以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式のプリンターにおいて本発明を具体化したものである。
図1に,本形態の画像形成装置1の概略構成を示す。画像形成装置1は,中間転写ベルト30を有する,いわゆるタンデム方式のカラープリンターである。中間転写ベルト30は導電性を有する無端状のベルト部材であり,その図1中両端部がローラー31,32によって支持されている。画像形成時には,図1中右側のローラー31が反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト30および図1中左側のローラー32はそれぞれ,図中に矢印で示す方向に従動回転する。
中間転写ベルト30のうち,図1中右側のローラー31に支持されている部分の外周面には,2次転写ローラー40が設けられている。2次転写ローラー40は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中左向き)に圧接されている。中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とが接触している部分には,中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写させる転写ニップN1が形成されている。2次転写ローラー40は,画像形成時には,回転する中間転写ベルト30への圧接による摩擦力によって従動回転する。
また,中間転写ベルト30のうち,図1中左側のローラー32に支持されている部分の外周面には,ベルトクリーナー41が設けられている。ベルトクリーナー41は中間転写ベルト30の外周面に圧接されている。また,その圧接によって接触している部分により,転写ニップN1において用紙Pに転写されなかった転写残トナーなどを回収する回収領域42が形成されている。
中間転写ベルト30の図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配置されている。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を形成して中間転写ベルト30上に転写するためのものである。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,図1では,画像形成部10Yによって代表して符号をつけている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11,および,その周囲に配置された帯電器12,現像装置14,および感光体クリーナー16を有している。また,感光体11と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置には,1次転写ローラー15が配置されている。さらに,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kの図1中下方には,露光装置13が配置されている。帯電器12は,感光体11の表面を均一に帯電させるためのものである。露光装置13は,画像データに基づいたレーザー光を各感光体11の表面に照射させ,静電潜像を形成するためのものである。現像装置14は,収容しているトナーを感光体11の表面に付与するためのものである。
1次転写ローラー15は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中下向き)に圧接されている。この圧接により,中間転写ベルト30と各感光体11とが接触している部分にはそれぞれ,各色の感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写させる1次転写ニップが形成されている。感光体クリーナー16は,感光体11上から中間転写ベルト30上に転写されなかったトナーを回収するためのものである。
なお,図1では,帯電器12としてローラー形状をしたローラー帯電方式のものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。コロナ放電方式の帯電チャージャー,ブレード状の帯電部材,またはブラシ状の帯電部材等を用いても良い。また,感光体クリーナー16として,板状でその一端部が感光体11の外周面に接触しているものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。その他のクリーニング部材,例えば固定ブラシ,回転ブラシ,ローラーまたはそれらのうちの複数の部材を組み合わせたものを使用することができる。あるいは,感光体11上の未転写トナーを現像装置14により回収するクリーナーレス方式を採用すれば,感光体クリーナー16はなくてもよい。
また,中間転写ベルト30の図1中上方には,各色のトナーを収容したホッパー17Y,17M,17C,17Kが配置されている。これらに収容されている各色のトナーはそれぞれ,該当色の現像装置14へと適宜補給される。
中間転写ベルト30の回転方向における画像形成部10Kの下流側であって転写ニップN1の上流側の位置には,中間転写ベルト30上に転写されたトナー像の像濃度を検出するための濃度センサー20が設けられている。濃度センサー20は,中間転写ベルト30の外周面を検出位置としている。濃度センサー20は,例えば画像濃度の調整に用いられる,検出位置に向かって光を照射する投光部とその反射光を受光する受光部とを有するものである。
