)は組立状態のスプール部材2の正面図である。図3を参照して説明した供給時のスプール部材2の構成と異なるのは、巻取り用のスプール部材2の構成には、供給用フランジアタッチメント26がない点である。すなわち、上述したように、供給用フランジアタッチメント26は、基準側スプールフランジ23および非基準側スプールフランジ24から取り外し可能であるため、巻取り目的の場合は取り外しておく。
図11(a)および図11(b)は、供給時と巻取り時のスプール部材2を上下に並べて比較している。
図11(a)に示すように、供給時のフランジには供給用フランジアタッチメント26が取付けられる。供給用フランジアタッチメント26の端面はフラット面であり、セットするロールシート1の端部を突き当てて幅方向の位置を決める。非基準側スプールフランジ24側は必ずしもフラット面である必要はなく、供給用フランジアタッチメント26を取り外して使用しても構わない。
これに対して、図11(b)に示すように、巻取り時のフランジ、すなわち基準側スプールフランジ23および非基準側スプールフランジ24の端面は、シート1の幅よりも広い間隔を空けて配置され、且つテーパー形状をしている。そのため、紙管17に対して巻き取られるシート1の斜行をある程度許容できるようになっている。なお、この点以外の構成については、図3を参照して説明した供給時の構成と同一である。
(紙管セット時の操作フロー)
図12および図13を参照して、シート1の先端9をシート巻取り用の紙管17に取付ける際の操作について説明する。図12は、第2の使用形態のプリント装置の概略図であり、図13は、プリント装置にシート巻取り用の紙管をセットする際の動作シーケンスのフローである。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。図5を参照して説明したフローのステップS1からS13に沿って上段の供給ユニット70からシート1が供給された待機状態から、説明を始める。
紙管17にスプール部材2を挿入し、下段の搬送ユニット70にセットする(R1)。スプールホルダ31に設置されたスプール有無検知センサ32がスプール部材2を検知する(R2)。加圧駆動モータ33が逆方向に駆動されて、巻取補助機構200をスプール部材2から離間させる(R3)。その後、プリント装置は上段の搬送ユニット70のロールシート1から供給されたシート1の搬送動作を行う。搬送ローラ駆動モータ35が正回転方向に駆動され(R4)、シート1は搬送ローラ10によって所定量フィードされて、下段の搬送ユニット70に取付けられた紙管17付近まで到達する(R5)。そして、ユーザー操作を伴って、シート1の先端9は、紙管17と紙管17から離間された巻取補助機構200との間に差し込まれる(R6)。
その後、ユーザーによるオペレーションパネル20の操作によりトリガーが発生すると、下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33が正方向に駆動されて、巻取補助機構200がシート1の先端9を紙管17へ押圧する(R7)。その状態で搬送ローラ駆動モータ35を逆回転方向に駆動し、同時に下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34を正回転方向に駆動する(R8)。
つまり、このとき、搬送ローラ駆動モータ35と、下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34と、の2つのモータは、相反する方向に回転を行うことになる。搬送ローラ10とシート1との間に発生する摩擦力の方が、紙管17とシート1との間に発生する摩擦力よりも十分高く設定されているため、搬送ローラ10の逆回転に伴ってシート1は所定量バックフィードされる(R9)。
下段のロール駆動モータ34を正回転方向に駆動するのは、搬送ローラ10によるバックフィード動作に対して紙管17をフィード回転させることによって、シート1にテンションを与えるためである。テンションを与えた状態でシート1をバックフィードすることで、紙管17に巻き取られるべきシート1は撓みが解消され、斜行が補正される。
そしてこの状態で、シート1の先端9を紙管17に対してテープなどで固定する(R10)。
ここで、従来の巻取装置には、本実施形態の巻取補助機構200のようなものがない。そのため、ユーザーが紙管17にシート1の先端9を固定する際は、ユーザー自身の手によってシートにテンションを与えて、感覚に頼って真っ直ぐになるように気をつける必要があった。つまり、本実施形態では、巻取補助機構200が従来の操作フローの不便さを改善し、ユーザー負荷を軽減することに助力しているといえる。
以上で、シート巻取り用の紙管17にシート1の先端9を取付ける際の操作(紙管セット操作)は完了し、待機状態となる(R11)。
