以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。まず、第1実施形態に係るコイル装置が適用された非接触給電システム1について、図1を参照して説明する。非接触給電システム1は、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリを充電するためのシステム(装置)である。
非接触給電システム1は、地表面に設置された送電装置3と、車両2側に設けられる受電装置4とを備えて構成される。送電装置3は、地表面に設置されており、地上を走行する車両2が、予め定められた位置関係(後述する電磁結合回路が形成される位置関係)で停車しているときに、車両2の受電装置4に対して電力(バッテリ24を充電するための電力)を非接触で伝送可能に構成されている。
送電装置3は、外部電源11、整流回路12、送電回路13、送電コイル装置14等を備えて構成される。外部電源11は、車両2に伝送すべき電力を生成するために必要となる電力を供給する電源であり、例えば電圧が200[V]である三相交流電力を供給する電源である。なお、この外部電源11は、三相交流電源に限られることはなく、商用交流電源のような単相交流電力を供給する電源であってもよい。
整流回路12は、外部電源11から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する回路である。なお、外部電源11としては燃料電池や太陽電池など直流電源を利用することも可能であり、その場合には、整流回路12を省略することができる。
送電回路13は、整流回路12から供給される電力を、送電コイル装置14と車両2に設けられる受電コイル装置25とによって形成される電磁結合回路を介して、非接触で車両2に供給する。具体的には、送電回路13は、例えば、インバータ回路を備え、整流回路12からの直流電力を外部電源11の交流電力よりも周波数が高い交流電力(高周波電力)に変換して送電コイル装置14に備えられた送電コイル部15に与えることにより、車両2に対する非接触給電を実現する。すなわち、送電コイル部15から車両2の受電装置4における受電コイル装置25に備えられた受電コイル部26に対して送電を行うことにより、非接触給電を可能にしている。また、送電回路13は、インバータ回路の出力側に、送電コイル装置14に備えられた送電コイル部15とともに送電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備え得る。
送電コイル装置14は、地表面に設置されており、筐体内に送電コイル部15と送電側シールド板(非磁性部材)16とを備えて構成されている。送電コイル部15は、前述したように送電回路13から供給される交流電力を非接触で車両2に給電するためのコイルであり、例えば予め規定されたコイル形状寸法を有するソレノイドコイルによって形成されている。なお、このような送電コイル装置14の詳細については後述する。
受電コイル装置25は、車両2に設けられており、後述するように筐体内に受電コイル部26と受電側シールド板(非磁性部材)27とを備えて構成されている。受電コイル部26は、例えば送電コイル部15とほぼ同じコイル径を有するソレノイドコイルによって形成されている。
送電コイル装置14と車両2に設けられた受電コイル装置25とが近接し、送電コイル部15と受電コイル部26とが近接した状態に位置させられることで、電磁結合回路が形成される。この電磁結合回路は、送電コイル部15と受電コイル部26とが電磁気的に結合して送電コイル部15から受電コイル部26への非接触の給電が行われる回路を意味し、「電磁誘導方式」で給電を行う回路であってもよく、「電磁界共鳴方式」で給電を行う回路であってもよい。受電コイル装置25は、送電コイル装置14から非接触で供給されてくる電力(交流電力)を受けとる。
図1に示すように、車両2は、受電装置4を備えている。なお、図1では省略しているが、車両2は、モータ、操作ハンドル、及びブレーキ等の走行に必要な構成を備えている。受電装置4は、受電コイル装置25、受電回路29、充電回路30、バッテリ24を備える。受電コイル装置25は、前述したように受電コイル部26と受電側シールド板27とを備えて構成されている。受電コイル部26は、送電コイル装置14の送電コイル部15と対向可能なようにコイル軸が互いに平行となる姿勢で、車両2の底部に設けられている。
受電回路29は、受電コイル装置25からの電力を直流電力に変換して充電回路30に出力する。この受電回路29は、受電コイル部26とともに受電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備え得る。なお、受電回路29の共振用コンデンサの静電容量は、受電側共振回路の共振周波数が前述した送電側共振回路の共振周波数と同一周波数になるように設定され得る。
