以下、本発明の導電性基板、および導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
(導電性基板)
本実施形態の導電性基板は、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に配置された金属層と、金属層上に配置された乾式めっき黒化層とを有することができる。そして、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRa(μm)を、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上とすることができる。
なお、本実施形態における導電性基板とは、金属層等をパターニングする前の、透明基材の表面に金属層、及び乾式めっき黒化層を有する基板と、金属層等をパターニングして配線の形状にした基板、すなわち配線基板とを含む。金属層及び乾式めっき黒化層をパターニングした後の導電性基板は透明基材が金属層等により覆われていない領域を含むため光を透過することができ、透明導電性基板となっている。
ここでまず、本実施形態の導電性基板に含まれる各部材について以下に説明する。
透明基材としては特に限定されるものではなく、可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を好ましく用いることができる。
可視光を透過する絶縁体フィルムとしては例えば、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の樹脂フィルム等から選択された1種以上を好ましく用いることができる。特に、可視光を透過する絶縁体フィルムの材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート等から選択された1種以上をより好ましく用いることができる。
透明基材の厚さについては特に限定されず、導電性基板とした場合に要求される強度や、静電容量、光の透過率等に応じて任意に選択することができる。透明基材の厚さとしては例えば10μm以上200μm以下とすることができる。特にタッチパネルの用途に用いる場合、透明基材の厚さは20μm以上120μm以下とすることが好ましく、20μm以上100μm以下とすることがより好ましい。タッチパネルの用途に用いる場合で、例えば特にディスプレイ全体の厚さを薄くすることが求められる用途においては、透明基材の厚さは20μm以上50μm以下であることが好ましい。
透明基材の全光線透過率は高い方が好ましく、例えば全光線透過率は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。透明基材の全光線透過率が上記範囲であることにより、例えばタッチパネルの用途に用いた場合にディスプレイの視認性を十分に確保することができる。
なお透明基材の全光線透過率はJIS K 7361−1に規定される方法により評価することができる。
次に金属層について説明する。
金属層を構成する材料は特に限定されず用途にあった電気伝導率を有する材料を選択できるが、電気特性に優れ、且つエッチング処理のし易さから、金属層を構成する材料として銅を用いることが好ましい。すなわち、金属層は銅を含有することが好ましい。
金属層が銅を含有する場合、金属層を構成する材料は、例えばCuと、Ni,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Mn,Co,Wから選ばれる少なくとも1種以上の金属との銅合金、または銅と上記金属から選ばれる1種以上の金属とを含む材料であることが好ましい。また、金属層は銅から構成される銅層とすることもできる。
金属層を形成する方法は特に限定されないが、光の透過率を低減させないため、他の部材と金属層との間に接着剤を配置しないで形成されていることが好ましい。すなわち、金属層は、他の部材の上面に直接形成されていることが好ましい。なお、金属層は透明基材、または密着層の上面に形成することができる。このため、金属層は、透明基材、または密着層の上面に直接形成されていることが好ましい。
他の部材の上面に金属層を直接形成するため、金属層は乾式めっき法を用いて成膜された金属薄膜層を有することが好ましい。乾式めっき法としては特に限定されるものではないが、例えば蒸着法や、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができる。特に膜厚の制御が容易であることからスパッタリング法を用いることが好ましい。
また金属層をより厚くする場合には、乾式めっき法と、湿式めっき法とを用いることができる。具体的には例えば、透明基材上に、金属薄膜層を乾式めっき法により形成し、該金属薄膜層を給電層として用い、湿式めっき法の一種である電解めっきにより金属めっき層を形成することができる。
なお、上述の様に乾式めっき法のみで金属層を成膜した場合、金属層は金属薄膜層により構成できる。また、乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて金属層を形成した場合、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とにより構成できる。
上述のように乾式めっき法のみ、または乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて金属層を形成することにより透明基材または密着層上に接着剤を介さずに直接金属層を形成することができる。
本実施形態の導電性基板は、金属層の、乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaが、乾式めっき黒化層の厚さの1.0倍以上であることが好ましい。そして、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaを所望の値とする方法としては、後述するように、例えば形成した金属層の表面処理をする方法や、金属薄膜層のスパッタリング条件を選択する方法、金属めっき層を成膜する際の条件を選択する方法等が挙げられる。なお、金属めっき層を成膜する際の条件を選択する方法としては、例えば、金属めっき層を成膜している途中で、電極に供給する電流の向きを周期的に反転させるPR電流(Periodic Reverse電流)を用いためっき法や、電流密度を低下させる低電流密度を用いためっき法等が挙げられる。
そして、金属めっき層を成膜する際の条件を選択する方法によれば、導電性基板を製造する際の工程数を増加させることなく、特に容易に金属めっき層表面の表面粗さRaを所望の値とすることができる。そこで、金属めっき層を成膜する際の条件を選択する方法により、金属層表面の表面粗さRaを所定の範囲とすることが好ましい。このため、本実施形態の導電性基板の金属層は金属めっき層(湿式めっき金属層)を有することが好ましい。