画像形成装置1の下部には,着脱可能な給紙カセット51が装着されている。給紙カセット51の図1中右側より上方に向かっては,搬送経路50が設けられている。そして,給紙カセット51に積載により収容された用紙Pは,その最上部のものより1枚ずつ給紙ローラー52によって搬送経路50に送り出されるようになっている。また,本形態の画像形成装置1は,紙種入力部56を有している。紙種入力部56は,ユーザーが,給紙カセット51に収容されている用紙Pの種類を入力するためのものである。
また,給紙ローラー52により送り出された用紙Pの搬送経路50には,1対のレジストローラー53,転写ニップN1,定着装置60,排紙ローラー54がこの順で配置されている。搬送経路50のさらに下流側である画像形成装置1の上面には,排紙部55が設けられている。レジストローラー53は,用紙Pを転写ニップN1へ送り出すタイミングを調整するためのものである。定着装置60は,定着ニップN2において用紙Pを加熱しつつ加圧することにより,用紙Pに転写されたトナー像の定着処理を行うためのものである。
次に,本形態の画像形成装置1による,通常の画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,給紙カセット51に収容されている用紙Pに,4色のトナーを用いてカラー画像を形成する場合における画像形成動作の一例である。
カラー画像の形成時には,まず,中間転写ベルト30および各色の感光体11はそれぞれ,図1に矢印で示す向きに所定の周速度で回転される。そして,感光体11の外周面は,帯電器12によりほぼ一様に帯電される。帯電された感光体11の外周面には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。続いて,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。
各感光体11上に形成されたトナー像は,1次転写ローラー15によって中間転写ベルト30上に転写(1次転写)される。これにより,中間転写ベルト30上には,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナー像がこの順で重ね合わされる。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト30の回転によって転写ニップN1に搬送される。また,中間転写ベルト30に転写されず,1次転写ローラー15を過ぎた後も感光体11上に残留している転写残トナーは,感光体クリーナー16によって掻き取られ,感光体11上から除去される。
一方,給紙カセット51に収容されている用紙Pは,最上部のものから1枚ずつ搬送経路50に引き出される。引き出された用紙Pは,搬送経路50に沿って転写ニップN1に搬送される。用紙Pの転写ニップN1への突入タイミングは,中間転写ベルト30上のトナー像の転写ニップN1への突入タイミングと一致するように,レジストローラー53によって調整される。これにより,転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写(2次転写)される。
トナー像が転写された用紙Pは,さらに搬送経路50の下流側へと搬送される。つまり,用紙Pは,定着装置60によってトナー像が定着された後,排紙ローラー54によって排紙部55に排出される。なお,転写ニップN1を通過した後も中間転写ベルト30上に残留する転写残トナーは,回収領域42においてベルトクリーナー41によって回収される。これにより,中間転写ベルト30上から除去される。
図2に,画像形成装置1の制御構成の概略を示す。画像形成装置1は,各部の制御を行うために,エンジン部2とコントローラー部3とを有している。エンジン部2は,全体の制御処理を行うCPU4と,本体に付属されている不揮発性メモリ5とを有している。
不揮発性メモリ5には,画像形成装置1の画像形成などを行うための各種の値が記憶されている。例えば,給紙カセット51から定着ニップN2までの搬送経路50上の距離,用紙Pや形成されたトナー像を搬送する速度であるシステム速度など,設計上既知の値が記憶されている。また,定着装置60による定着処理により,トナー像が用紙Pに適切に定着させることのできる定着処理温度なども記憶されている。
CPU4は,不揮発性メモリ5に記憶されている値に基づいて,画像形成装置1の各部を制御する。例えば,各露光装置13による静電潜像の形成開始のタイミングを調整することにより,中間転写ベルト30上にズレのないカラートナー像を形成する。また画像形成部10Y,10M,10C,10Kにより画像を形成するタイミングと,給紙カセット51から用紙Pを給紙するタイミングとを調整することにより,これらの転写ニップN1への突入タイミングが合うように制御する。
また,本形態のCPU4は,定着ヒーター制御部8および予熱ヒーター制御部9を有している。定着ヒーター制御部8および予熱ヒーター制御部9は,定着装置60によって適切に定着処理がなされるように,定着装置60を制御するためのものである。これら,定着ヒーター制御部8および予熱ヒーター制御部9については,後に詳述する。
またエンジン部2は,画像形成装置1に含まれている各種ユニット6を制御するとともに,各種ユニット付属の不揮発性メモリ7の書き込みや読み出しを行う。各種ユニット6には例えば,イメージングユニットが含まれる。そして,各種ユニット付属の不揮発性メモリ7について,例えばイメージングユニットに付属のメモリには,そのイメージングユニットにより画像形成がなされた枚数などが記憶されている。