充電回路30は、入力端が受電回路29の出力端に接続されるとともに出力端がバッテリ24の入力端に接続されており、受電回路29からの電力(直流電力)を所望電力に変換してバッテリ24に供給する。バッテリ24は、車両2に搭載された再充電が可能な電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)であり、図示しない走行モータ等に電力を供給する。なお、この充電回路30は、受電用制御部(図示せず)によって予め用意された受電用制御プログラムに基づいて制御されるようになっている。
次に、本実施形態に係る送電コイル装置14および受電コイル装置25について詳しく説明する。図2(a)に示すように、送電コイル装置14は、図示しない筐体と、この筐体内に配置された送電コイル部15と、送電側シールド板16とを有している。送電コイル部15は、本実施形態では予め規定されたコイル形状寸法を有するソレノイド型のコイル、すなわち、導線を平板状のコア部材(図示せず、例えばフェライト)に対して扁平な四角筒状に巻回したコイルからなっている。なお、送電コイル部15としては、後述するようにサーキュラー型のコイルからなっていてもよい。
図2(b)に示すように、四角筒状に巻回したソレノイド型の送電コイル部15は、平面視矩形状に形成される。送電側シールド板16は、非磁性かつ導電性の部材であり、たとえばアルミニウムまたは銅からなる。送電側シールド板16は、送電コイル部15に対して、図1に示す受電コイル装置25の受電コイル部26に対向する側と反対の側に配置されている。送電側シールド板16は、送電コイル部15のコイル軸と平行になるようにして送電コイル部15に対向して配置されている。なお、この送電側シールド板16は、筐体内の予め設定された位置(送電コイル部15の近傍)に容易に着脱できるようになっている。また、送電側シールド板16は、筐体の外部に配置してもよい。
図2(b)に示すように、この送電側シールド板16は、送電コイル部15の平面視形状より充分に大きい矩形状に形成され、かつ平面視した状態で送電コイル部15が内部に位置するように送電コイル部15の直下に配置される。そして、この送電側シールド板16は、送電コイル部15の近傍に配置され、すなわち僅かな隙間を介して配置されており、したがって送電コイル部15によりその面内に、送電コイル部15の電流の向きと逆になるように、図2(a)の矢印で示すような反時計回り、あるいは時計回りの渦電流が生じるようになっている。
このような送電側シールド板16での渦電流の形成は、送電コイル部15のインダクタンスに影響を及ぼし、形成される渦電流の大小などによって送電コイル部15のインダクタンスは変化する。本実施形態では、図2(a)、(b)に示すように、送電コイル部15によって送電側シールド板16に形成される渦電流の一部を遮ってこれを迂回させ、渦電流の状態を変化させる、渦電流遮断部40が形成されている。
渦電流遮断部40は、本実施形態では送電側シールド板16の表裏面を貫通する複数のスリット(長孔部)40aによって形成されている。すなわち、スリット40aは、送電コイル装置14と受電コイル装置25との対向方向に送電側シールド板16を貫通している。スリット40aは、送電コイル部15を形成する導線の巻線方向(延在方向)に対してほぼ直交する方向(交差する方向)に延びて形成されている。すなわち、スリット40aは、送電コイル部15のコイル軸(中心軸)に沿う方向に延びて形成されている。また、これらスリット40aは、その両端が、送電コイル部15のコイル軸(中心軸)方向における両端に対してそれぞれ外側に位置するように形成されている。すなわち、スリット40aは、送電コイル装置14と受電コイル装置25との対向方向に直交する方向において送電コイル装置14よりも外側に突出している。
このように形成されることでスリット40a(渦電流遮断部40)は、送電コイル部15によって送電側シールド板16に形成される渦電流の一部を遮り、これによって渦電流を一部迂回させることでスリット40aが無い場合に比べて渦電流の状態を変化させている。すなわち、渦電流の状態を変化させることによって送電コイル部15のインダクタンスを変化させることができる。特に、スリット40aの両端を、送電コイル部15のコイル軸(中心軸)方向における両端に対してそれぞれ外側に位置するように形成しているので、送電側シールド板16に形成される渦電流をより多く遮って大きく迂回させ、これによって渦電流の状態をより大きく変化させることができる。
