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JP6695161B2 - ストーカ式焼却炉 - Google Patents

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Description

本発明は、ストーカ式焼却炉に関する。
ごみ焼却炉における給じん装置では、プッシャー等の駆動機構の速度を制御することにより、火格子部上へのごみの供給量が調整される。ごみの供給量の調整では、火格子部上のごみ層厚が参照される。特許文献1では、ストーカの下側から燃焼空気を供給するためのダクト内の圧力と、燃焼室内の圧力との差圧を測定することにより、ごみ層厚を算出する手法が開示されている。特許文献2では、乾燥ストーカの始端に光電式またはマイクロ波式の検出器を設け、ストーカのごみ層厚を「高」「適性」「低」の三段階に弁別する手法が開示されている。
なお、特許文献3では、ガス化溶融炉において、炉体上方に設けられたアンテナからマイクロ波を発信し、その反射波を測定することにより、流動状態にある充填層の層高レベルを測定する手法が開示されている。
特許3030614号公報 特公昭62−7447号公報 特開平9−89632号公報
ところで、特許文献1の手法では、一次燃焼空気の風箱と燃焼空間の差圧が利用されるため、ごみの高さを精度よく検出することができない場合がある。特許文献2のごみ焼却炉では、検出器が燃焼室内の側面に配置されており、ごみの高さの三段階の弁別しかできない。また、検出器にクリンカーが付着しやすくなり、この場合、ごみの高さの検出に支障が生じてしまう。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、乾燥火格子上のごみの高さを精度よく、かつ、安定して検出することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、ストーカ式焼却炉であって、所定の搬送経路に沿ってごみを搬送する火格子部を有し、前記火格子部が、前記ごみの乾燥が行われる乾燥火格子と、前記搬送経路において前記乾燥火格子の下流側に隣接するとともに、前記ごみの燃焼が行われる燃焼火格子とを有する燃焼室と、ごみを貯留するホッパを有し、前記乾燥火格子上に前記ホッパ内のごみを供給するごみ供給部と、前記搬送経路の各位置において、ごみに対して空気を供給することにより、前記燃焼室内にて前記ごみを燃焼させる空気供給部と、前記乾燥火格子上のごみよりも上方から、前記ごみの表面に向けて電波を発信し、前記電波の前記表面からの反射波を受信することにより、前記乾燥火格子上の前記ごみの高さを検出するごみ高さ検出部と、前記乾燥火格子上の前記ごみの高さに基づいて、前記ごみ供給部によるごみの供給速度を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記ホッパ内に投入されるごみの重量および前記ホッパ内のごみの体積を測定することにより取得されるごみの見かけ比重、または、前記ごみの重量、前記燃焼室から排出される排ガスの流量、並びに、前記排ガス中に含まれる水蒸気の濃度および炭酸ガスの濃度を測定することにより取得されるごみの低位発熱量に基づいて、前記乾燥火格子上の前記ごみの高さの目標値を変更し、前記ごみ高さ検出部により取得される前記ごみの高さおよび前記目標値に基づいて、前記ごみ供給部によるごみの供給速度を制御し、前記見かけ比重が小さくなる、または、前記低位発熱量が大きくなる場合に、前記ごみの高さの前記目標値が低減され、前記見かけ比重が大きくなる、または、前記低位発熱量が小さくなる場合に、前記ごみの高さの前記目標値が増大される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のストーカ式焼却炉であって、前記ごみ高さ検出部が、前記電波の発信および前記反射波の受信を行う測定面の周囲からパージ用ガスを噴出するノズルを有する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のストーカ式焼却炉であって、前記パージ用ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含むEGRガスである。
本発明によれば、乾燥火格子上のごみの高さを精度よく、かつ、安定して検出することができる。
焼却炉の構成を示す図である。 二次空気供給部の構成を示す図である。 EGRガス供給部の構成を示す図である。 ごみ高さ検出部の構成を示す図である。 基本制御ユニットの機能構成を示す図である。 補正制御ユニットの一部の機能構成を示す図である。 補正制御ユニットの他の機能構成を示す図である。 補正制御ユニットの他の機能構成を示す図である。
図1は、本発明の一の実施の形態に係る焼却炉1の構成を示す図である。後述するように、図1の焼却炉1は、複数の火格子(ストーカ)により廃棄物であるごみを搬送しつつ燃焼させるストーカ式の焼却炉である。
焼却炉1は、燃焼室2と、空気供給部3と、ごみ供給部4と、排出経路5と、EGRガス供給部6(後述の図3参照)と、制御システム8とを備える。制御システム8は、焼却炉1の全体制御を担う。燃焼室2では、ごみの燃焼と、ごみから発生した炭素と水素を主成分とした燃焼生成ガスの燃焼とが行われる。燃焼室2から排出される排ガス(燃焼ガス)は、排出経路5にて所定の排ガス処理が施され、大気へと導かれる。
ごみ供給部4は、ホッパ41と、給じん装置42とを備える。ホッパ41は、ごみを貯留する。ホッパ41内には、クレーン431により、ごみピットからごみが投入される。クレーン431には、重量計432が設けられており、ホッパ41内に投入されるごみの重量が取得される。また、走査可能なレーザ距離計、または、ステレオカメラである体積測定部433により、ホッパ41内のごみの体積が測定される。実際には、クレーン431によりホッパ41内にごみが投入される毎に、ホッパ41内のごみの体積の変化量が算出され、投入されたごみの体積が取得される。制御システム8では、ホッパ41内に投入されたごみの単位時間毎の重量の和および体積の和が求められる。以下の説明では、各単位時間内にホッパ41内に投入されるごみを「ごみ群」と呼び、ごみ群の重量および体積を、「ごみ群重量」および「ごみ群体積」と呼ぶ。
給じん装置42は、プッシャーやスクリュー等の駆動機構421による押出動作により、ホッパ41内のごみを燃焼室2内の後述の火格子部21上に供給する。駆動機構421を制御することにより、給じん装置42から火格子部21上へのごみの供給速度(例えば、所定時間当たりの押出動作の回数であり、以下、「給じん装置速度」という。)が調整可能である。
