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JP6665062B2 - 状態監視装置 - Google Patents

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Description

この発明は、状態監視装置に関し、特に回転体の状態監視を行なう状態監視装置に関する。
各種の回転機器の故障診断などのために、振動データや温度データなどの機器の状態を示すデータを取得する監視装置が知られている。たとえば、回転部の振動を計測して機器・設備の異常診断を行なう際に、監視装置によって得られた振動データから抽出される特徴量(実効値、尖度、ピーク値、クレストファクタ、等)の増加傾向により、監視者は異常の発生を判断する。その際、異常の発生原因を推定するためには、振動データの周波数分析を実施する手法が用いられる。
このような監視装置を用いた診断方法の一例として、特開2015−34776号公報(特許文献1)は、多関節ロボットの減速機の診断方法が開示されている。
特開2015−34776号公報
風力発電装置において、主軸の軸受や増速機等の機械体の振動を振動センサによって測定し、当該機械体の状態を監視する状態監視システム(CMS:Condition Monitoring System)が知られている。
風車は風速や風向の変動により回転速度が変動するため、風力発電装置の状態監視システムでも分析対象となる振動の周波数が変化し、周波数スペクトルが揺らいでしまう。風車の運転制御によって回転速度の変動を抑制することは可能であるが、ある程度の変動は避けられない。周波数分析に用いるためのデータは、対象回転物の数回転分以上の測定時間長が必要とされ、高速回転する対象物では短時間で済むが、低速回転の対象物に対しては数秒から数十秒の計測時間が必要になる。短時間の場合には、回転速度変動は無視できるのだが、長時間の場合には分析精度が低下してしまい問題となる。したがって長時間の場合には、速度変動の影響が大きくならないよう、測定時間を短くし、周波数分解能が低下するのを許容していた。
回転センサを用いて回転速度の変動を検出し、計算で補正することも可能であるが、状態監視のために回転センサを追加で設置するのは価格面や取付スペースの観点で困難なことが多い。風力発電装置の振動監視装置では、回転センサの信号をできるだけ使用しないで、回転数変動の影響を受けずに振動スペクトルの分析を実施したい。
特開2015−34776号公報に示された診断方法では、監視対象が多関節ロボットの減速機のように回転速度が変動する場合に、回転センサを用いずに精緻な周波数スペクトルを抽出するために、逐次最少二乗法を適用してデータから特定のピークを抽出している。風力発電装置の状態監視システムでも特開2015−34776号公報と同様な手法を適用することも考えられるが、風力発電装置の監視においては、低回転速度の場合に必要な測定時間長が長いという特徴があり、単純に適用することは難しい。風力発電装置のように回転速度が低くなる可能性のある監視対象には、他の適した分析手法が求められる。
この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転体を含む機器の状態を監視する際に、コスト増加を抑えつつ、回転変動の影響を低減させて、センサから得たデータの分析を精度良く行なうことができる状態監視装置を提供することである。
この発明は、要約すると、回転体を含む機器の状態を監視する状態監視装置であって、記憶部と、演算部とを備える。記憶部は、機器に設置されたセンサからの信号を等間隔の時間でサンプリングしたデータ列を分割した複数の分割データ列からそれぞれ得られた複数の結果を記憶する。演算部は、記憶部に蓄積された複数の結果から複数の分割データ列にそれぞれ対応する複数の回転速度を推定し、複数の回転速度に基づいて複数の分割データ列をそれぞれ補正し、補正後の複数の分割データ列を合成して補正後のデータ列を生成する。
好ましくは、センサは、振動、音、アコースティックエミッションのいずれかを検出する。
好ましくは、複数の結果は、複数の分割データ列それぞれに対応する複数の周波数スペクトルである。演算部は、複数の分割データ列のうちの第1分割データ列と第2分割データ列の各周波数スペクトルの類似度を示す評価値に基づいて、第2分割データ列を取得した期間における回転速度を推定する。