金属層の厚さは特に限定されるものではなく、金属層を配線として用いた場合に、該配線に供給する電流の大きさや配線幅等に応じて任意に選択することができる。
ただし、金属層が厚くなると、配線パターンを形成するためにエッチングを行う際にエッチングに時間を要するためサイドエッチが生じ易くなり、細線が形成しにくくなる等の問題を生じる場合がある。このため、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。
また、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さを所定の範囲内にするため、さらには導電性基板の抵抗値を低くし、十分に電流を供給できるようにする観点から、例えば金属層は厚さが50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
なお、金属層が上述のように金属薄膜層と、金属めっき層とを有する場合には、金属薄膜層の厚さと、金属めっき層の厚さとの合計が上記範囲であることが好ましい。
金属層が金属薄膜層により構成される場合、または金属薄膜層と金属めっき層とにより構成される場合のいずれの場合でも、金属薄膜層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば50nm以上500nm以下とすることが好ましい。
そして、本実施形態の導電性基板においては、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRa(μm)を、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上とすることができる。
本発明の発明者らは、透明基材上に金属層、及び乾式めっき黒化層を配置した導電性基板を所望の配線パターンとなるようにエッチングした際に、導電性基板内で、均一にエッチングできない場合が生じる原因について鋭意検討を行った。
その結果、均一にエッチングできない導電性基板においては、導電性基板中の一部で、金属層と乾式めっき黒化層との間にエッチング液が侵入していることが確認された。
通常、乾式めっき黒化層の方が金属層よりもエッチング液に対する反応性が低いため、金属層、及び乾式めっき黒化層のエッチングに要する時間には、乾式めっき黒化層のエッチングに要する時間が大きな割合を占める。そして、上述のように金属層と乾式めっき黒化層との間にエッチング液が侵入すると、乾式めっき黒化層は、侵入したエッチング液により金属層側からもエッチングされるため、該エッチング液の侵入がない部分と比較して早くエッチングされることになる。このため、導電性基板内で均一にエッチングできない場合が生じていた。特に乾式めっき黒化層の厚さが厚くなるほど、金属層と乾式めっき黒化層との間にエッチング液が侵入した部分と、それ以外の部分とでエッチングに要する時間の差が大きくなり、エッチングの不均一性が生じやすくなっていた。
そこで、本実施形態の導電性基板は、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRa(μm)を、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上とし、乾式めっき黒化層の厚さに応じて金属層と乾式めっき黒化層との密着性を高め、エッチング均一性に優れた導電性基板とした。
なお、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaは、上述のように乾式めっき黒化層の厚さとの比を満たすように選択することができるが、特に、0.022μm以上であることが好ましく、0.028μm以上であることがより好ましい。これは、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaを0.022μm以上とすることで、特に金属層と、乾式めっき黒化層との間にエッチング液が侵入することを抑制できるからである。
金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaの上限値は特に限定されないが、0.080μm以下であることが好ましく、0.060μm以下であることがより好ましい。これは、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaが0.080μmを超えると、乾式めっき黒化層が均一に成膜されない場合があり、乾式めっき黒化層の色味に影響を与える恐れがあるからである。
なお、表面粗さRaはJIS B 0601(2013)に算術平均粗さとして規定されている。表面粗さRaの測定方法としては、触針法もしくは光学的方法等により評価することができる。
次に、乾式めっき黒化層について説明する。
金属層は金属光沢を有するため、透明基材上に金属層をエッチングした配線を形成したのみでは金属層が光を反射し、例えばタッチパネル用の配線基板として用いた場合、ディスプレイの視認性が低下するという問題があった。そこで、金属層表面における光の反射を抑制するため、本実施形態の導電性基板においては、金属層上に乾式めっき黒化層を設けることができる。
乾式めっき黒化層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。また、乾式めっき黒化層は、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、乾式めっき黒化層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、乾式めっき黒化層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Ni−Cu合金や、Ni−Cu−Cr合金、Ni−Zn合金、Ni−Zn−Cu合金、Cu−Ti−Fe合金、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、を好ましく用いることができる。
乾式めっき黒化層は、乾式めっき法により成膜することができる。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。乾式めっき黒化層を乾式めっき法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、乾式めっき黒化層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
スパッタリング法により乾式めっき黒化層を成膜する場合、ターゲットとしては、乾式めっき黒化層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。乾式めっき黒化層が合金を含む場合には、乾式めっき黒化層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め乾式めっき黒化層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