燃焼室2は、火格子部21と、排出部22とを有する。火格子部21は、給じん装置42と排出部22との間に位置し、両者の間にて連続的に配列される複数の火格子を備える。複数の火格子において1つ置きに配置される可動火格子の往復運動により、火格子部21上のごみが排出部22に向かって移動する。このように、火格子部21の複数の火格子が、給じん装置42から排出部22へと向かう搬送経路に沿ってごみを搬送する。後述するように、空気供給部3により搬送経路の各位置においてごみに対して空気が供給され、燃焼室2内にてごみが燃焼する。燃焼後のごみ(主として灰)は排出部22にて燃焼室2外に排出される。なお、火格子部21における複数の火格子の形状、配列、動作等については様々なものが採用可能である。
火格子部21上の搬送経路は、ごみの移動方向において3個の部分に区分される。搬送経路における給じん装置42側の部分23には、給じん装置42によりごみが供給され、当該部分23において主としてごみの乾燥が行われる。搬送経路における中央の部分24では、主としてごみの燃焼が行われ、排出部22側の部分25では、主としてごみの後燃焼が行われる。以下の説明では、搬送経路における3個の部分23,24,25を、それぞれ乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25と呼ぶ。搬送経路において、燃焼火格子24は乾燥火格子23の下流側に隣接し、後燃焼火格子25は燃焼火格子24の下流側に隣接する。乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25のそれぞれは、複数の火格子の集合である。
図1の焼却炉1では、燃焼火格子24が、第1燃焼火格子241と、第2燃焼火格子242とにさらに区分される。また、後燃焼火格子25が、第1後燃焼火格子251と、第2後燃焼火格子252とにさらに区分される。乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25のそれぞれに対して、可動火格子を駆動する駆動機構26が設けられる。乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242および後燃焼火格子25では、ごみの搬送速度が個別に調整可能である。以下の説明では、乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25におけるごみの搬送速度を「乾燥火格子速度」、「燃焼火格子速度」および「後燃焼火格子速度」という。
空気供給部3は、一次空気供給部31と、二次空気供給部32(後述の図2参照)とを備える。一次空気供給部31は、空気予熱器311と、加熱空気供給管312と、補助空気供給管313と、バイパス管314(一部を破線にて示す。)とを備える。空気予熱器311は、外部からファン(図示省略)を介して供給される燃焼用の空気を加熱し、加熱空気を排出する。加熱空気供給管312の一端は、空気予熱器311に接続される。加熱空気供給管312の他端は、5個の分岐管315に分岐しており、5個の分岐管315は、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252にそれぞれ接続される。加熱空気供給管312により、空気予熱器311からの加熱空気が、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252に導かれる。
補助空気供給管313の一端は、加熱空気供給管312に接続される。補助空気供給管313の他端には、未加熱の空気が供給される。これにより、加熱空気供給管312において補助空気供給管313が接続される位置316を混合位置として、加熱空気よりも低い温度の空気が当該加熱空気に混合される。加熱空気供給管312内にて、混合位置316と分岐管315との間には温度計331が設けられる。温度計331の出力値が所定の目標温度となるように、空気予熱器311から排出される加熱空気の流量(すなわち、空気予熱器311に供給される空気の流量)、および、補助空気供給管313を流れる未加熱の空気の流量が調整される。
バイパス管314の一端は、加熱空気供給管312において空気予熱器311と混合位置316との間の位置(以下、単に「接続位置」という。)に接続される。バイパス管314の他端は、乾燥火格子23に対する分岐管315に接続される。バイパス管314は、当該接続位置と乾燥火格子23とを実質的に接続する。当該接続位置では、未加熱の空気が混合されていない加熱空気が流れており、当該加熱空気がバイパス管314に供給される。また、バイパス管314には、ダンパを含むバイパス流量調整部332が設けられる。空気供給部3では、バイパス流量調整部332により、乾燥火格子23に供給する空気を、燃焼火格子24および後燃焼火格子25に供給する空気の温度よりも高い温度に調整可能である。実際には、乾燥火格子23に対する分岐管315内には、温度計333が設けられる。温度計333の出力値に基づく制御システム8の制御により、バイパス管314を流れる加熱空気の流量が調整され、乾燥火格子23に供給する空気の温度(以下、「乾燥火格子空気温度」という。)が調整される。
また、各分岐管315には、ダンパ334および流量計335が設けられる。制御システム8が、流量計335の出力値に基づいてダンパ334を制御することにより、各分岐管315を流れる空気の流量、すなわち、乾燥火格子23、第1燃焼火格子241、第2燃焼火格子242、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252のそれぞれに供給する空気の流量が調整される。なお、乾燥火格子23に接続される分岐管315では、圧力差および適正なダクティングにより、バイパス管314から流れる加熱空気は逆流しない。もちろん、分岐管315において逆止弁が設けられてもよい。以下の説明では、一次空気供給部31から火格子部21に供給される空気を「一次空気」と呼ぶ。また、乾燥火格子23、燃焼火格子24および後燃焼火格子25にそれぞれ供給する一次空気の流量を「乾燥火格子空気流量」、「燃焼火格子空気流量」および「後燃焼火格子空気流量」と呼び、これらの総流量を「一次空気流量」と呼ぶ。燃焼火格子空気流量は、第1燃焼火格子241および第2燃焼火格子242において個別に設定されてよく、後燃焼火格子空気流量も、第1後燃焼火格子251および第2後燃焼火格子252において個別に設定されてよい。