より好ましくは、類似度を示す評価値は、2つの周波数スペクトル間の内積である。
好ましくは、演算部は、補正後のデータ列を処理して機器の異常解析を行なう。
好ましくは、機器は、風力発電装置である。
本発明によれば、センサから得たデータから回転変動の影響を低減させたデータが生成されるので、回転機器の分析を精度良く行なうことができる。
この発明の実施の形態に従う状態監視装置が適用される風力発電装置の構成を概略的に示した図である。 データ処理装置の構成を示す機能ブロック図である。 振動データの分割されたスロットを説明するための図である。 i番目のスロットS(i)とi+1番目のスロットS(i+1)において実行された周波数分析処理のスペクトルの一例を示す図である。 i+1番目のスロットのスペクトルに加える処理を説明するための図である。 Yが最大値を与えるαを選択した場合の、スペクトルを示した図である。 データ処理装置が実行する処理を説明するためのフローチャートである。 スペクトルF(i)(f)に対して、スペクトルF(i+1)の周波数fの倍率αを変化させて類似度が高いα(i+1)を探索する様子を示した図である。 リサンプリング処理を説明するための第1の図である。 リサンプリング処理を説明するための第2の図である。 図9に示したスロットS(1)のデータ列D(k)を示した概念図である。 スロットS(1)のデータ列D(k)とリサンプリング後のデータ列Dr(j)とを重ねて示した概念図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態に従う状態監視装置が適用される風力発電装置の構成を概略的に示した図である。図1を参照して、風力発電装置10は、主軸20と、ブレード30と、増速機40と、発電機50と、制御盤52と、送電線54とを備える。また、風力発電装置10は、主軸用軸受(以下、単に「軸受」と称する。)60と、振動センサ71〜73と、データ処理装置80とをさらに備える。増速機40、発電機50、制御盤52、軸受60、振動センサ71〜73及びデータ処理装置80は、ナセル90に格納され、ナセル90は、タワー100によって支持される。
主軸20は、ナセル90内に進入して増速機40の入力軸に接続され、軸受60によって回転自在に支持される。そして、主軸20は、風力を受けたブレード30により発生する回転トルクを増速機40の入力軸へ伝達する。ブレード30は、主軸20の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸20に伝達する。
軸受60は、ナセル90内において固設され、主軸20を回転自在に支持する。軸受60は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調芯ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。なお、これらの軸受は、単列のものでも複列のものでもよい。
増速機40は、主軸20と発電機50との間に設けられ、主軸20の回転速度を増速して発電機50へ出力する。一例として、増速機40は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。発電機50は、増速機40の出力軸に接続され、増速機40から受ける回転トルクによって発電する。発電機50は、たとえば、誘導発電機によって構成される。
制御盤52は、インバータ(図示せず)等を含んで構成される。インバータは、発電機50による発電電力を系統の電圧及び周波数に変換し、系統に接続される送電線54へ出力する。
振動センサ71〜73は、増速機40、発電機50、軸受60にそれぞれ設置され、これらの振動を検出するとともに、振動の各検出値をデータ処理装置80へ出力する。
図2は、データ処理装置80の構成を示す機能ブロック図である。図2を参照して、データ処理装置80は、フィルタ81〜83と、センサ信号選択部84と、演算部85と、記憶部86とを含む。なお、データ処理装置80は、図示しない送信部を含み、風力発電装置の外部にデータを送信するように構成されていても良い。
フィルタ81〜83は、振動センサ71〜73の検出信号をそれぞれ受け、受けた検出信号について、予め定められた特定の周波数帯域の成分を通過させ、その他の周波数帯域の成分を減衰させる。
