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JP6770249B2 - エンジンの燃料システムの故障検出装置 - Google Patents

エンジンの燃料システムの故障検出装置 Download PDF

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Description

本発明は、エンジンの燃料システムの故障検出装置に係り、詳しくは異なる複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とした燃料システムの故障検出装置に関する。
エンジンに備えられた燃料システムの故障は、不適切な空燃比に起因する排ガス特性の悪化等の弊害に直結する。このため、燃料システムの故障を検出する機能が法規により要求されており、故障検出時には故障表示により運転者に修理を促すと共に、エンジンを制御するECU内に故障コードを記憶して後の修理に役立てている。
ポート噴射型エンジンを対象とした従来の燃料システムの故障検出装置として、燃料システムの故障時に生じる空燃比のA/F学習値及び積算値の増加に着目した技術がある。エンジンの燃料噴射量は、空燃比の目標値と計測値との差の積算値に基づき逐次補正されている。この積算値がリッチ側或いはリーン側に増加した状況が一定期間継続すると、積算値の定常成分に相当するA/F学習値が更新されてLAFS(リニアA/Fセンサ)等の空燃比センサの出力の中央値が補正され、これにより排気空燃比が目標空燃比に保たれている。
燃料システムの故障時には、A/F学習値が補正限界に達しても排気空燃比を目標空燃比に維持できずに積算値に基づく補正が行われる。このため、A/F学習値が補正限界に到達し且つ積算値が所定の故障判定値に到達したことを条件として、燃料システムの故障判定を下している。
このような従来の燃料システムの故障検出装置とは別に、例えば特許文献1には、ポート噴射と筒内噴射とを切換可能なエンジンを対象とした燃料システムの故障検出装置が提案されている。特許文献1の技術によれば、ポート噴射及び筒内噴射によるそれぞれのエンジン運転中にエンジンの回転変動に基づきインバランス異常を診断し、何れかでインバランス異常の診断を下した場合には、その側の燃料システムを構成する部位、例えばポートインジェクタや筒内インジェクタ等の故障と判断している。
特許第5724963号明細書
しかしながら、特許文献1の技術において燃料システムの故障判定の指標としているエンジンの回転変動(インバランス異常)は、燃料システム自体の故障以外の要因でも発生する。例えば吸気系のデポジットや漏れによる吸気量の増減、或いは点火系の不調等であり、これらの燃料システム以外の外的要因が生じた状況でも、回転変動が発生して故障判定が下される場合がある。即ち、何れかの噴射形態に対する故障判定には、判定対象となった燃料システム自体の故障の他に外的要因も含まれることを意味する。
このため特許文献1の技術によれば、燃料システム自体は正常な場合であっても、外的要因により故障判定が下されて誤った燃料システムの故障コードが記憶されてしまう場合がある。無論、故障判定が下された噴射形態で再度判定を実施したとしても、同一の判定結果が得られるだけで信頼性向上にはつながらない。このような外的要因に起因する問題は、空燃比のずれ(積算値、A/F学習値の増加)を指標とする上記ポート噴射型エンジンの故障検出装置においても同様に生じる。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とし、燃料システム以外の外的要因による誤った故障判定を排除し、それぞれの噴射形態を司る燃料システムの故障を高い信頼性で判定することができるエンジンの燃料システムの故障検出装置を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの燃料システムの故障検出装置は、第1の噴射形態と第2の噴射形態とを切換可能なエンジンにおいて、前記第1及び第2の噴射形態による前記エンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理を実行する第1の故障判定手段と、前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する第2の故障判定手段と、前記第2の故障判定手段による故障判定の結果に基づき、前記第