図2は、二次空気供給部32の構成を示す図である。二次空気供給部32は、空気予熱器321と、加熱空気供給管322と、補助空気供給管323、ファン324とを備える。空気予熱器321は、ファン324を介して供給される燃焼用の空気を加熱し、加熱空気を排出する。加熱空気供給管322の一端は、空気予熱器321に接続される。加熱空気供給管322の他端は、2つの分岐管325に分岐しており、2つの分岐管325は、前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327にそれぞれ接続される。加熱空気供給管322により、空気予熱器321からの加熱空気が、前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327に導かれる。燃焼室2における前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327の配置については後述する。
補助空気供給管323の一端は、加熱空気供給管322に接続される。補助空気供給管323の他端は、ファン324と空気予熱器321との間の配管に接続される。補助空気供給管323により、加熱空気供給管322を流れる加熱空気に、未加熱の空気が混合される。加熱空気供給管322において、補助空気供給管323が接続される位置と分岐管325との間には温度計341が設けられる。温度計341の出力値が所定の目標温度となるように、空気予熱器321から排出される加熱空気の流量(すなわち、空気予熱器321に供給される空気の流量)、および、補助空気供給管323を流れる未加熱の空気の流量が調整される。
また、各分岐管325には、ダンパ342および流量計343が設けられる。制御システム8が、流量計343の出力値に基づいてダンパ342を制御することにより、各分岐管325を流れる空気の流量、すなわち、前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327から噴出される空気の流量が個別に調整可能である。以下の説明では、二次空気供給部32から前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327に供給される空気を「二次空気」と呼び、二次空気の総流量を「二次空気流量」と呼ぶ。
図3は、EGRガス供給部6の構成を示す図である。EGRガス供給部6は、EGRガス供給管61と、ファン62とを備える。EGRガス供給管61の一端には、燃焼室2から排出される排ガスを含むガス(すなわち、排ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)ガスであり、以下、「EGRガス」という。)がファン62を介して供給される。EGRガスは、例えば、排出経路5に設けられるバグフィルタ(図示省略)を通過した排ガスと空気とが混合されたものである。EGRガスは、当該排ガスのみを含むガスであってもよい。すなわち、EGRガスは、少なくとも排ガスを含む。
EGRガス供給管61の他端は、2つの分岐管63に分岐しており、2つの分岐管63は、2つのガスノズル、すなわち、前壁側EGRガスノズル64および後壁側EGRガスノズル65にそれぞれ接続される。各分岐管63には、ダンパ66および流量計67が設けられる。制御システム8が、流量計67の出力値に基づいてダンパ66を制御することにより、各分岐管63を流れるEGRガスの流量、すなわち、前壁側EGRガスノズル64および後壁側EGRガスノズル65から燃焼室2内に噴出(供給)されるEGRガスの流量が個別に調整可能である。以下の説明では、前壁側EGRガスノズル64および後壁側EGRガスノズル65から噴出されるEGRガスの流量を「前壁側EGRガス流量」および「後壁側EGRガス流量」と呼び、これらの総流量を「EGRガス流量」と呼ぶ。
図1に示す燃焼室2では、乾燥火格子23の上方をおよそ覆う前壁部201と、後燃焼火格子25の上方をおよそ覆う後壁部202とが設けられる。前壁側二次空気ノズル326および前壁側EGRガスノズル64は、前壁部201において個別に設けられる。図1では、前壁側二次空気ノズル326および前壁側EGRガスノズル64を、1つの矢印A1により示している。後壁側二次空気ノズル327および後壁側EGRガスノズル65は、後壁部202において個別に設けられる。図1では、後壁側二次空気ノズル327および後壁側EGRガスノズル65を、1つの矢印A2により示している。
燃焼室2において、排出経路5へと向かうガスに対して、前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327から二次空気が供給(噴出)される。これにより、燃焼室2内で発生した未燃ガスが燃焼する。また、前壁側EGRガスノズル64から乾燥火格子23上のごみ近傍に向けてEGRガスが噴出され、後壁側EGRガスノズル65により、搬送経路において乾燥火格子23から下流側に離れた位置の上方から、燃焼室2内にEGRガスが噴出される。燃焼室2内にEGRガスを供給することにより、燃焼温度が低下する。これにより、サーマルNOx(窒素酸化物)の発生が抑制され、NOx濃度の低減等が実現される。
燃焼室2の上部には、排ガスを熱源とするボイラ711が設けられる。ボイラ711からの蒸気は、排ガスを利用する過熱器712によりさらに加熱され、過熱蒸気が生成される。過熱器712から排出される過熱蒸気の流量(以下、「ボイラ発生蒸気量」という。)は、流量計713により測定される。過熱蒸気は、例えば発電等に利用される。
燃焼室2内には、複数の温度計721,722、ごみ層厚取得部73、ごみ高さ検出部74および熱画像撮像部75がさらに設けられる。複数の温度計721,722は、例えば、熱電対温度計である。一の温度計721は、燃焼室2において排出経路5との接続部近傍、すなわち、燃焼室2の出口近傍に位置する。温度計721により取得される温度を、以下、「燃焼室出口温度」という。他の一の温度計722は、燃焼室2において後燃焼火格子25の上方に位置する。温度計722により取得される温度を、以下、「後燃焼火格子上部温度」という。燃焼室2内には、他の温度計が設けられてもよい。
ごみ層厚取得部73は、2つの圧力計を有する。一方の圧力計は、燃焼室2内における燃焼火格子24の上方の圧力を取得し、他方の圧力計は、燃焼火格子24の下側(分岐管315側)の圧力を取得する。当該2つの圧力計により取得される2つの圧力の差圧は、燃焼火格子24上に存在するごみの量(厚さ)に依存する。ごみ層厚取得部73では、上記差圧、および、燃焼火格子24に対する一次空気の供給量等に基づいて、燃焼火格子24上のごみの層の厚さ(厚さの推定値であり、以下、「算出ごみ層厚」という。)が取得される。