データ処理装置80は、複数の信号を同時に処理してもよいし、特定のチャンネルの信号を処理してもよい。このため、センサ信号選択部84は、振動センサの信号入力を複数入力可能であり、使用する信号を選択できるように構成されている。
データ処理装置80は、演算部85としてCPU(Central Processing Unit)を備え、記憶部86として処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)およびデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を備え、さらに各種信号を入出力するための入出力ポート等を備える(いずれも図示せず)。データ処理装置80は、振動センサ71〜73の各検出値を受け、ROMに記憶されたプログラムに従って、後述の方法によるデータ処理および振動解析を実行する。なお、データ処理装置80により実行される処理については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。また、処理された振動測定データが外部のサーバ(図示せず)へ送信され、サーバにおいて振動解析が行なわれるように状態監視装置が構成されても良い。
振動データに含まれている回転機器の振動の特徴スペクトル(歯車の振動や、シャフトの振動など)が、回転速度によって変動するため、データ処理装置80は、スペクトルの変動を検出することで回転速度の変動を検出する。
データ処理装置80は、得られた速度変動の情報を使って、振動データの時間軸を修正(リサンプリング)し、一定速度で回転している状態の振動データと同じになるように補正する。これにより、回転速度が変動している状態で収集した振動データであっても、一定速度で収集したデータと同じようにスペクトル分析を精度よく実施できるようになる。
より詳細には、記憶部86は、機器に設置されたセンサ71〜73からの信号を等間隔の時間でサンプリングしたデータ列を分割した複数の分割データ列(スロット)からそれぞれ得られた複数の結果を記憶する。演算部85は、記憶部86に蓄積された複数の結果から複数の分割データ列にそれぞれ対応する複数の回転速度を推定し、複数の回転速度に基づいて複数の分割データ列をそれぞれ補正し、補正後の複数の分割データ列を合成して補正後のデータ列を生成する。なお、センサ71〜73は、振動センサである例が示されているが、音、アコースティックエミッション等を検出するセンサであっても良い。
好ましくは、上記の複数の結果は、複数の分割データ列それぞれに対応する複数の周波数スペクトルである。演算部85は、複数の分割データ列のうちの第1分割データ列(スロットS(i))と第2分割データ列(スロットS(i+1))の各周波数スペクトルの類似度を示す評価値Y(後に式(1)に示す)に基づいて、第2分割データ列を取得した期間における回転速度を推定する。
より好ましくは、類似度を示す評価値は、2つの周波数スペクトル間の内積である。
好ましくは、演算部85は、補正後のデータ列を処理して機器の異常解析を行なう(図7、ST7)。
好ましくは、状態監視装置が監視する機器は、風力発電装置である。
図3は、振動データの分割されたスロットを説明するための図である。図3を参照して、データ処理装置80は、振動データを一定時間間隔(スロットS(1)〜S(n))に区切る。
スロットの長さは、各々のスロットにおいて短時間のFFT処理を行なうために必要な周波数分解能と時間分解能を満たすように、適宜設定される。たとえば、スロットの時間長は、回転速度変動の周期と比較して、10分の1以下にするのが望ましい。
そして、データ処理装置80は、スロットS(0)〜S(n)の各々のデータ列に対してFFT処理を実施する。このときに得られた周波数スペクトルをF(i)(f)とする。ただし、iは0〜nの整数である。
図4は、i番目のスロットS(i)とi+1番目のスロットS(i+1)において実行された周波数分析処理のスペクトルの一例を示す図である。図4において、F(i)(f)は、i番目のスロット(スロット(i))のスペクトルを示し、F(i+1)(f)は、i+1番目のスロット(スロット(i+1))のスペクトルを示す。また、縦軸は強度(パワー)を示し、横軸は周波数を示す。なお、波形の重なりによって見にくくなるのを避けるため、スペクトルF(i+1)(f)は縦軸方向に少しオフセットして表示されている。