なお、受電コイル装置25も、図2(a)に示した送電コイル装置14とほぼ同様の構成を有しており、筐体(図示せず)内に受電コイル部26と受電側シールド板27とを備えて構成されている。受電側シールド板27は、非磁性かつ導電性の部材であり、たとえばアルミニウムまたは銅からなる。
受電側シールド板27は、受電コイル部26に対し、送電コイル部15と対向する側と反対の側に配置されている。受電側シールド板27は、受電コイル部26のコイル軸と平行になるようにして受電コイル部26に対向して配置されている。受電側シールド板27には、送電側シールド板16と同様に、スリット40aからなる渦電流遮断部40が形成されている。これにより、受電コイル部26もそのインダクタンスが変化させられる。
ここで、渦電流遮断部40を構成するスリット40aとしては、図2(b)に示したように、複数を互いに平行に、かつ、ほぼ等間隔で形成するとともに、送電コイル部15(または受電コイル部26)のコイル軸(中心軸)に沿う方向に延びて、その両端が送電コイル部15(または受電コイル部26)の両端に対してそれぞれ外側に位置するように形成しているが、スリット40aについては、渦電流の一部を遮って渦電流を迂回させ、スリット40aが無い場合に比べて渦電流の状態を変化させることができれば、種々の形態を採用することができる。
具体的には、スリット40aの数については一つを含んで任意であり、また、その幅や長さも送電コイル部15または受電コイル部26の形状等に応じて適宜に設定される。スリット40aを複数形成する場合、その幅や長さを全て同一にすることなく、個々に幅や長さを変えてもよい。また、図2(b)中に示す一つのスリット40aを複数に分割してもよく、その場合にも分割したスリットの幅や長さを変えてもよい。また、分割したスリットの配置についても、規則的にしてもよく、不規則にしてもよい。また、スリットの深さを変えるべく、送電側シールド板16や受電側シールド板27を形成する導電板の厚さを変えてもよい。
さらには、スリット40aを極端に短くした形態として、単に孔を形成してこれを渦電流遮断部40の構成要素としてもよい。その場合にも、孔の数や配置は任意であり、スリット40aの長さ方向、すなわち送電コイル部15(または受電コイル部26)のコイル軸(中心軸)に沿う方向に配列してもよく、例えば千鳥状に配置してもよい。また、全く不規則に配置してもよく、一部を規則的に、残部を不規則に配置してもよい。
次に、このような渦電流遮断部40を形成した送電側シールド板16または受電側シールド板27を備える、送電コイル装置14または受電コイル装置25の製造方法について説明する。まず、送電側シールド板16用、受電側シールド板27用の非磁性部材として、それぞれ銅板等の導電板を複数枚用意する。
次に、これら複数の導電板に対してそれぞれ渦電流遮断部40を形成し、加工非磁性部材としてとしての送電側シールド板16、受電側シールド板27を形成する。ただし、複数の導電板に対してそれぞれ形成する渦電流遮断部40の形態を変え、これによって複数種の加工非磁性部材(送電側シールド板16、受電側シールド板27)を形成する。具体的には、導電板間で前述したようにスリットの数や幅、長さを変えるか、または、同じ導電板に形成する複数のスリットについて、その幅や長さを変える。また、スリットの一部または全部を孔に変える。さらに、予め厚さの異なる導電板を用意にすることにより、スリットの深さを変える。
次に、このような加工非磁性部材(送電側シールド板16、受電側シールド板27)を備える送電コイル装置14、受電コイル装置25を組み立てるべく、筐体内に送電コイル部15を配設する。また、筐体内に受電コイル部26を配設する。
次いで、送電コイル部15の近傍に、複数種の加工非磁性部材(送電側シールド板16)の中から一種を選択して配置する。送電側シールド板16を送電コイル部15の近傍に配置し、送電コイル部15に電流を流すと、送電側シールド板16には渦電流が形成され、これに影響されて送電コイル部15のインダクタンスは、送電側シールド板16に渦電流遮断部40が形成されていない場合に比べて変化する。すなわち、渦電流遮断部40が形成されていない送電側シールド板16を用いた場合に比べ、送電コイル部15のインダクタンスを変化させることができる。
したがって、送電コイルのインダクタンスを予め設定されたインダクタンスとなるように調整すべく、先に用意した複数種の加工非磁性部材(送電側シールド板16)の中から適宜な一種を選択し、送電コイル部15の近傍に配置する。
また、受電コイル装置25についても、送電コイル装置14と同様にして、予め用意した複数種の加工非磁性部材(受電側シールド板27)の中から適宜な一種を選択して受電コイル部26の近傍に配置することにより、受電コイル部26のインダクタンスを調整する。このように送電側シールド板16、受電側シールド板27をそれぞれ適宜に選択することにより、送電コイル装置14、受電コイル装置25を得ることができる。