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障を特定する故障特定手段とを備え、前記故障特定手段は、前記第1の故障判定手段により故障判定が下されたあと、前記第2の故障判定手段により故障判定が下されなかったときに前記一方の噴射形態を司る燃料システムの故障と断定し、前記第2の故障判定手段により故障判定が下されたときに、前記燃料システムを含めたエンジン運転システム全体の何れか部位の故障と見なし、前記エンジン運転システム全体の故障は、前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、前記エンジン運転システム全体の故障を示す故障コードが故障コード設定手段により記憶されることによって判定され、その後の前記第1または第2の何れかの噴射形態による運転中に前記第1の故障判定手段により故障判定が下されなかったとき、故障コード設定手段は、前記故障コードを消去することを特徴とする(請求項1)。
このように構成したエンジンの燃料システムの故障検出装置によれば、第1及び第2の噴射形態によるエンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理が実行され、何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されると、他方の噴射形態による運転中に故障判定処理が実行される。そして、故障判定の結果に基づき第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障が特定される。
何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下された時点では、一方の噴射形態を司る燃料システムの故障のみならず、例えば吸気系や点火系の故障等の外的要因の可能性もあり、何れが要因か判別できない。このとき本発明では、他方の噴射形態による運転中に故障判定処理が実行され、例えば故障判定が下されなかった場合、他方の噴射形態の燃料システムの正常のみならず外的要因無しの確証も得られる。結果として、直前の一方の噴射形態による運転中に故障判定が下された時点でも外的要因が発生してなかったと見なせ、それにも拘わらず故障判定が下された要因は、一方の噴射形態の燃料システム自体の故障にあると断定され、他方の噴射形態による運転中に故障判定が下された場合には、エンジン運転システム全体の何れか部位の故障と見なされる。
また、何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されると故障コードが記憶され、その故障コードを参考として修理等の対処が実施される。故障コードの記憶後のエンジン運転中に故障判定が下されない場合には、実際の燃料システムが正常と見なせるため故障コードが消去されるが、本発明では、故障コードが記憶された一方の噴射形態のみならず、他方の噴射形態による運転中に故障判定が下されなかった場合でも故障コードが消去されるため、誤った故障コードを迅速に消去可能となる。
その他の態様として、前記第1の噴射形態が、前記エンジンの吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射であり、前記第2の噴射形態は、前記ポート噴射と前記エンジンの筒内に燃料を噴射する筒内噴射との併用であり、前記故障特定手段が、前記第1の噴射形態を司る燃料システムとして前記ポート噴射の燃料システムの故障を特定し、前記第2の噴射形態を司る燃料システムとして前記筒内噴射の燃料システムの故障を特定することが好ましい(請求項)。
この態様によれば、第1の噴射形態を司る燃料システムとしてポート噴射の燃料システムの故障が特定され、第2の噴射形態を司る燃料システムとして筒内噴射の燃料システムの故障が特定される。
本発明のエンジンの燃料システムの故障検出装置によれば、複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とし、燃料システム以外の外的要因による誤った故障判定を排除し、それぞれの噴射形態を司る燃料システムの故障を高い信頼性で判定することができる。