(第2の使用形態におけるプリント時の動作シーケンス)
図14を参照して、第1の実施形態に係る第2の使用形態におけるプリント時、すなわちプリントを行いながら巻取りを行う際の動作シーケンスのフローについて説明する。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。
パソコンなどからのプリントデータを受信すると(R12)、搬送ローラ駆動モータ35と、下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34と、をいずれも正回転方向に駆動して(R13)、シート1の搬送を開始する。待機位置にあったシート1のプリント開始位置を、プリントヘッド15の直下までフィードする(R14)。その後、下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33を逆方向に駆動して、巻取補助機構200を離間させる(R15)。そして、プリントヘッド15がシートの幅方向にスキャンしながらインクを吐出して、プリントが行われる(R16)。
プリントに関して、プリントヘッド15の動作、搬送ローラ10の動作、およびシート1を供給する上段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34のバックテンション付与動作については、図6のステップS17で説明した通りである。
巻取りに関して、プリント部を経由したシート1を巻き取る下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34は、搬送ローラ10と共に動作する。プリントされたシート1の先端が下段の搬送ユニット70の位置まで搬送されたら、ユーザーは下段のロール駆動モータ34の動作を一時停止ボタン(不図示)などで停止させる。その時プリント動作は停止されることなく継続する。巻取り動作を停止させた状態で、ユーザーが紙管にシート1の先端をテープなどで固定し(R17)、紙管セット操作終了後、ユーザーが下段のロール駆動モータ34の巻取り動作を、一時停止ボタンを再度押すことで再開させる。この際、ロール駆動モータ34に対しては、電流制限を行い、所定のトルク(テンション)以上でシート1を引っ張らないような制御が行われる。必要以上のテンションが発生すると搬送精度に影響が出てしまうためである。この制御によって、安定した搬送が実現される。
プリントが終了すると、この後、巻取りを利用する場合は、そのまま待機状態となる(R18)。
(シート終端処理の動作シーケンス)
図15を参照して、第1の実施形態に係る巻取り時のシートの終端処理の動作シーケンスのフローについて説明する。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。
ユーザーによるオペレーションパネル20の操作を伴って終端処理のトリガーが発生すると、搬送ローラ駆動モータ35と、下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34と、が正回転方向に駆動されて(R19)、所定量のフィードが行われる(R20)。その後、下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33が正方向に駆動されて、巻取補助機構200をロール状に巻き取られたシート(ロールシート)1の表面に押圧する(R21)。
このとき、巻取補助機構200のコロ6および7がプリントされた部分に接すると、インクの転写などの恐れがある。そのため、ステップR20で行われるフィード動作において、プリントされた部分がコロ6および7と接しない下流に来るまでシート1を巻取り搬送するのが望ましい。もしくは、プリントされた部分とコロ6および7とが接するのであれば、十分に乾燥時間をおいてから押圧するか、または、フッ素コーティングのような転写を防ぐ手段をコロの表面に施す手段もある。
いずれにせよ、ロール状に巻き取られたシート(ロールシート)1の表面に巻取補助機構200が押圧された状態で、不図示のカッター駆動モータによってカッター16を作動して、シート1のカッティングを実施する(R22)。なお、カッティング時は、巻取ユニットとしての搬送ユニット70に巻き取られた側のシート(ロールシート)1の後端をユーザーが手で保持しておき、カッティング後にロールシートのロール状部分からシートの後端が落下しないようにするのが普通である。
その後は、ユーザーによるオペレーションパネル20やボタンの操作などを伴って、巻取ユニット側のシート1の後端部分を巻き取っていく(R23)。巻き取ったロールシート1のロール状部分にシート1の後端をテープなどで固定して、終端処理が終了する(R24)。