以上説明した本実施形態の送電コイル装置14または受電コイル装置25によれば、送電側シールド板16(または受電側シールド板27)に渦電流遮断部40が設けられていることにより、送電側シールド板16に発生する渦電流の一部が遮られ、渦電流遮断部40を迂回するように流れる。これにより、渦電流の流れの距離が長くなり、磁気抵抗が増え、渦電流が小さくなる。これにより、送電コイル装置14によって発生する磁束を打ち消す渦電流依存の磁束が減り、インダクタンスが増大する。このように、送電側シールド板16を送電コイル装置14(すなわち導線)に近づけた場合でも、送電側シールド板16を近づけることによるインダクタンスの減少と、渦電流遮断部40によるインダクタンスの増大とを適宜調整することで、所望のインダクタンスが実現される。渦電流遮断部40によるインダクタンスの増大を利用することで、装置の大型化が抑えられる。
渦電流遮断部40としてのスリット40aが送電側シールド板16に設けられることにより、送電側シールド板16において、渦電流の一部を確実かつ容易に遮ることができ、渦電流の経路を変えることができる。貫通孔であるスリット40aが設けられることにより、送電側シールド板16の内部を空気が通り、シールドの温度上昇が抑えられる。
また、スリット40aは、受電コイル装置25との対向方向に直交する方向において送電コイル部15よりも外側に突出している。この場合、より多くの渦電流が遮られ、渦電流の迂回経路が大きくなる。よって、インダクタンスをより増大させることができる。
スリット40aは、送電コイル装置14における導線の延在方向に交差する方向に延びている。渦電流は、導線に沿って(導線を流れる電流と反対向きに)流れる傾向がある。よって、この流れに交差する方向に延びるスリット40aによれば、渦電流の迂回経路が最大化している。すなわち、インダクタンスの変化幅が最大化する。
なお、インダクタンスの変更は、コイル部の形状を変更することにより実現することもできる。一方、コイル部を物理的に変更することは、コイル部の損傷を招くおそれがある。コイル部は、非接触での電力伝送を担うものであり、コイル部の損傷は、その伝送能力に影響を及ぼす。本実施形態では送電側シールド板16に渦電流遮断部40を設けることによりインダクタンスの変更を実現しており、コイル部自体を変更するものではない。よって、コイル部における伝送能力に影響を及ぼすことがない。
上記実施形態のように、非磁性部材にスリット40aからなる渦電流遮断部を設ける構成とすることにより、比較的脆い磁性体(例えば、フェライト)ではなく、固い金属(アルミ、銅)で実現することが可能である。よって、スリットを設ける際に渦電流遮断部が割れたり、ひびが入ったりすることが抑えられる。
また、上記した製造方法によれば、渦電流遮断部40の形態を変えて複数種の加工非磁性部材(送電側シールド板16、受電側シールド板27)を形成し、これら加工非磁性部材から一種を選択する。これにより、送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスの調整を単に加工非磁性部材(送電側シールド板16、受電側シールド板27)の交換によって行うことができる。したがって例えば送電コイル装置14や受電コイル装置25を組み上げた後でも送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスを容易に調整することができる。特に、送電コイル装置14や受電コイル装置25の筐体の外に加工非磁性部材を配置する場合に有効である。よって、製造コストの低減化を可能にすることができる。
また、渦電流遮断部40はスリット40aで実現され、スリット40aは、送電コイル部15または受電コイル部26の導線の巻回方向に対して交差する方向に形成されている。これにより、送電側シールド板16や受電側シールド板27に形成される渦電流をより効率良く遮ることができ、送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスをより大きく変化させることができる。これにより、送電側シールド板16や受電側シールド板27による送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスの調整をより効果的に行うことができる。
また、スリット40aは、その両端が送電コイル部15や受電コイル部26のコイル軸(中心軸)方向における両端に対してそれぞれ外側に位置するように形成されている。これによっても送電側シールド板16や受電側シールド板27に形成される渦電流をより効率良く遮ることができる。したがって送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスをより大きく変化させることができる。