実施形態の燃料システムの故障検出装置が適用されたエンジンを示す全体構成図である。 ECUが実行する故障判定ルーチンを示すフローチャートである。 同じくECUが実行する故障判定ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明を具体化したエンジンの燃料システムの故障検出装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の燃料システムの故障検出装置が適用されたエンジンを示す全体構成図であり、本実施形態のエンジン1は、ポート噴射(本発明の第1の噴射形態であり、以下、MPIモードという)とポート噴射及び筒内噴射の併用(本発明の第2の噴射形態であり、以下、MPI+DIモードという)との2種の噴射形態を切換可能に構成されている。
エンジン1のシリンダブロック2に形成された各気筒のシリンダ3内にはピストン4が配設され、クランクシャフト5の回転に応じて各ピストン4がシリンダ3内で摺動する。シリンダヘッド6に設けられた吸気カムシャフト7及び排気カムシャフト8はクランクシャフト5に連動して回転駆動され、これらのカムシャフト7,8により各気筒の吸気弁9及び排気弁10が駆動されて吸気ポート11及び排気ポート12を所定のクランク角で開閉する。シリンダヘッド6の各気筒には、燃焼室13内に臨むように点火プラグ14及び筒内インジェクタ15が取り付けられている。
各気筒の吸気ポート12には吸気マニホールド17を介して吸気通路18の下流端が接続され、吸気通路18には上流側よりエアクリーナ19、スロットル弁20、サージタンク21、ポートインジェクタ22が設けられている。図示はしないがフィードポンプから吐出された所定圧の燃料がポートインジェクタ22に供給されると共に、その燃料が高圧ポンプによりさらに加圧されて筒内インジェクタ15に供給されている。従って、ポートインジェクタ22の開閉に応じて吸気ポート11内に燃料が噴射され、筒内インジェクタ15の開閉に応じて燃焼室13内(筒内)に燃料が噴射される。
一方、各気筒の排気ポート12には排気マニホールド23を介して排気通路24の上流端が接続され、排気通路24には三元触媒25及び図示しない消音器が設けられている。
エンジン1の運転中には、エアクリーナ19から吸気通路18内に導入された吸気がスロットル弁20により流量調整された後、吸気マニホールド17により各気筒に分配されて吸気ポート11から燃焼室13内に導入される。MPIモードでは、ポートインジェクタ22から噴射された燃料が吸気と混合しつつ吸気弁9の開弁に伴って燃焼室13内に導入され、MPI+DIモードでは、これに加えて筒内インジェクタ15から燃焼室13内に直接燃料が噴射される。
何れのモードにおいても点火プラグ14の点火により燃焼室13内で燃料が燃焼し、その燃焼圧によりピストン4を介してクランクシャフト5が回転駆動される。燃焼後の排ガスは排気弁10の開弁に伴って燃焼室14内から排気ポート11に排出され、排気マニホールド23により集合して排気通路24の三元触媒25により浄化された後に排出される。
車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU31(エンジン制御ユニット)が設置されており、エンジン1の総合的な制御を行う。ECU31の入力側には、クランク角センサ32、三元触媒25の上流側に配設された排気空燃比を検出するLAFS33(リニア空燃比センサ)、及び三元触媒25の下流側に配設された排気中の酸素濃度を検出するOセンサ34(酸素センサ)等の各種センサ類が接続されている。またECU31の出力側には、点火プラグ14を駆動するイグナイタ35、上記各気筒のポートインジェクタ22及び筒内インジェクタ15等の各種デバイス類が接続されている。
ECU31は、各センサからの検出情報に基づきエンジン1を運転する。例えば、所定の制御マップに基づきエンジン運転領域に応じて噴射形態としてMPIモードまたはMPI+DIモードを選択した上で、その噴射形態での点火時期や燃料噴射量等を決定し、決定した目標値に基づいてイグナイタ35やインジェクタ15,22を駆動制御する。
例えば燃料噴射制御については、LAFS33の出力に基づき三元触媒25の上流側の空燃比を目標空燃比(例えばストイキ)に一致させるように空燃比フィードバックを実行しており、空燃比の目標値とLAFS33により検出された実空燃比との差の積算値に基づき燃料噴射量を逐次補正すると共に、積算値のリッチ側或いはリーン側への増加を補正する方向にA/F学習値を逐次更新してLAFS出力の補正に適用している。なお、A/F学習値は噴射形態毎に個別設定され、以下の説明では、MPI用A/F学習値及びDI用A/F学習値として区別する。また、これと並行してECU31はOセンサ34の出力に基づく空燃比サブフィードバックも実行し、三元触媒25の下流側の酸素濃度に応じた学習結果をLAFS出力の補正に反映させている。