上述したように、第1の実施形態では、ステップR21以降は、巻取補助機構200がロールシート1の表面を押圧している。よって、ステップR22からR24の操作中に、ユーザーが手で保持しているシート1の後端部から巻取補助機構200による押圧部までの間で弛みが生じることはあっても、巻き取ったロールシート1が巻きほぐれる心配はない。
従来の巻取ユニットには、巻取補助機構200のようなものはない。そのため、カッティング後に巻き取ったロールシート1が弛まないように気をつけて保持しておかないと、巻き取ったロールシート1が巻きほぐれてしまう可能性がある。ロールシート1は、巻きほぐれると、その後、巻き締める際に、プリント面が擦れて擦過傷が発生する場合がある。つまり、第1の実施形態では、巻取補助機構200が従来の動作シーケンスにおける操作の不便さを改善しており、それと共に、プリント品質の向上に助力しているといえる。
以上に説明した構成によれば、ユーザー負荷が軽減されたシート巻取り機能を有するプリント装置を提供することができる。
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行った。これに対し、第2の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は離間動作を行わず、ロールシート1(または紙管17)の外周に対する当接状態を維持する。第2の実施形態の動作シーケンスのフローを以下に説明する。上述した第1の実施形態と同じ構成および動作については、説明を省略する。
(第1の使用形態)
まず、第2の実施形態において上段および下段の搬送ユニット70をいずれも供給ユニットとして使用する場合(第2の実施形態に係る第1の使用形態)について説明する。
(第2の実施形態に係るシート供給時の動作シーケンス)
図17に、第2の実施形態に係るシート供給時の動作シーケンスのフローの例を示す。図5に示される第1の実施形態のフローとの違いを説明する。両図において同一の記号で示されるステップは内容が同一であり、説明を省略する。
第2の実施形態における、ユーザーによるシートセットの一連のステップ(S1からS3)は、図5で説明した第1の実施形態と同様である。
第1の実施形態では、続いて、加圧駆動モータ33により補助機構200を回動させて、ロールシート1を押圧した(S4)。これに対し、第2の実施形態では、ステップS4に相当するステップを含まない。詳細には、ステップS1でロールシート1を搬送ユニット70にセットした際に供給補助機構200とロールシート1とが当接するが、第2の実施形態では、ステップS1以降のステップにおいて、この当接状態を維持する。
なお、本実施形態の本質は、一連のステップにおいて、供給補助機構200とロールシート1とを離間させないことにある。これにより、ロールの巻きほぐれを防止でき、およびユーザー負荷が軽減される。したがって、第2の実施形態においては、当接状態を維持したままで、加圧駆動モータ33により補助機構200を回動させてロールシートに対する押圧力を変化させることは、場面に応じて任意に行うことができる。
第2の実施形態における、ロール駆動モータ34および搬送ローラ駆動モータ35によるシート搬送開始(S5)から、シートの先端検知(S6)およびシートの通紙(S7)までの一連のステップは、図5で説明した第1の実施形態と同様である。
第1の実施形態では、シート通紙(S7)後、供給補助機構200によるロールシート1の押圧を離間により解除してから、搬送ピンチローラ11の搬送ローラ10に対するニップ圧をプリント時に用いる通常のニップ圧よりも弱い弱ニップ圧にした(S8)。これに対し、第2の実施形態では、供給補助機構200のシート1からの離間による押圧解除を伴うことなく、ニップ圧を弱ニップ圧にする(S35)。つまり、上述のように、第2の実施形態においては、供給補助機構200とロールシート1との当接状態を維持する。
第2の実施形態における、その後の斜行補正(S9)から、斜行量検知(S10)、待機位置での停止(S11)、ニップ圧の通常ニップ圧への変更(S12)および供給動作終了(S13)までの一連のステップは、図5で説明した第1の実施形態と同様である。
(第2の実施形態に係る第1の使用形態におけるプリント時の動作シーケンス)
第2の実施形態に係る第1の使用形態のプリント時の動作シーケンスのフローには、図6に示される第1の実施形態のフローをそのまま適用できる。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、上述した供給時の動作終了の状態(ステップS13)からプリント時の動作シーケンスを開始するので、動作開始時において搬送ピンチローラ11の搬送ローラ10に対するニップ圧は、通常のニップ圧である。一方、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、供給補助機構200によるロールシート1の押圧を解除するステップを含まないため、プリント動作は押圧状態で行われる。