熱画像撮像部75は、例えば後壁部202に取り付けられ、火格子部21上のごみの熱画像を撮像する。熱画像撮像部75は、赤外線カメラであり、例えば、波長3.9マイクロメートル(μm)において最大感度を有する。熱画像撮像部75には、冷却機構が設けられ、焼却炉1の稼働中において火格子部21上のごみの熱画像(以下、「IR熱画像」という。)が安定して取得される。IR熱画像は、所定の処理により輝炎の影響が除去された熱画像であり、燃焼室2内のごみの燃焼状態(具体的には、表面温度)が正確に把握可能である。後述するように、IR熱画像は、火格子部21上におけるごみの燃焼位置の検出に利用される。焼却炉1では、複数の熱画像撮像部75が設けられてもよい。
図4は、ごみ高さ検出部74の構成を示す図である。図4では、ごみ高さ検出部74を拡大して示している。ごみ高さ検出部74は、前壁部201に設けられ、測定部741と、環状ノズル742とを備える。測定部741は、乾燥火格子23上のごみ9よりも上方に配置され、発信器と、受信器とを含む。発信器のアンテナおよび受信器のアンテナは、共通の測定面743に設けられる。発信器および受信器は、アンテナを共有してもよい。測定部741では、乾燥火格子23上のごみ9の表面に向けてマイクロ波帯の電波が測定面743から発信され、当該電波のごみ9の表面からの反射波が測定面743において受信される。これにより、乾燥火格子23上のごみ9の高さ(以下、「乾燥火格子ごみ高さ」という。)が検出される。特に、測定部741は、乾燥火格子23上のごみ9の上部を斜めにレベル検出することで、乾燥火格子23上に安定的にごみ9が供給されていることを判定できるようにすることが好ましい。なお、ごみ高さ検出部74では、ミリ波帯の電波等が利用されてもよい。
環状ノズル742は、測定部741の周囲を囲む環状であり、環状噴出口を有する。環状噴出口は、パージ用ガスを常時噴出する。環状噴出口の各部位から噴出されるパージ用ガスは、測定面743の近傍における焦点において、環状噴出口の他の部位から噴出されるパージ用ガスと衝突する。これにより、測定面743が、パージ用ガスの流れにより囲まれる空間内に配置される。パージ用ガスは、好ましくは、排ガスを含むEGRガスである。ごみ高さ検出部74では、パージ用ガスにより測定面743が汚れることが防止され、乾燥火格子ごみ高さが安定して精度よく検出される。環状ノズル742は防熱ユニットの一部も兼ねており、防熱ユニットにより熱による測定部741の損傷が抑制される。
図1に示すように、排出経路5には、酸素濃度計51と、濃度測定ユニット52と、流量計53とが設けられる。酸素濃度計51は、排出経路5における燃焼室2近傍に設けられる。酸素濃度計51は、レーザ光を利用して酸素濃度(以下、「燃焼室出口酸素濃度」という。)を測定する。濃度測定ユニット52および流量計53は、バグフィルタ(図示省略)の下流側、すなわち、バグフィルタと煙突との間に設けられる。濃度測定ユニット52では、排ガス中に含まれる水蒸気の濃度および炭酸ガスの濃度(以下、「排ガス水分濃度」および「排ガスCO濃度」という。)が測定される。流量計53では、排ガスの流量が測定される。
図5は、制御システム8に含まれる基本制御ユニット81の機能構成を示す図である。基本制御ユニット81は、蒸気量制御部811と、焼却量演算部812と、焼却量制御部813と、燃焼室温度制御部814と、酸素濃度制御部815と、熱灼減量制御部816と、燃焼位置制御部817と、ごみ層厚制御部818とを備える。図5では、基本制御ユニット81の各制御部に入力される値の種類、および、当該制御部が指令(出力)する値の種類(操作パラメータ)も示している。基本制御ユニット81の各制御部では、入力される値に基づいて、各操作パラメータの指令値が常時調整される。以下に説明する制御システム8の動作は一例であり、適宜変更されてよい。基本制御ユニット81に含まれる複数の制御部において、操作パラメータが重複する場合には、当該複数の制御部に対してそれぞれ定められた重み(操作パラメータ毎に相違してもよい。)を考慮して、当該操作パラメータの実際の指令値が決定される。
蒸気量制御部811では、ボイラ発生蒸気量を後述の目標蒸気量に近似させる操作が行われる。例えば、ボイラ発生蒸気量が目標蒸気量よりも大きい場合に、ごみ送り基準速度の指令値が現在の値から低減される。ここで、ごみ送り基準速度の指令値は、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値の算出における基準となるものである。ごみ送り基準速度の指令値を低減する場合、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値が小さくなる。ボイラ発生蒸気量が目標蒸気量よりも小さく、ごみ送り基準速度の指令値を増大する場合、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値が大きくなる。
また、ボイラ発生蒸気量が目標蒸気量よりも大きい場合、一次空気流量の指令値が現在の値から低減され、二次空気流量の指令値が現在の値から増大される。一次空気流量の指令値は、乾燥火格子空気流量の指令値、燃焼火格子空気流量の指令値、および、後燃焼火格子空気流量の指令値の算出における基準となるものである。一次空気流量の指令値の増減により、乾燥火格子空気流量の指令値、燃焼火格子空気流量の指令値、および、後燃焼火格子空気流量の指令値も同様に増減する。二次空気流量の指令値は、二次空気供給部32から前壁側二次空気ノズル326および後壁側二次空気ノズル327に供給される空気の総流量の指令値である。
一次空気流量および二次空気流量の総量は、基準空気量として定められ、一次空気流量の指令値および二次空気流量の指令値の変更は、基準空気量に対する各流量の割合の変更である(以下同様)。ボイラ発生蒸気量が目標蒸気量よりも小さい場合には、一次空気流量の指令値が、現在の値から増大され、二次空気流量の指令値が現在の値から低減される。
焼却量演算部812では、単位時間当たりにごみ供給部4から乾燥火格子23上に供給されるごみの重量が、実焼却量として求められる。実焼却量は、例えば、体積測定部433の測定値に基づいて単位時間当たりに火格子部21上に供給されるごみの体積を求め、当該体積に後述の見かけ比重を掛けることにより求められる。焼却量制御部813は、後述の焼却量一定制御において能動化される構成であり、詳細については後述する。
燃焼室温度制御部814では、燃焼室出口温度が予め設定された設定出口温度よりも大きい場合に、(燃焼室出口温度が設定出口温度に近似するように)EGRガス流量の指令値が現在の値から増大され、燃焼室出口温度が設定出口温度よりも小さい場合に、EGRガス流量の指令値が現在の値から低減される。酸素濃度制御部815では、燃焼室出口酸素濃度が予め設定された設定出口濃度よりも大きい場合に、二次空気流量の指令値が現在の値から低減され、一次空気流量の指令値が現在の値から増大される。燃焼室出口酸素濃度が設定出口濃度よりも小さい場合に、二次空気流量の指令値が現在の値から増大され、一次空気流量の指令値が現在の値から低減される。