そして本実施形態では、このような燃料噴射制御に適用される空燃比の目標値と計測値との差の積算値、及びA/F学習値に基づき、MPIモード及びMPI+DIモードを司るそれぞれの燃料システムの故障判定がECU31により実施される。より詳しくは、MPI燃料システムのみで実行されるMPIモードでは、MPI燃料システム(ポート噴射燃料システム)の故障が判定され、MPI燃料システムとDI燃料システムとの併用により実行されるMPI+DIモードでは、MPI燃料システムを除外してDI燃料システム(筒内噴射燃料システム)の故障が判定される。
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、特許文献1の技術では、燃料システムの故障のみならず、その他の外的要因(吸気系のデポジットや漏れ、点火系の不調等)が発生した場合でも故障判定が下されてしまうため、故障判定の信頼性が低いという問題があった。
以上の不具合を鑑みて本発明者は、本実施形態のような2種(或いは複数)の噴射形態を切り換えるエンジン1では、何れの噴射形態に対しても外的要因が影響することから、外的要因の発生時には双方の噴射形態で故障判定が下される点に着目した。
即ち、何れか一方の噴射形態で燃料システムの故障判定を下しただけでは、上記のように燃料システム自体の故障か外的要因か判別不能であるが、このとき他方の噴射形態で故障が否定(正常判定)された場合には、他方の噴射形態の燃料システムの正常のみならず外的要因無しの確証も得られる。噴射形態が正常に実行されるには、その噴射形態の燃料システムだけでなくエンジン運転システム全体が正常に機能する必要があるためである。結果として、直前の一方の噴射形態で故障判定が下された時点でも吸気系や点火系が正常に機能して外的要因が発生してなかったと見なせ、それにも拘わらず故障判定が下されている要因は一方の噴射形態の燃料システム自体の故障にあると断定できる。
以下、この知見の下にECU31により実行される燃料システムの故障判定処理について説明する。
図2,3はECU31が実行する故障判定ルーチンを示すフローチャートであり、当該ルーチンはエンジン1の運転中にECU31により所定の制御インターバルで実行される。
まず、ステップS1でMPIモード中であるか否かを判定し、Yes(肯定)のときにはステップS2でモニタ禁止行程中であるか否かを判定する。ステップS2の処理は、噴射形態の切換直後に生じる空燃比変動に起因する誤判定の防止を目的とし、モニタ禁止行程は、噴射形態の切換により一時的に変動した空燃比が安定するまでの期間として設定されている。このため、ステップS2の判定がYesのときには誤判定の可能性有りとしてステップS1に戻り、モニタ禁止行程が経過してステップS2の判定がNo(否定)になると、誤判定の可能性無しとしてステップS3に移行する。
ステップS3ではMPI用A/F学習値が予め設定された補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS4では積算値が予め設定された故障判定値に到達したか否かを判定する。MPI用A/F学習値の補正限界は0を中心としてリッチ側及びリーン側に設定されており、その間の正常範囲が本発明の第1の判定範囲に相当する。同じく積算値の故障判定値も0を中心としてリッチ側及びリーン側に設定されており、その間の正常範囲が本発明の第2の判定範囲に相当する。
ステップS3,4の処理は、MPI用A/F学習値及び積算値の変動状況に基づく故障判定を目的としたものである。即ち、MPI用A/F学習値がリッチ側またはリーン側の補正限界に到達しても空燃比を目標空燃比に維持できず、それを補うために積算値が同一方向に増加して故障判定値に到達する状況は、通常ではあり得ずに何らかの故障発生と見なせる。このような趣旨のため、ステップS3,4の判定では同一方向の変動を条件としており、例えばステップS3でMPI用A/F学習値がリッチ側の補正限界に到達した場合、ステップS4では積算値がリッチ側の故障判定値に到達したか否かが判定される。
そして、ステップS3,4の条件が共に成立するとステップS5に移行し、この状態が所定時間(例えば5sec)継続したか否かを判定し、Yesの判定を下すとステップS6に移行する。
ステップS6では、故障コードを記憶する。MPIモード中に下された故障判定ではあるが、この時点ではMPI燃料システムの故障のみならず吸気系や点火系の故障等の外的要因の可能性もあり、何れが要因か判別できない。そこで故障コードとして、エンジン1の運転システム全体の何れかの部位に起因するリーン側またはリッチ側故障(MPI用A/F学習値及び積算値の変動方向から特定)を示す故障コードが記憶される。