また、このように送電側シールド板16や受電側シールド板27に渦電流遮断部40を形成し、渦電流の経路を変更させているので、特に渦電流の経路を短くした場合などでは、渦電流による発熱などに起因する損失を低減し、送電効率を高めることができる。
次に、図3を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、送電コイルや受電コイルとして、導線を扁平な四角筒状に巻回したソレノイド型のコイルによって形成したが、図3(a)に示すように、導線を同一平面内で円形の渦巻状に巻回したサーキュラー型のコイルによって形成してもよい。
その場合にも、このようなサーキュラー型の送電コイル部15または受電コイル部26の近傍に配置する送電側シールド板16または受電側シールド板27として、渦電流遮断部40を形成したものを用いる。図3(b)に示すように、渦電流遮断部40として、複数のスリット40aが形成される。複数のスリット40aは、送電コイル部15(受電コイル部26)の中心から放射する方向に延びるように形成するのが好ましい(図3(b)に示す例では6本)。また、その場合に、これらスリット40aを、その両端が送電コイル部15(受電コイル部26)より内側から送電コイル部15(受電コイル部26)より外側にまで延びて位置するように、形成するのが好ましい。なお、サーキュラー型のコイルでは、送電コイル部15(受電コイル部26)と、送電側シールド板16(受電側シールド板27)との間に、コア部材(例えば、フェライト)が配置され得る。
このようなサーキュラー型の送電コイル部15または受電コイル部26を用いた場合にも、第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。渦電流遮断部40の形態を変えて複数種の加工非磁性部材(送電側シールド板16、受電側シールド板27)を形成し、これら加工非磁性部材から一種を選択して送電コイル部15または受電コイル部26のインダクタンスを調整することができ、したがって例えば送電コイル装置14や受電コイル装置25を組み上げた後でも送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスを容易に調整することができる。よって、製造コストの低減化を可能にすることができる。
また、渦電流遮断部40をスリット40aで形成し、スリット40aを送電コイル部15または受電コイル部26の中心から放射する方向に形成しているので、送電側シールド板16や受電側シールド板27に形成される渦電流をより効率良く遮ることができ、したがって形成される渦電流をより大きく迂回させることにより、送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスをより大きく変化させることができる。これにより、送電側シールド板16や受電側シールド板27による送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスの調整をより効果的に行うことができる。
また、スリット40aを、その両端が送電コイル部15や受電コイル部26より内側からその外側にまで延びて位置するように形成しているので、これによっても送電側シールド板16や受電側シールド板27に形成される渦電流をより効率良く遮ることができ、したがって送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスをより大きく変化させることができる。
次に、図4を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態のコイル部15Aでは、導線51は、矩形の渦巻状に巻回されている。すなわち、コイル部15Aは矩形状サーキュラー型のコイルである。この場合、渦電流遮断部として、送電側シールド板16Aには十字型のスリット50Aが設けられている。スリット50Aは、導線51の延在方向にほぼ直交する方向に延びている。また、スリット50Aは、コイル部15A(導線51)が設けられた領域よりも外側に突出している。
このような送電側シールド板16Aが設けられたコイル装置によれば、スリット50Aによって、送電側シールド板16Aに形成される渦電流をより効率良く遮ることができ(図5(b)に示される矢印参照)、コイル部15Aのインダクタンスを大きく変化させることができる。