コントローラー部3は,外部のパソコンなどに接続されて指示入力を受けるものである。例えば,画像形成指令をパソコンから受信することにより,画像形成装置1には画像形成ジョブが発生する。さらに,エンジン部2とコントローラー部3とで,ドットカウンタ値などの各種の情報がやりとりされる。
次に,本形態の定着装置60について説明する。図3は,画像形成装置1の定着装置60の概略構成を示す断面図である。定着装置60は,加圧ローラー61,定着パッド62,定着ベルト63,定着ヒーター64を有している。定着パッド62および加圧ローラー61はともに,図3において奥行き方向に長い部材であり,互いに平行に配置されている。
定着パッド62,定着ベルト63,定着ヒーター64は,定着ニップN2を通過する用紙Pのトナー像を坦持している面の側に配置されている。そして,定着パッド62,定着ベルト63,定着ヒーター64は,定着ニップN2を通過する用紙Pを加熱するための加熱側の構成である。
一方,加熱側の構成と搬送経路50を挟んで対向する加圧側の加圧ローラー61は,定着ベルト63へ向けて軸と垂直の方向に圧接されている。これにより,無端状の定着ベルト63は,定着パッド62と加圧ローラー61との間に挟み込まれている。そして,定着ベルト63と加圧ローラー61との圧接箇所には,用紙Pに定着処理を行う定着ニップN2が形成されている。
また,加圧ローラー61は,定着処理が行われる際には,図3に矢印で示す向きに回転駆動される。これにより,定着ベルト63についても,定着処理時に回転する加圧ローラー61の圧接による摩擦力によって従動回転する。
定着ヒーター64は,定着ベルト63の内周側に配置されており,定着ベルト63を加熱するためのものである。なお,定着ヒーター64と定着ニップN2との間には,反射板65が設けられている。反射板65は,定着ヒーター64により,定着ニップN2の箇所が直接,加熱されることを抑制するためのものである。
つまり,本形態の定着装置60において,定着ベルト63の定着ニップN2付近以外の図3において左側の部分は,定着ヒーター64と対面している。よって,定着ベルト63の定着ニップN2付近以外の部分は,定着ヒーター64により直接,加熱される。このため,本形態の定着装置60は,ウォーミングアップ時間や,定着処理温度までの温度上昇の時間が短い構成のものである。
また,図3に示すように,本形態の定着装置60は,温度センサー66を有している。温度センサー66は,例えば非接触の赤外線センサーなどであり,定着ベルト63の表面温度を検出して出力することができるものである。
さらに,本形態の定着装置60は,図3に示すように,通電遮断部70を有している。通電遮断部70は,定着ベルト63と間隔を設けつつ,その近傍に設けられている。すなわち,通電遮断部70が定着ベルト63に非接触であることにより,定着ベルト63の表面に傷などが付いてしまうことはない。また,通電遮断部70は,その温度が作動温度以上となったときに,定着ヒーター64への電力の供給を遮断することのできるものである。なお,通電遮断部70については,次の図4において詳述する。
図4に,本形態の定着装置60の制御構成の概略を示す。前述したように,CPU4は,定着ヒーター制御部8および予熱ヒーター制御部9を有している。また,図4には,定着装置60の構成のうち,定着ベルト63,定着ヒーター64,温度センサー66,通電遮断部70を示している。さらに,図4には,定着ヒーター64に電力を供給するための電源である定着ヒーター電源67を示している。
定着ヒーター制御部8は,定着処理時において,温度センサー66により検出される定着ベルト63の温度が,予め定めた定着処理温度となるように,定着ヒーター電源67を制御する。すなわち,定着ヒーター制御部8は,定着処理時には,定着ヒーター電源67から定着ヒーター64に供給される電力を制御することにより,定着ベルト63の温度を定着処理温度に維持することができる。
例えば,本形態の定着ヒーター制御部8は,定着ヒーター電源67より定着ヒーター64に電力の供給を開始させる加熱開始時刻の決定を行う。加熱開始時刻は,定着ニップN2における定着ベルト63の温度が定着ヒーター64の加熱により定着処理温度まで上昇する定着上昇時間によりに決定することができる。すなわち,加熱開始時刻は,給紙カセット51から送り出された用紙Pが定着ニップN2に到達する時刻よりも定着上昇時間以上前のタイミングに決定することができる。定着上昇時間は,例えば,予め実験行うことなどにより取得した時間を,本体に付属されている不揮発性メモリ5に記憶させておき,その記憶させている値を用いることができる。よって,定着ヒーター制御部8は,画像形成装置1に入力された画像形成のジョブにより,加熱開始時刻を決定することができる。
また,図4に示すように,本形態の通電遮断部70は,バイメタル71,接点部72,予熱ヒーター73を有している。バイメタル71は,通電遮断部70の作動温度未満と,通電遮断部70の作動温度以上とでは,形状が異なるものである。すなわち,バイメタル71は,作動温度未満から作動温度以上に加熱されたときに変形し,作動温度以上から作動温度未満に冷却されたときには元の形状に戻る特性のものである。なお,バイメタル71が変形する作動温度は,定着処理温度よりも高い温度である。