続くステップS7では、このときのエンジン1の運転条件、例えばエンジン回転速度Ne、充填効率Ec、機関暖機後か否か等を特定し、その運転条件を上記故障コードと紐付けて記憶する。後述するように運転条件は、その後のエンジン運転中に故障コードを消去する際に利用される。
一方、上記ステップS1でMPI+DIモード中としてNoの判定を下した場合には、ステップS8に移行する。ステップS8では、車載バッテリの接続後にMPI用A/F学習値の学習が完了している否かを判定する。この処理は、MPI燃料システムとDI燃料システムとを併用するMPI+DIモードにおいて、DI燃料システムの故障を抽出するためのものである。即ち、MPI用A/F学習値の学習が完了していない場合、MPI+DIモードで故障判定を下したとしても、その要因がMPI燃料システムにあるかDI燃料システムにあるかを判別できない。MPI用A/F学習値の学習が完了していれば、MPI燃料システムについては正常に機能している確証が得られるため、故障判定を下した要因がDI燃料システム側にあると見なせる。そこで、MPI用A/F学習値の学習完了を条件として、以降のMPI+DIモード中における故障判定を実施している。
ステップS8の判定がNoのときには、ステップS1に戻ってMPI用A/F学習値の学習完了を待ち、判定がYesになるとステップS9に移行する。基本的にMPI+DIモード中の故障判定は、上記したMPIモード中の処理と同様であるため概略のみ述べるが、ステップS9でモニタ禁止行程が経過すると、ステップS10でDI用A/F学習値が補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS11で積算値が故障判定値に到達したか否かを判定する。なお、補正限界及び故障判定値としては、MPIモードの場合と別の値が適用される。
ステップS10,11の条件成立が所定時間継続すると、ステップS12でYesの判定を下してステップS6に移行する。ステップS6では、上記したMPIモードの場合と同じくエンジン1の運転システム全体のリーン側またはリッチ側故障を示す故障コードを記憶し、続くステップS7で、このときのエンジン1の運転条件を故障コードと紐付けて記憶する。
本実施形態では、以上のステップS1〜12の処理を実行するときのECU31が、本発明の第1の故障判定手段として機能する。
そして、以上のようにMPIモード及びMPI+DIモードの何れのエンジン運転中にも故障判定が実施され、何れかで故障判定が下されたことを条件として、ステップS13で故障部位の特定処理が開始される。
まず、ステップS14でMPIモード中に故障判定が下されたか否かを判定し、YesのときにはステップS15でモニタ禁止行程中であるか否かを判定する。その趣旨は、上記ステップS2,9と同じく空燃比変動に起因する誤判定を防止するためである。ステップS15でNoの判定を下すと、ステップS16でMPI+DIモード中においてDI用A/F学習値を更新しているとき、DI用A/F学習値に積算値を加算した値が予め設定された正常範囲内にあるか否かを判定する。この正常範囲が本発明の第3の判定範囲に相当する。
ステップS16の処理は、ステップS10,11と同じくDI用A/F学習値及び積算値の変動状況に基づく故障判定を目的としているが、その処理内容が簡略化されている。既にステップS3,4の処理によりMPI燃料システムの故障とは断定できないものの可能性有りと判定されているため、DI燃料システムの故障を否定(正常判定)することによりステップS3,4の判定結果を再確認することが、ステップS16の趣旨のためである。
上記したようにA/F学習値は、積算値がリッチ側或いはリーン側に増加した状況が一定期間継続した後に更新されるが、積算値が大きく増加すればA/F学習値の更新を予測できる。このため上記のようなステップS16の趣旨と考え合わせると、A/F学習値が増加した時点で判定を下しても差し支えなく、その観点の下でステップS16が実行される。結果としてDI用A/F学習値の更新を待つことなく、DI燃料システムの故障判定の結果がいち早く得られる。
そして、ステップS16でYesの判定を下し、この状態が所定時間(例えば5sec)継続したとしてステップS17でYesの判定を下すと、ステップS18に移行する。