次に、図5を参照して、第4実施形態について説明する。第4実施形態のコイル装置では、ベース54および保護カバー55によって構成された筐体内に、導線52を含むソレノイド型のコイル部15Bが設けられている。コイル部15Bとベース54との間には、2枚の第1シールド板(第1非磁性部材)56aおよび第2シールド板(第2非磁性部材)56bが設けられている。第1シールド板56aおよび第2シールド板56bの間には、シート状部材53が介在されている。第1シールド板56aおよび第2シールド板56bは、相対的にスライド移動可能である。
さらに、第1シールド板56aと保護カバー55との間、すなわち第1シールド板56aの両端部には、第1移動部57a,57aが設けられている。第2シールド板56bと保護カバー55との間、すなわち第2シールド板56bの両端部には、第2移動部57b,57bが設けられている。これらは、たとえばボルト等のねじ部材からなり、たとえば非磁性の材料からなる。第1移動部57aおよび第2移動部57bは、保護カバー55の外部から回転操作可能であり、その回転によって第1シールド板56aおよび第2シールド板56bを移動させる。第1移動部57aおよび第2移動部57bによって、本実施形態の移動機構57が構成されている。なお、移動機構の構成は、ねじ部材を用いる態様に限られない。
さらに、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bのそれぞれには、平行な複数のスリット50Bが形成されている。各スリット50Bは、導線52の延在方向にほぼ直交する方向に延びている。第1シールド板56aに形成されたスリット50Bと、第2シールド板56bに形成されたスリット50Bとは同様のパターンで形成されている。より詳細には、第1シールド板56aに形成されたスリット50Bと、第2シールド板56bに形成されたスリット50Bとは、大きさ、形状および本数が等しくなっている。
シート状部材53は、非導電性の材料からなってもよく、導電性の材料からなってもよい。シート状部材53が非導電性である場合、第2シールド板56bには、第1シールド板56aのスリット50B及びシート状部材53を介して、磁束が入り込む。第1シールド板56aのスリット50Bに重なっている第2シールド板56bの面積の違いにより、第2シールド板56bに入り込む磁束の量が変わるため、第2シールド板56bに発生する渦電流の大きさが変化する。これにより、インダクタンスが変化する。
なお、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bの間にシート状部材53が設けられておらず、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bが直接接触していてもよい。
また、シート状部材53が導電性である場合は、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bが直接接触している場合と同様の効果が得られる。ここで、第1シールド板56aと第2シールド板56bとが凸凹を有している状態で第1シールド板56aおよび第2シールド板56bが直接接触している場合には、第1シールド板56aと第2シールド板56bとの電気的な接触が不十分になり得る。すると、第1シールド板56aで発生した渦電流が第2シールド板56bに移動し難くなる。よって、シールド板56a及び56bの双方のスリット50Bの重なり具合が変わっても、渦電流の経路が変わりにくくなる。
導電性のシート状部材53が設けられる場合、シート状部材53は、第1シールド板56aと第2シールド板56bと密に接触すること(すなわち密接すること)が好ましい。第1シールド板56aと第2シールド板56bとの凸凹の形状に密接可能なシート状部材53を設けることにより、第1シールド板56aと第2シールド板56bとの電気的な接続を確実にすることができる。シート状部材53は、変形可能な材質であることが好ましく、例えば、金属粉末を含むゲル状物質である。
このような構成を有するコイル装置では、図6(a)および(b)に示されるように、第1シールド板56aと第2シールド板56bとの間で、スリット50B,50Bを重ね合わせ、連通させておく。移動機構57によって、第1シールド板56aと第2シールド板56bとのいずれか一方または双方をスライド移動させることにより、スリット50B,50Bの重なり具合を変えることができる。すなわち、必要に応じてこれらのシールド板を適宜にずらし、スリット50Bの幅や長さを変えることでこれらスリット50Bによって形成される渦電流遮断部の形態を変える。ここで、移動機構57による移動方向は、たとえばスリット50Bの幅方向、つまり図5のコイル装置と非接触給電のために対向するコイル装置との対向方向に直交する方向である。なお、直交する方向とは、厳密に対向方向と90°の方向であることに限定されず、第1および第2シールド板56a,56bが対向方向に対して斜めに配置されている場合には、第1および第2シールド板56a,56bが斜めに移動することも含むものとする。