通電遮断部70の接点部72は,定着ヒーター電源67と定着ヒーター64とが接続されている回路の途中に設けられている。接点部72は,図4に実線で示す通電位置と,二点鎖線で示す遮断位置とをとることのできるものである。具体的には,接点部72は,通電位置では,定着ヒーター電源67が定着ヒーター64に電力を供給することができる状態とする。
一方,接点部72は,遮断位置では,定着ヒーター電源67により定着ヒーター64に電力が供給されない状態とすることができる。そして,接点部72は,バイメタル71の温度が作動温度未満であるときには通電位置をとり,バイメタル71の温度が作動温度以上となって変形したときに,そのバイメタル71の変形によって遮断位置をとるように構成されている。すなわち,本形態の通電遮断部70は,バイメタル71の変形による機械式のサーモスタットである。
そして,本形態の通電遮断部70は,バイメタル71が作動温度未満であるときには,定着ヒーター64を,加熱を行うことができる加熱可能状態とする。一方,通電遮断部70は,バイメタル71が作動温度以上であるときには作動し,定着ヒーター64を,加熱を行うことができない加熱不能状態とする。
また,通電遮断部70は,バイメタル71を定着ベルト63に向けて設けられている。このため,通電遮断部70は,定着ベルト63が定着ヒーター64によって作動温度以上の温度にまで加熱される定着ヒーター64の過熱が生じたときに作動し,定着ヒーター64を加熱不能状態とすることができる。
本形態の通電遮断部70に設けられている予熱ヒーター73は,予熱ヒーター制御部9の制御により,発熱することができる。また,予熱ヒーター73は,予熱ヒーター73とバイメタル71との距離が,定着ヒーター64とバイメタル71との距離よりも短い距離となる位置に設けられている。つまり,予熱ヒーター73は,バイメタル71の近傍に設けられているバイメタル71を加熱するためのヒーターである。
また,予熱ヒーター73は,バイメタル71の予熱を行うためのものである。すなわち,予熱ヒーター73は,発熱時には,バイメタル71を予熱温度にまで加熱することができる。予熱温度は,通電遮断部70の作動温度未満の温度である。
本形態では,予熱ヒーター73として,電力の供給により発熱する抵抗発熱体を使用している。このため,予熱ヒーター73に電力を供給する電源を有している。予熱ヒーター73の電源としては,定着ヒーター電源67を用いてもよい。あるいは,定着ヒーター64とは別の電源を使用することもできる。
また,本形態の予熱ヒーター73は,温度が上昇するほど,抵抗値が上昇するものである。さらに,本形態の予熱ヒーター73は,上限温度に到達すると,抵抗値の上昇により,それ以上,温度が上昇しない特性を有するものである。そして,本形態では,予熱ヒーター73の上限温度が,予熱ヒーター73により加熱されるバイメタル71の予熱温度である。なお,予熱温度は作動温度未満の温度であるため,通電遮断部70は,予熱ヒーター73のみの加熱により作動し,定着ヒーター64を加熱不能状態とすることはない。
ここで,定着ヒーター64の過熱が生じてしまった場合には,定着ヒーター64を速やかに加熱不能状態にすることが好ましい。定着ヒーター64の過熱が生じている場合,定着ヒーター64が,定着ヒーター制御部8によって適切に制御されていないおそれがあるからである。さらに,定着装置60は,前述したように,短時間で定着ベルト63の温度を上昇させることのできる仕様のものである。このため,本形態では,定着ヒーター64による過熱が生じた場合,より早期に定着ヒーター64による加熱を停止することが好ましい。
そこで,本形態の予熱ヒーター73は,予めバイメタル71を予熱温度まで加熱しておくことにより,定着ヒーター64の過熱が生じた場合に速やかに定着ヒーター64を加熱不能状態にすることができる。具体的には,予熱ヒーター制御部9は,画像形成装置1の電源が投入された後,定着ヒーター64によって加熱される定着ベルト63の温度が予熱温度よりも高い温度となる前に,バイメタル71が予熱温度となるように予熱ヒーター73を制御する。
そのため,本形態の予熱ヒーター制御部9は,予熱ヒーター73に予熱を開始させる予熱開始時刻の決定を行うことができる。予熱開始時刻は,例えば,定着ヒーター64による加熱開始時刻,定着ベルト63の定着上昇時間,バイメタル71の温度を予熱温度まで上昇させるために要する予熱所要時間により決定することができる。具体的には,予熱開始時刻は,加熱開始時刻から定着上昇時間が経過したタイミングよりも,予熱所要時間以上前のタイミングに決定することができる。そのため,本形態の予熱ヒーター制御部9は,定着ヒーター制御部8より,定着ヒーター64による加熱開始時刻,定着ベルト63の定着上昇時間を取得することができる。また,予熱所要時間は,例えば,予め実験行うことなどにより取得した時間を,本体に付属されている不揮発性メモリ5に記憶させておき,その記憶させている値を用いることができる。
そして,バイメタル71の温度を予熱温度としておくことにより,予熱温度未満であるときよりも,定着ヒーター64の過熱が生じた場合に,定着ヒーター64による加熱を早期に停止することができる。予熱温度であるときのバイメタル71は,予熱温度未満であるときよりも,作動温度まで温度上昇するために要する熱量が少なくて済むからである。