熱灼減量制御部816では、後燃焼火格子上部温度が予め設定された設定上部温度よりも大きい場合に、後燃焼火格子空気流量の指令値が現在の値から増大され、後燃焼火格子速度の指令値が現在の値から低減される。後燃焼火格子上部温度が設定上部温度よりも小さい場合に、後燃焼火格子空気流量の指令値が現在の値から低減され、後燃焼火格子速度の指令値が現在の値から増大される。燃焼位置制御部817では、後燃焼火格子上部温度が設定上部温度よりも大きい場合に、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値のそれぞれが現在の値から低減される。後燃焼火格子上部温度が設定上部温度よりも小さい場合に、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値のそれぞれが現在の値から増大される。
ごみ層厚制御部818では、算出ごみ層厚が、目標ごみ層厚よりも大きい場合に、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、および、燃焼火格子速度の指令値のそれぞれが現在の値から低減される。目標ごみ層厚は、後述の目標焼却量等に応じて決定される。算出ごみ層厚が目標ごみ層厚よりも小さい場合に、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、および、燃焼火格子速度の指令値のそれぞれが現在の値から増大される。このように、算出ごみ層厚に基づいて、火格子部21によるごみの搬送速度が制御される。
図6は、制御システム8に含まれる補正制御ユニット82の一部の機能構成を示す図である。補正制御ユニット82は、基本制御ユニット81の上記制御動作に付加して、制御(補正制御)を行うものである。補正制御ユニット82は、ごみ質演算部821と、ごみ質補正制御部822とを備える。ごみ質演算部821では、ごみ群重量およびごみ群体積に基づいて、各ごみ群の見かけ比重(ここでは、水に対する比重)が求められる。後述するように、ごみ群の見かけ比重は、各種基準値等の算出に利用される。焼却炉1では、ごみ群重量を取得する重量計432、ごみ群体積を取得する体積測定部433、および、ごみ質演算部821等により、ごみの見かけ比重を取得する見かけ比重取得部が実現される。
また、ごみ質演算部821では、ごみの低位発熱量が算出される。ここで、低位発熱量の算出について述べる。低位発熱量の算出では、例えば、特公昭61−16889号公報に記載の手法が利用される。ここでは、単位時間当たりの排ガスの流量をG、単位時間当たりに火格子部21上に供給されるごみの重量をQとして、ごみ1kg(キログラム)当たりの排ガス量が、(G/Q)で与えられるものとする。排ガス中に含まれる炭酸ガスの濃度をC(CO)[%]とすると、ごみ1kg当たりの炭酸ガス量V(CO)は、数1にて表される。
(数1)
V(CO)=(C(CO)/100)×(G/Q)
また、排ガス中に含まれる水蒸気の濃度をC(HO)[%]とすると、ごみ1kg当たりの水蒸気量V(HO)は、数2にて表される。
(数2)
V(HO)=(C(HO)/100)×(G/Q)
ごみ中の可燃分の元素組成における炭素の比率をRとし、ごみの可燃分の重量パーセント濃度をBとすると、ごみ1kg当たりの炭酸ガス量V(CO)は、数3にて表される。
(数3)
V(CO)=(R/100)×(B/100)×(22.4/12)
=1.87×10−4×R
一方、ごみ中の可燃分の元素組成における水素の比率をRとすると、ごみ中の可燃分における水素に起因する水蒸気量V'(HO)は、数4にて表される。
(数4)
V'(HO)=(R/100)×(B/100)×(22.4/2.016)
=1.111×10−3×R
また、ごみ中の水分の重量パーセント濃度をWとすると、当該水分に起因する水蒸気量V''(HO)は、数5にて表される。
(数5)
V''(HO)=(W/100)×(22.4/18)
=1.244×10−2×W
したがって、ごみ1kg当たりの水蒸気量V(HO)は、数6にて表される。
(数6)
V(HO)=1.111×10−3×RB+1.244×10−2×W
数3からごみの可燃分の重量パーセント濃度Bは、数7にて表される。
(数7)
B=5.35×10×V(CO)/R
また、数6および数7からごみ中の水分の重量パーセント濃度Wは、数8にて表される。
(数8)
W=80.4×V(HO)−478×(R/R)×V(CO
ごみ1kg当たりの低位発熱量Huは、数9にて表される。
(数9)
Hu=50×B−6×W
したがって、ある時刻における単位時間当たりの排ガスの流量G、排ガス水分濃度C(HO)、および、排ガスCO濃度C(CO)、並びに、単位時間当たりに火格子部21上に供給されるごみの重量Q(既述の実焼却量)を用いることにより、数1、数2、数7、数8および数9から低位発熱量Huが算出(推定)される。なお、ごみ中の可燃分の元素組成における炭素の比率Rおよび水素の比率Rは、事前の分析等により取得した値が用いられる。焼却炉1では、ごみの重量を取得する重量計432、排ガスの流量を取得する流量計53、排ガス中に含まれる水蒸気の濃度および炭酸ガスの濃度を取得する濃度測定ユニット52、並びに、ごみ質演算部821等により、ごみの低位発熱量を取得する低位発熱量取得部が実現される。
ごみ質演算部821では、各時刻において直近の所定期間内に取得される低位発熱量の平均値、および、当該低位発熱量に対応するごみ群の見かけ比重の平均値が、当該時刻において利用すべき低位発熱量および見かけ比重(以下、それぞれ「対象低位発熱量」および「対象見かけ比重」という。)として取得される。対象見かけ比重は、直近の所定期間内に取得される見かけ比重の平均値であってもよい。また、取得される見かけ比重および低位発熱量は、給じん装置速度に応じた時間差を考慮することにより当該低位発熱量に対応するごみ群を一致させることが好ましい。このように、低位発熱量および見かけ比重の移動平均値を求めることにより、ごみの質の中・長期的な変動(季節、収集日、天候による変動等)を把握して、後述の補正制御を精度よく行うことが可能となる。また、低位発熱量または見かけ比重が異常な値となる場合でも、対象低位発熱量および対象見かけ比重(並びに、これらの値を用いて算出される各種基準値等)の急激な変動を抑制することができる。なお、ごみの質の中・長期的な変動を把握するという観点では、各時刻における対象低位発熱量および対象見かけ比重が、当該時刻において実際に処理されるごみよりも少し前に処理されているごみに基づく値であることは問題とはならない。