回転速度の変動に応じて各スロットのスペクトルに現れるピークの位置が変化するため、図4において、スペクトルF(i+1)(f)のスペクトルの各ピークは、スペクトルF(i)(f)と比べて、周波数が高い方にずれているのが分かる。
データ処理装置80は、連続する時間スロットS(i),S(i+1)で得られたスペクトルを比較し、両者が最もよく一致するように周波数軸の倍率を計算していく。
スペクトルF(i)(f)とスペクトルをF(i+1)(f)との内積計算をすると、内積値Yは、以下の式(1)で示される。内積値Yは両者の類似度を示すことになる。なおY(a,b)はスロットaの周波数ごとのスペクトルとスロットbの周波数ごとのスペクトルの積和(内積)を示し、Σ演算は離散化された周波数fについて隣接するスロットのスペクトルの積の総和をとることを示す。
Y(i,i+1)=Σ F(i)(f)・F(i+1)(f) …(1)
なお、2つのスペクトルの各々をベクトルの絶対値あるいは自己相関値C(i)で割り算し、相関係数CORRを求め、類似度を評価しても良い。この自己相関値C(i)および相関係数CORR(i)は以下の式(2)〜式(4)で表される。なお、sqrtは、平方根の演算を示す。
C(i)=sqrt{ΣF{i}(f)・F{i}(f)} …(2)
C(i+1)=sqrt{ΣF{i+1}(f)・F{i+1}(f)} …(3)
CORR(i,i+1)=Correlation(F{i}(f),F{i+1}(f))=Y(i,i+1)/{C(i)・C(i+1)} …(4)
回転数が一定なら、ほぼ同じスペクトルになるため内積値Yおよび相関係数CORR(i,i+1)(類似度)はいずれも1に近くなる。回転速度がスロット間で変化してスペクトルが変化していると類似度は低下する。
データ処理装置80は、このようなスペクトルの相関値を使用して、回転速度の変化率(周波数の倍率α)を求める。
図5は、i+1番目のスロットのスペクトルに加える処理を説明するための図である。図5では、周波数の倍率をαとして、たとえば、α=0.95〜1.05(±5%に相当する)といった範囲で調整しながら、スペクトルのデータを周波数軸方向にシフトさせる。ここでF(i+1)(αf)は、F(i+1)(f)のスペクトルを周波数軸方向にα倍したスペクトルを示す。
このとき、αをたとえば0.01ずつ変化させ、以下の式(5)で示されるY(i,i+1,α)または式(6)で示されるCORR(i+1,α)が最大となるαを求める。なおY(a,b,c)はスロットaの周波数(f1,f2,f3…)ごとのスペクトルとスロットbのc倍した周波数(f1・c,f2・c,f3・c…)ごとのスペクトルの積和(内積)を示す。
Y(i,i+1,α)=Σ F(i)(f)・F(i+1)(αf) …(5)
CORR(i,i+1,α)=Correlation(F{i}(f),F{i+1}(αf)) …(6)
最大の内積値Yが得られるαの値を求め、α(i+1)とする。両スロット間のデータが最もよく一致する倍率がα(i+1)である。このとき、スロットS(i)に対するスロットS(i+1)区間でのスペクトルの変化率がα(i+1)と求められる。ピーク周波数が回転速度の変化によってα(i+1)倍になっているため、回転速度がα(i+1)倍であることが求められ、スロット間の速度変化率が求まる。
以上のように、αを変えることによって周波数軸を変化させ、2つのスペクトルの内積値Yが最大となる(二つのスペクトルが最もよく重なる)ような倍率α(i+1)を求める。
図6は、Yが最大値を与えるαを選択した場合の、スペクトルを示した図である。図6に示すように、類似度が最大となった状態のスペクトル波形では、最大の内積値Yが得られるαを適用したスペクトルF(i+1)(αf)は、スペクトルF(i)(f)と各ピークの一致が見られる。
このように、隣接するスロット間の速度変化率を最後のスロットまで順次求めていくと、最初のスロットから最後のスロットまでの速度変化率が推定される。
なお、類似度を求める計算処理は、最初のスロットS(0)のスペクトルを基準として、次の値の最大値を評価して求めてもよい。
CORR(0,i,α)=Correlation(F{0}(f),F{i}(αf)) …(7)
ただし、i=1,2,…,nである。
式(7)で示す値をスロット間で求めていくと、最初のスロットから最後のスロットまでの速度比率α(i)が推定される。これを用いて各スロットの回転速度ωiを、最初のスロットの回転速度ω0を基準にして求めていくことができる。
ωi=ω0*α(i)
ただし、i=1,2,…,nである。