第4実施形態によれば、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bには渦電流遮断部であるスリット50B,50Bが設けられているため、移動機構57によって第1シールド板56aおよび/または第2シールド板56bをスライド移動させると、コイル部15Bの導線52とスリット50Bとの位置関係が変わり、渦電流の経路が変化する。より具体的には、スリット50B,50Bが重なることにより貫通孔の面積が小さくなると、インダクタンスが減少する。このように、所望のインダクタンスに調整することができる。
第1シールド板56aおよび第2シールド板56bの位置をそれぞれ調整することにより、渦電流遮断部であるスリット50B,50Bの重なり具合を変えることができ、これによって渦電流の経路が変わる。非磁性部材が1枚である場合に比べて、送電側シールド板56B全体として、インダクタンスの調整範囲が広がっている。
第1シールド板56aのスリット50Bと、第2シールド板56bのスリット50Bとが同様のパターンで形成されているため、第1シールド板56aおよび第2シールド板56bのいずれか一方を移動させることで、スリット50B,50Bの重なり具合を容易に調整できる。したがって、送電側シールド板56B全体としてのインダクタンスの調整が容易になっている。
また、第4実施形態のコイル装置の製造過程においては、一対の導電板を互いにずらし、渦電流遮断部の形態を変えることにより、結果的に複数種の加工非磁性部材を用意することができる。したがって、このようにして用意した複数種の加工非磁性部材、すなわちスリットの幅や長さを変えた渦電流遮断部を有する加工非磁性部材から適宜な一種を選択することにより、送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスを、予め設定されたインダクタンスとなるように容易に調整することができる。
このように一対の導電板を用いて渦電流遮断部の形態を変えた複数種の加工非磁性部材を用意することにより、用意する加工非磁性部材に必要な導電板の数を少なくすることができ、したがってコストを削減することができる。また、一対の導電板を互いにずらすことで渦電流遮断部の形態を少しずつ、かつ多くの異なる形態に変えることができ、したがって送電コイル部15や受電コイル部26のインダクタンスを予め設定した値により近づけることができる。
第4実施形態のコイル装置は、上記した特許文献1の発明に対して有利な効果を奏する。特許文献1には、シールドの枚数を変えることにより、インダクタンスを変更することが記載されているが、第4実施形態によれば、3枚以上の枚数増加を伴わなくても最低2枚でのインダクタンス調整が可能であり、さらなる小型化が可能になっている。
第4実施形態のコイル装置では、比較的脆い磁性体の移動ではなく、固い金属(アルミ、銅)でシールドを実現することにより、可動によって割れたり、ひびが入ったりすることが抑えられる。
次に、図7を参照して、第5実施形態について説明する。図7(a)に示されるように、第5実施形態のコイル装置では、送電側シールド板56Cに、複数の平行なスリット50Cが設けられている。スリット50Cが延びる方向およびスリット50Cが設けられた領域は、ソレノイド型のコイルを採用した第1実施形態および第4実施形態と同様である。第5実施形態では、送電側シールド板56Cの移動機構として、温度変化に応じて変形するバイメタル58が設けられている。より詳細には、送電側シールド板56Cの両端部に対面するようにして、送電側シールド板56Cの一辺の長さよりも長いバイメタル58が設けられている。バイメタル58の両端は、送電側シールド板56Cの隅部付近でピン等(図示せず)に固定され、かつ、通常時はピン等に巻回されている。
さらに、バイメタル58には、たとえばペルチェ素子を備えた冷却装置(移動制御機構)59が接続されている。冷却装置59によってバイメタル58の温度が制御されると、バイメタル58の変形によって送電側シールド板56Cが押圧され、所定の距離だけ移動させられる。このように、冷却装置59は、送電側シールド板56Cの移動距離を調整する。冷却装置59によれば、冷却装置59を通る電流の極性を反転させることにより、熱の移動方向を制御し、吸熱と放熱を切り替え制御可能である。特に、コイル装置の内部は、渦電流や導線での発熱により温度が上昇する傾向にあるため、バイメタル58の温度制御は、温めることよりも、冷却することの方が重要である。