ステップS16,17の判定結果がYesの場合、DI燃料システムの正常のみならず吸気系や点火系の故障等の外的要因無しの確証も得られる。ステップS16でA/F学習値や積算値が正常に設定されるには、DI燃料システムが正常に機能するだけでなく、MPI燃料システムを除きエンジン運転システム全体が正常に機能して、例えば吸気量や点火時期等が適切に制御される必要があるためである。
結果として、直前のMPIモードで故障判定が下された時点でも吸気系や点火系が正常に機能して外的要因が発生してなかったと見なせ、それにも拘わらず故障判定が下されている要因はMPI燃料システム自体の故障にあると断定できる。よって、ステップS18では故障コードとして、MPI燃料システムのリーン側またはリッチ側故障を示す故障コードを記憶し、その後にルーチンを終了する。
また、ステップS16の条件が成立せずにNoの判定を下したときには、そのままルーチンを終了する。よって、この場合にはステップS6,7の処理によるエンジン1の運転システム全体の故障コード及びエンジン運転条件が残される。
なお、ステップS16でNoの判定を下した場合には、ステップS6の処理による故障コードとは別の故障コードを記憶してもよい。この場合にはMPIモードとMPI+DIモードの何れでも故障判定が下されているが、双方の独立した燃料システムが相次いで故障する可能性はかなり低い。このため故障判定が下された要因は、燃料システムの故障以外の外的要因か、或いは双方の燃料システムの共用部位(例えばフィードポンプ等)の故障と推測でき、ステップS6の場合よりも故障部位を絞り込むことが可能なためである。結果として、可能な限り詳細に故障部位が特定されることから、修理等の対処が容易となる。
また、MPI+DIモード中に故障判定が下されたとして上記ステップS14でNoの判定を下した場合には、ステップS19に移行する。以降の処理は、故障判定の対象をステップS15〜19のDI燃料システムからMPI燃料システムに代えただけのため概略のみ述べるが、ステップS19でモニタ禁止行程が経過すると、ステップS20でMPIモード中においてMPI用A/F学習値を更新しているとき、MPI用A/F学習値に積算値を加算した値が正常範囲内にあるか否かを判定する。ステップS20の条件成立が所定時間継続すると、ステップS21でYesの判定を下してステップS22に移行し、故障コードとしてDI燃料システムのリーン側またはリッチ側故障を示す故障コードを記憶する。また、ステップS20の条件が成立せずにNoの判定を下したときには、そのままルーチンを終了する。
本実施形態では、以上のステップS15〜17、ステップS19〜21の処理を実行するときのECU31が、本発明の第2の故障判定手段として機能し、ステップS18,22の処理を実行するときのECU31が、本発明の故障特定手段として機能する。
そして、以上の処理によりECU31に記憶された故障コードに基づき、故障表示が行われて運転者に修理が促されると共に、販社等では故障コードを参考として修理等の対処が実施される。
一方、このようにしてECU31に記憶された故障コードは、その後のエンジン運転中に故障判定が下されないことを条件として消去される。消去の条件は、ステップS6の処理に基づくエンジン1の運転システム全体の故障コードと、ステップS18,22の処理に基づくMPI燃料システム或いはDI燃料システムの故障コードとで異なる。
MPI燃料システム或いはDI燃料システムの故障コードを消去するには、それぞれのシステムに対応する噴射形態中に故障無しと判定される必要がある。即ち、MPI燃料システムの故障コードは、MPIモード中に故障判定が下れなかった場合に消去され、Di燃料システムの故障コードは、MPI+DIモード中に故障判定が下れなかった場合に消去される。
これに対してエンジン1の運転システム全体の故障コードは、エンジン運転条件の類似を条件として、MPIモードまたはMPI+DIモードの何れの噴射形態で故障判定が下れない場合でも消去される。運転条件の類似を条件とするのは、かけ離れた運転条件での誤った故障コードの消去を防止して、故障コードの消去を的確に実行するためである。
また、噴射形態を問わないのは、故障部位が運転システム全体の何れかとしか特定できていないため、その故障コードの消去に関しても噴射形態を限定すべきでないとの知見に基づく。例えば上記と同じく故障コードを消去するときの噴射形態を限定した場合には、たとえ故障コードが誤っていても、その噴射形態による運転が実施されない限り消去されない。噴射形態を問わないことにより、他方の噴射形態による運転時にも故障コードの消去が可能となり、誤った故障コードを迅速に消去できるという利点が得られる。