図5から図9に,定着ヒーター64の過熱が生じたときの温度推移を示す。図5から図9において,横軸に時間を,縦軸に温度を示している。また,図5から図9には,二点鎖線により,定着ベルト63の温度推移を示している。さらに,実線は,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱を行った場合のバイメタル71の温度推移を示したものである。一方,破線は,本形態とは異なり,予熱ヒーター73による予熱を行わなかった場合のバイメタル71の温度推移を示したものである。
なお,図5から図9はそれぞれ,本形態に係る実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度推移が異なるものである。つまり,図5から図9には,予熱ヒーター73による予熱の開始時刻や,予熱ヒーター73の予熱によるバイメタル71の温度上昇の程度がそれぞれ異なる場合を実線により示している。一方,図5から図9において,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度推移,および,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度推移については,いずれも同じである。
また,具体的に,図5および図6には,定着ヒーター64による加熱が開始される前に,予熱ヒーター73がバイメタル71の予熱を開始した場合の温度推移を示している。図7および図8には,定着ヒーター64による加熱が開始された後に,予熱ヒーター73がバイメタル71の予熱を開始した場合の温度推移を示している。図9には,定着ヒーター64による加熱が開始される前に,予熱ヒーター73がバイメタル71を予熱温度まで加熱した場合の温度推移を示している。
まず,図5は,上記のように,定着ヒーター64による加熱が開始される前に,予熱ヒーター73がバイメタル71の予熱を開始した場合の温度推移を示したものである。図5の縦軸には,室温Ta,予熱ヒーター73による予熱温度Tb,通電遮断部70の作動温度Tcを示している。加熱や予熱が開始される前において,定着ベルト63およびバイメタル71の温度はともに,室温Taである。
また,図5の横軸には,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t1,および,定着ヒーター64による加熱開始時刻t2を示している。前述したように,予熱開始時刻t1は,予熱ヒーター制御部9により決定されたタイミングである。加熱開始時刻t2は,定着ヒーター制御部8により決定されたタイミングである。
図5においては,予熱開始時刻t1は加熱開始時刻t2よりも前のタイミングである。このため,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,予熱開始時刻t1までは室温Taであり,予熱開始時刻t1より上昇し始めている。また,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度は,加熱開始時刻t2までは室温Taであり,加熱開始時刻t2より上昇し始めている。さらに,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度についても,加熱開始時刻t2までは室温Taであり,加熱開始時刻t2より上昇し始めている。
また,図5においては,時刻t3に,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,予熱温度Tbまで上昇している。つまり,図5に係る通電遮断部70においては,予熱開始時刻t1から時刻t3までの時間が,バイメタル71の予熱所要時間である。
また,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度は,時刻t3よりも後の時刻t4に,予熱温度Tbまで上昇している。このため,図5に係る定着装置60においては,加熱開始時刻t2から時刻t4までの時間が,定着ベルト63の定着上昇時間である。
そして,図5に示すように,実線で示す予熱がある場合の予熱ヒーター73は,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように予熱を行っている。一方,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度は,時刻t4においても,予熱温度Tbよりも低い温度である。破線で示す予熱がない場合のバイメタル71は,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63からの熱の移動によってのみ,温度が上昇している。このため,温度の上昇率が,定着ベルト63よりも低くなるからである。
実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t4以降,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63の温度上昇に伴い,上昇している。なお,その時刻t4以降のバイメタル71の温度の上昇率は,定着ベルト63の温度の上昇率よりも低いものである。バイメタル71は,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63からの熱の移動により,温度が上昇しているからである。