また、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有する乾式めっき黒化層は、乾式めっき黒化層を成膜する際の雰囲気中に、添加する元素を含有するガスを添加しておくことで成膜できる。例えば、乾式めっき黒化層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
乾式めっき黒化層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましい。これは、乾式めっき黒化層の厚さが薄い場合には、金属層表面における光の反射を十分に抑制できない場合があるため、上述のように乾式めっき黒化層の厚さを10nm以上とすることにより金属層表面における光の反射を特に抑制できるように構成することが好ましいためである。
乾式めっき黒化層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、乾式めっき黒化層の厚さは50nm以下とすることが好ましく、25nm以下とすることがより好ましい。
本実施形態の導電性基板においては、乾式めっき黒化層を配置することにより、上述のように金属層表面における光の反射を抑制することができる。このため、例えばタッチパネル等の用途に用いた場合にディスプレイの視認性の低下を抑制することが可能になる。
また、導電性基板は上述の透明基材、銅層、乾式めっき黒化層以外に任意の層を設けることもできる。例えば密着層を設けることができる。
密着層の構成例について説明する。
上述のように金属層は透明基材上に形成することができるが、透明基材上に金属層を直接形成した場合に、透明基材と金属層との密着性が十分ではない場合がある。このため、透明基材の上面に直接金属層を形成した場合、製造過程、または、使用時に透明基材から金属層が剥離する場合がある。
そこで、本実施形態の導電性基板においては、透明基材と金属層との密着性を高めるため、透明基材上に密着層を配置することができる。
透明基材と金属層との間に密着層を配置することにより、透明基材と金属層との密着性を高め、透明基材から金属層が剥離することを抑制できる。
また、密着層は黒化層としても機能させることができる。このため、金属層の下面側、すなわち透明基材側からの光による金属層表面での光の反射も抑制することが可能になる。
密着層を構成する材料は特に限定されるものではなく、透明基材及び金属層との密着力や、要求される金属層表面での光の反射の抑制の程度、また、導電性基板を使用する環境(例えば湿度や、温度)に対する安定性の程度等に応じて任意に選択することができる。
密着層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。また、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。
なお、密着層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この場合についても、密着層は炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Ni−Cu合金や、Ni−Cu−Cr合金、Ni−Zn合金、Ni−Zn−Cu合金、Cu−Ti−Fe合金、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金等を好ましく用いることができる。
密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式めっき法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、密着層には上述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
スパッタリング法により密着層を成膜する場合、ターゲットとしては、密着層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。密着層が合金を含む場合には、密着層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め密着層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
また、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有する密着層は、密着層を成膜する際の雰囲気中に、添加する元素を含有するガスを添加しておくことで成膜できる。例えば、密着層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
密着層を上述のように乾式めっき法により成膜することにより、透明基材と密着層との密着性を高めることができる。そして、密着層は例えば金属を主成分として含むことができるため金属層との密着性も高い。このため、透明基材と金属層との間に密着層を配置することにより、金属層の剥離を抑制することができる。
密着層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば3nm以上50nm以下とすることが好ましく、3nm以上35nm以下とすることがより好ましく、5nm以上33nm以下とすることがさらに好ましい。
密着層についても黒化層として機能させる場合、すなわち金属層における光の反射を抑制する場合、密着層の厚さを上述のように3nm以上とすることが好ましく、5nm以上とすることがさらに好ましい。
密着層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、必要以上に厚くしても成膜に要する時間や、配線を形成する際のエッチングに要する時間が長くなり、コストの上昇を招くことになる。このため、密着層の厚さは上述のように50nm以下とすることが好ましく、35nm以下とすることがより好ましく、33nm以下とすることがさらに好ましい。
次に、本実施形態の導電性基板の構成例について説明する。
上述のように、本実施形態の導電性基板は透明基材と、金属層と、乾式めっき黒化層と、を備えることができる。
具体的な構成例について、図1、図2を用いて以下に説明する。図1、図2は、本実施形態の導電性基板の、透明基材、金属層、乾式めっき黒化層の積層方向と平行な面における断面図の例を示している。
例えば、図1(a)に示した導電性基板10Aのように、透明基材11の一方の面11a側に金属層12と、乾式めっき黒化層13と、を一層ずつその順に積層することができる。
図1(a)に示した導電性基板10Aにおいて、金属層12の透明基材11と対向する面を第1の金属層表面12a、第1の金属層表面12aと反対側に位置する面、すなわち金属層12の、金属層12上に配置した乾式めっき黒化層13と対向する面を第2の金属層表面12bとすることができる。