なお、内積計算を実施する周波数範囲は、スペクトルの特徴がよく現れている領域に設定し、ギヤのかみ合い周波数やシャフトの回転周波数などの特徴周波数の10倍程度までを含めるのが望ましい。このとき、低周波成分だけでは速度変化率の検出精度が低くなってしまう。また、高い周波数の領域では、回転速度に依存しない共振ピークなどが現れてくる場合があり、回転速度によって変化する成分の検出の邪魔になってくることがある。そのため、測定対象物に応じて比較範囲が適宜選択されるようにしてもよい。
その後、得られた速度情報に基づき、各スロット間のデータの時刻を修正し、等間隔でリサンプリングしたデータをつくる。
図7は、データ処理装置が実行する処理を説明するためのフローチャートである。図7を参照して、まずステップST1において、データ処理装置80は、初期値として変数iをゼロに設定する。
続いて、ステップST2において、データ処理装置80は、スロットS(i)についてFFTを行なってスペクトルF(i)(f)を演算する。
そして、ステップST3において、データ処理装置80は、連続する時間スロットで得られたスペクトルF(i)(f)とF(i+1)(αf)を比較し、両者が最もよく一致するように周波数軸の倍率αを計算していく。具体的には、図4〜図6で説明したように、周波数倍率αを変化させながら、スロットS(i+1)のスペクトルF(i+1)(αf)を演算し、上記式(5)で与えられるY(i,i+1,α)または、式(6)で与えられるCORR(i,i+1,α)が最大となるαを求め、α(i+1)とする。
図8は、スペクトルF(i)(f)に対して、スペクトルF(i+1)の周波数fの倍率αを変化させて類似度が高いαを探索する様子を示した図である。図8において、ピークが一致する場合のαをα(i+1)に設定する。
なお、図7のフローチャートでは、i番目のスロットS(i)とi+1番目のスロットS(i+1)の類似度を評価して各スロットの周波数倍率α(i+1)を求めた。しかし、式(7)で説明したように、最初のスロットS(0)を基準として評価をしても良い。すなわち、各スロットS(i+1)と1番目のスロットS(0)との類似度を直接評価して周波数倍率α(i+1)を求めても良い。
ただし、最初のスロットを基準とする場合には、スロットS(0)から徐々にα(i)の値が変化していくようなデータのときを想定すると、最大相関値となるαの探索範囲を前回のα(i−1)の上下に絞ってやるように、計算方法を工夫するのが望ましい。また、スロットS(0)とスロットS(i)とでパターンが大きく変化してくる場合には、この方法で計算すると相関値が下がってくるという課題がある。したがって、図7のフローチャートに示した方法では、もともとパターンが近似していると考えられる連続したスロットS(i)とS(i+1)との間での相関計算をする、ということを前提にして、αの探索範囲をα(i−1)の±X%という形で絞っている。この場合、隣り合うスロット間では相関が高いという特性があるので、速度変化に対する追従性がさらによくなる。なお、この場合、求まったα(k)は隣接スロット間の速度比になるため、最終的にはα(0)=1として、α’(1)=α(0)*α(1).…,α’(i)=α’(i−1)*α(i)、のようにスロットS(0)に対する比率に変換して、その後の処理を実施する。
すなわち、スロットS(0)とスロットS(i)で実施する場合には、求まったα(i)が直接速度変化率になるが、図7の方法のように隣接スロット間で計算した場合には、求まったα(i)を最初のスロットからの速度比に換算して、上述のα’(i)を算出する必要がある。
再び図7に戻って、データ処理装置80は、ステップST4において、変数iをインクリメントし、ステップST5において、i=nとなったか否かを判断する。ここでnは図3における分割した最後のスロット番号を示す。
i<nの間は、ST2〜ST4の処理が繰返されることにより、振動データを一定時間間隔(スロット)に区切りながら周波数分析処理が実行される(短時間FFT処理)。
スロットS(1)〜S(n)の類似度の評価が完了し、α(1)〜α(n)が得られると、ステップST6において、データ処理装置80は、得られた速度情報ωiに基づき、各スロットS(i)のデータの時刻を修正し、等間隔でリサンプリングしたスロットSr(i)のデータを作る。
図9は、リサンプリング処理を説明するための第1の図である。図10は、リサンプリング処理を説明するための第2の図である。