ごみ質補正制御部822では、例えば、予めユーザにより設定された設定蒸気量にてボイラ発生蒸気量を一定とする制御(蒸気量一定制御)を行う場合には、設定蒸気量、対象低位発熱量および対象見かけ比重を用いて、現在の制御において利用すべきごみ送り基準速度の基準値、一次空気流量の基準値、および、二次空気流量の基準値が算出されて更新される。なお、蒸気量一定制御では、設定蒸気量が目標蒸気量となる。
各種基準値等の算出の一例では、設定蒸気量に所定の換算係数を掛けることにより総熱量が求められ、総熱量を対象低位発熱量で割ることにより、目標焼却量が求められる。また、目標焼却量を対象見かけ比重で割り、さらに所定の換算係数で割ることにより、ごみ送り基準速度の基準値が求められる。新たな(更新後の)ごみ送り基準速度の基準値が、直前の(更新前の)当該基準値から増減する場合、ごみ送り基準速度の指令値も同様に増減する。
また、対象低位発熱量を所定の関数に入力することにより得られる値を、上記総熱量に掛けることにより、基準空気量が求められる。そして、対象低位発熱量を他の2つの関数に入力することにより得られる2つの値を基準空気量にそれぞれ掛けることにより、一次空気流量の基準値および二次空気流量の基準値が求められる。当該2つの値は、基準空気量における一次空気流量および二次空気流量の割合を示す。更新後の一次空気流量の基準値が、更新前の当該基準値から増減する場合、一次空気流量の指令値も同様に増減する(二次空気流量において同様)。基準空気量が一定とされ、一次空気流量および二次空気流量の割合のみが、対象低位発熱量および対象見かけ比重に基づいて変更されてもよい。各種基準値等は、対象低位発熱量および対象見かけ比重が用いられるのであるならば、様々な演算にて求められてよい。
現在の対象低位発熱量が直前の対象低位発熱量よりも大きい、または、現在の対象見かけ比重が直前の対象見かけ比重よりも小さいときに、ごみ送り基準速度の基準値の更新により、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、後燃焼火格子速度の指令値は(現在の値よりも)低くなる。また、一次空気流量の基準値および二次空気流量の基準値の更新により、一次空気流量の指令値は低くなり、二次空気流量の指令値は高くなる。対象低位発熱量または対象見かけ比重が上記とは逆方向に変動する場合、各操作パラメータの指令値は上記とは逆方向に変動する(以下同様)。
ごみ質補正制御部822では、さらに、乾燥火格子空気流量の指令値、燃焼火格子空気流量の指令値、乾燥火格子空気温度の指令値、前壁側EGRガス流量の指令値、後壁側EGRガス流量の指令値、および、目標ごみ層厚も変更される。現在の対象低位発熱量が直前の対象低位発熱量よりも大きい、または、現在の対象見かけ比重が直前の対象見かけ比重よりも小さいときに、乾燥火格子空気流量の指令値、前壁側EGRガス流量の指令値、および、目標ごみ層厚が低減され、燃焼火格子空気流量の指令値、乾燥火格子空気温度の指令値、および、後壁側EGRガス流量の指令値が増大される。
乾燥火格子空気流量の指令値、および、燃焼火格子空気流量の指令値の変更は、一次空気流量の指令値に対する各流量の割合の変更である(後燃焼火格子空気流量の指令値の変更において同様)。前壁側EGRガス流量の指令値、および、後壁側EGRガス流量の指令値の変更も、EGRガス流量の指令値に対する各流量の割合の変更である。現在の対象低位発熱量が直前の対象低位発熱量よりも大きく(小さく)、かつ、現在の対象見かけ比重が直前の対象見かけ比重よりも大きい(小さい)場合には、対象低位発熱量および対象見かけ比重に対してそれぞれ定められた重み(操作パラメータ毎に相違してもよい。)を考慮して、各操作パラメータに対する指令値が決定される。
ごみ質補正制御部822では、予めユーザにより設定された設定焼却量にて実焼却量を一定とする制御(焼却量一定制御)が行われてもよい。この場合、図5の焼却量制御部813が能動化される。そして、直近の設定期間において実焼却量を積算した値と、設定焼却量を積算した値とが比較される。実焼却量の積算値が設定焼却量の積算値よりも小さい場合には、実焼却量が増大するように、また、実焼却量の積算値が設定焼却量の積算値よりも大きい場合には、実焼却量が低減するように、蒸気量制御部811における目標蒸気量が変更される。目標蒸気量を低減することにより、ごみ送り基準速度の指令値が現在の値から低減され、目標蒸気量を増大することにより、ごみ送り基準速度の指令値が現在の値から増大される。また、当該目標蒸気量、対象低位発熱量および対象見かけ比重を用いて、ごみ送り基準速度の基準値、一次空気流量の基準値、および、二次空気流量の基準値が算出される。現在の対象低位発熱量が直前の対象低位発熱量から変動する、または、現在の対象見かけ比重が直前の対象見かけ比重から変動する場合における、各操作パラメータの指令値の変動は図6と同様である。
以上のように、焼却炉1では、対象見かけ比重および対象低位発熱量に基づいて、ごみ送り基準速度の基準値および一次空気流量の基準値が求められる。そして、これらの基準値に基づいて、火格子部21によるごみの搬送速度、および、火格子部21上のごみに対する空気供給部3による空気の供給流量が制御される。このように、対象見かけ比重および対象低位発熱量の双方に基づいて制御を行うことにより、中・長期的に変動するごみの質に合わせて好ましい燃焼状態をより確実に維持することができる。その結果、安定した低空気比燃焼を実現して、排ガス中のNOx、CO(一酸化炭素)、ダイオキシン類の発生を低減することができる。また、発電の高効率化、排ガス処理に係る薬剤の少量化、燃焼室2内の異常温度上昇の抑制によるボイラ711の延命化、焼却炉1のライフサイクルコスト(LCC)のミニマム化等を実現することができる。
また、対象見かけ比重および対象低位発熱量に基づいて、空気供給部3により乾燥火格子23に供給される空気の温度(乾燥火格子空気温度)が制御される。これにより、変動するごみの質に合わせて乾燥火格子23上のごみを適切に乾燥させることができ、好ましい燃焼状態をより確実に維持することができる。
図1の一次空気供給部31では、空気予熱器311からの加熱空気が、加熱空気供給管312を介して乾燥火格子23および燃焼火格子24に導かれ、加熱空気供給管312の混合位置316において、加熱空気よりも低い温度の空気が加熱空気に混合される。また、加熱空気供給管312において空気予熱器311と混合位置316との間の位置がバイパス管314により乾燥火格子23に接続される。そして、対象見かけ比重および対象低位発熱量に基づいてバイパス流量調整部332を制御することにより、乾燥火格子空気温度が調整される。このような構造により、空気供給部3では、乾燥火格子23においてごみを適切に乾燥させるとともに、(各分岐管315に空気予熱器321を設ける場合に比べて)空気予熱器321の個数を少なくして焼却炉1の製造コストを削減することができる。