そして,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t5において,通電遮断部70の作動温度Tcに到達している。よって,本形態のように,予熱ヒーター73により予熱がなされている場合には,時刻t5において,定着ヒーター64による加熱が停止される。なお,この時刻t5における定着ベルト63の温度は,温度Tdである。
一方,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度についても,時刻t4以降,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63の温度上昇に伴い,上昇している。そして,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度は,時刻t5よりも後の時刻t6において,通電遮断部70の作動温度Tcに到達している。
よって,本形態とは異なり,予熱ヒーター73による予熱がなされていない場合には,時刻t6において,定着ヒーター64による加熱が停止される。そして,時刻t6における定着ベルト63の温度Teは,温度Tdよりも高い温度である。予熱ヒーター73による予熱がなされていない場合,定着ベルト63は,時刻t5から時刻t6の間にも,定着ヒーター64により加熱されているからである。
よって,図5に示すように,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱がある場合には,予熱がない場合よりも,定着ヒーター64による過熱が生じた後,早期に定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。従って,定着ヒーター64による過熱が生じた場合にも,定着ベルト63の温度がそれほど高温になる前に,定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。
また,図6には,予熱ヒーター73の予熱によるバイメタル71の温度の上昇率が,図5の場合よりも低い場合を示している。図6においても,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t1,および,定着ヒーター64による加熱開始時刻t2については,図5と同じである。
なお,図6は,上記のように,予熱によるバイメタル71の温度の上昇率が図5の場合よりも低い場合である。つまり,図6に係る通電遮断部70においては,予熱開始時刻t1から時刻t4までの時間がバイメタル71の予熱所要時間であり,予熱所要時間が図5の場合よりも長いものである。しかし,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,定着ベルト63の温度が予熱温度Tbとなる時刻t4に,予熱温度Tbとなっている。すなわち,図6においても,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように,予熱ヒーター73による予熱を行っている。
そして,図6においても,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t5に,作動温度Tcに到達している。時刻t5は,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度が作動温度Tcに到達する時刻t6よりも前である。よって,図6においても,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱がある場合には,予熱がない場合よりも,定着ヒーター64による過熱が生じた後,早期に定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。従って,定着ヒーター64による過熱が生じた場合にも,定着ベルト63の温度がそれほど高温になる前に,定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。
次に,図7は,前述したように,定着ヒーター64による加熱が開始された後に,予熱ヒーター73がバイメタル71の予熱を開始した場合の温度推移を示したものである。図7においても,縦軸には,室温Ta,予熱温度Tb,作動温度Tcを示している。
図7には,定着ヒーター64による加熱開始時刻t11,および,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t12を示している。図7においては,予熱開始時刻t12は加熱開始時刻t11よりも後のタイミングである。
図7に示すように,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度はいずれも,加熱開始時刻t11より,室温Taから上昇し始めている。なお,この時点において,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71および破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度の上昇率はともに,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度の上昇率よりも低いものである。