そして、第2の金属層表面12bは、既述のようにその表面粗さRaを、乾式めっき黒化層13の厚さと所定の比となるように形成できる。
また、図1(b)に示した導電性基板10Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ金属層121、122と、乾式めっき黒化層131、132と、を一層ずつその順に積層することができる。
この場合も、金属層121、122は、それぞれ透明基材11と対向する面を第1の金属層表面121a、122a、第1の金属層表面121a、122aの反対側に位置する面を第2の金属層表面121b、122bとすることができる。そして、第2の金属層表面121b、122bは、既述のようにその表面粗さRaを、それぞれ乾式めっき黒化層131、132の厚さと所定の比となるように形成できる。
また、既述のように、透明基材11と、金属層12との間にさらに密着層を有することもできる。
例えば図2(a)に示した導電性基板20Aのように、透明基材11の一方の面11a側に、密着層14と、金属層12と、乾式めっき黒化層13と、をその順に積層することができる。この場合も、金属層12の透明基材11と対向する面を第1の金属層表面12a、第1の金属層表面12aの反対側に位置する面を第2の金属層表面12bとすることができる。そして、第2の金属層表面12bは、既述のようにその表面粗さRaを、乾式めっき黒化層13の厚さと所定の比となるように形成できる。
また、図2(b)に示した導電性基板20Bのように、透明基材11の一方の面11a側と、もう一方の面(他方の面)11b側と、にそれぞれ密着層141、142、金属層121、122と、乾式めっき黒化層131、132と、を一層ずつその順に積層することができる。
この場合も、金属層121、122は、それぞれ透明基材11と対向する面を第1の金属層表面121a、122a、第1の金属層表面121a、122aの反対側に位置する面を第2の金属層表面121b、122bとすることができる。そして、第2の金属層表面121b、122bは、既述のようにその表面粗さRaを、それぞれの金属層上に配置した乾式めっき黒化層131、132の厚さと所定の比となるように形成できる。
なお、図1(b)、図2(b)では、透明基材の両面に金属層と、乾式めっき黒化層と、を積層した場合において、透明基材11を対称面として透明基材11の上下に積層した層が対称になるように配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、図2(b)において、透明基材11の一方の面11a側の構成を図1(a)の構成と同様に、金属層12と、乾式めっき黒化層13と、をその順に積層した形態とし、透明基材11の上下に積層した層を非対称な構成としてもよい。
本実施形態の導電性基板はタッチパネル用の導電性基板として好ましく用いることができる。この場合、導電性基板はメッシュ状の配線を備えた構成とすることができる。
メッシュ状の配線を備えた導電性基板は、ここまで説明した本実施形態の導電性基板の金属層、乾式めっき黒化層をエッチングすることにより得ることができる。
例えば、二層の配線によりメッシュ状の配線とすることができる。具体的な構成例を図3に示す。図3はメッシュ状の配線を備えた導電性基板30を金属層等の積層方向の上面側から見た図を示しており、配線パターンが分かり易いように、透明基材11、及び金属層をパターニングして形成した配線311、312以外の層は記載を省略している。また、透明基材11を透過して見える配線312も示している。
図3に示した導電性基板30は、透明基材11と、図中Y軸方向に平行な複数の配線311と、X軸方向に平行な配線312とを有している。なお、配線311、312は金属層をエッチングして形成されており、該配線311、312の上面または下面には図示しない乾式めっき黒化層が形成されている。また、乾式めっき黒化層は、透明基材11の金属層等を配置した面(以下、「主表面」とも記載する)と平行な面における断面形状が、配線311、312の、透明基材11の主表面と平行な面における断面形状と同じ形状となるようにエッチングされていることが好ましい。
透明基材11と配線311、312との配置は特に限定されない。透明基材11と配線との配置の構成例を図4(a)、(b)に示す。図4(a)、(b)は図3のA−A´線での断面図に当たる。
まず、図4(a)に示したように、透明基材11の上下面にそれぞれ配線311、312が配置されていてもよい。なお、図4(a)では配線311の上面、及び312の下面には、透明基材11の主表面と平行な面における断面形状が配線311、312と同じ形状となるようにエッチングされた乾式めっき黒化層321、322が配置されている。
また、図4(b)に示したように、1組の透明基材111、112を用い、一方の透明基材111を挟んで上下面に配線311、312を配置し、かつ、一方の配線312は透明基材111、112間に配置されてもよい。この場合も、配線311、312の上面には透明基材111の主表面と平行な面における断面形状が配線311、312と同じ形状となるようにエッチングされた乾式めっき黒化層321、322が配置されている。
なお、既述のように、本実施形態の導電性基板は、金属層、乾式めっき黒化層以外に密着層を有することもできる。このため、図4(a)、(b)いずれの場合でも、例えば配線311および/または配線312と透明基材11(111、112)との間に密着層を設けることもできる。密着層を設ける場合、密着層も、透明基材11(111、112)の主表面と平行な面における断面形状が配線311、312と同じ形状となるようにエッチングされていることが好ましい。
図3及び図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は例えば、図1(b)のように透明基材11の両面に金属層121、122と、乾式めっき黒化層131、132とを備えた導電性基板から形成することができる。
図1(b)の導電性基板を用いて形成した場合を例に説明すると、まず、透明基材11の一方の面11a側の金属層121、乾式めっき黒化層131を、図1(b)中Y軸方向に平行な複数の線状のパターンがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて配置されるようにエッチングを行う。なお、図1(b)中のX軸方向は、各層の幅方向と平行な方向を意味している。また、図1(b)中のY軸方向とは、図1(b)中の紙面と垂直な方向を意味している。
そして、透明基材11の他方の面11b側の金属層122、乾式めっき黒化層132を図1(b)中X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。