(第2の実施形態に係るシート巻き戻し時の動作シーケンス)
図18に、第2の実施形態に係るシート1の先端9を巻き戻しする動作シーケンスのフローを示す。図7に示される第1の実施形態のフローとの違いを説明する。両図において同一の記号で示されるステップは内容が同一であり、説明を省略する。
図7に示される第1の実施形態では、巻き戻し動作を開始するにあたり、まず、補助機構200をロールシート1に押圧する(S23)。供給ユニットとしての搬送ユニット70におけるロールシート1の巻きほぐれを防止するためである。
これに対し、図18に示される第2の実施形態のフローは、ステップS23に相当するステップを含まない。これは、上述のように、第2の実施形態においては、プリント動作は供給補助機構200でロールシート1を押圧した状態で行われ、解除動作を伴わないため、巻き戻し開始時に押圧状態が保たれているためである。そのため、第2の実施形態においても、巻き戻し動作にあたり、供給ユニットとしての搬送ユニット70におけるロールシート1の巻きほぐれが防止される。
第2の実施形態におけるその後のステップ(S24からS28)は、図7で説明した第1の実施形態と同様である。
以上までが、上段および下段の搬送ユニット70をいずれも供給ユニットとして用いた第2の実施形態の第1の使用形態の場合についての説明であった。続いて、搬送ユニット70のいずれかを巻取ユニットとして利用する第2の使用形態の場合について説明する。
(第2の使用形態)
続いて、第2の実施形態において上段の搬送ユニット70を供給ユニット、下段の搬送ユニット70を巻取ユニットとして利用する場合(第2の実施形態に係る第2の使用形態)を説明する。なお、上述の第1の実施形態、および第2の実施形態の第1の使用形態と同じ構成および動作については、説明を省略する。
(第2の実施形態に係る第2の使用形態における紙管セット時の操作フロー)
図12および図19は、第2の実施形態に係る第2の使用形態においてシート1の先端9をシート巻取り用の紙管17に取付ける際の操作について説明する図である。図12は、第2の使用形態のプリント装置の概略図であり、図19は、プリント装置にシート巻取り用の紙管をセットする際の操作フローである。紙管セット時の操作フローは、図17に示されるシート供給時の動作シーケンスのステップS1からS13に沿って上段の供給ユニット70からシート1が供給された待機状態から開始される。
図19に示される第2の実施形態のフローと、図13に示される第1の実施形態のフローとの違いを説明する。両図において同一の記号で示されるステップは内容が同一であり、説明を省略する。
第2の実施形態における、紙管セット(R1)からスプール検知(R2)までの一連のステップは、図13で説明した第1の実施形態とで同様である。
スプールがあることを検知した(R2)後は、第1の実施形態では、巻取補助機構200を紙管17から離間させる(R3)。これに対して、第2の実施形態では、ステップR3に相当する離間ステップを含まず、したがって、第2の実施形態では、巻取補助機構200の紙管17に対する当接状態が維持される。
第2の実施形態における、後続の、搬送ローラを駆動し(R4)、シートを所定量フィードし(R5)、およびシート先端を紙管と巻取補助機構との間に差し込む(R6)一連のステップは、図13で説明した第1の実施形態と同様である。
次いで、第1の実施形態では、巻取補助機構200を紙管17(延いてはシート1)に対して押圧する(R7)。これに対して、第2の実施形態では、ステップR7に相当する離間ステップを含まない。第2の実施形態では、巻取補助機構200の紙管17に対する当接状態が維持されているため、改めて押圧する操作が不要であるからである。
第2の実施形態における、駆動モータ34、25を駆動し(R8)、シート1を所定量バックフィードし(R9)、紙管17にシートの先端を固定し(R10)、取り付け操作が完了し待機状態となる(R11)続く一連のステップは、第1の実施形態と同様である。
(第2の実施形態に係る第2の使用形態におけるプリント時の動作シーケンス)
図20は、第2の実施形態に係る第2の使用形態におけるプリント時、すなわち巻取りを行いながらプリントを行う際の動作シーケンスのフローの例を示す。図14に示される第1の実施形態のフローとの違いを説明する。両図において同一の記号で示されるステップは内容が同一であり、説明を省略する。
第2の実施形態における、プリントデータの受信(R12)から、駆動モータ35、34の駆動(R13)、シート1の所定量のフィード(R14)までの一連のステップは、図14で説明した第1の実施形態と同様である。