ところで、乾燥火格子空気流量を過度に大きくするとホッパ41内のごみに着火(逆火)する可能性があるため、乾燥火格子空気流量の増大には一定の限界がある。これに対し、焼却炉1では、対象見かけ比重および対象低位発熱量に基づいて、前壁側EGRガスノズル64および後壁側EGRガスノズル65からのEGRガスの流量も制御される。また、EGRガスにおいて、高温の燃焼ガスの引き込み量を調整することにより乾燥火格子23上のごみに対する輻射熱を増減して、当該ごみの乾燥具合が制御される。これにより、逆火の発生を抑制しつつ、乾燥火格子23上のごみを適切に乾燥させることができる。また、燃焼室2内に供給される空気の量が過度に増大することも防止される。なお、EGRガス供給部6では、3以上のEGRガスノズルを介して燃焼室2内にEGRガスが供給されてもよい。
図7は、補正制御ユニット82の他の機能構成を示す図である。補正制御ユニット82は、着火点位置演算部823と、着火点制御部824と、燃切点位置演算部825と、燃切点制御部826とを備える。着火点位置演算部823では、IR熱画像に基づいて、ごみの着火点の位置が求められる。着火点制御部824では、着火点の位置に基づくフィードバック制御が行われる。例えば、着火点の位置が、予め設定された設定着火点位置よりも上流側、すなわち給じん装置42側である場合に、後壁側EGRガス流量の指令値が増大され、乾燥火格子空気温度の指令値、前壁側EGRガス流量の指令値、および、乾燥火格子空気流量の指令値が低減される。乾燥火格子空気温度の指令値、前壁側EGRガス流量の指令値、および、乾燥火格子空気流量の指令値の低減により、乾燥火格子23におけるごみの乾燥が抑制され、着火点の位置が下流側に移動する。また、着火点の位置が、設定着火点位置よりも下流側、すなわち排出部22側である場合に、後壁側EGRガス流量の指令値が低減され、乾燥火格子空気温度の指令値、前壁側EGRガス流量の指令値、および、乾燥火格子空気流量の指令値が増大される。これにより、乾燥火格子23におけるごみの乾燥が促進され、着火点の位置が上流側に移動する。
また、燃切点位置演算部825では、IR熱画像に基づいて、ごみの燃切点の位置が求められる。燃切点制御部826では、燃切点の位置に基づくフィードバック制御が行われる。例えば、燃切点の位置が、予め設定された設定燃切点位置よりも上流側である場合に、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値が増大され(すなわち、ごみ送り基準速度の指令値が増大され)、後燃焼火格子空気流量の指令値が低減される。後燃焼火格子空気流量の指令値の低減により、後燃焼火格子25におけるごみの燃焼が抑制され、燃切点の位置が下流側に移動する。また、燃切点の位置が、設定燃切点位置よりも下流側である場合に、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、燃焼火格子速度の指令値、および、後燃焼火格子速度の指令値が低減され、後燃焼火格子空気流量の指令値が増大される。後燃焼火格子空気流量の指令値の増大により、後燃焼火格子25におけるごみの燃焼が促進され、燃切点の位置が上流側に移動する。また、着火点制御部824と同様に、燃切点の位置に基づいて前壁側EGRガス流量および後壁側EGRガス流量も制御される。
ここで、図7の補正制御ユニット82を省略した比較例の焼却炉を想定する。既述のように、図5の基本制御ユニット81では、燃焼位置制御部817により後燃焼火格子上部温度に基づいて燃焼位置が制御される。しかしながら、後燃焼火格子上部温度を参照するのみでは、燃焼位置を安定して制御することが困難である。具体的には、ごみの質が変動した場合に、燃焼制御に遅れが生じ、特にごみの着火点の位置が不安定となる。その結果、比較例の焼却炉では、ボイラ発生蒸気量の変動、燃焼位置が下流側に移動することによる未燃物の増加等が生じる場合がある。
これに対し、図7の補正制御ユニット82を含む焼却炉1では、IR熱画像から火格子部21上のごみの着火点の位置が迅速に取得され、ごみの着火点の位置に基づいて、空気供給部3のバイパス流量調整部332が制御される(すなわち、乾燥火格子空気温度が制御される)。これにより、ごみの着火点の位置を一定に保つ制御を、安定して、かつ、精度よく行うことができる。また、火格子部21上のごみの着火点の位置に基づいて、前壁側EGRガス流量、後壁側EGRガス流量、および、乾燥火格子空気流量も制御することにより、ごみの着火点の位置を一定に保つ制御をより精度よく行うことができる。さらに、IR熱画像から取得される火格子部21上のごみの燃切点の位置に基づいて、給じん装置速度、乾燥火格子速度、燃焼火格子速度、後燃焼火格子速度、前壁側EGRガス流量、後壁側EGRガス流量、および、後燃焼火格子空気流量を制御することにより、ごみの燃切点の位置を一定に保つ制御を精度よく行うことができる。
このように、ごみの着火点および燃切点の位置を一定に保つことにより、ボイラ発生蒸気量の安定化、未燃物の低減、低空気比燃焼における排ガス中のNOxおよびCOの発生量の低減、燃焼室2内の温度の安定化等を実現することができる。実際には、着火点制御部824および燃切点制御部826の動作により、燃焼位置制御部817による後燃焼火格子上部温度に基づく燃焼位置の制御も安定させることが可能となる。
焼却炉1では、ごみの着火点および燃切点のそれぞれの移動速度および方向、または、移動加速度および方向に応じて、各操作パラメータの指令値が変更されてもよい。また、ごみの着火点の位置に基づいて、火格子部21によるごみの搬送速度が制御されてもよい。以上のように、焼却炉1では、IR熱画像から求められるごみの着火点または燃切点の位置に基づいて、空気供給部3による空気の供給流量(上記の例では、乾燥火格子空気流量または後燃焼火格子空気流量)、または、火格子部21によるごみの搬送速度が制御される。
図8は、補正制御ユニット82の他の機能構成を示す図である。補正制御ユニット82は、目標ごみ高さ補正部827と、ごみ高さ制御部828とを備える。既述のように、図6のごみ質補正制御部822により、対象低位発熱量および対象見かけ比重に基づいて目標ごみ層厚が変更(更新)される。更新後の目標ごみ層厚は目標ごみ高さ補正部827に入力され、更新前の値よりも大きくなる場合に、乾燥火格子23上のごみの高さ(すなわち、乾燥火格子ごみ高さ)の目標値である目標ごみ高さが現在の値よりも増大される。更新後の目標ごみ層厚が更新前の値よりも小さくなる場合に、目標ごみ高さが現在の値よりも低減される。