スロットS(0)の回転速度を基準(比率1)にして表すと、スロットS(1),S(2)の回転速度の倍率は、それぞれα(1),α(2)である。スロットS(0)は基準であるのでサンプリング間隔をTとし、スロットS(1),S(2)のサンプリング間隔を速度比αを用いて換算すると、T1=T/α(1),T2=T/α(2)となる。
ここで、全体の入力信号データ列をD(k)とする。ただしkは0〜Mの整数である。このデータが例えばu個ずつのスロットS(0)〜S(n)に区切られる。このときn=M/uの関係がある。
具体的には、スロットS(0)には、u個のデータ列D(0)〜D(u−1)が含まれ、スロットS(1)には、u個のデータ列D(u)〜D(2u−1)が含まれ、スロットS(2)には、u個のデータ列D(2u)〜D(3u−1)が含まれる。
各スロットのデータ間の時間間隔の比率Rは図9のようになる。各スロットにおいて、これらの比率Rを累積した値を四捨五入して整数の数列を作り、リサンプリングされたデータ番号とする。このときスロットS(0)の時間間隔の比率Rは1であるので、累積値は、1,2,3,4,…というように1ずつ増加する。またスロットS(1)の時間間隔の比率Rは1/α(1)であるので、仮に1/α(1)=1.1であったとすると、累積値は、1027.3,1028.4,1029.5,1030.6,…というように1.1ずつ増加する。これを整数にした場合のデータ番号は、スロットS(0)は、1,2,3,4,…となり、スロットS(2)では、1027,1028,1030,1031,…となる。
リサンプリングされたデータ番号の元データをデータDrに順番に入れていき、リサンプリング後のデータ列を作成する。元のデータD(k)とリサンプリング後のデータDr(j)との対応関係は図10に示すようになる。できあがったデータ列Dr(j)は連続したデータとなるので、FFTなどの処理は問題なく実行できる。
図11は、図9に示したスロットS(1)のデータ列D(k)を示した概念図である。図12は、スロットS(1)のデータ列D(k)とリサンプリング後のデータ列Dr(j)とを重ねて示した概念図である。
図11に示すように、元のデータ列D(k)は、一様にサンプリング間隔Tでサンプリングされている。データD(1027)〜D(1030)の部分がリサンプリングによってデータの一部が間引かれる(ただしα(1)>1の場合)。図12に示すように、リサンプリング後はサンプリング間隔が短くなっている。その結果図10で説明したように、元のデータ列D(k)のうちのD(1029)が間引かれる。したがって、Dr(1027)〜Dr(1028)にはそれぞれD(1027)〜D(1028)のようにデータ番号kが同じデータが入るが、Dr(1029)にはD(1030)のようにデータ番号kが1つ加算されたデータが入る。なお、α(i)<1の場合には、データが間引かれる代わりにデータが適宜補完される。たとえば、不足したデータには、前後のいずれかのデータをコピーして入れても良いし、前後のデータを平均した値などを入れても良い。
これで、回転数が揺らいでいる環境で取得したデータから、揺らぎを補正したデータを生成することができるため、周波数分析したときの周波数ピークの分析精度が向上する。
再び図7に戻って、ステップST7ではリサンプリング後のデータで構成されるスロットSr(1)〜Sr(n)の全体のデータDr(j)にFFTを行なって振動スペクトルを分析し、フローチャートの処理は終了する。この場合、リサンプリング前のデータでFFTを行なう場合よりも周波数ピークが明確に得られることが期待できる。特に、風速が弱く、回転速度が遅い場合には、精度を向上させるには長時間のデータを用いて全体のデータDr(j)数を増やす必要があるので有効である。
なお、本実施の形態で説明したリサンプリング処理を含む周波数分析は、回転機器が発生する振動が、背景ノイズに対して十分大きい場合に有効である。インバータノイズや部品の共振(固有振動数の振動)など、一定周波数で発生する振動が支配的な場合には、上記の類似度の評価がうまくいかなくなって追従性が悪くなる。したがって、風力発電装置においては、増速機や発電機などの一定の回転速度比で回転し、比較的振動の大きい機械部品に対して本実施の形態に開示したデータ処理方法を適用するのがよい。