以上の操作により図3、図4(a)に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板を形成することができる。なお、透明基材11の両面のエッチングは同時に行うこともできる。すなわち、金属層121、122、乾式めっき黒化層131、132のエッチングは同時に行ってもよい。また、図4(a)において、配線311、312と、透明基材11との間にさらに配線311、312と同じ形状にパターニングされた密着層を有する導電性基板は、図1(b)に示した導電性基板10Bに替えて、図2(b)に示した導電性基板20Bを用いて同様にエッチングを行うことで作製できる。
図3に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板は、図1(a)または図2(a)に示した導電性基板を2枚用いることにより形成することもできる。図1(a)の導電性基板を2枚用いて形成した場合を例に説明すると、図1(a)に示した導電性基板2枚についてそれぞれ、金属層12、乾式めっき黒化層13を、X軸方向と平行な複数の線状のパターンが所定の間隔をあけてY軸方向に沿って配置されるようにエッチングを行う。そして、上記エッチング処理により各導電性基板に形成した線状のパターンが互いに交差するように向きをあわせて2枚の導電性基板を貼り合せることによりメッシュ状の配線を備えた導電性基板とすることができる。2枚の導電性基板を貼り合せる際に貼り合せる面は特に限定されるものではない。例えば、金属層12等が積層された図1(a)における表面Aと、透明基材11の金属層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11bとを貼り合せて、図4(b)に示した構造となるようにすることもできる。
また、例えば透明基材11の金属層12等が積層されていない図1(a)における他方の面11b同士を貼り合せて断面が図4(a)に示した構造となるようにすることもできる。
なお、図4(a)、図4(b)において、配線311、312と、透明基材11(111、112)との間にさらに配線311、312と同じ形状にパターニングされた密着層を有する導電性基板は、図1(a)に示した導電性基板10Aに替えて、図2(a)に示した導電性基板20Aを用いることで作製できる。
図3、図4に示したメッシュ状の配線を有する導電性基板における配線の幅や、配線間の距離は特に限定されるものではなく、例えば、配線に流す電流量等に応じて選択することができる。
また、図3、図4においては、直線形状の配線を組み合わせてメッシュ状の配線(配線パターン)を形成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではなく、配線パターンを構成する配線は任意の形状とすることができる。例えばディスプレイの画像との間でモアレ(干渉縞)が発生しないようメッシュ状の配線パターンを構成する配線の形状をそれぞれ、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)等の各種形状にすることもできる。
以上に説明した本実施形態の導電性基板によれば、乾式めっき黒化層の厚さに応じて金属層と乾式めっき黒化層との密着性を高めており、エッチング均一性に優れた導電性基板とすることができる。
(導電性基板の製造方法)
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の構成例について説明する。
本実施形態の導電性基板の製造方法は以下の工程を有することができる。
透明基材の少なくとも一方の面上に金属層を形成する金属層形成工程。
金属層上に乾式めっき法により乾式めっき黒化層を形成する乾式めっき黒化層形成工程。
そして、金属層形成工程では、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRa(μm)が、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上となるように金属層を形成することができる。なお、乾式めっき黒化層形成工程において、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRa(μm)が、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上となるように、乾式めっき黒化層の厚さを調整することもできる。
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について説明するが、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略している。
まず、金属層形成工程について説明する。
なお、金属層形成工程に供する透明基材は予め準備しておくことができる(透明基材準備工程)。透明基材としては、既述のように例えば可視光を透過する絶縁体フィルムや、ガラス基板等を用いることができ、必要に応じて任意のサイズに切断等をしておくことができる。なお、好適に用いることができる可視光を透過する絶縁体フィルムについては既述のため、説明を省略する。
そして、金属層は既述のように、金属薄膜層を有することが好ましい。また、金属層は金属薄膜層と金属めっき層とを有することもできる。このため、金属層形成工程は、例えば乾式めっき法により金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成ステップを有することができる。また、金属層形成工程は、乾式めっき法により金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成ステップと、該金属薄膜層を給電層として、湿式めっき法の一種である電解めっき法により金属めっき層を形成する金属めっき層形成ステップと、を有していてもよい。
上述のように乾式めっき法のみ、または乾式めっき法と湿式めっき法とを組み合わせて金属層を形成することにより透明基材または密着層上に接着剤を介さずに直接金属層を形成できるため好ましい。
金属薄膜層形成ステップで用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法等を用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。金属薄膜層形成ステップで用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法が好ましい。
次に金属めっき層形成ステップにおいて湿式めっき法により金属めっき層を形成する際の条件、すなわち、電解めっき処理の条件は、特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、金属めっき液を入れためっき槽に金属薄膜層を形成した基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、金属めっき層を形成できる。
ただし、本実施形態の導電性基板の製造方法において、金属層形成工程で形成する金属層は、透明基材と対向する第1の金属層表面と、第1の金属層表面の反対側に位置し、乾式めっき黒化層と対向する第2の金属層表面とを有することができる。そして、第2の金属層表面の表面粗さRaを、乾式めっき黒化層の厚さの1.0倍以上とすることが好ましい。