ごみ高さ制御部828では、ごみ高さ検出部74により検出される乾燥火格子ごみ高さが目標ごみ高さよりも大きい場合に、乾燥火格子ごみ高さが目標ごみ高さに近似するように、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、および、燃焼火格子速度の指令値が(現在の値よりも)低減される。同様に、乾燥火格子ごみ高さが目標ごみ高さよりも小さい場合に、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、および、燃焼火格子速度の指令値が増大される。典型的には、給じん装置速度の指令値、乾燥火格子速度の指令値、および、燃焼火格子速度の指令値の比は一定であるが、給じん装置42の特性によっては、当該比が変更されてもよい。例えば、乾燥火格子ごみ高さが目標ごみ高さよりも小さい場合に、給じん装置速度の指令値の増加率が他の指令値よりも高くされてよい。
焼却炉1では、燃焼室2内において、ごみ高さ検出部74が乾燥火格子23上のごみよりも上方に設けられることにより(図4参照)、クリンカーの付着等の影響を受けることなく、乾燥火格子23上のごみの高さを精度よく、かつ、安定して検出することができる。また、ごみ高さ検出部74では、電波の発信および反射波の受信を行う測定面743の周囲から、環状ノズル742によりパージ用ガスが噴出される。これにより、測定面743がばいじんにより汚れることを防止することができ、乾燥火格子23上のごみの高さをより精度よく検出することが可能となる。パージ用ガスがEGRガスであることにより、燃焼室2内に空気が過度に供給されることが防止され、低空気比燃焼をより確実に実現することができる。なお、焼却炉1の設計によっては、パージ用ガスが、窒素ガスであってもよく、また、空気を含んでもよい。
また、乾燥火格子ごみ高さに基づいて、ごみ供給部4によるごみの供給速度(給じん装置速度)が制御される。したがって、ごみ質やホッパ41内でのごみの圧密度の変動等により、仮に、ごみ供給部4によるごみの供給量の過不足が一時的に生じても、給じん装置速度(および乾燥火格子速度)を迅速に変更して、火格子部21、特に、第1燃焼火格子241におけるごみの過不足による燃焼状態の急激な変動等を抑制することができる。その結果、燃焼位置、燃焼量、燃焼室2内の温度等、燃焼状態の安定化を図ることができ、ボイラ発生蒸気量の安定化、発電の高効率化、低空気比燃焼における排ガス中のNOxおよびCOの発生量の低減、排ガス処理に係る薬剤の少量化、焼却炉1のライフサイクルコスト(LCC)のミニマム化等を実現することができる。
さらに、目標ごみ層厚に基づいて目標ごみ高さが変更される。既述のように、対象低位発熱量および対象見かけ比重に基づいて目標ごみ層厚が変更されるため、実質的に、対象低位発熱量および対象見かけ比重に基づいて目標ごみ高さが変更される。そして、乾燥火格子ごみ高さおよび目標ごみ高さに基づいて、ごみ供給部4によるごみの供給速度が制御される。その結果、目標ごみ層厚が変更された場合に、算出ごみ層厚を短時間にて目標ごみ層厚に近似させることができる。焼却炉1では、乾燥火格子ごみ高さに基づいてバイパス流量調整部332(乾燥火格子空気温度)が制御されてもよい。この場合も、燃焼室2内における燃焼状態の安定化を図ることが可能となる。
上記焼却炉1では様々な変形が可能である。
対象低位発熱量または対象見かけ比重の一方のみに基づいて、目標ごみ層厚および目標ごみ高さが変更されてもよい。この場合も、算出ごみ層厚を、比較的短時間にて目標ごみ層厚に近似させることができる。
ごみ質演算部821では、所定期間内に取得される低位発熱量の加重平均値や、中央値等の代表値が、対象低位発熱量として求められてもよい(見かけ比重において同様)。また、焼却炉1の運用等によっては、移動平均値等を求めることなく、各時刻の見かけ比重および低位発熱量がそのまま利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
1 焼却炉
2 燃焼室
3 空気供給部
4 ごみ供給部
8 制御システム
9 ごみ
21 火格子部
23 乾燥火格子
24 燃焼火格子
41 ホッパ
74 ごみ高さ検出部
742 環状ノズル
743 測定面

Claims (3)

  1. ストーカ式焼却炉であって、
    所定の搬送経路に沿ってごみを搬送する火格子部を有し、前記火格子部が、前記ごみの乾燥が行われる乾燥火格子と、前記搬送経路において前記乾燥火格子の下流側に隣接するとともに、前記ごみの燃焼が行われる燃焼火格子とを有する燃焼室と、
    ごみを貯留するホッパを有し、前記乾燥火格子上に前記ホッパ内のごみを供給するごみ供給部と、
    前記搬送経路の各位置において、ごみに対して空気を供給することにより、前記燃焼室内にて前記ごみを燃焼させる空気供給部と、
    前記乾燥火格子上のごみよりも上方から、前記ごみの表面に向けて電波を発信し、前記電波の前記表面からの反射波を受信することにより、前記乾燥火格子上の前記ごみの高さを検出するごみ高さ検出部と、
    前記乾燥火格子上の前記ごみの高さに基づいて、前記ごみ供給部によるごみの供給速度を制御する制御部と、
    を備え
    前記制御部が、前記ホッパ内に投入されるごみの重量および前記ホッパ内のごみの体積を測定することにより取得されるごみの見かけ比重、または、前記ごみの重量、前記燃焼室から排出される排ガスの流量、並びに、前記排ガス中に含まれる水蒸気の濃度および炭酸ガスの濃度を測定することにより取得されるごみの低位発熱量に基づいて、前記乾燥火格子上の前記ごみの高さの目標値を変更し、前記ごみ高さ検出部により取得される前記ごみの高さおよび前記目標値に基づいて、前記ごみ供給部によるごみの供給速度を制御し、
    前記見かけ比重が小さくなる、または、前記低位発熱量が大きくなる場合に、前記ごみの高さの前記目標値が低減され、前記見かけ比重が大きくなる、または、前記低位発熱量が小さくなる場合に、前記ごみの高さの前記目標値が増大されることを特徴とするストーカ式焼却炉。
  2. 請求項1に記載のストーカ式焼却炉であって、
    前記ごみ高さ検出部が、前記電波の発信および前記反射波の受信を行う測定面の周囲からパージ用ガスを噴出するノズルを有することを特徴とするストーカ式焼却炉。
  3. 請求項2に記載のストーカ式焼却炉であって、
    前記パージ用ガスが、前記燃焼室から排出される排ガスを含むEGRガスであることを特徴とするストーカ式焼却炉。
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