また、回転速度が変動している状態で収集したデータから上記の回転速度の変化に追従させて、サンプリング間隔を変化させる処理を実施すると、理想的には、回転速度が変化しても、同一の回転角度間隔でサンプリングされたデータを得ることができる。回転に同期して発生する振動成分がある場合、FFTで得られるピークの周波数は回転数の変動に伴って変化してしまうが、リサンプリング処理を実施すると、ピークの周波数が変化しないで同じところに留まっている状態になる。一方で、インバータノイズなどの電気ノイズや機械的な共振などの回転速度の影響を受けない一定周波数の成分は、リサンプリングされると揺らいだ成分に変化する。このため回転とは無関係のインバータノイズなどの周波数スペクトルはぼやけてしまうので、より回転に同期した振動成分の分析をしやすくなるというメリットもある。
回転速度の変動幅が大きい場合については以下のように改良しても良い。すなわち、速度変化分を推定する一連の処理を行なって、スロットS(i)の平均速度比が求まるが、スロットの幅が広い場合や隣接するスロット間の速度変動が大きい場合には、速度比がスロット間で階段状に不連続に変化してしまう場合がある。このような場合には、(1)スロット間を適宜補間して速度比を算出する、あるいは、(2)速度比を算出するスロット幅を狭くする、ことによって不連続な変化を緩和することができる。具体的には、スロットS(i)からスロットS(i+1)までのデータについては速度ω(i)からω(i+1)にすべてのデータが直線的に変化するものとして線形補間してもよいし、スロット間隔の数分の1の間隔で細かく階段状に変化するようにしてやってもよい。
また、リサンプリング処理を、振動データを包絡線処理した波形に対して実施してもよい。生の振動データでは特徴が現れにくいような振動波形であっても、包絡線処理したエンベロープ波形のスペクトルには特徴が現れることがあり、類似度を検出する処理がしやすい場合もある。そのような場合には、周波数の変動検出感度を向上させることができる。
また、上記の説明では、状態監視装置が適用される監視対象として風力発電装置を例示したが、これに限らず回転変動する回転体を含む装置であれば、上記に説明した状態監視装置を適用することが可能である。また、データを補正する処理は、風力発電装置のナセル内部の監視装置で行なう例を示したが、外部に関しデータを転送してから外部の分析装置で行なっても良い。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 風力発電装置、20 主軸、30 ブレード、40 増速機、50 発電機、52 制御盤、54 送電線、60 軸受、71〜73 振動センサ、80 データ処理装置、81〜83 フィルタ、84 センサ信号選択部、85 演算部、86 記憶部、90 ナセル、100 タワー。

Claims (6)

  1. 回転体を含む機器の状態を監視する状態監視装置であって、
    前記機器に設置されたセンサからの信号を等間隔の時間でサンプリングしたデータ列を分割した複数の分割データ列からそれぞれ得られた複数の結果を記憶する記憶部と、
    前記記憶部に蓄積された前記複数の結果から前記複数の分割データ列にそれぞれ対応する複数の回転速度を推定し、前記複数の回転速度に基づいて前記複数の分割データ列をそれぞれ補正し、補正後の前記複数の分割データ列を合成して補正後のデータ列を生成する演算部とを備える、状態監視装置。
  2. 前記センサは、振動、音、アコースティックエミッションのいずれかを検出する、請求項1に記載の状態監視装置。
  3. 前記複数の結果は、前記複数の分割データ列それぞれに対応する複数の周波数スペクトルであり、
    前記演算部は、前記複数の分割データ列のうちの第1分割データ列と第2分割データ列の各周波数スペクトルの類似度を示す評価値に基づいて、前記第2分割データ列を取得した期間における回転速度を推定する、請求項1または2に記載の状態監視装置。
  4. 前記類似度を示す前記評価値は、2つの周波数スペクトル間の内積である、請求項3に記載の状態監視装置。
  5. 前記演算部は、前記補正後のデータ列を処理して前記機器の異常解析を行なう、請求項1〜4のいずれか1項に記載の状態監視装置。
  6. 前記機器は、風力発電装置である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の状態監視装置。
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