本実施形態では、上記ステップS6,7,18,22の処理により故障コードを設定するときのECU31、及び設定した故障コードを消去するときのECU31が故障コード設定手段として機能する。
以上のように本実施形態のエンジン1の燃料システムの故障検出装置では、MPIモードまたはMPI+DIモードを何れか一方の噴射形態で故障判定を下したときに、他方の噴射形態の燃料システムの正常を確認し、正常と確認できた場合には外的要因無しを根拠として、故障判定を下した一方の噴射形態の燃料システム自体の故障を断定している。結果として外的要因に影響されることなく一方の噴射形態の燃料システムの故障を断定することができ、その故障判定の信頼性を飛躍的に高めることができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ポート噴射を行うMPIモードとポート噴射及び筒内噴射を併用するMPI+DIモードとの2種の噴射形態を切換可能なエンジン1を対象としたが、噴射形態はこれに限るものではない。例えばエンジン1の筒内で燃料を拡散燃焼させる拡散燃焼モードと予混合燃焼させる予混合燃焼モードとを切換可能なエンジンを対象としてもよい。また吸気ポートに一対のポートインジェクタを設け、一方のインジェクタのみを駆動するモードと双方のインジェクタを駆動するモードとを切換可能なエンジンを対象としてもよい。或いは、3種以上の噴射形態を切換可能なエンジンを対象としてもよい。
また上記実施形態では、エンジン1の空燃比のずれに基づき燃料システムの故障判定を実施したが、故障判定の手法はこれに限るものではない。例えば特許文献1の技術のように、エンジンの回転変動に基づき故障判定してもよい。また、第1の故障判定手段と第2の故障判定手段として別の故障判定の手法を適用してもよい。
1 エンジン
31ECU(第1の故障判定手段、第2の故障判定手段、故障特定手段、
故障コード設定手段)

Claims (2)

  1. 第1の噴射形態と第2の噴射形態とを切換可能なエンジンにおいて、
    前記第1及び第2の噴射形態による前記エンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理を実行する第1の故障判定手段と、
    前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する第2の故障判定手段と、
    前記第2の故障判定手段による故障判定の結果に基づき、前記第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障を特定する故障特定手段と、を備え、
    前記故障特定手段は、前記第1の故障判定手段により故障判定が下されたあと、前記第2の故障判定手段により故障判定が下されなかったときに前記一方の噴射形態を司る燃料システムの故障と断定し、前記第2の故障判定手段により故障判定が下されたときに、前記燃料システムを含めたエンジン運転システム全体の何れか部位の故障と見なし、
    前記エンジン運転システム全体の故障は、前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、前記エンジン運転システム全体の故障を示す故障コードが故障コード設定手段により記憶されることによって判定され、その後の前記第1または第2の何れかの噴射形態による運転中に前記第1の故障判定手段により故障判定が下されなかったとき、故障コード設定手段は、前記故障コードを消去する
    ことを特徴とするエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  2. 前記第1の噴射形態は、前記エンジンの吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射であり、前記第2の噴射形態は、前記ポート噴射と前記エンジンの筒内に燃料を噴射する筒内噴射との併用であり、
    前記故障特定手段は、前記第1の噴射形態を司る燃料システムとして前記ポート噴射の燃料システムの故障を特定し、前記第2の噴射形態を司る燃料システムとして前記筒内噴射の燃料システムの故障を特定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
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