また,図7に示すように,予熱開始時刻t12から時刻t13までの間において,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度の上昇率は,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度の上昇率よりも高いものである。予熱ヒーター73による予熱を行っているからである。そして,図7においては,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t12の後の時刻t13に,予熱温度Tbまで上昇している。
また,図7においては,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度は,時刻t13よりも後の時刻t14に,予熱温度Tbまで上昇している。すなわち,図7の実線で示す場合の予熱ヒーター73についても,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように予熱を行っている。一方,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度は,時刻t14においても,予熱温度Tbよりも低い温度である。
そして,図7では,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t15に,作動温度Tcに到達している。時刻t15は,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度が作動温度Tcに到達する時刻t16よりも前である。よって,図7においても,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱がある場合には,予熱がない場合よりも,定着ヒーター64による過熱が生じた後,早期に定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。従って,定着ヒーター64による過熱が生じた場合にも,定着ベルト63の温度がそれほど高温になる前に,定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。
また,図8には,予熱ヒーター73の予熱によるバイメタル71の温度の上昇率が,図7の場合よりも低い場合を示している。図8においても,定着ヒーター64による加熱開始時刻t11,および,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t12については,図7と同じである。
なお,図8は,上記のように,予熱によるバイメタル71の温度の上昇率が図7の場合よりも低い場合を示している。つまり,図8に係る通電遮断部70においては,予熱所要時間が図7の場合よりも長いものである。しかし,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,定着ベルト63の温度が予熱温度Tbとなる時刻t14に,予熱温度Tbとなっている。すなわち,図8においても,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように,予熱ヒーター73による予熱を行っている。
そして,図8においても,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t15に,作動温度Tcに到達している。時刻t15は,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度が作動温度Tcに到達する時刻t16よりも前である。よって,図8においても,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱がある場合には,予熱がない場合よりも,定着ヒーター64による過熱が生じた後,早期に定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。従って,定着ヒーター64による過熱が生じた場合にも,定着ベルト63の温度がそれほど高温になる前に,定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。
続いて,図9は,前述したように,定着ヒーター64による加熱が開始される前に,予熱ヒーター73がバイメタル71を予熱温度まで加熱した場合の温度推移を示したものである。図9においても,縦軸には,室温Ta,予熱温度Tb,作動温度Tcを示している。
図9には,予熱ヒーター73による予熱開始時刻t21,および,定着ヒーター64による加熱開始時刻t23を示している。なお,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,加熱開始時刻t23よりも前の時刻t22に,予熱温度Tbまで上昇している。
また,図9では,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度はともに,加熱開始時刻t23より,室温Taから上昇し始めている。なお,予熱がない場合のバイメタル71の温度の上昇率は,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度の上昇率よりも低いものである。