シートを所定量フィードした(R14)後は、第1の実施形態では、巻取補助機構200を紙管17(延いてはシート1)から離間させる(R15)。これに対して、第2の実施形態では、ステップR3に相当する離間ステップを含まず、したがって、第2の実施形態では、巻取補助機構200の紙管17(シート1)に対する当接状態が維持される。
第2の実施形態における、後続の、プリントを行い(R16)、シートの先端を紙管に固定し(R17)、プリントが終了し待機状態となる(R17)までの一連のステップは、図14で説明した第1の実施形態と同様である。
(第2の実施形態に係る第2の使用形態におけるシート終端処理の動作シーケンス)
図21に、第2の実施形態に係るシート終端処理の動作シーケンスのフローの例を示す。図15に示される第1の実施形態のフローとの違いを説明する。両図において同一の記号で示されるステップは内容が同一であり、説明を省略する。
第1の実施形態と第2の実施形態との違いは、カッター駆動モータによってカッター16を作動してシート1のカッティングを実施するステップ(R22)の前に、巻取補助機構200をロールシート1に対して押圧するステップ(R21)を含むか否かの点である。図15に示す第1の実施形態では、押圧するステップ(R21)を含み、これに対して、図21に示す第2の実施形態では、かかるステップ(R21)を含まない。これは、第2の実施形態においては、紙管17のセット操作時から一貫して巻取補助機構200はロールシート1に対して当接され押圧された状態にあるので、押圧するステップ(R21)を改めて行う必要がないためである。
上述したように、本実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は、ロールシート1(または紙管17の外周)から離間せず当接状態を維持するが、この状態のままでもそれぞれの動作は問題なく行うことができる。
以上に説明した構成によれば、ユーザー負荷が軽減されたシート巻取り機能を有するプリント装置を提供することができる。
[第3の実施形態]
上述の第1の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行った。また、上述の第2の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は、ロールシート1または紙管17から離間されず当接状態を維持していた。これに対し、第3の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行わず、ユーザーが手動で操作して離間および当接させる。以下にその説明をする。上述の第1および第2の実施形態で説明した構成および動作と同じ構成および動作については、説明を省略する。
(第3の実施形態に係る第2の使用形態)
図22は、第3の実施形態に係る第2の使用形態のプリント装置の構成を示す図である。図23において、レバー71は、ロールシート1またはシート巻取り用の紙管17に対してこれらの外周側から供給補助機構200および巻取補助機構200を、ユーザーが手動で離間または当接(離接)した状態にさせることができるレバーである。図示していないが、離接の状態(例えば、押圧力)を検知できるセンサを持っており、プリント装置本体の電源が入っていれば、各補助機構200がどの状態にあるかがわかるようになっている。
ユーザーに補助機構200の離接状態を変化させる操作(押圧力の変更)を行ってもらう場合、プリント装置本体の動作は一時停止され、オペレーションパネル20に操作を促すメッセージが表示される。ユーザーがその表示を見てレバー71の状態を変化させると、不図示のセンサが状態変化を検知して、プリント装置本体は次の動作に移る。
本実施形態の構成によっても、ユーザー負荷が軽減されたシート巻取り機能を有するプリント装置を提供することができる。
以上のように、第1の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200が自動で離間および当接動作を行う場合の各動作シーケンスを説明した。第2の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200が離間動作を行わずに当接状態を維持する場合の各動作シーケンスを説明した。本発明において、供給補助機構200および巻取補助機構200は、当接状態のままであっても機能上問題はない。また、供給時、プリント時、巻き戻し時、ロールシートまたは巻取り用紙管のセット時、終端処理時等の動作において、必要に応じて自動または手動を使い分けて離接状態を変化させる操作を行ってもよく、限定されることはない。