第2の金属層表面を所望の表面粗さRaとする方法は特に限定されるものではなく、任意の方法を用いることができる。
第2の金属層表面を所望の表面粗さとする方法としては、例えば、成膜した金属層の表面をエッチング、化学研磨、またはブラスト等によって表面処理することにより所望の表面粗さとする方法(以下、「形成した金属層の表面処理をする方法」とも記載する)が挙げられる。この場合、本実施形態の導電性基板の製造方法は、金属層形成工程後に、金属層の表面処理を行う表面処理工程をさらに有することができる。
また、金属薄膜層を成膜する際のスパッタリング条件を選択することにより、金属薄膜層の最表面の表面粗さを所望の表面粗さとする方法(以下、「金属薄膜層のスパッタリング条件を選択する方法」とも記載する)が挙げられる。なお、金属層が金属薄膜層のみから構成される場合には、金属薄膜層の最表面が、金属層についての所望の表面粗さとなるようにスパッタリングの条件を選択することができる。また、金属層が金属薄膜層と金属めっき層とを有する場合には、金属薄膜層上に金属めっき層を成膜した際に、金属めっき層の表面の表面粗さが金属層についての所望の表面粗さとなるように金属薄膜層を成膜する際のスパッタリングの条件を選択することができる。
その他の方法として、金属層が金属薄膜層と、金属めっき層とを含む場合に、金属めっき層を成膜する際のめっき条件を選択することにより、第2の金属層表面を所望の表面粗さとすることができる。
具体的には例えば、金属めっき層を成膜する金属めっき層形成ステップにおいて、後半の任意のタイミングでPR電流(Periodic Reverse電流)めっきを行うことにより金属層の表面粗さを所望の表面粗さとする方法(以下、「PR電流を用いためっき法」とも記載する)が挙げられる。PR電流めっきは金属めっき層を成膜する際に電流の方向を任意のタイミングで反転させるめっき方法であり、電流の方向は周期的に反転させることができる。PR電流めっきにおいて、電流の向きを反転させることで、成膜した金属めっきの一部が溶解する。このため、金属めっき層の表面粗さを容易に調整することができる。
この場合、金属めっき層形成ステップは、一定方向に電流を供給して初期金属めっき層を成膜する定方向電流金属めっき層形成ステップと、定方向電流金属めっき層形成ステップの後、電流の向きを周期的に反転させるPR電流めっきを行うPR電流金属めっき層形成ステップとを有することができる。すなわち、金属層形成工程は、金属薄膜層形成ステップと、定方向電流金属めっき層形成ステップと、PR電流金属めっき層形成ステップとを有することができる。
なお、定方向電流金属めっき層形成ステップと、PR電流金属めっき層形成ステップとは、連続して実施することができる。
また、定方向電流金属めっき層形成ステップと、PR電流金属めっき層形成ステップとは、単一のめっき槽で実施することが好ましい。これは、単一のめっき槽で実施することで、金属層内の結晶を大きくすることができ、金属層の抵抗を小さくすることができるからである。
さらに他の方法として、例えば金属めっき層を成膜する金属めっき層形成ステップにおいて、後半の任意のタイミングで、通常のめっき時よりも電流密度(Dk値)を低下させ、低電流密度で金属めっき層を成膜する方法(以下、「低電流密度を用いためっき法」とも記載する)が挙げられる。低電流密度で金属めっき層を成膜することで、電流密度を下げる前よりも成膜した金属めっき層の表面を粗くすることができるため、電流密度を調整することで、所望の表面粗さとすることができる。
この場合、金属めっき層形成ステップは、例えば0.5A/dm2以上の電流密度で初期金属めっき層を成膜する初期金属めっき層形成ステップと、初期金属めっき層形成ステップの後、0.1A/dm2以上0.5A/dm2以下の電流密度で粗化金属めっき層を成膜する粗化金属めっき層形成ステップとを有することができる。そして、初期金属めっき層と、粗化金属めっき層とで金属めっき層を構成することができる。
この場合、金属層形成工程は、金属薄膜層形成ステップと、初期金属めっき層形成ステップと、粗化金属めっき層形成ステップとを有することができる。
また、初期金属めっき層形成ステップと、粗化金属めっき層形成ステップとについて、各ステップを実施している間、電流密度は一定である必要はなく、変化させることもできる。
例えば初期金属めっき層形成ステップの場合は、ステップ開始後、目標の電流密度まで徐々に電流密度を上昇させることができる。初期金属めっき層形成ステップにおける最大電流密度は、後述する粗化金属めっき層形成ステップの電流密度よりも大きくなるように設定することが好ましい。また、初期金属めっき層形成ステップにおける電流密度の上限値は、要求される金属めっき層の厚さ、めっき処理槽長、めっき浴の耐電流密度性能等により決まり、特に限定されないが、例えば4A/dm2以下とすることが好ましい。
そして、粗化金属めっき層形成ステップにおける電流密度の制御についても特に限定されないが、例えば設定した粗化金属めっき層形成ステップでの電流密度で一定に保ち、粗化金属めっき層の成膜を行うことができる。
なお、初期金属めっき層形成ステップと、粗化金属めっき層形成ステップとは連続して実施することもできる。この場合は、例えば初期金属めっき層形成ステップで、まず開始時の開始時電流密度から目標とする最大電流密度まで電流密度を上げ、初期金属めっき層を成膜できる。そして、設定した目標の最大電流密度に到達後すぐに、または所定時間保持後、例えば粗化金属めっき層形成ステップでの設定電流密度まで電流密度を下げ、該粗化金属めっき層形成ステップを実施できる。
また、初期金属めっき層形成ステップと、粗化金属めっき層形成ステップとは、単一のめっき槽で実施することが好ましい。これは、単一のめっき槽で実施することで、金属層内の結晶を大きくすることができ、金属層の抵抗を小さくすることができるからである。
以上に、第2の金属層表面を所望の表面粗さとする方法として、形成した金属層の表面処理をする方法、金属薄膜層のスパッタリング条件を選択する方法、PR電流を用いためっき法、低電流密度を用いためっき法を挙げたが、これらはいずれか1つの方法を選択して実施することができる。または2つ以上の方法を選択し、組み合わせることで、第2の金属層表面を所望の表面粗さとすることもできる。
次に、乾式めっき黒化層形成工程について説明する。
乾式めっき黒化層形成工程においては、乾式めっき法により乾式めっき黒化層を成膜することができる。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。乾式めっき黒化層を乾式めっき法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。なお、乾式めっき黒化層には既述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