このようなコイル装置によれば、バイメタル58によって送電側シールド板56Cを移動させることにより、コイル部の導線と渦電流遮断部との位置関係が変わり、渦電流の経路が変化する。よって、送電側シールド板56Cを移動させることにより、所望のインダクタンスに調整することができる。しかも、冷却装置59によって、送電側シールド板56Cの移動距離を能動的に制御することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、図8(a)に示されるように、円形の渦巻状に導線61を巻回したサーキュラー型のコイルにおいて、放射状に延びる6本のスリット50Dが設けられた2枚の第1シールド板65aおよび第2シールド板65bを用いてもよい。スリット50Dは、導線61の延在方向(すなわち弧状の導線61の接線方向)にほぼ直交する方向に延びている。このような送電側シールド板65に対して移動機構や冷却装置を適用してもよい。このようなコイル装置によっても、上記第4実施形態と同様の作用・効果が奏される。
図8(b)に示されるように、矩形の渦巻状に導線62を巻回したサーキュラー型のコイルにおいて、十字型のスリット50Eが設けられた2枚の第1シールド板66aおよび第2シールド板66bを用いてもよい。スリット50Eは、導線62の延在方向にほぼ直交する方向に延びている。このような送電側シールド板66に対して移動機構や冷却装置を適用してもよい。このようなコイル装置によっても、上記第4実施形態等と同様の作用・効果が奏される。
図8(c)に示されるように、矩形の渦巻状に導線63を巻回したサーキュラー型のコイルにおいて、格子状のスリット50Fが設けられた2枚の第1シールド板67aおよび第2シールド板67bを用いてもよい。スリット50Fは、導線63の延在方向にほぼ直交する方向に延びている。このような送電側シールド板67に対して移動機構や冷却装置を適用してもよい。このようなコイル装置によっても、上記第4実施形態等と同様の作用・効果が奏される。
上記の実施形態では、渦電流遮断部として、非磁性のシールド板に長孔部であるスリットが形成される場合について説明したが、長孔部に限られず、円形または楕円形の孔部が設けられてもよく、正方形の孔部が設けられてもよい。また、渦電流遮断部として、スリット等の貫通孔が形成される場合に限られず、貫通していない凹部が設けられてもよい。渦電流遮断部として、所定の方向に延びた凹部である溝部が形成されてもよい。これらの場合、凹部は、コイル装置の対向方向に窪んだ形状に形成される。
スリットまたは溝部は、導線の延在方向に直交する方向に延びる場合に限られず、90度以外の方向(鋭角をなす方向)に延びていてもよい。2枚のシールド板を用いる場合において、孔部または凹部は、異なるパターンで形成されていてもよい。対向するコイル装置に近い方のシールド板に孔部または凹部(渦電流遮断部)が形成され、対向するコイル装置から遠い方のシールド板には孔部または凹部(渦電流遮断部)が形成されていなくてもよい。一方のシールド板に渦電流遮断部が設けられ、他方のシールド板に渦電流遮断部が設けられない構成によれば、磁界放射を低減することができる。また、渦電流遮断部が設けられないシールド板(他方のシールド板)は、同一の材質で形成されず、領域毎に異なる材質で形成されてもよい。この場合、一方のシールド板の渦電流遮断部と重なる他方のシールド板の領域の材質によってインダクタンスを変化させることができる。
移動制御機構として、第5実施形態のバイメタル58に水冷または空冷の冷却装置を組み合わせてもよい。移動機構として、空気式アクチュエータを用いてもよい。その場合、ポンプを備える構成とすることができる。
上記の実施形態では、移動機構は複数のシールド板を移動させるものとして説明したが、移動機構は、1枚のシールド板を移動させるために設けられてもよい。1枚のシールド板の移動により、シールド板に設けられた渦電流遮断部のコイル部に対する位置が変わる。これにより、渦電流が遮断される位置(もしくは、渦電流の経路)が変わるため、それに伴いインダクタンスが変化する。
上記の実施形態では、非接触給電システムを、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(移動体)に搭載されたバッテリを充電するためのシステム(装置)に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば家庭用電化製品等の民生用機器に設けられたバッテリを充電するための非接触給電システムや、産業用機器(例えば、ステージ、アーム、クレーン、ロボット等)を駆動する電力を供給するための非接触給電システム等にも本発明を適用することができる。本発明は、誘導加熱システムにも適用することができる。
本発明のコイル装置は、送電側のコイル装置にも受電側のコイル装置にも適用することができる。