本発明において、ロールシート1に対する補助機構200の押圧力(離間および当接の状態、ならびに当接状態における押圧力の大きさ)は、場面に応じて任意に設定することができる。
例えば、ロールシートから引き出したシートの先端をプリント部手前の搬送ローラのニップに通紙した後に、シートの先端を引き出すための押圧力よりも弱い押圧力を供給ユニットにおいて用いることで、シートの斜行を好適に補正することができる。
また、プリント実行中に、供給および巻取りユニットにおいて相対的に弱い押圧力を用いることで、シートに必要以上のテンションを生じさせることなく安定した搬送を実現することができ、また、ロールシートに対するダメージが低減できる。また、このとき補助機構を離間させることで、巻取られたシートからの補助機構に対するインク転写等が防止される。
また、シートをカットする際に、相対的に強い押圧力を用いることで、カットによるテンション解除によるシートの撓みやロールシートの巻きほぐれを防止することができる。また、巻取りユニットにおいてシートの先端を巻き取り用の紙管に固定して取り付けるためのバックフィード時に相対的に弱い押圧力を用いることで、シートの斜行を好適に補正することができる。
押圧力は、強弱2段階に設定してもよいが、場面に応じた好適な効果を得るために、3段階以上に設定してもよい。また、供給補助機構および巻取り補助機構の押圧力は、互いに独立して設定することができ、これらの押圧力は、同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態では、プリント装置は2つの搬送ユニットを備えていたが、本発明は、3以上の搬送ユニットを備えるプリント装置に適用することもできる。また本発明は、プリント装置に限定されず、シート形状の物品を巻き取る巻取り装置全般に適用することができる。
[第4の実施形態]
上述の第1の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行った。上述の第2の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は、ロールシート1または紙管17から離間されず当接状態を維持していた。上述の第3の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行わず、ユーザーが手動で操作して離間および当接操作を行った。
第4の使用形態におけるプリント時の動作シーケンスでは、シートの種類(紙種)および巻取り方向の少なくとも一方に応じて、自動または手動で、補助機構200の接離の切り替えを行う。以下にその説明をする。
例えば、高剛度でプリント面が内側になるように巻かれた内巻取りのロールシートの場合、剛度が高い上にロールの巻癖とは逆方向に巻き取っていくことになるので、通常の巻取りでは巻ほぐれが発生し、擦過キズが発生するといった課題がある。これを解決するためには、巻取りのテンションを大幅に高めた状態で巻き取っていく必要があるが、巻取り時に所定のテンション以上でシート1を引っ張ると、搬送精度に影響が出てしまい、安定した搬送が実現されない。これに対し、巻取り時に補助機構200を当接させることで巻きほぐれを防止しつつ、押圧部位をコロ等の回転体とすることで回転負荷低減が可能である。以上より、巻取りのテンションを高めることなく、巻緩みのない巻取りが可能となる。この構成により、搬送精度に影響がなく、モータのコストアップも抑えながら、正常な巻取りが可能となる。
また、低剛度のシートはカール癖が小さいため巻き緩みは発生しない。加えて補助機構200を当接させるとコロの圧接による圧痕跡が発生する場合もある。この場合は、補助機構200を離間して使用する。
一方、プリント面が外側になるように巻かれた外巻取りのロールシートの場合は、シートのカール方向とロールの巻き方向とが一致しているため補助機構200を当接させなくても巻き緩みが発生しない傾向がある。また、プリント面が外側となるためプリント乾燥性能が劣るシートは、補助機構200を当接させることでローラへの転写等の弊害が発生する場合がある。この場合も、補助機構200を離間させて巻き取りを行う。
以上より、シートの種類(紙種)、巻取り方向等の条件に合せて、補助機構200の接離を自動または手動で切り替えることで、搬送精度を維持しつつ、より多くのシートに対応可能である。
補助機構200の接離の設定は、シートのカール性やプリントの転写性等からシート毎に予め所定値の設定がされているが、その設定がユーザーの意図と違う場合は、手動で設定し直すこともできるように構成されている。
図23は、第4の実施形態係るプリント時、すなわち巻取りを行いながらプリントを行う際(第2の使用形態)の、動作シーケンスのフローを示す。以下の説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。