スパッタリング法により乾式めっき黒化層を成膜する場合、ターゲットとしては、乾式めっき黒化層を構成する金属種を含むターゲットを用いることができる。乾式めっき黒化層が合金を含む場合には、乾式めっき黒化層に含まれる金属種毎にターゲットを用い、基材等の被成膜体の表面で合金を形成してもよく、予め乾式めっき黒化層に含まれる金属を合金化したターゲットを用いることもできる。
また、炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有する乾式めっき黒化層は、乾式めっき黒化層を成膜する際の雰囲気中に、添加する元素を含有するガスを添加しておくことで成膜できる。例えば、乾式めっき黒化層に炭素を添加する場合には一酸化炭素ガスおよび/または二酸化炭素ガスを、酸素を添加する場合には酸素ガスを、水素を添加する場合には水素ガスおよび/または水を、窒素を添加する場合には窒素ガスを、乾式めっきを行う際の雰囲気中に添加しておくことができる。
炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を含有するガスは、不活性ガスに添加し、乾式めっきの際の雰囲気ガスとすることが好ましい。不活性ガスとしては特に限定されないが、例えばアルゴンを好ましく用いることができる。
本実施形態の導電性基板の製造方法においては、上述の工程に加えてさらに任意の工程を実施することもできる。
例えば透明基材と金属層との間に密着層を形成する場合、透明基材の金属層を形成する面上に密着層を形成する密着層形成工程を実施することができる。密着層形成工程を実施する場合、金属層形成工程は、密着層形成工程の後に実施することができ、金属層形成工程では、本工程で透明基材上に密着層を形成した基材に金属層を形成できる。
密着層形成工程において、密着層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。密着層を乾式めっき法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。密着層には既述のように炭素、酸素、水素、窒素から選ばれる1種以上の元素を添加することもでき、この場合は反応性スパッタリング法をさらに好ましく用いることができる。
なお、金属層や、乾式めっき黒化層、密着層に好適に用いることができる材料や、好適な厚さ等については導電性基板において既述のため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の導電性基板の製造方法で得られる導電性基板は例えばタッチパネル等の各種用途に用いることができる。そして、各種用途に用いる場合には、本実施形態の導電性基板に含まれる金属層、及び乾式めっき黒化層がパターニングされていることが好ましい。なお、密着層を設ける場合は、密着層についてもパターニングされていることが好ましい。金属層、及び乾式めっき黒化層、場合によってはさらに密着層は、例えば所望の配線パターンにあわせてパターニングすることができ、金属層、及び乾式めっき黒化層、場合によってはさらに密着層は、透明基材の主表面と平行な面における断面が同じ形状となるようにパターニングされていることが好ましい。
そこで、本実施形態の導電性基板の製造方法は、金属層、及び乾式めっき黒化層をパターニングするパターニング工程を有することができる。なお、密着層を形成した場合には、パターニング工程は、密着層、金属層、及び乾式めっき黒化層をパターニングする工程とすることができる。
パターニング工程の具体的手順は特に限定されるものではなく、任意の手順により実施することができる。例えば図1(a)のように透明基材11上に金属層12、乾式めっき黒化層13が積層された導電性基板10Aの場合、まず乾式めっき黒化層13上の表面Aに所望のパターンを有するレジストを配置するレジスト配置ステップを実施することができる。次いで、乾式めっき黒化層13上の表面A、すなわち、レジストを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
エッチングステップにおいて用いるエッチング液は特に限定されるものではなく、エッチングを行う層を構成する材料に応じて任意に選択することができる。例えば、層毎にエッチング液を変えることもでき、また、同じエッチング液により同時に金属層及び乾式めっき黒化層、場合によってはさらに密着層をエッチングすることもできる。
また、図1(b)のように透明基材11の一方の面11a、他方の面11bに金属層121、122、乾式めっき黒化層131、132を積層した導電性基板10Bについてもパターニングするパターニング工程を実施できる。この場合例えば乾式めっき黒化層131、132上の表面A、及び表面Bに所望のパターンを有するレジストを配置するレジスト配置ステップを実施できる。次いで、乾式めっき黒化層131、132上の表面A、及び表面B、すなわち、レジストを配置した面側にエッチング液を供給するエッチングステップを実施できる。
エッチングステップで形成するパターンについては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。例えば図1(a)に示した導電性基板10Aの場合、既述のように金属層12、乾式めっき黒化層13を複数の直線や、ぎざぎざに屈曲した線(ジグザグ直線)を含むようにパターンを形成することができる。
また、図1(b)に示した導電性基板10Bの場合、金属層121と、金属層122とでメッシュ状の配線となるようにパターンを形成することができる。この場合、乾式めっき黒化層131と、金属層121とは、透明基材11の一方の面11aと平行な面での断面形状が同様の形状となるようにパターニングを行うことが好ましい。また、乾式めっき黒化層132と金属層122とは、透明基材11の他方の面11bと平行な面での断面形状が同様の形状になるようにパターニングを行うことが好ましい。
また、例えばパターニング工程で上述の導電性基板10Aについて金属層12等をパターニングした後、パターニングした2枚以上の導電性基板を積層する積層工程を実施することもできる。積層する際、例えば各導電性基板の金属層のパターンが交差するように積層することにより、メッシュ状の配線を備えた積層導電性基板を得ることもできる。
積層した2枚以上の導電性基板を固定する方法は特に限定されるものではないが、例えば接着剤等により固定することができる。
以上の本実施形態の導電性基板の製造方法により得られる導電性基板によれば、乾式めっき黒化層の厚さに応じて金属層と乾式めっき黒化層との密着性を高めており、エッチング均一性に優れた導電性基板とすることができる。
以下に具体的な実施例、比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
(評価方法)
以下の実験例1〜7において作製した導電性基板の評価方法について説明する。
(1)表面粗さRa