また,図9においては,二点鎖線で示す定着ベルト63の温度は,時刻t22よりも後の時刻t24に,予熱温度Tbまで上昇している。すなわち,図9の実線で示す場合の予熱ヒーター73についても,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように予熱を行っている。一方,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度は,時刻t24においても,予熱温度Tbよりも低い温度である。
そして,図9では,実線で示す予熱がある場合のバイメタル71の温度は,時刻t25に,作動温度Tcに到達している。時刻t25は,破線で示す予熱がない場合のバイメタル71の温度が作動温度Tcに到達する時刻t26よりも前である。よって,図9においても,本形態に係る予熱ヒーター73による予熱がある場合には,予熱がない場合よりも,定着ヒーター64による過熱が生じた後,早期に定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。従って,定着ヒーター64による過熱が生じた場合にも,定着ベルト63の温度がそれほど高温になる前に,定着ヒーター64による加熱を停止させることができる。
すなわち,上記で説明した図5から図9の実線で示す場合はいずれも,定着ヒーター64により加熱される定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように予熱ヒーター73による予熱を行っている。これにより,本形態では,定着ヒーター64の過熱により定着ベルト63の温度が作動温度Tcまで上昇したときには,定着ヒーター64による加熱を速やかに停止させることができる。
また,前述したように,本形態では予熱ヒーター73として,温度が上昇するほど抵抗値が上昇し,上限温度に到達すると,抵抗値の上昇により,それ以上,温度が上昇しない特性を有するものを用いている。このため,本形態の予熱ヒーター制御部9には,予熱ヒーター73の温度を予熱温度に維持するための制御等が不要である。よって,予熱ヒーター73による予熱を安価な構成で行うことができる。
また,予熱ヒーター73による予熱開始時刻は,定着ヒーター64による加熱開始時刻よりも前のタイミングであることが好ましい。すなわち,図5から図9のうち,図5,図6,図9のように予熱を行うことが好ましい。予熱所要時間は,例えば,バイメタル71の付近の温度や空気の流れ等により,長くなってしまうことがある。つまり,予熱開始時刻が早いほど,より確実に,定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように予熱を行うことができるからである。ただし,予熱開始時刻が早過ぎることは好ましくない。消費電力が多くなってしまうからである。
なお,上記の本形態においては,予熱ヒーター制御部9は,定着ヒーター制御部8が決定した加熱開始時刻を,定着ヒーター制御部8より取得している。しかし,予熱ヒーター制御部9は,定着ヒーター電源67より定着ヒーター64に電力を供給されたことを検出することにより,加熱開始時刻を取得することもできる。そのため,例えば,定着ヒーター電源67と定着ヒーター64とが接続されている回路に,定着ヒーター64に供給される電力の有無を検出する検出部を設けておけばよい。供給電力の有無を検出する検出部としては,電圧計や電流計を用いることができる。そして,その検出部の検出状態が無しから有りとなったタイミングを,加熱開始時刻とすればよい。
また,上記の本形態においては,画像形成装置1のCPU4に予熱ヒーター制御部9が設けられている。しかし,予熱ヒーター制御部9は,定着装置60に設けることもできる。
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置1は,定着装置60を有している。定着装置60は,定着処理時に定着ベルト63を加熱する加熱源である定着ヒーター64と,通電遮断部70とを有している。通電遮断部70は,バイメタル71,接点部72,予熱ヒーター73を有している。接点部72は,感熱部であるバイメタル71の温度が作動温度以上になったときには,定着ヒーター64への電力供給を遮断することができる。また,予熱ヒーター73は,バイメタル71を作動温度未満の予熱温度とする予熱を行うものである。さらには,予熱ヒーター73は,定着ベルト63が予熱温度よりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度となるように予熱を行う。これにより,加熱源による過熱が生じたときに,加熱源による加熱を速やかに停止させることができる画像形成装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明はカラープリンターに限らず,例えば,公衆回線経由で印刷ジョブの送受信を行うような画像形成装置にも適用可能である。
また例えば,画像形成装置1の定着装置は,上記で説明した定着装置60と異なる構成のものであってもよい。つまり,電磁誘導加熱方式の定着装置など,その他の構成の定着装置においても本発明を適用することができる。また例えば,通電遮断部70としては,バイメタル式以外のサーモスタットを用いることもできる。
また,予熱は,定着ベルト63が予熱温度Tbよりも高い温度になる前に,バイメタル71が予熱温度Tbとなるように行えばよく,例えば,画像形成装置1の電源が投入されたときに開始することとしてもよい。また例えば,画像形成のジョブが入力されたときに予熱を開始することとしてもよい。あるいは,定着ヒーター64による加熱が開始されたときに,予熱を開始することも可能である。