パソコンなどからのプリントデータを受信すると(R12)、搬送ローラ駆動モータ35と、下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34と、をいずれも正回転方向に駆動して(R13)、シート1の搬送を開始する。待機位置にあったシート1の先端9を、プリントヘッド15の直下までフィードする(R14)。その後、下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33をシートの種類(紙種)および巻取り方向の少なくとも一方によって設定されている方向に駆動して、巻取補助機構200をロールシート1に対して離間させもしくは当接させたままにする(R46)。そして、プリントヘッド15がシートの幅方向にスキャンしながらインクを吐出して、プリントが行われる(R16)。
ここで、図14、図20および図23を比較する。図14に示される第1の実施形態では、ステップR14とステップR16との間に、補助機構200の離間させる動作(R15)を行う。また、図20に示される第2の実施形態では、ステップR14とステップR16との間に補助機構200を離間させる動作を行わず、当接状態を維持する。これに対し、第4の実施形態では、図23に示されるように、補助機構200の接離状態を設定または手動により切り替える(R46)。これにより、条件に応じたより好適なプリントおよびシートの巻取りが可能となる。
[第5の実施形態]
上述の第1の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行った。上述の第2の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は、ロールシート1または紙管17から離間されず当接状態を維持していた。上述の第3の実施形態では、供給補助機構200および巻取補助機構200は自動で離間および当接動作を行わず、ユーザーが手動で操作して離間および当接操作を行った。上述の第4の実施形態では、プリント時の動作シーケンスにおいて、シートの種類(紙種)および巻取り方向の少なくとも一方に応じて、自動または手動で、補助機構200の接離の切り替えを行った。第5の実施形態では、巻取り時のロール駆動モータ34の駆動が停止するとき、自動で補助機構200のロールシート1に対する接離の切り替えを行う。以下にその説明をする。
例えば、本件の様なロールシートの巻取りをロール駆動モータ34の駆動により巻取りを行う巻取り装置においては、駆動モータ34を励磁した状態でないとスプール軸2が回転自由な状態となり、ロールシートの巻きほぐれが発生し、擦過キズが発生してしまう。そのためロールシートの巻きほぐれを発生させないためには、本体の電源を投入した後、プリント待機中においてもロール駆動モータ34を常時励磁させた状態にする必要がある。しかし、ロール駆動モータ34を常時励磁させた状態にすると、モータの消費電力が多くなり、モータが昇温してしまうため、ロール駆動モータ34の励磁を切るのが通例である。また、装置本体の電源をOFFにするときにおいても、ロール駆動モータ34の励磁が切れるため、巻きほぐれが発生してしまう。そのため、この様な巻取り装置においては、装置本体の電源投入後、プリント待機中や装置本体の電源をOFFにする状況においてもロールシートの巻きほぐれが発生しないようにする必要がある。そこで第5の実施形態においては、ロール駆動モータ34の励磁が切れる前に、すなわち、非駆動となる前に、自動で巻取補助機構200をロールシートに当接させ、巻きほぐれを防止することで、巻取り品質の劣化を最小限に抑えることが可能とする。
図24は、第5の実施形態に係るプリント時、すなわち巻取りを行いながらプリントを行う際(第2の使用形態)の、動作シーケンスのフローを示す。以下説明文において、括弧内の記号は、図中に示すフローの各ステップの番号である。
パソコンなどからのプリントデータを受信すると(R12)、搬送ローラ駆動モータ35と、下段の搬送ユニット70のロール駆動モータ34と、をいずれも正回転方向に駆動して(R13)、シート1の搬送を開始する。待機位置にあったシート1の先端9を、プリントヘッド15の直下までフィードする(R14)。その後、プリントヘッド15がシートの幅方向にスキャンしながらインクを吐出して、プリントが行われる(R16)。シート1が紙管17に到達すると、シート1の先端9は紙管17に固定される(R17)。プリントが終了(R53)した後に、下段の搬送ユニット70の加圧駆動モータ33は巻取補助機構200を巻き取られたシート1に当接させたままにする(R54)。そして、ロール駆動モータ34の駆動を停止(R54)して(非駆動として)、プリンタは待機状態(R55)となる。