以下の実施例、比較例では、図2(a)に示した導電性基板を作製した。そして、導電性基板を作製する際、金属層12の成膜後、乾式めっき黒化層13を成膜する前に、金属層12の第2の金属層表面12bの表面粗さを評価した。
表面粗さRaは、形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製 型式:VK―X150)を用いて測定しており、表1中Raとして示している。
また、表面粗さRaを乾式めっき黒化層の厚さtで割ったRa/tについても算出した。なお、厚さtはいずれの実験例でも0.02μm(20nm)となる。
(2)エッチング時間差
エッチング液として、3質量%塩化第二鉄と0.3質量%塩酸とを混合した水溶液を用意し、エッチング液の温度を室温(25℃)に保持した。
そして、幅が40cmの、各実験例で作製した導電性基板をエッチング液に浸漬した。この際、導電性基板の乾式めっき黒化層13の表面13b側から見た場合に、導電性基板の幅方向の両端部、及び幅方向の中央部の3点において、透明基材が露出するまでの溶解に要する時間(秒)を計測した。なお、これらは幅方向に沿った同一直線上に位置している。そして、3つの測定点で溶解に要する時間を比較し、最も長い時間と短い時間の差をエッチング時間差(秒)として算出した。
本発明の発明者らの検討によれば、エッチング時間差が6秒以下であれば、所望の微細な配線パターンを形成することができ、エッチング均一性に優れた導電性基板といえる。このため、エッチング時間差が6秒以内の場合には〇と評価し、合格とした。そして、6秒よりも長かった場合には、×と評価し、不合格とした。
(導電性基板の作製条件)
以下に各実験例における導電性基板の作製条件、及び評価結果を示す。なお、実験例1〜実験例4が実施例、実験例5〜実験例7が比較例となる。
[実験例1]
図2(a)に示した構造を有する導電性基板を作製した。
(透明基材準備工程、密着層形成工程)
まず、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製の透明基材の一方の面上に密着層を形成した。
なお、透明基材として用いたポリエチレンテレフタレート樹脂製の透明基材について、可視光透過率をJIS K 7361−1に規定された方法により評価を行ったところ97%であった。
密着層は、ニッケル70wt%と、銅30wt%とを含有するニッケル−銅合金のターゲットを用い、スパッタリング法により成膜した。成膜に当たっては、予め60℃まで加熱して水分を除去した上記透明基材をスパッタリング装置のチャンバー内にセットし、チャンバー内を1×10−4Pa以下まで排気した後、チャンバー内に、酸素ガスを30体積%含む、酸素−アルゴンガスを導入し、チャンバー内の圧力を0.3Paとした。
そして係る雰囲気下でターゲットに電力を供給し、透明基材の一方の主表面上に厚さが20nmとなるように酸素を含有するNi−Cu合金から構成される密着層を成膜した。
(金属層形成工程)
続いて、密着層を成膜した透明基材の密着層上に金属層を成膜した。
金属層は、金属薄膜層形成ステップ、初期金属めっき層形成ステップ、粗化金属めっき層形成ステップを実施することで成膜した。以下、各ステップについて説明する。
金属薄膜層は、ターゲットとして銅のターゲットを用い、チャンバー内を排気後、酸素−アルゴンガスではなく、アルゴンガスを導入した点以外は密着層の場合と同様にして密着層の上面に厚さが80nmの金属薄膜層として銅薄膜層を成膜した。
初期金属めっき層形成ステップ、及び粗化金属めっき層形成ステップは、透明基材上に密着層、金属薄膜層が形成された基材を金属めっき槽に供給して、単一のめっき槽で連続して実施した。
めっき液としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−SO2共重合体を添加した銅めっき液を用いた。具体的には、銅、硫酸、及び塩素についての濃度が、銅30g/L、硫酸80g/L、塩素50mg/Lとなるように調製した銅めっき液を用いた。用いた銅めっき液には、添加剤として上述のDDAC−SO2共重合体(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−SO2共重合体)を20mg/Lとなるように添加している。また、めっき液にはDDAC以外に、ポリマー成分としてPEG(ポリエチレングリコール)が650mg/L、ブライトナー成分としてSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)が15mg/Lとなるように添加している。めっき液は以下の初期金属めっき層形成ステップ、及び粗化金属めっき層形成ステップにおいて、30℃に調整して使用した。
そして、まず初期金属めっき層形成ステップとして、電流密度を0.5A/dm2から開始し、めっき厚が厚くなるに従って、電流密度を2.0A/dm2まで上げ、2分間保持し、初期金属めっき層形成ステップを終了した。
続けて、電流密度を0.3A/dm2として、粗化金属めっき層形成ステップを実施した。粗化金属めっき層形成ステップの時間は0.5分間とした。
なお、金属めっき層形成ステップと、粗化金属めっき層形成ステップとを実施することで、金属めっき層として厚さ0.5μmの銅めっき層を形成した。従って、金属層として、銅薄膜層と、銅めっき層とあわせて厚さ0.58μmの銅層を形成した。
金属層形成工程後、乾式めっき黒化層形成工程を実施する前に、既述の方法により、第2の金属層表面の表面粗さの評価を行った。結果を表1に示す。
(乾式めっき黒化層形成工程)
密着層と同様にして、乾式めっき法により、乾式めっき黒化層として、酸素を含有するニッケル−銅合金層を成膜した。
[実験例2〜実験例7]
各実験例において、粗化金属めっき層形成ステップを実施する時間を変更し、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面の表面粗さRaを表1に示す値となるようにした点以外は、実験例1と同様にして、導電性基板の作製、及び評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示した結果から、実施例であり、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面である第2の金属層表面の表面粗さRa(μm)が、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍以上である実験例1〜実験例4は、評価が〇になっていることが確認できる。すなわち、エッチング均一性に優れた導電性基板であることが確認できる。
これに対して、比較例であり、金属層の乾式めっき黒化層と対向する面である第2の金属層表面の表面粗さRa(μm)が、乾式めっき黒化層の厚さ(μm)の1.0倍未満である実験例5〜実験例7は、評価が×になっていることが確認できる。従って、実験例5〜実験例7で作製した導電性基板はエッチング均一性を有しない導電性基板であり、配線パターンを形成する際に所望の形状とすることができない場合がある。